JP3636910B2 - ラインドライバ回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラインドライバ回路、特に半導体集積回路(IC)を用いたAMI(Alternate Mark Inversion)信号を送出するラインドライバ回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラインドライバ回路は、伝送路に伝送信号を送出する為の回路であり、代表的な伝送信号としてAMI信号がある。AMI信号は、正極信号、負極信号及び無信号の擬似3値信号を伝送路に送信する。このとき、送信される信号のパワー(送信パワー)は、パルス面積(パルス振幅×パルス幅)で求められる。送信パワーが大きかったり、小さかったりすると、受信側に正しく受信されないので、送信パワーを一定にする回路構成が必要となる。
【0003】
ラインドライバ回路は、従来種々提案されているが、その一例は特開昭63−151284号公報に開示され、図5に示す如き構成を有する。送信データ入力端子101を抵抗30及び可変コンデンサ301を介して接地し、抵抗30とコンデンサ301の接続点にトランジスタ(NMOS:nチャンネルMOSトランジスタ)201のゲートを接続する。NMOS201のソースは接地し、ドレインはトランスTの第1入力端子12に接続する。
【0004】
また、送信データ入力端子102は、抵抗31とコンデンサ302直列回路を介して接地し、これら抵抗31とコンデンサ302の接地点にNMOS202のゲートを接続する。NMOS202のソースは接地し、ドレインはトランスTの第2入力端子11に接続する。トランスTの中点端子15は電源端子15に接続する。トランスTの出力端子13、14間に伝送路4が接続される。
【0005】
このように構成された従来のラインドライバ回路の動作を図6を参照して説明する。図6中、(a)は送信データ入力端子101の電圧波形、(b)は送信データ入力端子102の電圧波形、(c)はNMOS201のゲート入力電圧波形、(d)はNMOS202のゲート入力電圧波形、及び(e)はトランスTの出力端子13、14の出力電圧波形を示す。
【0006】
時刻toに送信データ入力端子101に正パルス(図6(a)参照)が印加されると、NMOS201のゲート入力電圧は、抵抗30及び可変コンデンサ301の時定数で上昇し、しきい値電圧に達する。このとき、NMOS201はオンとなり、電源端子8からトランスTの第1入力端子12側のコイルにNMOS201を介して接地9に電流が流れる。また、送信データ入力端子101の正パルスが時刻t1で0に復帰すると、NMOS201のゲート入力電圧は再度抵抗30及び可変コンデンサ301の時定数で復帰して、再度しきい値を超した時点で終了する正パルスがトランスTの出力端子13、14間に生じる(図6(e)参照)。
【0007】
次に、時刻t2−t3間に送信データ入力端子102に正パルスが印加されると(図6(b)参照)、NMOS20、ゲート入力電圧は、図6(d)に示す如く、抵抗31及び可変コンデンサ302の時定数で上昇及び降下してNMOS202をオンとし、トランスTの第2入力端子11側及びNMOS202を介して電源端子8から電流が流れ、図6(e)に示す如き負パルスがトランスTの出力端子13、14に出力される。
【0008】
このように、送信データ入力端子101又は102に正極信号を印加することにより、トランスTの出力端子13、14に正極信号、負極信号を、伝送路4に印加する。これら正極信号及び負極信号間は無信号となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のラインドライバ回路は、可変コンデンサを可変することにより、AMI信号のパルス幅を調整し、AMI信号のパルス面積である送信パワーを一定化している。しかし、可変コンデンサの可変では、送信パワーの初期調整は可能であるが、電源電圧、温度等の環境変動に対しては送信パワーを一定化できないという問題があった。これは、電源電圧や温度等の環境変動があった場合に、可変コンデンサを可変する以外にパルス幅を調整する手段がないからである。
【0010】
そこで、本発明の目的は、電源電圧や温度等の変動があっても伝送路に送出するAMI信号の送信パワーを一定化することが可能なラインドライバ回路を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため、本発明によるラインドライバ回路は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0012】
