JP3643230B2 - 自動車のエアスクープ取付け構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のエンジンルーム内に冷却風を導入するためエアスクープをフードパネルに取り付けるための構造に関し、特に温度上昇によるエアスクープの熱膨張を吸収できるようにした取付け構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ターボエンジンを搭載した自動車では、フードパネルに樹脂製のエアスクープを取付け、該エアスクープにより冷却風をエンジンルーム内に導入してインタクーラを冷却するようにしたものがある。このエアスクープを取付けるにあたっては、エンジンルーム内の温度上昇によるエアスクープの熱膨張を吸収できるようにした構造が必要である。
【0003】
このようなエアスクープ取付け構造として、従来、図8に示すように、エアスクープ50の底面に一方が開口した箱状の取付け座51を一体形成するとともに、該取付け座51の底壁51aにU字状のクリップ係止孔52を形成し、フードパネル側に装着されたクリップ53の首部53aを上記係止孔52にスライド可能に係合させるようにした構造がある(例えば、実開平7−20403号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構造では、エアスクープの取付け座を箱状にするという複雑な構造を採用しており、それだけ成形用金型の構造も複雑になり、コストが上昇するという問題がある。またエアスクープの樹脂成形時に、上記取付け座51部分の肉厚の不均一によりエアスクープの意匠表面にひけが発生する場合があり、外観が悪化するという問題もある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、構造を簡単にしてコストを低減できるとともに、ひけの発生を防止して外観の悪化を防止できる自動車のエアスクープ取付け構造を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、エンジンルームを開閉するフードパネルに形成された装着孔にクリップ部材を装着し、上記エンジンルーム内に冷却風を供給するエアスクープの取付けボス部を上記クリップ部材に嵌合させるようにした自動車のエアスクープ取付け構造において、上記クリップ部材を、上記装着孔の周縁に当接するフランジ部と、該フランジ部から下方に略平行に延びる一対のガイド片と、該一方のガイド片の内面に突出形成された爪部とを備えたものとし、上記取付けボス部を、上記一方のガイド片の内面に摺接しかつ上記爪部に係合する窓部が形成された平板部と、該平板部の両縁に沿って一体形成され上記他方のガイド片の内面に摺接する脚部とからなる横断面コ字状のものとし、上記取付けボス部を上記両ガイド片の内面に沿って軸直角方向にスライド可能とし、上記クリップ部材及び取付けボス部は、エアスクープの車幅方向中央部及び車幅方向側部に配置され、車幅方向中央部又は側部の何れか一方の取付けボス部は上記コ字形の開口方向を車幅方向に向けて配置され、何れか他方の取付けボス部は上記コ字形の開口方向を車両前後方向に向けて配置されており、さらに上記取付けボス部は、該取付けボス部の上記スライド方向と直角方向への変位を許容する薄肉部を介して上記エアスクープに接続されていることを特徴としている。
【0008】
【発明の作用効果】
本発明に係るエアスクープの取付け構造によれば、フードパネル側に装着されたクリップ部材の左右一対のガイド片間に、エアスクープ側の取付けボス部を挿入すると、該ボス部の平板部の窓部に一方のガイド片の爪部が係合し、また取付けボス部は両ガイド片に沿って該ボス部の軸線と直角方向にスライド可能となる。従って、エアスクープとフードパネルとの間の熱膨張差の生じる方向に上記スライド方向を設定することにより、上記熱膨張の差を吸収できる。
【0009】
そして本発明では、取付けボス部を、平板部と脚部とからなる横断面コ字状という単純形状に設定することができ、箱状の取付け座を形成する従来構造に比べて金型構造を簡単にでき、それだけ金型のコストを低減できる。
