JP3646515B2 - ドラムブレーキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、制動装置に用いられるドラム方式ブレーキ(ドラムブレーキ)に関し、特に、ブレーキドラムおよびブレーキドラムをアクスルに装着するハブに関するものであり、制動時にブレーキドラムの摺動面のゆがみに起因するブレーキジャダーの発生を抑制し、さらにブレーキ鳴きの要因となるブレーキドラムの振動モードを削減し、その結果鳴き発生を低減させるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的なドラムブレーキ構造として図6、図7のようなものがある(実開昭61−146633号公報参照)。即ち、ブレーキドラム01は略円筒状に形成されている。このブレーキドラム01内に一対のブレーキシュー02を対向させて配設し、このブレーキシュー02を図示していない車体に固定されたバッキングプレートに支持するとともに、ブレーキシュー02の外周面には摩擦性能を有する材料で形成したブレーキライニング03を付着する一方、制動時にバッキングプレートに固定されたブレーキホイールシリンダ04によってブレーキシュー02を拡開せしめ、ブレーキシュー02の外周面に付着したブレーキライニング03をブレーキドラム01の摺動面06に接触押圧させ制動力を得るように形成したものである。なお、05はリターンスプリング、07はハブボルト穴、012は車軸である。
【0003】
また、このブレーキドラム01はハブ08によって固定されており、ハブ取付面015を設けた側壁面014の中心に設けられた穴はハブ08装着時に軸中心を合わせるためのはめ合い構造となっている。また、ハブ08にはブレーキドラム01を貫通するハブボルト010が装着されており、このハブボルト010、ホイールナット011によってロードホイール09が装着される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図8に示すように、ブレーキドラム01のハブ取付面015、ハブ08側の合わせ面の平面度が加工精度により微妙に異なるため、ロードホイール09装着時にハブボルト010を締結すると、ブレーキドラム01のハブボルト穴07が軸方向に変形する。これによって側壁面014が歪み、この影響により摺動面06も、図9、図10に示すように歪む。これにより摺動面06の真円度が低下し、ブレーキホイールシリンダ04がブレーキシュー02、ブレーキライニング03を介してブレーキドラム01の摺動面06を押圧する力が変化する。このため制動トルクの変化が起こり車両振動が発生する。これはブレーキジャダーと一般的に言われている現象であり、この現象は乗員に不快感を与える。このブレーキジャダーを抑えるためには、真円度低下代を小さくすることが必要であり、ハブボルト010締結によるブレーキドラム01の変形を側壁面014のみで吸収する事が有効であり、そのためには側壁面014の強度を保証する範囲内で剛性を低くする事が望ましいとされている。
【0005】
このブレーキジャダーの低減を図った例が実開昭61−146633号公報に記載の技術である。これはブレーキドラム01の側壁面014の板厚を部分的に変更することでハブボルト010締結によるブレーキドラム01の歪みを側壁面014に集中させて摺動面06の変形を抑えて対策を行なったものである。
また、この種のドラムブレーキにおいては、制動時にブレーキドラム01の摺動面06とブレーキライニング03との間の摩擦抵抗により、前記摺動面06に生じる摩擦振動がブレーキドラム01を振動させ、ブレーキドラム01の固有振動を励振する結果、不快ないわゆるブレーキ鳴きを発生させる。
【0006】
発明者の研究により、乗員に不快感を与えるブレーキ鳴きの発生に、ドラムブレーキにおいては図11に示すような側壁面014が変形するブレーキドラム振動モードが要因となっていることが確認された。これは側壁面014の剛性が弱いために、この部位に歪みがたまる様な変形をする振動モードである。この振動モードを抑えるためには側壁面014の剛性を上げることが必要となる。
しかし、前述のようにブレーキジャダーを抑えるためには側壁面014の剛性を弱くすることが必要なため、ブレーキ鳴きとジャダー性能の両立は困難である、という問題があった。
そこで本発明においては、ブレーキドラムの側壁面の剛性配分の適正化を図ることにより、ブレーキ鳴き、ジャダーの双方を抑制させ、上記問題点を解決することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的達成のために、請求項1記載の発明は、車両のアクスルの車軸に車軸回転方向に回転可能に固定されたハブと、該ハブに固定されたブレーキドラムと、前記アクスルに固定されたバッキングプレートと、該バッキングプレートに配置されたブレーキシューと、前記バッキングプレートに配置され前記ブレーキシューを前記ブレーキドラムに押圧するアクチュエータと、を備えたドラムブレーキにおいて、前記ブレーキドラムのハブ取付面であって、かつハブ取付位置の外周側に、環状の突起部を形成したことを特徴とする。