JP3642648B2 - 回路基板 - Google Patents
回路基板 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3642648B2 JP3642648B2 JP01700397A JP1700397A JP3642648B2 JP 3642648 B2 JP3642648 B2 JP 3642648B2 JP 01700397 A JP01700397 A JP 01700397A JP 1700397 A JP1700397 A JP 1700397A JP 3642648 B2 JP3642648 B2 JP 3642648B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- glass
- substrate
- wiring conductor
- conductor
- surface wiring
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Parts Printed On Printed Circuit Boards (AREA)
- Manufacturing Of Printed Wiring (AREA)
- Conductive Materials (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板材料に、ガラス−セラミック材料を用いて、低温、例えば800〜1050℃で焼成可能な回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、焼成温度を800〜1050℃と比較的低い温度で焼成可能な材料を用いた低温焼成回路基板が検討されてきた。回路基板の基体構造としては、ガラス−セラミック層を複数積層して成る多層基板と、ガラス−セラミックから成る単板基板とがある。基体が多層基板である場合には、基体の内部に内部配線導体やビアホール導体をAg系(Ag単体またはAg合金など)、Cu系、Au系などの低抵抗材料で形成されていた。
【0003】
このような基板材料として、一般にガラス−セラミック材料、例えば、コージェライト、ムライト、アノートサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライト、オオスミライト及びその置換誘導体などの結晶相のうち少なくとも1種類を析出し得る低融点ガラス成分とクリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)のうち少なくとも1種類のセラミック材料(無機物フィラー)とをからなっていた。特に、このようなガラス−セラミック基板の混合比率はセラミック材料が10〜60wt%、低融点ガラス成分が90wt%〜40wt%と、低融点ガラス成分が多いものであった。
【0004】
実際、このような基板材料を用いて、回路基板を構成するには、回路基板の表面に表面配線導体を形成する必要がある。また、製造工程上、基板の焼成と表面配線導体の焼成工程を共通化して、製造方法の簡略化を図ることが考えられていた。
【0005】
基板と一体的に焼成される表面配線導体としては、Ag系導体やCu系導体などが例示できる。しかしながら、表面配線導体のマイグレーション性、酸化性雰囲気(大気中)での焼成などを考慮して、専らAg系導体に限られていた。
【0006】
上述のように基板と一体的に形成されるAg系導体から成る表面配線においては、一体的に焼成した後の基体との間の接着強度が優れ、ワイヤボンディング接合性や半田接合性などに優れ、特に、基板の反りを抑制することが重要となる。
【0007】
上述のように、接着強度、ワイヤボンディング接合性や半田接合性などに優れた表面配線導体として、Ag系導体中に、所定量のV2 O5 を含有させることが知られている。
【0008】
これは、Ag系導電性ペーストを構成するAg粒子への基板材料のガラス成分によるアンカー効果を助長し、高温エージング試験や温度サイクル試験でも、接着強度が劣化することがなく、また、半田ぬれ性に優れたものとなり、基板と表面配線導体間にかかる応力による基板のそりを防止できるものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、表面にAg系材料に、単にV2 O5 を添加した表面配線導体では、充分な基板の反りを抑えることに限界があった。 例えば、ガラス−セラミックからなるグリーンシート(200μm)を5層積層し、その表面に、Ag系導体材料、V2 O5 粉末を含む導電性ペーストを印刷して、同時に焼成したところ、例えば、5mm角の基板(導体電極パッド)で0.03mm、10mm角の基板(導体電極パッド)で0.05mmの反り(基体の表面で最低部分と最高部分とのギャップ差)が発生した。
【0010】
このように、基板に反りが発生すると、この基板上にICチップなどの電子部品を搭載する場合には、実装の信頼性が大きく低下し、また、この基板を別のマザー基板に接合する場合に、接合信頼性が大きく低下してしまうことになる。
【0011】
本発明は上述の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的は、表面配導体の基板との接着強度、表面配線導体のワイヤボンディング接合性や半田接合性などに優れ、しかも基板の反りを有効に抑えることができる回路基板を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の回路基板は、Ag系金属成分100wt%に対して0.2〜1.0wt%のV2O5、0.2〜1.0wt%の軟化点が700〜800℃のホウ珪酸系ガラスを含有する表面配線導体を、屈伏点が600〜800℃のガラス材料を含有させたガラス−セラミック焼結体から成る基体に一体的に焼結して形成して成ることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
本発明では、Ag系の表面配線導体に、金属成分100重量%に対してV2 O5 を0.2〜1.0wt%を含有させることにより、表面配線導体と基板材料であるガラス−セラミック層との間でアンカー効果(Ag系導電性ペーストを構成するAg粒子への基板材料のガラス成分とが強固に結合しあう)が助長され、これにより、高温(150℃)エージング試験や温度サイクル(−40℃〜125℃、各30分)試験をおこなっても、接着強度が劣化することを防止できる。
【0014】
特に、V2 O5 の添加量が、0.2〜1wt%に設定すると、高温(150℃)エージング試験や温度サイクル(−40℃〜125℃、各30分)試験後であっても、接着強度が1.0Kgf/2mm□と非常に優れ、且つ表面の半田濡れ性も優れた低温焼成回路基板となる。
【0015】
V2 O5 の添加量が、0.2wt%未満では、上述のアンカー効果が充分に発揮されないことから、接着強度が大きく低下する。また、1.0wt%を越えると、表面配線導体上に、V2 O5 成分が析出されて、半田ぬれ性を劣化させてしまう。
【0016】
また、軟化点700〜800℃のホウ珪酸系ガラス成分を、金属成分100重量%に対して0.2〜1.0wt%を含有させることにより、Ag系導体材料の焼結反応を、ガラス−セラミック材料の焼結反応と同時程度に遅らせることができ、その結果、基板の反りを防止することができる。尚、基板の反りは、Ag系導体が先行して焼結反応し、表面配線導体に強度が発生して、その後の基体材料の焼結反応時の基体の挙動が、既に焼結された表面配線導体の形状に規制されて発生する。
【0017】
この基板の反りとして、5mm角、10mm角の導体電極パッドであっても、0.03mm以下とすることができる。
【0018】
ここで軟化点が700℃未満では、表面配線導体中で、Ag材料に比較して低い温度または同等の温度で、軟化流動してしまう。このため、基体の収縮挙動を阻害しり、基体のガラス成分と相溶し、基体のガラス成分の組成を変質させて、結晶化を阻害してしまう。そして、Ag系材料の焼結を遅らせるべく、ホウ珪酸系ガラス成分の量を多くすると、表面配線導体の表面や配線導体の基体との界面部分にガラス成分が集中し、半田ぬれ性が低下し、Ag粉末のアンカー効果を阻害する結果となり、接着強度が低下してしまう。
【0019】
また、軟化点が800℃を越えると、焼成された表面配線導体中にホウ珪酸系ガラス成分が残存し、基体のガラス成分を引きつけ、表面配線導体のガラス成分が多過となり、半田ぬれ性を劣化してしまうことになる。
【0020】
