JP3642013B2 - 非線形歪付加装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、楽音信号や音声信号等の入力信号を入力し、非線形歪成分を加える非線形歪付加装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自然楽器や電気楽器の楽音信号、および、電子楽器の音源で生成された楽音信号に関し、その入力信号振幅の大きい部分を歪ませることによりディストーション効果を与える非線形歪付加装置が知られている。
例えば、真空管増幅器において、入力信号の振幅が過大になると、増幅器が飽和することにより出力信号が歪む。上述した非線形歪付加装置は、増幅器固有の特性を利用することなく、このような非線形歪を意識的に楽音信号に加えることにより、特有の音色を有する楽音信号を得るものである。
【0003】
従来の非線形歪付加装置は、ダイオードやFETなどの非線形特性によって楽音信号をクリップさせていた。しかし、その非線形特性は、素子固有のものであるため、自由に特性を制御することがむずかしかった。
例えば、入力信号振幅が、あるレベル以上にならないとクリップしない。したがって、例えば、オルガンの音を微妙に歪ませたい場合に、1音では歪まないが、複数音が同時発生すると歪むといったことが起こるため、非常に扱いにくかった。これは、複数鍵の同時押鍵数に応じて入力信号レベルが増大してクリップレベルを超えるからである。
また、選択された音色によって音源の出力レベルが異なる。そのため、音色を変更する都度、非線形歪付加装置のクリップレベルを再調整する必要があるために不便であった。
さらにまた、従来の非線形歪付加装置では、クリップレベルを超えると急に歪みが発生するので、楽音信号にソフトな非線形歪みを与えることがむずかしかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、楽音信号または音声信号を入力し、第1の傾きを有する直線から曲線状に変化して第2の傾きを有する直線になるという、ソフトな非線形歪成分を含む出力信号を容易に得ることができ、かつ、直線から曲線状に変化するしきい値および曲線状から直線に変化するしきい値の少なくとも一方を入力信号レベルに応じて制御することにより、この入出力特性を入力信号レベルに応じて自由に制御できる非線形歪付加装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明においては、非線形歪付加装置において、入力信号として楽音信号または音声信号を入力し、該入力信号の正および負の少なくとも一方の振幅に関し、該振幅の絶対値が第1のしきい値を超えていないときには、入出力特性が第1の傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が第2のしきい値を超えているときには、前記入出力特性が前記第1の傾きとは異なる第2の傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が前記第1のしきい値を超え前記第2のしきい値を超えていないときには、前記入出力特性が、前記第1の傾きを有する直線から連続し、前記第1の傾きから前記第2の傾きに曲線状に変化して、前記第2の傾きを有する直線に連続する非線形部と、前記入力信号の入力信号レベルを検出する入力信号レベル検出部と、前記入力信号レベルに応じた制御信号により前記第1,第2のしきい値の少なくとも一方のしきい値を制御するしきい値制御手段、を有し、前記非線形部から前記楽音信号または音声信号に非線形歪成分を加えた出力信号を得るものである。
したがって、楽音信号または音声信号を入力し、入出力特性の傾きを、振幅の絶対値が第1のしきい値を超えていないときには、第1の傾きを有する直線とし、第2のしきい値を超えていると第1の傾きとは異なる第2の傾きの直線とし、第1,第2のしきい値の間の遷移領域で、第1の傾きから第2の傾きまで曲線状に変化させているので、容易に非線形特性を実現することができる。かつ、入出力特性およびその傾きが連続的に変化しているため、入力信号にソフトな非線形歪を与えて出力信号を出力することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明においては、非線形歪付加装置において、入力信号として楽音信号または音声信号を入力し、該入力信号の正および負の少なくとも一方の振幅に関し、該振幅の絶対値が第1のしきい値を超えていないときには、入出力特性がゼロの傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が第2のしきい値を超えているときには、前記入出力特性がゼロでない傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が前記第1のしきい値を超え前記第2のしきい値を超えていないときには、前記入出力特性が、前記ゼロの傾きを有する直線から連続し、前記ゼロの傾きから前記ゼロでない傾きに曲線状に変化して、前記ゼロでない傾きを有する直線に連続する非線形歪生成部と、前記非線形歪生成部への入力信号から前記非線形歪生成部の出力信号を減算した信号を出力する合成手段と、前記入力信号の入力信号レベルを検出する入力信号レベル検出部と、前記入力信号レベルに応じた制御信号により前記第1,第2のしきい値の少なくとも一方のしきい値を制御するしきい値制御手段、を有し、前記合成手段から前記楽音信号または音声信号に非線形歪成分を加えた出力信号を得るものである。
したがって、入力信号成分と非線型歪成分とに分けて処理している。その結果、所望の非線形歪成分を生成しやすく、かつ、その特性を制御しやすい。
【0009】
