JP3644740B2 - 水性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着剤、粘着剤はもとより、塗料、印刷インキ、ガスバリヤ性包装材料、加工紙、繊維加工剤、建築材料などに好適な、エポキシ樹脂を含有する水性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省資源、地球環境に優しい材料の開発が進められている。特に溶剤の排出によるVOC規制等から、溶剤を使用する塗料、接着剤の分野では脱溶剤の動きが積極的である。溶剤系の代替として挙げられている材料の中で、特に開発が行われているのは水性化である。この水性化の代表的なものとして、エマルジョンが挙げられ例えば熱可塑性のアクリルエマルジョン、酢ビエマルジョン、エチレン酢ビエマルジョン等が挙げられる。しかし、高度の接着力、耐熱性、耐水性、耐溶剤性が要求される用途においては、未だ溶剤系を使用せざるを得ない状況である。
【0003】
これに対して、従来の熱可塑性エマルジョンではなく、熱硬化性のエポキシ樹脂を水性化して使用したり、また熱可塑性エマルジョンとの組み合わせで上記の課題を解決する試みが進められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エポキシ樹脂を含有する水性樹脂分散体は、通常単独で使用するものではなく、硬化剤を添加し硬化させることによって初めて性能が発揮する。その場合、主剤と硬化剤とを混合した後のポットライフが問題となる。ここでいうポットライフとは、主剤と硬化剤とを混合した直後の初期物性が保持される時間を示すものであり、熱可塑性エマルジョンでは問題とならない。
【0005】
エポキシ樹脂を常温硬化させる硬化剤は、多くはそのポットライフが1時間以内である。この場合、1時間以内に作業が終了するよう仕込み量・作業量の限定を行うことによってポットライフの問題を回避している。従来、ポットライフが長い硬化剤を選んで使用した場合には常温硬化が困難となり、実用的には加熱により硬化させる必要が生じるという問題点がある。したがって常温硬化性を維持し、かつポットライフを延長させる配合系が強く望まれている。
【0006】
これに対して、例えば特開昭59−6214号公報では硬化剤のジアミンをシュウ酸で完全中和することにより、セメントモルタル系でのポットライフの延長を図っており、また特開平6−330011号公報では乳化エポキシ樹脂をアクリルポリマーを用いてコアシェル化し、ポットライフの延長を図っている。
これらの改良より従来のポットライフの問題はある程度解決されてきているとはいうものの、なお、高度な硬化物性、および常温硬化とポットライフとの硬化性バランスに関して不十分であるという問題点があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決するために種々検討した結果、重付加型ポリアミンとカルボン酸ポリマーとを組み合わせるとともに、かつアミンの塩基性窒素当量とカルボン酸ポリマーのカルボキシル基当量との比に着目することにより、上記課題を克服することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
また、さらにアミノフェノール化合物を組み合わせることにより、より好適な組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
1.(A)エポキシ樹脂を含有する水性分散体、(B)重付加型ポリアミン、( C)カルボン酸ポリマーおよび(D)アミノフェノール化合物を含有し、かつ (B)の塩基性窒素1当量に対し(C)のカルボキシル基当量が0.1から1の範囲である水性樹脂組成物、
2.エポキシ樹脂を含有する水性分散体が、エポキシ樹脂存在下ラジカル重合性 モノマーを乳化重合して得られる重合体である1.に記載の水性樹脂組成物、である。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂を含有する水性分散体とは、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物、又はこれを含有してなる物質が水中に分散している分散体を指す。例えば、界面活性剤存在下にエポキシ樹脂を水中で分散させるエポキシエマルジョンや、エポキシ樹脂存在下ラジカル重合性モノマーを乳化重合して得られるエポキシ変性アクリルエマルジョンが挙げられる。
【0010】
本発明で使用されるエポキシ樹脂は、例えばグリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、線状脂肪族エポキサイド類、脂環族エポキサイドなどが挙げられる。