また、ホウ珪酸系ガラス成分の含有量に関して、0.2wt%未満では、Agの焼結を遅らせて基板の反りを小さくするという効果が充分に得られない。また、10wt%を越えると、表面配線導体のガラス成分が多過となり、半田ぬれ性を劣化してしまうことになる。
【0021】
以上、本発明では、ガラス−セラミック材料を基体とする表面に、配線導体を一体的に焼成して形成して成る回路基板であって、表面配線導体をAg系導体を主成分に、Ag系金属成分100wt%に対して、V2 O5 を0.2〜1.0wt%、ホウ珪酸系ガラス成分を0.2〜1.0wt%含有するため、基体と表面配線導体との接着強度が強固になり、半田ぬれ性が良好で、基板の反りが非常に小さい回路基板となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の回路基板を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る回路基板の断面図である。尚、実施例では、基板として、ガラス−セラミック層を4層積層して成る多層回路基板で説明する。
【0023】
図1において、10は回路基板であり、1は内部に所定回路を構成する内部配線導体を有する基体(以下、積層体という)、2は基体1の表面に形成した表面配線導体、3は内部配線導体、4はビアホール導体、5は各種電子部品である。
【0024】
積層体1は、ガラス−セラミック層1a〜1dと、ガラス−セラミック層1a〜1dの各層間には、所定回路網を達成するや容量成分を発生するための内部配線導体3が配置されている。また、ガラス−セラミック層1a〜1dには、その層の厚み方向を貫くビアホール導体4が形成されている。
【0025】
ガラス−セラミック層1a〜1dは、例えば850〜1050℃前後の比較的低い温度で焼成可能にするガラス−セラミック材料からなる。具体的なセラミック材料としては、クリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)、ムライト、コージライトなどが例示できる。また、ガラス材料として複数の金属酸化物を含むガラスフリットを焼成処理することによって、コージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライトやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種類を析出するものである。このガラス−セラミック層1a〜1dの厚みは例えば100〜300μm程度である。
【0026】
内部配線導体3、ビアホール導体4は、金属酸化物V2 O5 を含有するAg系(Ag単体、Ag−PdなどのAg合金)など導体からなり、内部配線導体3の厚みは8〜15μm程度であり、ビアホール導体4の直径は任意な値とすることができるが、例えば直径は80〜250μmである。
【0027】
また、積層体1の両主面には、表面配線導体2が形成されている。表面配線導体2は、金属酸化物V2 O5 、ホウ珪酸系ガラス成分を含有するAg系(Ag単体、Ag−PdなどのAg合金)導体から成る。
【0028】
また、表面配線導体2のV2 O5 、ホウ珪酸系ガラス成分を含有するAg系導体は、積層体1の焼成時に同時に焼成されて形成されるものであり、電子部品5を表面配線導体2上に半田接合したときに、表面配線導体2に半田食われが発生しないように、金属成分として、Ptなどを若干添加してもかまわない。
【0029】
表面配線導体2は、所定回路の入出力端子電極や電子部品搭載パッドを含むものであり、必要に応じて、厚膜抵抗体膜や絶縁保護膜が形成され、さらにチップ状コンデンサ、チップ状抵抗、トランジスタ、ICなどの各種電子部品5などが半田やワイヤボンディングなどによって搭載されている。
【0030】
上述の回路基板の製造方法について説明する。
【0031】
積層体1は、まず、ガラス−セラミック層1a〜1dとなるガラス−セラミック材料から成るグリーンシートを形成する。具体的には、セラミック粉末、低融点ガラス成分のフリット、有機バインダ、有機溶剤を均質混練したスラリーを、ドクタブレード法によって所定厚みにテープ成型して、所定大きさに切断してシートを作成する。
【0032】
セラミック粉末は、クリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)、ムライト、コージライトなどの絶縁セラミック材料、BaTiO3 、Pb4 Fe2 Nb2 O12、TiO2 などの誘電体セラミック材料、Ni−Znフェライト、Mn−Znフェライト(広義の意味でセラミックという)なとの磁性体セラミック材料などが挙げられ、その平均粒径1.0〜6.0μm、好ましくは1.5〜4.0μmに粉砕したものを用いる。尚、セラミック材料は2種以上混合して用いられてもよい。特に、コランダムを用いた場合、コスト的に有利となる。
【0033】
低融点ガラス成分のフリットは、焼成処理することによってコージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライトやその置換誘導体の結晶やスピネル構造の結晶相を析出するものであればよく、例えば、B2 O3 、SiO2 、Al2 O3 、ZnO、アルカリ土類酸化物を含むガラスフリットが挙げられる。この様なガラスフリットは、ガラス化の温度範囲が広く、また屈伏点が600〜800℃付近にあるため、850〜1050℃程度の低温焼成に適し、Ag系内部配線導体3、Ag系表面配線導体2となる導体膜との焼結挙動が近似している。尚、このガラスフリットの平均粒径は、1.0〜6.0μm、好ましくは1.5〜3.5μmである。
【0034】
上述のセラミック材料とガラス材料との構成比率は、850〜1050℃の比較的低温で焼成する場合には、セラミック材料が10〜60wt%、好ましくは30〜50wt%であり、ガラス材料が90〜40wt%、好ましくは70〜50wt%である。
【0035】
有機バインダは、固形分(セラミック粉末、低融点ガラス成分のフリット)との濡れ性も重視する必要があり、比較的低温で且つ短時間の焼成工程で焼失できるように熱分解性に優れたものが好ましく、アクリル酸もしくはメタクリル酸系重合体のようなカルボキシル基、アルコール性水酸基を備えたエチレン性不飽和化合物が好ましい。
【0036】
溶剤として、有機系溶剤、水系溶剤を用いることができる。例えば、有機溶剤の場合には、2.2.4−トリメチル−1.3−ペンタジオールモノイソベンチートなどが用いられ、水系溶剤の場合には、水溶性である必要があり、モノマー及びバインダには、親水性の官能基、例えばカルボキシル基が付加されている。
【0037】
その付加量は酸価で表せば2〜300あり、好ましくは5〜100である。付加量が少ない場合は水への溶解性、固定成分の粉末の分散性が悪くなり、多い場合は熱分解性が悪くなるため、付加量は、水への溶解性、分散性、熱分解性を考慮して、上述の範囲で適宜付加される。
【0038】
次に、ガラス−セラミック層1a〜1dとなるグリーンシートには、各層のビアホール導体4の形成位置に対応して、所定径の貫通穴をパンチングによって形成する。
【0039】
次に、グリーンシートの貫通穴に、ビアホール導体4の導体をAg系導電性ペーストを印刷・充填するとともに、ガラス−セラミック層1b〜1dとなるグリーンシート上に、各内部配線導体3となる導体膜を印刷し、乾燥処理を行う。
【0040】
ここで、ビアホール導体、内部配線用のAg系導電性ペーストは、Ag系(Ag単体、Ag−PdなどのAg合金)粉末、所定量のV2 O5 粉末、ホウ珪酸系ガラスフリット、エチルセルロースなどの有機バインダー、溶剤を均質混合したものが用いられる。
【0041】
また、ガラス−セラミック層1aとなるグリーンシート上に、表面配線導体2となる導体膜を表面配線用Ag系導電性ペーストを用いて印刷し、乾燥処理を行う。
【0042】
ここで、表面配線用Ag系導電性ペーストは、Ag系(Ag単体、Ag−PdなどのAg合金)粉末、Pt粉末、所定量のV2 O5 粉末、ホウ珪酸系ガラスフリット、有機バインダー、溶剤を均質混合したものが用いられる。尚、V2 O5 、ホウ珪酸系ガラス成分以外の微量の金属酸化物が含有していても構わない。 このようにビアホール導体4となる導体、内部配線導体3となる導体膜、表面配線導体2となる導体膜が形成されたグリーンシートを、積層体1のガラス−セラミック層1a〜1dの積層順に応じて積層一体化する。
【0043】
尚、ガラス−セラミック層1aとなるグリーンシートに形成されるビアホール導体4となる導体は、印刷工程の共通化のために、表面配線用Ag系導電性ペーストを用いることが望ましい。
【0044】
次に、未焼成の積層体を、酸化性雰囲気または大気雰囲気で焼成処理する。焼成処理は、脱バインダ過程と焼結過程からなる。
【0045】
