JP3646147B2 - 紙塗工用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔料及び水性バインダーを含有する紙塗工用組成物に関するものであり、さらに詳しくは、紙に対して優れた印刷適性及び印刷効果を付与することができる紙塗工用組成物を提供しようとするものである。なお、本明細書で用いる「紙」という語は広義の意味であって、狭義の意味でいう紙のほか、いわゆる板紙をも包含する。
【0002】
【従来の技術】
顔料と水性バインダーを主体とした塗工組成物を紙に塗布し、乾燥、カレンダー処理などの必要な処理を施して得られる塗工紙は、その優れた印刷効果などの特長から、商業印刷物や雑誌・書籍などに広く用いられているが、品質要求の高度化、印刷の高速化などに伴って、塗工紙の品質改良努力が今もなお続けられている。とりわけ印刷の多くを占めるオフセット印刷においては、湿し水の影響下でのインキ受理性、ウェットピックなどの耐水性、及び輪転印刷での耐ブリスター性の改良・向上が、業界の重要な課題となっている。
【0003】
従来よりこうした課題に対して、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、特公昭 44-11667 号公報や特公昭 59-32597 号公報に示されるようなポリアミドポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂などを、耐水化剤や印刷適性向上剤として添加する手法が知られている。しかし、これら従来の耐水化剤や印刷適性向上剤は、いずれも有効な長所を有する反面、一部の特性において重大な欠点又は効果の不十分さが認められることから、実用上必ずしも満足しうるものではない。
【0004】
例えば、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂や尿素−ホルムアルデヒド樹脂などのいわゆるアミノプラスト樹脂は、作業時の、あるいは塗工紙からのホルムアルデヒドの発生が多いのみならず、インキ受理性や耐ブリスター性の改良効果がほとんど得られないことや、塗工組成物のpHが高くなると耐水化効果も発揮されにくくなることなどの問題がある。一方、ポリアミドポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂は、耐水性の向上と同時にインキ受理性及び耐ブリスター性の向上に有効ではあるが、それらの向上度合いは、近年の塗工紙品質の高度化要求に対して必ずしも十分なものとはいいがたかった。
【0005】
そこで、これらとは異なるタイプの紙塗工用樹脂の開発が進められており、例えば、特開昭 61-195124号公報や特開昭 61-215794号公報には、アミンとエピハロヒドリンの反応生成物であって、その10重量%濃度の水溶液の粘度が10cP以下である低分子量アミン−エピハロヒドリン樹脂の使用が開示されている。前者の公報では、分子量150以下のモノアミンを全アミン中10モル%以上含有させるとされ、かかるモノアミンとして具体的には、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エタノールアミン及びジエタノールアミンが例示されている。また後者の公報には、低分子量アミン−エピハロヒドリン樹脂として、モノアミン−エピハロヒドリン樹脂、脂肪族ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びアンモニア−エピハロヒドリン樹脂が挙げられており、これらのうちモノアミン−エピハロヒドリン樹脂の例としては、ジメチルアミン−エピクロロヒドリン樹脂及びベンジルアミン−エピクロロヒドリン樹脂が挙げられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの公報に開示されたアミン−エピハロヒドリン樹脂を、顔料及び水性バインダーを主体とする紙塗工用組成物に少量添加することにより、塗工紙のインキ受理性などをある程度高めることができるが、その後の塗工紙品質に対する要求の高度化に伴い、より一層の高品質化が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、塗工紙品質に対する要求に応え、紙に対して高度のインキ受理性及び耐水性が付与できるなど、塗工紙の高品質化を図ることができる紙塗工用組成物を提供することにある。本発明者らは、かかる課題解決のために鋭意研究を行った結果、特定の成分を反応させて得られる化合物を、顔料及び水性バインダーとともに含有してなる組成物が、紙に対して優れた性能を付与することを見出し、さらには、この化合物を特定の水溶性樹脂と組み合わせて用いれば、紙に対して一層優れた性能が付与されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、顔料(I) 及び水性バインダー(II)を含有するとともに、少なくとも、各アルキルが3〜6個の炭素原子を有するジアルキルアミン(a) と、エピハロヒドリン及びα,γ−ジハロ−β−ヒドリンから選ばれるハロヒドリン類(b) とを反応させて得られるアミン−ハロヒドリン反応物(A) を含む樹脂成分(III) を含有する紙塗工用組成物を提供するものである。
【0009】
アミン−ハロヒドリン反応物(A) は、上記ジアルキルアミン(a) 及びハロヒドリン類(b) の二成分のみを反応させたものでもよく、また他の成分を追加的に反応させたものでもよい。後者の場合、ジアルキルアミン(a) 及びハロヒドリン類(b) に加えて、さらに他のモノアミンを用いることができる。また、アルキレンジアミン及びポリアルキレンポリアミンから選ばれるポリアミン(c) を用いることができ、特にジアルキルアミン(a) とハロヒドリン類(b) を反応させたあと、さらに上記ポリアミン(c) を反応させたものが好ましい。
【0010】
アミン−ハロヒドリン反応物(A) は、それ単独で樹脂成分(III) とし、上記顔料(I) 及び水性バインダー(II)と組み合わせて紙の塗工に用いることができるほか、さらに他の樹脂成分と組み合わせて用いることもできる。例えば、少なくとも、アルキレンジアミン類及びポリアルキレンポリアミン類から選ばれるポリアミン(c) 、尿素類(d) 並びに、アルデヒド類、エピハロヒドリン、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン、グリシジル化合物及びイソシアネート類から選ばれる架橋性化合物(e) の三成分を反応させて得られる水溶性樹脂(B) と組み合わせ、アミン−ハロヒドリン反応物(A) と水溶性樹脂(B) との混合物又は反応物の形で用いることができる。
【0011】
また、水溶性樹脂(B) は、上記ポリアミン(c) 、尿素類(d) 及び架橋性化合物(e) に加えて、さらに他の成分を反応させたものであってもよい。例えば、二塩基性カルボン酸系化合物(f) などを反応させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
紙塗工用組成物の成分となる顔料(I) は、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、白色無機顔料及び白色有機顔料が使用できる。白色無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、炭酸カルシウム(重質又は軽質)、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、酸化チタンなどが挙げられる。また白色有機顔料としては、例えば、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。これらの顔料は、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0013】
水性バインダー(II)も紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、水溶性のバインダーや水乳化系のバインダーが使用できる。水溶性バインダーとしては、例えば、酸化でんぷんやリン酸エステル化でんぷんをはじめとする無変性の、又は変性されたでんぷん類、ポリビニルアルコール、カゼインやゼラチンをはじめとする水溶性プロテイン、カルボキシメチルセルロースをはじめとする変性セルロース類などが挙げられる。また、水乳化系バインダーとしては、例えば、カルボキシル基含有スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、メチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。これらの水性バインダーは、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0014】
