JP3638741B2 - トナー用離型剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真トナー用離型剤に関する。さらに詳しくは加熱定着型の複写機もしくはプリンターに用いる低温定着性、耐ホットオフセット性および流動性に優れたトナー用離型剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉体の乾式トナーによる電子写真用プロセスでは紙等の上に転写されたトナーを定着するために、接触加熱型定着器(ヒートロールを用いる方法、加熱体と紙等の間にフィルムまたはベルトを介する方法(例えば特開平4−70688号公報および特開平4−12558号公報)が広く採用されている。この方法では、低温度でのヒートロール表面、フィルムまたはベルトへのオフセットが発生する温度(以下COTと略す)は低いことが望ましく、また、高温度でのヒートロール表面、フィルムまたはベルトへのオフセットが発生する温度(以下HOTと略す)は高いことが望ましい。
好適なCOT、HOTを得るため、バインダー樹脂の分子量分布を広くする方法が多く提案されている(例えば特開昭61−215558号公報)が、さらにバインダー樹脂に離型剤として特定の分子量範囲の低分子量ポリプロピレン系樹脂を添加することが有効であることが知られている。(例えば特公昭52−3304号公報)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年のコピー速度の高速化、低エネルギー定着化の要求に対して、トナーをより低い温度で定着することが要望されており、このため、COTをより低くすることが必要とされている。
この目的のために低分子量ポリプロピレン系樹脂の分子量をより低くして融点をより低くすることが有効であるが、一方トナーの流動性が低下し、さらにキャリヤーへのフィルミング物の付着量が増える等の問題がある。
あるいは、カルナバワックス等の天然ワックスの使用(特開平4−362953)、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の合成ワックスの使用(特開昭56−144436)が提案されている。これらは低融点ではあるが、カルナバワックス等の天然ワックスでは価格、品質の安定性等から問題があり、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の合成ワックスでは一般に脆すぎるため、トナー粉砕時に、トナー表面から割れ落ちてしまい離型性を充分発現しない等の問題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の欠点のない、優れたCOT、HOTを示すトナー用離型剤について鋭意検討した結果本発明に到達した。
すなわち本発明は、カルボン酸成分の少なくとも一部として、アルケニルコハク酸及びα−オレフィン・無水マレイン酸コポリマーから選ばれる炭素数16以上のアルキルもしくはアルケニル基を有する化合物を用いてなるポリエステルからなるトナー用離型剤、ならびに、炭素数16以上のアルキルもしくはアルケニル基を有し、アルコール成分の少なくとも一部として、ノボラック型フェノール樹脂のアルキレンオキサイド付加物用いてなるポリエステルからなるトナー用離型剤である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳述する。
本発明の炭素数16以上のアルキルもしくはアルケニル基を有するポリエステル系トナー用離型剤は、たとえばカルボン酸成分及び/又はアルコール成分の少なくとも一部として、アルケニルコハク酸、α−オレフィン・無水マレイン酸コポリマー、アルキルカルボン酸及びアルキルアルコールから選ばれる炭素数16以上のアルキルもしくはアルケニル基を有する化合物を用いることにより得られる。
【0006】
炭素数16以上のアルケニル基を有する長鎖アルケニルコハク酸としてはへキサデセニルコハク酸、へプタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸及びエイコセニルコハク酸等が挙げられる。これらのうちトナーの流動性、保存性の観点から、好ましくは炭素数18以上のアルケニル基を有する長鎖アルケニルコハク酸である。
【0007】
炭素数16以上のアルキル基を有するα−オレフィン・無水マレイン酸コポリマーとしては側鎖に炭素数16以上のアルキル基を有するα−オレフィン・無水マレイン酸コポリマーである。トナーの流動性、保存性の観点から、アルキル基の炭素数は18以上が好ましい。
【0008】
炭素数16以上の長鎖アルキルカルボン酸としてはパルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、ヌカ油脂肪酸及びひまし油脂肪酸が挙げられる。これらのうちトナーの流動性、保存性の観点から、好ましくは炭素数18以上のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸である。
【0009】
炭素数16以上の長鎖アルキルアルコールとしてはセチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、トリアコサノール等が挙げられる。これらのうちトナーの流動性、保存性の観点から、好ましくは炭素数18以上のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールである。
【0010】
本発明のポリエステルはカルボン酸成分として上記以外の他の多塩基酸を用いることができる。
