JP3207645B2 - プラスチック成形品の製造方法 - Google Patents

プラスチック成形品の製造方法

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JP3207645B2
JP3207645B2 JP31095393A JP31095393A JP3207645B2 JP 3207645 B2 JP3207645 B2 JP 3207645B2 JP 31095393 A JP31095393 A JP 31095393A JP 31095393 A JP31095393 A JP 31095393A JP 3207645 B2 JP3207645 B2 JP 3207645B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザビームプリン
タ、ファクシミリ等の光学走査系、ビデオカメラ等に適
用されるプラスチック成形品を高精度に成形するように
したプラスチック成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種のプラスチック成形品の製
造方法としては、例えば、予め射出成形によって最終成
形品と略同形状に前加工した熱可塑性プラスチック母材
を、射出成形用金型のキャビティと形状および容積が同
等で、少なくとも1つ以上の鏡面を有するキャビティを
備えた金型に挿入し、該プラスチック母材をそのガラス
転移点以上に加熱・溶融させて前記キャビティ内に樹脂
内圧を発生させ、次いで、徐冷することにより前記樹脂
内圧によってプラスチック母材に鏡面を転写するように
したものがある(例えば、特開平4−163119号公
報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来のプラスチック成形品の製造方法にあっては、
射出成形によって略最終形状に成形されたプラスチック
母材を射出成形用金型のキャビティと形状および容積が
同等のキャビティを有する金型に挿入して鏡面を転写し
ているが、キャビティに挿入前のプラスチック母材を単
に最終形状に成形していただけであったため、以下のよ
うな問題が生じてしまった。成形条件を一定にしても
目標重量に対して少なくとも±0.2%程度のばらつきが
生じてしまう。この重量のばらつきは、プラスチック母
材をキャビティ内に挿入してガラス転移点以上の一定温
度に加熱したときにキャビティ内に生じる樹脂内圧のば
らつきとなってしまい、さらにはその後、熱変形温度以
下にまで徐冷して取り出すときにキャビティ内に負圧ま
たは、残圧を生じさせてしまい、鏡面転写精度を低下さ
せてしまった。
【0004】具体的には、図7に射出成形されたプラス
チック母材の重量分布を示すように、目標重量よりも重
いものは、この母材をキャビティ内に挿入して加熱・溶
融してキャビティ内で樹脂内圧が発生した後、熱変形温
以下まで一定温度で徐冷して取り出した場合に、キャビ
ティ内の残圧が取り出し時に圧力開放することによって
変形が生じて面精度が悪化してしまう。
【0005】一方、プラスチック母材が目標重量よりも
軽い場合には、熱変形温度以上で負圧になり、その部分
に局部的に空気が流入してひけが発生して面精度が低下
してしまうのである。したがって、この重量のばらつき
は±0.15%以下にするか、取り出し温度を低くし成形サ
イクルを長くして残圧が残らないようにする必要があ
る。プラスチック母材は、射出成形用金型のキャビテ
ィ内に溶融樹脂を射出、充填した後、急冷固化したもの
であるため、母材の端部や薄肉部は急冷されることによ
って密度が大きく、かつ寸法も目標とするものよりも大
きくなってしまう。一方、厚肉部ではひけが生じ密度が
小さく、かつ寸法も小さくなってしまう。
【0006】すなわち、プラスチック母材の形状はそれ
をガラス転移点以上に加熱するキャビティ形状に対して
可能な限り相似である(以後これを目標形状と呼ぶ)
とが好ましいにもかかわらず、実際には相似形状とはな
らなかった。したがって、このような相似形状でないプ
ラスチック母材をその熱変形温度前後(ガラス転移点以
上でも良い)でキャビティに挿入して金型を型締めする
と、目標形状とする形状よりも厚肉の部分には、それが
未だガラス転移点以下の温度であるにもかかわらず、熱
