JP5375861B2 - オーディオ再生の効果付加方法およびその装置 - Google Patents

オーディオ再生の効果付加方法およびその装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5375861B2
JP5375861B2 JP2011061684A JP2011061684A JP5375861B2 JP 5375861 B2 JP5375861 B2 JP 5375861B2 JP 2011061684 A JP2011061684 A JP 2011061684A JP 2011061684 A JP2011061684 A JP 2011061684A JP 5375861 B2 JP5375861 B2 JP 5375861B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
level
audio signal
gain
input
component
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011061684A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011133906A (ja
Inventor
仁志 秋山
良太郎 青木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yamaha Corp
Original Assignee
Yamaha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yamaha Corp filed Critical Yamaha Corp
Priority to JP2011061684A priority Critical patent/JP5375861B2/ja
Publication of JP2011133906A publication Critical patent/JP2011133906A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5375861B2 publication Critical patent/JP5375861B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

この発明は、オーディオ再生において音の豊かさ、高域の伸びやきらびやかさ、低音の迫力感を増強させる効果付加方法および効果付加装置に関し、特に圧縮率の高い音源の再生に適用して高い効果を発揮するものである。
MP3(MPEG−1 Audio Layer III)、AAC(MPEG−2/4 Audio の Advanced Audio Coding)等の圧縮オーディオフォーマット音源は、高い圧縮率を実現するために、一般的に高音域の成分や音響心理学上聞こえにくいとされる成分をエンコード時に捨て去っている。例えば、MP3の場合は、最もよく使われる圧縮率のとき(128kbps)に、16kHz以上の信号成分がカットされる。このため、圧縮音源の音は高音域が曇った音に聞こえたり、全体的に痩せた迫力のない音に聞こえたりすることがある。
従来、CD等の帯域制限された音源を再生する際に高音域を補強する技術として下記特許文献1に記載された技術があった。この技術は、帯域制限された音源に基づいてその高調波成分を生成し、該高調波成分を該帯域制限された音源に付加して再生することにより、該帯域制限された音源よりも高い音域まで再生できるようにしたものである。
特許第3137289号公報(第1図)
MP3、AAC等の圧縮率の高い音源については、前記高音域を補強するだけでは音の豊かさや低音の迫力感が得られず、音質を改善する効果が不十分であった。
この発明は前記従来の技術における問題点を解決して、オーディオ再生において音の豊かさ、高域の伸びやきらびやかさ、低音の迫力感を増強させる効果付加方法および効果付加装置を提供しようとするものである。
この発明の効果付加方法は、オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、相互に異なるゲインを付与する効果付加方法であって、前記ゲイン付与による正側、負側の一方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベルが最小レベルのときに出力レベルが最小レベルまで下がらない特性を有し、前記ゲイン付与による正側、負側の他方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベルが最小レベルから所定のレベルまで、出力レベルを最小レベルに保持する特性を有するものである。
また、この発明の効果付加方法は、オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、正側波形部分の入力レベル絶対値が所定値以下のときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値以下のときとで異なるゲインを付与し、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成し、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成し、前記ゲインが付与されたオーディオ信号と、前記作成された高域のオーディオ信号成分と、前記作成された低域のオーディオ信号成分とを加算合成して、効果音が付加されたオーディオ信号を作成するものである。
この発明の効果付加方法によれば、オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて相互に異なるゲインを付与するようにしたので、オーディオ信号に正負非対称波形で発生する偶数次高調波(倍音)が含まれるようになる。偶数次高調波は、真空管アンプの音が心地よいまろやかさ、暖かさ、つや等の豊かさを感じさせると言われる原因とされているものであるので、このゲイン付与によって、オーディオ信号に音の豊かさが与えられる。
この発明の効果付加方法は、正側波形部分の入力レベル絶対値が所定値よりも大きいときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値よりも大きいときとで共通のゲインを付与することができる。これによれば、正側波形部分と負側波形部分でゲインを異ならせるのは入力レベルが所定値以下のときだけであり、入力レベルが該所定値よりも大きいときは正側波形部分と負側波形部分とで共通のゲインを付与するので、音の豊かさを与える効果が過剰になりすぎるのを抑制することができる。
また、この発明の効果付加方法によれば、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成することにより高域の伸びやきらびやかさを増強することができる。さらに、ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成することにより低音の迫力感を増強させることができる。したがって、この発明の効果付加方法によれば、例えばMP3、AAC等の圧縮率の高い音源の再生に適用することにより、高音域が曇った音に聞こえたり、全体的に痩せた迫力のない音に聞こえたりするのを改善することができる。
なお、前記高域のオーディオ信号成分の作成処理および前記低域のオーディオ信号成分の作成処理を前記ゲイン付与前の音源に基づいてそれぞれ行い、該処理により作成された高域および低域のオーディオ信号成分を前記ゲイン付与された音と加算合成した場合には、該ゲイン付与によって豊かさが与えられた音と、該ゲイン付与前の音源に基づいて作成された高域および低域の音との聴感上の一体感が十分に得られなかった。これに対し、この発明のように、前記ゲイン付与によって豊かさが与えられた音に基づいて高域および低域の音を作成して該豊かさが与えられた音と加算合成した場合には、聴感上の音の一体感が得られた。
前記ゲイン付与処理は、例えば、前記オーディオ信号を正側波形部分と負側波形部分に分離し、前記正側波形部分、前記負側波形部分に個別のゲイン付与処理を行い、該ゲイン付与処理された正側波形部分と負側波形部分とを加算合成して行うことができる。
この発明の効果付加方法は、前記正側波形部分の入力レベル絶対値に応じた該正側波形部分に対するゲイン付与を、該正側波形部分の入力波形の立ち下がりを所定のリリースタイムで緩やかにしたレベル絶対値に応じて行い、前記負側波形部分の入力レベル絶対値に応じた該負側波形部分に対するゲイン付与を、該負側波形部分の入力波形の立ち下がりを所定のリリースタイムで緩やかにしたレベル絶対値に応じて行うことができる。これによれば、入力信号のレベルおよび周波数が比較的高い場合にゲインが頻繁に変化するのを抑制して、不自然な音あるいは歪感のある音になるのを防止することができる。
