JP3644975B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真感光体に関し、更に詳しくは優れた耐摩耗特性を有する電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方法としては、カールソンプロセスやその種々の変形プロセスなどが知られており、複写機やプリンターなどに広く使用されている。このような電子写真方法に用いられる感光体の中でも、有機系の感光材料を用いたものが、安価、大量生産性、無公害性等をメリットとして、近年使用され始めている。ただ、有機電子写真感光体には耐久性の問題があり、その高耐久化(主に機械的な耐久性−耐摩耗性)が重要なポイントになっている。
【0003】
そこで、電子写真感光体の耐摩耗性向上のために、その最上層に摩耗特性の優れた保護層を設けることが、従来から試みられており、保護層のバインダー樹脂に、熱あるいは光硬化性の樹脂を用いることが知られている。しかし、光硬化性樹脂を使用した場合は、紫外光を照射するため、感光体の劣化が避けられない。また、熱硬化性樹脂の使用については、さまざまな樹脂が検討されているが、汎用性、下層との接着性、硬化反応の種類の多様性といった点から、数多くのエポキシ樹脂が提案されている(例えば特開昭56−51749号公報)。しかしながら、提案されているものは、半導体封止用に用いられている硬化剤との組み合わせの例が多く、そのうち殆どが2官能の硬化剤であるため、形成される樹脂の耐摩耗性はあまり高くない。更に、硬化剤あるいはバインダーの硬化型官能基の未反応部が電子写真特性に悪影響を及ぼす場合も多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、感光体の高耐久化(耐摩耗性向上)のために、感光体の最上層に保護層を設けることが試みられているが、出来上がった感光体の電子写真特性は満足のいくものが得られることが少ない。特に、保護層のバインダーとして硬化型材料を用いた場合には、硬化剤あるいはバインダーの硬化型官能基の未反応部による電子写真特性への悪影響が生じることが多い。
【0005】
従って、本発明は、上記従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、満足される機械的耐久性−耐摩耗性を有する電子写真感光体を提供することを、その目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定のベンゼンカルボン酸無水物を硬化剤として用いたエポキシ樹脂からなる保護層を設けることにより、電子写真特性に及ぼす悪影響を最小限に押さえ、満足のゆく機械的耐久性−耐摩耗性のある感光体を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明によれば、導電性支持体上に光導電層を有し、更に該光導電層上に保護層を有する電子写真感光体において、該保護層中に少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質と、プレニト酸無水物、ピロメリト酸無水物及びメリト酸無水物から選ばれた少なくとも一種のベンゼンカルボン酸無水物との硬化反応物を含有してなることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0008】
本発明の電子写真感光体は、プレニト酸無水物、ピロメリト酸無水物及びメリト酸無水物から選ばれた少なくとも一種のベンゼンカルボン酸無水物からなる硬化剤を用いたエポキシ樹脂保護層を最表層に設けたことから、満足される機械的耐久性−耐摩性を有するものとなる。良好な感光体が得られる理由については明確でないが、硬化剤の官能基の反応性などによるものではないかと推定される。
【0009】
本発明における保護層は、少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質と前記のベンゼンカルボン酸無水物との硬化反応物を主成分として構成される。この場合、少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質としては、分子内にエポキシ基を2個以上含有する化合物であればどの様なものであっても良い。その具体例としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、これらのハロゲン化物、これらの水素添加物等が挙げられる。
【0010】
なお、これらのエポキシ化合物は、そのエポキシ当量があまり小さいものであると、製膜硬化後の膜の耐摩耗特性が悪いので、エポキシ当量が1000以上のものを使用するのが好ましい。この理由としては、硬化後の主鎖の絡み合いがエポキシ当量が1000以下のものであると小さくなってしまうためと考えられる。また、硬化の際、エポキシ基と硬化剤の官能基のモル比が釣り合わないと、さまざまな不具合点を生じる。例えば、エポキシ基が官能基の2倍以上存在すると、硬化不充分な膜になり、充分な耐摩耗性が得られないし、逆にエポキシ基が官能基の0.3倍以下であると、硬化不良あるいは過剰官能基による電気特性への悪影響が出てくる恐れが強い。従って、0.3<エポキシ基/官能基<2の範囲であることが望ましい。
【0011】
なお、保護層形成のための硬化条件としては特に限定されるものでないが、光導電層を構成する材料が熱に弱い場合には、分解等の劣化を起す温度以下で硬化させる必要がある。そのため、予備的な試験を行なって硬化条件を決定することが望ましい。
【0012】
次に、図面を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明において使用する感光体の構成例を示す模式断面図であり、導電性支持体11上に電荷発生層21と電荷輸送層23と保護層17の積層で構成されている。また、図2は、別の構成例を示す模式断面図であり、導電性支持体11上に電荷輸送層23と電荷発生層21と保護層17の積層で構成されている。更に、図3は、別の構成例を示す模式断面図であり、導電性支持体11上に光導電層15を設けたものである。この場合、光導電層が電荷発生物質と電荷輸送物質のいずれをも同時に含む単層の構成となっており、その上に保護層17が積層されている。
ここで、いずれの場合にも導電性支持体11とそのすぐ上の光導電層15等との間に下引き層(図示せず)を設けることが可能であり、また光導電層15等とそのすぐ上の保護層17との間に中間層(図示せず)を設けることも可能である。
【0013】