膨張によって樹脂内圧が発生してしまい、キャビティ内
で不均一な圧力分布が生じてしまった。
【0007】そして、このことはガラス転移点以上に加
熱しても容易に均一化することができず、特に、樹脂が
ポリカーボネイトのような複屈折の大きい材料では、レ
ンズ特性等に大きく影響してしまった。そこで請求項1
記載の発明は、密度分布や内部歪が低減されたプラスチ
ック母材を予め用意することにより、このプラスチック
母材を金型キャビティに挿入して最終形状に形成したと
きに面転写精度が良好で内部歪の小さい成形品を得るこ
とができるプラスチック成形品の製造方法を提供するこ
とを目的としている。
【0008】請求項2記載の発明は、プラスチック母材
の薄肉部の形状を予め薄く形成されたキャビティによっ
て薄くして最終形状に近づけることにより、プラスチッ
ク母材の加熱・溶融時にキャビティ内に発生する圧力を
均一にすることができ、面転写精度をより一層良好にす
ることができるプラスチック成形品の製造方法を提供す
ることを目的としている。
【0009】請求項3記載の発明は、プラスチック母材
を切削によって目標形状にした後にキャビティ内で溶
融、徐冷することにより、重量ばらつきが発生するのを
防止することができ、面転写精度の安定したプラスチッ
ク成形品の製造方法を提供することを目的としている。
また、アニールされたプラスチック母材の重量を調整す
ることにより、面転写精度が良好で内部歪を小さくする
ことができることに加えて、重量ばらつきが発生するの
を防止することができ、面転写精度のより良好なプラス
チック成形品の製造方法を提供することを目的としてい
る。請求項4記載の発明は、射出成形時に急冷・固化さ
れたプラスチック母材の端部を切削して重量調整を行な
うことにより、加熱溶融時にキャビティ内の圧力を均一
化することができ、面転写精度のより一層良好なプラス
チック成形品の製造方法を提供することを目的としてい
る。
【0010】請求項5記載の発明は、射出成形時に急冷
・固化されたプラスチック母材の薄肉部を切削して重量
調整と同時に形状調整を行なうことにより、加熱溶融時
にキャビティ内の圧力を均一化することができ、面転写
精度のより一層良好なプラスチック成形品の製造方法を
提供することを目的としている。請求項6記載の発明
は、複屈折の大きなプラスチック母材を使用しても内部
歪の小さい成形品を得ることができ、ミラーは当然とし
て厚肉、偏肉のレンズを高精度に得ることができるプラ
スチック成形品の製造方法を提供することを目的として
いる。
【0011】
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
上記課題を解決するために、予め射出成形によって最終
成形品と略同形状に前加工した熱可塑性プラスチック母
材を、射出成形用金型のキャビティと形状および容積が
同等で、少なくとも1つ以上の鏡面を有するキャビティ
を備えた金型に挿入し、該プラスチック母材をそのガラ
ス転移点以上に加熱・溶融させて前記キャビティ内に樹
脂内圧を発生させ、次いで、該樹脂の熱変形温度以下に
なるまで徐冷することにより前記樹脂内圧によってプラ
スチック母材に鏡面を転写するようにしたプラスチック
成形品の製造方法において、前記プラスチック母材とし
て、その熱変形温度−30℃以上で、かつガラス転移点温
度以下の温度でアニールしたものを使用することを特徴
としている。
【0013】請求項2記載の発明は、上記課題を解決す
るために、請求項1記載の発明において、キャビティの
プラスチック母材の薄肉部を形成する部分が、目標とす
る形状よりも薄く形成された射出成形用金型を用いるこ
とを特徴としている。請求項3記載の発明は、上記課題
を解決するために、予め射出成形によって最終成形品と
略同形状に前加工した熱可塑性プラスチック母材を、射
出成形用金型のキャビティと形状および容積が同等で、
少なくとも1つ以上の鏡面を有するキャビティを備えた
金型に挿入し、該プラスチック母材をそのガラス転移点
以上に加熱・溶融させて前記キャビティ内に樹脂内圧を
発生させ、次いで、該樹脂の熱変形温度以下になるまで
徐冷することにより前記樹脂内圧によってプラスチック
母材に鏡面を転写するようにしたプラスチック成形品の
製造方法において、前記プラスチック母材として、その
熱変形温度−30℃以上で、かつガラス転移点温度以下の
