JP3644458B2 - 記録方法及び記録液 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、記録方法(特に、画像情報に応じた選択的加熱により記録部から記録液を液滴として吐出せしめ、対向する印画紙に転写する、フルカラー画像記録方法)、及びこの方法に使用する記録液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオカメラ、コンピュータグラフィクス等のカラー化が進むにつれ、ハードコピーのカラー化に対するニーズが急速に高まっている。それに対して、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式、熱現像銀塩方式等のカラーハードコピー方式が提案されている。これらの記録方式の中で、高画質の画像を簡単な装置で手軽に出力する方法は、染料拡散熱転写方式とインクジェット方式に大きく分類できる。
【0003】
これらの記録方式の中で、染料拡散熱転写方式によれば、適当なバインダ樹脂中に高濃度の転写染料の分散するインク層が塗布されいてるインクリボン又はシートと、転写された染料を受容する染着樹脂がコーティングされた印画紙等の被転写体を、一定の圧力で密着させ、インクシート上に位置する感熱記録ヘッドから画像情報に応じた熱が加えられ、インクシートから受像層に加えられた熱量に応じて転写染料を熱転写させる。
【0004】
上記の操作を、減法混色の三原色、即ち、イエロー、マゼンタ、シアンに分解された画像信号についてそれぞれ繰り返すことによって、連続的な階調を持つフルカラー画像を得ることを特徴とする、いわゆる熱転写方式は、小型化、保守が容易で、即時性を備え、銀塩カラー写真並の高品位な画像を得る優れた技術として注目を集めている。
【0005】
図2は、こうした熱転写方式のプリンタの要部の概略正面図である。
【0006】
感熱記録ヘッド(以下、サーマルヘッドと呼ぶ)1とプラテンローラ3とが対向し、これらの間に、ベースフィルム12b上にインク層12aを設けたインクシート12と、紙20b上に染着樹脂層20aを設けた被記録紙(被転写体)20とが挟まれ、これらが回転するプラテンローラ3によってサーマルヘッド1に押し付けられて走行する。
【0007】
そして、サーマルヘッド1によって選択的に加熱されたインク層12a中のインク(転写染料)が、被転写体20の染着樹脂層20aにドット状に転写され、熱転写記録が遂行される。このような熱転写記録には、被記録紙20の走行方向と直交する方向にサーマルヘッドを走査するシリアル方式や、同被記録紙走行方向に直交して一本のサーマルヘッドを固定して配したライン方式とが採用されている。
【0008】
しかし、この方式はインクシートの使い捨てに起因する多量の廃棄物の発生と、高いランニングコストが大きな欠点であり、その普及が妨げられている。
【0009】
このように、従来の熱転写方式は高画質であるが、専用印画紙と使い捨てのインクリボン又はシートを使用するためにランニングコストが高い。
【0010】
熱現像銀塩方式も高画質であるが、やはり専用印画紙と使い捨てのインクリボン又はシートを使用するためにランニングコストが高く、装置コストも高い。
【0011】
こうしたノンインパクト記録法は、記録時における騒音が極めて小さいという点で広く普及しつつある。中でもいわゆるインクジェット記録法は、高速記録が可能であり、しかも、いわゆる普通紙に特別の定着処理を必要とせずに記録できるため、近年、コンピュータグラフィックス等の画像をハードコピーする技術として極めて有力な記録方法となりつつある。
【0012】
上記のインクジェット方式とは、特公昭61−59911 号や特公平5−217 号公報等に示されるように、画像情報に応じて、静電吸引方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)、サーマル方式(バブルジェット方式)等の方法で記録液の小滴を記録ヘッドに設けられたノズルから飛翔させ、記録部材に付着せしめ、記録を行うものである。
【0013】
従って、インクシート等を使用する場合のような廃棄物の発生はほとんどなく、ランニングコストは低い。最近では、特にサーマル方式が簡易にカラー画像を出力できることから、普及が拡大している。
【0014】
しかしながら、従来、インクジェット記録に用いられてきた記録液は、酸性染料等の水溶性染料を水と水溶性有機溶剤との混合物に溶解したものであるため、記録画像に耐水性がないという問題があった。
【0015】
これを改良するために、疎水性の染料を用いることが当然に試みられた。しかし、分散染料や油溶性染料等の疎水性染料は普通紙中で発色しない。
【0016】
また、液溶媒として用いる有機溶剤として通常用いられているトルエンやアセトン等は、発火の危険性があった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した熱転写方式とインクジェット方式の双方の利点を生かしつつ、それらの欠点を同時に解消して、高画質と即時性を兼ね備え、装置の小型、軽量化が可能であり、廃棄物が発生せずに、普通紙にも転写可能であり、低消費電力及び低ランニングコストで実施できる記録方法と、この方法に使用する記録液を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、記録材として分散染料を用い、溶媒(液媒体)としてフタル酸ジアルキルエステルを用いることにより、普通紙にカラー画像が記録可能でかつ、耐水性を実現できることを見出し、本発明に至った。
【0019】
即ち、本発明は、記録材とこの記録材を溶解若しくは分散させる物質とを含有する記録液を記録液加熱部に供給し、加熱により前記記録液の状態を変化させて液滴を生成させ、この液滴を前記記録液加熱部と対向配置された被記録体へ移行させるようにした記録方法において、記録に際し、