多塩基酸としては、無水酢酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、アゼライン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ブラシル酸、マロン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナジック酸、メチルナジック酸、オクチルコハク酸、およびこれらの酸の無水物、リノレイン酸の二量体、三量体等の重合脂肪酸、ドデカン二酸、C21二塩基酸、ダイマー酸(オレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸を重合した重合脂肪酸)、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等のジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸等の炭素数7〜20の脂肪族ポリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸等の炭素数9〜20の脂環式ポリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸等の炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸、並びにこれらの無水物や低級アルキル(メチル、ブチル等)エステル等の3価以上のポリカルボン酸類も使用することができる。
【0011】
また、本発明のポリエステルはアルコール成分としてノボラック型フェノール樹脂のアルキレンオキサイド付加物や多価アルコールを用いることができる。ノボラック型フェノール樹脂のアルキレンオキサイド付加物の使用は離型性の観点から好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂のアルキレンオキサイド付加物としては、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基にアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロロヒドリン等)を付加させたものが挙げられる。
【0012】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール類およびこれらのアルキレンオキサイド付加物等の2価アルコール、炭素数3〜20の脂肪族多価アルコール(ソルビトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール等)、炭素数6〜20の芳香族多価アルコール(1,3,5−トリヒドロキシルメチルベンゼン等)、並びにこれらのアルキレンオキサイド付加物、イソシアヌル酸等の分子中に2個以上の活性水素を有する複素環式化合物のオキシアルキレンエーテル等の3価以上のアルコールが挙げられる。
【0013】
本発明のポリエステル系トナー用離型剤を製造するに際し、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノル、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等も併用することができる。
【0014】
ポリエステル化反応は、必要により触媒(例えばジブチル錫オキサイド、酸化第一錫、テトラブチルチタネート、パラトルエンスルホン酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキサイド等)を使用することができ、通常150℃〜250℃の任意の温度で行うことができる。また、この反応は、常圧または減圧下、さらに不活性ガスや溶媒の存在下または不存在下で行うことができる。
【0015】
ポリエステル系トナー用離型剤中の炭素数16以上の長鎖アルキルもしくはアルケニル基の含量は離型性の観点から20〜95重量%、好ましくは25〜95重量%以上である。
【0016】
ポリエステル系トナー用離型剤の数平均分子量(以下Mnと略す)は離型性及び充分なHOTを得るという観点から、500〜15,000、好ましくは600〜14,000である。
【0017】
分子量測定は以下の装置、条件で行うことができる。
装置 : HLC−802A(東洋曹達製)
カラム : TSKgel GMH6 2本(東洋曹達製)
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5重量%THF溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
なお分子量較正曲線は標準ポリスチレンを用いて作成。
【0018】
本発明のポリエステル系トナー用離型剤は、以下の方法により作成することができる。すなわち、冷却管、攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、たとえば、炭素数16以上のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸または炭素数16以上のアルキル基を有するα−オレフィン・無水マレイン酸コポリマーまたは炭素数16以上のアルキル基を有するアルキルカルボン酸および必要により多塩基酸から選択されるカルボン酸成分と、ノボラック型フェノール樹脂のアルキレンオキサイド付加物または炭素数16以上のアルキル基を有するアルキルアルコールまたは多価アルコールから選択されるアルコール成分とを仕込み、窒素を通気しながら昇温し、均一溶解した後、必要に応じて触媒を仕込み、さらに昇温して、反応生成水を除去しながらポリエステル化を行う。