請求項3に記載の発明においては、非線形歪付加装置において、入力信号として楽音信号または音声信号を入力し、該入力信号の正および負の少なくとも一方の振幅に関し、該振幅の絶対値が第1のしきい値を超えていないときには、入出力特性がゼロの傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が第2のしきい値を超えているときには、前記入出力特性がゼロでない傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が前記第1のしきい値を超え前記第2のしきい値を超えていないときには、前記入出力特性が、前記ゼロの傾きを有する直線から連続し、前記ゼロの傾きから前記ゼロでない傾きに曲線状に変化して、前記ゼロでない傾きを有する直線に連続する非線形歪生成部と、前記非線形歪生成部の出力を入力するフィルタ手段と、前記非線形歪生成部への入力信号から前記フィルタ手段の出力信号を減算した信号を出力する合成手段と、前記入力信号の入力信号レベルを検出する入力信号レベル検出部と、前記入力信号レベルに応じた制御信号により前記第1,第2のしきい値の少なくとも一方のしきい値を制御するしきい値制御手段、を有し、前記合成手段から前記楽音信号または音声信号に非線形歪成分を加えた出力信号を得るものである。
したがって、フィルタ特性に応じた非線形歪成分を含む出力信号を得ることができる。
例えば、楽音信号を入力信号とし、かつ、フィルタ特性として低域通過特性を有するものとした場合には、楽音信号の高次倍音成分などの高い周波数成分が抑制されたソフトな非線形歪成分を加えることができる。
非線形歪生成部としては、例えば、入力信号振幅が第1のしきい値を超えるまではゼロで、第1のしきい値を超えると非ゼロの値をとる関数値を出力するものを用いることができる。例えば、入力信号振幅と第1のしきい値との差のn乗(n=2以上の整数)に比例し、入力信号振幅が第2のしきい値を超えると、超えたときの関数値に、入力信号振幅と第2のしきい値との差を加えた関数を用いることができる。
上述した各請求項に記載の非線形歪付加装置は、前記入力信号の入力信号レベルを検出する入力信号レベル検出部を有し、前記しきい値制御手段は、前記入力信号レベルに応じた制御信号により前記第1,第2のしきい値の少なくとも一方のしきい値を制御するものである。
したがって、入力信号レベルに応じて非線形特性を制御することができる。
例えば、入力信号レベルが小さいほど、少なくとも一方のしきい値を小さくすることにより、入力信号レベルに応じた大きさの非直線歪成分を入力信号に加えて出力信号とすることができる。
しきい値を制御するには、複数の態様がある。第1,第2のしきい値の一方を制御して、他方を固定値に設定しておくことができる。第1,第2のしきい値の差を所定値に保った状態で、入力信号レベルに応じた制御信号で第1,第2のしきい値を同時に制御することができる。あるいは、入力信号レベルに応じた制御信号で第1,第2のしきい値の中間の遷移領域の位置を制御することができる。この場合、第1,第2のしきい値の差は、入力信号レベルとは独立して任意の値に設定することができる。
なお、入力信号レベルに応じた制御信号は、入力信号レベルとは独立して設定されるオフセット値を含むものでもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の非線形歪付加装置の第1の実施の形態の機能ブロック図である。図中、1は非線形部、2は入力信号レベル検出部、3は非線形歪生成部、4は合成部である。
入力信号は、アナログ信号が図示しないサンプリング信号によってサンプリングされ、図示しないA/D変換器によりデジタル化されたものとして非線形部1および入力レベル検出部2に入力される。
非線形部1は、非線形特性を与えるものであって、入力信号振幅によって入出力特性の傾きが変化することによって非線形特性を与える。図示の例では、非線形部1は、非線形歪生成部3および合成部4からなる。非線形歪生成部3自体も非線形特性を有するものであって、非線形歪成分を生成する。合成部4は、入力信号とこの非線形歪成分とを所定比率で合成して非線形歪成分を有する信号を出力する。この出力信号は、図示しないD/A変換器によりアナログ信号に変換される。
【0011】
入力信号レベル検出部2では、入力信号レベルを検出し、この入力信号レベルに応じた特性制御信号を非線形部1の非線形歪生成部3に出力することにより、入力信号レベルに応じて非線形部1の非線形特性を制御する。
入力信号レベルは、入力信号の瞬時振幅ではなく、入力信号波形の全体的な大きさを表すデータを用いる。例えば、入力信号のエンベロープレベル、入力信号を全波整流して平滑した平均値、入力信号を2乗平均して得る実効値などを用いる。
【0012】
特性制御信号は、例えば、非線形歪生成部3において、非線形歪を発生し始める入力信号振幅のしきい値などを制御する。
非線形歪は、通常、入力信号の正および負の振幅に対して対称的に発生させるのであるが、少なくとも一方の極性の振幅に関してのみ、振幅の絶対値が所定のしきい値を超えると出力信号が歪むような非線形特性にしてもよいし、また、極性によって異なるしきい値を設定して、正負の振幅に対して非対称な非線形歪を生成してもよい。
【0013】
非線形特性の制御は、従来の問題点を解決するために、典型的には、入力信号レベルが小さくなるほど、非線形歪を生成する範囲が入力信号振幅の小さい方向に拡がるようにすることにより、入力信号レベルに応じた大きさの非線形歪が入力信号に加えられる。その結果、入力信号レベルの大きさにかかわらず、出力信号において、これに含まれる非線形歪の割合が同じになる方向に制御される。
一方、音色を変化させる点に着目する場合には、逆方向に制御してもよい。すなわち、入力信号レベルが大きくなるほど、非線形歪が発生する範囲が入力信号振幅の小さい方向に拡がるようにしてもよい。
【0014】
図示の例では、非線形部3と合成部4とで非線形部1を構成している。しかし、合成部4を用いることなく、非線形部1を直接的に構成することも可能である。例えば、非線形部1の非線形特性が従来通りのクリップ特性である場合、入力信号振幅に比例した出力信号が得られる線形領域と、出力信号が一定となる非線形の領域とに分割し、各領域でのみ動作する回路を設け、両回路の出力を最後に加算して構成することができる。
しかし、図示のように、入力信号成分と非線型歪成分とを分けて処理する方が、所望の非線形歪成分を生成しやすく、かつ、その特性を制御しやすい。