温度でアニールしたものを使用し、前記プラスチック母
材を一定の樹脂内圧を発生させるのに必要な目標重量よ
りも重くなるように形成し、次いで、切削によって目標
重量にした後、前記キャビティを備えた金型に挿入した
ことを特徴としている。
【0014】請求項4記載の発明は、上記課題を解決す
るために、請求項3記載の発明において、前記プラスチ
ック母材の端部を切削することを特徴としている。請求
項5記載の発明は、上記課題を解決するために、請求項
3記載の発明において、前記プラスチック母材の薄肉部
を切削したことを特徴としている。請求項6記載の発明
は、上記課題を解決するために、請求項1〜5何れかに
記載の発明において、前記プラスチック母材としてポリ
カーボネイト、ポリスチレン等の複屈折の大きな非晶質
の熱可塑性樹脂を用いることを特徴としている。
【0015】
【0016】
【作用】請求項1記載の発明では、プラスチック母材と
して、その熱変形温度−30℃以上で、かつガラス転移点
温度以下の温度でアニールしたものが使用される。した
がって、密度分布や内部歪が低減されたプラスチック母
材が予め用意されることになり、このプラスチック母材
を金型キャビティに挿入して最終形状に形成したときに
面転写精度が良好で内部歪の小さい成形品が得られる。
【0017】なお、プラスチック母材のアニール温度を
熱変形温度−30℃以上にしたのは、この温度以下にした
場合にアニール時間が長くなり、生産性が低下してしま
うからであり、アニール温度をガラス転移点以下の温度
にしたのは、ガラス転移点以上になると形状変化が生じ
て好ましくないからである。請求項2記載の発明では、
キャビティのプラスチック母材の薄肉部を形成する部分
が、目標とする形状よりも薄く形成された射出成形用金
型が用いられる。
【0018】このようにした理由を説明する。プラスチ
ック母材の端部や薄肉部は、射出成形時後に急冷、固化
される際に成形収縮が小さく、かつ高密度になるため、
プラスチック母材を成形するときの成形条件として、金
型温度をその熱変形温度近傍に近づけ、保圧によってひ
けを防ぎ、急冷、固化の影響を最小にする必要がある。
【0019】ところが、このようにすると、形状や成形
サイクルの点で限度があることから好ましくない。この
急冷、固化される部分は寸法的にも大きく、高密度なた
め、これをキャビティ内で加熱溶融して樹脂内圧を発生
させようとすると、まず、プラスチック母材をキャビテ
ィに挿入した後、型締めし、それを熱変形温度以下に加
熱しただけで熱膨張によって内圧が発生してしまう。
【0020】これをさらに加熱してそのガラス転移点以
上にすると溶融によってひけている厚肉部への樹脂流動
が生じ、一旦圧力の低下が生じた後に再び圧力の上昇が
生じる。但し、この温度域では樹脂は内部圧力の影響も
あって非常に高粘度で歪を充分に緩和できない。したが
って、型締め時にその熱変形温度以下で生じた圧縮歪が
残ることになり、これが面精度を低下させ、内部歪が残
存して内部に複屈折を生じてさせて光学特性を悪化させ
てしまうのである。
【0021】したがって、プラスチック母材の薄肉部を
目標形状よりも薄くなるようにこの部分に対応して薄い
キャビティ形状を有する射出成形用金型を使用すること
により、プラスチック母材の急冷、固化による寸法変動
を補正し、加熱溶融時のキャビティの内圧を均一化して
重量ばらつきが発生するのを防止することができる。こ
の結果、目標形状と同形状のプラスチック母材を得るこ
とができ、面転写精度を向上させることができる。
【0022】請求項3記載の発明では、プラスチック母
材が一定の樹脂内圧を発生させるのに必要な目標重量よ
りも重くなるように形成され、次いで、切削によって目
標重量にされた後、キャビティを備えた金型に挿入され
る。したがって、重量ばらつきが発生することがなく、
面転写精度の安定したプラスチック成形品が得られる。
また、請求項3記載の発明では、プラスチック母材とし
て、その熱変形温度−30℃以上で、かつガラス転移点温
度以下の温度でアニールしたものが使用される。したが
って、面転写精度が良好で内部歪が小さくなり、さら
に、重量ばらつきが発生することのない面転写精度のよ
り良好なプラスチック成形品が得られる。
【0023】請求項4記載の発明は、プラスチック母材