【0019】
本発明のポリエステル系トナー用離型剤の溶解性パラメーター(以後SPと略す)は9.5以下となるよう選択される。
SPが9.5より大きいと、ポリエステル系トナー用離型剤とバインダー樹脂とが相溶することにより、離型性が充分発揮されなくなる。
本発明のポリエステル系トナー用離型剤のSPとバインダー樹脂のSPの差は通常0.2〜3、好ましくは0.5〜2.5である。
【0020】
SPは、以下に示すFedorsの方法によって求めることができる。
SP=(Σ△ei/Σ△vi)1/2
Σ△ei:化合物を構成する原子または原子団の蒸発エネルギー
Σ△vi:化合物を構成する原子または原子団のモル体積
【0021】
本発明のポリエステル系トナー用離型剤は、炭素数16以上のアルキルもしくはアルケニル基を有し、通常ワックス状の結晶性化合物であり、50〜110℃の融点および低い表面張力を有している。このためトナー用離型剤として使用されたとき、室温では比較的硬い固体状であるため、トナー保管時の流動性に優れ、50℃以上に加熱されると速やかに溶融して液状となるため、定着温度の低下効果に極めて優れ、かつ優れた耐ホットオフセット性を示す。
【0022】
本発明のポリエステル系トナー用離型剤は、単独または、他の離型剤と併用して使用することができる。
併用する他の離型剤としては、ポリオレフィン樹脂、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、多価アルコールのエステル、高級脂肪酸、高級アルコール、パラフィンワックス、炭化水素ワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナバワックス、モンタンワックス等が挙げられる。
【0023】
本発明のポリエステル系トナー用離型剤は、トナー製造時に熱可塑性樹脂系バインダー等他の成分と共に加えて用いることも、また該熱可塑性樹脂系バインダーに予め混練・混合した形で用いることもできる。該熱可塑性樹脂系バインダーとしては例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびこれらの複合系が挙げられる。
【0024】
スチレン系樹脂としては単官能性スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、および必要によりその他の単官能性や多官能性モノマーを重合開始剤を用い重合してなる樹脂が挙げられる。
【0025】
スチレン系モノマーとしてはスチレン、アルキルスチレン(たとえばα−メチルスチレン、P−メチルスチレン)等が挙げらる。これらのうち好ましいものは、スチレンである。
【0026】
(メタ)アクリル系モノマーとしてはアルキル(メタ)アクリレート[アルキルの炭素数が1〜18のもので、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等]、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート[ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等]、アミノ基含有(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、ニトリル基含有(メタ)アクリル化合物[アクリロニトリル等]、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。これらのうち好ましいものは、アルキル(メタ)アクリレートおよびニトリル基含有(メタ)アクリル化合物であり、アルキル(メタ)アクリレートのうち特に好ましいものはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸およびこれらの2種以上の混合物である。ニトリル基含有(メタ)アクリル化合物のうち、特に好ましいものはアクリロニトリルである。
【0027】
その他のモノマーとしては、ビニルエステル(たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、脂肪族炭化水素系モノマー(ブタジエン等)を挙げることができる。
多官能性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
多官能性モノマーを使用する場合、好ましいものはジビニルベンゼンおよび1,6−ヘキサンジオールジアクリレートである。
【0028】
これらモノマーの種類、および量(重量%)はバインダー樹脂のSPが10.0以上となるよう選択される。
【0029】
上記に例示したスチレン系樹脂の重合は、通常溶液重合もしくは懸濁重合にて行われるが、溶液重合が好ましい。
溶液重合の場合、溶媒としては芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレン、四塩化エチレン等)、エーテル系溶媒およびこれらの二種以上の混合溶媒が挙げられる。溶媒の使用量はモノマーの合計重量に対して通常1,000%以下、好ましくは400%以下である。溶媒の使用量が1,000%を越えると生産効率が低くなる。
【0030】