本発明において、樹脂成分(III) として用いられるアミン−ハロヒドリン反応物(A) は、ジアルキルアミン(a) とハロヒドリン類(b) とを反応させることにより得られる。
【0015】
アミン−ハロヒドリン反応物(A) の製造に用いるジアルキルアミン(a) は、式CmH2m+1−NH−CnH2n+1(ここに、m及びnは互いに独立に3〜6の整数を表す)の構造を有し、アルキル基は分岐していても構わないが、通常はジ−n−アルキルアミンが好ましく用いられる。具体的には、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミンなどが挙げられる。これらのジアルキルアミン(a) は、1種のみならず、2種以上併用することもできる。これらのジアルキルアミン(a) のなかでも、各アルキルが4〜6個の炭素原子を有するものが好ましく、とりわけジブチルアミンが最も好ましい。
【0016】
また所望により、本発明で規定するジアルキルアミン(a) とともに他のモノアミンを併用することもできるが、本発明の目的を有効に発揮せしめるためには、通常、全モノアミン中ジアルキルアミン(a) が50モル%以上となるようにするのが好ましい。併用される他のモノアミンは、本発明で規定する以外のジアルキルアミン、又はトリアルキルアミンであるのが好ましく、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどが例示される。
【0017】
ジアルキルアミン(a) と反応させるハロヒドリン類(b) は、エピハロヒドリン又はα,γ−ジハロ−β−ヒドリンである。これらハロヒドリン類(b) のうち、エピハロヒドリンは、次の一般式で示される。
【0018】
【0019】
式中、Xはハロゲン原子を表し、wは1、2又は3を表す。エピハロヒドリンの好ましい例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられる。
【0020】
ハロヒドリン類(b) のうちのα,γ−ジハロ−β−ヒドリンは、次の一般式で示される。
【0021】
【0022】
式中、Y及びZはハロゲン原子を表す。かかるα,γ−ジハロ−β−ヒドリンとしては、例えば、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどが挙げられる。
【0023】
これらのハロヒドリン類(b) は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。ハロヒドリン類(b) は、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミン1モルに対して、0.5〜2モルの範囲で、好ましくは0.6〜1.5モルの範囲で用いられる。ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) との反応は、通常30〜100℃程度、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは70〜90℃の温度で、1〜10時間程度行われる。この反応は通常、水溶液中で行われ、無触媒でも進行するが、アンモニアや苛性ソーダのような塩基性触媒を存在させてもよい。アンモニアを存在させた場合、このアンモニアもハロヒドリン類(b) と反応することがあるが、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとアンモニアの合計量に対して、ジアルキルアミン(a) が50モル%以上となるようにしておけば、本発明の効果を損なうことはない。
【0024】
ジアルキルアミン(a) とハロヒドリン類(b) の反応は、ジアルキルアミン(a) 中のアミノ基とハロヒドリン類(b) 中の官能基との付加反応が主体となり、ジアルキルアミン(a) とハロヒドリン類(b) の使用割合などによって、反応生成物の構造は多岐にわたり、またある程度の分子量分布を持った低重合体となるので、その構造は特定できないが、一次的には次のような構造の化合物が主として生成する。
【0025】
【0026】
ここで、m及びnは前記の意味を表し、wは、エピハロヒドリンを用いた場合は1、2又は3を表し、α,γ−ジハロ−β−ヒドリンを用いた場合は1を表す。さらには、上記化合物中の3級アミノ基にハロヒドリン類(b) が付加又は縮合して、そのアミノ基が4級化した化合物も一部生成し、また、ハロヒドリン類(b) 中の官能基であるエポキシ基やハロゲン原子が一部残存した構造のものも生成する。ジアルキルアミン(a) に加えて他のモノアミンを用いた場合も、上記に準じた反応が進行する。いずれにしても、アミン−ハロヒドリン反応物(A) は、ハロヒドリン類(b) に由来する架橋基を介して、アミン分子が複数個架橋した低重合体となる。
【0027】
アミン−ハロヒドリン反応物(A) は、上記のジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) に加えて、さらにポリアミン(c) を反応させることができる。このポリアミン(c) は、1級アミノ基を2個有し、両者を、途中に2級アミノ基が存在していてもよいアルキレンで結合した化合物である。その具体例としては、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのようなアルキレンジアミン類及び、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、3−アザヘキサン−1,6−ジアミン、4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンのようなポリアルキレンポリアミン類が挙げられる。これらのなかでは、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンが工業的に有利である。これらのポリアミン(c) は、それぞれ単独で用いることも、また2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0028】
ポリアミン(c) は、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンに対して、通常、0.01〜1モル倍の範囲で、好ましくは0.1〜0.5モル倍の範囲で用いられる。このポリアミン(c) は、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) との反応の段階で存在させてもよく、この場合は、上記ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) との反応のところで説明した条件で反応を行えばよい。ただし、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンをポリアミン(c) と一緒にハロヒドリン類(b) と反応させる場合は、ジアルキルアミン(a) のアルキル基による立体障害のために、ハロヒドリン類(b) は優先的にポリアミン(c) と反応しやすく、ジアルキルアミン(a) とハロヒドリン類(b) との反応が起こりにくくなる。そこでポリアミン(c) を追加の反応成分とする場合は、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) とを反応させたあと、ポリアミン(c) を反応させるのが好ましい。このようにポリアミン(c) を最後に反応させて得られるアミン−ハロヒドリン反応物(A) は、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとポリアミン(c) を一緒にハロヒドリン類(b) と反応させたものに比べ、紙塗工用組成物とした場合のカラー適性の向上、またインキ受理性や耐水性などの塗工紙物性の向上に一層有効である。
【0029】
ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) との反応物にさらにポリアミン(c) を反応させる場合、この反応は、通常50〜100℃程度、好ましくは60〜80℃の温度で、1〜10時間程度行われる。ここで、反応温度が50℃を下回ると、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) との反応物が、ポリアミン(c) と反応しにくくなり、その結果、得られるアミン−ハロヒドリン反応物(A) は、未反応のポリアミン(c) を多く含むことになり、経時的に架橋反応が徐々に進行するため、その安定性に問題が出てくるほか、それを紙塗工用組成物とした場合に、カラー適性の向上効果や塗工紙の耐水性向上効果があまり大きくならない。この反応も、通常水溶液中で行われ、無触媒で行ってもよいし、アンモニアや苛性ソーダのような塩基性触媒の存在下で行ってもよい。ポリアミン(c) は、先に説明したジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) との反応物中に残存するハロヒドリン類(b) 由来のエポキシ基やハロゲン原子と反応して、さらに架橋構造を伸ばすことになる。
【0030】
以上のように、アミン−ハロヒドリン反応物(A) は、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) との反応物であっても、またさらにポリアミン(c) を反応させたものであっても、ある程度の分子量分布を持った低重合体となるが、その分子量の目安として、その70重量%水溶液の25℃における粘度が1〜1,000 cPとなるもの、特に5〜500cPとなるものが好ましい。
【0031】
こうして得られるアミン−ハロヒドリン反応物(A) は、それ単独で、樹脂成分(III) とし、顔料(I) 及び水性バインダー(II)と組み合わせて紙の塗工に用いることができるほか、他の樹脂成分、とりわけ、特定の水溶性樹脂(B) との混合物又は反応物として用いることもできる。ここで用いる水溶性樹脂(B) は、アルキレンジアミン類及びポリアルキレンポリアミン類から選ばれるポリアミン(c) 、尿素類(d) 並びに、アルデヒド類、エピハロヒドリン、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン、グリシジル化合物及びイソシアネート類から選ばれる架橋性化合物(e) の少なくとも三成分を反応させることにより、得られる。
【0032】
水溶性樹脂(B) の製造に用いるポリアミン(c) は、1級アミノ基を2個有し、両者を、途中に2級アミノ基が存在していてもよいアルキレンで結合した化合物であって、アミン−ハロヒドリン反応物(A) を製造する際の任意成分として説明したポリアミンと同様のものであることができる。もちろん、水溶性樹脂(B) の製造に用いるポリアミン(c) は、アミン−ハロヒドリン反応物(A) を構成するポリアミンと同じであっても異なっていてもよい。なかでも、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンが工業的には有利である。水溶性樹脂(B) の製造に際し、ポリアミン(c) は、それぞれ単独で用いることも、2種以上組み合わせて用いることもできる。また所望により、このポリアミン(c) とともに、モノアミン又はアンモニアを少量併用することもできる。
【0033】
尿素類(d) は通常、式−NHC(=Q)NHRで示される原子団を有する尿素及びその誘導体であり、ここにQは酸素又は硫黄を表し、Rは水素又は炭素数1〜4程度のアルキルを表す。尿素類(d) の具体例としては、例えば、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素などを挙げることができる。尿素類(d) も、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。工業的見地からは、尿素が好ましく用いられる。尿素類(d) は、ポリアミン(c) 中の1級アミノ基及び2級アミノ基の合計量に対して、一般的には0.3〜1モル倍の範囲で、好ましくは0.5〜1モル倍の範囲で用いられる。
【0034】
架橋性化合物(e) は、アルデヒド類、エピハロヒドリン、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン、グリシジル化合物又はイソシアネート類である。これらのうちアルデヒド類は、分子中に−CHO基を少なくとも1個有する化合物であればよく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドやプロピオンアルデヒドのようなアルキルアルデヒド類、グリオキザール、プロパンジアールやブタンジアールのようなアルキルジアルデヒド類などが挙げられる。工業的には、ホルムアルデヒド及びグリオキザールが有利である。
【0035】
架橋性化合物(e) のうち、エピハロヒドリン及びα,γ−ジハロ−β−ヒドリンは、アミン−ハロヒドリン反応物(A) を製造する際の成分として説明したハロヒドリン類(b) と同様のものであることができる。もちろん、水溶性樹脂(B) の製造に用いるエピハロヒドリン又はα,γ−ジハロ−β−ヒドリンは、アミン−ハロヒドリン反応物(A) を構成するハロヒドリン類(b) と同じであっても異なっていてもよい。
【0036】
架橋性化合物(e) のうちのグリシジル化合物は通常、分子内にグリシジル基を少なくとも2個有するものである。その具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテルやプロピレングリコールジグリシジルエーテルのようなアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルやポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのようなポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、レゾルシンジグリシジルエーテルやビスフェノールAジグリシジルエーテルのような芳香族ジグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンジ−又はトリ−グリシジルエーテル、ソルビトールジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−グリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジ−、トリ−又はテトラ−グリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
架橋性化合物(e) のうちのイソシアネート類も通常、分子内にイソシアナト基を少なくとも2個有するものである。その具体例としては、イソホロンジイソシアネート、3−(2−イソシアナトシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、 トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートのような脂環式イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネートとも呼ばれる)のような脂肪族イソシアネート類及び、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナトフェニル)チオフォスフェート、フェニレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートのような芳香族イソシアネート類が挙げられる。
【0038】
これらのアルデヒド類、エピハロヒドリン、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン、グリシジル化合物及びイソシアネート類は、架橋性化合物(e) として、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。もちろん、アルデヒド類、エピハロヒドリン、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン、グリシジル化合物及びイソシアネート類のうちで、異なる種類に属するものを2種以上併用することもできる。架橋性化合物(e) は、ポリアミン(c) 1モルに対して、一般的には0.1〜2モルの範囲で、好ましくは0.2〜1モルの範囲で用いられる。
【0039】
