JP3644516B2 - 椅子用クッション並びにその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の椅子類における座や背もたれ或いは肘当てのクッションの構造並びに製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】
椅子における座席及び背もたれのクッションとして、発泡性樹脂から成るスポンジ状の本体の表面に、織布等の表皮材を一体的に張設した構造のものがある。この表皮一体型のクッションは、密着・離反自在な一対の成形型を使用して、両成形型の接合面に形成されたキャビティ内に溶融した合成樹脂を注入して発泡させるRIM法(注型発泡)によって本体を成形するに際して、キャビティに表皮材をインサートし、その状態でキャビティに溶融した合成樹脂を注入して発泡させると言う方法で製造されている。
【0003】
他方、表皮材としては質感や手触り・デザイン等の点から天然繊維又は合成繊維製の織布が多用されており、このため、表皮材として織布を使用する場合は、溶融した樹脂が成形型内で表皮材を透過しないように、図11(A)に示すように、表皮材21の裏面にウレタン樹脂製の薄いフィルム22を予め貼着(ラミネート)しておき、この表皮材21を成形型にインサートした状態で本体23を一体成形するようにしている。その場合、従来は、フィルム22と表皮材21とを、接着剤(一般にホットメルト接着剤)24によって全面にわたって接着している。
【0004】
しかし、このようにフィルム22と表皮材21とを全面にわたって接着すると、表皮材21に皺がよりやすいと共に、ゴワゴワした手触りになって風合いが悪くなると言う問題があった。この問題に対しては、図11(B)に示すように、表皮材21の裏面に1〜3mm程度の厚さのウレタン板25を重ね合わせ、フィルム22を接着剤24によってウレタン板25の全面にわたって貼着することで対処しているが、かくすると素材コスト及び製造の手間が増大するため、それだけ製造コストが嵩むと言う問題があった。
【0005】
本発明は、この問題を解消することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の表皮材一体型クッションは、
「弾性を有する樹脂製の本体と、織布等の表皮材と、本体と表皮材との間に介在した樹脂製フィルムとを備えている表皮一体型のクッションであって、
前記フィルムと表皮材とは、散点状に塗布した無数の点状接着剤群によって飛び飛びに接着されている一方、前記フィルムと本体とは、成形型にフィルムをインサートした状態で本体を成形することによって全面にわたって貼り合されている」、
の構造になっている。
【0007】
また、本発明は、弾性を有する発泡性樹脂製の本体と、織布等の表皮材とを備えたクッションの製造方法を含んでおり、この製法は、
「(1). 前記表皮材の片面に、溶融状態の発泡性樹脂が透過しないフィルムを、それらフィルム又は表皮材に散点状に塗布した無数の点状接着剤群によって飛び飛びに接着する、(2). フィルムが接着された表皮材を、密着・離反自在で且つ合わせ面には本体成形用のキャビティが形成された一対の成形型間に、前記フィルムが樹脂注入穴に面するようにして配置する、(3).その状態で溶融した発泡性樹脂をキャビティ内に注入して発泡させることにより、本体を成形すると共にフィルムと本体とをその全面にわたって貼着する」、
と言う工程になっている。
【0008】
なお、本発明者達の実験によると、フィルムの厚さは30〜40μm程度、接着剤の塗布密度は50〜90ドット/cm2 程度が好適であった。
【0009】
【発明の奏する効果】
本発明によると、フィルムと表皮材とが散点状に貼り合わされていることに起因して、表皮材の剛性が高くなることが防止されるから、単に表皮材の裏面にフィルムを貼着してこれに本体を一体成形しただけの単純な構造でありながら、ゴワゴワとした状態にはならず、表皮材の持つ自然な手触り・風合いを得ることができる。また、表皮材とフィルムとが共に変形しやすい状態にあるため、製造時及び使用に際して表皮材に皺がよることもない。
【0010】
そして、従来のように表皮材とフィルムとの間にウレタン板を介在させる必要がないから、製造コストがアップすることもない。
【0011】
従って本発明によると、表皮一体型クッションを、手触り・風合いを損なったり皺を発生させたりすることなく安価に製造できる効果を有する。
【0012】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図7は第1実施形態を示しており、このうち図6でクッション1の断面図を示している。すなわち図6に示すように、クッション1は、ウレタンゴムのような発泡性樹脂から成る多孔性の本体2と、その表面に張設された表皮材3とを備えており、表皮材3は、天然繊維又は化学繊維を平織り等に織成した織布から成っている。
【0014】
表皮材3の裏面には、ウレタン樹脂のように伸縮性に富むと共に溶融合成樹脂が透過しないガスバリアー性を備えたフィルム4が、散点状に塗布したホットメルト接着剤5によって接着されている。図6の符号6は座又は背もたれの基板である。
【0015】
このクッション1は図1〜図5で示す工程を経て製造される。
【0016】
図1は表皮材3に接着剤5を散点状に塗布する一例を示す斜視図、図2は図1のII−II視断面図であり、フィルム4の原反をテーブル7(又はローラ)で支持した状態で長手方向に送る途次、フィルム4の原反の上面に中空ドラム8を回転させながら押し当てて、中空ドラム8内に溜められたホットメルト接着剤5を多数の小穴9からフィルム4の原反に転移させることにより、フィルム4の原反の片面に接着剤5を散点状に塗布する。
【0017】
中空ドラム8内の接着剤5は加熱して液状になっており、フィルム4の原反に押し付けられた箇所の小穴9のみから接着剤5が毛細管現象によって流れ出る。また、中空ドラム8の多数の小穴9は千鳥状に交互に並んでいる。従って、図3に示すように、フィルム4の原反には千鳥状に並んだ状態で無数の接着剤5が散点状に塗布される。
【0018】