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のドラムブレーキにいて、前記ハブ取付面上の突起部の内周側に環状の溝を設けたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のドラムブレーキにおいて、前記ハブ取付面上において、突起部より内周側の肉厚を、外周側の肉厚よりも薄くしたことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかの項に記載のドラムブレーキにおいて、前記突起部とハブとで、はめ合い構造を形成したことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
<実施の形態1>
図1、図2は本発明の実施の形態1を示す図である。
車両のアクスルの車軸12に車軸回転方向に回転可能に固定されたハブ8と、該ハブ8に固定されたブレーキドラム1と、前記アクスルに固定されたバッキングプレートと、該バッキングプレートに配置されたブレーキシュー2と、前記バッキングプレートに配置され前記ブレーキシュー2を前記ブレーキドラム1に押圧するブレーキホイールシリンダ4と、を備えた、ドラムブレーキにおいて、前記ブレーキドラム1のハブ取付面15であって、かつハブ取付位置より外周側に、環状の突起部13を設けたドラムブレーキである。
【0010】
本実施の形態においては、図1、図2に示すようにブレーキドラム1は略円筒状に形成されており、ブレーキドラム1内の一対のブレーキシュー2を対向させて配設し、このブレーキシュー2を図示していない車体に固定されたバッキングプレートに支持するとともに、ブレーキシュー2の外周面には摩擦性能を有する材料で形成したブレーキライニング3を付着する一方、制動時にバッキングプレートに固定されたブレーキホイールシリンダ4によってブレーキシュー2を拡開せしめ、ブレーキシュー2の外周面に付着したブレーキライニング3をブレーキドラム1の摺動面6に接触押圧させ制動力を得るように形成したものである。なお、5はリターンスプリング、7はハブボルト穴である。
【0011】
次に実施の形態1の作用を説明する。
ブレーキドラム1のハブ取付面15およびハブ側面の平面度は加工精度により微妙に異なり、ロードホイール9装着時にハブボルト10を締結すると、ブレーキドラム1のハブボルト10が軸方向に変形する。この時、側壁面14に設けた突起部13により、この部位の剛性が高くなるため、突起部13よりも剛性の低い内周側が歪みやすく突起部13よりも外周側の歪みは抑えられる。従って、摺動面6の真円度は低下せず、摺動面6を押圧する力は一定となり、制動トルクの変化は発生しないため、ブレーキジャダーの発生は抑制される。
【0012】
また、この突起部13は側壁面14が変形するブレーキドラム1の振動モードに対して剛性として働き、これらモードの共振周波数の上昇およびブレーキ鳴きが問題となる可聴域でのモード数の低減が図られ、その結果としてブレーキ鳴きが抑制される。
【0013】
<実施の形態2>
図3は請求項2記載の発明に対応した実施の形態2を示す図である。本実施の形態2は、実施の形態1に対し、側壁面14の突起部13よりも内周側に環状の溝を設けたドラムブレーキである。
【0014】
次に実施の形態2の作用を説明する。
実施の形態2においては、図3に示すように実施の形態1に対して突起部13よりも内周側に環状の溝を設けたことにより、その部位の剛性が低下するため、突起部13の内周側と外周側との剛性の差がさらに大きくなるため、内周側に歪みが発生したときの外周部の歪みは、実施の形態1に対してより小さく抑えられる。従って、実施の形態1に対し、より効果的にブレーキジャダーの発生は抑制される。
また、実施の形態1で述べたように、突起部13は側壁面14が変形するブレーキドラム1の振動モードに対して剛性として働き、これらモードの共振周波数の上昇、およびブレーキ鳴きが問題となる可聴域でのモード数の低減が図られ、その結果としてブレーキ鳴きが抑制される。
【0015】
<実施の形態3>
図4は請求項3記載の発明に対応した実施の形態3を示す図である。本実施の形態4は実施の形態2を基に、突起部13より内周側の肉厚を、外周側の肉厚よりも薄くしたドラムブレーキである。
【0016】
次に実施の形態3の作用を説明する。
実施の形態3においては、図4に示すように実施の形態2を基に、突起部13に対し外周側の板厚よりも内周側の板厚を薄くすることにより、突起部13に対し外周側と内周側との剛性の差がさらに大きくなるため、内周側に歪みが発生したときの外周部の歪みは、実施の形態2に対してより小さく抑えられる。従って、実施の形態2に対し、より効果的にブレーキジャダーの発生は抑制される。
【0017】
<実施の形態4>
図5は請求項4記載の発明に対応した実施の形態4を示す図である。本実施の形態4は実施の形態1に対し、ブレーキドラム1のハブ取付面15であって、かつハブ取付位置より外周側に環状に設けた突起部13とハブ側面とにより、軸中心を合わせるためのはめ合い構造を形成したドラムブレーキである。
【0018】
次に実施の形態4の作用を説明する。