【0010】
また本発明では、上記取付けボス部を、該取付けボス部の上記スライド方向と直角方向への変位を許容する薄肉部を介してエアスクープに接続したので、上記スライド方向の熱膨張及び該スライド方向と直角方向の熱膨張の両方を吸収できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図7は、本発明の一実施形態による自動車のエアスクープ取付け構造を説明するための図であり、図1,図2はエアスクープの断面図,斜視図,図3はクリップ部材と取付けボス部との取付け状態を示す分解斜視図、図4はクリップ部材の一部側面図、図5は図1のV-V 線断面図、図6は図2のVI-VI 線断面図、図7はエアスクープが配設された自動車の斜視図である。
【0012】
図において、1は本実施形態構造が適用された自動車であり、これは左, 右のフロントサイドカバー2,2と、該両サイドカバー2,2の上端間に開閉可能に配設されたフードパネル3とで形成されたエンジルーム1a内にターボエンジン(不図示)を搭載した構成となっている。
【0013】
上記フードパネル3にはエアスクープ取付け開口3aが形成されており、該開口3aには樹脂製のエアスクープ4が配設されている。このエアスクープ4の本体部は、底壁部4aの後端と天壁部4bの前端とを縦壁部4cにより一体に接続形成した概略構造のものであり、該縦壁部4cには車幅方向に延びる空気導入口4dが形成されている。この導入口4dの周縁にはガーニッシュ5が装着されている。また上記エアスクープ4の周縁にはフードパネル3との間をシールするシールテープ8が装着されている。
【0014】
上記エアスクープ4の空気導入口4dにはエアガイドダクト6が接続されており、該エアガイドダクト6の下流端はインタークーラ(不図示)に連通接続されている。これにより上記エアスクープ4の空気導入口4dから導入された冷却風はエアガイドダクト6を通ってインタクーラに供給される。
【0015】
上記エアスクープ4の底壁部4aの前縁の車幅方向中央には位置決め突起7が一体形成されており、該位置決め突起7はフードパネル3に形成された位置決め孔3bに嵌合挿入されている。このようにしてエアスクープ4の前後方向,及び左右方向の取付け位置が設定されている。
【0016】
また上記エアスクープ4の左, 右側部の前側寄り部分にはボス部9,9が下方に突出形成されている。このボス部9は、図6に示すように、円柱状の螺挿部9aと、該螺挿部9aと天壁部4bとを連結する連結部9bとからなる。上記ボス部9はフードパネル3の貫通孔3dからエンジンルーム1a内に突出しており、該ボス部9にフードパネル3の内面との間にキャップ10を介在させてボルト11をねじ込むことによりフードパネル3に固定されている。
【0017】
ここで上記連結部9bは車両後方向に開口する横断面コ字形状でかつその天壁部4bとの接続端部には薄肉部9cが形成されている。該薄肉部9cは、該ボス部9が前後方向(矢印a方向)及び車幅方向(矢印b方向)に弾性変形可能となるように設定されている。これによりエアスクープ4の車幅方向,及び前後方向の熱膨張を吸収できるようになっている。
【0018】
上記エアスクープ4の天壁部4bの車幅方向中央部,及び左, 右側端部にはそれぞれ取付けボス部15が形成されている。この取付けボス部15は、長方形状の平板部15aと、該平板部15aの両縁にこれの長手方向に沿って延びる脚部15b,15bとを一体形成してなる横断面コ字状のものであり、上記平板部15aの下部には両脚部15bの内縁まで延びる矩形状の窓部15cが貫通形成されている。また上記平板部15a及び両脚部15bの上記天壁4bとの接続端部には薄肉部16が形成されている。該薄肉部16は、取付けボス部15が上記コ字形の開口方向(矢印B方向)及びこれと直角方向(矢印A方向)に弾性変形可能となるように設定されている。
【0019】
上記フードパネル3の各取付けボス部15に対応する部分にはクリップ装着孔3cが形成されており、またフードパネル3の下面には車幅方向に延びる横断面ハット状の補強部材18が上記クリップ装着孔3cを間隔を開けて下方から覆うように配設されている。