この装置は具体的には、プログラム制御されるDSP(Digital Signal Processor)等のデジタル回路で構成される。
【0015】
図2は、本発明の非線形歪付加装置の第2の実施の形態の機能ブロック図である。
図1に示した非線形部1として、入力信号振幅の絶対値が、あるしきい値(THLVL)を超えていないときには、入出力特性が第1の傾き(+1)を有する直線となり、しきい値(THLVL)を超えているときには、入出力特性が第1の傾きとは異なる第2の傾き(1−CL)を有する直線となるものを用いている。一方、図1に示した入力信号レベル検出部2として、エンベロープフォロワ15を用いている。この入力信号レベルに応じてしきい値を制御することにより、非線形部1の非線形特性を制御している。
【0016】
図中、11,12,14,17,20は加算器である。ここで、減算入力については、「−」の符号を付して図示している。また、加算器11,20に付した符号「ov」は、「オーバフロープロテクト」を意味し、出力が演算限界の最大値または最小値を超えているときには最大値または最小値(図示の例では、±1)を出力する。13は係数乗算器であって、係数値として「−1」を乗算することにより、反転増幅器の機能を有する。16は全波整流部であって、入力信号をその絶対値に変換する。すなわち、正入力をそのまま出力し負入力を正出力に変換する。
【0017】
18,24,26は半波整流部であって、入力信号の正側のみを選択的に出力する。すなわち、正入力はそのまま出力し負入力は零値を出力する。19は係数乗算器であって、係数ar(アタックレート)を乗算する。21は係数乗算器であって、係数rr(リリースレート)を乗算する。22は遅延器であって、入力を1サンプル時間遅延させて出力する。係数乗算器19、加算器20、遅延器22、係数乗算器21は、平滑回路(低域通過フィルタ)を構成する。23は係数乗算器であって、係数thを乗算する。この出力は、入出力特性の傾きが変化して出力信号が歪み始めるしきい値(THLVL)となる。25,27は係数乗算器であって、いずれも係数CLを乗算する。
【0018】
入力信号は、加算器11,12,係数乗算器13、および、エンベロープフォロワ15に入力される。
まず、エンベロープフォロワ15について説明する。エンベロープフォロワ15の全波整流部16は、入力信号振幅の絶対値を出力し、加算器17において、係数乗算器21の出力が減算される。加算器17および後続する半波整流部18は、入力信号の振幅値が係数乗算器21の出力を超えるときに、両者の差を係数乗算器19に出力する。
【0019】
係数乗算器19の乗算係数ar(アタックレート)は、エンベロープフォロワ15のアタック追従レートを決める。ar(アタックレート)は0<ar≦1であり、値が大きくなるほどエンベロープレベルの立ち上がりが急峻になる。加算器20において、係数乗算器19の出力が係数乗算器21の出力と加算され、遅延器22に出力される。遅延器22の出力は、係数乗算器21,23に出力される。
係数乗算器21の乗算係数rr(リリースレート)は、エンベロープフォロワ15の減衰レートを決める。rr(リリースレート)は0≦rr<1であり、値が大きくなるほど減衰時間が長くなる。係数乗算器23の係数thは、エンベロープフォロワ15が検出した入力信号レベルに応じたしきい値(THLVL)を決定するための比率(0≦th)である。
【0020】
一方、入力信号は、加算器12において、しきい値(THLVL)を減算され、後続する半波整流部24によって、入力信号がしきい値(THLVL)よりも大きくなったときにのみ、その差が係数乗算器25に出力される。加算器12と半波整流部24が、入力信号振幅が正側の非線形歪生成部に相当する。
係数乗算器25は差分値に乗算係数CLを乗算し非線形歪成分として加算器11に出力する。加算器11において、正の振幅値をとっている入力信号から、係数乗算器25の出力が減算される。係数乗算器25と加算器11とが、入力信号振幅が正側の合成部に相当する。
【0021】
乗算係数CLは、入力信号に対する非線形歪成分の合成割合を決定する係数である。非線形特性の観点から見れば、しきい値(THLVL)よりも絶対値の大きな非線形直線領域の入出力特性の傾きを決める係数である。すなわち、
CL=1のとき、入力信号振幅のしきい値(THLVL)を超えている部分が、そのまま歪み成分となって入力信号振幅から減算される。入力信号振幅は完全にクリップされる。
0<CL<1のとき、減算される非線形歪成分は、しきい値(THLVL)を超えている入力信号振幅よりも小さいために、完全なクリップとはならない。
CL<0のとき、しきい値(THLVL)を超えた非線形歪成分が加算されることになるので、逆に入出力特性の直線の傾きが大きくなる。
1<CLのとき、入力信号振幅がしきい値(THLVL)を超えると、入力信号振幅の増加分よりも非線形歪成分が大きくなり、入出力特性の直線の傾きが負となって出力信号レベルが減少する。
【0022】
上述した説明では、入力信号振幅が正の部分について説明したが、負の部分でも同様である。入力信号振幅が負のとき係数乗算器13によって入力信号が正に反転される。したがって、後続する加算器14,半波整流部26,係数乗算器27によって同様にして非線形歪成分を出力する。加算器11においては、負の入力信号に係数乗算器27の正出力を加算することにより、入力信号と非線形歪成分を合成する。
なお、半波整流部24の出力から半波整流部26の出力を、図示しない加算器で減算することにより非線形歪成分を1つに合成した上で、1つの係数乗算器25に通し、係数乗算器25の出力を加算器11において、入力信号から減算するようにしてもよい。
【0023】
このように、しきい値(THLVL)を入力信号レベルに応じて制御するとともに、このしきい値(THLVL)を超えた部分の非線形歪成分を制御することができるので、入出力特性の傾きを自由に制御することができる。すなわち、CL=0で、スロープ=1(歪なし)、CL=1でスロープ=0(クリップ歪)となる。CL<0では、スロープ>1(正の歪み)となる。ただし、出力信号振幅が1を超えると、加算器11の演算の制約上、第2のクリップが発生する。また、CL>1では、スロープ<0となり、増幅器がへたったような効果を得ることができる。