この発明の効果付加方法は、前記ゲイン付与による正側、負側の一方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベル絶対値が前記所定値よりも大きいときに入力レベルに対して出力レベルを線形に変化させる高レベル側線形領域と、入力レベル絶対値が前記所定値以下のときに前記高レベル側線形領域の低レベル側の端部に続いて、入力レベルに対して出力レベルが非線形に変化して、入力レベルが零のときに出力レベルが零まで下がらない特性にする低レベル側非線形領域とからなり、前記ゲイン付与による正側、負側の他方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベル絶対値が前記所定値よりも大きいときに入力レベルに対して出力レベルを線形に変化させる、前記一方の波形部分の入出力レベル特性の前記高レベル側線形領域と共通の高レベル側線形領域と、入力レベル絶対値が前記所定値以下のときに前記高レベル側線形領域の低レベル側の端部に続いて、入力レベルに対して出力レベルが非線形に変化して、入力レベルが零から所定のレベルまで、出力レベルを零に保持する特性にする低レベル側非線形領域とからなるものとすることができる。
前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成する処理は、例えば、前記ゲインが付与されたオーディオ信号から高域成分を抽出し、該抽出された高域成分に所定周波数の正弦波信号を乗算し、該乗算によって生成される低域側シフト成分および高域側シフト成分のうち低域側シフト成分を除去して残りの高域側シフト成分を前記高域のオーディオ信号成分として得るものとすることができる。この手法によれば、前記オーディオ信号の高域成分を周波数シフトするだけであり、該高域成分の高調波成分(倍音成分)を作成する処理ではないので、いわゆる折り返し歪みなどの余分な歪み成分の少ない高域の信号を作成することができる。
前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成する処理は、例えば、該ゲインが付与されたオーディオ信号のゼロクロスを検出し、該検出されたゼロクロスで区切られる連続した4区間を1単位として、そのうち連続する2区間について波形の極性を反転し、該反転処理を前記単位ごとに繰り返して前記低域成分の基本波成分の1/2の周期の信号を作成し、さらにこの反転によって生じた高調波成分および超低域成分を除去するものとすることができる。
この発明の効果付加方法は、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成した後、該作成された高域のオーディオ信号成分について、高レベル部分を低中レベル部分に対して相対的に圧縮することにより該低中レベル部分の信号レベルを相対的に増大させる処理を行い、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成した後、該作成された低域のオーディオ信号成分について、高レベル部分を低中レベル部分に対して相対的に圧縮することにより該低中レベル部分の信号レベルを相対的に増大させる処理を行い、該処理がされた高域および低域のオーディオ信号成分を前記ゲインが付与されたオーディオ信号に加算合成することができる。これによれば、作成された高域および低域のオーディオ信号成分の低中レベルが増強されて、該高域成分および低域成分を付加する効果(高域の伸びやきらびやかさ、低音の迫力感)を増強することができる。
この発明の効果付加方法は、前記ゲインが付与されたオーディオ信号、前記作成された高域のオーディオ信号成分、前記作成された低域のオーディオ信号成分の時間の先後関係を相互に調整した後、これら信号を加算合成することができる。これによれば、3つの信号成分による音がリスナーに到達するタイミングが相互に(3つの信号成分間で相互に、あるいは1つの信号成分と他の2つの信号成分間で相互に)ずらされて、音質傾向を変えることができる。
この発明の効果付加方装置は、オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、相互に異なるゲインを付与するゲイン付与回路を有し、該ゲイン付与回路で付与するゲイン特性は、正側、負側の一方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベルが最小レベルのときに出力レベルが最小レベルまで下がらない特性を有し、正側、負側の他方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベルが最小レベルから所定のレベルまで、出力レベルを最小レベルに保持する特性を有するものである。
この発明の効果付加装置は、オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、正側波形部分の入力レベル絶対値が所定値以下のときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値以下のときとで異なるゲインを付与するゲイン付与回路と、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成する高域成分作成回路と、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成する低域成分作成回路と、前記ゲインが付与されたオーディオ信号と、前記作成された高域のオーディオ信号成分と、前記作成された低域のオーディオ信号成分とを加算合成して効果音が付加されたオーディオ信号を作成する加算合成回路とを具備してなるものである。
この発明の効果付加装置のゲイン付与回路は、正側波形部分の入力レベル絶対値が所定値よりも大きいときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値よりも大きいときとで共通のゲインを付与するものとすることができる。
この発明の効果付加装置の実施の形態を示すブロック図である。 図1のゲイン付与回路12の構成例を示すブロック図である。 図2のレベル検出回路20の動作例を示す波形図である。 図2のゲインテーブル22に記憶されているレベル検出値対ゲイン特性の一例を示す線図である。 図4のゲイン特性を使用して入力信号にゲインを付与した場合の入出力レベル特性を示す線図である。 図2のゲインテーブル32に記憶されているレベル検出値対ゲイン特性の一例を示す線図である。 図6のゲイン特性を使用して入力信号にゲインを付与した場合の入出力レベル特性を示す線図である。 図5、図7の入出力レベル特性を使用した図2のゲイン付与回路12の入出力波形の一例を示す波形図である。 図1の周波数シフト回路44の構成例を示すブロック図である。 図1の高域成分作成回路40による高域成分生成過程を示す説明図である。 分周回路56の構成例を示すブロック図である。 図11の分周回路56の動作波形図である。 図1の低中レベル成分強調回路70,72の構成例を示すブロック図である。 図13のゲインテーブル76に備えられたレベル検出値対ゲイン特性のテーブルによる入出力レベル特性の一例を示す線図である。
10…効果付加装置、12…ゲイン付与回路、40…高域成分作成回路、44…周波数シフト回路、52…低域成分作成回路、70,72…低中レベル成分強調回路、94…加算器(加算合成回路)
この発明の実施の形態を以下説明する。図1はこの発明の効果付加装置の実施の形態を示す。効果付加装置10にはMP3、AAC等の圧縮率の高い音源信号をデコードしたオーディオ信号(ディジタルオーディオの各サンプル信号)のうち左右一方のチャンネルの信号が入力される。なお、図示を省略するが、左右他方のチャンネルのオーディオ信号についても図1と同一構成の回路によって処理される。ゲイン付与回路12は、入力オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、正側波形部分の入力レベル絶対値が所定値よりも大きいときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値よりも大きいときとで共通のゲインを付与し、正側波形部分の入力レベル絶対値が前記所定値以下のときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値以下のときとで異なるゲインを付与するものである。このゲイン付与処理により、オーディオ信号には正負非対称波形で発生する偶数次高調波(倍音)が含まれるようになり、オーディオ信号に音の豊かさが与えられる。