【0020】
そして上記各クリップ装着孔3cには樹脂製のクリップ部材20が装着されている。このクリップ部材20は、シールパッキン17を介して上記フードパネルの上面に圧接するフランジ部21と、該フランジ部21の下面から下方に延びる一対のガイド片22,23と、該各ガイド片22,23の側端部同士を接続するように配置された一対の側壁部24,24とから構成されており、該各側壁部24,24,及び各ガイド片22,23に囲まれた部分が長方形状の挿通孔20aとなっている。この挿通孔20aの長辺寸法は上記取付けボス部15の平板部15a方向の長さよりスライド代分だけ長くなっている。
【0021】
ここで上記中央部の取付けボス部15は上記開口方向を車幅方向に向けて配置されており、また上記左, 右の取付けボス部15′は上記開口方向を車両前後方向に向けて配置されている。従って上記中央部のクリップ部材20は上記長方形の長辺を前後方向に向けて配置され、左右のクリップ部材20′は上記長方形の長辺を左右方向に向けて配置されている。
【0022】
また各側壁部24の外側面下部には係合片25が一体形成されている。該各係合片25は上方に延び、その上端部は上記フランジ部21の切欠き部21a内に位置しており、上記側壁部24の面と直角方向に弾性変形可能となっている。また該係合片25の上端部には上記フードパネル3の装着孔3cの縁部に係合する係合段部25aが形成されており、該係合段部25a,上記ガイド片22,23と上記フランジ部21とのコーナ部には環状のシールパッキン17が装着されている。
【0023】
上記一方のガイド片22の両側部には該ガイド片22を上記側壁部24,24と分離するためのスリット22a,22aが形成されており、該スリット22aを設けたことにより上記ガイド片22は該ガイド片22の面と直角方向に弾性変形可能となっている。またこのガイド片22の内面には爪部22bが突出形成されている。
【0024】
そして上記クリップ部材20の貫通孔20a内には上記エアスクープ4の取付けボス部15が挿入されており、該取付けボス部15の平板部15aは一方のガイド片22の内面に摺接し、また両脚部15b,15bは他方のガイド片23の内面に摺接している。さらにまた上記平板部15aの窓部15cの下縁には上記ガイド片22の爪部22bの下縁が係合している。
【0025】
これにより上記取付けボス部15は上下方向,及びガイド片22,23の面と直角方向(矢印B方向)へのスライドは阻止され、かつガイド片22,23の面方向(矢印A方向)へのスライドは可能となっている。
【0026】
次に本実施形態の作用効果を説明する。
エアスクープ4をフードパネル3に取り付けるには、まず、クリップ部材20にシールパッキン17を装着した状態でガイド片22,23及び係合片25,25部分を装着孔3c内に挿入する。該クリップ部材20を押し込むに伴って係合片25が装着孔3cの縁部により内方に押されて弾性変形し、さらに押し込むと係合片25の係合段部25aが装着孔3cの縁部に係合し、該クリップ部材20がフードパネル3に装着される。このときシールパッキン17がフランジ部21とフードパネル3間に挟持され、両者間をシールする。なお、ガイド片22,23は装着孔3cに抵抗なく挿入される。
【0027】
次にエアスクープ4の先端中央の位置決め突起7をフードパネル3の位置決め孔3bに嵌合させ、また前部左右のボス部9をフードパネル3の貫通孔3dからエンジンルーム1a内に挿入し、該ボス部9にキャップ10を介在させてボルト11をねじ込むことによりフードパネル3に固定する。
【0028】
そして中央の取付けボス部15及び後部左右の取付けボス部15′,15′をそれぞれクリップ部材20及び20′,20′の貫通孔20a内に挿入する。するとこの挿入に伴って、平板部15aの先端部がガイド片22の爪部22bに当接して該ガイド片22を外側に押し拡げながら下降し、窓部15cまでくると該爪部22bの下端面が該窓部15cの下縁に係合し、これにより取付けボス部15がクリップ部材20を介してフードパネル3に固定される。
【0029】