【0024】
上述した説明では、入力信号振幅の正負極性に対し、対称的な非線形特性を与えた。非線形特性を非対称にするには、一方のしきい値を入力信号よりも十分大きくすることを含めて、加算器12,14に入力するしきい値を異ならせたり、一方のみを入力信号レベルで制御するなど、異なる制御をすればよい。
また、上述したエンベロープフォロワ15において、ar(アタックレート),rr(リリースレート)の値を変えることによって、入力信号振幅のピークを結ぶエンベロープレベルから全波整流波形の平均値まで入力信号レベルの特性を連続的に変えることができる。エンベロープフォロワ15に限らず、既に説明したように、入力信号の実効値を検出する回路を用いるなど、入力信号レベルを検出できるものであればよい。
【0025】
図3〜図6は、図2に示した非線形歪付加装置において、乗算係数CLの値を種々異ならせたときの、シミュレーション結果を示す説明図である。いずれも、入力信号は、その周波数が880Hz(周期1.13ms)であり、その第1〜第7周期まではピーク振幅が1の正弦波であり、第8周期からは減衰させている。係数乗算器23の乗算係数th=1,アタックレートar=0.05,リリースレートrr=0.98としている。
図3は、乗算係数CL=1としたときの具体例である。
図3(a)は入力信号(横軸)に対する出力信号(縦軸)を示す入出力特性図である。既に説明したように、しきい値(THLVL)は、入力信号レベルによって制御される。ただし、図3(a)では、しきい値(THLVL)を、0.1,0.3,0.5としたきの入出力特性を示している。
図3(b)は、入力信号および出力信号を示す波形図である。
図3(c)は、エンベロープフォロワ15の出力を示す波形図である。アタックレートar=0.05、リリースレートrr=0.98では、入力信号振幅の絶対値のピーク間をつなぐエンベロープレベルというよりも、全波整流波形を平滑した平均値に近い特性となっている。乗算係数th=1としたので、しきい値(THLVL)は、このエンベロープフォロワ15の出力値に等しい。
【0026】
図3(a)に示すように、入力信号振幅が正負のしきい値(THLVL,−THLVL)を正側または負側に超えると、直線の傾き(増幅率)がゼロとなって、出力信号がクリップされて平坦になる。
図3(c)に示すように、この具体例ではエンベロープフォロワの出力が0.5付近にあり、かつ、出力が細かく変動しているために、図3(b)に示すように、出力信号は、入力信号のピーク値の50%付近でクリップし、クリップレベルも細かく変動している。
入力信号の減衰波形部を見ると、出力信号レベルが下がりつつも、出力信号波形は、前半の定常波形部のものに近い歪波形になっている。したがって、入力信号レベルに応じて非線形特性が制御されていることがわかる。
【0027】
図4は、乗算係数CL=0.7としたときの具体例である。
図4(a)は入出力特性図であり、図4(b)は、入力信号波形および出力信号波形を示す波形図である。なお、エンベロープフォロワ15の出力については、図3(c)と同じである。
図4(a)に示すように、入力信号振幅が正負のしきい値(THLVL,−THLVL)を正側または負側に超えても、直線の傾き(増幅率)がわずかに低下するだけである。したがって、図4(b)に示すように、出力信号波形が歪み始めるしきい値は、図3(b)ほどには目立たない。
【0028】
図5は、乗算係数CL=−1としたときの具体例である。
図5(a)は入出力特性図であり、図5(b)は、入力信号波形および出力信号波形を示す波形図である。エンベロープフォロワ15の出力については図3(c)と同じである。
図5(a)に示すように、入力信号が正負のしきい値(THLVL,−THLVL)を正側または負側に超えると、直線の傾き(増幅率)が増加する。ただし、図2の加算器11は出力が演算限界の±1を超えると飽和するため、出力信号は±1を超えない。図5(b)に示すように、入力信号の定常波形部分では、正負のしきい値(THLVL,−THLVL)を正側または負側に超えているので、出力信号の傾斜が急峻になるとともに、±1でクリップする。
【0029】
図6は、乗算係数CL=2としたときの具体例である。
図6(a)は入出力特性図であり、図6(b)は、入力信号波形および出力信号波形を示す波形図である。エンベロープフォロワ15の出力については、図3(c)と同じである。
図6(a)に示すように、入力信号が正負のしきい値(THLVL,−THLVL)を正側または負側に超えると、直線の傾き(増幅率)が負(−1)となる。その結果、図6(b)に示すように、入力信号が正負のしきい値(THLVL,−THLVL)を正側または負側に超えると、出力信号波形は逆に窪むことになる。
【0030】
上述した各具体例からわかるように、入力信号レベルに応じて、非線形歪を与え始めるしきい値(THLVL)を可変制御できる。同時に、乗算係数CLを設定変更するだけで異なる非線形特性に設定して、異なる音色を与える非線形歪を入力信号に加えることが可能である。さらに、この乗算係数CLの値が時間的に変化するように制御することにより、多様な非線形歪を入力信号に加えることができる。
【0031】
図7は、本発明の第3の実施の形態の機能ブロック図である。図中、図2と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
31はオーバフロープロテクト付き加算器、32は半波整流部である。この実施の形態は、エンベロープフォロワ15が検出した信号に係数thを乗算する係数乗算器23の出力に、オフセットOFSを加算してしきい値(THLVL)とすることにより、オフセット値を含んだものを入力信号レベルに応じた特性制御信号としたものである。
【0032】