導電性支持体11としては、体積抵抗1010・Ωcm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状若しくは円筒状のプラスチック、紙等に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらをD.I.,I.I.,押出し、引抜き等の工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩等で表面処理した管等を使用することができる。
【0014】
本発明における光導電層は、単層型でも積層型でもよいが、ここでは説明の都合上、まず積層型について述べる。
電荷発生層21は、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。バインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独で又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0015】
電荷発生物質としては、公知の材料で用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系材料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料等が挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0016】
電荷輸送層23は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし、これを塗布、乾燥することにより形成できる。
電荷輸送物質には、電子輸送物質と正孔輸送物質とがある。
【0017】
電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノンジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェノン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0018】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質等が挙げられ、良好に用いられる。例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合体及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0019】
電荷輸送層に用いるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプ)、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダーは、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0020】
次に、光導電層15が単層構成の場合について述べる。
単層光導電層15は電荷発生物質及び電荷輸送物質を同時に含有する層であり、前述の電荷発生層21及び電荷輸送層23に記載されている材料がそのまま使用できる。従って、単層光導電層15は、電荷発生物質、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。
【0021】
導電性支持体11と光導電層15との間に必要に応じて設けられる下引き層(図示せず)は、接着性を向上する目的で設けられ、その材料としてはSiO、Al2O3、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等の無機材料やポリアミド樹脂、アルコール可溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、PVA等の接着性の良いバインダー樹脂などが使用される。その他、前記接着性の良い樹脂にZnO、TiO2、ZnS等を分散したものも使用できる。下引き層の形成法としては無機材料単独の場合はスパッタリング、蒸着等の方法が、また有機材料を用いた場合は通常の塗布法が採用される。なお下引き層の厚さは5μm以下が適当である。
【0022】
保護層17は感光体の表面保護の目的で設けられ、本発明においては、前述したように、少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質と、プレニト酸無水物、ピロメリト酸無水物及びメリト酸無水物から選ばれた少なくとも一種のベンゼンカルボン酸無水物との硬化反応物を含有することで構成されるが、更に感光体の保護層用材料として一般に用いられる材料を併用することができる。このような材料としては、例えばABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン/ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジェン/スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0023】
なお、保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれら樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお保護層の厚さは0.5〜10μmが適当である。
【0024】
更に、本発明では感光層15と保護層17との間に別の中間層(図示せず)を設けることも可能である。
【0025】
【実施例】
次に、実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中使用する部は、すべて重量部を表わす。
【0026】
実施例1
φ80mmのAl円筒状支持体上に、下記組成の電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液、保護層用塗工液を順次塗布乾燥して、0.3μm厚の電荷発生層、22μm厚の電荷輸送層及び1μm厚の保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した。
【0027】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造の電荷発生物質 4部
【化1】
ポリエステル(バイロン300:東洋紡績社製) 1部