グリシジルエーテル類としては、芳香族グリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエーテルが挙げられ、芳香族グリシジルエーテルとしては例えばビスフェノールのジグリシジルエーテル、フェノールノボラックのポリグリシジルエーテル、ビフェノールのジグリシジルエーテルが挙げられる。該ビスフェノールのジグリシジルエーテルとしては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAなどのジグリシジルエーテルが挙げられ、フェノールノボラックのポリグリシジルエーテルとしては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラックなどのポリグリシジルエーテルが挙げられ、ビフェノールのジグリシジルエーテルとしては例えばビフェノール、テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテルが挙げられる。脂肪族グリシジルエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、テトラメチレングリコールなどのグリシジルエーテルが挙げられる。
【0011】
グリシジルエステル類としては、芳香族グリシジルエステル、脂環式グリシジルエステルなどが挙げられる。芳香族グリシジルエステルとしては、例えばフタル酸、テレフタル酸。イソフタル酸などのジグリシジルエステルが挙げられ、脂環式グリシジルエステルとしては例えばヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸などのグリシジルエステルが挙げられる。
【0012】
グリシジルアミン類としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、トリグリシジルアミノフェールなどが挙げられる。
線状脂肪族エポキサイド類としては例えば、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などが挙げられ、脂環族エポキサイドとしては例えば3,4エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレートなどが挙げられる。
【0013】
これらのエポキシ樹脂の末端をアクリル酸またはメタクリル酸等の一塩基酸で一部反応させたものでもよい。
エポキシ樹脂は単独で使用してもよく2種類以上を組み合わせてもよい。好ましいエポキシ樹脂は耐熱性、耐水性の観点からグリシジルエーテル類であり、さらに好ましくはビスフェノールのジグリシジルエーテルであり、とくに好ましくはビフェノールA、ビフェノールFのジグリシジルエーテルである。エポキシ樹脂のエポキシ当量は100〜10000の範囲のものを用いることができ、常温硬化性、耐熱性、耐水性の観点から好ましくは150〜3000であり、さらに好ましくは170〜1000である。
【0014】
エポキシエマルジョンは通常エポキシ樹脂と水と界面活性剤とを存在させ、せん断力がかかる分散機により、エポキシ樹脂を微粒化して得ることができる。使用される界面活性剤としてはイオン性、非イオン性の界面活性剤が挙げられ、イオン性界面活性剤としてはアニオン性、カチオン性、両性が挙げられる。
本発明において、エポキシ樹脂存在下ラジカル重合性モノマーを乳化重合して得られるエポキシ変性アクリルエマルジョンは、例えば次の様にして得ることができる。
【0015】
すなわち従来公知の乳化重合技術、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、水、界面活性剤の存在下によって行われる。本発明の場合、例えばエポキシ樹脂とラジカル重合性モノマーとを予め室温または加温下で十分に撹拌を行うことによって均一に溶解させ、これに界面活性剤、分散剤、保護コロイド、水溶性高分子等と水及びラジカル重合開始剤を加えて乳化分散液としたのち重合する方法が挙げられる。この方法以外にも例えば、エポキシ樹脂とラジカル重合性モノマーを別個に乳化分散させ重合に供する方法、エポキシ樹脂のみを乳化分散させラジカル重合性モノマーを直接重合させる方法等が挙げられ、また重合開始剤の添加方法も乳化分散液と一緒に添加させたり、別個に添加させたりもできる。乳化重合時にラジカル重合性モノマーとエポキシ樹脂とは反応しても、しなくてもよい。好ましくは反応しないほうがよい。
【0016】
エポキシ樹脂は先に挙げたものを使用することができる。またラジカル重合性モノマーとしては次のものを使用することができる。
例えば芳香族不飽和化合物、α,β−不飽和モノカルボン酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸等を挙げることができる。
芳香族不飽和化合物として例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる
α,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステルとして例えば、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0017】
アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルとしては例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどが挙げられる。
【0018】
不飽和カルボン酸としては例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、モノアルキルイタコネート等が挙げられる。
上記以外のラジカル重合性モノマーも必要に応じて組み合わせてもよい。例えば、水酸基含有モノマー例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、
アミド基含有モノマー例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド、
メチロール基含有モノマー例えばN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミド、
アルコキシメチル基含有モノマー例えばN−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、
エポキシ基含有モノマー例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、
多官能性モノマー例えばジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノまたはジエステル例えばマレイン酸モノまたはジブチル、フマル酸モノまたはジオクチル、
ビニルエステル例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、
不飽和ニトリル例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、
オレフィン例えばブタジエン、イソプレン、塩素含有ビニルモノマー例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレンなどを挙げることができる。
【0019】
ラジカル重合性モノマーは単独で使用してもよく、また二種以上の混合物であってもよい。好ましくは、芳香族不飽和化合物、α,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、不飽和モノカルボン酸の組み合わせがよい。さらに好ましくは、芳香族不飽和化合物としてはスチレンが挙げられ、α,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステルとしてはエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられ、不飽和モノカルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0020】
ラジカル重合性モノマーで好ましい芳香族不飽和化合物、α,β−不飽和モノカルボン酸アルキルエステル、および不飽和モノカルボン酸の組成比は、芳香族不飽和化合物が20〜80重量%、α,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステルが20〜80重量%、不飽和モノカルボン酸が0.1〜20重量%である。
【0021】
アクリルポリマーのTgは目的に応じて設定すればよい。ここで言うTgとは、エポキシ樹脂を除いた全モノマーからの計算値を意味する。好ましくは、−50℃から80℃である。−50℃未満では硬化物の耐熱性が不十分であり、80℃を越えると成膜性が不十分となる。さらに好ましくは−40℃から50℃である。
【0022】
本発明においてエポキシ樹脂とラジカル重合性モノマーとの比率は、エポキシ樹脂1〜60重量部に対してラジカル重合性モノマーが40〜99重量部である。エポキシ樹脂が1重量部未満だと耐熱性、耐水性が不良であり、また60重量部を越えると初期接着性が不良となる。好ましくはエポキシ樹脂が5〜55重量部に対してラジカル重合性モノマーが45〜95重量部である。
【0023】