その結果、オフセットOFSを正としたとき、少なくともオフセットOFS以上の入力レベルがないと非線形歪が与えられないようにすることができる。すなわち、しきい値(THLVL,−THLVL)の絶対値がオフセットOFS分だけ上昇,下降するため、歪み始める入力信号振幅の絶対値が上昇,下降する。例えば、入力信号レベルがゼロに近いときでも、オフセットOFSレベル以下の入力信号が歪まないようにすることができる。
【0033】
また、エンベロープフォロワ15は、平滑フィルタを含んでいるので、入力信号レベルの変化に追従するのが遅れる。したがって、追従するまでの過渡的期間であって、エンベロープレベルがまだ小さいときに、入力信号の小さいレベルに対して非線形歪を与えてしまうことを防止できる。
また、入力信号の減衰部分においては、エンベロープレベルが遅れて減衰することになる。このような期間において、オフセットOFSを負にすれば、減衰部分の入力レベルの小さい信号に対しても非線形歪を与えることができる。
なお、オフセットOFSが正であれば、加算器31の出力は必ず正となり、半波整流部32は不要である。しかし、オフセットOFSの値を負にも設定できるときには、加算器31の出力が負になるおそれがあるので、半波整流部32を介在させている。
【0034】
図8は、本発明の第4の実施の形態の機能ブロック図である。
この実施の形態は、入出力特性の傾き(増幅率)が変化する遷移領域の入出力特性を曲線状にすることにより、ソフトな非線形歪成分含む出力信号が得られる。また、入力信号レベルに応じて、入出力特性の傾きが変化する少なくとも1つのしきい値を制御することにより、入力信号レベルに応じて非線形特性を制御している。
図示の例では、入力信号の正および負の振幅に関し、振幅の絶対値がしきい値(THLVL)を超えていないときには、入出力特性が傾き(+1)を有する直線となり、振幅の絶対値がしきい値(THLVL+OB)を超えているときには、入出力特性が傾き(+1)とは異なる傾き(1−CL)の直線となり、振幅の絶対値がしきい値(THLVL)を超えしきい値(THLVL+OB)を超えていないときには、入出力特性が連続するとともに、傾き(+1)から傾き(1−CL)に曲線状に変化する非線形特性を有する。入出力特性が曲線となる遷移領域の傾きは、2乗特性を有しているため、入力信号振幅が大きくなるほど、傾きの変化率が大きくなる。
【0035】
図中、図2と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
41,48は係数乗算器であって、その乗算係数はCWであり、それぞれ、半波整流部24,26の出力を入力する。42,49はオーバフロープロテクト付きの係数乗算器であって、係数乗算器41,48の出力を入力し、その乗算係数はSであり、シフトレジスタのシフト量に応じた2nの値をとる乗算係数である。例えば、乗算係数CW×S=100のとき、S=256(8ビットシフト)としたときには、CW=100/256とする。係数乗算器41,42、係数乗算器48,49は、乗算係数CW×Sの係数乗算器として機能する。乗算係数CW×Sは、遷移領域の曲線形状の大きさを決める。
【0036】
43,50は2乗演算器であって、それぞれ、係数乗算器42,49の出力を入力し、入力を2乗した値を出力する。2乗特性は、乗算係数も入力信号振幅とすることにより実現される。2乗特性を記憶したルックアップテーブルを入力値で参照して2乗特性の出力を得ることにより実現してもよい。
44,51は係数乗算器であり、その乗算係数はCAであって、それぞれ、2乗演算器43,50の出力を入力し、加算器47,54に出力する。45,52は加算器であって、それぞれ、半波整流部24,26の出力を入力し、入力からオフセットCBを減算した値を半波整流部46,53に出力する。このオフセットCBは、入出力特性の傾きが変化する遷移領域の幅を決める。
46,53は半波整流部であって、それぞれ、加算器47,54に出力される。47,54はオーバフロープロテクト付きの加算器であり、非線形歪成分を係数乗算器25,27に出力する。
【0037】
係数乗算器41,42、2乗演算器43、係数乗算器44、および、係数乗算器48,49、2乗演算器50、係数乗算器51は、それぞれ、しきい値(THLVL),−THLVLから、所定の範囲CB,−CBまで、入力信号振幅の絶対値の増加に応じて2乗特性の非線形歪成分を生成する。このCB,−CBの範囲を超えると、係数乗算器42,49がオーバフローとなる。係数乗算器44,51の乗算係数CAは、直線部分に加える曲線部分の割合を決める。
一方、加算器45、半波整流部46、および、加算器52、半波整流部53は、入力信号がCB,−CBの範囲を超えると、入力信号振幅の絶対値の増加に応じて、図2に示した第1の実施の形態と同様に、直線状に増加する非線形歪成分を生成する。
入力信号は、加算器11において非線形歪成分と合成される。合成割合は、係数乗算器25,27の乗算係数CLによって決まる。
【0038】
図9は、図8に示した実施の形態の動作を、CL=1の場合をもって説明するための線図である。
図9(a)を参照し、入力信号振幅が正であるときについて説明する。図中、61は入力信号に比例した傾きが+1の出力信号、62は2乗演算器43の出力信号であって、入力信号振幅がしきい値(THLVL)=0.3になると立ち上がる。このときの出力信号63の傾きは、2乗特性であるからゼロである。したがって、出力信号65は、しきい値(THLVL)=0.3において傾きが連続する。
63は係数乗算器44の出力信号、64は半波整流部46の出力であって、入力信号振幅がしきい値(THLVL+CB)=0.5になると傾き(+1)で立ち上がる。65は加算器11の出力信号である。
【0039】
図示の例では、遷移領域の幅を決定するオフセットCB=0.5に対し、CW・S=1/CBの関係をもたせることにより、入力信号レベルが遷移領域の境界である、しきい値(THLVL+CB)=0.8のときに、出力信号62が最大値(+1)となり、これ以上、入力信号振幅が増加するとオーバフロープロテクトがかかって(+1)を維持するようにしている。
係数乗算器44の出力信号63は、出力信号2にCAを乗算したものであるから、入力信号レベルがしきい値(THLVL+CB)=0.8を超えるときに、一定値CA=CB/2=0.25となる。
【0040】