メチルエチルケトン 150部
シクロヘキサノン 200部
【0028】
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記構造の電荷輸送物質 9部
【化2】
ポリカーボネート(パンライトK1300:帝人化成社製) 10部
塩化メチレン 100部
【0029】
【0030】
比較例1
実施例1における保護層用塗工液からピロメリト酸無水物を除いた以外は、全て実施例1と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0031】
実施例2
実施例1と同じ支持体上に、下記組成の電荷輸送層用塗工液、電荷発生層用塗工液、保護層用塗工液を順次塗布乾燥し、20μm厚の電荷輸送層、0.3μm厚の電荷発生層及び1.5μm厚の保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を製作した。
【0032】
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記構造の電荷輸送物質 8部
【化3】
ポリカーボネート(レキサンL−141:GE社製) 11部
塩化メチレン 190部
【0033】
【化4】
【0034】
【0035】
比較例2
実施例2における保護層用塗工液からピロメリト酸無水物を除いた以外は、全て実施例2と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0036】
実施例3
φ60mmのAl円筒状支持体上に、下記組成の下引き層用塗工液、感光層用塗工液、保護層用塗工液を順次塗布乾燥し、0.3μm厚の下引き層、21μm厚の感光層及び2μm厚の保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した
。
【0037】
〔下引き層用塗工液〕
ポリアミド(アミランCM4000:東レ社製) 3部
メタノール 80部
ブタノール 20部
【0038】
〔感光層用塗工液〕
下記構造の電荷発生物質 0.8部
【化5】
下記構造の電荷輸送物質 11部
【化6】
ポリカーボネート(A3000:出光石油化学社製) 10部
塩化メチレン 190部
【0039】
【0040】
比較例3
実施例3における保護層用塗工液からメリト酸無水物を除いた以外は、全て実施例3と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0041】
実施例4
実施例3と同じ支持体上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液、保護層用塗工液を順次塗布乾燥し、0.3μm厚の下引き層、0.2μm厚の電荷発生層、19μm厚の電荷輸送層及び1μm厚の保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した。
【0042】
【0043】
【化7】
【0044】
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記構造の電荷輸送物質 9部
【化8】
ポリカーボネート(ユーピロンZ−300:三菱瓦斯化学社製) 10部
トルエン 200部
【0045】
【0046】
比較例4
実施例4における保護層用塗工液からメリト酸無水物を除いた以外は、全て実施例4と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0047】
実施例5
実施例1における保護層用塗工液を以下のものに変更した以外は、全て実施例1と同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
【0048】
【0049】
実施例6
実施例3における保護層用塗工液を以下のものに変更した以外は、全て実施例3と同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
【0050】
【0051】
比較例5
実施例2における保護層用塗工液を以下のものに変更した以外は、全て実施例2と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0052】
【0053】
実施例7
実施例1における保護層用塗工液を以下のものに変更した以外は、全て実施例1と同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
【0054】
【0055】
(評価)
以上の実施例1〜7及び比較例1〜5で作製した感光体を、複写機に搭載しランニングテストを行なった。10,000枚のランニングテスト後、実施例の感光体はすべて良好な画像を形成したが、比較例で作製した感光体は、膜削れに伴う電位低下あるいは塗膜不良による不良画像を形成した。
【0056】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質と、プレニト酸無水物、ピロメリト酸無水物及びメリト酸無水物から選ばれた少なくとも一種のベンゼンカルボン酸無水物との硬化反応物を含有してなる保護層を光導電層上に設けるという構成にしたことから、非常に耐摩耗性に優れたものとなり、本電子写真感光体によると、膜削れに伴う電位低下や感度低下並びに膜の表面性の荒れなどに起因するさまざまな不良画像の形成を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子写真感光体の構成例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る電子写真感光体の別の構成例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る電子写真感光体の更に別の構成例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
11…導電性支持体
15…光導電層
17…保護層
21…電荷発生層
23…電荷輸送層
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真感光体に関し、更に詳しくは優れた耐摩耗特性を有する電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方法としては、カールソンプロセスやその種々の変形プロセスなどが知られており、複写機やプリンターなどに広く使用されている。このような電子写真方法に用いられる感光体の中でも、有機系の感光材料を用いたものが、安価、大量生産性、無公害性等をメリットとして、近年使用され始めている。ただ、有機電子写真感光体には耐久性の問題があり、その高耐久化(主に機械的な耐久性−耐摩耗性)が重要なポイントになっている。
