JP3637083B2 - コーティング膜及びコーティング膜を有するガラス体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ガラス、セラミックス、金属等の表面に塗布するためのコーティング溶液であって、特には耐加傷性を向上させたコーティング膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ガラス、セラミックス、金属製品本来の強度を更に向上させるため、あるいは前記製品の表面に直接傷が付くのを防止するために、表面にコーティング処理を施すことが広く行われている。
【0003】
例えば、四塩化スズ、有機スズ、四塩化チタン、有機チタンを主成分とする溶液を、成形直後のまだ高温状態にあるガラス、セラミックス、金属基体に吹き付け、前記溶液成分を加熱蒸発させて得られる蒸気を表面に接触させ、加熱分解反応により耐加傷性を有する物質としては優れた酸化スズ、酸化チタン膜を形成するCVD法と呼ばれるものが一般的であった。
【0004】
この他に蒸着法としては、PVD法も行われ、また、組成物を塗布し、これを焼成すると塗布式製膜法も知られている。
【0005】
しかしこれらのコーティング膜は、いずれも硬度が不十分であったり、膜が剥離しやすかったり、またあるいは均一塗布が困難であったりして、今後製品の軽量化が望まれる一方で、膜の強度化が要求されている当業界において、より優れたコーティング膜の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決し、ガラス、セラミックス、金属等の表面に均一に塗布することができるものであり、耐加傷性の高いコーティング膜を形成するためのコーティング溶液を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のコーティング膜は、有機溶液中に金属イオンとして亜鉛:0.01〜0.5モル濃度、チタン:0.01〜3モル濃度、硼素:0.01〜1モル濃度を含むコーティング用金属イオン含有溶液を塗布し、塗布された基体を200℃以上の温度で5〜10分焼成し、これにより得られるコーティング膜が100〜2000Åであることを特徴とするものである。
【0008】
更に第二の発明として、有機溶液中に金属イオンとして亜鉛:0.01〜0.5モル濃度、チタン:0.01〜3モル濃度、硼素:0.01〜1モル濃度を含むコーティング用金属イオン含有溶液を塗布し、塗布されたガラス製基体を200℃以上の温度で5〜10分焼成し、これにより得られるコーティング膜が100〜2000Åであることを特徴とするガラス体に関するものである
【0009】
本発明で用いられる有機溶媒は、脂肪族一価アルコール又は多価アルコール、アルキレングリコールモノアルコール、βジケトン類が適している。
【0010】
具体的には、脂肪族一価アルコールは、メタノール、イソプロピルアルコール、エタノール、n−ブタノール、n−ヘキサンなどである。また、アルキレングリコールモノアルコールは、エチレングリコールやセロソルブ、2−メトキシエタノールを挙げることができ、βジケトン類は、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ジピバロイルメタンが挙げられる。この中で、溶液の安定性の面からアセチルアセトンがより有利である。
【0011】
更に有機溶液中には、必要に応じて珪素、アルミも加えられる。珪素は、亜鉛と一部置換でき、また、アルミは硼素と一部置換することが可能である。
【0012】
本発明で、亜鉛は、基体との密着性をよくするためのもので、チタンは膜強度アップに寄与している。また、硼素は膜の緻密性に寄与している。そして、亜鉛は、0.01モル濃度以下では、上記基体との密着性が悪く、膜が剥離しやすくなる。逆に0.5モル濃度以上では、膜の均一性が図れず、好ましくないためである。よりよくは、0.01〜0.2モル濃度がよい。チタンは、0.01モル濃度以下では、十分な膜強度を得られず目的を達成することができないからであり、3モル濃度以上では、膜の均一性の他、膜厚が望む範囲とならないからである。より好ましくは0.05〜1モル濃度がよい。また、硼素は、0.01モル濃度以下では、膜全体の緻密性が落ちることから必然的に膜の強度も下がることになり、逆に1モル濃度以上では、緻密性にこれ以上関与することができなくなり、原料が無駄だからであり、より好ましくは0.01〜0.1モル濃度がよい。