図示の例では、CW・S=1/CB、CA=CB/2とすることにより、入力信号レベルが遷移領域の境界である、しきい値(THLVL+CB)=0.8にあるときに、出力信号63の曲線側の傾きが+1となるとともに、このしきい値を超えると、傾きがゼロになる。加算器47の出力は、出力信号63に出力信号4を加算したものであるから、入出力特性は、上述したしきい値(THLVL+CB)=0.8において連続するとともに、その傾き(増幅率)も連続する。
【0041】
図示の例は、乗算係数CL=1として完全にクリップさせた場合の例を示している。したがって、入力信号1は、加算器11において、加算器47の出力(出力信号63+出力信号64)が減算されて、出力信号65となる。
その結果、出力信号65は、入力信号レベルがしきい値(THLVL)=0.3を超えるまでは、非線形歪成分が含まれない。
しきい値(THLVL)=0.3を超えてしきい値(THLVL+CB)=0.8までの遷移領域においては、傾きが連続的に変化する2乗特性の非線形歪成分が含まれる。
しきい値(THLVL+CB)=0.8を超えると、さらに、このしきい値を超える入力信号1の増加分(出力信号64)に等しい非線形歪が加わるから、出力信号65は、曲線状の遷移領域から傾きゼロの直線に切り替わる。このときの出力信号レベルは(THLVL+CB/2)=0.55となる。
入力信号振幅が小さいときの傾き(+1)の直線と、傾きゼロの直線とが交差する点は、遷移領域の中心点、すなわち、入力信号がTHLVL+CB/2=0.55のときである。
【0042】
なお、入力信号振幅が正のときに、係数乗算器27の出力は、半波整流部26があるためにゼロとなるから、影響を及ぼさない。
上述した説明は、入力信号が正の範囲での説明であったが、負の範囲であっても同様である。代わりに、半波整流部26から係数乗算器27までが動作する。したがって、図8に示した実施の形態の装置の入出力特性は、図9(b)に示した通りのものとなる。
【0043】
図10は、図8に示した実施の形態において、オフセットCBを一定(CB=0.4)に保った状態で、しきい値(THLVL)を0.1,0.3,0.5と変化させた場合の入出力特性を示す線図である。
図9(a)を参照して説明したように、遷移領域の中心は、(THLVL+CB/2)であるから、しきい値(THLVL)を増加させると、遷移領域の中心の絶対値も同じだけ増加して0.3,0.5,0.7となる。
【0044】
図11は、図8に示した実施の形態において、遷移領域の幅を与えるオフセットCBを変化させる際に、遷移領域の中心(THLVL+CB/2)を一定に保つように、しきい値(THLVL)を連動して変化させた場合の入出力特性を示す線図である。
図10と同様にCL=1とし、オフセットCBを0.0,0.4,0.8と大きくするときに、しきい値(THLVL)を0.5,0.3,0.1と連動して変化させたものである。
【0045】
図8に示した実施の形態では、入力信号レベルに比例してしきい値(THLVL)を制御したが、オフセットCBの値とは独立して、入力信号レベルに比例して遷移領域の中心(THLVL+CB/2)を移動させたいときには、入力信号レベルとオフセットCBとに応じて、しきい値(THLVL)を制御するように、図8の構成を設計変更する。具体的には、図7に示した第2の実施の形態と同様に、オフセットOFSを入力信号レベルに加えるようにし、このオフセットOFSの値を−CB/2とすればよい。
【0046】
図12は、図8に示した実施の形態において、しきい値(THLVL)=0.3,CL=1を固定して、CBの値を変化させた場合の入出力特性を示す線図である。
オフセットCBを、0.0,0.2,0.5,0.8と大きくして行くと、遷移領域の幅が、しきい値(THLVL)を基点に入力信号振幅が大きくなる方向に拡がる結果、遷移領域の中心(THLVL+CB/2)およびしきい値(THLVL+CB)も入力信号振幅が大きくなる方向に拡がり、クリップレベルは高くなる。
したがって、しきい値(THLVL)を固定して、入力信号レベルに比例して、オフセットCBを制御してもよい。この場合でも、入力信号レベルが小さいときにオフセットCBを小さく、入力信号レベルが大きいときにオフセットCBを大きくすれば、非線形歪成分の割合が入力信号レベルにかかわらず同じになる方向に制御することができる。
入力信号振幅がしきい値(THLVL)を超えなければ非線形歪が生成されないので、しきい値(THLVL)を小さく設定したり、ゼロに設定する。ただし、ゼロに設定すると線形領域はなくなる。
【0047】
図13は、図8に示した実施の形態において、図5と同様にCL=−1として遷移領域を設けた場合の入出力特性を示す線図である。
線形領域の直線と非線形直線領域の傾き(CL−1)=+2の直線との交点の入力信号振幅は、THLVL+CB/2=0.5となる。
【0048】
図14は、図8に示した実施の形態において、図6と同様にCL=2として遷移領域を設けた場合の入出力特性を示す線図である。遷移領域のピークは、入力信号振幅がTHLVL+CB/2となるときであり、かつ、このときの入力信号振幅は、線形領域の直線と非線形直線領域の傾き(−1)の直線との交点の入力信号振幅と一致する。
【0049】
図15は、図8に示した実施の形態において、図9,図10と同様にCL=1であるが、CA=CBとした場合の入出力特性を示す線図である。
図9(a)を参照して説明したように、図8において、CW・S=1/CBとするとともに、CA=CB/2としたのは、遷移領域の境界であるしきい値(THLVL+CB)において、入出力特性の傾き(増幅率)が連続するようにするためであった。したがって、CA=CBとすると、遷移領域の傾きが傾きゼロの非線形直線領域の傾きよりもさらに減少する。その結果、CL=1として平坦なクリップ特性を有する場合でも、遷移領域にピークを作ることができ、入出力特性全体としてはオーバシュートを有する特性となる。
【0050】