ポリアミン(c) 、尿素類(d) 及び架橋性化合物(e) の少なくとも三成分を反応させることにより、水溶性樹脂(B) が得られる。この水溶性樹脂(B) は、上記の三成分に加えて、さらに他の成分を反応させたものであってもよい。例えば、二塩基性カルボン酸系化合物(f) や、活性水素を少なくとも1個有する脂環式アミン及び脂環式エポキシ化合物から選ばれる脂環式化合物(g) を反応させることができる。
【0040】
二塩基性カルボン酸系化合物(f) は、分子内に2個のカルボキシル基を有するもの、又はそれから誘導されるものであって、例えば、遊離酸、エステル類、酸無水物などであることができる。二塩基性カルボン酸系化合物(f) は、脂肪族、芳香族、脂環式のいずれであってもよい。
【0041】
遊離の二塩基性カルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸のような脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸、及び、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、シクロヘキサン−1,3−又は−1,4−ジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、3−又は4−メチルテトラハイドロフタル酸、3−又は4−メチルヘキサハイドロフタル酸のような脂環式ジカルボン酸が挙げられる。なお、脂環式基が不飽和結合を有し、その不飽和結合の位置が明示されていない場合、その不飽和結合の位置は任意であると理解されるべきであり、以下の説明においても同様である。
【0042】
二塩基性カルボン酸系化合物(f) は、これら遊離酸のほか、そのエステル類、酸無水物などであってもよい。エステル類の例としては、上記遊離酸と低級アルコールとのモノ−又はジ−エステル類、上記遊離酸とグリコール類とのポリエステル類などが挙げられる。また酸無水物の具体例としては、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラハイドロ無水フタル酸、ヘキサハイドロ無水フタル酸、3−又は4−メチルテトラハイドロ無水フタル酸、3−又は4−メチルヘキサハイドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0043】
二塩基性カルボン酸とグリコール類との反応生成物であるポリエステルも有利に使用されるが、なかでも遊離カルボキシル基を有するものが好ましい。ここで用いるグリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールのようなアルキレングリコール類、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオールのようなシクロアルキレングリコール類、ブテンジオール、オクテンジオールのようなアルケニレングリコール類、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのようなポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物などを例示することができる。二塩基性カルボン酸とグリコール類との反応にあたって、カルボン酸過剰モル比で反応させれば、分子末端に遊離カルボキシル基を有するポリエステルが得られる。
【0044】
これらの二塩基性カルボン酸系化合物(f) は、それぞれ単独で用いても、また2種以上組み合わせて用いてもよい。二塩基性カルボン酸系化合物(f) は、ポリアミン(c) 1モルに対して、一般的には0.1〜1モルの範囲で、好ましくは0.2〜0.8モルの範囲で用いられる。
【0045】
脂環式化合物(g) のうち、活性水素を少なくとも1個有する脂環式アミンは、通常、環炭素数が5〜12程度の脂環式環、好ましくはシクロヘキサン環を有するとともに、1級又は2級のアミノ基を少なくとも1個有する化合物であり、ここでアミノ基は、脂環式環に直接結合していてもよいし、またアルキレンのような連結基を介して間接的に脂環式環と結合していてもよい。活性水素を少なくとも1個有する脂環式アミンの具体例としては、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、1,3−又は1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルビシクロヘキシル、イソホロンジアミン、1,3−、1,2−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノプロピルシクロヘキシルアミン、1,5−又は2,6−ビス(アミノメチル)オクタハイドロ−4,7−メタノインデン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、 ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4′−オキシビス(シクロヘキシルアミン)、4,4′−スルホンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、2,4′−又は4,4′−ジアミノ−3,3′,5,5′−テトラメチルジシクロヘキシルメタン、メンタンジアミン、N−メチル−1,3−ジアミノシクロヘキサン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノシクロヘキサン、3−N−メチルアミノ−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどが挙げられる。
【0046】
脂環式化合物(g) のうち脂環式エポキシ化合物は、通常、環炭素数が5〜12程度の脂環式環、好ましくはシクロヘキサン環を有するとともに、さらにエポキシ基を有する化合物であり、ここでエポキシ基は、脂環式環内の隣接する炭素原子間で形成されていても、また脂環式環の外に形成されていてもよい。脂環式環の外にあるエポキシ基は、脂環式環に直接結合することも、また例えば、グリシジル基やグリシジルオキシ基、グリシジルオキシカルボニル基のような形で、脂環式環に間接的に結合することもできる。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、シクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−2,4−ジオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、ジグリシジルヘキサハイドロフタレート、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。
【0047】
これらの脂環式化合物(g) を用いる場合は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。脂環式化合物(g) としてはもちろん、脂環式アミンと脂環式エポキシ化合物を併用することもできる。脂環式化合物(g) は、ポリアミン(c) 1モルに対して、一般には1モル以下、好ましくは0.5モル以下の割合で用いられる。
【0048】
水溶性樹脂(B) は、以上のようなポリアミン(c) 、尿素類(d) 及び架橋性化合物(e) の三成分を反応させることにより、あるいは任意にさらに他の成分、例えば二塩基性カルボン酸系化合物(f) 及び/又は脂環式化合物(g) を反応させることにより得られる。
【0049】
好適な水溶性樹脂(B) は、例えば、ポリアミン(c) 、尿素類(d) 、架橋性化合物(e) 、及び所望なら脂環式化合物(g) を反応させることにより、得ることができる。各成分の反応順序は任意であり、特に制限されないが、例えば、ポリアミン(c) と尿素類(d) とを脱アンモニア反応させ、次いで架橋性化合物(e) を反応させるという態様を採ることができる。所望により脂環式化合物(g) を用いる場合は、上記のいずれかの段階で反応させることができる。
【0050】
ポリアミン(c) と尿素類(d) との脱アンモニア反応においては、尿素類(d) を一括して仕込んで反応させてもよいし、また尿素類(d) の一部を最初に仕込んでポリアミン(c) と脱アンモニア反応させたあと、残りの尿素類(d) を加えて再度脱アンモニア反応を行うという、二段階の反応を採用することもできる。脱アンモニア反応は、通常80〜180℃程度、好ましくは90〜160℃の温度で、発生するアンモニアを系外に除去しながら、1〜18時間程度行われる。