ゲイン付与回路12の構成例を図2に示す。入力オーディオ信号は正側波形ゲイン付与回路14と負側波形ゲイン付与回路16にそれぞれ入力される。正側波形ゲイン付与回路14において、正側波形抽出回路18は入力オーディオ信号からその正極性側の波形部分(正側波形部分)を抽出する。レベル検出回路20は、この発明によるゲイン付与処理においてゲインの急激な(頻繁な)変化を抑制して不自然な音になるのを防止するために、抽出された正側波形部分についてピーク検出およびリリース処理(波形の立ち下がりを緩やかにする処理)をして、その結果生成されるエンベロープ波形を正側波形部分のレベル検出値として出力するものである。
レベル検出回路20の動作例を図3に示す。細線はレベル検出回路20に入力される入力オーディオ信号の正側波形部分である。レベル検出回路20はこの正側波形部分について、図3の例ではアタックタイム(立ち上がり時間、すなわち入力波形の立ち上がりに追従するのに要する時間)を0msec、リリースタイム(立ち下がり時間、すなわち入力波形の立ち下がりに追従するのに要する時間)を1msec〜10msecに設定してピーク検出およびリリース処理をして、その結果生成される太線で示すエンベロープ波形を正側波形部分のレベル検出値として出力する。
ゲインテーブル22はレベル検出値対ゲイン特性のテーブルを記憶したメモリを備え、レベル検出回路20で時々刻々検出される正側波形部分のレベル検出値に応じて、このテーブルから該当するゲイン値を読み出して出力する。ゲインテーブル22に記憶されているレベル検出値対ゲイン特性の一例を図4に示す。この特性は、レベル検出値が所定値L(Lの値は−80dB〜−50dBが好ましく、例えば−60dBに設定される)よりも大きいときはゲインを1に固定し、レベル検出値が所定値L以下のときはレベル検出値が小さくなるにつれてゲインを非線形に増大させる特性である。
図5は図4のゲイン特性を使用して入力信号にゲインを付与した場合の入出力レベル特性を示す。この入出力レベル特性は、入力レベルが前記所定値Lよりも大きいときに入力レベルに対して出力レベルを線形に変化させる高レベル側線形領域Aと、入力レベルが所定値L以下のときに高レベル側線形領域Aの低レベル側の端部に連続して、入力レベルに対して出力レベルが非線形に変化して(入力レベルが小さくなるにつれて出力レベルの変化が徐々に小さくなるように連続的に変化する)、入力レベルが零のときに出力レベルが零まで下がらない特性にする低レベル側非線形領域Bとからなる全体として非線形な特性である。非線形領域Bは線形領域Aに比べて範囲が狭く、しかも非線形領域Bは線形領域Aの低域側端部に連続して緩やかなカーブを描く特性であるので、領域A、領域Bを合わせた全体の特性としては軽微な非線形性であり、発生する高調波は微小で歪率としては測定にかからない程度のレベルであるが聴感上は心地よい音色となる。
図2において、係数器24はゲインテーブル22の出力ゲイン値に調整用の適宜の係数(定数)を付与する。可変ゲイン回路26(乗算器)は、係数器24から出力されるゲイン値に応じてゲインが可変制御され、正側波形抽出回路18で抽出された正側波形部分の各対応する部分に、該当するゲインを順次付与する。
図2の負側波形ゲイン付与回路16において、負側波形抽出回路28は入力オーディオ信号からその負極性側の波形部分(負側波形部分)を抽出する。レベル検出回路30は、この発明によるゲイン付与処理においてゲインの急激な変化を抑制して不自然な音になるのを防止するために、抽出された負側波形部分についてピーク検出およびリリース処理をして、その結果生成されるエンベロープ波形を負側波形部分のレベル検出値(絶対値)として出力するものである。レベル検出回路30のアタックタイムおよびリリースタイムは正側のレベル検出回路20と同じに設定される。そして、レベル検出回路30は正側のレベル検出回路20について説明した図3の動作例と同様に動作する。
ゲインテーブル32はレベル検出値対ゲイン特性のテーブルを記憶したメモリを備え、レベル検出回路30で時々刻々検出される負側波形部分のレベル検出値に応じて、このテーブルから該当するゲイン値を読み出して出力する。ゲインテーブル32に記憶されているレベル検出値対ゲイン特性の一例を図6に示す。この特性は、レベル検出値(絶対値)が所定値Lよりも大きいときはゲインを1に固定し、レベル検出値が所定値L以下のときはレベル検出値が小さくなるにつれてゲインが非線形に減少し、レベル検出値が0に達する前にゲインが0まで下がり、以後レベル検出値が0に達するまでゲインが0を維持する特性である。
図2において、係数器34はゲインテーブル32の出力ゲイン値に調整用の適宜の係数(定数)を付与する。可変ゲイン回路36(乗算器)は、係数器34から出力されるゲイン値に応じてゲインが可変制御され、負側波形抽出回路28で抽出された負側波形部分の各対応する部分に、該当するゲインを順次付与する。
図7は図6のゲイン特性を使用して入力信号にゲインを付与した場合の入出力レベル特性を示す。この入出力レベル特性は、入力レベルが前記所定値Lよりも大きいときに入力レベルに対して出力レベルを線形に変化させる高レベル側線形領域Cと、入力レベルが所定値L以下のときに高レベル側線形領域Cの低レベル側の端部に連続して、入力レベルに対して出力レベルが非線形に変化して(入力レベルが小さくなるにつれて出力レベルの変化が徐々に大きくなるように連続的に変化する)、入力レベルが零から所定のレベルまで出力レベルが零を維持する低レベル側非線形領域Dとからなる全体として非線形な特性である。非線形領域Dは線形領域Cに比べて範囲が狭く、しかも非線形領域Dは線形領域Cの低域側端部に連続して緩やかなカーブを描く特性であるので、領域C、領域Dを合わせた全体の特性としては軽微な非線形性であり、発生する高調波は偶数次高調波であり、歪率としては測定にかからない程度のレベルであるが聴感上は心地よい音色となる。
図2において、正側波形ゲイン付与回路14の出力信号と負側波形ゲイン付与回路16の出力信号は、加算器38で加算合成されて、ゲイン付与回路12の出力信号となる。図8は、図5、図7の入出力レベル特性による図2のゲイン付与回路12の入出力波形の一例として、入力信号として正弦波信号を入力した場合を示す。これは、入力信号のレベルが比較的低いときの波形である。すなわち、図8(b)によれば、1つの正側波形部分の期間(入力信号の半周期)内で図5の非線形領域Bのみが使用され、非線形領域B内でゲインが変動している。また、1つの負側波形部分の期間(入力信号の半周期)内で図7の非線形領域Dのみが使用され、非線形領域D内でゲインが変動している。このとき、図8(b)に示すように、正側波形部分のピーク部分のレベルは負側波形部分のピーク部分のレベルよりも大きくなり、またゼロクロス付近の波形が正側波形部分と負側波形部分とで異なり、その結果正負非対称波形で発生する偶数次高調波(倍音)が含まれるようになり、オーディオ信号に音の豊かさが与えられる。
なお、入力信号のレベルが高い場合に非線形領域B,Dが使用されると、不自然な音あるいは歪感のある音になったりすることがあるが、この実施の形態ではレベル検出回路20,30(図2)のリリース処理(図3)によってこれが防止されている。すなわち、リリース処理をすると、レベルが高い入力波形については、その波形の立ち下がりを所定のリリースタイムで緩やかにしたレベル絶対値は高いレベルを維持する(リリースタイムによりレベルがあまり下がらないうちに次の大きな波形が到来する)ので、線形領域A,Cのみが使用されるようになる。
図1において、高域成分作成回路40はゲイン付与回路12でゲイン付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域の(ゲイン付与されたオーディオ信号の周波数帯域よりも高域の)オーディオ信号成分を作成するものである。すなわち、高域成分作成回路40において、ハイパスフィルタ42は、次段の周波数シフト回路44で高域成分作成回路40の入力オーディオ信号の周波数帯域よりも高域のオーディオ信号成分を作成するために、ゲイン付与回路12の出力オーディオ信号から該高域のオーディオ信号成分を作成する元となる高域成分を抽出するものである。周波数シフト回路44はハイパスフィルタ42で抽出された高域成分を周波数軸上で移動させるものである。
周波数シフト回路44の構成例を図9に示す。周波数シフト回路44は、ハイパスフィルタ42で抽出された高域成分と正弦波発生器46から発生する適宜の周波数の正弦波信号とを乗算器48で乗算して、該高域成分を周波数軸上で移動した信号を作成する。すなわち、前記高域成分をsinA(様々な周波数を含む信号)、正弦波信号(正弦波形状の信号の意味)をcosB(固定周波数の信号)とすると、乗算器48は、