300℃以上に加熱したときに90重量%以上が気化しかつ残留物が10重量%以下 であり、25℃での溶解度パラメータの値が7.5〜10.5の範囲にあり、分子量が 550以下であり、かつ空気中で200℃に加熱したときの気化速度が1×10 -4 g / m 2 sec 以上であり、その条件で気化しない残留分の割合が0.1重量%以下である分散 染料を前記記録材として、
前記分散染料を50℃以下で5重量%以上溶解若しくは分散させる沸点150℃以上 の芳香族エステル及び/又は芳香族炭化水素を前記物質として
それぞれ含有する記録液を使用することを特徴とする記録方法に係るものである。
【0020】
本発明の記録方法に使用する記録液の溶媒は、上記の染料を十分に溶解又は分散させるものであると同時に、その沸点が 150℃以上であり、またPPC用紙(普通紙)、アート紙等の繊維に自発的に吸収される性質を持つことが、普通紙等への転写の観点から好ましい。
【0021】
溶媒が前記分散染料を50℃以下で5重量%以上、特に10重量%以上溶解するためには、25℃での溶媒の溶解度パラメータ(J.H.ヒルデブランドにより定義されたもの)の値が7.5〜10.5の範囲とする。更に、引火点が150℃以上であって、人体に対する毒性が低く、無色であることが好ましい。溶解度パラメータが10.5を超えると、染料の溶解度が低くなり、かつ空気中の水蒸気を吸着して転写感度の再現性が悪化し易い。また、溶解度パラメータが7.5未満であると、やはり染料の溶解度が低くなり易い。
【0022】
具体的には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸ジアルキルエステル類を含む芳香族エステル類、及び/又は、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン等の芳香族炭化水素類等を本発明における記録液の溶媒として使用することが望ましい。これらのフタル酸ジアルキルエステル等の溶媒は、染料の溶解度が高く、常温で液体でかつ無色であり、引火点が 150℃以上で、人体に対する毒性の低いものが好ましい。
【0023】
本発明の記録液に用いる染料は、300℃以上に加熱したときに90重量%以上が気化しかつ残留物が10重量%以下であるが、カラーインデックス記載の分散染料(disperse dye)として分類される染料である。
【0024】
より正確に定義すると、25℃での溶解度パラメータ(J.H.ヒルデブランドにより定義)の値が7.5〜10.5の範囲にあり、分子量が550以下であり、かつ空気中で200℃に加熱したときの気化速度が1×10-4g/m2sec以上であり、その条件で気化しない残留分の割合が0.1重量%以下の分散染料である。
【0025】
染料の溶解度パラメータが上記の範囲にないと、前記の溶媒に5重量%以上溶解し難い。
【0026】
本発明の記録方法における染料転写において、染料自体の気化速度が上記の範囲未満であれば、転写中に記録液中の染料濃度が上昇して飽和溶解度を超えて固体染料が析出し、目詰まりを引き起こす。
【0027】
また、染料の耐熱性が低く、或いは染料中に不揮発性不純物が多量にあり、空気中で 200℃に加熱したときの残留分の割合が 0.1重量%を超えると、やはり目詰まりを引き起し易い。
【0028】
上記の分散染料は、分散剤が添加されていないものが好ましいが、例えばESC染料シリーズ(住友化学社製)等がある。
【0029】
分散染料としてより具体的には、アゾ系染料があり、これには、CI(カラーインデクス)ディスパースイエロー3、ディスパースイエロー7、ディスパースイエロー8、ディスパースレッド1、ディスパースレッド17、ディスパースレッド19、等が好ましい。また、キノフタロン系染料も分散染料として使用でき、これには、ディスパースイエロー54があり、分散染料としてのアントラキノン系染料として、ディスパースレッド4、ディスパースレッド11、ディスパースレッド60、ディスパースブルー14、ディスパースブルー26等がある。
【0030】
なお、上記の分散染料とは異なる染料として油溶性染料が知られているが、これには例えば、カヤセット染料シリーズ(日本化薬社製)、ダイアミラ染料シリーズ(三菱化成社製)、ミツイPS染料シリーズ(三井東圧社製)、スミプラスト染料シリーズ(住友化学社製)、アイゼン染料シリーズ(保土ヶ谷化学社製)等がある。
【0031】
油溶性染料として好ましいのは、ソルベントイエロー8、ソルベントイエロー16、ソルベントイエロー56、ソルベントレッド19、ソルベントレッド23(以上、アゾ染料)、ソルベントブルー35(キノフタロン染料)等がある。
【0032】
上記の各染料の他にジシアノスチリル系、トリシアノスチリル系、インドアニリン系構造の染料も使用できる。
【0033】
上記の分散染料は、空気中で200℃に加熱したときの残留分の割合を0.1重量%以下に抑えるために、昇華精製法等、なんらかの手段で精製してから使用することが望ましい。
【0034】
記録液は、50℃以下の温度範囲で上記の染料を5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、上記の溶媒に溶解して作製する。この時、溶解度を上げるために、2種以上の染料を混合して使用してもよい。同時に溶媒も2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
本発明に用いる記録液として、特に、上記の溶媒としてフタル酸ジアルキルエステルを使用することが望ましく、染料として上記の分散染料(疎水性)を使用する。
【0036】