使用する界面活性剤としては、先に挙げたイオン性、非イオン性の界面活性剤があり、イオン性界面活性剤としてはアニオン性、カチオン性、両性が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸、高級アルコールの硫酸エステル塩、液体脂肪油の硫酸エステル塩、脂肪族アミンおよび脂肪族アマイドの硫酸塩、脂肪族アルコールのリン酸エステル、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪族アミドのスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ホルマリン縮合ナフタリンスルホン酸塩等が挙げられ、カチオン性界面活性剤としては例えば第一アミン塩、第二アミン塩、第三アミン塩、第四アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては例えばカルボン酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、リン酸エステル塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。また上記で挙げた非反応性の界面活性剤以外にも反応性の界面活性剤も使用することができる。反応性界面活性剤としては一分子中にラジカル重合性の官能基を有しかつスルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩基、スルホン酸エステル塩基から選ばれる一個以上の官能基を有するもの、または一分子中にラジカル重合性の官能基を有しかつポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン複合タイプのアルキルエーテルまたはアルコールを有するものである。これらの界面活性剤は一種でも、また二種以上と組み合わせて使用してもよい。
【0024】
分散剤、保護コロイド、水溶性高分子としては例えばポリリン酸塩、ポリアクリル酸塩、スチレン−マレイン酸共重合体塩、スチレン−アクリル酸共重合体塩、スチレン−メタクリル酸共重合体塩、水溶性アクリル酸エステル共重合体塩、水溶性メタクリル酸エステル共重合体塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリルアミド共重合体、ポリメタクリルアミド共重合体等が挙げられる。
【0025】
重合開始剤としては、水溶性、油溶性の重合開始剤が使用できる。水溶性の重合開始剤としては例えば過硫酸塩、過酸化物、水溶性のアゾビス化合物、過酸化物−還元剤のレドックス系等が挙げられ、過硫酸塩としては例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられ、過酸化物としては例えば過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキシドが挙げられ、水溶性アゾビス化合物としては例えば2,2’−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩化水素、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等が挙げられ、過酸化物−還元剤のレドックス系としては例えば先の過酸化物に亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩等の還元剤の添加が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては例えば過酸化物、油溶性のアゾビス化合物等が挙げられ、過酸化物としては例えば過酸化ジブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンハイドロ過酸化物等が挙げられ、油溶性のアゾビス化合物としては例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
【0026】
本発明の重合で必要に応じてリン酸水素ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンや低分子ハロゲン化合物等の分子量調整剤、キレート化剤、可塑剤、有機溶剤等を乳化重合の前・中・後に添加することができる。
重合温度は例えば0〜100℃で特に30〜90℃が好ましく、不活性雰囲気中、常圧下または必要に応じて加圧下で行われる。
【0027】
本発明に使用される重付加型ポリアミンとは、室井宗一、石村秀一著「入門エポキシ樹脂」新高分子文庫(高分子刊行会、1988年刊)の70ページ図3.1に示されるものを指し、例えば直鎖脂肪族ポリアミン、ポリアミド、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、およびそれらの変性品が挙げられる。直鎖脂肪族ポリアミンとしては例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミンやこれらの変性品等が挙げられる。
【0028】
ポリアミドとしては例えばダイマー酸等のジカルボン酸と先の直鎖脂肪族ポリアミンとの縮合品が挙げられる。脂環族ポリアミンとしては例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンやこれらの変性品等が挙げられる。
【0029】
芳香族ポリアミンとしては例えば、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホンやこれらの変性品等が挙げられる。