【0013】
そして、亜鉛、チタンが上記働きをし合うことにより、組み合わせ以上の効果もあることを本発明では、なし得ることができた。そして、鋭意追究を重ねた結果、〔亜鉛〕/〔チタン〕=0.01〜50の比率で含有されている場合に、よりよい結果が生まれた。即ち、0.01以下では、基体との密着性が図ることができず、また50以上では本発明の目的である耐加傷性を十分に向上させることができないからである。
【0014】
本発明で用いられる塗布法は、ディップ法、スプレー法、スピンナー法、CVD法等、いずれの方法でも行うことができるが、より均一に塗布できるという点では、ディップ法が好ましい。
【0015】
そして、塗布された基体を焼成することにより、硬い透光性薄膜を得ることができる。この時の焼成温度は、コーティングされる基体の材料によっても異なるが、200℃以上が適しており、より好ましくは、500℃以上がよい。また、焼成時間は、5分以上がよいが、好ましくは、5〜10分行うのがよい。
【0016】
形成される膜厚は100Å〜2000Åとする必要がある。100Å未満では、膜強度が弱く、耐加傷性を十分アップさせることができず、逆に2000Åより厚いと、膜にヒビが入り好ましくない。
【0017】
基体は、ガラスが一番好ましく、ガラス容器及びガラス食器等に応用することができる。
【0018】
【作用】
化学作用を特定することは難しいことであるが、本発明では、耐加傷性向上の大きな要素として、硼素の関与を挙げることができる。すなわち、硼素が各金属イオンの酸化物の間を埋めるために耐加傷性が向上すると考えている。そして、活性化がアップし、その結果コーティング膜の硬化に作用している。
【0019】
【実施例】
(実施例1)
以下に本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
次のように溶液調整をした。即ち、
▲1▼アセチルアセトン100mlに酢酸亜鉛を金属モル濃度で0.1Mになる様に添加する。
▲2▼次に攪拌しながら溶液を40〜50℃で加熱して、酢酸亜鉛を溶解させた。
▲3▼▲2▼の溶液にチタンイソプロポキシドを金属モル濃度で0.1Mになる様に添加した。
▲4▼さらに溶液を攪拌しながら6N塩酸を2.0ml滴下した。その溶液を再び70〜80℃で加熱して、攪拌を行った。
▲5▼そして、予め硼酸を溶解させたアルコール溶液を使用し、その溶液中に硼素金属モル濃度が0.1Mになる様に滴下した。
▲6▼ヒーターの電源を切り、攪拌を続けた。
▲7▼▲6▼の状態で室温まで冷却したものをコーティング溶液とした。
【0020】
上記で作成した溶液をもとに、各コーティング方法、焼成時間、焼成温度を表1に示すように薄膜作成を行った。それぞれの膜特性も同時に示す。なお、膜厚は、エリプソメーター、摩擦係数及び膜破壊荷重は、自動スクラッチ試験機(スイスCSEM社)で測定したものである。
【0021】
【表1】
Figure 0003637083
【0022】
次に、溶液を壜にコーティングした時のSF値(スクラッチフォース)を測定した。その結果を表2に示す。表2からもわかるように、ブランクに比較して大幅な向上が確認できた。
【0023】
【表2】
Figure 0003637083
【0024】
(実施例2)
次のように溶液調整をした。
▲1▼ 2−メトキシエタノール100mlに酢酸亜鉛を金属モル濃度が0.05Mになる様に添加する。
▲2▼攪拌しながら溶液を40〜50℃で加熱して、酢酸亜鉛を溶解させた。
▲3▼室温まで冷却した溶液▲2▼を塩酸で安定化し、アルコールで希釈したチタンイソプロポキシド溶液に添加し、金属モル濃度を亜鉛0.05M、チタン0.05Mに調整した。