【0051】
また、その後の架橋性化合物(e) との反応において、架橋性化合物(e) としてアルデヒド類を用いる場合は、酸性下で反応を行うか、又は一旦アルカリ性下で反応させたあと、さらに酸性下で反応を行うのが好ましい。架橋性化合物(e) としてエピハロヒドリン又はα,γ−ジハロ−β−ヒドリンを用いる場合、この反応は通常、固形分濃度が10〜80重量%程度の水溶液中、中性ないしアルカリ性、例えばpH7以上、好ましくはpH8〜12の範囲で、30〜90℃程度の温度にて、1〜10時間程度行われる。 架橋性化合物(e) としてグリシジル化合物又はイソシアネート類を用いる場合、この反応は通常、固形分濃度が10〜80重量%程度の水溶液中、30〜100℃程度、好ましくは40〜90℃の温度で、1〜10時間程度、好ましくは3〜8時間程度行われる。 架橋性化合物(e) を2種以上用いる場合、これら2種以上の架橋性化合物(e) は、一緒に反応させてもよいし、化合物毎に反応させてもよい。化合物毎に反応させる場合は、それぞれの反応毎に上記の条件を採用するのが好ましい。
【0052】
脂環式化合物(g) を追加の反応成分とする場合は、例えば、ポリアミン(c) と尿素類(d) との脱アンモニア反応の際に、脂環式化合物(g) を存在させて反応させることもできるし、ポリアミン(c) と尿素類(d) との反応でポリアミノポリ尿素を生成させたあと、架橋性化合物(e) との反応の前に脂環式化合物(g) を反応させることもできるし、またポリアミノポリ尿素を架橋性化合物(e) と反応させる段階で、脂環式化合物(g) を存在させ、反応させることもできる。脂環式化合物(g) が脂環式アミンである場合は、予めこの脂環式アミンを尿素類(d) の部分量と脱アンモニア縮合させておき、これをさらにポリアミン(c) 及び残りの量の尿素類(d) と反応させ、次に架橋性化合物(e) と反応させることもできる。尿素類(d) と脂環式アミンとの脱アンモニア縮合反応は、通常80〜180℃程度、好ましくは90〜160℃の温度で、発生するアンモニアを系外に除去しながら2〜18時間程度行われる。また、脂環式化合物(g) が脂環式エポキシ化合物である場合は、予めこの脂環式エポキシ化合物をポリアミン(c) と付加反応させ、これを尿素類(d) と反応させたあと、架橋性化合物(e) を反応させることもできる。ポリアミン(c) と脂環式エポキシ化合物の付加反応は、通常30〜100℃程度、好ましくは40〜90℃の温度で、1〜10時間程度行われる。
【0053】
別の好適な水溶性樹脂(B) は、 ポリアミン(c) 、尿素類(d) 、架橋性化合物(e) 、二塩基性カルボン酸系化合物(f) 、及び所望なら脂環式化合物(g) を反応させることにより、得ることができる。ここでも各成分の反応の順序は任意であり、特に制限されないが、例えば、ポリアミン(c) 、尿素類(d) 及び二塩基性カルボン酸系化合物(f) を、任意の順序で脱アンモニア反応及び脱水又は脱アルコール縮合反応に供して、ポリアミドポリ尿素を生成させ、その後、架橋性化合物(e) を反応させるという態様を採ることができる。所望により脂環式化合物(g) を用いる場合は、上記のいずれかの段階で反応させることができる。
【0054】
この場合のポリアミン(c) 、尿素類(d) 及び二塩基性カルボン酸系化合物(f) の反応においても、尿素類(d) を一括して仕込んで反応させることができ、また尿素類(d) の一部を最初に仕込んで脱アンモニア反応を行い、後の段階で残りの尿素類(d) を加えて再度脱アンモニア反応を行うという、二段階の反応を採用することもできる。例えば、ポリアミン(c) と二塩基性カルボン酸系化合物(f) を脱水又は脱アルコール縮合させてポリアミドを生成させ、次に尿素類(d) を加えて脱アンモニア反応を行う方法、尿素類(d) の一部をポリアミン(c) と脱アンモニア反応させたあと、二塩基性カルボン酸系化合物(f) を脱水又は脱アルコール縮合させ、さらに残りの尿素類(d) を加えて脱アンモニア反応を行う方法、ポリアミン(c) 、尿素類(d) 及び二塩基性カルボン酸系化合物(f) を同時に仕込んで脱アンモニア反応及び脱水又は脱アルコール縮合を同時に行う方法、ポリアミン(c) 及び二塩基性カルボン酸系化合物(f) に、尿素類(d) の一部を加えて脱水又は脱アルコール縮合及び脱アンモニア反応を行い、さらに残りの尿素類(d) を加えて脱アンモニア反応を行う方法などが採用できる。
【0055】
ここで、脱水又は脱アルコール縮合反応は、通常120〜200℃程度、好ましくは130〜180℃の温度で、生成する水又はアルコールを系外に除去しながら、2〜10時間程度行われる。ポリアミン(c) 、尿素類(d) 及び二塩基性カルボン酸系化合物(f) を同時に反応させる場合は、通常80〜200℃程度、好ましくは90〜160℃の温度で、発生するアンモニア及び水又はアルコールを系外に除去しながら、2〜18時間程度行われる。脱アンモニア反応を単独で行う場合は、先に述べた脱アンモニア反応の条件に準じて行うことができる。その後の架橋性化合物(e) の反応は、先に述べたのと同様に行うことができ、また、所望により脂環式化合物(g) を用いる場合も、先に述べた方法に準じていずれかの段階で行うことができる。
【0056】
こうして得られる水溶性樹脂(B) は、アミン−ハロヒドリン反応物(A) との混合物として又は反応物として、本発明による紙塗工用組成物の成分とすることができる。水溶性樹脂(B) をアミン−ハロヒドリン反応物(A) と反応させる場合、この反応は通常、20〜100℃程度の温度で、1〜10時間程度行われる。この場合、水溶性樹脂(B) を構成する架橋性化合物(e) は、アミン−ハロヒドリン反応物(A) と反応する時点で水溶性樹脂(B) 中に組み込まれていればよい。例えば、アミン−ハロヒドリン反応物(A) との反応系に導入する前に、予め架橋性化合物(e) を構成成分とする水溶性樹脂(B) を形成させておいてもよいし、また例えば、アミン−ハロヒドリン反応物(A) との反応系内で、架橋性化合物(e) を構成成分とする水溶性樹脂(B) を形成させてもよい。後者の場合には、架橋性化合物(e) を用いることなく、又はその最終必要量の一部を用いて、少なくともポリアミン(c) 及び尿素類(d) を反応させたのち、アミン−ハロヒドリン反応物(A) 及び残りの量の架橋性化合物(e) を添加した系内でさらに反応を進行させて、水溶性樹脂(B) を形成させるとともに、アミン−ハロヒドリン反応物(A) とも反応させることができる。
【0057】
本発明の紙塗工用組成物を調製するにあたり、顔料(I) と水性バインダー(II)の組成割合は、用途や目的に応じて決定され、当業界で一般に採用されている組成と特に異なるところはない。両者の好ましい組成割合は、顔料(I) 100重量部に対して、水性バインダー(II)が1〜200重量部程度、より好ましくは5〜50重量部程度である。アミン−ハロヒドリン反応物(A) を含む樹脂成分(III) は、顔料(I) 100重量部に対し、固形分として0.05〜5重量部程度、さらには0.1〜2重量部程度配合するのが好ましい。アミン−ハロヒドリン反応物(A) に加えて水溶性樹脂(B) を用いる場合、混合物とするときは両者の合計固形分重量として、また反応物とするときはその反応物の固形分重量として、それぞれ顔料(I) 100重量部に対し、0.05〜5重量部程度、好ましくは0.1〜2重量部程度配合すればよい。水溶性樹脂(B) をアミン−ハロヒドリン反応物(A) との混合物又は反応物として用いる場合は、アミン−ハロヒドリン反応物(A) と水溶性樹脂(B) の合計量を基準に、アミン−ハロヒドリン反応物(A) の量を1〜90重量%程度の範囲、さらには3〜80重量%程度の範囲とするのが好ましい。
【0058】