(1)それぞれの入力端子に入力されたパルス信号のパワーを制御する一対の送信パワー制御回路の出力をスイッチ回路を介してトランスの入力側に供給し、前記トランスの入力側に流れる電流を制御し、前記トランスの出力側に接続された伝送路に供給するラインドライバ回路において、
前記送信パワー制御回路は、前記入力端子に接続されたインバータと、このインバータの出力が一方の入力端子に接続されるとともに、NMOSトランジスタを介して他方の入力端子に接続されたNANDゲートと、このNANDゲートの前記他方の入力端子と接地間に接続されたコンデンサを有するラインドライバ回路。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のラインドライバ回路の好適実施形態例の構成及び動作を添付図、特に図1乃至図4を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明のラインドライバ回路の好適実施形態例の構成図を示す。このラインドライバ回路は、夫々送信データ入力端子101、102に接続された1対の送信パワー制御回路71、72及びこれら送信パワー制御回路71、72の出力に接続された信号制御回路5を含んでいる。
【0020】
信号制御回路5の出力側には、電源端子8及び接地9間に直列接続されたPMOS21及びNMOS22と、PMOS23及びNMOS24とが接続されている。また、並列接続されたPMOS25及びNMOS26を有する。PMOS21及びNMOS22の接続点と、PMOS25及びNMOS26のドレインをトランスTの第1入力端子11に接続する。同様に、PMOS23及びNMOS24の接続点と、PMOS25及びNMOS26のソースとをトランスTの第2入力端子12に接続する。一方、トランスTの第1出力端子13及び第2出力端子14間に伝送路4が接続されている。
【0021】
斯る図1のラインドライバ回路では、両送信パワー制御回路71、72及び信号制御回路5を半導体集積回路(IC)とすることにより、トランスT以外は全てICで構成可能であるという利点がある。
【0022】
次に、図1のラインドライバ回路の動作を、図2の波形図を参照して以下に説明する。図2は、送信パワー制御回路71、72の動作を示し、(a)は送信データ入力端子101、102に印加される送信パワー制御回路71、72への入力電圧である。(c)は、通常状態での送信パワー制御回路71、72の出力電圧波形である。しかし、電源電圧や温度等又は、ICの製造上のばらつきにより、伝送路4に出力されるAMI信号振幅は変動し得る。図2(b)は、振幅が通常値より小さい場合であり、この場合にはパルス幅を拡げるように調整して出力パワーを一定にすることを示す。また図2(d)は振幅が通常値より大きい場合であり、パルス幅を狭くして出力パワーの一定化を図っている。
【0023】
送信データ入力端子101、102に“H”、“L”入力が印加されると、送信パワー制御回路71,72は、パルス幅を調整して、信号制御回路5の入力端子57、58に“H”、“L”を入力する。そこで、信号制御回路5の出力端子51、52、54が“L”、出力端子53、55、56が“H”となる。そこで、PMOS21とNMOS24がオン、NMOS22、PMOS23,PMOS25及びNMOS26がオフとなる。その結果、電源端子8からPMOS21、トランスTの入力端子11、12及びNMOS24を介して接地9に電流が流れる。この電流により、トランスTの出力端子13、14から伝送路4へAMI信号の正極信号を送出する。
【0024】
このとき、AMI信号の振幅が小さいと(図2(b)参照)、送信パワー制御回路71の出力端子のパルス幅が通常より広がるので、トランスTの出力端子13,14から伝送路4へ送出されるAMI信号のパルス幅も広がり、AMI信号の送信パワーを一定にして送信できる。また、AMI信号の振幅が大きい場合(図2(d)参照)。送信パワー制御回路71の出力端子のパルス幅が通常よりも狭まり、トランスTの出力端子13、14から伝送路4へ送出されるAMI信号のパルス幅も狭まり、AMI信号の送信パワーは一定に送信できる。
【0025】