その他ポリアミンとしてはジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジッド等が挙げられる。これらの硬化剤は一種または二種以上と組み合わせてもよい。好ましくは直鎖脂肪族ポリアミン、ポリアミド、脂環族ポリアミンであり、さらに好ましくは脂環族ポリアミンである。重付加型ポリアミンの添加量は、硬化性・硬化物性に応じて決められるが、好ましくはエポキシ樹脂を含有する水性分散体中のエポキシ基に対して0.5〜1.5当量がよく、さらに好ましくは0.8〜1.2当量である。
【0030】
本発明で使用されるカルボン酸ポリマーは、カルボキシル基を有するポリマーを指し、例えばカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸を重合することにより得られる。不飽和カルボン酸としては例えば、一塩基酸、多塩基酸が挙げられ、一塩基酸としてはアクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、多塩基酸としては例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸を重合する時、ラジカル重合性モノマーも必要に応じて組み合わせても良い。ラジカル重合性モノマーとしては例えば芳香族不飽和化合物、α、β不飽和カルボン酸アルキルエステル、ビニルエステル、不飽和ニトリル、オレフィン等が挙げられる。
【0031】
カルボン酸ポリマーは通常のラジカル重合で得られ、例えば溶剤を用いる溶液重合では必要に応じて重合後脱溶剤することにより使用でき、また水を媒体とする乳化重合、水溶液重合では重合後そのまま使用できる。分子量は任意であるが、必要に応じて連鎖移動剤等を用いて分子量を調節してもよい。分子量が50000を越えるとエポキシ硬化剤との組み合わせにおいて粘度が高くなり取り扱いあつかえなくなる。また500以下では耐水性が不良となる。好ましい分子量としては1000から20000である。
【0032】
カルボン酸ポリマーの酸価は好ましくは200から750であり、200未満ではポットライフが延長されず、750を越えるとアミンとの組み合わせにより粘度上昇し実用的ではない。さらに好ましくは300から600である。
本発明における重付加型ポリアミンとカルボン酸ポリマーとの比率は、重付加型ポリアミンの塩基性窒素1当量に対し、カルボン酸ポリマーのカルボキシル基当量が0.1から1の範囲である。ここで言う塩基性窒素当量とは、重付加型ポリアミンに含まれる窒素原子1個あたりの分子量を指し、例えば構造が既知のものでは分子量を窒素原子数で割って計算でき、また不明のものではアミン価より計算できる。また、カルボキシル基当量とはカルボキシル基1個あたりの分子量を指し、例えば構造が既知のものでは分子量をカルボキシル基数で割って計算でき、また不明のものでは酸価より計算できる。
【0033】
本発明で重付加型ポリアミンの塩基性窒素1当量に対しカルボン酸ポリマーのカルボキシル基当量が0.1未満では、ポットライフが十分ではなく、カルボキシル基当量が1を越えると常温硬化しなくなる。ポットライフ、常温硬化性の観点から、好ましくは重付加型ポリアミンの塩基性窒素1当量に対し、カルボン酸ポリマーのカルボキシル基当量が0.3から0.8である。
【0034】
重付加型ポリアミンとカルボン酸ポリマーは例えば予め混合しておいても、またエポキシ樹脂含有水分散体にカルボン酸ポリマーを混合し、その後重付加型ポリアミンを添加してもよく、その逆でもよい。好ましくは重付加型ポリアミンとカルボン酸ポリマーは予め混合した方がよい。
本発明の水性樹脂組成物には必要に応じて、エポキシ樹脂硬化性向上のために促進剤、重付加型ポリアミン以外のエポキシ樹脂用硬化剤、性能向上のためにラテックス、タッキファイヤーやゴム成分、硬化性能をさらに向上させるためにメラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのアミノ樹脂やレゾール型またはノボラック型のフェノール樹脂を添加してもよい。また、殺菌剤、防腐剤、消泡剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、着色顔料、体質顔料、防錆顔料等を添加してもよい。
【0035】
促進剤としては、第三級アミン、ルイス酸錯体が挙げられ、第三級アミンとしては例えばジメチルベンジルアミン等の第三級アミノ基含有化合物やこれらの変性品や、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物やこれらの変性品等が挙げられ、ルイス酸錯体としては、三フッ化ホウ素のアミン錯体が挙げられる。促進剤として好ましいのは、第三級アミンである。
【0036】
特に、アミノフェノール化合物を含有することにより、さらにポットライフと硬化物性バランスに優れた組成物を得ることが出来る。