紙塗工用組成物を調製するにあたり、顔料(I) 、水性バインダー(II)並びに、樹脂成分(III) としてのアミン−ハロヒドリン反応物(A) 及び任意に用いられる水溶性樹脂(B) の添加混合順序は任意であり、特に制限されないが、例えば以下のような方法を採ることができる。アミン−ハロヒドリン反応物(A) を樹脂成分(III) として単独で用いる場合には、このアミン−ハロヒドリン反応物(A) を顔料(I) 及び水性バインダー(II)に添加混合する方法、このアミン−ハロヒドリン反応物(A) を予め顔料(I) 又は水性バインダー(II)に添加混合しておき、これを残りの成分と配合する方法などが採用できる。アミン−ハロヒドリン反応物(A) と水溶性樹脂(B) の混合物を樹脂成分(III) とする場合は、両者を予め混合したのち、これを顔料(I) 及び水性バインダー(II)に添加混合する方法、アミン−ハロヒドリン反応物(A) と水溶性樹脂(B) を個々に、顔料(I) 及び水性バインダー(II)に添加混合する方法、アミン−ハロヒドリン反応物(A) 及び水溶性樹脂(B) の一方又は双方を、顔料(I) 又は水性バインダー(II)に添加混合しておき、塗工組成物調製の段階で全成分を混合する方法などが採用できる。また、アミン−ハロヒドリン反応物(A) を水溶性樹脂(B) と反応させて樹脂成分(III) とする場合は、この反応物を顔料(I) 及び水性バインダー(II)に添加混合する方法、この反応物を予め顔料(I) 又は水性バインダー(II)に添加混合しておき、これを残りの成分と配合する方法などが採用できる。
【0059】
本発明の紙塗工用組成物には、その他の成分として、例えば、分散剤、粘度・流動性調整剤、消泡剤、防腐剤、潤滑剤、保水剤、また染料や有色顔料のような着色剤などを、必要に応じて配合することができる。
【0060】
本発明の紙塗工用組成物は、従来より公知の方法、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、キャストコーターなど、公知の各種コーターを用いる方法により、紙基体に塗布される。その後必要な乾燥を行い、さらに必要に応じてスーパーカレンダーなどで平滑化処理を施すことにより、塗工紙を製造することができる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、含有量又は使用量を表す%及び部は、特に断らないかぎり重量基準である。また、粘度及びpHは、25℃において測定した値である。まず、本発明に従うアミン−ハロヒドリン反応物(A) を合成した例を示す。例中で用いたジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン及びジヘキシルアミンは、すべてアルキル基が直鎖のものである。
【0062】
合成例1:
温度計、還流冷却器及び攪拌棒を備えた四つ口フラスコに、 ジブチルアミン129.2g(1モル)及び水95.0gを仕込み、内温を70℃に保って、エピクロロヒドリン92.5g(1モル)をゆっくりと滴下し、その後内温70℃で1時間反応させた。次に硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、pH7、固形分濃度70%、粘度74cPのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0063】
合成例2:
合成例1で用いたのと同様の容器に、ジブチルアミン129.2g(1モル)及び水95.0gを仕込み、 内温を90℃に保って、エピクロロヒドリン92.5g(1モル)をゆっくりと滴下し、その後内温90℃で1時間反応させた。次に硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、pH7、固形分濃度70%、粘度96cPのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0064】
合成例3:
合成例1で用いたのと同様の容器に、ジブチルアミン64.6g(0.5モル)及び水51.5gを仕込み、 内温を70℃に保って、エピクロロヒドリン55.5g(0.6モル)をゆっくりと滴下し、その後内温70℃で1時間反応させた。そこへジエチレントリアミン20.6g(0.2モル)及び水8.8gを仕込み、内温70℃でさらに4時間反応させた。次に、硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、pH7、固形分濃度70%、粘度250cPのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0065】
合成例4:
合成例1で用いたのと同様の容器に、ジブチルアミン103.4g(0.8モル)ジエチルアミン51.2g(0.7モル)及び水125.7gを仕込み、内温を70℃に保って、エピクロロヒドリン138.8g(1.5モル)をゆっくりと滴下し、その後内温70℃で4時間反応させた。そこへペンタエチレンヘキサミン69.7g(0.3モル)及び水29.9gを仕込み、内温70℃でさらに4時間反応させた。次に硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、pH7、固形分濃度70%、粘度310cPのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0066】
合成例5:
合成例1で用いたのと同様の容器に、ジブチルアミン103.4g(0.8モル)及び水82.4gを仕込み、 内温を70〜75℃に保って、エピクロロヒドリン88.8g(0.96モル)をゆっくりと滴下し、その後内温70〜75℃で1時間反応させた。次に内温を50℃に下げて、水5.0g及びトリエチレンテトラミン11.7g(0.08モル)を仕込み、内温を再び上昇させて70〜75℃でさらに8時間反応させた。反応終了後、硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、pH7、固形分濃度70%、粘度235cPのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0067】
合成例6:
合成例1で用いたのと同様の容器に、ジエチルアミン36.6g(0.5モル)、ジプロピルアミン50.6g(0.5モル)及び水81.0gを仕込み、内温を70℃に保って、エピクロロヒドリン101.8g(1.1モル)をゆっくりと滴下し、その後、内温70℃で4時間反応させた。次に、エチレンジアミン18.0g(0.3モル)及び水7.7gを仕込み、内温70℃でさらに4時間反応させた。反応終了後、硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、pH7、固形分濃度70%、粘度290cPのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0068】
合成例7:
合成例1で用いたのと同様の容器に、ジヘキシルアミン111.2g(0.6モル)及び水76.2gを仕込み、内温を70℃に保って、エピクロロヒドリン66.6g(0.72モル)をゆっくりと滴下し、その後、内温70℃で8時間反応させた。次に硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、pH7、固形分濃度70%、粘度121cPのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0069】
合成例8:
合成例1で用いたのと同様の容器に、ジヘキシルアミン111.2g(0.6モル)及び水76.2gを仕込み、内温を70℃に保って、エピクロロヒドリン66.6g(0.72モル)をゆっくりと滴下し、その後、内温70℃で8時間反応させた。そこへ、ジエチレントリアミン12.4g(0.12モル)及び水5.3gを仕込み、内温70℃でさらに4時間反応させた。次に、硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、pH7、固形分濃度70%、粘度395cPのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0070】
合成例9:
合成例1で用いたのと同様の容器に、ジアミルアミン125.8g(0.8モル)及び水85.7gを仕込み、内温を70℃に保って、エピクロロヒドリン74.0g(0.8モル)をゆっくりと滴下し、その後、内温70℃で4時間反応させた。次に、硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、pH7、固形分濃度70%、粘度108cPのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0071】
次に、水溶性樹脂(B) を合成した例を示す。
【0072】
合成例10:
温度計、還流冷却器及び攪拌棒を備えた四つ口フラスコに、ジエチレントリアミン82.6g(0.8モル)及びアジピン酸43.8g(0.3モル)を仕込み、内温140〜160℃で5時間加熱して、発生する水を系外に除去しながら、脱水アミド化反応を行った。次に内温を80℃に下げて、尿素108.1g(1.8モル)を仕込み、さらに不揮発分が80%となるように水55.9gで希釈してから、内温90〜110で12時間脱アンモニア反応を行った。その後、内温を80℃に下げ、37%ホルマリン48.7g(0.6モル)及び水58.5gを仕込んで、内温95〜105℃で1時間メチロール化反応を行った。次に内温を30℃以下に下げ、硫酸でpHを4.0に調整したあと、内温70℃で4時間メチレン化反応を行って、濃度60%、pH6.8、粘度383cPの水溶性樹脂の水溶液を得た。
【0073】
合成例11:
合成例10で用いたのと同様の容器に、ジエチレントリアミン61.9g(0.6モル)、エチレンジアミン24.0g(0.4モル)及び尿素120.1g(2モル)を仕込み、さらに不揮発分が80%となるように水51.5gで希釈してから、内温90〜110℃で12時間脱アンモニア反応を行った。その後内温を70℃に下げ、水122.8gを仕込んでから、エピクロロヒドリン55.5g(0.6モル)をゆっくりと滴下し、次に内温70℃で8時間反応させた。さらに、硫酸と水でpH及び濃度を調整して、濃度60%、pH7.1、粘度122cPの水溶性樹脂の水溶液を得た。
【0074】
合成例12:
合成例10で用いたのと同様の容器に、ペンタエチレンヘキサミン185.9g(0.8モル)、グルタル酸26.4g(0.2モル)及び尿素60.1g(1モル)を仕込み、内温140〜160℃で5時間加熱して、発生する水及びアンモニアを系外に除去しながら、脱水アミド化反応及び脱アンモニア反応を同時に行った。次に内温を80℃に下げて、尿素120.1g(2モル)を仕込み、さらに不揮発分が80%となるように水87.8gで希釈してから、内温90〜110℃で12時間脱アンモニア反応を行った。その後、水205.6gを仕込み、さらにレゾルシンジグリシジルエーテル88.9g(0.4モル)をゆっくりと滴下してから、内温70〜80℃で8時間反応させた。次に硫酸と水でpH及び濃度を調整して、濃度60%、pH7.1、粘度240.1 cP の水溶性樹脂の水溶液を得た。
【0075】
次に、アミン−ハロヒドリン反応物(A) を水溶性樹脂(B) と反応させた例を示す。
【0076】
合成例13:
温度計、還流冷却器及び攪拌棒を備えた四つ口フラスコに、 ジブチルアミン129.2g(1モル)及び水106.9gを仕込み、内温を70℃に保って、エピクロロヒドリン120.3g(1.3モル)をゆっくりと滴下し、その後内温70℃で4時間反応させた。得られた反応物水溶液の142.6g、合成例11と同様に合成したpH調整前の約60%濃度の水溶性樹脂の水溶液48.2g、エチレンジアミン7.2g(0.12モル)及び水64.2gを、上記と同様の四つ口フラスコに仕込み、70℃で4時間反応させた。次に硫酸と水でpH及び濃度を調整して、濃度60%、pH7.0、粘度390cPの樹脂成分水溶液を得た。
【0077】
合成例14:
合成例13で用いたのと同様の容器に、合成例4と同様に合成したpH調整前の約70%濃度のアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液42g、合成例10で合成した60%濃度の水溶性樹脂の水溶液196g、37%ホルマリン8.1g(0.1モル)及び水1.23gを仕込み、95〜105℃で1時間メチロール化反応を行った。次いで、内温を30℃以下に下げ、硫酸でpHを4.0に調整したあと、内温70℃で4時間メチレン化反応を行った。最後にpH及び濃度を調整して、濃度60%、pH6.9、粘度414cPの樹脂成分水溶液を得た。
【0078】
合成例15:
合成例13で用いたのと同様の容器に、合成例6と同様に合成したpH調整前の約70%濃度のアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液48g、合成例12と同様に合成したpH調整前の約60%濃度の水溶性樹脂の水溶液224g及び水8gを仕込み、内温70℃で8時間反応させた。次に、硫酸と水でpH及び濃度を調整して、濃度60%、pH7.1、粘度263cPの樹脂成分水溶液を得た。
【0079】
合成例16:
合成例13で用いたのと同様の容器に、合成例8と同様に合成したpH調整前の約70%濃度のアミンーエピハロヒドリン反応物の水溶液54.3g、 合成例10で合成した60%濃度の水溶性樹脂の水溶液254g、 37%ホルマリン16.2g(0.2モル)及び水14.3gを仕込み、95〜105℃で1時間メチロール化反応を行った。次に内温を30℃以下に下げ、硫酸でpHを4.0に調整したあと、内温70℃で4時間メチレン化反応を行った。最後にpH及び濃度を調整して、濃度60%、pH7.0、粘度490cPの樹脂成分水溶液を得た。
【0080】
合成例17:
合成例13で用いたのと同様の容器に、合成例8と同様に合成したpH調整前の約70%濃度のアミンーエピハロヒドリン反応物の水溶液27g、合成例11と同様に合成したpH調整前の約60%濃度の水溶性樹脂の水溶液126g及び水4.5gを仕込み、70℃で8時間反応させた。次に硫酸と水でpH及び濃度を調整して、濃度60%、pH7.0、粘度420cPの樹脂成分水溶液を得た。
【0081】
次に、以上の合成例で得られた各反応物ないし樹脂を用いて、紙塗工用組成物を調製し、評価した例を示す。以下の例では、表1に示す組成のマスターカラーを用いた。
【0082】
【表1】
【0083】
(表1の脚注)
*1 ウルトラホワイト90: 米国エンゲルハードミネラルズ社製のクレー
*2 カービタル90: 富士カオリン(株)製の炭酸カルシウム
*3 スミレーズレジン DS-10: 住友化学工業(株)製のポリアクリル酸系顔料分散剤
*4 SN−307: 住化エービーエス・ラテックス(株)製のスチレン−ブタジエン系ラテックス
*5 王子エースA: 王子ナショナル(株)製の酸化でんぷん
*6 配合比: 固形分重量による割合
【0084】
実施例1〜9:
表1に示したマスターカラーへ、その中の顔料100部あたり、合成例1〜9で得たそれぞれのアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を、その中の固形分が0.5部の割合となるように添加した。それぞれの組成物を、総固形分60%、pH約9となるように、各々水と10%苛性ソーダ水溶液で調整して、塗工組成物とした。得られたそれぞれの塗工組成物について、以下の方法で物性値を測定し、その結果を表2に示した。
【0085】
(1) pH:
ガラス電極式水素イオン濃度計〔東亜電波工業(株)製〕を用い、調製直後の塗工組成物のpHを25℃にて測定した。
【0086】
(2) 粘度:
B型粘度計〔(株)東京計器製、BL型〕を用い、60rpm 、25℃で、調製直後の塗工組成物の粘度を測定した。
【0087】
上で得られたそれぞれの塗工組成物を、米坪量80g/m2の上質紙の片面に、ワイヤーロッドを用いて塗工量が14g/m2となるように塗布した。塗布後ただちに、120℃にて30秒間熱風乾燥し、次いで温度20℃、相対湿度65%にて16時間調湿し、さらに温度60℃、線圧60kg/cmの条件で2回スーパーカレンダー処理を施して、塗工紙を得た。こうして得た塗工紙を耐水性及びインキ受理性の試験に供し、試験結果を表2に示した。なお、試験方法は以下のとおりである。
【0088】
(3) 耐水性:ウェットピック法(WP法)
RI試験機(明製作所製)を使用し、コート面を給水ロールで湿潤させたあと印刷し、紙むけ状態を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
耐水性 (劣)1〜5(優)
【0089】
(4) インキ受理性
(4-1) A 法
RI試験機を使用して、塗工面を給水ロールで湿潤させたあと印刷し、インキの受理性を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
インキ受理性 (劣)1〜5(優)
【0090】
(4-2) B 法
RI試験機を使用して、インキに水を練り込みながら印刷し、インキ受理性を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
インキ受理性 (劣)1〜5(優)
【0091】
【表2】
【0092】
実施例10:
合成例1で得たアミン−エピハロヒドリン反応物の70%水溶液と合成例10で得た水溶性樹脂の60%水溶液とを、固形分換算でアミン−エピハロヒドリン反応物が20%、水溶性樹脂が80%となるように混合し、 さらに水と硫酸でpH及び濃度の調整を行って、濃度60%、pH7.0、粘度320cPの樹脂成分水溶液とした。この樹脂成分水溶液を、表1に示した組成のマスターカラーへ、その中の顔料100部あたり樹脂成分水溶液中の固形分が0.5部の割合となるように添加した。