また重合には通常重合開始剤が使用され、この重合開始剤としてはアゾ系開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過酸化物系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−tert.−ブチルパーオキサイド、tert.−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert.−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(tert.−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等)が挙げられる。
【0031】
重合反応は通常窒素等の不活性気体の雰囲気下で行われる。重合温度は通常50〜250℃、好ましくは70〜230℃である。温度が50℃より低いと重合開始剤の開始能が低くなる。250℃を越えるとポリマーの分解が顕著となる。反応時間は他の条件に左右されるが、通常1〜50時間、好ましくは2〜10時間である。反応時間が1時間より短いと反応のコントロールが難しいケースが多く、50時間を越えると経済的に不利である。重合に使用した溶剤は重合後脱溶剤する。脱溶剤は常圧もしくは減圧下で行われる。
【0032】
本発明に係わるスチレン系樹脂の分子量は通常、2,000〜1,000,000、好ましくは3,000〜400,000であり、Tgは通常40〜80℃、好ましくは45〜70℃である。Tgが40℃未満ではトナーにしたときの保存性が不良となり、80℃を越えるとMFが高くなりトナーとしての実用に耐えない。
【0033】
また、ポリエステル系樹脂としては、例えば多価アルコールと多塩基酸との縮重合物が挙げられる。
多価アルコ−ルとしては
(1) エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2ープロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオール等の脂肪族グリコール類およびこれらのアルキレンオキサイド[エチレンオキサイド(以下EOと略す)、プロピレンオキサイド(以下POと略す)等]付加物
(2) ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ピロガロール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールスルホン等)および水素添加ビスフェノール類にアルキレンオキサイド(EOおよび/またはPO)を付加させたフェノール系グリコール類
(3) グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、グルコース、フラクトース、ショ糖等の3〜8価のアルコール類およびそれらのアルキレンオキサイド付加物
(4) アルカノールアミン(トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等)、アルキレンジアミン(炭素数2〜6)[エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等]、ポリアルキレン(アルキレンの炭素数2〜6)ポリアミン[ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン等]、芳香族アミン(アニリン、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリン、ジエチルトリレンジアミン、ジフェニルエーテルジアミン等)、脂環式アミン(イソホロンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキシレンジアミン等)、複素環式アミン(ピペラジン、アミノエチルピペラジン、その他特公昭55ー21044号公報記載の物等)等にアルキレンオキサイド(EOおよび/またはPO)を付加させたアミノ基含有多価アルコール類
およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらの中で好ましいものは、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよびビスフェノール類(とくにビスフェノールA)にアルキレンオキサイドを2〜3モル付加させたものおよびこれらの2種以上の混合物であり、特に好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイドを2〜3モル付加させたもの、ネオペンチルグリコールおよびこれらの2種以上の混合物である。
【0034】
多塩基酸としては
(1) コハク酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、アゼライン酸、メサコン酸、シトラコン酸、セバチン酸、グルタコン酸、アジピン酸、マロン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オクチルコハク酸、ドデセニルコハク酸等の二塩基酸
(2) トリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、シクロペンタジエンテトラカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の3価以上の多塩基酸およびこれらの酸の無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。その他リノレイン酸の二量体、三量体等の重合脂肪酸も使用できる。