の端部が切削される。この場合にも、請求項2記載の発
明と同様に、プラスチック母材の急冷、固化による寸法
変動が補正され、加熱溶融時のキャビティの内圧を均一
化して重量ばらつきが発生するのを防止することができ
る。この結果、目標形状と同形状のプラスチック母材を
得ることができ、面転写精度を向上させることができ
る。また、この場合には、プラスチック母材の両端部を
切削しているため、該母材が長尺の場合には、型締め時
に該両端部が圧縮されて歪の発生の原因となることがな
い。
【0024】請求項5記載の発明では、プラスチック母
材の薄肉部が切削される。この場合にも、請求項2記載
の発明と同様に、プラスチック母材の急冷、固化に変動
が補正され、加熱溶融時のキャビティの内圧を均一化し
て重量ばらつきが発生するのを防止することができる。
この結果、目標形状と同形状のプラスチック母材を得る
ことができ、面転写精度を向上させることができる。
【0025】請求項6記載の発明では、プラスチック母
材としてポリカーボネイト、ポリスチレン等の複屈折の
大きな非晶質の熱可塑性樹脂が用いられる。したがっ
て、複屈折の大きなプラスチック母材が使用されても内
部歪の小さい成形品が得られ、ミラーは当然として厚
肉、偏肉のレンズが高精度に成形される
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
図1、2は請求項1、2、6何れかに記載の発明に係る
プラスチック成形品の製造方法の一実施例を示す図であ
る。まず、本発明の基本的な考え型について簡単に説明
する。
【0027】本発明のプラスチックの製造方法について
説明すると、予め射出成形によって最終成形品と略同形
状に前加工した熱可塑性プラスチック母材を、射出成形
用金型のキャビティと形状および容積が同等で、少なく
とも1つ以上の鏡面を有するキャビティを備えた金型に
挿入し、該プラスチック母材をそのガラス転移点以上に
加熱・溶融させて前記キャビティ内に樹脂内圧を発生さ
せ、次いで、該樹脂の熱変形温度以下になるまで徐冷す
ることにより前記樹脂内圧によってプラスチック母材に
鏡面を転写するようにしている。
【0028】本実施例では、上記プラスチック母材を成
形するに際し、ポリカーボネイト、ポリスチレン等の複
屈折の大きい非晶質の熱可塑性樹脂からなる溶融樹脂を
射出成形用金型のキャビティに射出・充填した後、急冷
・固化する一般的な射出成形作業を行なう。この際、図
1(a)に示すように、キャビティ1の両端部1a、1b
が中央部に比べて薄くなるように形成された射出形成金
型に溶融樹脂を充填する。すなわち、プラスチック母材
の薄肉部を形成する部分が、目標とする形状よりも薄く
なるように成形された射出金型を用いる。
【0029】そして、このキャビティ1内に溶融樹脂を
射出・充填後にプラスチック母材を熱変形温度−30℃以
上で、かつガラス転移点温度以下の温度でアニールす
る。このアニール時間の目安としては、ポリカーボネイ
トの場合には、熱変形温度が135℃で、ガラス転移点が1
46℃であるため、135℃では8時間、140℃では2時間に
設定する。この目安は、樹脂の種類によって適宜な温
度、時間が変わるのでその樹脂に合わせて設定すれば良
い。
【0030】本実施例では、このようにしてアニールさ
れたプラスチック母材を使用するため、図1(b)に示す
ように密度分布や内部歪が低減されたプラスチック母材
2を予め得ることができ、このプラスチック母材を金型
キャビティに挿入して最終形状に形成したときに面転写
精度が良好で内部歪の小さい成形品を得ることができ
る。なお、プラスチック母材のアニール温度を熱変形温
度−30℃以上にしたのは、この温度以下にした場合にア
ニール時間が非常に長くなり、生産性が低下してしまう
からであり、アニール温度をガラス転移点以下の温度に
したのは、ガラス転移点以上になると形状変化が生じて
好ましくないからである。
【0031】また、プラスチック母材を射出成形するた
めのキャビティ1のプラスチック母材の薄肉部を形成す
る両端部1a、1bが目標とする形状よりも薄く成形さ
れた射出金型を使用しているため、プラスチック母材の
急冷、固化による寸法変動を補正し、加熱溶融時のキャ
ビティの内圧を均一化して重量ばらつきが発生するのを
防止することができる。この結果、目標形状と同形状の