このように本実施形態では、取付けボス部15はクリップ部材20に対して左, 右の側壁部24,24間でスライド可能に結合される。そのためエアスクープ4の後部中央部の後方への熱膨張は中央部の取付けボス部15の前後方向のスライドにより吸収され、後部の左右両側部の左右方向への熱膨張は左, 右の取付けボス部15′の左右方向のスライドにより吸収される。また左右の取付けボス部15′の前後方向の熱膨張については該取付けボス部15′が薄肉部16により前後方向に弾性変形可能になっていることから吸収することができる。
【0030】
また本実施形態では、上記取付けボス部15を平板部15aと両脚部15b,15bとからなる横断面コ字状という単純な形状としたので、従来の箱状の取付け座に比べて構造が簡単であり、それだけ金型のコストを低減できる。
【0031】
また上記取付けボス部15とエアスクープ4とは薄肉部16を介して接続されており、それだけ該接続部の肉厚の不均一さが緩和され、その結果エアスクープ4の意匠表面にひけが発生するのを防止でき、外観の悪化を回避できる。
【0032】
ここで、上記実施形態では、エアスクープ4の取付けボス部15をクリップ部材20の側壁部24,24間にてスライド可能としたが、本発明の取付けボス部とクリップ部材とを組付け基準とすることも可能である。
【0033】
即ち、図4に二点鎖線で示すように、取付けボス部30の平板部方向の寸法をを左, 右の側壁部24,24間寸法と同じに設定することにより、該取付けボス部30を前後,左右の何れの方向に対してもスライドが規制されるようにするものである。これにより該取付けボス部30を組付け時の基準とすることができる。このようにした場合は、1つのクリップ部材を組付け基準用とスライド用との両方に兼用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるエアスクープ取付け構造を説明するための断面図である(図7のI−I線断面図)。
【図2】上記エアスクープの斜視図である。
【図3】上記エアスクープの取付けボス部とクリップ部材との接合状態を示す分解斜視図である。
【図4】上記取付けボス部とクリップ部材との接合状態の一部断面側面図である。
【図5】図1のV-V 線断面図である。
【図6】図2のVI-VI 線断面図である。
【図7】上記エアスクープが配設された自動車の斜視図である。
【図8】従来の一般的な取付け構造を示す図である。
【符号の説明】
1 自動車
1a エンジンルーム
3 フードパネル
4 エアスクープ
15 取付けボス部
15a 平板部
15b 脚部
15c 窓部
20 クリップ部材
21 フランジ部
22,23 ガイド片
22b 爪部
A スライド方向

Claims (1)

  1. エンジンルームを開閉するフードパネルに形成された装着孔にクリップ部材を装着し、上記エンジンルーム内に冷却風を供給するエアスクープの取付けボス部を上記クリップ部材に嵌合させるようにした自動車のエアスクープ取付け構造において、上記クリップ部材を、上記装着孔の周縁に当接するフランジ部と、該フランジ部から下方に略平行に延びる一対のガイド片と、該一方のガイド片の内面に突出形成された爪部とを備えたものとし、上記取付けボス部を、上記一方のガイド片の内面に摺接しかつ上記爪部に係合する窓部が形成された平板部と、該平板部の両縁に沿って一体形成され上記他方のガイド片の内面に摺接する脚部とからなる横断面コ字状のものとし、上記取付けボス部を上記両ガイド片の内面に沿って軸直角方向にスライド可能とし、上記クリップ部材及び取付けボス部は、エアスクープの車幅方向中央部及び車幅方向側部に配置され、車幅方向中央部又は側部の何れか一方の取付けボス部は上記コ字形の開口方向を車幅方向に向けて配置され、何れか他方の取付けボス部は上記コ字形の開口方向を車両前後方向に向けて配置されており、さらに上記取付けボス部は、該取付けボス部の上記スライド方向と直角方向への変位を許容する薄肉部を介して上記エアスクープに接続されていることを特徴とする自動車のエアスクープ取付け構造。
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