実施の形態4においては、図5に示すようにブレーキドラム側壁面14に設けた突起部13を用いたはめ合い構造とすることにより、はめ合いによるハブ8との拘束により突起部13における剛性をより高くすることが可能である。このため、突起部13よりも内周側の強度を低下させることができないような場合であっても、外周側との剛性の差を大きくとることが可能であり、内周側に歪みが発生しても外周側の歪みは抑えることが可能となる。
従って、摺動面6の真円度は低下せず、摺動面6を押圧する力は一定となり、制動トルクの変化は発生しないため、ブレーキジャダーの発生は抑制される。
また側壁面14に設けた突起部13および突起部13におけるはめ合い構造は側壁面14が変形するブレーキドラム1の振動モードに対して剛性として働き、これらモードの共振周波数の上昇およびブレーキ鳴きが問題となる可聴域でのモード数の低減が図られ、その結果、ブレーキ鳴きが抑制される。
【0019】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明のドラムブレーキにあっては、ブレーキドラムのハブ取付面であって、かつハブ取付位置の外周側に、環状の突起部を形成したため、この突起部よりも外周側の歪みが抑えられ、制動トルクの変化が発生しないために、ブレーキジャダーの発生を抑制することができるという効果が得られる。
また、ブレーキドラムの振動モードの共振周波数の上昇および可聴域でのモード数の低減が図られ、ブレーキ鳴きを抑制することができるという効果が得られる。
請求項2または3記載のドラムブレーキにあっては、前記突起部の内周側に環状の溝を設け、または、突起部からみて外周側よりも内周側の板厚を薄くする構成としたため、さらに効果的にブレーキジャダーの発生およびブレーキ鳴きを抑制することができるという効果が得られる。
請求項4記載のドラムブレーキにあっては、前記突起部とハブとではめ合い構造を形成することにより、突起部における剛性をより高くすることができ、突起部よりも内周側の剛性を低下させることができないような場合においても、外周側との剛性の差を大きくとることが可能であるため、ブレーキジャダーの発生およびブレーキ鳴きを抑制することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のブレーキドラム構造を示す図である。
【図2】実施の形態1のブレーキドラム・ハブの断面図である。
【図3】実施の形態2のブレーキドラム・ハブの断面図である。
【図4】実施の形態3のブレーキドラム・ハブの断面図である。
【図5】実施の形態4のブレーキドラム・ハブの断面図である。
【図6】一般的なドラムブレーキ構造を示す図である。
【図7】一般的なブレーキドラム・ハブ・ロードホイールの断面図である。
【図8】ハブ取付面の平面度のずれの例を示す図である。
【図9】摺動面の歪みの例を示す図である。
【図10】摺動面の歪みの例を示す図である。
【図11】鳴きの要因となるブレーキドラム振動モードを示す図である。
【符号の説明】
1 ブレーキドラム
2 ブレーキシュー
3 ブレーキライニング
4 ブレーキホイールシリンダ
5 リターンスプリング
6 摺動面
7 ハブボルト穴
8 ハブ
9 ロードホイール
10 ハブボルト
11 ホイールナット
12 車軸
13 突起部
14 側壁面
15 ハブ取付面
Claims (4)
- 車両のアクスルの車軸に車軸回転方向に回転可能に固定されたハブと、
該ハブに固定されたブレーキドラムと、
前記アクスルに固定されたバッキングプレートと、
該バッキングプレートに配置されたブレーキシューと、
前記バッキングプレートに配置され前記ブレーキシューを前記ブレーキドラムに押圧するアクチュエータと、を備えたドラムブレーキにおいて、
前記ブレーキドラムのハブ取付面であって、かつハブ取付位置の外周側に、環状の突起部を形成したことを特徴とするドラムブレーキ。 - 前記ハブ取付面上の突起部の内周側に環状の溝を設けたことを特徴とする請求項1記載のドラムブレーキ。
- 前記ハブ取付面上において、突起部より内周側の肉厚を、外周側の肉厚よりも薄くしたことを特徴とする請求項1または2記載のドラムブレーキ。
- 前記突起部とハブとで、はめ合い構造を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの項に記載のドラムブレーキ。
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JP08562398A JP3646515B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | ドラムブレーキ |
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1998
- 1998-03-31 JP JP08562398A patent/JP3646515B2/ja not_active Expired - Fee Related
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