プラスチック母材2を得ることができ、面転写精度を向
上させることができる。
【0032】このようにした理由を説明する。プラスチ
ック母材の端部や薄肉部は、射出成形時後に急冷、固化
される際に成形収縮が小さく、かつ高密度になるため、
プラスチック母材を成形するときの成形条件として、金
型温度をその熱変形温度近傍に近づけ、保圧によってひ
けを防ぎ、急冷、固化の影響を最小にする必要がある。
【0033】ところが、このようにすると、形状や成形
サイクルの点で限度があることから好ましくない。この
急冷、固化される部分は寸法的にも大きく、高密度なた
め、これをキャビティ内で加熱溶融して樹脂内圧を発生
させようとすると、まず、プラスチック母材をキャビテ
ィに挿入した後、型締めし、それを熱変形温度以下に加
熱しただけで熱膨張によって内圧が発生してしまう。こ
のことを図2によって示すと、内部容積が同一なキャビ
ティ3に溶融樹脂を射出・充填すると、図2(b)に示す
ように母材4の両端部の寸法が大きく、高密度になって
しまう。
【0034】そして、これをさらに加熱してそのガラス
転移点以上にすると溶融によってひけている厚肉部への
樹脂流動が生じ、一旦圧力の低下が生じた後に再び圧力
の上昇が生じる。但し、この温度域では樹脂は内部圧力
の影響もあって非常に高粘度で歪を充分に緩和できな
い。したがって、型締め時にその熱変形温度以下で生じ
た圧縮歪が残ることになり、これが面精度を低下させ、
内部歪が残存して内部に複屈折を生じてさせて光学特性
を悪化させてしまうのである。
【0035】したがって、プラスチック母材の薄肉部を
目標形状なるようにこの部分に対応して薄いキャビテ
ィ形状を有する射出成形用金型を使用することにより、
プラスチック母材の急冷、固化による寸法変動を補正
し、加熱溶融時のキャビティの内圧を均一化して重量ば
らつきが発生するのを防止することができる。この結
果、目標形状と同形状のプラスチック母材を得ることが
でき、面転写精度を向上させることができる。
【0036】また、プラスチック母材としてポリカーボ
ネイト、ポリスチレン等の複屈折の大きな非晶質の熱可
塑性樹脂を用いているため、複屈折の大きなプラスチッ
ク母材を使用しても内部歪の小さい成形品を得ることが
でき、ミラーは当然として厚肉、偏肉のレンズを高精度
に成形することができる。なお、複屈折の小さい材料
(例えば、ポリメチルメタクリレート等)でも面精度を向
上させたりより低温(といってもガラス転移点以上)で鏡
面を転写させる場合に、上述したような方法は有効で
ある。
【0037】図3〜7は請求項3、4、5、何れかに
記載の発明に係るプラスチック成形品の製造方法の一実
施例を示す図である。本実施例では、プラスチック母材
の成形方法が上記実施例と異なる特徴を有するのみでそ
の他の製造方法は同様である。本実施例では、重量ばら
つきが発生するのを防止するために、図3(a)、図4
(a)に示すように、プラスチック母材11を一定の樹脂内
圧を発生させるのに必要な目標重量よりも重くなるよう
成形する。この場合には、両端部11a、11bを厚肉に
なるように成形する。なお、このプラスチック母材の成
形時には上述したような温度でアニールを行なう。
【0038】次いで、図4(b)に示すようにキャビティ
からプラスチック母材を取出した後、切削によってプラ
スチック部材11の両端部11a、11bを切削して、図3
(b)に示すように目標重量にした後、上記基本的な成形
方法によってキャビティを備えた金型に挿入して鏡面を
転写する。したがって、本実施例にあっても、射出成形
作業時に成形収縮が小さく、高密度化されて最終成形品
の成形時に内部歪が生じる箇所を除去することができ
る。このため、プラスチック母材の急冷、固化による寸
法変動を補正することができ、加熱溶融時のキャビティ
の内圧を均一化して重量ばらつきが発生するのを防止す
ることができる。この結果、目標形状と同形状のプラス
チック母材を得ることができ、面転写精度を向上させる
ことができる。また、この場合には、プラスチック母材
の両端部を切削しているため、該母材が長尺の場合に
は、型締め時に該両端部が圧縮されて歪の発生の原因と
なることがない。
【0039】また、本実施例の長尺のプラスチック母材
の場合には両端部11a、11bを切削しているが、図5
(a)、図6(a)に示すようなプラスチック母材21、31の