本発明にいうアミノフェノール化合物とは、アミノ基を有するフェノール化合物を指し、アミノ基は1級、2級、3級のいずれでもよく、またフェノール性OH基は1個以上あればよい。例えば2ーアミノフェノール、4ーアミノフェノール、4ージメチルアミノフェノール、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール、ジメチルアミノメチルフェノール等が挙げられ、好ましくは2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール、ジメチルアミノメチルフェノールである。
【0037】
アミノフェノール化合物の添加量は、使用されるエポキシ樹脂に対して0.1〜10部であり、好ましくは0.5〜7部である。0.1部未満では硬化性の向上が認められず、10部を越えるとポットライフが不良となる。
重付加型ポリアミン以外のエポキシ樹脂用硬化剤としては、酸無水物系、ポリメルカプタン等が挙げられ、酸無水物系としては例えば、1官能性として無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸やこれらの変性品が挙げられ、ポリメルカプタンとしては例えば、チオグリコール酸と多価アルコールとの縮合物やポリサルファイド等が挙げられる。
【0038】
性能を向上させるためのラテックスとしては、アクリルラテックス、スチレンブタジエンラテックス、クロロプレンラテックス、ウレタンラテックス、エチレン酢ビラテックス、酢ビラテックス等が挙げられる。
タッキファイヤーとしては例えば、ロジン系、ロジン誘導体系、テルペン樹脂系、テルペン誘導体系等の天然系タッキファイヤーや、石油樹脂系、スチレン樹脂系、クマロンインデン樹脂系、フェノール樹脂系、キシレン樹脂系の合成樹脂系のタッキファイヤー等が挙げられる。これらのタッキファイヤーは水分散または水溶液の形で添加することが好ましい。ゴム成分としては例えば、液状ニトリルゴム、シリコンゴム等が挙げられる。
【0039】
本発明の水性樹脂組成物を、例えば接着剤として応用する場合、先ず本発明の全成分を混合しその後被着体に塗布し、塗布面を張り合わせた後硬化させる方法、また一方の被着体に本発明の(A)エポキシ樹脂を含有する水性分散体を塗布し、もう一方の被着体に本発明の(B)と(C)、または(B)と(C)と(D)とからなる成分を塗布し、該両被着体の塗布面を重ね合わせた後硬化させる方法、また被着体の一方に本発明の(A)エポキシ樹脂を含有する水性分散体を塗布し、その後本発明の(B)と(C)、または(B)と(C)と(D)とからなる成分を更に塗布し、もう一方の被着体を重ね合わせた後硬化させる方法等を用いることができる。これらの硬化方法を取る場合、塗布後常温または加熱により水を揮散した後、常温で硬化を進めてもよく、また加熱により硬化を進めてもよい。また、塗布後水を揮散せずに被着体を張り合わせ、常温または加熱により硬化を進めてもよい。
【0040】
本発明の水性樹脂組成物は、接着剤、粘着剤はもとより、塗料、印刷インキ、ガスバリヤ性包装材料、加工紙、繊維加工剤、建築材料などに使用することができる。接着剤としては例えば、木材、合板、パーティクルボード、石膏ボード、鉄、アルミ等の金属、プラスチックフィルム、プラスチックフォーム、プラスチックの不織布、皮革、木綿、麻等の布、ガラス繊維、ガラス布、FRP等の接着が挙げられる。粘着剤分野としては例えばテープ、ラベル、壁紙、床材等が挙げられ、塗料分野としては例えばコンクリート、木材、金属、フロアポリッシュ等が挙げられ、繊維加工剤としては例えば不織布、カーペット、電気植毛布、積層布、タイヤコード等が挙げられ、建築材料としては例えばシーリング材、ラテックスセメント、防水材等が挙げられる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により説明する。特に指定のない限り、部は重量基準とする。なお、組成物の物性評価は以下のようにして行った。
(1)ポットライフの評価
組成物の配合直後および30℃で2日経過した後に、組成物の粘度の測定を行い、測定数値の変化率を求める。粘度測定はB型粘度計を使用して25℃で行った。変化率200%以内を合格と判定する。
【0042】
また、組成物の配合直後および30℃で2日放置した後に、後述の接着強さ、耐熱クリープの評価を行い、さらに配合直後に関しては耐水性の評価も行う。
なお、組成物がアミノフェノールを含む場合は、配合直後および30℃で8時間放置した後に評価を行う。
(2)接着強さ
増粘剤により組成物の粘度を100Psに調整した後、ワイヤーバー#75を用いて1インチ幅の9号キャンバスに塗布し、20℃で20分乾燥させる。その後組成物が乾燥した面を張り合わせ、4.5kgのローラーを1回往復させる。
【0043】