次いで、図4に示すように、一対のローラ10等にて、フィルム4と表皮材3とを貼り合わせる。それから、原反を各フィルム4の大きさに切断して、図5に示すように、表皮材3を、フィルム4が図示しないスプルー(樹脂注入穴)と面するようにして一対の成形型11,12で挟み固定し、その状態で、両成形型11,12の合わせ面に形成されたキャビティ13に溶融した発泡性合成樹脂をスプルーから注入して発泡させることにより、本体2の成形と本体2へのフィルム4の貼着とを同時に行う。
【0019】
以上のようにして製造されたクッション1における表皮材3と接着剤5とフィルム4との三者の関係を、図7(A)(B)で模式的に示している。
【0020】
すなわち、図7では表皮材3の織目を誇張して示しており、本発明では、接着剤5は表皮材3の経糸と緯糸とに点在して付着しているに過ぎないため、(C)(D)に示すように、表皮材3は、平面方向及び厚さ方向に自由に変形し得る状態になっている。このため、ゴワゴワした感じがなくて自然な手触り・風合いを得ることができる。また、表皮材3とフィルム4とは共に変形し易い状態になっているため、製造工程途次及び椅子に使用時に表皮材3は引き延ばした状態に保持され、従って、皺の発生が防止又は著しく抑制されるのである。
【0021】
これに対して、図8(A)(B)に示すように表皮材3とフィルム4とを接着剤5によって全面にわたって貼着すると、表皮材3と接着剤5の層とフィルム4との3層が一体化することによって表皮材3の剛性が著しく高くなるため、ゴワゴワした感じになって手触り・風合いが悪化する。また、表皮材3とフィルム4とは自然な状態に引き延ばしにくくなるため、製造工程で皺がよったまま本体2が一体成形されてしまったり、椅子に使用しているうちに発生した皺が戻らなくなるなどの不具合がある。
【0022】
また、図8(B)に示すように、フィルム4と表皮材3とを網目状に塗布した接着剤5で接着することも考えられるが、この場合も、表皮材3とフィルム4とが過度に一体化して表皮材3が変形しにくくなるため、皺の発生や手触り・風合いの低下は避けることができない。
【0023】
図9〜図10は、接着剤5をフィルム4に散点状に塗布する手段の別例であり、このうち(A)は正面図、図10は図9のX−X視平面図である。この実施形態では、外周面に接着剤漕15を密着させた転移ローラ16から、多数の突起17を備えた塗布ローラ18に接着剤5を転移させ、塗布ローラ18における多数の突起17の先端からフィルム4に接着剤5を散点状に塗布し、これをフィルム4の原反に貼着するようにしたものである。
【0024】
この実施形態では、接着剤5は縦横に整列し並べた状態に塗布している。
【0025】
上記の両実施形態は、先に接着剤をフィルムに塗布した場合であったが、先に表皮材(原反)に接着剤を塗布しておいても良い。また、接着剤をフィルム又は表皮材に散点状に塗布する手段としては、フィルム又は表皮材を移送しつつ、その片面にスプレーガンで接着剤を間欠的に噴射したり、インクジェット装置に類した噴射装置で間欠的に噴射すなどしても良い。
【0026】
また、表皮材は織布製には限らず、不織布など他の構造の素材製でも良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の工程の一部を示す斜視図である。
【図2】 図1のII−II視平面図である。
【図3】フィルムと表皮材との接着工程を示す表皮材の破断斜視図である。
【図4】フィルムを接着した表皮材の一部破断斜視図である。
【図5】本体の成形状態を示す断面図である。
【図6】クッションの断面図である。
【図7】作用を示す図である。
【図8】本発明の比較例を示す図である。
【図9】他の実施形態を示す側面図である。
【図10】フィルムを貼着した表皮材の一部破断平面図である。
【図11】従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 クッション
2 本体
3 表皮材
4 フィルム
5 接着剤
11,12 成形型
13 キャビティ
Claims (2)
- 弾性を有する樹脂製の本体と、織布等の表皮材と、本体と表皮材との間に介在した樹脂製フィルムとを備えている表皮一体型のクッションであって、
前記フィルムと表皮材とは、散点状に塗布した無数の点状接着剤群によって飛び飛びに接着されている一方、前記フィルムと本体とは、成形型にフィルムをインサートした状態で本体を成形することによって全面にわたって貼り合されている、
椅子用クッション。 - 弾性を有する発泡性樹脂製の本体と、織布等の表皮材とを備えた表皮一体型クッションの製造方法であって、
前記表皮材の片面に、溶融状態の発泡性樹脂が透過しないフィルムを、それらフィルム又は表皮材に散点状に塗布した無数の点状接着剤群によって飛び飛びに接着してから、
フィルムが接着された表皮材を、密着・離反自在で且つ合わせ面には本体成形用のキャビティが形成された一対の成形型間に、前記フィルムが樹脂注入穴に面するようにして配置し、その状態で溶融した発泡性樹脂をキャビティ内に注入して発泡させることにより、本体を成形すると共にフィルムと本体とをその全面にわたって貼着すること、
を特徴とする椅子用クッションの製造方法。
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JP13852696A JP3644516B2 (ja) | 1996-05-31 | 1996-05-31 | 椅子用クッション並びにその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JPH09313761A JPH09313761A (ja) | 1997-12-09 |
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Country | Link |
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JP4599961B2 (ja) * | 2004-09-17 | 2010-12-15 | 日東紡績株式会社 | 車両用シートパッド製品及びその製造方法 |
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1996
- 1996-05-31 JP JP13852696A patent/JP3644516B2/ja not_active Expired - Fee Related
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