重量が目標重量よりも大となるように端部21a、31a、
31bを予め厚肉に成形した後、図5(b)、図6(b)に示
すようにこの端部21a、31a、31bを切削して目標重量
にした場合にも上述したものと同様の効果を得ることが
できる。また、端部を切削するのではなく、薄肉部を切
削するようにした場合にも同様の効果を得ることができ
る。
【0040】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、密度分布
や内部歪が低減されたプラスチック母材を予め用意する
ことができ、このプラスチック母材を金型キャビティに
挿入して最終形状に形成したときに面転写精度が良好で
内部歪の小さい成形品を得ることができる。
【0041】請求項2記載の発明によれば、キャビティ
のプラスチック母材の薄肉部を形成する部分が、目標と
する形状よりも薄く形成された金型を用いているので、
プラスチック母材の急冷、固化による寸法変動を補正
し、加熱溶融時のキャビティの内圧を均一化して重量ば
らつきが発生するのを防止することができる。この結
果、目標形状と同形状のプラスチック母材を得ることが
でき、面転写精度を向上させることができる。
【0042】請求項3記載の発明によれば、プラスチッ
ク母材を、一定の樹脂内圧を発生させるのに必要な目標
重量よりも重くなるように形成し、次いで、切削によっ
て目標重量にした後、キャビティを備えた金型に挿入し
ているので、重量ばらつきが発生するのを防止して、面
転写精度の安定したプラスチック成形品を得ることがで
きる。また、請求項3記載の発明によれば、プラスチッ
ク母材として、その熱変形温度−30℃以上で、かつガラ
ス転移点温度以下の温度でアニールしたものが使用され
るで、面転写精度を良好にして内部歪を小さくすること
ができ、さらに、重量ばらつきが発生するのを防止して
面転写精度をより良好にすることができる。
【0043】請求項4記載の発明によれば、プラスチッ
ク母材の端部を切削しているため、プラスチック母材の
急冷、固化による寸法変動を補正することができ、加熱
溶融時のキャビティの内圧を均一化して重量ばらつきが
発生するのを防止することができる。この結果、目標形
状と同形状のプラスチック母材を得ることができ、面転
写精度を向上させることができる。また、この場合に
は、プラスチック母材の両端部を切削しているため、該
母材が長尺の場合には、型締め時に該両端部が圧縮され
て歪の発生の原因となることがない。
【0044】請求項5記載の発明によれば、プラスチッ
ク母材の薄肉部を切削しているため、プラスチック母材
の急冷、固化による寸法変動を補正することができ、加
熱溶融時のキャビティの内圧を均一化して重量ばらつき
が発生するのを防止することができる。この結果、目標
形状と同形状のプラスチック母材を得ることができ、面
転写精度を向上させることができる。
【0045】請求項6記載の発明によれば、プラスチッ
ク母材としてポリカーボネイト、ポリスチレン等の複屈
折の大きな非晶質の熱可塑性樹脂を用いているので、複
屈折の大きなプラスチック母材を使用しても内部歪の小
さい成形品を得ることができ、ミラーは当然として厚
肉、偏肉のレンズを高精度に成形することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1、2、6何れかに記載の発明に係るプ
ラスチック成形品の製造方法の一実施例を示す図であ
り、(a)はそのキャビティ形状を示す図、(b)はそのキ
ャビティによって成形されたプラスチック母材を示す図
である。
【図2】(a)は比較のために用いられたキャビティ形状
を示す図、(b)はそのキャビティによって成形されたプ
ラスチック母材を示す図である。
【図3】図3、4、5、何れかに記載の発明に係るプ
ラスチック成形品の製造方法の一実施例を示す図であ
り、(a)は切削前のプラスチック母材の平均重量を示す
図、(b)は切削後のプラスチック母材の平均重量を示す
図である。
【図4】(a)は切削前のプラスチック母材を示す図、
(b)は切削後のプラスチック母材を示す図である。
【図5】(a)は切削前のプラスチック母材の他の態様を
示す図、(b)は切削後のプラスチック母材の他の態様を
示す図である。
【図6】(a)は切削前のプラスチック母材の他の態様を