張り合わせた後20℃で1時間経過したサンプル、および張り合わせた後20℃で5日養生したサンプルを用い、テンシロン引っ張り試験機で180°ハクリ強さを測定した。1時間経過したサンプルでは2.0kg/inch以上を合格と判定し(初期接着強さ)、5日養生したサンプルでは4.0kg/inch以上を合格と判定する(養生接着強さ)。引っ張り速度は50mm/minとした。
【0044】
なお、組成物がアミノフェノールを含む場合は、張り合わせた後20℃で1時間経過したサンプル(初期接着強さ)、および張り合わせた後20℃で2日養生したサンプル(養生接着強さ)で評価する。
(3)耐熱クリープ性
張り合わせた後20℃で5日養生したサンプルを、80℃雰囲気下で200gの重りを使用して引っ張り、24時間放置後に重りが落下しなければ合格とし、落下の場合不合格と判定した。
【0045】
なお、組成物がアミノフェノールを含む場合は、張り合わせた後20℃で2日養生したサンプルで評価する。
(4)耐水性
張り合わせた後20℃で5日養生したサンプルを、蒸留水に1日浸漬させ、その後速やかにテンシロン引っ張り試験機でハクリ強さを測定した。2.0kg/inch以上を合格と判定する。引っ張り速度は50mm/minとした。
【0046】
なお、組成物がアミノフェノールを含む場合は、張り合わせた後20℃で2日養生したサンプルで評価する。
〔製造例1〜2〕
表1に示すエポキシ樹脂、界面活性剤と水とをホモミキサーを使用して均一に分散させ、エポキシ樹脂エマルジョンを作製した。エマルジョンの粘度を表1に併せて示す。
【0047】
【表1】
【0048】
〔製造例3〜10〕
表2に示すラジカル重合性モノマーとエポキシ樹脂の混合物1000部に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名:エマルゲン950、花王(株)製)の25%水溶液80部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(商品名:レベノールWZ、花王(株)製)の25%水溶液40部、過硫酸アンモニウム2部、蒸留水430部を添加し、ホモミキサーで撹拌を行いプレ乳化物を作製した。別に撹拌機付きフラスコに蒸留水400部、エマルゲン950の25%水溶液20部を仕込み、80℃に昇温し、過硫酸アンモニウム1部を水50部に溶解したものを添加する。これに、前記プレ乳化物を4時間かけて連続滴下する。その後過硫酸アンモニウム0.5部を水50部に溶解したものを添加し、同温度で1時間重合を続けた。その後30℃以下まで冷却し、25%濃度のアンモニア水でpHを7に調整して、固型分50%のエポキシ変性アクリルエマルジョンを得た。重合後の粘度及びアクリルポリマーの計算Tgを表2に併せて示す。
【0049】
【表2】
【0050】
【参考例1〜18】
製造例1〜10で得たエマルジョンを用いて表3〜5に示す配合を行い、本願発明の組成物を得た。配合方法は、アミン硬化剤とカルボン酸ポリマーとを予め混合し、その後エポキシ樹脂含水性分散体にその混合物を投入する方法で行った。評価結果を表6、7に示す。
【0051】
【比較例1〜5】
表8に配合を、表9にその評価結果を示す。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
【表9】
【0059】
【実施例1〜23】
製造例1〜10で得たエマルジョンを用いて表10〜表12に示す配合を行い、本発明の組成物を得た。配合方法は、アミン硬化剤とカルボン酸ポリマーとを予め混合し、その後エポキシ樹脂含水性分散体にその混合物を投入させ、最後にアミノフェノール化合物を添加した。その結果を表13、14に示す。
【0060】
【比較例6〜11】
表15に配合を、表16にその結果を示す。評価法はアミノフェノールを含む実施例と同様に行った。
【0061】
【表10】
【0062】
【表11】
【0063】
【表12】
【0064】
【表13】
【0065】
【表14】
【0066】
【表15】
【0067】
【表16】
【0068】
【発明の効果】
本発明から得られる水性樹脂組成物は、重付加型アミンにカルボン酸ポリマーを特定の割合で配合するため、ポットライフがカルボン酸ポリマーを配合していないものに比べポットライフが改良されるばかりでなく、高度のコンタクト性をも有している。また、常温でのエポキシ樹脂の硬化もスムーズに進行するため、養生後の接着力、耐熱性、耐水性のレベルも高い。
Claims (2)
- (A)エポキシ樹脂を含有する水性分散体、(B)重付加型ポリアミン、(C)カルボン酸ポリマーおよび(D)アミノフェノール化合物を含有し、かつ(B)の塩基性窒素1当量に対し(C)のカルボキシル基当量が0.1から1の範囲である水性樹脂組成物。
- エポキシ樹脂を含有する水性分散体が、エポキシ樹脂存在下ラジカル重合性モノマーを乳化重合して得られる重合体である請求項1に記載の水性樹脂組成物。
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