これらの中では、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸およびオクチルコハク酸、ドデセニルコハク酸に代表されるアルキルまたはアルケニル(炭素数4〜18)コハク酸が好ましい。
以上例示したポリエステル系樹脂としては、線状型のものが好ましいが、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールおよび/またはトリメリット酸等の3価以上の多塩基酸を少量(多価アルコールおよび多塩基酸中に通常1〜30モル%、好ましくは2〜10モル%)用いて得られる分岐型のものも使用することができる。また、多価アルコールと多塩基酸に加え、ヘキサメチレンジアミン、メチレンジアミン等のポリアミン類を少量用いて製造されるアミド結合含有のポリエステル系樹脂も、本発明に係わるポリエステル系樹脂として使用することができる。
【0035】
ポリエステル化反応は必要によりエステル化触媒(例えば酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、テトラブチルチタネート等)の存在下、通常150〜250℃の任意の温度で行うことができる。また、反応は常圧または減圧下、さらに不活性ガスや溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)の存在下または不存在下に行うことができる。
【0036】
これらの多価アルコールおよび多塩基酸はポリエステル系樹脂のSPが10.0以上となるよう選択される。
【0037】
このポリエステル系樹脂のTgは通常40〜80℃であり、45〜70℃であることが好ましい。Tgが40℃未満ではトナーにしたときの保存性が不良となり、80℃を越えるとMFが高くなりトナーとしての実用に耐えない。
【0038】
スチレン系樹脂とポリエステル系樹脂の複合系としては、例えば、
(1) スチレン系樹脂とポリエステル系樹脂を均一混合したもの。
(2) ポリエステル系樹脂存在下でスチレン系モノマーを重合したもの。
(3) スチレン系樹脂存在下でポリエステル系樹脂を重合したもの。
等が挙げられる。
【0039】
本発明のトナー用離型剤の用途となる電子写真トナーの処方を例示すると、トナーの重量に基づいて熱可塑性樹脂系バインダーを通常50〜95%、離型剤を通常1〜30%、公知の着色材料(カーボンブラック、鉄黒、ベンジジンイエロー、キナクリドン、ローダミンB、フタロシアニン等)を通常5〜10%および磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を通常0〜50%用いる処方、が挙げられる。
【0040】
さらに滑剤として、ポリテトラフルオロエチレン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸、もしくはその金属塩またはアミド等、および荷電調整剤として、ニグロシン、四級アンモニウム塩等を含むことができる。
【0041】
電子写真トナーの製法を例示すると、前記処方における各成分や上記の種々の添加剤を乾式ブレンドした後、溶融混練、粗粉砕、ジェット粉砕機等を用いて微粉化の工程を経て、最終的に分級することにより粒径が通常5〜20ミクロンのトナーを得る製法が挙げられる。
【0042】
この電子写真トナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト等のキャリアー粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いることができる。また粉体の流動性改良のために疎水性コロイダルシリカ微粉末を用いることもできる。
この電子写真トナーを支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法が適用できる。
【0043】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、合成例2と実施例2は参考例である。
合成例1
3−メチル−1,5ペンタンジオール24重量部およびアルケニル基の炭素数=20〜28の長鎖アルケニルコハク酸100重量部を窒素導入管、温度計、攪拌装置および冷却管を備えた四つ口コルベンに仕込み、窒素を通気しながら80℃に昇温し均一溶解した後、攪拌を開始し、パラトルエンスルホン酸0.25重量部を加えた。その後、185℃に昇温し、反応生成水を留去しながら同温度で4時間ポリエステル化反応を行った。さらに系を減圧にした後、2時間反応を継続し、本発明のトナー用離型剤(1)を得た。このものの酸価は2.2、水酸基価は1.2、Mnは6,800、融点は61℃であった。
【0044】
合成例2
ヘキシレングリコール29重量部、セバシン酸20重量部、ベヘン酸100重量部を窒素導入管、温度計、攪拌装置および冷却管を備えた四つ口コルベンに仕込み、窒素を通気しながら80℃に昇温し均一溶解した後、攪拌を開始し、ナトリウムメトキサイド0.20重量部を加えた。その後、195℃に昇温し、反応生成水を留去しながら同温度で4時間ポリエステル化反応を行った。さらに系を減圧にした後、2時間反応を継続し、本発明のトナー用離型剤(2)を得た。このものの酸化価は2.8、水酸基価は1.7、Mnは4,500、融点は98℃であった。
【0045】
合成例3
長鎖アルキル基(炭素数26〜58)含有α−オレフィン・無水マレイン酸コポリマー100重量部、メタノール3.0重量部、ステアリルアルコール24.3重量部を窒素導入管、温度計、攪拌装置および冷却管を備えた四つ口コルベンに仕込み、窒素を通気しながら80℃に昇温し均一溶解した後、攪拌を開始し、パラトルエンスルホン酸0.25重量部を加えた。その後、185℃に昇温し、反応生成水を留去しながら同温度で4時間ポリエステル化反応を行った。さらに系を減圧にした後、2時間反応を継続し、本発明のトナー用離型剤(3)を得た。このものの酸化価は12.8、水酸基価は3.7、Mnは11,300、融点は74℃であった。