他方、送信データ入力端子101、102が“L”、“H”の場合には、送信パワー制御回路71、72はパルス幅を調整して、信号制御回路5の入力端子57、58に夫々“L”、“H”を入力する。そこで、信号制御回路5の出力端子51、52、53が“H”、54、55、56が“L”を出力する。その結果、PMOS23とNMOS22がオン、PMOS21、25とNMOS24、26がオフとなる。
【0026】
従って、電源端子8からPMOS23、トランスTの入力端子12、11、NMOS22及び接地端子9を介して、上述の場合と逆方向にトランスTの1次巻線に電流が流れる。そして、トランスTの出力端子13、14には負極信号が送出されて伝送路4に印加されることとなる。尚、この場合の出力パワーも正極信号の場合と同様に一定となる。
【0027】
次に、送信データ入力端子101、102の双方に“L”を印加した場合には、送信パワー制御回路71、72は信号制御回路5の入力端子57、58に“L”、“L”を入力する。そこで、信号制御回路5は、出力端子51、54、55に“H”、出力端子52、53、56に“L”を出力する。PMOS21、23とNMOS22、24はオフ、PMOS25とNMOS26がオフとなり、トランスTの入力端子11、12は、これら両トランジスタ25、26のオフ抵抗で終端され、トランスTの出力端子13、14、即ち伝送路4には無信号を出力する。
【0028】
上述の説明から明らかな如く、1対の送信パワー制御回路71、72の送信データ入力端子101、102にデータ“H”及び“L”の組合せを入力することにより、トランスTの出力端子13、14に接続されている伝送路4には、正極信号、負極信号及び無信号を一定パワーで出力することとなる。
【0029】
次に、図1のラインドライバ回路の具体的回路図を示す図3及びこの各部の動作を示すタイミングチャートである図4を参照して説明する。尚、図3の回路図において、図1と対応する回路素子又は回路部分には、便宜上同一参照符号を使用する。
【0030】
先ず、図3を参照して回路構成を説明する。送信パワー制御回路71は、送信データ入力端子101に接続されたインバータ65、このインバータ65の出力を直接及びNMOS27を介して入力するNANDゲート66及びNMOS27の出力と接地9間に接続されたコンデンサ32とを有する。同様に、送信パワー制御回路72もインバータ67、NANDゲート68、NMOS28及びコンデンサ33を有する。
【0031】
また、信号制御回路5は、3個のインバータ61、62、64及びNORゲート63を含む論理(ロジック)回路である。インバータ61、62には、夫々送信パワー制御回路71、72の出力が入力される。NORゲート63には、送信パワー制御回路71、72の両出力が入力される。インバータ64には、NORゲート63の出力が入力される。この信号制御回路5の後段の回路は、図1の回路と同一であるので重複説明を省略する。
【0032】
次に、PMOS21、23及び25とNMOS22、24及び26のゲートと、他の回路との接続関係は、次のとおりである。PMOS21、23のゲートには、インバータ61、62の出力が夫々入力される。NMOS22、24のゲートには、送信パワー制御回路72、71の出力が夫々入力される。PMOS25とNMOS26のゲートには、インバータ64の出力及び入力が夫々入力される。
【0033】
次に、図4のタイミングチャートを参照して、図3のラインドライバ回路の各部分の動作を説明する。図4において、(a)、(b)は送信データ入力端子101、102の入力電圧波形、(c)はインバータ65の出力電圧波形、(d)はNMOS27のソース電圧波形、(e)はインバータ67の出力電圧波形、(f)はNMOS28のソース電圧波形、(g)はNANDゲート66の出力電圧波形、(h)はNANDゲート68の出力電圧波形、(i)はインバータ61の出力電圧波形、(j)はインバータ62の出力電圧波形及び(k)はトランスTの出力端子13−14の出力電圧波形を示す。
【0034】
送信データ入力端子101の入力電圧が“L”から“H”に変化すると(図4(a)参照)、インバータ65の出力は反転して“H”から“L”となる(図4(c)参照)。NMOS27のソース端子には、コンデンサ32が接続されているので、その充放電により遅延を生じる(図4(d)参照)。しかし、NANDゲート66は、両入力信号(図4(c)、(d)参照)のうち一方が“L”となった時点で“H”を出力するので、NMOS27のソース電圧の遅延と無関係に送信データ入力信号101が“L”から“H”へ変化した時点でNANDゲート66の出力電圧は“L”から“H”へ立上がる(図4(g)参照)。