sinA・cosB=1/2{sin(A+B)+sin(A−B)}

の演算を行う。この周波数シフト演算によれば、前記高域成分sinAを高域側にシフトした成分sin(A+B)のほかに低域側にシフトした成分sin(A−B)が作成される。この低域側にシフトした成分は不要なので、図1のハイパスフィルタ50で除去する。その結果、高域成分作成回路40からは前記高域成分sinAを高域側にシフトした成分sin(A+B)が出力される。この出力信号は高域成分sinAを高域側にシフトした成分sin(A+B)であるので、高域成分sinAの高調波成分(倍音成分)を作成する場合と異なり、折り返し歪みなどの余分な歪み成分の少ない信号である。
図10は高域成分作成回路40による高域成分生成過程を示す。図10(a)は周波数シフト前の高域成分である。この高域成分に乗算器48(図9)で正弦波信号cosBを乗算すると、図10(b)に示すように高域側にシフトした成分sin(A+B)と低域側にシフトした成分sin(A−B)が得られる。これら両成分sin(A+B)、sin(A−B)をハイパスフィルタ50に通して低域側にシフトした成分sin(A−B)を除去することにより、ハイパスフィルタ50からは図10(c)に示すように高域側にシフトした成分sin(A+B)のみが出力される。すなわち、ハイパスフィルタ42に入力されるオーディオ信号(ゲイン付与回路12の出力オーディオ信号)の周波数帯域の上限値をf2(例えば16kHz)、ハイパスフィルタ42のカットオフ周波数をf1(f1<f2であり、f1は例えば6kHz)、とすると、ハイパスフィルタ42からは図10(a)に示す、周波数帯域がf1〜f2のオーディオ信号が出力される。また、正弦波発生器46(図9)から発生する正弦波信号の周波数をf3(例えば8kHz)とすると、図9の構成の周波数シフト回路44からは図10(b)に示すように、高域側にシフトした成分sin(A+B)として周波数帯域が(f1+f3)〜(f2+f3)のオーディオ信号と、低域側にシフトした成分sin(A−B)として周波数帯域が(f3−f1)〜(f2−f3)のオーディオ信号がそれぞれ出力される。なお、図10(b)の例ではf1=6kHz、f2=16kHz、f3=8kHzの場合を示しており、たまたまf2−f3=f3となっている。また、ハイパスフィルタ50のカットオフ周波数をf4{(f2−f3)≦f4≦(f1+f3)であり、f4は例えば10kHz}とすると、ハイパスフィルタ50からは図10(c)に示す、周波数帯域が(f1+f3)〜(f2+f3)の信号が出力される。
図1において、低域成分作成回路52はゲイン付与回路12でゲイン付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成するものである。すなわち、低域成分作成回路52において、ローパスフィルタ54は 、次段の分周回路56で低域成分作成回路52の入力オーディオ信号の周波数帯域よりも低域のオーディオ信号成分を作成するために、ゲイン付与回路12の出力オーディオ信号から該低域のオーディオ信号成分を作成する元となる低域成分を抽出するものである。ローパスフィルタ54のカットオフ周波数は例えば100Hzに設定される。分周回路56はローパスフィルタ54で抽出された低域成分に基づいて該低域成分の1/2の周波数の(すなわち1オクターブ下の)オーディオ信号成分を作成するものである。
分周回路56の構成例を図11に示す。この分周回路56はその入力信号のゼロクロスを検出し、該検出されたゼロクロスで区切られる連続した4区間(基本波成分の2周期)を1単位として、そのうち連続する2区間について波形の極性を反転することにより該基本波成分の1/2の周期の信号を作成するようにしたものである。すなわち、分周回路56において、ゼロクロス検出回路58は入力信号のゼロクロスを検出する。ゼロクロスは該入力信号を構成する各サンプルデータのサインビットのデータによって判別することができる。2ビットカウンタ60は検出されたゼロクロスをカウントし、カウント値0〜3を循環して出力する。このカウント値により、現在前記4区間のいずれの区間にあるかが判別される。極性反転回路62は入力信号の極性を反転する。セレクタ64は入力信号をA入力に入力し、入力信号の反転信号をB入力に入力する。そして、セレクタ64は、2ビットカウンタ60のカウント値に応じて、カウント値が0と3のときはA入力を選択出力し、カウント値が1と2のときはB入力を選択出力する。これにより、セレクタ64からは分周回路56の入力信号の基本波成分の1/2周期の信号が出力される。
なお、分周回路56に入力されるある程度微小な低域成分については上述した分周動作をさせない方が好ましいので、該分周動作を停止させる。すなわち、図11においてレベル検出回路65は、分周回路56の入力信号(入力信号の正側波形部分もしくは負側波形部分または全波整流波形)についてピーク検出およびリリース処理をして、その結果生成されるエンベロープからレベルを検出し、該検出されたレベルが所定レベル以下(例えば−80dB以下)のときはリセット信号を出力し、2ビットカウンタ60をリセットする。これにより、2ビットカウンタ60は入力信号レベルが該所定レベル以下となっている期間中カウント値0を出力し続け、セレクタ64はA入力すなわち反転されていない入力信号を選択出力し続ける。
図12は図11の分周回路56の動作波形を示す。分周回路56は図12(a)に示す入力信号についてゼロクロスを検出し、該検出されたゼロクロスで区切られる連続した4区間0〜3を1単位として、そのうち区間1,2について波形の極性を図12(b)に示すように反転して基本波成分の1/2の周期の信号を作成し、この動作を繰り返す。
図1において、分周回路56の出力信号はローパスフィルタ66に通され、さらにハイパスフィルタ68に通される。すなわち、上述した分周回路56の処理によれば波形反転に伴って波形に不連続点が生じ、これが新たに高調波成分を発生させるので、ローパスフィルタ66でこの高調波成分を除去する。ローパスフィルタ66のカットオフ周波数は、分周回路56の入力側のローパスフィルタ54のカットオフ周波数よりも高く、例えば150Hzに設定される。また、上述した分周回路56の処理によればその出力信号に聴感上不快とされる超低域成分(サブソニック)を含む場合があるので、ハイパスフィルタ68でこの超低域成分を除去する。ハイパスフィルタ68のカットオフ周波数は例えば50Hzに設定される。