脱バインダ過程は、ガラス−セラミック層1a〜1dとなるグリーンシート、内部配線導体3となる導体膜、ビアホール導体4となる導体、表面配線導体2となる導体膜に含まれる有機成分を焼失するためのものであり、例えば600℃以下の温度領域で行われる。
【0046】
また、焼結過程は、ガラス−セラミックのグリーンシートのガラス成分を結晶化させると同時にセラミック粉末の粒界に均一に分散させ、積層体に一定強度を与え、内部配線導体3となる導体膜、ビアホール導体4となる導体、表面配線導体2となる導体膜の導電材料、例えば、Ag系粉末を粒成長させて、低抵抗化させ、ガラス−セラミック層1a〜1dと一体化させるものである。これは、ピーク温度850〜1050℃に達するまでに行われる。
【0047】
この工程で、内部に内部配線導体3、ビアホール導体4が形成され、且つ表面に表面配線導体2が形成された積層体1が達成されることになる。
【0048】
その後、必要に応じて、表面配線導体2に接続する厚膜抵抗素子や絶縁保護膜を形成して、各種電子部品5を半田などで接着・実装を行う。
【0049】
これにより、表面配線導体2が積層体1と一体的に焼成処理された低温焼成の回路基板が達成することになる。
【0050】
本発明において、表面配線導体2を形成するためのAg系導電性ペーストは、例えば、平均粒径3μmのAg粉末と、Ag等の金属成分に100wt%に対して0.2〜1.0wt%のV2 O5 粉末と、軟化点700〜800℃でAg等の金属成分に100wt%に対して0.2〜1.0wt%のホウ珪酸系ガラスフリット、エチルセルロースなどの有機バインダー、ペンタンジオールイソブレートなどの有機溶剤が均質混合されて形成される。尚、必要に応じて、金属成分として、例えば、平均粒径0.5μmのPt粉末を添加しても構わない。このPt粉末は、表面配線導体2上に電子部品5などを半田を介して接着する際、Ag成分が半田に食われることを防止するために添加するものであり、例えば、金属成分中、例えば約1wt%の割合で添加されている。
【0051】
この表面配線用のAg系導電性ぺーストは、ガラス−セラミック層1a〜1dとなるガラス−セラミックのグリーンシートなどとともに、大気雰囲気中で一体的に焼成されるものである。
【0052】
V2 O5 粉末は、Ag系粉末と、例えば積層体1のガラス−セラミック材料のガラス成分とのアンカー効果のスパイク構造をより接着を強固にするものである。まず、V2 O5 粉末の添加範囲の下限は、金属成分100wt%に対して0.2wt%である。これは、上述のアンカー効果によって、特にガラス−セラミック層との界面部分の強度を向上させるために必要な量である。具体的にAg系粒子の凹凸表面に、食い込むようにV2 O5 が配置されて、ガラス−セラミック材料のガラス成分と安定的に結合しあう。
【0053】
この下限である0.2wt%を満たない場合には、表面配線導体2とガラス−セラミックとの界面部分で充分な接着強度が得られない。この充分な接着強度とは、初期状態で1.5kgf/2mm角の力で表面配線導体2を引っ張っても剥離が生じないことである。また、熱エージング試験後で1.5kgf/2mm角の力で表面配線導体2を引っ張っても剥離が生じないことである。
【0054】
従って、導電性ペーストに、少なくとも0.2wt%のV2 O5 を添加することにより、表面配線導体2と表面のガラス−セラミック層1aとの強固な接着強度が達成される。
【0055】
次に、V2 O5 粉末の添加範囲の上限は、金属成分100wt%に対して1.0wt%である。V2 O5 粉末が1.0wt%を越えて過剰に添加されると、V2 O5 成分が、表面配線導体2の表面に析出されることから、表面配線導体2の表面において、半田の濡れ性を阻害され、各種電子部品5を安定して半田接合することが困難となる。
【0056】
また、ホウ珪酸系ガラスについて、軟化点が700〜800℃がである。軟化点は、ホウ珪酸系ガラス成分を構成するB2 O3 の量比を調整することによって制御される。例えば、B2 O3 の量比を高めると、軟化点は低下する方向となる。
【0057】
ホウ珪酸系ガラス成分の軟化点は、積層体1の焼結挙動に近時させることなどから厳密に制御する必要がある。
【0058】
軟化点が700℃未満では、表面配線導体2中のホウ珪酸系ガラス成分が、Ag系材料に比較して低い温度または同等の温度で軟化流動してしまう。このため、積層体1の収縮挙動を阻害しり、積層体1のガラス成分と相溶し、積層体1の結晶化ガラス成分の組成を変質させて、結晶化を阻害してしまう。そして、Ag系材料の焼結反応を遅らせるべく、ホウ珪酸系ガラス成分の量を多くすると、表面配線導体2の表面や配線導体の基体との界面部分にガラス成分が集中し、半田ぬれ性が低下し、Ag粉末のアンカー効果を阻害する結果となり、接着強度が低下してしまう。
【0059】
また、軟化点が800℃を越えると、焼成された表面配線導体2中にホウ珪酸系ガラス成分が残存し、積層体1の結晶化ガラス成分を引きつけ、表面配線導体2のガラス成分が相対的に過剰となり、半田ぬれ性を劣化させてしまうことになる。
【0060】
以上の点から、表面配線導体2に含まれるホウ珪酸系ガラス成分の軟化点は、700〜800℃が望ましい。
【0061】
また、このようなホウ珪酸系ガラス成分の含有量は、Ag系材料の焼結反応を制御して基板の反りを防止することなどから厳密に制御する必要がある。
【0062】
ホウ珪酸系ガラス成分は、金属成分100重量%に対して0.2〜1.0wt%を含有している。この含有量に関してはAg系材料の焼結反応を遅らせて、ガラス−セラミック材料の焼結反応と同時程度にまですることがてき、その結果、基板の反りを防止することができる。
【0063】
ホウ珪酸系ガラス成分の含有量が、0.2wt%未満では、Agの焼結を遅らせて基板の反りを小さくするという効果が充分に得られない。また、10wt%を越えると、表面配線導体2のガラス成分が過剰となり、表面配線導体2の表面にガラス成分が析出されて、半田ぬれ性が劣化してしまうことになる。
【0064】
〔実験例〕
本発明者は、回路基板の作用・効果を確認するために、8種類の表面配線導体用のAg系導電性ペーストを用いて作成し、上述の低温焼成可能なガラス−セラミック材料のグリーンシート(厚み200μm)を5層して、積層した未焼成の積層体(基板の形状5mm角、10mm角)の表面に、表面配線用のAg系導電性ペーストを印刷し、大気雰囲気中で950℃で焼成処理して試料を作成した。
【0065】
各表面配線導体用Ag系導電性ペーストは、平均粒径3μmのAg粉末、所定量のV2 O5 粉末、所定量のホウ珪酸系ガラスフリット、有機バンイダー(エチルセルロース)、有機溶剤(2.2.4−トリメチル−1.3−ペンタジオールモノイソブチレート)を3本ロールで均質混合して作成した。
【0066】
具体的には、上述のホウ珪酸系ガラスフリットとして、軟化点が600℃、750℃、890℃の3種類のホウ珪酸系ガラス成分を用意し、所定割合となるようにペーストを作成した。
【0067】
ガラス−セラミック材料は、アノーサイト系結晶化ガラスが析出されるガラス材料、平均粒径2.0μmのアルミナセラミック粉末を用いた。混合比率は、ガラス材料が55wt%、アルミナセラミック粉末が45wt%である。
【0068】
さらに、全重量に対して、10wt%のアクリル樹脂、40wt%のトルエン、60wt%のDTPをボールミルで混練し、ドクターブレードで200μmのシートを作成した。試料の基体は、このシートを5層を加圧圧着して積層し、その基体の形状は、焼成後に2mm角(半田ぬれ性測定、及び接着強度用)、5mm角(基板の反り測定用)、10mm角(基板の反り測定用)とした。
【0069】
表面配線導体2は、上述の未焼成の基体の全表面に、スクリーン印刷により、厚み15μmの導体膜を形成した。
【0070】
このようにした作成した試料1〜8について、半田ぬれ性、基板の反り、接着強度を調べた。
【0071】
〔半田ぬれ性〕
得られた試料をロジン系フラックス溶液に浸漬した後、230℃の2%Ag入りSn−Pb共晶半田浴中に浸漬し、表面配線導体2の表面の半田濡れ性を調べた。半田濡れ性は、全表面面積に対して90%以上の面積で半田が付着しているものを「優」とし、それ以下を「劣」とした。
【0072】
〔接着強度〕
接着強度は2mm角の表面配線導体2に0.6mmφの鉛メッキ導線を半田接合して、ピール法で、▲1▼初期状態の接着強度、▲2▼150℃で500時間放置後(エージング)の接着強度、▲3▼−40℃〜125℃、各30分を100サイクルを施した温度サイクル試験(サイクル)後の接着強度をそれぞれ調べた。
【0073】
接着強度は、初期状態で2.0kgf/2mm角以上、エージング、サイクル試験後で1.0kgf/2mm角以上の試料が実用上重要となる。