【0003】
そこで、電子写真感光体の耐摩耗性向上のために、その最上層に摩耗特性の優れた保護層を設けることが、従来から試みられており、保護層のバインダー樹脂に、熱あるいは光硬化性の樹脂を用いることが知られている。しかし、光硬化性樹脂を使用した場合は、紫外光を照射するため、感光体の劣化が避けられない。また、熱硬化性樹脂の使用については、さまざまな樹脂が検討されているが、汎用性、下層との接着性、硬化反応の種類の多様性といった点から、数多くのエポキシ樹脂が提案されている(例えば特開昭56−51749号公報)。しかしながら、提案されているものは、半導体封止用に用いられている硬化剤との組み合わせの例が多く、そのうち殆どが2官能の硬化剤であるため、形成される樹脂の耐摩耗性はあまり高くない。更に、硬化剤あるいはバインダーの硬化型官能基の未反応部が電子写真特性に悪影響を及ぼす場合も多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、感光体の高耐久化(耐摩耗性向上)のために、感光体の最上層に保護層を設けることが試みられているが、出来上がった感光体の電子写真特性は満足のいくものが得られることが少ない。特に、保護層のバインダーとして硬化型材料を用いた場合には、硬化剤あるいはバインダーの硬化型官能基の未反応部による電子写真特性への悪影響が生じることが多い。
【0005】
従って、本発明は、上記従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、満足される機械的耐久性−耐摩耗性を有する電子写真感光体を提供することを、その目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定のベンゼンカルボン酸無水物を硬化剤として用いたエポキシ樹脂からなる保護層を設けることにより、電子写真特性に及ぼす悪影響を最小限に押さえ、満足のゆく機械的耐久性−耐摩耗性のある感光体を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明によれば、導電性支持体上に光導電層を有し、更に該光導電層上に保護層を有する電子写真感光体において、該保護層中に少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質と、プレニト酸無水物、ピロメリト酸無水物及びメリト酸無水物から選ばれた少なくとも一種のベンゼンカルボン酸無水物との硬化反応物を含有してなることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0008】
本発明の電子写真感光体は、プレニト酸無水物、ピロメリト酸無水物及びメリト酸無水物から選ばれた少なくとも一種のベンゼンカルボン酸無水物からなる硬化剤を用いたエポキシ樹脂保護層を最表層に設けたことから、満足される機械的耐久性−耐摩性を有するものとなる。良好な感光体が得られる理由については明確でないが、硬化剤の官能基の反応性などによるものではないかと推定される。
【0009】
本発明における保護層は、少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質と前記のベンゼンカルボン酸無水物との硬化反応物を主成分として構成される。この場合、少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質としては、分子内にエポキシ基を2個以上含有する化合物であればどの様なものであっても良い。その具体例としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、これらのハロゲン化物、これらの水素添加物等が挙げられる。
【0010】
なお、これらのエポキシ化合物は、そのエポキシ当量があまり小さいものであると、製膜硬化後の膜の耐摩耗特性が悪いので、エポキシ当量が1000以上のものを使用するのが好ましい。この理由としては、硬化後の主鎖の絡み合いがエポキシ当量が1000以下のものであると小さくなってしまうためと考えられる。また、硬化の際、エポキシ基と硬化剤の官能基のモル比が釣り合わないと、さまざまな不具合点を生じる。例えば、エポキシ基が官能基の2倍以上存在すると、硬化不充分な膜になり、充分な耐摩耗性が得られないし、逆にエポキシ基が官能基の0.3倍以下であると、硬化不良あるいは過剰官能基による電気特性への悪影響が出てくる恐れが強い。従って、0.3<エポキシ基/官能基<2の範囲であることが望ましい。
【0011】
なお、保護層形成のための硬化条件としては特に限定されるものでないが、光導電層を構成する材料が熱に弱い場合には、分解等の劣化を起す温度以下で硬化させる必要がある。そのため、予備的な試験を行なって硬化条件を決定することが望ましい。
【0012】
次に、図面を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明において使用する感光体の構成例を示す模式断面図であり、導電性支持体11上に電荷発生層21と電荷輸送層23と保護層17の積層で構成されている。また、図2は、別の構成例を示す模式断面図であり、導電性支持体11上に電荷輸送層23と電荷発生層21と保護層17の積層で構成されている。更に、図3は、別の構成例を示す模式断面図であり、導電性支持体11上に光導電層15を設けたものである。この場合、光導電層が電荷発生物質と電荷輸送物質のいずれをも同時に含む単層の構成となっており、その上に保護層17が積層されている。
ここで、いずれの場合にも導電性支持体11とそのすぐ上の光導電層15等との間に下引き層(図示せず)を設けることが可能であり、また光導電層15等とそのすぐ上の保護層17との間に中間層(図示せず)を設けることも可能である。
【0013】
導電性支持体11としては、体積抵抗1010・Ωcm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状若しくは円筒状のプラスチック、紙等に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらをD.I.,I.I.,押出し、引抜き等の工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩等で表面処理した管等を使用することができる。