図1において、高域成分作成回路40および低域成分作成回路52の出力信号は低中レベル成分強調回路70,72にそれぞれ入力されて、その低〜中レベル成分が増強される。これにより、高域成分作成回路40および低域成分作成回路52でそれぞれ作成された高域成分および低域成分が増強されて、該高域成分および低域成分を付加する効果(高域の伸びやきらびやかさ、低音の迫力感)が認識されやすくなる。
低中レベル成分強調回路70,72の構成例を図13に示す。図13のレベル検出回路74は図2の正側波形ゲイン付与回路14および負側波形ゲイン付与回路16と同様に構成されている。すなわち、レベル検出回路74はゲインの急激な変化を抑制して不自然な音になるのを防止するために、低中レベル成分強調回路70,72の入力信号(入力信号の正側波形部分もしくは負側波形部分または全波整流波形)についてピーク検出およびリリース処理をして、その結果生成されるエンベロープ波形をレベル検出値として出力する。レベル検出回路74は、例えばアタックタイムを0msec、リリースタイムを0.1sec〜1secに設定することができる。
ゲインテーブル76はレベル検出値対ゲイン特性のテーブルを記憶したメモリを備え、レベル検出回路74で時々刻々検出されるレベル検出値に応じて、このテーブルから該当するゲイン値を読み出して出力する。このテーブルによる入出力レベル特性の一例を図14に実線で示す(点線はゲイン付与がない場合のリニアな特性を示す)。図14の入出力レベル特性は、低中レベル成分を伸長し高レベル成分を圧縮して、全体としてはダイナミックレンジを変更せずに、低中レベル成分の信号レベルを相対的に増大させる特性である。
図13において、係数器78はゲインテーブル76の出力ゲイン値に調整用の適宜の係数(定数)を付与する。可変ゲイン回路80(乗算器)は、係数器78から出力されるゲイン値に応じてゲインが可変制御され、低中レベル成分強調回路70,72の入力信号の各対応する部分に、該当するゲインを順次付与して、低中レベル成分の信号レベルを増強する。
図1において、遅延回路82,84,86は、ゲイン付与回路12の出力信号、低中レベル成分強調回路70から出力される高域成分、低中レベル成分強調回路72から出力される低域成分について必要に応じて個別に遅延することにより、音質傾向を変えるものである。すなわち、例えば遅延回路84の遅延時間を0、遅延回路82,86の遅延時間を数msecに設定すると、高域成分が早くリスナーに到達することになり、聴感上の高域認知が補助され、結果として高域の立ち上がりがシャープな印象の音になる。また、遅延回路86の遅延時間を0、遅延回路82,84の遅延時間を数msecに設定すると、低域成分が早くリスナーに到達することになり、低音の立ち上がりにメリハリがある低音が締まった音になる。このような遅延回路82,84,86の遅延時間の組合せを何種類か予め設定しておき、リスナーが自分の好みに応じて任意の組合せを選択できるようにしておくと便利である。あるいは、リスナーが遅延回路82,84,86の遅延時間を個別に調整できるようにしておくこともできる。
遅延回路82,84,86で適宜遅延された信号は、利得補正回路88,90,92で相互のレベルバランスが調整された後、加算器94で加算合成される。加算合成された信号は、ハイシェルビングフィルタおよびローシェルビングフィルタ96で構成されるいわゆるトーンコントロール回路で高域・低域バランスの最終調整が行われて出力される。出力された信号はデジタル・アナログ変換された後、パワーアンプで増幅されてスピーカから再生される。
なお、前記実施の形態では、ゲイン付与回路12(図2)は、オーディオ信号の正側波形部分、負側波形部分のそれぞれに対し相互に異なる非線形な入出力レベル特性(図5、図7)となるようにゲイン付与したが、これに代えて、オーディオ信号の正側波形部分、負側波形部分のいずれか一方に対し非線形な入出力レベル特性(例えば、図5または図7の特性)となるようにゲイン付与し、他方については線形な入出力レベル特性となるようにゲイン付与することもできる。このようにしても、正側波形部分、負側波形部分で非対称な波形が得られ、これらを加算合成した出力信号には偶数次高調波が含まれるようになる。
この出願には次の発明が含まれている。
《効果付加方法の発明》
オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、正側波形部分の入力レベル絶対値が所定値よりも大きいときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値よりも大きいときとで共通のゲインを付与し、正側波形部分の入力レベル絶対値が前記所定値以下のときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値以下のときとで異なるゲインを付与し、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成し、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成し、前記ゲインが付与されたオーディオ信号と、前記作成された高域のオーディオ信号成分と、前記作成された低域のオーディオ信号成分とを加算合成して、効果音が付加されたオーディオ信号を作成する。
この効果付加方法によれば、オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて相互に異なるゲインを付与するようにしたので、オーディオ信号に正負非対称波形で発生する偶数次高調波(倍音)が含まれるようになる。偶数次高調波は、真空管アンプの音が心地よいまろやかさ、暖かさ、つや等の豊かさを感じさせると言われる原因とされているものであるので、このゲイン付与によって、オーディオ信号に音の豊かさが与えられる。しかも、正側波形部分と負側波形部分でゲインを異ならせるのは入力レベルが所定値以下のときだけであり、入力レベルが該所定値よりも大きいときは正側波形部分と負側波形部分とで共通のゲインを付与するので、音の豊かさを与える効果が過剰になりすぎるのを抑制することができる。
また、この効果付加方法によれば、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成することにより高域の伸びやきらびやかさを増強することができる。さらに、ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成することにより低音の迫力感を増強させることができる。したがって、この効果付加方法によれば、例えばMP3、AAC等の圧縮率の高い音源の再生に適用することにより、高音域が曇った音に聞こえたり、全体的に痩せた迫力のない音に聞こえたりするのを改善することができる。