上述した説明では、2乗(x2)演算器43,50によって遷移領域の曲線カーブを形成したが、3乗(x3)以上の演算器など、直線でない関数値を出力するものであればよい。その場合でも、入力信号振幅が、遷移領域の第1の境界である、しきい値(THLVL)にあるときに出力および傾きがゼロであり、遷移領域の第2の境界であるしきい値(THLVL+CB)にあるときに出力が最大値1となるようにCW・Sを決める。かつ、係数乗算器44,51の出力の傾きが1になるように係数CAを設定する。このような条件を満足すれば、入出力特性が連続して変化するとともに、その傾きも連続したものとなる。
図13〜図15において、入力信号レベルに応じて非線形特性を制御するには、入力信号レベルに応じてしきい値を制御すればよい。具体的には、図9〜図12を参照して説明したように、入力信号レベルに比例して、しきい値(THLVL)、遷移領域の中心(THLVL+CB/2)、あるいは、しきい値(THLVL+CB)を制御すればよい。
【0051】
上述した説明では、遷移領域を超えると傾きが一定の非線形直線領域となったが、この非線形直線領域をなくしてもよい。また、しきい値(THLVL+CB)に到達するまでに入力信号振幅が演算限界になれば、実質的に上述した非線形直線領域はなくなる。
【0052】
図16は、本発明の第5の実施の形態の機能ブロック図である。
この実施の形態は、図2に示した実施の形態を前提構成として、ソフトな非線形歪成分が出力信号に含まれるように、生成された非線形歪成分の高域成分を低域通過フイルタで取り除いた上で入力信号と合成するものである。
図中、図2と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。71,74はオーバフロープロテクト付きの加算器、72は低域通過フィルタ(LPF)、73,76は乗算係数がLPCの係数乗算器、75は遅延器、77は加算器である。
【0053】
半波整流部24,26の出力は、加算器71に入力される。加算器71においては、入力信号振幅の正側において出力される半波整流部24の出力に対し、入力信号振幅の負側において出力される半波整流部26の出力を減算する。したがって、加算器71において、入力信号の正側,負側に加える非線形歪成分の極性を逆にしている。
加算器71の出力は、1つの低域通過フィルタ72に入力される。低域通過フィルタ72内において、まず、係数乗算器73において係数LPCが乗算されて加算器74に出力され、加算器77の出力と加算される。加算器74の出力は、遅延器75に出力される。遅延器75の出力は、加算器77に出力されるとともに、係数乗算器76に出力される。加算器77においては、遅延器75の出力から係数乗算器76の出力を減算して加算器74に出力される。
【0054】
非線形歪成分は、低域通過フィルタ72を通過することにより、高次の倍音成分など、周波数の高い成分が除去されることになる。その結果、なめらかな非線形歪信号となって、係数乗算器25に出力される。
係数乗算器25の係数CLによって、入力信号振幅がしきい値(THLVL)の非線形直線領域の入出力特性を変えることができるのは、図2〜図6を参照して説明した通りである。加算器11において、入力信号から係数乗算器25の歪成分が減算合成されることにより、なめらかな非線形歪成分を含んだ出力信号が出力される。
なお、係数乗算器73,76の乗算係数LPCの設定値を変更制御することによって、カットオフ周波数が制御される。また、乗算係数LPCが1のときに、入力信号は加算器74において何も加算されず、そのまま低域通過フィルタ72から出力される。すなわち、低域通過フィルタ72はスルーとなる。
【0055】
上述した低域通過フィルタ72の具体構成は一例であって、他の構成を採用してもよい。また、低域通過フィルタ72に代えて、高域成分を通過させるフィルタ、あるいは、特定の周波数帯域の成分を通過させるフィルタを用いてもよい。この場合は、フィルタ特性に応じた音色の非線形歪成分を含む出力信号を得ることができる。
図示の例では、入力信号振幅の正側,負側の非線形成分を、ともに、低域通過フィルタ72に通したが、正側、負側の非線形成分(半波整流部24,26の各出力)を異なる特性のフィルタに通して、各フィルタの出力を加算器11において入力信号と合成してもよい。
【0056】
図16の例は、非線形歪成分を生成する回路として図2に示した実施の形態を用いたものであった。しかし、非線形歪成分を生成する回路としては、他の構成を用いてもよい。
図8に示した遷移領域を有する非線形歪生成部を用いる場合には、例えば、加算器47と係数乗算器25との間、加算器54と係数乗算器27との間に低域通過フィルタなどのフィルタを挿入すればよい。1つのフィルタで済ませる場合には、図16に示した加算器71と同様な加算器を用いて正負側の非線形歪成分を合成してから1つのフィルタに通せばよい。
また、係数乗算器44から出力される非線形歪成分と半波整流部46から出力される非線形歪成分とを異なる特性のフィルタに通して加算器47で加算してもよい。係数乗算器51から出力される非線形歪成分と半波整流部53から出力される非線形歪成分についても同様である。
【0057】
上述した説明では、入力信号レベルに応じて非線形部の非線形特性を制御したが、操作子等による入力によって非線形特性を制御することもできる。
上述した説明では、楽音信号に非線形歪を加える効果付与装置に適用する場合について説明したが、カラオケなどにおいて、音声信号に同様な非線形歪を加える効果付与装置にも本発明を適用することができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、上述した説明から明らかなように、非線形特性を自由に制御することができるという効果がある。
楽音信号や音声信号等の入力信号に入力信号レベルに応じた非線形特性を得ることができるという効果がある。例えば、入力信号レベルにかかわらず、非線形歪成分の出力信号中の割合がほぼ一定する方向に制御することが可能となる。
また、特有の音色を与える非線形歪を含む出力信号を得ることができるという効果がある。例えば、ソフトな非線形歪成分を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の非線形歪付加装置の第1の実施の形態の機能ブロック図である。