【0014】
本発明における光導電層は、単層型でも積層型でもよいが、ここでは説明の都合上、まず積層型について述べる。
電荷発生層21は、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。バインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独で又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0015】
電荷発生物質としては、公知の材料で用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系材料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料等が挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0016】
電荷輸送層23は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし、これを塗布、乾燥することにより形成できる。
電荷輸送物質には、電子輸送物質と正孔輸送物質とがある。
【0017】
電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノンジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェノン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0018】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質等が挙げられ、良好に用いられる。例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合体及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0019】
電荷輸送層に用いるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプ)、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダーは、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0020】
次に、光導電層15が単層構成の場合について述べる。
単層光導電層15は電荷発生物質及び電荷輸送物質を同時に含有する層であり、前述の電荷発生層21及び電荷輸送層23に記載されている材料がそのまま使用できる。従って、単層光導電層15は、電荷発生物質、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。
【0021】
導電性支持体11と光導電層15との間に必要に応じて設けられる下引き層(図示せず)は、接着性を向上する目的で設けられ、その材料としてはSiO、Al2O3、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等の無機材料やポリアミド樹脂、アルコール可溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、PVA等の接着性の良いバインダー樹脂などが使用される。その他、前記接着性の良い樹脂にZnO、TiO2、ZnS等を分散したものも使用できる。下引き層の形成法としては無機材料単独の場合はスパッタリング、蒸着等の方法が、また有機材料を用いた場合は通常の塗布法が採用される。なお下引き層の厚さは5μm以下が適当である。
【0022】
保護層17は感光体の表面保護の目的で設けられ、本発明においては、前述したように、少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質と、プレニト酸無水物、ピロメリト酸無水物及びメリト酸無水物から選ばれた少なくとも一種のベンゼンカルボン酸無水物との硬化反応物を含有することで構成されるが、更に感光体の保護層用材料として一般に用いられる材料を併用することができる。このような材料としては、例えばABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン/ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジェン/スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0023】
なお、保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれら樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお保護層の厚さは0.5〜10μmが適当である。
【0024】
更に、本発明では感光層15と保護層17との間に別の中間層(図示せず)を設けることも可能である。
【0025】
【実施例】
次に、実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中使用する部は、すべて重量部を表わす。
【0026】
実施例1
φ80mmのAl円筒状支持体上に、下記組成の電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液、保護層用塗工液を順次塗布乾燥して、0.3μm厚の電荷発生層、22μm厚の電荷輸送層及び1μm厚の保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した。
【0027】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造の電荷発生物質 4部
【化1】
ポリエステル(バイロン300:東洋紡績社製) 1部
メチルエチルケトン 150部
シクロヘキサノン 200部
【0028】
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記構造の電荷輸送物質 9部
【化2】
ポリカーボネート(パンライトK1300:帝人化成社製) 10部
塩化メチレン 100部
【0029】
【0030】
比較例1
実施例1における保護層用塗工液からピロメリト酸無水物を除いた以外は、全て実施例1と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0031】