【0093】
実施例11〜28:
アミン−エピハロヒドリン反応物及び水溶性樹脂の種類及び量を、それぞれ表3及び表4に示すように変更した以外は、実施例10と同様にして、これらの表に示す物性を有する樹脂成分水溶液を調製し、さらに実施例10と同様の割合でマスターカラーへの添加を行った。
【0094】
以上の実施例10〜28で得られたそれぞれの組成物につき、実施例1〜9と同様の方法で総固形分濃度及びpHの調整を行ったあと、それぞれの塗工組成物を用いて塗工紙を作成し、同様の試験を行った。結果を表3及び表4に示した。なお、表3及び表4では、アミン−エピハロヒドリン反応物を単に「アミン反応物」と表示し、その量は、このアミン−エピハロヒドリン反応物と水溶性樹脂の混合物である樹脂成分水溶液中の、総固形分に対するアミン−エピハロヒドリン反応物の重量割合を表し、次式により算出される値である。
【0095】
アミン−エピハロヒドリン反応物の量=〔アミン−エピハロヒドリン反応物重量/(アミン−エピハロヒドリン反応物重量+水溶性樹脂重量)〕×100(%)
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
実施例29〜33:
表1に示したマスターカラーへ、その中の顔料100部あたり、合成例13〜17で得たそれぞれの樹脂成分水溶液を、その中の固形分が0.5部の割合となるように添加した。得られたそれぞれの組成物につき、実施例1〜9と同様の方法で固形分濃度及びpHの調整を行ったあと、それぞれの塗工組成物を用いて塗工紙を作成し、同様の試験を行った。結果を表5に示した。
【0099】
【表5】
【0100】
比較合成例1:
温度計、還流冷却器及び攪拌棒を備えた四つ口フラスコに、50%ジメチルアミン水溶液88.1g(ジメチルアミン1モル含有)及び水14.5gを仕込み、内温を25〜30℃に保って、エピクロロヒドリン92.5g(1モル)をゆっくりと滴下し、その後内温25〜30℃で10時間保温した。次に硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、濃度70%、粘度70cP、pH7.0のアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0101】
比較合成例2:
比較合成例1で用いたのと同様の容器に、50%ジメチルアミン水溶液79.3g(ジメチルアミン0.9モル含有)及び水1.1gを仕込み、内温を25〜30℃に保って、エピクロロヒドリン55.5g(0.6モル)をゆっくりと滴下し、その後内温25〜30℃で10時間保温した。次に硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、濃度70%、粘度60cP、pH7.0のアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0102】
比較合成例3:
比較合成例1で用いたのと同様の容器に、 トリエチレンテトラミン75.7g(0.4モル)、ジエチルアミン14.6g(0.2モル)、及び水164.3gを仕込み、内温を30℃に保って、エピクロロヒドリン74.0g(0.8モル)をゆっくりと滴下し、その後内温30℃で12時間保温した。次に硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、濃度50%、粘度140cP、pH7.0のアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0103】
比較合成例4:
比較合成例1で用いたのと同様の容器に、ペンタエチレンヘキサミン92.9g(0.4モル)、50%ジメチルアミン水溶液13.5g(ジメチルアミン0.15モル含有)及び水148.4gを仕込み、内温を30℃に保って、エピクロロヒドリン55.5g(0.6モル)をゆっくりと滴下し、その後、内温30℃で12時間保温した。次に硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、濃度50%、粘度110cP、pH7.0のアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0104】
比較合成例5:
比較合成例1で用いたのと同様の容器に、 ジエチレントリアミン41.3g(0.4モル)、50%ジメチルアミン水溶液13.5g(ジメチルアミン0.15モル含有)及び水96.8gを仕込み、内温を70℃に保って、エピクロロヒドリン55.5g(0.6モル)をゆっくりと滴下し、その後、内温70℃で4時間保温した。次に硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、濃度50%、粘度425cP、pH7.0のアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0105】
比較合成例6:
比較合成例1で用いたのと同様の容器に、 ジエチレントリアミン41.3g(0.4モル)、50%ジメチルアミン水溶液13.5g(ジメチルアミン0.15モル含有)及び水96.8gを仕込み、内温を30℃に保って、エピクロロヒドリン55.5g(0.6モル)をゆっくりと滴下し、その後、内温30℃で4時間保温した。次に、硫酸と水でpH及び濃度の調整を行って、濃度50%、粘度98cP、pH7.0のアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を得た。
【0106】
比較例1〜7:
表1に示したマスターカラーへ、その中の顔料100部あたり、比較合成例1〜6で得たアミン−エピハロヒドリン反応物の水溶液を、それぞれ固形分が0.5部の割合となるように添加して、比較例1〜6の組成物を調製した。また比較例7では、表1に示したマスターカラーをそのまま用いた。それぞれの組成物につき、先の実施例と同様の方法で固形分濃度及びpHの調整を行ったあと、それぞれの塗工組成物を用いて塗工紙を作成し、同様の試験を行った。結果を表6に示した。
【0107】
【表6】
【0108】
【発明の効果】
本発明により、特定のアミン−ハロヒドリン反応物を配合した紙塗工用組成物は、インキ受理性及び耐水性に優れるなど、種々の改良された性能を示す塗工紙を与える。また、このアミン−ハロヒドリン反応物を特定の水溶性樹脂と組み合わせ、混合物又は反応物として用いることにより、一層改良された性能を示す塗工紙が得られる。
Claims (6)
- (I) 顔料、
(II) 水性バインダー、並びに
(III) 少なくとも、各アルキルが3〜6個の炭素原子を有するジアルキルアミン(a) と、エピハロヒドリン及びα,γ−ジハロ−β−ヒドリンから選ばれるハロヒドリン類(b) の二成分を反応させて得られるアミン−ハロヒドリン反応物(A) を含む樹脂成分
を含有することを特徴とする紙塗工用組成物。 - アミン−ハロヒドリン反応物(A) が、ジアルキルアミン(a) を含むモノアミンとハロヒドリン類(b) を反応させたあと、さらにアルキレンジアミン及びポリアルキレンポリアミンから選ばれるポリアミン(c) を反応させて得られる請求項1記載の組成物。
- ジアルキルアミン(a) がジブチルアミンである請求項1又は2記載の組成物。
- 樹脂成分(III) がさらに、少なくとも、アルキレンジアミン類及びポリアルキレンポリアミン類から選ばれるポリアミン(c) 、尿素類(d) 並びに、アルデヒド類、エピハロヒドリン、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン、グリシジル化合物及びイソシアネート類から選ばれる架橋性化合物(e) の三成分を反応させて得られる水溶性樹脂(B) を含み、アミン−ハロヒドリン反応物(A) と水溶性樹脂(B) との混合物又は反応物である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
- 水溶性樹脂(B) が、ポリアミン(c) 、尿素類(d) 及び架橋性化合物(e) に加えて、二塩基性カルボン酸系化合物(f) を反応させて得られる請求項4記載の組成物。
- 二塩基性カルボン酸系化合物(f) が、遊離酸、エステル又は酸無水物である請求項5記載の組成物。
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