示す図、(b)は切削後のプラスチック母材の他の態様を
示す図である。
【図7】従来のプラスチック母材の平均重量を示す図で
ある。
【符号の説明】
1 キャビティ 2、11、21、31 プラスチック母材 11a、11b、21a、31a、31b 端部
フロントページの続き (72)発明者 金松 俊宏 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (72)発明者 平野 彰士 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (72)発明者 妹尾 晋哉 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (72)発明者 渡部 順 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (72)発明者 沢田 清孝 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (56)参考文献 特開 昭58−49220(JP,A) 特開 平5−124077(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 45/00 - 45/84

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】予め射出成形によって最終成形品と略同形
    状に前加工した熱可塑性プラスチック母材を、射出成形
    用金型のキャビティと形状および容積が同等で、少なく
    とも1つ以上の鏡面を有するキャビティを備えた金型に
    挿入し、該プラスチック母材をそのガラス転移点以上に
    加熱・溶融させて前記キャビティ内に樹脂内圧を発生さ
    せ、次いで、該樹脂の熱変形温度以下になるまで徐冷す
    ることにより前記樹脂内圧によってプラスチック母材に
    鏡面を転写するようにしたプラスチック成形品の製造方
    法において、 前記プラスチック母材として、その熱変形温度−30℃以
    上で、かつガラス転移点温度以下の温度でアニールした
    ものを使用することを特徴とするプラスチック成形品の
    製造方法。
  2. 【請求項2】キャビティのプラスチック母材の薄肉部を
    形成する部分が、目標とする形状よりも薄く形成された
    射出成形用金型を用いることを特徴とする請求項1記載
    のプラスチック成形品の製造方法。
  3. 【請求項3】予め射出成形によって最終成形品と略同形
    状に前加工した熱可塑性プラスチック母材を、射出成形
    用金型のキャビティと形状および容積が同等で、少なく
    とも1つ以上の鏡面を有するキャビティを備えた金型に
    挿入し、該プラスチック母材をそのガラス転移点以上に
    加熱・溶融させて前記キャビティ内に樹脂内圧を発生さ
    せ、次いで、該樹脂の熱変形温度以下になるまで徐冷す
    ることにより前記樹脂内圧によってプラスチック母材に
    鏡面を転写するようにしたプラスチック成形品の製造方
    法において、前記プラスチック母材として、その熱変形温度−30℃以
    上で、かつガラス転移点温度以下の温度でアニールした
    ものを使用し、 前記プラスチック母材を一定の樹脂内圧
    を発生させるのに必要な目標重量よりも重くなるように
    形成し、次いで、切削によって目標重量にした後、前記
    キャビティを備えた金型に挿入したことを特徴とするプ
    ラスチック成形品の製造方法。
  4. 【請求項4】前記プラスチック母材の端部を切削するこ
    とを特徴とする請求項3記載のプラスチック成形品の製
    造方法。
  5. 【請求項5】前記プラスチック母材の薄肉部を切削した
    ことを特徴とする請求項3記載のプラスチック成形品の
    製造方法。
  6. 【請求項6】前記プラスチック母材としてポリカーボネ
    イト、ポリスチレン等の複屈折の大きな非晶質の熱可塑
    性樹脂を用いることを特徴とする請求項1〜5何れかに
    記載のプラスチック成形品の製造方法。
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