実施例2
実施例1と同じ支持体上に、下記組成の電荷輸送層用塗工液、電荷発生層用塗工液、保護層用塗工液を順次塗布乾燥し、20μm厚の電荷輸送層、0.3μm厚の電荷発生層及び1.5μm厚の保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を製作した。
【0032】
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記構造の電荷輸送物質 8部
【化3】
ポリカーボネート(レキサンL−141:GE社製) 11部
塩化メチレン 190部
【0033】
【化4】
【0034】
【0035】
比較例2
実施例2における保護層用塗工液からピロメリト酸無水物を除いた以外は、全て実施例2と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0036】
実施例3
φ60mmのAl円筒状支持体上に、下記組成の下引き層用塗工液、感光層用塗工液、保護層用塗工液を順次塗布乾燥し、0.3μm厚の下引き層、21μm厚の感光層及び2μm厚の保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した
。
【0037】
〔下引き層用塗工液〕
ポリアミド(アミランCM4000:東レ社製) 3部
メタノール 80部
ブタノール 20部
【0038】
〔感光層用塗工液〕
下記構造の電荷発生物質 0.8部
【化5】
下記構造の電荷輸送物質 11部
【化6】
ポリカーボネート(A3000:出光石油化学社製) 10部
塩化メチレン 190部
【0039】
【0040】
比較例3
実施例3における保護層用塗工液からメリト酸無水物を除いた以外は、全て実施例3と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0041】
実施例4
実施例3と同じ支持体上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液、保護層用塗工液を順次塗布乾燥し、0.3μm厚の下引き層、0.2μm厚の電荷発生層、19μm厚の電荷輸送層及び1μm厚の保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した。
【0042】
【0043】
【化7】
【0044】
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記構造の電荷輸送物質 9部
【化8】
ポリカーボネート(ユーピロンZ−300:三菱瓦斯化学社製) 10部
トルエン 200部
【0045】
【0046】
比較例4
実施例4における保護層用塗工液からメリト酸無水物を除いた以外は、全て実施例4と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0047】
実施例5
実施例1における保護層用塗工液を以下のものに変更した以外は、全て実施例1と同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
【0048】
【0049】
実施例6
実施例3における保護層用塗工液を以下のものに変更した以外は、全て実施例3と同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
【0050】
【0051】
比較例5
実施例2における保護層用塗工液を以下のものに変更した以外は、全て実施例2と同様にして比較用の電子写真感光体を作製した。
【0052】
【0053】
実施例7
実施例1における保護層用塗工液を以下のものに変更した以外は、全て実施例1と同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
【0054】
【0055】
(評価)
以上の実施例1〜7及び比較例1〜5で作製した感光体を、複写機に搭載しランニングテストを行なった。10,000枚のランニングテスト後、実施例の感光体はすべて良好な画像を形成したが、比較例で作製した感光体は、膜削れに伴う電位低下あるいは塗膜不良による不良画像を形成した。
【0056】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質と、プレニト酸無水物、ピロメリト酸無水物及びメリト酸無水物から選ばれた少なくとも一種のベンゼンカルボン酸無水物との硬化反応物を含有してなる保護層を光導電層上に設けるという構成にしたことから、非常に耐摩耗性に優れたものとなり、本電子写真感光体によると、膜削れに伴う電位低下や感度低下並びに膜の表面性の荒れなどに起因するさまざまな不良画像の形成を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子写真感光体の構成例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る電子写真感光体の別の構成例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る電子写真感光体の更に別の構成例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
11…導電性支持体
15…光導電層
17…保護層
21…電荷発生層
23…電荷輸送層
Claims (3)
- 導電性支持体上に、光導電層を有し、更に該光導電層上に保護層を有する電子写真感光体において、該保護層中に少なくともエポキシ基を2個以上含有する物質と、プレニト酸無水物、ピロメリト酸無水物及びメリト酸無水物から選ばれた少なくとも一種のベンゼンカルボン酸無水物との硬化反応物を含有してなることを特徴とする電子写真感光体。
- 前記のエポキシ基を2個以上含有する物質のエポキシ当量が1000以上であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
- 前記エポキシ基を2個以上含有する物質と前記ベンゼンカルボン酸無水物の使用割合としての該エポキシ基と該ベンゼンカルボン酸無水物の官能基のモル比が、下記式で表される範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真感光体。
0.3<エポキシ基/ベンゼンカルボン酸無水物の官能基<2
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