【図2】 本発明の非線形歪付加装置の第2の実施の形態の機能ブロック図である。
【図3】 図2に示した非線形歪付加装置において、CL=1としたときの、シミュレーション結果を示す説明図である。
【図4】 図2に示した非線形歪付加装置において、CL=0.7としたときの、シミュレーション結果を示す説明図である。
【図5】 図2に示した非線形歪付加装置において、CL=−1としたときの、シミュレーション結果を示す説明図である。
【図6】 図2に示した非線形歪付加装置において、CL=2.0としたときの、シミュレーション結果を示す説明図である。
【図7】 本発明の第3の実施の形態の機能ブロック図である。
【図8】 本発明の第4の実施の形態の機能ブロック図である。
【図9】 図8に示した実施の形態の動作を説明するための線図である。
【図10】 図8に示した実施の形態において、CBを一定に保った状態で、しきい値(THLVL)を変化させた場合の入出力特性を示す線図である。
【図11】 図8に示した実施の形態において、CBを変化させる際に、遷移領域の中心を一定に保つように、しきい値(THLVL)を連動して変化させた場合の入出力特性を示す線図である。
【図12】 図8に示した実施の形態において、しきい値(THLVL)=0.3,CL=1を固定して、CBの値を変化させた場合の入出力特性を示す線図である。
【図13】 図8に示した実施の形態において、図5と同様にCL=−1として遷移領域を設けた場合の入出力特性を示す線図である。
【図14】 図8に示した実施の形態において、図6と同様にCL=2として遷移領域を設けた場合の入出力特性を示す線図である。
【図15】 図8に示した実施の形態において、図9,図10と同様にCL=1とするが、CA=CBとした場合の入出力特性を示す線図である。
【図16】 本発明の第5の実施の形態の機能ブロック図である。
【符号の説明】
1…非線形部、2…入力信号レベル検出部、3…非線形歪生成部、4…合成部、11,12,14,17,20…加算器、13,19,21,23,25,27…係数乗算器、15…エンベロープフォロワ、16…全波整流部、18,24,26…半波整流部、22…遅延器

Claims (3)

  1. 入力信号として楽音信号または音声信号を入力し、該入力信号の正および負の少なくとも一方の振幅に関し、該振幅の絶対値が第1のしきい値を超えていないときには、入出力特性が第1の傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が第2のしきい値を超えているときには、前記入出力特性が前記第1の傾きとは異なる第2の傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が前記第1のしきい値を超え前記第2のしきい値を超えていないときには、前記入出力特性が、前記第1の傾きを有する直線から連続し、前記第1の傾きから前記第2の傾きに曲線状に変化して、前記第2の傾きを有する直線に連続する非線形部と、
    前記入力信号の入力信号レベルを検出する入力信号レベル検出部と、
    前記入力信号レベルに応じた制御信号により前記第1,第2のしきい値の少なくとも一方のしきい値を制御するしきい値制御手段、
    を有し、前記非線形部から前記楽音信号または音声信号に非線形歪成分を加えた出力信号を得ることを特徴とする非線形歪付加装置。
  2. 入力信号として楽音信号または音声信号を入力し、該入力信号の正および負の少なくとも一方の振幅に関し、該振幅の絶対値が第1のしきい値を超えていないときには、入出力特性がゼロの傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が第2のしきい値を超えているときには、前記入出力特性がゼロでない傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が前記第1のしきい値を超え前記第2のしきい値を超えていないときには、前記入出力特性が、前記ゼロの傾きを有する直線から連続し、前記ゼロの傾きから前記ゼロでない傾きに曲線状に変化して、前記ゼロでない傾きを有する直線に連続する非線形歪生成部と、
    前記非線形歪生成部への入力信号から前記非線形歪生成部の出力信号を減算した信号を出力する合成手段と、
    前記入力信号の入力信号レベルを検出する入力信号レベル検出部と、
    前記入力信号レベルに応じた制御信号により前記第1,第2のしきい値の少なくとも一方のしきい値を制御するしきい値制御手段、
    を有し、前記合成手段から前記楽音信号または音声信号に非線形歪成分を加えた出力信号を得ることを特徴とする非線形歪付加装置。
  3. 入力信号として楽音信号または音声信号を入力し、該入力信号の正および負の少なくとも一方の振幅に関し、該振幅の絶対値が第1のしきい値を超えていないときには、入出力特性がゼロの傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が第2のしきい値を超えているときには、前記入出力特性がゼロでない傾きを有する直線となり、前記振幅の絶対値が前記第1のしきい値を超え前記第2のしきい値を超えていないときには、前記入出力特性が、前記ゼロの傾きを有する直線から連続し、前記ゼロの傾きから前記ゼロでない傾きに曲線状に変化して、前記ゼロでない傾きを有する直線に連続する非線形歪生成部と、
    前記非線形歪生成部の出力を入力するフィルタ手段と、
    前記非線形歪生成部への入力信号から前記フィルタ手段の出力信号を減算した信号を出力する合成手段と、
    前記入力信号の入力信号レベルを検出する入力信号レベル検出部と、
    前記入力信号レベルに応じた制御信号により前記第1,第2のしきい値の少なくとも一方のしきい値を制御するしきい値制御手段、
    を有し、前記合成手段から前記楽音信号または音声信号に非線形歪成分を加えた出力信号を得ることを特徴とする非線形歪付加装置。
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