【0035】
一方、送信データ入力端子101の入力データが“H”から“L”に変化すると、インバータ65の出力は“L”から“H”へ変化する。NMOS27のソース電圧は、コンデンサ32の充放電の為に遅延して、インバータ65の出力電圧よりも遅くなる(図4(d)参照)。この遅延時間は、NMOS27のオン抵抗Ronとコンデンサ32の静電容量Cの時定数t=C・Ronで決定する。ここで、Ronは次式で決定される。
Ron=1/gm=1/{μCox・(W/L)・(Vgs−Vt)}
gmは相互コンダクタンス、μは電子の移動度、Wはゲート幅、Lはゲート長、Vgsはゲートソース間電圧、Vtはしきい値電圧である。
【0036】
この式から明らかな如く、電源電圧が低い場合には、NMOS27のゲート電圧が低くなり、Vgsが下がるのでRonが大きくなる。反対に、電源電圧が低くなると、Ronは小さくなる。
【0037】
温度が高いとμが大きく、Ronは小さく、温度が低いとμが小さく、Ronは大きくなる。また、ゲート長Lが長いとRonは大きく、短いとRonは小さくなる。
【0038】
NMOS27のオン抵抗Ronが大きいと、上述した遅延時間は長くなり、Ronが小さくなると遅延時間は短くなる。これにより、HANDゲート66の出力電圧(図4(g)参照)は、その両入力信号が共に“H”になったとき“L”となるので、NMOS27のオン抵抗Ronによりパルス幅が変化して伝送パワーを自動的に調整することとなる。
【0039】
尚、上述の説明は、送信データ入力端子101と送信パワー制御回路71につき行ったが、同様回路構成を有する送信データ入力端子102と送信パワー制御回路72についても同様であること勿論である。また、信号制御回路5の後段のトランジスタ21〜26及びトランスTを含む回路については、図1の回路と同様であるので、重複説明は避ける。
【0040】
以上、本発明のラインドライバ回路の好適実施形態例の構成及び動作を説明した。しかし、本発明は斯る特定例のみに限定されるべきではなく、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変形変更が可能であること当業者には容易に理解できよう。
【0041】
【発明の効果】
上述の説明から理解される如く、本発明のラインドライバ回路によると、送信パワー制御回路にコンデンサと共にMOSトランジスタのチャンネル抵抗を使用する時定数回路とすることにより、電源電圧や周囲温度のみならず使用するICの製造上のばらつきも自動的に補正して略一定のAMI信号の送信パワーを得ることが可能になるという実用上の顕著な作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のラインドライバ回路の原理を示す構成図である。
【図2】図1のラインドライバ回路の動作説明図である。
【図3】本発明のラインドライバ回路の好適実施形態例の回路図である。
【図4】図3のラインドライバ回路の各部分の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】従来のラインドライバ回路の回路図である。
【図6】図5のラインドライバ回路の動作説明図である。
【符号の説明】
4 伝送路
5 信号制御回路
21〜26 スイッチング回路(MOSトランジスタ)
71、72 送信パワー制御回路
27、28 NMOS
32、33 コンデンサ(時定数回路)
66、68 論理積回路(NANDゲート)
101、102 送信データ入力端子
T トランス

Claims (1)

  1. それぞれの入力端子に入力されたパルス信号のパワーを制御する一対の送信パワー制御回路の出力をスイッチ回路を介してトランスの入力側に供給し、前記トランスの入力側に流れる電流を制御し、前記トランスの出力側に接続された伝送路に供給するラインドライバ回路において、
    前記送信パワー制御回路は、前記入力端子に接続されたインバータと、このインバータの出力が一方の入力端子に接続されるとともに、NMOSトランジスタを介して他方の入力端子に接続されたNANDゲートと、このNANDゲートの前記他方の入力端子と接地間に接続されたコンデンサを有することを特徴とするラインドライバ回路。
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