なお、前記高域のオーディオ信号成分の作成処理および前記低域のオーディオ信号成分の作成処理を前記ゲイン付与前の音源に基づいてそれぞれ行い、該処理により作成された高域および低域のオーディオ信号成分を前記ゲイン付与された音と加算合成した場合には、該ゲイン付与によって豊かさが与えられた音と、該ゲイン付与前の音源に基づいて作成された高域および低域の音との聴感上の一体感が十分に得られなかった。これに対し、この方法のように、前記ゲイン付与によって豊かさが与えられた音に基づいて高域および低域の音を作成して該豊かさが与えられた音と加算合成した場合には、聴感上の音の一体感が得られた。
前記ゲイン付与処理は、例えば、前記オーディオ信号を正側波形部分と負側波形部分に分離し、前記正側波形部分、前記負側波形部分に個別のゲイン付与処理を行い、該ゲイン付与処理された正側波形部分と負側波形部分とを加算合成して行うことができる。
この効果付加方法は、前記正側波形部分の入力レベル絶対値に応じた該正側波形部分に対するゲイン付与を、該正側波形部分の入力波形の立ち下がりを所定のリリースタイムで緩やかにしたレベル絶対値に応じて行い、前記負側波形部分の入力レベル絶対値に応じた該負側波形部分に対するゲイン付与を、該負側波形部分の入力波形の立ち下がりを所定のリリースタイムで緩やかにしたレベル絶対値に応じて行うことができる。これによれば、入力信号のレベルおよび周波数が比較的高い場合にゲインが頻繁に変化するのを抑制して、不自然な音あるいは歪感のある音になるのを防止することができる。
この効果付加方法は、前記ゲイン付与による正側、負側の一方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベル絶対値が前記所定値よりも大きいときに入力レベルに対して出力レベルを線形に変化させる高レベル側線形領域と、入力レベル絶対値が前記所定値以下のときに前記高レベル側線形領域の低レベル側の端部に続いて、入力レベルに対して出力レベルが非線形に変化して、入力レベルが零のときに出力レベルが零まで下がらない特性にする低レベル側非線形領域とからなり、前記ゲイン付与による正側、負側の他方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベル絶対値が前記所定値よりも大きいときに入力レベルに対して出力レベルを線形に変化させる、前記一方の波形部分の入出力レベル特性の前記高レベル側線形領域と共通の高レベル側線形領域と、入力レベル絶対値が前記所定値以下のときに前記高レベル側線形領域の低レベル側の端部に続いて、入力レベルに対して出力レベルが非線形に変化して、入力レベルが零から所定のレベルまで、出力レベルを零に保持する特性にする低レベル側非線形領域とからなるものとすることができる。
前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成する処理は、例えば、前記ゲインが付与されたオーディオ信号から高域成分を抽出し、該抽出された高域成分に所定周波数の正弦波信号を乗算し、該乗算によって生成される低域側シフト成分および高域側シフト成分のうち低域側シフト成分を除去して残りの高域側シフト成分を前記高域のオーディオ信号成分として得るものとすることができる。この手法によれば、前記オーディオ信号の高域成分を周波数シフトするだけであり、該高域成分の高調波成分(倍音成分)を作成する処理ではないので、いわゆる折り返し歪みなどの余分な歪み成分の少ない高域の信号を作成することができる。
前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成する処理は、例えば、該ゲインが付与されたオーディオ信号のゼロクロスを検出し、該検出されたゼロクロスで区切られる連続した4区間を1単位として、そのうち連続する2区間について波形の極性を反転し、該反転処理を前記単位ごとに繰り返して前記低域成分の基本波成分の1/2の周期の信号を作成し、さらにこの反転によって生じた高調波成分および超低域成分を除去するものとすることができる。
この効果付加方法は、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成した後、該作成された高域のオーディオ信号成分について、高レベル部分を低中レベル部分に対して相対的に圧縮することにより該低中レベル部分の信号レベルを相対的に増大させる処理を行い、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成した後、該作成された低域のオーディオ信号成分について、高レベル部分を低中レベル部分に対して相対的に圧縮することにより該低中レベル部分の信号レベルを相対的に増大させる処理を行い、該処理がされた高域および低域のオーディオ信号成分を前記ゲインが付与されたオーディオ信号に加算合成することができる。これによれば、作成された高域および低域のオーディオ信号成分の低中レベルが増強されて、該高域成分および低域成分を付加する効果(高域の伸びやきらびやかさ、低音の迫力感)を増強することができる。
この効果付加方法は、前記ゲインが付与されたオーディオ信号、前記作成された高域のオーディオ信号成分、前記作成された低域のオーディオ信号成分の時間の先後関係を相互に調整した後、これら信号を加算合成することができる。これによれば、3つの信号成分による音がリスナーに到達するタイミングが相互に(3つの信号成分間で相互に、あるいは1つの信号成分と他の2つの信号成分間で相互に)ずらされて、音質傾向を変えることができる。
《効果付加装置の発明》
オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、正側波形部分の入力レベル絶対値が所定値よりも大きいときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値よりも大きいときとで共通のゲインを付与し、正側波形部分の入力レベル絶対値が前記所定値以下のときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値以下のときとで異なるゲインを付与するゲイン付与回路と、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成する高域成分作成回路と、前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成する低域成分作成回路と、前記ゲインが付与されたオーディオ信号と、前記作成された高域のオーディオ信号成分と、前記作成された低域のオーディオ信号成分とを加算合成して効果音が付加されたオーディオ信号を作成する加算合成回路とを具備する。