この記録液の成分はいずれも、疎水性であり、水と接触しても溶解することがなく、従って、記録紙上から流れ落ちることがない。そして、普通紙上でも分散染料が発色するが、これは、液媒体であるフタル酸ジアルキルエステルが染料と同時に転写されて紙に付着し、これが分散染料の発色助剤となるためである。
【0037】
従来のインクジェット方式に用いられている染料は、一般に酸性染料が多いが、これは親水性があって記録紙に付着したときに記録紙上で流れてしまい、耐水性が悪く発色し難く、また、記録時の熱で自己分解によるコゲーションを生じ易い。これに対し、上記の分散染料は、そうした現象は生じないため、記録紙上に良好に付着して十二分に発色し、また、コゲーションも生じ難いものである。
【0038】
しかも、この分散染料と組み合わせてフタル酸ジアルキルエステルを使用すれば、この溶媒は記録紙中への浸透性が良好であり、染料を十二分に付着させることができ、かつ、分散染料を発色させる発色助剤としての作用もある。このため、この記録液を用いると、PPC用紙へも転写が可能となり、高画質の画像を形成することができる。また、記録液の染料濃度についても、従来では高々5重量%であったが、上記の組み合わせからなる記録液では、溶媒量を50〜98重量%と広範囲に設定でき、染料濃度を10重量%以上に高め、画像濃度を向上させることができる。
【0039】
本発明の記録方法に用いる転写ヘッドは、加熱手段を備えたノズル部と、このノズル部に記録液を供給するインクタンクと、ノズル部とインクタンクを結ぶ記録液供給路とから構成されてよい。
【0040】
ノズル部の記録液加熱部にポリシリコン等の発熱体を設け、この発熱体によって記録液を加熱することができる。その他、レーザ光で加熱することもできる。
【0041】
本発明の記録方法に使用できる印画紙は、PPC用紙等の普通紙、アート紙等の上質紙等であるが、特に階調性と濃度が高い高品質の画像を得るためには、分散染料を発色させる樹脂として、ポリエステル、ポリカーボネート、アセテート、CAB、ポリ塩化ビニル等を基紙上に塗布して作製した専用紙も使用できる。得られた画像の保存安定性を向上させるためには、転写後の印画紙に樹脂フィルムをラミネートすることが効果的である。
【0042】
本発明の記録方法において、記録の多色化(特にフルカラー化)を達成するには、減法混色の三原色のうち1色を呈する染料を含有する記録液と、この染料とは異なる減法混色の三原色の色を呈する少なくとも1種類の染料を含有する記録液とをそれぞれ選択的に加熱し、例えば、この操作をイエロー、マゼンタ、シアンに分解された画像信号についてそれぞれ繰り返すことによってフルカラー化を達成できる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0044】
図1は、本発明を非接触方式のサーマル型インクジェットプリンタ(例えばビデオプリンタ:以下、同様)に適用した一実施例を示すものである。
【0045】
本実施例のインクジェット記録方式には、図1に示す構造のノズル(ヘッド)31内の記録液33を記録信号に応じて、電気−熱変換体である発熱体30によって加熱し、記録液滴33aを記録紙40に対して放出し、記録するものである。
【0046】
記録液33は、染料と、フタル酸ジアルキルエステル又は芳香族炭化水素とからなっていて、貯蔵タンク(図示せず)からパイプ34を経てポンプ32に供給され、このポンプからパイプ35及びバルブ36を経てノズル31に導入される。
【0047】
そして、加熱手段30により記録液33を選択的に加熱して溶媒の体積膨張によって微小液滴化し、空隙37を飛翔によって移動させ、被記録体40上に連続的な階調を持つ画像が得られる。この操作を1回行えばモノカラーの画像が得られ、また、減法混色の三原色であるイエロー、マゼンタ、シアンに分解された画像信号について3本のノズルを用いてそれぞれ繰り返すことで、フルカラー化が達成できる。
【0048】
ここで、上記の空隙37は10〜500 μmであるのが好ましく、特に50〜200 μmであることが好ましい。空隙が10μm未満であると、ヘッドの移動中にヘッドが印画紙と接触する可能性が高く、画像転写の安定性が低下し易い。空隙37が 500μmを超えると、記録液滴が効率良く印画紙に到達せず、転写感度と画像の解像度が低下し易い。
【0049】
次に、上述した実施例の記録結果を説明する。
【0050】
例1
ソルベントイエロー56、ディスパースレッド1、ソルベントブルー35を、フタル酸ジブチルにそれぞれ15重量%溶解してイエロー、マゼンタ、シアンの各色の記録液をそれぞれ作製した。
【0051】
図1に示した装置により画像記録を行った。ノズル31はその先端部においてポリシリコン膜からなる電気−熱変換体30の発熱部と接触して設置され、また、その一方の端部には記録液33をノズル内に供給するためのポンプ32が連結されている。なお、記録液33は、記録液貯蔵タンクからポンプ32にパイプ34で輸送し、更にパイプ35及びバルブ36を介して供給される。電気−熱変換体30には、通電加熱のための電極が設置されている。また、記録紙40は実際には、回転移動のための回転自在なドラム(図示せず)上にセットされる。
【0052】
そして、画像を普通紙(コピー用紙)40に記録したところ、イエロー、マゼンタ、シアンの最高濃度の部分はマクベス濃度計でそれぞれ 1.5、 1.7、 1.6であった。この記録画像を水中に1分間浸漬させたが、記録材の溶け出しや、画像の滲みは全くなかった。取り出して乾燥後、再びマクベス濃度計で濃度測定したところ、濃度変化は全く認められなかった。
【0053】
例2
記録液の溶媒として、フタル酸ジオクチルを用いた以外は例1と同様にして画像を記録した。
【0054】
そして、画像を普通紙(コピー用紙)40に記録したところ、イエロー、マゼンタ、シアンの最高濃度の部分はマクベス濃度計でそれぞれ 1.5、 1.7、 1.5であった。この記録画像を水中に1分間浸漬させたが、記録材の溶け出しや、画像の滲みは全くなかった。取り出して乾燥後、再びマクベス濃度計で濃度測定したところ、濃度変化は全く認められなかった。