【0074】
〔基板の反りの評価〕
また、焼成後の試料の表面の最高部分と最低部分の差を測定した。基板の反りは、0.03mm以下の試料が実用上重要となる。
【0075】
表2には、表面配線用導電性ペーストの固形成分の重量比率(V2 O5 粉末、ホウ珪酸系ガラスは夫々金属成分100wt%に対する比率)及び夫々の特性を表1に示す。尚、表中、接着強度の「初期」は上述の▲1▼の初期状態の特性であり、「エージング」は、上述の▲2▼の熱硬化エージング後の特性であり、「サイクル」は上述の▲3▼の温度サイクル試験後の特性を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
〔結果〕
まず、試料番号8では、ホウ珪酸系ガラスを含まない表面配線導体を形成した試料である。この試料では、半田のぬれ性、初期接着強度、150℃で500時間放置(熱エージング)後、熱サイクル(−40℃〜125℃、各30分を100サイクルを施した温度サイクル試験)後の接着強度ともに優れたもののとなるが、特に基板の反り(10mm角)が顕著に現れる。
【0078】
この基板の反りは、基体の焼結反応に比較して、Ag材料の焼結反応が比較的低温で達成されてしまうため、表面配線導体と基体の焼結挙動の挙動が合致していないことに起因するものであり、Agの焼結反応を遅らせるホウ珪酸系ガラスを含まないためである。
【0079】
試料番号1、4、5から、表面配線用Ag系導電性ペーストのV2 O5 粉末は、金属成分100wt%に対して0.2〜1.0wt%の範囲が望ましいことが理解できる。これによって、初期の接着強度で試料番号8と同等で、熱エージグ後でも、熱サイクル後でも、試料番号8と比較して遜色のない特性がなられ、しかも、基板の反りも小さいものとなる。尚、試料番号5は、半田ぬれ性が劣るため、接着強度の測定が不可能である。
【0080】
また、試料番号4と試料番号8とから、ホウ珪酸系ガラスの軟化点、含有量を適正に設定すれば、試料番号8の基板の反りを大きく改善できることになる。
【0081】
試料番号1〜3は、上述のV2 O5 粉末を0.2wt%に固定し、また、軟化点が750℃のホウ珪酸系ガラスを用いて、そのホウ珪酸系ガラスの重量比率を変化させた。これにより、軟化点750℃のホウ珪酸系ガラスフリットは、金属成分100wt%に対して0.2〜1.0wt%の範囲が望ましいことが理解できる。傾向としては、ホウ珪酸系ガラスの量を増加させると、基板の反りは減少する方向となるが、表面配線導体2の半田ぬれ性を劣化させる方向、熱硬化エージング、熱サイサル後の接着強度を低下させ、接着信頼性が劣る傾向を示す。
【0082】
尚、試料番号3は、半田ぬれ性が劣るため、接着強度の測定が不可能である。
【0083】
次に、試料番号6、7は、上述のV2 O5 粉末を金属成分100wt%に対して、軟化点が異なるホウ珪酸系ガラス成分(軟化点が600℃、890℃)を用いた。
【0084】
試料番号6の軟化点が600℃のホウ珪酸系ガラス成分(1.0wt%)では、初期の特性は、半田ぬれ性に優れ、基板の反りにも優れたものとなるが、特に接着強度が劣るものとなる。これは、半田ぬれ性は一応良好を示すものの、表面配線導体の表面や配線導体の基体との界面部分にガラス成分が集中して、Ag粉末のアンカー効果を阻害する結果となり、接着強度が低下してしまうものである。このため、この接着信頼性を回復させるため、ホウ珪酸系ガラスの量を1.0wt%以下とすることが考えられるが、ホウ珪酸系ガラス成分の軟化流動が比較的低い温度から発生してしまうため、基体の収縮挙動を阻害して基板の反りを大きくしてしまったり、基体のガラス成分と相溶し、基体のガラス成分の組成を変質させて、結晶化を阻害してしまう。
【0085】
試料番号7の軟化点890℃では、焼成された表面配線導体中にホウ珪酸系ガラス成分が残存し、基体のガラス成分を引きつけ、表面配線導体のガラス成分が多過となり、半田ぬれ性を劣化してしまい、接着強度の測定ができないものとなる。
【0086】
また、本発明者らは、本発明に適用されるホウ珪酸系ガラスの軟化点の範囲を700〜800℃であれば、試料番号1、2のように傾向を示し、上述の良品の範囲に属することを確認した。
【0087】
尚、上述の実施例において、基板として、複数のガラス−セラミック層1a〜1dが積層し、その間に内部配線導体3を有する積層体で説明したが、ガラス−セラミック材料からなる単板であっても構わない。
【0088】
また、積層体の形成工程がグリーンシートの積層による方法で説明したが、ガラス−セラミック材のペーストを順次印刷した印刷多層により積層体を形成してもよく、また、ガラス−セラミック材からなるスリッフプ材に光硬化モノマーを添加して、ビアホール導体となる貫通穴を露光・現像によって形成する方法を含む積層体の形成方法であってもよく、要は未焼成状態の基板(積層体)の表面に表面配線用Ag系導電性ペーストを用いて、表面配線導体となる導体膜を形成し、その後、基板(積層体)と同時に焼成した低温焼成回路基板であれば、基板(積層体)の構造・形成方法は任意に変更できる。
【0089】
また、上述の表面配線用Ag系導電性ペーストとして、上述のようにpt粉末を若干添加したものであってもよく、その主成分がAg系粉末、即ち、Ag単体、Ag−Pd合金などのAg合金粉末であっても構わない。
【0090】
さらに、Ag系材料を主成分とする金属材料に対して、金属酸化物として、V2 O5 を添加したが、表面配線導体2の半田ぬれ性を阻害しない範囲で、その他の金属酸化物が微量に含まれていても構わない。
【0091】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ガラス−セラミック層からなる基体の表面に、表面配線導体を所定量のV2 O5 、所定温度の軟化点、所定量のホウ珪酸系ガラスを含むAg系導体膜で形成し、しかも、これらを大気雰囲気中で一体的に焼成して形成した低温焼成回路基板である。
【0092】
これにより、表面配線導体のAg粒子への基板材料のガラス成分からのアンカー効果が助長され、長期にわたり安定且つ強固な接着強度が維持でき、接着信頼性に優れた回路基板となる。また、基板の反りを抑えた実用性に優れた回路基板となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回路基板の断面図である。
【符号の説明】
10・・・・・・回路基板
1・・・・・・・積層体
1a〜1d・・・ガラス−セラミック層
2・・・・・・・表面配線導体
3・・・・・・・内部配線導体
4・・・・・・・ビアホール導体
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板材料に、ガラス−セラミック材料を用いて、低温、例えば800〜1050℃で焼成可能な回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、焼成温度を800〜1050℃と比較的低い温度で焼成可能な材料を用いた低温焼成回路基板が検討されてきた。回路基板の基体構造としては、ガラス−セラミック層を複数積層して成る多層基板と、ガラス−セラミックから成る単板基板とがある。基体が多層基板である場合には、基体の内部に内部配線導体やビアホール導体をAg系(Ag単体またはAg合金など)、Cu系、Au系などの低抵抗材料で形成されていた。
【0003】
このような基板材料として、一般にガラス−セラミック材料、例えば、コージェライト、ムライト、アノートサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライト、オオスミライト及びその置換誘導体などの結晶相のうち少なくとも1種類を析出し得る低融点ガラス成分とクリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)のうち少なくとも1種類のセラミック材料(無機物フィラー)とをからなっていた。特に、このようなガラス−セラミック基板の混合比率はセラミック材料が10〜60wt%、低融点ガラス成分が90wt%〜40wt%と、低融点ガラス成分が多いものであった。
【0004】
実際、このような基板材料を用いて、回路基板を構成するには、回路基板の表面に表面配線導体を形成する必要がある。また、製造工程上、基板の焼成と表面配線導体の焼成工程を共通化して、製造方法の簡略化を図ることが考えられていた。
【0005】
基板と一体的に焼成される表面配線導体としては、Ag系導体やCu系導体などが例示できる。しかしながら、表面配線導体のマイグレーション性、酸化性雰囲気(大気中)での焼成などを考慮して、専らAg系導体に限られていた。