Claims (11)

  1. オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、相互に異なるゲインを付与する効果付加方法であって、
    前記ゲイン付与による正側、負側の一方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベルが最小レベルのときに出力レベルが最小レベルまで下がらない特性を有し、
    前記ゲイン付与による正側、負側の他方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベルが最小レベルから所定のレベルまで、出力レベルを最小レベルに保持する特性を有する効果付加方法。
  2. オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、正側波形部分の入力レベル絶対値が所定値以下のときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値以下のときとで異なるゲインを付与し、
    前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成し、
    前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成し、
    前記ゲインが付与されたオーディオ信号と、前記作成された高域のオーディオ信号成分と、前記作成された低域のオーディオ信号成分とを加算合成して、
    効果音が付加されたオーディオ信号を作成する効果付加方法。
  3. 正側波形部分の入力レベル絶対値が前記所定値よりも大きいときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値よりも大きいときとで共通のゲインを付与する請求項2記載の効果付加方法
  4. 前記正側波形部分の入力レベル絶対値に応じた該正側波形部分に対するゲイン付与を、該正側波形部分の入力波形の立ち下がりを所定のリリースタイムで緩やかにしたレベル絶対値に応じて行い、
    前記負側波形部分の入力レベル絶対値に応じた該負側波形部分に対するゲイン付与を、該負側波形部分の入力波形の立ち下がりを所定のリリースタイムで緩やかにしたレベル絶対値に応じて行う請求項3記載の効果付加方法。
  5. 前記ゲイン付与による正側、負側の一方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベル絶対値が前記所定値よりも大きいときに入力レベルに対して出力レベルを線形に変化させる高レベル側線形領域と、入力レベル絶対値が前記所定値以下のときに前記高レベル側線形領域の低レベル側の端部に続いて、入力レベルに対して出力レベルが非線形に変化して、入力レベルが零のときに出力レベルが零まで下がらない特性にする低レベル側非線形領域とからなり、
    前記ゲイン付与による正側、負側の他方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベル絶対値が前記所定値よりも大きいときに入力レベルに対して出力レベルを線形に変化させる、前記一方の波形部分の入出力レベル特性の前記高レベル側線形領域と共通の高レベル側線形領域と、入力レベル絶対値が前記所定値以下のときに前記高レベル側線形領域の低レベル側の端部に続いて、入力レベルに対して出力レベルが非線形に変化して、入力レベルが零から所定のレベルまで、出力レベルを零に保持する特性にする低レベル側非線形領域とからなる請求項3または4記載の効果付加方法。
  6. 前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成する処理が、前記ゲインが付与されたオーディオ信号から高域成分を抽出し、該抽出された高域成分に所定周波数の正弦波信号を乗算し、該乗算によって生成される低域側シフト成分および高域側シフト成分のうち低域側シフト成分を除去して残りの高域側シフト成分を前記高域のオーディオ信号成分として得る処理である請求項3から5のいずれかに記載の効果付加方法。
  7. 前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成した後、該作成された高域のオーディオ信号成分について、高レベル部分を低中レベル部分に対して相対的に圧縮することにより該低中レベル部分の信号レベルを相対的に増大させる処理を行い、
    前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成した後、該作成された低域のオーディオ信号成分について、高レベル部分を低中レベル部分に対して相対的に圧縮することにより該低中レベル部分の信号レベルを相対的に増大させる処理を行い、
    該処理がされた高域および低域のオーディオ信号成分を前記ゲインが付与されたオーディオ信号に加算合成する請求項3から6のいずれかに記載の効果付加方法。
  8. 前記ゲインが付与されたオーディオ信号、前記作成された高域のオーディオ信号成分、前記作成された低域のオーディオ信号成分の時間の先後関係を相互に調整した後、これら信号を加算合成する請求項3から7のいずれかに記載の効果付加方法。
  9. オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、相互に異なるゲインを付与するゲイン付与回路を有し、
    該ゲイン付与回路で付与するゲイン特性は、正側、負側の一方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベルが最小レベルのときに出力レベルが最小レベルまで下がらない特性を有し、正側、負側の他方の波形部分の入出力レベル特性が、入力レベルが最小レベルから所定のレベルまで、出力レベルを最小レベルに保持する特性を有する効果付加装置。
  10. オーディオ信号の正側波形部分と負側波形部分に対し、それぞれの入力レベル絶対値に応じて、正側波形部分の入力レベル絶対値が所定値以下のときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値以下のときとで異なるゲインを付与するゲイン付与回路と、
    前記ゲインが付与されたオーディオ信号の高域成分に基づいて該高域成分よりも高域のオーディオ信号成分を作成する高域成分作成回路と、
    前記ゲインが付与されたオーディオ信号の低域成分に基づいて該低域成分よりも低域のオーディオ信号成分を作成する低域成分作成回路と、
    前記ゲインが付与されたオーディオ信号と、前記作成された高域のオーディオ信号成分と、前記作成された低域のオーディオ信号成分とを加算合成して効果音が付加されたオーディオ信号を作成する加算合成回路と
    を具備してなる効果付加装置。
  11. 正側波形部分の入力レベル絶対値が前記所定値よりも大きいときと負側波形部分の入力レベル絶対値が該所定値よりも大きいときとで共通のゲインを付与する請求項10記載の効果付加装置。
JP2011061684A 2011-03-18 2011-03-18 オーディオ再生の効果付加方法およびその装置 Active JP5375861B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011061684A JP5375861B2 (ja) 2011-03-18 2011-03-18 オーディオ再生の効果付加方法およびその装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011061684A JP5375861B2 (ja) 2011-03-18 2011-03-18 オーディオ再生の効果付加方法およびその装置