【0055】
例3
記録液の溶媒として、ジエチルナフタレンを用いた以外は例1と同様にして画像を記録した。
【0056】
そして、画像を普通紙(コピー用紙)40に記録したところ、イエロー、マゼンタ、シアンの最高濃度の部分はマクベス濃度計でそれぞれ 1.4、 1.6、 1.5であった。この記録画像を水中に1分間浸漬させたが、記録材の溶け出しや、画像の滲みは全くなかった。取り出して乾燥後、再びマクベス濃度計で濃度測定したところ、濃度変化は全く認められなかった。
【0057】
比較例1
下記組成の記録液を作製した。
イエロー:
ダイレクトイエロー86(3%)
水 (47%)
トリエチレングリコール(15%)
ポリエチレングリコール(15%)
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン(25%)
【0058】
マゼンタ:
アッシドレッド37(3%)
水 (47%)
トリエチレングリコール(20%)
グリセリン(10%)
N−メチル−2−ピロリドン(20%)
【0059】
シアン:
ダイレクトブルー86(3%)
水 (47%)
ポリエチレングリコール(13%)
グリセリン(17%)
N−メチル−2−ピロリドン(25%)
【0060】
この記録液を用い、例1と全く同様にして普通紙(コピー用紙)に画像記録したところ、イエロー、マゼンタ、シアンの最高濃度の部分はマクベス濃度計でそれぞれ 0.9、 1.3、 1.2であった。この記録画像を水中に1分間浸漬させたところ、記録材が溶け出し、さらに画像が滲み、判別できなくなった。
【0061】
以上、本発明の実施例を説明したが、上述の実施例は本発明の技術的思想に基いて更に変形が可能である。
【0062】
例えば、上述の溶媒や染料はそれぞれ、種々のもの或いは2種以上の併用が可能である。また、マゼンタ、イエロー、シアンの3色として(更には、黒を加えた)フルカラーの記録を行うほか、2色印刷、1色印刷のモノカラー又は白黒の記録を行うことができる。
【0063】
また、記録材を液滴化するエネルギーとしては、抵抗加熱等の加熱方式以外にもレーザ光等の加熱ビームの照射によってもよい。加熱の効率を良くするには、記録材に導電性物質を添加することができる。なお、加熱に発熱体とレーザを組み合わせることもできるが、この場合は、各加熱手段のパワーを下げても良好に記録を行うことができる。
【0064】
また、ヘッドの構造や形状は、前記以外の適宜の構造、形状としてよく、ヘッドを構成する各部分の材料には、他の適宜の材料を使用して良い。記録液の液滴化には、上記の発熱体のエネルギーを用いる加熱方式以外にも、圧電変換素子の機械的変形を利用する等の機械的手段を用いることもできる。
【0065】
【発明の作用効果】
本発明の記録方法によれば、記録材とこの記録材を溶解若しくは分散させる溶媒とを含有する記録液を記録液加熱部に供給し、加熱により前記記録液の状態を変化させて液滴を生成させ、この液滴を前記記録液加熱部と対向配置された被記録体へ移行させるようにした記録方法において、300℃以上に加熱したときに90重量%以上が気化しかつ残留物が10重量%以下であり、25℃での溶解度パラメータの値が7.5〜10.5の範囲にあり、分子量が550以下であり、かつ空気中で200℃に加熱したときの気化速度が1×10 -4 g / m 2 sec 以上であり、その条件で気化しない残留分の割合が0.1重量%以下である分散染料を前記記録材として、前記分散染料を50℃以下で5重量%以上溶解若しくは分散させる沸点150℃以上の芳香族エステル及び/又は芳香族炭化水素を前記物質としてそれぞれ含有する記録液を使用しているので、染料を十分に溶解又は分散させ、高沸点で疎水性の芳香族エステル及び/又は芳香族炭化水素を溶媒として使用し、記録液濃度の変化を抑制し、水と接触しても溶解することがなく、従って、被記録体上から流れ落ちることのない良好な画像を形成することができる。普通紙上でも分散染料が発色するが、これは、液媒体であるフタル酸エステル等が染料と同時に転写されて紙に付着し、これが分散染料の発色助剤となるためである。
【0066】
このため、熱転写方式のインクジェット記録として、小型化、保守容易性、即時性、画像の高品位化、高階調性等の特長を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に使用するプリンタヘッドの概略断面図である。
【図2】従来の感熱記録ヘッドを用いた記録装置の要部正面図である。
【符号の説明】
30・・・電気−熱変換体
31・・・ノズル(ヘッド)
32・・・ポンプ
33・・・記録液
33a・・・液滴
36・・・バルブ
37・・・空隙
40・・・記録紙
【産業上の利用分野】
本発明は、記録方法(特に、画像情報に応じた選択的加熱により記録部から記録液を液滴として吐出せしめ、対向する印画紙に転写する、フルカラー画像記録方法)、及びこの方法に使用する記録液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオカメラ、コンピュータグラフィクス等のカラー化が進むにつれ、ハードコピーのカラー化に対するニーズが急速に高まっている。それに対して、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式、熱現像銀塩方式等のカラーハードコピー方式が提案されている。これらの記録方式の中で、高画質の画像を簡単な装置で手軽に出力する方法は、染料拡散熱転写方式とインクジェット方式に大きく分類できる。
【0003】