【0006】
上述のように基板と一体的に形成されるAg系導体から成る表面配線においては、一体的に焼成した後の基体との間の接着強度が優れ、ワイヤボンディング接合性や半田接合性などに優れ、特に、基板の反りを抑制することが重要となる。
【0007】
上述のように、接着強度、ワイヤボンディング接合性や半田接合性などに優れた表面配線導体として、Ag系導体中に、所定量のV2 O5 を含有させることが知られている。
【0008】
これは、Ag系導電性ペーストを構成するAg粒子への基板材料のガラス成分によるアンカー効果を助長し、高温エージング試験や温度サイクル試験でも、接着強度が劣化することがなく、また、半田ぬれ性に優れたものとなり、基板と表面配線導体間にかかる応力による基板のそりを防止できるものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、表面にAg系材料に、単にV2 O5 を添加した表面配線導体では、充分な基板の反りを抑えることに限界があった。 例えば、ガラス−セラミックからなるグリーンシート(200μm)を5層積層し、その表面に、Ag系導体材料、V2 O5 粉末を含む導電性ペーストを印刷して、同時に焼成したところ、例えば、5mm角の基板(導体電極パッド)で0.03mm、10mm角の基板(導体電極パッド)で0.05mmの反り(基体の表面で最低部分と最高部分とのギャップ差)が発生した。
【0010】
このように、基板に反りが発生すると、この基板上にICチップなどの電子部品を搭載する場合には、実装の信頼性が大きく低下し、また、この基板を別のマザー基板に接合する場合に、接合信頼性が大きく低下してしまうことになる。
【0011】
本発明は上述の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的は、表面配導体の基板との接着強度、表面配線導体のワイヤボンディング接合性や半田接合性などに優れ、しかも基板の反りを有効に抑えることができる回路基板を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の回路基板は、Ag系金属成分100wt%に対して0.2〜1.0wt%のV2O5、0.2〜1.0wt%の軟化点が700〜800℃のホウ珪酸系ガラスを含有する表面配線導体を、屈伏点が600〜800℃のガラス材料を含有させたガラス−セラミック焼結体から成る基体に一体的に焼結して形成して成ることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
本発明では、Ag系の表面配線導体に、金属成分100重量%に対してV2 O5 を0.2〜1.0wt%を含有させることにより、表面配線導体と基板材料であるガラス−セラミック層との間でアンカー効果(Ag系導電性ペーストを構成するAg粒子への基板材料のガラス成分とが強固に結合しあう)が助長され、これにより、高温(150℃)エージング試験や温度サイクル(−40℃〜125℃、各30分)試験をおこなっても、接着強度が劣化することを防止できる。
【0014】
特に、V2 O5 の添加量が、0.2〜1wt%に設定すると、高温(150℃)エージング試験や温度サイクル(−40℃〜125℃、各30分)試験後であっても、接着強度が1.0Kgf/2mm□と非常に優れ、且つ表面の半田濡れ性も優れた低温焼成回路基板となる。
【0015】
V2 O5 の添加量が、0.2wt%未満では、上述のアンカー効果が充分に発揮されないことから、接着強度が大きく低下する。また、1.0wt%を越えると、表面配線導体上に、V2 O5 成分が析出されて、半田ぬれ性を劣化させてしまう。
【0016】
また、軟化点700〜800℃のホウ珪酸系ガラス成分を、金属成分100重量%に対して0.2〜1.0wt%を含有させることにより、Ag系導体材料の焼結反応を、ガラス−セラミック材料の焼結反応と同時程度に遅らせることができ、その結果、基板の反りを防止することができる。尚、基板の反りは、Ag系導体が先行して焼結反応し、表面配線導体に強度が発生して、その後の基体材料の焼結反応時の基体の挙動が、既に焼結された表面配線導体の形状に規制されて発生する。
【0017】
この基板の反りとして、5mm角、10mm角の導体電極パッドであっても、0.03mm以下とすることができる。
【0018】
ここで軟化点が700℃未満では、表面配線導体中で、Ag材料に比較して低い温度または同等の温度で、軟化流動してしまう。このため、基体の収縮挙動を阻害しり、基体のガラス成分と相溶し、基体のガラス成分の組成を変質させて、結晶化を阻害してしまう。そして、Ag系材料の焼結を遅らせるべく、ホウ珪酸系ガラス成分の量を多くすると、表面配線導体の表面や配線導体の基体との界面部分にガラス成分が集中し、半田ぬれ性が低下し、Ag粉末のアンカー効果を阻害する結果となり、接着強度が低下してしまう。
【0019】
また、軟化点が800℃を越えると、焼成された表面配線導体中にホウ珪酸系ガラス成分が残存し、基体のガラス成分を引きつけ、表面配線導体のガラス成分が多過となり、半田ぬれ性を劣化してしまうことになる。
【0020】
また、ホウ珪酸系ガラス成分の含有量に関して、0.2wt%未満では、Agの焼結を遅らせて基板の反りを小さくするという効果が充分に得られない。また、10wt%を越えると、表面配線導体のガラス成分が多過となり、半田ぬれ性を劣化してしまうことになる。
【0021】
以上、本発明では、ガラス−セラミック材料を基体とする表面に、配線導体を一体的に焼成して形成して成る回路基板であって、表面配線導体をAg系導体を主成分に、Ag系金属成分100wt%に対して、V2 O5 を0.2〜1.0wt%、ホウ珪酸系ガラス成分を0.2〜1.0wt%含有するため、基体と表面配線導体との接着強度が強固になり、半田ぬれ性が良好で、基板の反りが非常に小さい回路基板となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の回路基板を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る回路基板の断面図である。尚、実施例では、基板として、ガラス−セラミック層を4層積層して成る多層回路基板で説明する。
【0023】
図1において、10は回路基板であり、1は内部に所定回路を構成する内部配線導体を有する基体(以下、積層体という)、2は基体1の表面に形成した表面配線導体、3は内部配線導体、4はビアホール導体、5は各種電子部品である。
【0024】
積層体1は、ガラス−セラミック層1a〜1dと、ガラス−セラミック層1a〜1dの各層間には、所定回路網を達成するや容量成分を発生するための内部配線導体3が配置されている。また、ガラス−セラミック層1a〜1dには、その層の厚み方向を貫くビアホール導体4が形成されている。
【0025】
ガラス−セラミック層1a〜1dは、例えば850〜1050℃前後の比較的低い温度で焼成可能にするガラス−セラミック材料からなる。具体的なセラミック材料としては、クリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)、ムライト、コージライトなどが例示できる。また、ガラス材料として複数の金属酸化物を含むガラスフリットを焼成処理することによって、コージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライトやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種類を析出するものである。このガラス−セラミック層1a〜1dの厚みは例えば100〜300μm程度である。
【0026】
内部配線導体3、ビアホール導体4は、金属酸化物V2 O5 を含有するAg系(Ag単体、Ag−PdなどのAg合金)など導体からなり、内部配線導体3の厚みは8〜15μm程度であり、ビアホール導体4の直径は任意な値とすることができるが、例えば直径は80〜250μmである。
【0027】
また、積層体1の両主面には、表面配線導体2が形成されている。表面配線導体2は、金属酸化物V2 O5 、ホウ珪酸系ガラス成分を含有するAg系(Ag単体、Ag−PdなどのAg合金)導体から成る。
【0028】
また、表面配線導体2のV2 O5 、ホウ珪酸系ガラス成分を含有するAg系導体は、積層体1の焼成時に同時に焼成されて形成されるものであり、電子部品5を表面配線導体2上に半田接合したときに、表面配線導体2に半田食われが発生しないように、金属成分として、Ptなどを若干添加してもかまわない。
【0029】