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005376400A Division JP4747835B2 (ja) 2005-12-27 2005-12-27 オーディオ再生の効果付加方法およびその装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011133906A JP2011133906A (ja) 2011-07-07
JP5375861B2 true JP5375861B2 (ja) 2013-12-25

Family

ID=44346617

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011061684A Active JP5375861B2 (ja) 2011-03-18 2011-03-18 オーディオ再生の効果付加方法およびその装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5375861B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8971551B2 (en) 2009-09-18 2015-03-03 Dolby International Ab Virtual bass synthesis using harmonic transposition
JP5894347B2 (ja) * 2012-10-15 2016-03-30 ドルビー・インターナショナル・アーベー 転移器に基づく仮想ベース・システムにおけるレイテンシーを低減するシステムおよび方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3149459B2 (ja) * 1991-06-03 2001-03-26 カシオ計算機株式会社 ディストーション回路
JPH06289898A (ja) * 1993-03-30 1994-10-18 Sony Corp 音声信号処理装置
JP2888138B2 (ja) * 1994-06-09 1999-05-10 ヤマハ株式会社 効果音発生装置
JPH11103226A (ja) * 1997-09-26 1999-04-13 Matsushita Electric Ind Co Ltd 音響再生装置
JP3642013B2 (ja) * 2000-08-08 2005-04-27 ヤマハ株式会社 非線形歪付加装置
JP4281349B2 (ja) * 2001-12-25 2009-06-17 パナソニック株式会社 電話装置
JP2004021015A (ja) * 2002-06-18 2004-01-22 Roland Corp 効果付与装置
JP2005010621A (ja) * 2003-06-20 2005-01-13 Matsushita Electric Ind Co Ltd 音声帯域拡張装置及び帯域拡張方法
JP3836849B2 (ja) * 2004-03-23 2006-10-25 学校法人東京理科大学 補聴器

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011133906A (ja) 2011-07-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4747835B2 (ja) オーディオ再生の効果付加方法およびその装置
JP5898534B2 (ja) 音響信号処理装置および音響信号処理方法
JP5917518B2 (ja) 知覚スペクトルアンバランス改善のための音声信号動的補正
KR101310231B1 (ko) 저음 증강 장치 및 방법
JP4286510B2 (ja) 音響信号処理装置及びその方法
JP5341128B2 (ja) 補聴器における安定性の改善
JP2012235310A (ja) 信号処理装置および方法、プログラム、並びにデータ記録媒体
US11109155B2 (en) Bass enhancement
JP5098404B2 (ja) 音声処理方法および音声処理装置
JP2008191659A (ja) 音声強調方法及び音声再生システム
JPH06177688A (ja) オーディオ信号処理装置
JP5340121B2 (ja) オーディオ信号再生装置
JP5375861B2 (ja) オーディオ再生の効果付加方法およびその装置
JP2006324786A (ja) 音響信号処理装置およびその方法
JP2004343590A (ja) ステレオ音響信号処理方法、装置、プログラムおよび記憶媒体
JP2023518794A (ja) スピーカのための低音強調
EP2451076B1 (en) Audio signal processing device
JP5556673B2 (ja) 音声信号補正装置、音声信号補正方法及びプログラム
JP5241373B2 (ja) 高調波生成装置
JP4427672B2 (ja) 音響信号の明瞭度、弁別性能向上技術
JP2015032933A (ja) 低域補完装置および低域補完方法
US8086448B1 (en) Dynamic modification of a high-order perceptual attribute of an audio signal
JP2008219844A (ja) 高効率低音強調技術
JP2004363933A (ja) 効果付与装置及びプログラム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110319

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121218

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130122

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130827

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130909

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5375861

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150