これらの記録方式の中で、染料拡散熱転写方式によれば、適当なバインダ樹脂中に高濃度の転写染料の分散するインク層が塗布されいてるインクリボン又はシートと、転写された染料を受容する染着樹脂がコーティングされた印画紙等の被転写体を、一定の圧力で密着させ、インクシート上に位置する感熱記録ヘッドから画像情報に応じた熱が加えられ、インクシートから受像層に加えられた熱量に応じて転写染料を熱転写させる。
【0004】
上記の操作を、減法混色の三原色、即ち、イエロー、マゼンタ、シアンに分解された画像信号についてそれぞれ繰り返すことによって、連続的な階調を持つフルカラー画像を得ることを特徴とする、いわゆる熱転写方式は、小型化、保守が容易で、即時性を備え、銀塩カラー写真並の高品位な画像を得る優れた技術として注目を集めている。
【0005】
図2は、こうした熱転写方式のプリンタの要部の概略正面図である。
【0006】
感熱記録ヘッド(以下、サーマルヘッドと呼ぶ)1とプラテンローラ3とが対向し、これらの間に、ベースフィルム12b上にインク層12aを設けたインクシート12と、紙20b上に染着樹脂層20aを設けた被記録紙(被転写体)20とが挟まれ、これらが回転するプラテンローラ3によってサーマルヘッド1に押し付けられて走行する。
【0007】
そして、サーマルヘッド1によって選択的に加熱されたインク層12a中のインク(転写染料)が、被転写体20の染着樹脂層20aにドット状に転写され、熱転写記録が遂行される。このような熱転写記録には、被記録紙20の走行方向と直交する方向にサーマルヘッドを走査するシリアル方式や、同被記録紙走行方向に直交して一本のサーマルヘッドを固定して配したライン方式とが採用されている。
【0008】
しかし、この方式はインクシートの使い捨てに起因する多量の廃棄物の発生と、高いランニングコストが大きな欠点であり、その普及が妨げられている。
【0009】
このように、従来の熱転写方式は高画質であるが、専用印画紙と使い捨てのインクリボン又はシートを使用するためにランニングコストが高い。
【0010】
熱現像銀塩方式も高画質であるが、やはり専用印画紙と使い捨てのインクリボン又はシートを使用するためにランニングコストが高く、装置コストも高い。
【0011】
こうしたノンインパクト記録法は、記録時における騒音が極めて小さいという点で広く普及しつつある。中でもいわゆるインクジェット記録法は、高速記録が可能であり、しかも、いわゆる普通紙に特別の定着処理を必要とせずに記録できるため、近年、コンピュータグラフィックス等の画像をハードコピーする技術として極めて有力な記録方法となりつつある。
【0012】
上記のインクジェット方式とは、特公昭61−59911 号や特公平5−217 号公報等に示されるように、画像情報に応じて、静電吸引方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)、サーマル方式(バブルジェット方式)等の方法で記録液の小滴を記録ヘッドに設けられたノズルから飛翔させ、記録部材に付着せしめ、記録を行うものである。
【0013】
従って、インクシート等を使用する場合のような廃棄物の発生はほとんどなく、ランニングコストは低い。最近では、特にサーマル方式が簡易にカラー画像を出力できることから、普及が拡大している。
【0014】
しかしながら、従来、インクジェット記録に用いられてきた記録液は、酸性染料等の水溶性染料を水と水溶性有機溶剤との混合物に溶解したものであるため、記録画像に耐水性がないという問題があった。
【0015】
これを改良するために、疎水性の染料を用いることが当然に試みられた。しかし、分散染料や油溶性染料等の疎水性染料は普通紙中で発色しない。
【0016】
また、液溶媒として用いる有機溶剤として通常用いられているトルエンやアセトン等は、発火の危険性があった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した熱転写方式とインクジェット方式の双方の利点を生かしつつ、それらの欠点を同時に解消して、高画質と即時性を兼ね備え、装置の小型、軽量化が可能であり、廃棄物が発生せずに、普通紙にも転写可能であり、低消費電力及び低ランニングコストで実施できる記録方法と、この方法に使用する記録液を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、記録材として分散染料を用い、溶媒(液媒体)としてフタル酸ジアルキルエステルを用いることにより、普通紙にカラー画像が記録可能でかつ、耐水性を実現できることを見出し、本発明に至った。
【0019】
即ち、本発明は、記録材とこの記録材を溶解若しくは分散させる物質とを含有する記録液を記録液加熱部に供給し、加熱により前記記録液の状態を変化させて液滴を生成させ、この液滴を前記記録液加熱部と対向配置された被記録体へ移行させるようにした記録方法において、記録に際し、
300℃以上に加熱したときに90重量%以上が気化しかつ残留物が10重量%以下 であり、25℃での溶解度パラメータの値が7.5〜10.5の範囲にあり、分子量が 550以下であり、かつ空気中で200℃に加熱したときの気化速度が1×10 -4 g / m 2 sec 以上であり、その条件で気化しない残留分の割合が0.1重量%以下である分散 染料を前記記録材として、
前記分散染料を50℃以下で5重量%以上溶解若しくは分散させる沸点150℃以上 の芳香族エステル及び/又は芳香族炭化水素を前記物質として
それぞれ含有する記録液を使用することを特徴とする記録方法に係るものである。
【0020】
本発明の記録方法に使用する記録液の溶媒は、上記の染料を十分に溶解又は分散させるものであると同時に、その沸点が 150℃以上であり、またPPC用紙(普通紙)、アート紙等の繊維に自発的に吸収される性質を持つことが、普通紙等への転写の観点から好ましい。
【0021】