表面配線導体2は、所定回路の入出力端子電極や電子部品搭載パッドを含むものであり、必要に応じて、厚膜抵抗体膜や絶縁保護膜が形成され、さらにチップ状コンデンサ、チップ状抵抗、トランジスタ、ICなどの各種電子部品5などが半田やワイヤボンディングなどによって搭載されている。
【0030】
上述の回路基板の製造方法について説明する。
【0031】
積層体1は、まず、ガラス−セラミック層1a〜1dとなるガラス−セラミック材料から成るグリーンシートを形成する。具体的には、セラミック粉末、低融点ガラス成分のフリット、有機バインダ、有機溶剤を均質混練したスラリーを、ドクタブレード法によって所定厚みにテープ成型して、所定大きさに切断してシートを作成する。
【0032】
セラミック粉末は、クリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)、ムライト、コージライトなどの絶縁セラミック材料、BaTiO3 、Pb4 Fe2 Nb2 O12、TiO2 などの誘電体セラミック材料、Ni−Znフェライト、Mn−Znフェライト(広義の意味でセラミックという)なとの磁性体セラミック材料などが挙げられ、その平均粒径1.0〜6.0μm、好ましくは1.5〜4.0μmに粉砕したものを用いる。尚、セラミック材料は2種以上混合して用いられてもよい。特に、コランダムを用いた場合、コスト的に有利となる。
【0033】
低融点ガラス成分のフリットは、焼成処理することによってコージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライトやその置換誘導体の結晶やスピネル構造の結晶相を析出するものであればよく、例えば、B2 O3 、SiO2 、Al2 O3 、ZnO、アルカリ土類酸化物を含むガラスフリットが挙げられる。この様なガラスフリットは、ガラス化の温度範囲が広く、また屈伏点が600〜800℃付近にあるため、850〜1050℃程度の低温焼成に適し、Ag系内部配線導体3、Ag系表面配線導体2となる導体膜との焼結挙動が近似している。尚、このガラスフリットの平均粒径は、1.0〜6.0μm、好ましくは1.5〜3.5μmである。
【0034】
上述のセラミック材料とガラス材料との構成比率は、850〜1050℃の比較的低温で焼成する場合には、セラミック材料が10〜60wt%、好ましくは30〜50wt%であり、ガラス材料が90〜40wt%、好ましくは70〜50wt%である。
【0035】
有機バインダは、固形分(セラミック粉末、低融点ガラス成分のフリット)との濡れ性も重視する必要があり、比較的低温で且つ短時間の焼成工程で焼失できるように熱分解性に優れたものが好ましく、アクリル酸もしくはメタクリル酸系重合体のようなカルボキシル基、アルコール性水酸基を備えたエチレン性不飽和化合物が好ましい。
【0036】
溶剤として、有機系溶剤、水系溶剤を用いることができる。例えば、有機溶剤の場合には、2.2.4−トリメチル−1.3−ペンタジオールモノイソベンチートなどが用いられ、水系溶剤の場合には、水溶性である必要があり、モノマー及びバインダには、親水性の官能基、例えばカルボキシル基が付加されている。
【0037】
その付加量は酸価で表せば2〜300あり、好ましくは5〜100である。付加量が少ない場合は水への溶解性、固定成分の粉末の分散性が悪くなり、多い場合は熱分解性が悪くなるため、付加量は、水への溶解性、分散性、熱分解性を考慮して、上述の範囲で適宜付加される。
【0038】
次に、ガラス−セラミック層1a〜1dとなるグリーンシートには、各層のビアホール導体4の形成位置に対応して、所定径の貫通穴をパンチングによって形成する。
【0039】
次に、グリーンシートの貫通穴に、ビアホール導体4の導体をAg系導電性ペーストを印刷・充填するとともに、ガラス−セラミック層1b〜1dとなるグリーンシート上に、各内部配線導体3となる導体膜を印刷し、乾燥処理を行う。
【0040】
ここで、ビアホール導体、内部配線用のAg系導電性ペーストは、Ag系(Ag単体、Ag−PdなどのAg合金)粉末、所定量のV2 O5 粉末、ホウ珪酸系ガラスフリット、エチルセルロースなどの有機バインダー、溶剤を均質混合したものが用いられる。
【0041】
また、ガラス−セラミック層1aとなるグリーンシート上に、表面配線導体2となる導体膜を表面配線用Ag系導電性ペーストを用いて印刷し、乾燥処理を行う。
【0042】
ここで、表面配線用Ag系導電性ペーストは、Ag系(Ag単体、Ag−PdなどのAg合金)粉末、Pt粉末、所定量のV2 O5 粉末、ホウ珪酸系ガラスフリット、有機バインダー、溶剤を均質混合したものが用いられる。尚、V2 O5 、ホウ珪酸系ガラス成分以外の微量の金属酸化物が含有していても構わない。 このようにビアホール導体4となる導体、内部配線導体3となる導体膜、表面配線導体2となる導体膜が形成されたグリーンシートを、積層体1のガラス−セラミック層1a〜1dの積層順に応じて積層一体化する。
【0043】
尚、ガラス−セラミック層1aとなるグリーンシートに形成されるビアホール導体4となる導体は、印刷工程の共通化のために、表面配線用Ag系導電性ペーストを用いることが望ましい。
【0044】
次に、未焼成の積層体を、酸化性雰囲気または大気雰囲気で焼成処理する。焼成処理は、脱バインダ過程と焼結過程からなる。
【0045】
脱バインダ過程は、ガラス−セラミック層1a〜1dとなるグリーンシート、内部配線導体3となる導体膜、ビアホール導体4となる導体、表面配線導体2となる導体膜に含まれる有機成分を焼失するためのものであり、例えば600℃以下の温度領域で行われる。
【0046】
また、焼結過程は、ガラス−セラミックのグリーンシートのガラス成分を結晶化させると同時にセラミック粉末の粒界に均一に分散させ、積層体に一定強度を与え、内部配線導体3となる導体膜、ビアホール導体4となる導体、表面配線導体2となる導体膜の導電材料、例えば、Ag系粉末を粒成長させて、低抵抗化させ、ガラス−セラミック層1a〜1dと一体化させるものである。これは、ピーク温度850〜1050℃に達するまでに行われる。
【0047】
この工程で、内部に内部配線導体3、ビアホール導体4が形成され、且つ表面に表面配線導体2が形成された積層体1が達成されることになる。
【0048】
その後、必要に応じて、表面配線導体2に接続する厚膜抵抗素子や絶縁保護膜を形成して、各種電子部品5を半田などで接着・実装を行う。
【0049】
これにより、表面配線導体2が積層体1と一体的に焼成処理された低温焼成の回路基板が達成することになる。
【0050】
本発明において、表面配線導体2を形成するためのAg系導電性ペーストは、例えば、平均粒径3μmのAg粉末と、Ag等の金属成分に100wt%に対して0.2〜1.0wt%のV2 O5 粉末と、軟化点700〜800℃でAg等の金属成分に100wt%に対して0.2〜1.0wt%のホウ珪酸系ガラスフリット、エチルセルロースなどの有機バインダー、ペンタンジオールイソブレートなどの有機溶剤が均質混合されて形成される。尚、必要に応じて、金属成分として、例えば、平均粒径0.5μmのPt粉末を添加しても構わない。このPt粉末は、表面配線導体2上に電子部品5などを半田を介して接着する際、Ag成分が半田に食われることを防止するために添加するものであり、例えば、金属成分中、例えば約1wt%の割合で添加されている。
【0051】
この表面配線用のAg系導電性ぺーストは、ガラス−セラミック層1a〜1dとなるガラス−セラミックのグリーンシートなどとともに、大気雰囲気中で一体的に焼成されるものである。
【0052】
V2 O5 粉末は、Ag系粉末と、例えば積層体1のガラス−セラミック材料のガラス成分とのアンカー効果のスパイク構造をより接着を強固にするものである。まず、V2 O5 粉末の添加範囲の下限は、金属成分100wt%に対して0.2wt%である。これは、上述のアンカー効果によって、特にガラス−セラミック層との界面部分の強度を向上させるために必要な量である。具体的にAg系粒子の凹凸表面に、食い込むようにV2 O5 が配置されて、ガラス−セラミック材料のガラス成分と安定的に結合しあう。
【0053】
この下限である0.2wt%を満たない場合には、表面配線導体2とガラス−セラミックとの界面部分で充分な接着強度が得られない。この充分な接着強度とは、初期状態で1.5kgf/2mm角の力で表面配線導体2を引っ張っても剥離が生じないことである。また、熱エージング試験後で1.5kgf/2mm角の力で表面配線導体2を引っ張っても剥離が生じないことである。
【0054】
従って、導電性ペーストに、少なくとも0.2wt%のV2 O5 を添加することにより、表面配線導体2と表面のガラス−セラミック層1aとの強固な接着強度が達成される。
【0055】