【0046】
合成例4
アルケニル基の炭素数=20〜28の長鎖アルケニルコハク酸100重量部、エチレングリコール13.0重量部を窒素導入管、温度計、攪拌装置および冷却管を備えた四つ口コルベンに仕込み、窒素を通気しながら80℃に昇温し均一溶解した後、攪拌を開始し、ジブチル錫オキサイド0.25重量部を加えた。その後、185℃に昇温し、反応生成水を留去しながら同温度で4時間ポリエステル化反応を行った。さらに系を減圧にした後、2時間反応を継続し、本発明のトナー用離型剤(4)を得た。このものの酸化価は31.3、水酸基価は3.7、Mnは3,200、融点は56℃であった。
【0047】
合成例5
ノボラック型フェノール樹脂のエチレンオキサイド4.2モル付加物43重量部、ベヘン酸100重量部を窒素導入管、温度計、攪拌装置および冷却管を備えた四つ口コルベンに仕込み、窒素を通気しながら80℃に昇温し均一溶解した後、攪拌を開始し、パラトルエンスルホン酸0.30重量部を加えた。その後、185℃に昇温し、反応生成水を留去しながら同温度で4時間ポリエステル化反応を行った。さらに系を減圧にした後、2時間反応を継続し、本発明のトナー用離型剤(5)を得た。このものの酸化価は3.5、水酸基価は3.1、Mnは1,900、融点は63℃であった。
【0048】
実施例1
トナー用離型剤(1)を用いて以下の方法により電子写真トナーを作製し、さらに電子写真現像剤を作製した。部はいずれも重量部を現す。
Figure 0003638741
上記配合物を粉体ブレンドした後、ラボプストミルで120℃x70rpmで5分間、続いて60℃x15rpmで25分間混練し、得られた混練物をジェットミルPJM100(日本ニューマチック社製)で微粉砕した。気流分級機MDS(日本ニューマチック社製)を用い微粉砕物から5μm以下の微粉をカットした。得られた粉体50部にアエロジルR972(日本アエロジル社製)0.15部を均一混合してトナーを得た。
現像剤作製法
上記トナー30部と電子写真用キャリアー鉄粉(パウダーテック(株)製F−100)800部とを混合して電子写真現像剤(1)を得た。
【0049】
実施例2
トナー用離型剤(1)をトナー用離型剤(2)にする以外同様の方法で電子写真現像剤(2)を得た。
【0050】
実施例3
トナー用離型剤(1)をトナー用離型剤(3)にする以外同様の方法で電子写真現像剤(3)を得た。
【0051】
実施例4
トナー用離型剤(1)をトナー用離型剤(4)にする以外同様の方法で電子写真現像剤(4)を得た。
【0052】
実施例5
トナー用離型剤(1)をトナー用離型剤(5)にする以外同様の方法で電子写真現像剤(5)を得た。
【0053】
比較例1
トナー用離型剤(1)を低分子量ポリプロピレン(数平均分子量:3000)にする以外同様の方法で電子写真現像剤(6)を得た。
【0054】
試験結果
電子写真現像剤(1)〜(6)について、市販複写機((株)シャープ製AR−5030)を用いて紙上にトナー像を転写し、転写された紙上のトナーを外部定着機を使用して、A4紙10枚/分のスピードで定着テストを行った。テスト結果は表1に示した通りである。
【0055】
【表1】
Figure 0003638741
【0056】
COT
コールドオフセットが発生するヒートローラーの温度。
HOT
ホットオフセットが発生するヒートローラーの温度。
トナー嵩密度
ホソカワミクロン社製パウダーテスターを用いて測定した。
(数値が大きいほど、トナーの流動性が良い)
【0057】
本発明の離型剤を使用することにより、低温定着性、耐ホットオフセット性に優れ、かつトナーの流動性に優れた電子写真用現像剤を得ることができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明の離型剤を電子写真用トナーに使用したとき、耐ホットオフセット性に優れるのみならず、従来低分子量ポリプロピレンを用いた場合に避けられなかったトナーの流動性を低下させることなく、低温定着性を飛躍的に向上させることができ、その有用性は極めて高い。

Claims (6)

  1. カルボン酸成分の少なくとも一部として、アルケニルコハク酸及びα−オレフィン・無水マレイン酸コポリマーから選ばれる炭素数16以上のアルキルもしくはアルケニル基を有する化合物を用いてなるポリエステルからなるトナー用離型剤。
  2. 炭素数16以上のアルキルもしくはアルケニル基を有し、アルコール成分の少なくとも一部として、ノボラック型フェノール樹脂のアルキレンオキサイド付加物用いてなるポリエステルからなるトナー用離型剤。
  3. 該ポリエステル中の炭素数16以上のアルキルもしくはアルケニル基の含量が20〜95重量%である請求項1または2記載のトナー用離型剤。
  4. 該ポリエステルの数平均分子量が500〜15,000である請求項1〜3のいずれか記載のトナー用離型剤。
  5. 該ポリエステルの溶解性パラメーターが9.5以下である請求項1〜4のいずれか記載のトナー用離型剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか記載のトナー用離型剤、トナーバインダー及び着色剤からなるトナー組成物。
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