溶媒が前記分散染料を50℃以下で5重量%以上、特に10重量%以上溶解するためには、25℃での溶媒の溶解度パラメータ(J.H.ヒルデブランドにより定義されたもの)の値が7.5〜10.5の範囲とする。更に、引火点が150℃以上であって、人体に対する毒性が低く、無色であることが好ましい。溶解度パラメータが10.5を超えると、染料の溶解度が低くなり、かつ空気中の水蒸気を吸着して転写感度の再現性が悪化し易い。また、溶解度パラメータが7.5未満であると、やはり染料の溶解度が低くなり易い。
【0022】
具体的には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸ジアルキルエステル類を含む芳香族エステル類、及び/又は、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン等の芳香族炭化水素類等を本発明における記録液の溶媒として使用することが望ましい。これらのフタル酸ジアルキルエステル等の溶媒は、染料の溶解度が高く、常温で液体でかつ無色であり、引火点が 150℃以上で、人体に対する毒性の低いものが好ましい。
【0023】
本発明の記録液に用いる染料は、300℃以上に加熱したときに90重量%以上が気化しかつ残留物が10重量%以下であるが、カラーインデックス記載の分散染料(disperse dye)として分類される染料である。
【0024】
より正確に定義すると、25℃での溶解度パラメータ(J.H.ヒルデブランドにより定義)の値が7.5〜10.5の範囲にあり、分子量が550以下であり、かつ空気中で200℃に加熱したときの気化速度が1×10-4g/m2sec以上であり、その条件で気化しない残留分の割合が0.1重量%以下の分散染料である。
【0025】
染料の溶解度パラメータが上記の範囲にないと、前記の溶媒に5重量%以上溶解し難い。
【0026】
本発明の記録方法における染料転写において、染料自体の気化速度が上記の範囲未満であれば、転写中に記録液中の染料濃度が上昇して飽和溶解度を超えて固体染料が析出し、目詰まりを引き起こす。
【0027】
また、染料の耐熱性が低く、或いは染料中に不揮発性不純物が多量にあり、空気中で 200℃に加熱したときの残留分の割合が 0.1重量%を超えると、やはり目詰まりを引き起し易い。
【0028】
上記の分散染料は、分散剤が添加されていないものが好ましいが、例えばESC染料シリーズ(住友化学社製)等がある。
【0029】
分散染料としてより具体的には、アゾ系染料があり、これには、CI(カラーインデクス)ディスパースイエロー3、ディスパースイエロー7、ディスパースイエロー8、ディスパースレッド1、ディスパースレッド17、ディスパースレッド19、等が好ましい。また、キノフタロン系染料も分散染料として使用でき、これには、ディスパースイエロー54があり、分散染料としてのアントラキノン系染料として、ディスパースレッド4、ディスパースレッド11、ディスパースレッド60、ディスパースブルー14、ディスパースブルー26等がある。
【0030】
なお、上記の分散染料とは異なる染料として油溶性染料が知られているが、これには例えば、カヤセット染料シリーズ(日本化薬社製)、ダイアミラ染料シリーズ(三菱化成社製)、ミツイPS染料シリーズ(三井東圧社製)、スミプラスト染料シリーズ(住友化学社製)、アイゼン染料シリーズ(保土ヶ谷化学社製)等がある。
【0031】
油溶性染料として好ましいのは、ソルベントイエロー8、ソルベントイエロー16、ソルベントイエロー56、ソルベントレッド19、ソルベントレッド23(以上、アゾ染料)、ソルベントブルー35(キノフタロン染料)等がある。
【0032】
上記の各染料の他にジシアノスチリル系、トリシアノスチリル系、インドアニリン系構造の染料も使用できる。
【0033】
上記の分散染料は、空気中で200℃に加熱したときの残留分の割合を0.1重量%以下に抑えるために、昇華精製法等、なんらかの手段で精製してから使用することが望ましい。
【0034】
記録液は、50℃以下の温度範囲で上記の染料を5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、上記の溶媒に溶解して作製する。この時、溶解度を上げるために、2種以上の染料を混合して使用してもよい。同時に溶媒も2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
本発明に用いる記録液として、特に、上記の溶媒としてフタル酸ジアルキルエステルを使用することが望ましく、染料として上記の分散染料(疎水性)を使用する。
【0036】
この記録液の成分はいずれも、疎水性であり、水と接触しても溶解することがなく、従って、記録紙上から流れ落ちることがない。そして、普通紙上でも分散染料が発色するが、これは、液媒体であるフタル酸ジアルキルエステルが染料と同時に転写されて紙に付着し、これが分散染料の発色助剤となるためである。
【0037】
従来のインクジェット方式に用いられている染料は、一般に酸性染料が多いが、これは親水性があって記録紙に付着したときに記録紙上で流れてしまい、耐水性が悪く発色し難く、また、記録時の熱で自己分解によるコゲーションを生じ易い。これに対し、上記の分散染料は、そうした現象は生じないため、記録紙上に良好に付着して十二分に発色し、また、コゲーションも生じ難いものである。
【0038】
しかも、この分散染料と組み合わせてフタル酸ジアルキルエステルを使用すれば、この溶媒は記録紙中への浸透性が良好であり、染料を十二分に付着させることができ、かつ、分散染料を発色させる発色助剤としての作用もある。このため、この記録液を用いると、PPC用紙へも転写が可能となり、高画質の画像を形成することができる。また、記録液の染料濃度についても、従来では高々5重量%であったが、上記の組み合わせからなる記録液では、溶媒量を50〜98重量%と広範囲に設定でき、染料濃度を10重量%以上に高め、画像濃度を向上させることができる。