▲4▼▲3▼の溶液に硼酸を添加し、加熱攪拌し、溶解させる。硼素金属モル濃度で0.05Mとなる様に調整した。
▲5▼▲4▼の溶液を室温まで冷却した溶液をコーティング溶液とした。
【0025】
実施例2で作成した溶液を用いて、スライドガラス上にディップコート(引き上げスピード150mm/min,1回コート)した場合の焼成時間と温度膜の密着性への影響を調べた結果を表3に示す。密着性の判断基準は、20Nの一定荷重のもと、円錐のダイヤモンドチップ(0.2mm)で傷を付け、光学顕微鏡で観察し、判断した。
【0026】
【表3】
Figure 0003637083
【0027】
この結果、低温部(200℃〜)から比較的密着性の高い膜が得られることが観察されている。また、高温部ほど膜の緻密性が高まり、高強度が形成されている。
【0028】
実施例2の溶液を用い、スライドガラス上にディップコート(引き上げスピード100mm/min)で作成した膜の焼成時間とコート回数による密着性への影響を表3の場合と同様に調査した。なお、焼成温度は、400℃で行った。その結果を表4(参考例)に示した。
【0029】
【表4】
Figure 0003637083
【0030】
長時間焼成は、ガラス成分と薄膜成分の界面での成分移動により膜の緻密性が悪化し、膜の密着性が低下していることがわかる。
【0031】
(参考例3)硼素の含有効果を調べるために、スライドガラスを用意し、それぞれZn−Ti−OフィルムとZn−Ti−B−Oフィルム膜を形成するために、ディップコートにより焼成温度400℃、焼成時間15分で1回コーティングを行った。また、コーティングしないものをブランクとして比較した。その結果を表5に示す。この表で摩擦係数が小さくなるほど、表面を滑りやすいということを表しており、すなわち、傷が付きにくいことが示されるものである。
【0032】
【表5】
Figure 0003637083
【0033】
表5の結果から、Zn−Ti−O膜に比較し、Zn−Ti−B−O膜は、摩擦係数が低下している。これは、Zn−Ti内の空孔をBが埋め、表面の緻密化が図れ、すべりが良化した結果である。これにより、Bの存在が耐加傷性の向上には不可欠であることがわかる。
【0034】
図のグラフは、横軸が膜に対してかけた荷重をとり、縦軸にせん断応力値をとった。破壊荷重に対してせん断応力値が大きいほど表面の膜破壊が起きていることを示すものであり、耐加傷性アップが達成できていることである。即ち、硼素を加えたものは、従来の加えられていない比較例に対して破壊荷重が大きい値からせん断応力値の上昇が認められていることから、耐加傷性のアップが証明されている。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のコーティング溶液ならびにその溶液によって形成された膜は、ガラス、セラミックス、金属等の表面に均一に塗布することができるものであり、耐加傷性の高いコーティング膜を形成することができる。
よって、従来の問題点を解決したコーティング膜として産業の発達に寄与するところは極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】破壊荷重に対するせん断応力値を表したグラフである。

Claims (2)

  1. 有機溶液中に金属イオンとして亜鉛:0.01〜0.5モル濃度、チタン:0.01〜3モル濃度、硼素:0.01〜1モル濃度を含むコーティング用金属イオン含有溶液を塗布し、塗布された基体を200℃以上の温度で5〜10分焼成し、これにより得られるコーティング膜が100〜2000Åであることを特徴とするコーティング膜。
  2. 有機溶液中に金属イオンとして亜鉛:0.01〜0.5モル濃度、チタン:0.01〜3モル濃度、硼素:0.01〜1モル濃度を含むコーティング用金属イオン含有溶液を塗布し、塗布されたガラス製基体を200℃以上の温度で5〜10分焼成し、これにより得られるコーティング膜が100〜2000Åであることを特徴とするガラス体。
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