次に、V2 O5 粉末の添加範囲の上限は、金属成分100wt%に対して1.0wt%である。V2 O5 粉末が1.0wt%を越えて過剰に添加されると、V2 O5 成分が、表面配線導体2の表面に析出されることから、表面配線導体2の表面において、半田の濡れ性を阻害され、各種電子部品5を安定して半田接合することが困難となる。
【0056】
また、ホウ珪酸系ガラスについて、軟化点が700〜800℃がである。軟化点は、ホウ珪酸系ガラス成分を構成するB2 O3 の量比を調整することによって制御される。例えば、B2 O3 の量比を高めると、軟化点は低下する方向となる。
【0057】
ホウ珪酸系ガラス成分の軟化点は、積層体1の焼結挙動に近時させることなどから厳密に制御する必要がある。
【0058】
軟化点が700℃未満では、表面配線導体2中のホウ珪酸系ガラス成分が、Ag系材料に比較して低い温度または同等の温度で軟化流動してしまう。このため、積層体1の収縮挙動を阻害しり、積層体1のガラス成分と相溶し、積層体1の結晶化ガラス成分の組成を変質させて、結晶化を阻害してしまう。そして、Ag系材料の焼結反応を遅らせるべく、ホウ珪酸系ガラス成分の量を多くすると、表面配線導体2の表面や配線導体の基体との界面部分にガラス成分が集中し、半田ぬれ性が低下し、Ag粉末のアンカー効果を阻害する結果となり、接着強度が低下してしまう。
【0059】
また、軟化点が800℃を越えると、焼成された表面配線導体2中にホウ珪酸系ガラス成分が残存し、積層体1の結晶化ガラス成分を引きつけ、表面配線導体2のガラス成分が相対的に過剰となり、半田ぬれ性を劣化させてしまうことになる。
【0060】
以上の点から、表面配線導体2に含まれるホウ珪酸系ガラス成分の軟化点は、700〜800℃が望ましい。
【0061】
また、このようなホウ珪酸系ガラス成分の含有量は、Ag系材料の焼結反応を制御して基板の反りを防止することなどから厳密に制御する必要がある。
【0062】
ホウ珪酸系ガラス成分は、金属成分100重量%に対して0.2〜1.0wt%を含有している。この含有量に関してはAg系材料の焼結反応を遅らせて、ガラス−セラミック材料の焼結反応と同時程度にまですることがてき、その結果、基板の反りを防止することができる。
【0063】
ホウ珪酸系ガラス成分の含有量が、0.2wt%未満では、Agの焼結を遅らせて基板の反りを小さくするという効果が充分に得られない。また、10wt%を越えると、表面配線導体2のガラス成分が過剰となり、表面配線導体2の表面にガラス成分が析出されて、半田ぬれ性が劣化してしまうことになる。
【0064】
〔実験例〕
本発明者は、回路基板の作用・効果を確認するために、8種類の表面配線導体用のAg系導電性ペーストを用いて作成し、上述の低温焼成可能なガラス−セラミック材料のグリーンシート(厚み200μm)を5層して、積層した未焼成の積層体(基板の形状5mm角、10mm角)の表面に、表面配線用のAg系導電性ペーストを印刷し、大気雰囲気中で950℃で焼成処理して試料を作成した。
【0065】
各表面配線導体用Ag系導電性ペーストは、平均粒径3μmのAg粉末、所定量のV2 O5 粉末、所定量のホウ珪酸系ガラスフリット、有機バンイダー(エチルセルロース)、有機溶剤(2.2.4−トリメチル−1.3−ペンタジオールモノイソブチレート)を3本ロールで均質混合して作成した。
【0066】
具体的には、上述のホウ珪酸系ガラスフリットとして、軟化点が600℃、750℃、890℃の3種類のホウ珪酸系ガラス成分を用意し、所定割合となるようにペーストを作成した。
【0067】
ガラス−セラミック材料は、アノーサイト系結晶化ガラスが析出されるガラス材料、平均粒径2.0μmのアルミナセラミック粉末を用いた。混合比率は、ガラス材料が55wt%、アルミナセラミック粉末が45wt%である。
【0068】
さらに、全重量に対して、10wt%のアクリル樹脂、40wt%のトルエン、60wt%のDTPをボールミルで混練し、ドクターブレードで200μmのシートを作成した。試料の基体は、このシートを5層を加圧圧着して積層し、その基体の形状は、焼成後に2mm角(半田ぬれ性測定、及び接着強度用)、5mm角(基板の反り測定用)、10mm角(基板の反り測定用)とした。
【0069】
表面配線導体2は、上述の未焼成の基体の全表面に、スクリーン印刷により、厚み15μmの導体膜を形成した。
【0070】
このようにした作成した試料1〜8について、半田ぬれ性、基板の反り、接着強度を調べた。
【0071】
〔半田ぬれ性〕
得られた試料をロジン系フラックス溶液に浸漬した後、230℃の2%Ag入りSn−Pb共晶半田浴中に浸漬し、表面配線導体2の表面の半田濡れ性を調べた。半田濡れ性は、全表面面積に対して90%以上の面積で半田が付着しているものを「優」とし、それ以下を「劣」とした。
【0072】
〔接着強度〕
接着強度は2mm角の表面配線導体2に0.6mmφの鉛メッキ導線を半田接合して、ピール法で、▲1▼初期状態の接着強度、▲2▼150℃で500時間放置後(エージング)の接着強度、▲3▼−40℃〜125℃、各30分を100サイクルを施した温度サイクル試験(サイクル)後の接着強度をそれぞれ調べた。
【0073】
接着強度は、初期状態で2.0kgf/2mm角以上、エージング、サイクル試験後で1.0kgf/2mm角以上の試料が実用上重要となる。
【0074】
〔基板の反りの評価〕
また、焼成後の試料の表面の最高部分と最低部分の差を測定した。基板の反りは、0.03mm以下の試料が実用上重要となる。
【0075】
表2には、表面配線用導電性ペーストの固形成分の重量比率(V2 O5 粉末、ホウ珪酸系ガラスは夫々金属成分100wt%に対する比率)及び夫々の特性を表1に示す。尚、表中、接着強度の「初期」は上述の▲1▼の初期状態の特性であり、「エージング」は、上述の▲2▼の熱硬化エージング後の特性であり、「サイクル」は上述の▲3▼の温度サイクル試験後の特性を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
〔結果〕
まず、試料番号8では、ホウ珪酸系ガラスを含まない表面配線導体を形成した試料である。この試料では、半田のぬれ性、初期接着強度、150℃で500時間放置(熱エージング)後、熱サイクル(−40℃〜125℃、各30分を100サイクルを施した温度サイクル試験)後の接着強度ともに優れたもののとなるが、特に基板の反り(10mm角)が顕著に現れる。
【0078】
この基板の反りは、基体の焼結反応に比較して、Ag材料の焼結反応が比較的低温で達成されてしまうため、表面配線導体と基体の焼結挙動の挙動が合致していないことに起因するものであり、Agの焼結反応を遅らせるホウ珪酸系ガラスを含まないためである。
【0079】
試料番号1、4、5から、表面配線用Ag系導電性ペーストのV2 O5 粉末は、金属成分100wt%に対して0.2〜1.0wt%の範囲が望ましいことが理解できる。これによって、初期の接着強度で試料番号8と同等で、熱エージグ後でも、熱サイクル後でも、試料番号8と比較して遜色のない特性がなられ、しかも、基板の反りも小さいものとなる。尚、試料番号5は、半田ぬれ性が劣るため、接着強度の測定が不可能である。
【0080】
また、試料番号4と試料番号8とから、ホウ珪酸系ガラスの軟化点、含有量を適正に設定すれば、試料番号8の基板の反りを大きく改善できることになる。
【0081】
試料番号1〜3は、上述のV2 O5 粉末を0.2wt%に固定し、また、軟化点が750℃のホウ珪酸系ガラスを用いて、そのホウ珪酸系ガラスの重量比率を変化させた。これにより、軟化点750℃のホウ珪酸系ガラスフリットは、金属成分100wt%に対して0.2〜1.0wt%の範囲が望ましいことが理解できる。傾向としては、ホウ珪酸系ガラスの量を増加させると、基板の反りは減少する方向となるが、表面配線導体2の半田ぬれ性を劣化させる方向、熱硬化エージング、熱サイサル後の接着強度を低下させ、接着信頼性が劣る傾向を示す。
【0082】
尚、試料番号3は、半田ぬれ性が劣るため、接着強度の測定が不可能である。
【0083】
次に、試料番号6、7は、上述のV2 O5 粉末を金属成分100wt%に対して、軟化点が異なるホウ珪酸系ガラス成分(軟化点が600℃、890℃)を用いた。
【0084】
試料番号6の軟化点が600℃のホウ珪酸系ガラス成分(1.0wt%)では、初期の特性は、半田ぬれ性に優れ、基板の反りにも優れたものとなるが、特に接着強度が劣るものとなる。これは、半田ぬれ性は一応良好を示すものの、表面配線導体の表面や配線導体の基体との界面部分にガラス成分が集中して、Ag粉末のアンカー効果を阻害する結果となり、接着強度が低下してしまうものである。このため、この接着信頼性を回復させるため、ホウ珪酸系ガラスの量を1.0wt%以下とすることが考えられるが、ホウ珪酸系ガラス成分の軟化流動が比較的低い温度から発生してしまうため、基体の収縮挙動を阻害して基板の反りを大きくしてしまったり、基体のガラス成分と相溶し、基体のガラス成分の組成を変質させて、結晶化を阻害してしまう。