【0039】
本発明の記録方法に用いる転写ヘッドは、加熱手段を備えたノズル部と、このノズル部に記録液を供給するインクタンクと、ノズル部とインクタンクを結ぶ記録液供給路とから構成されてよい。
【0040】
ノズル部の記録液加熱部にポリシリコン等の発熱体を設け、この発熱体によって記録液を加熱することができる。その他、レーザ光で加熱することもできる。
【0041】
本発明の記録方法に使用できる印画紙は、PPC用紙等の普通紙、アート紙等の上質紙等であるが、特に階調性と濃度が高い高品質の画像を得るためには、分散染料を発色させる樹脂として、ポリエステル、ポリカーボネート、アセテート、CAB、ポリ塩化ビニル等を基紙上に塗布して作製した専用紙も使用できる。得られた画像の保存安定性を向上させるためには、転写後の印画紙に樹脂フィルムをラミネートすることが効果的である。
【0042】
本発明の記録方法において、記録の多色化(特にフルカラー化)を達成するには、減法混色の三原色のうち1色を呈する染料を含有する記録液と、この染料とは異なる減法混色の三原色の色を呈する少なくとも1種類の染料を含有する記録液とをそれぞれ選択的に加熱し、例えば、この操作をイエロー、マゼンタ、シアンに分解された画像信号についてそれぞれ繰り返すことによってフルカラー化を達成できる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0044】
図1は、本発明を非接触方式のサーマル型インクジェットプリンタ(例えばビデオプリンタ:以下、同様)に適用した一実施例を示すものである。
【0045】
本実施例のインクジェット記録方式には、図1に示す構造のノズル(ヘッド)31内の記録液33を記録信号に応じて、電気−熱変換体である発熱体30によって加熱し、記録液滴33aを記録紙40に対して放出し、記録するものである。
【0046】
記録液33は、染料と、フタル酸ジアルキルエステル又は芳香族炭化水素とからなっていて、貯蔵タンク(図示せず)からパイプ34を経てポンプ32に供給され、このポンプからパイプ35及びバルブ36を経てノズル31に導入される。
【0047】
そして、加熱手段30により記録液33を選択的に加熱して溶媒の体積膨張によって微小液滴化し、空隙37を飛翔によって移動させ、被記録体40上に連続的な階調を持つ画像が得られる。この操作を1回行えばモノカラーの画像が得られ、また、減法混色の三原色であるイエロー、マゼンタ、シアンに分解された画像信号について3本のノズルを用いてそれぞれ繰り返すことで、フルカラー化が達成できる。
【0048】
ここで、上記の空隙37は10〜500 μmであるのが好ましく、特に50〜200 μmであることが好ましい。空隙が10μm未満であると、ヘッドの移動中にヘッドが印画紙と接触する可能性が高く、画像転写の安定性が低下し易い。空隙37が 500μmを超えると、記録液滴が効率良く印画紙に到達せず、転写感度と画像の解像度が低下し易い。
【0049】
次に、上述した実施例の記録結果を説明する。
【0050】
例1
ソルベントイエロー56、ディスパースレッド1、ソルベントブルー35を、フタル酸ジブチルにそれぞれ15重量%溶解してイエロー、マゼンタ、シアンの各色の記録液をそれぞれ作製した。
【0051】
図1に示した装置により画像記録を行った。ノズル31はその先端部においてポリシリコン膜からなる電気−熱変換体30の発熱部と接触して設置され、また、その一方の端部には記録液33をノズル内に供給するためのポンプ32が連結されている。なお、記録液33は、記録液貯蔵タンクからポンプ32にパイプ34で輸送し、更にパイプ35及びバルブ36を介して供給される。電気−熱変換体30には、通電加熱のための電極が設置されている。また、記録紙40は実際には、回転移動のための回転自在なドラム(図示せず)上にセットされる。
【0052】
そして、画像を普通紙(コピー用紙)40に記録したところ、イエロー、マゼンタ、シアンの最高濃度の部分はマクベス濃度計でそれぞれ 1.5、 1.7、 1.6であった。この記録画像を水中に1分間浸漬させたが、記録材の溶け出しや、画像の滲みは全くなかった。取り出して乾燥後、再びマクベス濃度計で濃度測定したところ、濃度変化は全く認められなかった。
【0053】
例2
記録液の溶媒として、フタル酸ジオクチルを用いた以外は例1と同様にして画像を記録した。
【0054】
そして、画像を普通紙(コピー用紙)40に記録したところ、イエロー、マゼンタ、シアンの最高濃度の部分はマクベス濃度計でそれぞれ 1.5、 1.7、 1.5であった。この記録画像を水中に1分間浸漬させたが、記録材の溶け出しや、画像の滲みは全くなかった。取り出して乾燥後、再びマクベス濃度計で濃度測定したところ、濃度変化は全く認められなかった。
【0055】
例3
記録液の溶媒として、ジエチルナフタレンを用いた以外は例1と同様にして画像を記録した。
【0056】
そして、画像を普通紙(コピー用紙)40に記録したところ、イエロー、マゼンタ、シアンの最高濃度の部分はマクベス濃度計でそれぞれ 1.4、 1.6、 1.5であった。この記録画像を水中に1分間浸漬させたが、記録材の溶け出しや、画像の滲みは全くなかった。取り出して乾燥後、再びマクベス濃度計で濃度測定したところ、濃度変化は全く認められなかった。
【0057】
比較例1
下記組成の記録液を作製した。
イエロー:
ダイレクトイエロー86(3%)
水 (47%)
トリエチレングリコール(15%)
ポリエチレングリコール(15%)
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン(25%)
【0058】
マゼンタ:
アッシドレッド37(3%)
水 (47%)
トリエチレングリコール(20%)
グリセリン(10%)
N−メチル−2−ピロリドン(20%)
【0059】
シアン:
ダイレクトブルー86(3%)
水 (47%)
ポリエチレングリコール(13%)
グリセリン(17%)
N−メチル−2−ピロリドン(25%)
【0060】
この記録液を用い、例1と全く同様にして普通紙(コピー用紙)に画像記録したところ、イエロー、マゼンタ、シアンの最高濃度の部分はマクベス濃度計でそれぞれ 0.9、 1.3、 1.2であった。この記録画像を水中に1分間浸漬させたところ、記録材が溶け出し、さらに画像が滲み、判別できなくなった。
【0061】
以上、本発明の実施例を説明したが、上述の実施例は本発明の技術的思想に基いて更に変形が可能である。
【0062】
例えば、上述の溶媒や染料はそれぞれ、種々のもの或いは2種以上の併用が可能である。また、マゼンタ、イエロー、シアンの3色として(更には、黒を加えた)フルカラーの記録を行うほか、2色印刷、1色印刷のモノカラー又は白黒の記録を行うことができる。
【0063】
また、記録材を液滴化するエネルギーとしては、抵抗加熱等の加熱方式以外にもレーザ光等の加熱ビームの照射によってもよい。加熱の効率を良くするには、記録材に導電性物質を添加することができる。なお、加熱に発熱体とレーザを組み合わせることもできるが、この場合は、各加熱手段のパワーを下げても良好に記録を行うことができる。
【0064】
また、ヘッドの構造や形状は、前記以外の適宜の構造、形状としてよく、ヘッドを構成する各部分の材料には、他の適宜の材料を使用して良い。記録液の液滴化には、上記の発熱体のエネルギーを用いる加熱方式以外にも、圧電変換素子の機械的変形を利用する等の機械的手段を用いることもできる。
【0065】
【発明の作用効果】
本発明の記録方法によれば、記録材とこの記録材を溶解若しくは分散させる溶媒とを含有する記録液を記録液加熱部に供給し、加熱により前記記録液の状態を変化させて液滴を生成させ、この液滴を前記記録液加熱部と対向配置された被記録体へ移行させるようにした記録方法において、300℃以上に加熱したときに90重量%以上が気化しかつ残留物が10重量%以下であり、25℃での溶解度パラメータの値が7.5〜10.5の範囲にあり、分子量が550以下であり、かつ空気中で200℃に加熱したときの気化速度が1×10 -4 g / m 2 sec 以上であり、その条件で気化しない残留分の割合が0.1重量%以下である分散染料を前記記録材として、前記分散染料を50℃以下で5重量%以上溶解若しくは分散させる沸点150℃以上の芳香族エステル及び/又は芳香族炭化水素を前記物質としてそれぞれ含有する記録液を使用しているので、染料を十分に溶解又は分散させ、高沸点で疎水性の芳香族エステル及び/又は芳香族炭化水素を溶媒として使用し、記録液濃度の変化を抑制し、水と接触しても溶解することがなく、従って、被記録体上から流れ落ちることのない良好な画像を形成することができる。普通紙上でも分散染料が発色するが、これは、液媒体であるフタル酸エステル等が染料と同時に転写されて紙に付着し、これが分散染料の発色助剤となるためである。
【0066】
このため、熱転写方式のインクジェット記録として、小型化、保守容易性、即時性、画像の高品位化、高階調性等の特長を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に使用するプリンタヘッドの概略断面図である。
【図2】従来の感熱記録ヘッドを用いた記録装置の要部正面図である。
【符号の説明】
30・・・電気−熱変換体
31・・・ノズル(ヘッド)
32・・・ポンプ
33・・・記録液
33a・・・液滴
36・・・バルブ
37・・・空隙
40・・・記録紙
Claims (5)
- 記録材とこの記録材を溶解若しくは分散させる物質とを含有する記録液を記録液加熱部に供給し、加熱により前記記録液の状態を変化させて液滴を生成させ、この液滴を前記記録液加熱部と対向配置された被記録体へ移行させるようにした記録方法において、記録に際し、
300℃以上に加熱したときに90重量%以上が気化しかつ残留物が10重量%以下 であり、25℃での溶解度パラメータの値が7.5〜10.5の範囲にあり、分子量が 550以下であり、かつ空気中で200℃に加熱したときの気化速度が1×10 -4 g / m 2 sec 以上であり、その条件で気化しない残留分の割合が0.1重量%以下である分散 染料を前記記録材として、
前記分散染料を50℃以下で5重量%以上溶解若しくは分散させる沸点150℃以上 の芳香族エステル及び/又は芳香族炭化水素を前記物質として
それぞれ含有する記録液を使用することを特徴とする記録方法。 - 芳香族エステルがフタル酸ジアルキルエステルである、請求項1に記載した記録方法。
- 記録液加熱部に設けられた発熱体によって記録液を加熱する、請求項1に記載した記録方法。
- 記録材とこの記録材を溶解若しくは分散させる物質とを含有し、記録液加熱部に供給され、加熱により液滴となって前記記録液加熱部と対向配置された被記録体へ移行せしめられる記録液において、
300℃以上に加熱したときに90重量%以上が気化しかつ残留物が10重量%以下 であり、25℃での溶解度パラメータの値が7.5〜10.5の範囲にあり、分子量が 550以下であり、かつ空気中で200℃に加熱したときの気化速度が1×10 -4 g / m 2 sec 以上であり、その条件で気化しない残留分の割合が0.1重量%以下である分散 染料を前記記録材として、
前記分散染料を50℃以下で5重量%以上溶解若しくは分散させる沸点150℃以上 の芳香族エステル及び/又は芳香族炭化水素を前記物質として
それぞれ含有することを特徴とする記録液。 - 芳香族エステルがフタル酸ジアルキルエステルである、請求項4に記載した記録液。
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