【0085】
試料番号7の軟化点890℃では、焼成された表面配線導体中にホウ珪酸系ガラス成分が残存し、基体のガラス成分を引きつけ、表面配線導体のガラス成分が多過となり、半田ぬれ性を劣化してしまい、接着強度の測定ができないものとなる。
【0086】
また、本発明者らは、本発明に適用されるホウ珪酸系ガラスの軟化点の範囲を700〜800℃であれば、試料番号1、2のように傾向を示し、上述の良品の範囲に属することを確認した。
【0087】
尚、上述の実施例において、基板として、複数のガラス−セラミック層1a〜1dが積層し、その間に内部配線導体3を有する積層体で説明したが、ガラス−セラミック材料からなる単板であっても構わない。
【0088】
また、積層体の形成工程がグリーンシートの積層による方法で説明したが、ガラス−セラミック材のペーストを順次印刷した印刷多層により積層体を形成してもよく、また、ガラス−セラミック材からなるスリッフプ材に光硬化モノマーを添加して、ビアホール導体となる貫通穴を露光・現像によって形成する方法を含む積層体の形成方法であってもよく、要は未焼成状態の基板(積層体)の表面に表面配線用Ag系導電性ペーストを用いて、表面配線導体となる導体膜を形成し、その後、基板(積層体)と同時に焼成した低温焼成回路基板であれば、基板(積層体)の構造・形成方法は任意に変更できる。
【0089】
また、上述の表面配線用Ag系導電性ペーストとして、上述のようにpt粉末を若干添加したものであってもよく、その主成分がAg系粉末、即ち、Ag単体、Ag−Pd合金などのAg合金粉末であっても構わない。
【0090】
さらに、Ag系材料を主成分とする金属材料に対して、金属酸化物として、V2 O5 を添加したが、表面配線導体2の半田ぬれ性を阻害しない範囲で、その他の金属酸化物が微量に含まれていても構わない。
【0091】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ガラス−セラミック層からなる基体の表面に、表面配線導体を所定量のV2 O5 、所定温度の軟化点、所定量のホウ珪酸系ガラスを含むAg系導体膜で形成し、しかも、これらを大気雰囲気中で一体的に焼成して形成した低温焼成回路基板である。
【0092】
これにより、表面配線導体のAg粒子への基板材料のガラス成分からのアンカー効果が助長され、長期にわたり安定且つ強固な接着強度が維持でき、接着信頼性に優れた回路基板となる。また、基板の反りを抑えた実用性に優れた回路基板となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回路基板の断面図である。
【符号の説明】
10・・・・・・回路基板
1・・・・・・・積層体
1a〜1d・・・ガラス−セラミック層
2・・・・・・・表面配線導体
3・・・・・・・内部配線導体
4・・・・・・・ビアホール導体
Claims (1)
- Ag系金属成分100wt%に対して0.2〜1.0wt%のV2O5、0.2〜1.0wt%の軟化点が700〜800℃のホウ珪酸系ガラスを含有する表面配線導体を、屈伏点が600〜800℃のガラス材料を含有させたガラス−セラミック焼結体から成る基体に一体的に焼結して形成して成る回路基板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01700397A JP3642648B2 (ja) | 1997-01-30 | 1997-01-30 | 回路基板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01700397A JP3642648B2 (ja) | 1997-01-30 | 1997-01-30 | 回路基板 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10215046A JPH10215046A (ja) | 1998-08-11 |
JP3642648B2 true JP3642648B2 (ja) | 2005-04-27 |
Family
ID=11931842
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP01700397A Expired - Fee Related JP3642648B2 (ja) | 1997-01-30 | 1997-01-30 | 回路基板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3642648B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN100589680C (zh) | 2003-11-14 | 2010-02-10 | 株式会社村田制作所 | 导电糊及多层陶瓷基板 |
JP4630616B2 (ja) * | 2004-09-22 | 2011-02-09 | 福田金属箔粉工業株式会社 | Pbフリー導電性組成物 |
JP5507954B2 (ja) * | 2009-10-19 | 2014-05-28 | 三星エスディアイ株式会社 | ガラスペースト組成物、電極基板とその製造方法、及び色素増感型太陽電池 |
-
1997
- 1997-01-30 JP JP01700397A patent/JP3642648B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10215046A (ja) | 1998-08-11 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2001307547A (ja) | 導電性組成物およびそれを用いた印刷回路板 | |
JP3642648B2 (ja) | 回路基板 | |
TW511442B (en) | Multilayered board and method for fabricating the same | |
JP2598872B2 (ja) | ガラスセラミックス多層基板 | |
JP3119714B2 (ja) | 導体ペースト組成物および配線基板 | |
JP2002076609A (ja) | 回路基板 | |
JP3336204B2 (ja) | 回路基板 | |
JP3152873B2 (ja) | 低温焼成回路基板 | |
JP3686687B2 (ja) | 低温焼成セラミック回路基板 | |
JP3792271B2 (ja) | 低温焼成回路基板 | |
JP2539169B2 (ja) | ガラスセラミックス組成物 | |
JP2000049431A (ja) | セラミック回路基板 | |
JP3493294B2 (ja) | 回路基板 | |
JP3064047B2 (ja) | 多層セラミック回路基板 | |
JP2002198626A (ja) | 低温焼成セラミック回路基板の製造方法 | |
JPH11135899A (ja) | セラミック回路基板 | |
JP3130914B2 (ja) | 多層回路基板 | |
JP2001284754A (ja) | ガラスセラミック回路基板 | |
JP2695602B2 (ja) | ガラスセラミックス多層基板 | |
JPH11186727A (ja) | 配線基板およびその製造方法 | |
JP2001156412A (ja) | 回路基板 | |
JP4284371B2 (ja) | 積層ガラス−セラミック回路基板 | |
JP2002198624A (ja) | 回路基板 | |
JP3493264B2 (ja) | 回路基板 | |
JP2000165043A (ja) | 回路基板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040810 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20041012 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050118 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050125 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |