JP3636279B2 - 食肉へのインジェクション方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、豚肉、牛肉、家禽肉等の食肉塊に、ピックル液や調味液等の液状物質を均一に分散させるインジェクション(注入)方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食肉加工には食肉に塩漬剤や調味料を均一に分散させるニーズがあり、多針型のピックルインジェクターを使用することが、近年主流となっている。
多針型のピックルインジェクターを使用する方法により、ピックル液あるいは調味液に含まれる添加物を以前より均一に分散させた製品を製造できるようになったが、注入直後は、針の刺さった部分に液が溜まった状態であり、タンブリンマシンやマッサージマシン等で力学的な刺激を与え、かつ、ピックル液あるいは調味液が肉塊中に浸透し、均一に分散するまで放置しておいてからでないと、次の工程に進むことができないというのが現状である。したがって、ロースハムやボンレスハムの塩漬又は焼き豚の調味に何日もかかるという問題があった。
【0003】
しかも、ピックル液の注入圧はその構造上12kg/cm2 程度が限度であり、調味液の中に含まれる物質のうち、食塩のように低分子のものは、肉塊中で移動しやすいが、高分子のものや、食肉を構成する物質との反応性の高いものは、肉塊中で移動しにくく、その結果として分散が悪いという欠点があった。
【0004】
現状の多針型のピックルインジェクターの改良を考えた場合、多針型のピックルインジェクターの針の密度を更に高めることが必要であるが、針自体細いものでも直径約3mmであり、針を固定する治具の幅もあり、現状の針の間隔である12〜25mmを改善することは難しい。また、万一改善できたとしても、針の密度をあげると肉への針の差し込みと取り出しの抵抗が大きくなり、実際に装置を稼動することが難しくなる。したがって、多針型のピックルインジェクターによる注入では、液を短時間により均一に肉塊中に分散させるという目的を達成することは不可能であった。
【0005】
また、大きな肉塊に従来の多針型のピックルインジェクターで注入する際、一塊の肉であっても、部位によって硬さが異なり、一様に注入しても肉質の注入抵抗の差で、均一に注入されないという欠点があった。例えば、実公昭60−11799号公報及び特開平6−209693号公報には、肉質の注入抵抗の差によるピックル液注入の不均一を解決する方法が開示されているが、この方法では精度の高い結果を得ることは困難であり、満足できるものではなかった。
【0006】
他方、無針型ピックルインジェクター及びインジェクション方法のハムなどの食肉加工品への応用については次のような先行技術が知られている。
特開平5−244906号には、スプレイノズルを用いて高圧下に無針型のピックルインジェクターにより肉片の中に塩水等の液状物質を導入する方法が開示されている。該ピックルインジェクターは、圧力ローラとコンベアで肉塊の厚みを一定にしておき、下からスプレイノズルでインジェクションする構造であり、ノズル間隔が20mm以内で、厚さ20mmの肉に液状物質を注入することが可能である旨記載されているものの、該ピックルインジェクターは拡散型のスプレイノズルを使用しているため、該公報の図5に示されるように、液状物質が同心円状に広がり、注入されない部分や液が重複する部分が発生し、均一に注入分散することができる方法とはいい難く、また、該ピックルインジェクターは、肉の厚みを押し潰して薄くした後インジェクションする構造であり、同心円状に広がる高いスプレー圧力は肉に損傷を与えるため、肉の厚みが厚いものには使用できないという欠点がある。また、この方法では圧力ローラによって、肉塊の割れや崩れ等が生じるおそれがある。
したがって、この導入方法では、圧力ローラで例え厚みを減らしたとしても、厚みが30mmを超えるような豚モモ肉やロース肉に適用することは困難である。
【0007】
米国特許第2418914号明細書には、屠殺後短時間の内に肉を柔らかくするために、脂質物質や少量の水からなる肉質柔軟化剤等の可食性粒子を高圧下高速で肉表面にスプレイし、肉の深部まで浸透させると共に、肉の筋線維を機械的に破壊することが開示されているが、その可食性粒子の分散状況等の詳細については記載されていない。
【0008】
米国特許第3016004号明細書及び米国特許第3436230号明細書には、肉表面にノズルの先端を接触させて保存液等の液体を高圧で注入し、肉線維を壊すことなく、液体を分散させる方法が開示されており、具体例として、ベーコンベリーの赤身と脂肪に、赤身注入ノズル及び脂肪注入ノズルを備えた自動注入機械を用いて、高速度液体流を注入することが記載されている。
【0009】
米国特許第3769037号明細書及び米国特許第3649299号明細書には、肉中への柔軟化剤及び/又は香味付与剤の液の浸透深度を効果的に制限するために、3方向からの直進水流を焦点でぶつかり合わせ、エネルギーを消失させ、拡散させることで浸透深度を制限する方法が記載されている。
【0010】
米国特許第3675567号明細書には、上記米国特許第3769037号明細書及び米国特許第3649299号明細書記載のインジェクションノズルを肉と同じ速さで移動させながら、電気タイマーにより素速くオン−オフしうるソレノイドバルブの制御により、1000〜5000psiの圧力で、柔軟化剤、香味付与剤等の液を家禽肉に高速で注入する装置が記載されている。
【0011】
米国特許第3739713号明細書及び米国特許第3814007号明細書には、予め定めておいた値に達するまでノズル通路中の液の圧力を高めておき、バルブ解放後、不定形の肉塊に適合する、複数本の種々の長さのノズル通路の先端部から、素早く一気に液体を噴射させ、液漏れが生じることがないインジェクション装置が開示されている。
【0012】
米国特許第5053237号明細書には、低級肉の柔らかさや官能的品質を向上させるために、肉から一定の距離だけ離したノズルから、移動している肉に、バインダーとしての植物性油又は脂肪等が肉組織中に充分浸入しうるような圧力で注入し、肉の結合組織を横方向及び縦方向に切断しうる肉の処理法が記載されている。
【0013】
米国特許第5112270号明細書には、ウオータージェット屠殺を行うために、超高圧(3000〜4000kg/cm2 )で頭蓋骨を破壊することが記載されている。
【0014】
米国特許第5200223号明細書には、配管中を連続的に搬送されている肉に、高圧ノズルから、短時間の細いジェットの形で液体を間欠的又は周期的に噴射し、該液体を肉の与えられた深さまで注入する方法が記載されている。
【0015】
米国特許第5176071号明細書には、肉に損傷が生じない手段の改善をするために、押圧ローラーによってコンベア上の肉塊を予め決められた厚さに平たくすると共にスプレーノズルに接触せしめ、肉の外面にインジェクションストリームを噴霧することなく、調味液等を均質に分散させる方法及び装置が記載されている。
【0016】
しかしながら、上記の無針型ピックルインジェクター及びそれを用いたインジェクション方法は、肉表面を傷つけるものであったり、適用対象となる肉塊の肉厚が限定されるものであったりして、汎用性がなく、また何よりも、種々の肉厚の原料肉を対象とした実用的なレベルにおいて、液状物質を均一に分散させることができるとは到底いいうるものではなかった。そして、直進水流と注入しながらの圧力制御とを組み合わせた均一分散インジェクション方法や均一分散インジェクターについては知られていなかった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の多針型のピックルインジェクターや、無針型ピックルインジェクターを用いたインジェクション方法における問題を解決し、食肉の厚みが薄いものばかりでなく、厚い原料肉に対しても、またその形状や大きさが種々異なる原料肉に対して、肉質を損なうことなく、効率良く、連続的にピックル液や調味液を肉塊中に均一に分散させ、タンブリングマシンやマッサージマシン等を長時間使わなくても塩漬や調味を達成することができ、更に肉質の注入抵抗の差が有ってもピックル液や調味液を均一に分散させることができる実用的なインジェクション方法やピックルインジェクターを提供することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、まず現在その使用が主流である多針型ピックルインジェクターについて検討をしたがその解決策が見当たらなかったので、無針型ピックルインジェクターを使用するインジェクション方法について、高圧水発生装置と直進水流噴射ノズルを備えたモデル機械を製作し、検討を始めた。しかし、この種の無針型ピックルインジェクターに関する公知の知見からは実用的なインジェクション方法には到達できなかった。そこで、食肉加工用に実際に適用可能な条件を見い出すべく、上記モデル機械の改良と肉塊中への液状物質の注入及び分散における特性の研究に取り組み、その結果高圧水発生装置と直進水流噴射ノズルを用いた場合の肉塊中への液状物質の注入及び分散における特性の研究から得られた、圧力上昇速度を調節することにより注入率を制御することが可能であるという知見に基づいて、液状物質を注入しながら注入圧力を制御しうる機構となるように上記モデル機械に改良を加え、直進水流と注入しながらの圧力制御との組み合わせを特徴とするインジェクション方法やそれに用いるピックルインジェクターを先に開発した。
【0019】
先に開発したインジェクション方法(特願平9−121924号)は、直進水流噴射ノズルを用いて食肉塊へ液状物質を注入するに際し、液状物質を注入しながら注入圧力をゼロ又は低圧から漸次上昇させる等の変化などの制御を行う食肉塊への液状物質のインジェクションに関し、また、先に開発したピックルインジェクター(特願平9−2536784号)は、食肉塊に液状物質を注入する装置であって、高圧液発生部と、液状物質の噴射部と、該噴射部から食肉塊へ液状物質を注入するに際し、液状物質を注入しながら注入圧力をゼロ又は低圧から漸次上昇させうる圧力制御機構を有する圧力制御部とを備えたピックルインジェクターに関するものである。これらのインジェクション方法やピックルインジェクターは、ピックル液や調味液を食肉塊に均一に分散させることができ、非常に優れたものということができるが、適用される注入圧力が2000kg/cm2 程度と高く、ピックルインジェクターの作製やそのメンテナンスにおけるコストが高価なものになっていた。本発明者らは上記インジェクション方法やピックルインジェクターにおいて適用される注入圧力を低減する方法について鋭意研究した結果、例えば最高500kg/cm2 程度の圧力に高められている高圧の液状物質を、直進水流噴射ノズルを用いて注入圧力の制御下に食肉塊へ注入すると、比較的低い圧力しか発生させることができない例えばポンプを用いても、ピックル液や調味液を食肉塊に均一に分散させることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち本発明は、予め所定の圧力に高められている高圧の液状物質を、直進水流噴射ノズルを用いて食肉塊へ注入するインジェクション方法であって、高圧の初発注入圧力で注入を開始し、その後、注入圧力がゼロ又は低圧まで漸次下降するように注入圧力を制御しながら液状物質を注入することを特徴とする食肉塊への液状物質のインジェクション方法や、配管内の予め所定の圧力に高められている高圧の液状物質を、該配管に設けられたバルブを開き、高圧の初発注入圧力で注入を開始し、その後注入圧力を低圧又はゼロまで下降させながら注入することを特徴とする上記の食肉塊への液状物質のインジェクション方法や、初発注入圧力の高圧化と注入圧力の制御とをサーボモーターを用いて行うことを特徴とする上記の食肉塊への液状物質のインジェクション方法や、トレー内の食肉塊を複数の噴射部で押さえつけ、各噴射部から順次液状物質を注入し、トレーにより食肉塊の横方向への膨張を防止することを特徴とする上記の食肉塊への液状物質のインジェクション方法や、食肉塊の両面から液状物質を注入することを特徴とする上記の食肉塊への液状物質のインジェクション方法に関する。本発明はまた、上記の食肉塊への液状物質のインジェクション方法を用いることを特徴とする食肉製品の製造方法に関する。
【0021】
また本発明は、食肉塊に予め所定の圧力に高められている高圧の液状物質を注入する装置であって、高圧液発生部と、直進水流噴射ノズルを有する液状物質の噴射部と、該噴射部から食肉塊へ液状物質を注入するに際し、高圧の初発注入圧力で注入を開始するためのバルブと、液状物質を注入しながら、注入圧力がゼロ又は低圧まで漸次下降するように注入圧力の制御を行うことができる圧力制御部とを備えたことを特徴とするピックルインジェクターや、単流を複流に分岐するマニホールドが複数個連結された噴射部と、液状物質の噴射部と、それぞれ独立して開閉することができる複数のバルブからなるバルブユニットと、モーターの回転数を制御することにより注入圧力の制御を行うことができる圧力制御部とを備えたことを特徴とする上記ピックルインジェクターや、食肉塊の搬送部と、該搬送部の上方に配置された2つの噴射部を有する、上記のピックルインジェクターと、該ピックルインジェクターの2つの噴射部間の搬送部に設けられた食肉塊反転手段とを備えた食肉加工装置に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明において、食肉としては、豚肉、牛肉、家禽肉、馬肉、羊肉及びこれらの内臓肉、骨付き肉及び皮付き肉、並びに魚肉等を例示することができ、食用に供される肉であればどのような肉をも使用することができる。
【0023】
本発明において、液状物質としては、塩漬用のピックル液、調味用の調味液の他、脂質、植物タンパク質等の組織改良剤、天然保存剤、天然色素剤、酵素、微生物等の溶液、分散懸濁液を例示することができ、直進水流噴射ノズルから噴射しうる液状のものであれば、気体状のガスを含むものなど、いかなるものでも使用することができる。
【0024】
本発明において、食肉製品とは、食肉加工品であればどのようなものでもよいが、例えば食品衛生法上の分類に従うと、乾燥食肉製品、非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品、加熱食肉製品のいずれかに該当するものである。またこの内、非加熱食肉製品とは、食肉塊の中心まで、例えば60℃で30分間の加熱処理又はこれと同等以上効力を有する処理等の加熱殺菌を行っていない食肉製品をいい、例えば、各種原料の生ハムや生ベーコンを例示することができる。
【0025】
本発明において、直進水流とは、同心円状に拡散して噴出することなく、直線状に収束して噴出する液状物質の流れをいい、直進水流噴射ノズルとは、直進水流を噴射させるノズルをいう。また、本発明において、注入圧力とは、直進水流噴射ノズルから噴出された直後の液状物質の液圧をいい、通常は高圧水発生装置と直進水流噴射ノズルとの間の配管中の液圧として、例えば圧力センサにより測定される。圧力センサを備えることにより、注入圧力をその設定値に一層正確に調整することができる。
【0026】
本発明のピックルインジェクターは、食肉塊に予め所定の圧力に高められている高圧の液状物質を注入する装置であって、高圧液発生部と、直進水流噴射ノズルを有する液状物質の噴射部、好ましくは単流を複流に分岐するマニホールドが複数個連結された噴射部と、該噴射部から食肉塊へ液状物質を注入するに際し、高圧の初発注入圧力で注入を開始するためのバルブ、好ましくはそれぞれ独立して開閉することができる複数のバルブからなるバルブユニットと、液状物質を注入しながら、注入圧力が変化するように例えばモーターの回転数を制御することにより注入圧力の制御を行うことができる圧力制御部とを備えたことを特徴とする。
【0027】
本発明のピックルインジェクターにおける高圧液発生部は、上記液状物質を高圧、例えば7〜500kg/cm2 にしうるものであれば、どのような機構のものでもよく、例えばプランジャーポンプや流体圧シリンダ等の往復ポンプ、回転ポンプ、渦巻ポンプなどのポンプ類を挙げることができるが、別に液状物質を高圧にしうるものであればポンプ以外のものでもよい。プランジャーポンプ等のポンプをモータの回転数を制御することにより駆動してポンプの出力を制御する場合など、高圧液発生部と後述する圧力制御部とを一体的に構成することもできる。
【0028】
また、高圧の液状物質は、高圧液発生部から高圧配管を経由して噴射部に移送されるが、該噴射部から食肉塊へ液状物質を注入するに際し、最高500kg/cm2 程度の高圧の初発注入圧力で注入を開始するためのバルブ、好ましくはそれぞれ独立して開閉することができる複数のバルブからなるバルブユニットが設けられる。そして複数のバルブからなるバルブユニットを用いる場合、各バルブから下流はそれぞれに対応する噴射部と連結する複数の高圧配管が設けられることになる。この場合、高圧液発生部から高圧配管を経由して移送されてくる高圧の液状物質は、バルブユニットの各バルブを順次開閉していくことにより、各高圧配管を経由してそれぞれの噴射部から高圧の初発注入圧力で注入が開始されることになる。
【0029】
また、噴射部としては、バルブから下流の各高圧配管からの単流を複流に分岐するマニホールドと呼ばれる部材を有する噴射部を用いることが望ましい。マニホールドは噴射部の先端部に設けることが好ましいが、場合によっては配管途中に設けることもできる。従来の高圧液発生装置の噴射部は、単孔式もしくは、マニホールド内の配管を放射状に分岐した形状であったが、本発明者らは、食肉用のピックルインジェクターとして特に適したものとなる様にマニホールドを加工し、マニホールド内の配管を分岐し、該配管を平行に一列ないし複数列並べたものを作製した。ここでいう平行とは、1列に平行に並べる場合ばかりでなく、千鳥形等多列に平行に並べる場合も含まれる。このように、ノズルを平行に並べることにより、ノズル間隔を10mm以下、例えば5.6mmと狭くして注入することができるので、高密度の均一な注入が可能となる。かかる平行に並べられたノズル、それも直進水流噴射ノズルを多数有するマニホールドを用いることが一層望ましい。
【0030】
このようなマニホールドを用いると、各配管の先端部のノズルからは、高圧の液状物質が直進水流として噴射され、平行に並んだ各ノズルから食肉塊に対し同時に液状物質が注入される。また、このように1つのマニホールドに多数のノズルを設けると、一回の注入処理で液状物質を効率良く注入することが可能となるが、1つのマニホールドにあまりに多くのノズルを設けると、高圧液発生部に負荷がかかることから、複数個のマニホールドを連結し、前記のように各マニホールドの上流部にそれぞれバルブを設けておき、各バルブを順次開閉していくことにより、各マニホールドから順次噴射するようにしておくことが好ましい。
【0031】
本発明のピックルインジェクターにおける圧力制御部は、注入圧力の制御を行う機構を有しているものであればどのようなものでもよいが、高圧液発生部での圧力を制御する手段を有するもの、バルブから下流の高圧配管中や噴出部の圧力を制御する手段を有するもの、及びこれらを組み合わせて制御するものに大別することができる。
【0032】
高圧液発生部での圧力を制御する手段を有するものとしては、例えばプランジャーポンプのプランジャーの駆動を、サーボモータ、ステッピングモータ、あるいはインバータを有する3相モータを使用してモータの回転数を制御することにより行い、高圧液発生部の出力、すなわち注入圧力の制御を行うものや、油圧シリンダ、水圧シリンダ、エアシリンダ等のピストンの駆動を、可変調節バルブ等を用いて流体圧を制御することにより行い、高圧液発生部の出力、すなわち注入圧力の制御を行うものを例示することができる。
【0033】
バルブから下流の高圧配管中の圧力を制御する手段を有するものとしては、高圧液発生部の出力を一定にして、高圧配管の途中に1ないし2以上の圧力調整バルブを設けるもの、アクチュエータを用いて高圧配管の途中の圧力調整バルブを可動させるもの、圧力を吸収するピストンシリンダ等のバッファーが高圧配管に連通する分岐管の端部に設けられたものなどを挙げることができ、また噴出部の圧力を制御する手段を有するものとしては、高圧液発生部の出力を一定にして、ノズルの孔径や噴射部に連結するノズル数を変化させるものを挙げることができる。
【0034】
また、必要に応じて、高圧液発生部での圧力を制御する手段とバルブから下流の高圧配管中や噴出部の圧力を制御する手段とを組み合わせて制御することができるが、いずれにしても制御の簡便性・正確性及び多様な圧力制御を可能にする点から、サーボモータ等を用いて、モータの回転数を制御する方式が望ましい。
【0035】
例えば、モータとドライバとプログラマブルコントローラ(PLC)から構成されているサーボモータを用いる場合について説明すると、ドライバは、PLCと接続され、モータの運転状態のPLCへの出力とPLCの指令を受けてモータの駆動を行う。モータはドライバがPLCより受けたパルス数に比例して回転を行い、そのパルスの速さ(時間的密度)に応じて回転速度を変化させる。そして、サーボモータにより高圧ポンプを駆動する場合、概略、液体の流量はモータの回転数(位置決め)に比例し、液体の圧力はモータの回転数に比例することになる。
【0036】
肉塊中で均一な分散状態を得るためには、本発明のピックルインジェクターを用いて、高圧の初発注入圧力で注入を開始し、注入しながら注入圧力が初発注入圧力から徐々に一定の圧力下降速度で低圧又はゼロまで下降させることが望ましい。初発注入圧力は、食肉塊の物性(赤身と脂肪の割合、肉の硬さ、骨の有無等)、食肉塊の肉厚・形状、液状物質の物性(溶質又は分散質の分子量、粘度、肉成分との反応性の有無等)、直進水流噴射ノズル先端と食肉塊との距離等によっても種々調整可能であるが、通常7〜500kg/cm2 、望ましくは150〜350kg/cm2 の範囲に設定される。
【0037】
初発注入圧力が7kg/cm2 未満の場合、肉塊の応力よりも注入圧力が低いため、肉塊中に十分分散せず、逆に初発注入圧力が500kg/cm2 を超えると、比較的高い圧力を発生するポンプが必要になる。したがって、通常使用される肉の厚さや、肉塊中での分散、損傷等を考慮した場合、初発注入圧力150〜350kg/cm2 の範囲で種々設定することが好ましく、本発明のピックルインジェクターにおける高圧液発生部は、500kg/cm2 までの範囲で種々の圧力を付与する能力を有するものが望ましい。例えば、食肉塊の物性は肉への注入抵抗に大きく関与し、食肉の由来や部位により、その応力は約7kg/cm2から26kg/cm2 程度までばらついており、従来の多針型のピックルインジェクターの注入圧力は高くても12kg/cm2 程度であるから、これが肉の由来や部位の違いによる注入の不均一の原因となっていたが、本発明の食肉塊への液状物質の均一分散インジェクション方法においては、高い注入圧力(直流水流噴射圧力)を使用するため、肉の注入抵抗の差による、注入方向及びそれと直交する方向への不均一分散という問題は払拭される。また、食肉塊をピックルインジェクターの噴射部のマニホールドにより一定の力で押さえつけることにより、均一分散の精度がさらに上昇する。
【0038】
液状物質が肉塊を通り越して肉塊の外に噴出したり、逆に液状物質が充分に末端まで注入分散しないのを防止するためには、押圧ローラー等を用いて肉厚を予め一定にする方法もあるが、直進水流噴射ノズルからの液状物質の初発注入圧力を調節することによって、液状物質の注入深度を制御することができるので、本発明のピックルインジェクターに肉厚測定部を設け、測定値に基づいて初発注入圧力を算出し、その後の圧力制御を行う工程をも含めて全て自動化しておくこともできる。肉厚測定部としては、肉厚の自動測定機構を有するものが望ましく、例えば食肉塊の上下面の距離を測定する肉厚の自動測定機構としては、ロボットハンドの先端に設けられたノズルを肉塊に当接させポテンショメータの変位により肉厚を自動的に計測する方式や、光センサーを用いて肉厚を自動的に計測する方式があり、また画像処理によって肉厚を自動的に算出する方式等を採用することもできる。そして、肉厚の自動測定は、液状物質を食肉塊に注入する前に行ってもよいが、上記ロボットハンドの先端に設けられたノズルを利用して計測する場合のように、注入と同時に行ってもよい。
【0039】
また、肉厚が一定な食肉塊や物性が一定な食肉塊の場合など、予め初発注入圧力を設定しておくこともできる。特に、結合組織からなる硬い膜状の層が存在する外モモや肩ロース等の食肉塊や、赤身と脂肪が交互に層状となっており、結合組織からなる硬い膜状の層が存在するバラ肉等の食肉塊の場合は、液状物質が肉塊を通り越して肉塊の外に噴出するように初発注入圧力をあらかじめ設定することもできる。例えば、ベーコンの原料であるバラ肉の場合、従来の多針型ピックルインジェクターでは、結合組織からなる硬い膜状物により、液状物質をそれ以遠に浸透させることができないばかりか、液状物質をむしろ分散させる必要のない脂肪の層部分に溜まった液状物質により、柔らかい脂肪の層が膨らむ等の不都合があったが、本発明によると、その応力が小さい脂肪の層部分にはあまり分散せず、硬い膜状物の層以遠も含め、赤身の層部分全体に液状物質が均一に分散した優れたベーコンが得られる。
【0040】
本発明においては、高圧の初発注入圧力で直進水流噴射ノズルから噴射開始された液状物質の注入圧力が低圧又はゼロに到達するまでの注入時間を制御・調節することによって、液状物質の注入量を制御することができる。注入圧力が低圧又はゼロに到達するまでの注入時間は、肉質、液状物質の物性等によって種々設定しうるが、通常0.05〜10秒、好ましくは0.1〜5秒、より好ましくは0.1〜2秒に設定される。
【0041】
注入時間が0.05秒未満の場合は、必要な圧力まで到達しなかったり流量が少なく肉塊中での分散が不十分になるおそれがある。また、10秒を超えると注入に時間がかかり、注入量は増加するが、肉塊中における液状物質の保持力には限界があるため、注入時に注入箇所から漏出する液状物質が増加し、注入率の精度が悪くなる傾向がある。
【0042】
本発明において、「注入圧力が変化するように注入圧力を制御しながら液状物質を注入する」とは、高圧の初発注入圧力での注入の開始から終了までの間、上記の注入圧力を制御しながら液状物質を注入することをいい、高圧配管に設けられたバルブの開放後、注入圧力を制御することなく液状物質を自然に任せて注入する場合や、注入に先立って孔径の異なるノズルに交換して注入圧を予め変更する場合は除かれる。
【0043】
本発明においては、注入圧力を、ゼロ又は低圧に漸次下降、好ましくは漸次連続的に下降させるように変化させながら、直進水流噴射ノズルから液状物質を注入することが、液状物質を食肉塊へ均一に分散させる上で望ましい。直進水流噴射ノズルを用いると、肉塊中への液状物質の注入及び分散の特性として、ある初発注入圧力に応じてある深度まで注入された液状物質は、肉組織の抵抗により横方向へ分散し、注入圧力が漸次下降するとその注入圧力に見合った注入深度となり、その深度における肉組織の抵抗により、横方向に分散する。かかる現象が注入深度の減少と共に繰り返し生じ、肉塊の底部から表面まで液状物質が均一に分散されていくことを見出した。したがって、注入圧力を低圧又はゼロに漸次下降させると、注入した液状物質の均一分散性に優れた製品が得られる。なお、肉塊の特定部位に液状物質を分散させる目的等の観点から、注入圧力を、低圧又はゼロに漸次連続的に下降させることなく、段階的に下降させることもできる。
【0044】
液状物質を注入しながら注入圧力の制御を行うことなく、従来行われていたように、高圧の初発注入圧力からバルブを開放すると、注入圧力は急激に低下し、その後緩やかに低下する。それに伴い液状物質は急激に低下した深度帯では殆ど分散せず、緩やかに低下する深度帯に多く滞留することになる。肉塊中で均一な分散状態を得るためには、本発明のように、注入しながら注入圧力を、前記サーボモータ等を用いたモータの回転数制御等を利用して制御し、高圧の初発注入圧力から徐々に一定の圧力下降速度で低圧又はゼロまで下降させることが必要である。
【0045】
注入深度は注入圧力の最高値に比例し、注入量は注入時間に比例するので、例えば一定のノズル間隔で等密度に注入した場合、同一の圧力下降速度であれば肉塊が厚くなると初発注入圧力は高く設定し、それに比例して注入時間が長くなるため、注入量は多くなる。逆に、肉塊が薄くなると初発注入圧力は低く設定し、それに比例して注入時間が短くなるため、注入量は少なくなる。
【0046】
また、同じ厚さの肉塊に対して一定のノズル間隔で等密度に注入した場合、圧力下降速度を上げると注入時間が短くなり注入量も少なくなる。その結果、注入率が低下するが、逆に、圧力下降速度を下げると注入時間が長くなり注入量も多くなる。その結果、注入率が増加する。したがって、圧力下降速度を変化させることにより、単位時間当たりの注入量が変化するので、圧力下降速度を調節することにより注入率を制御することが可能となる。これらの制御は、圧力を調節する手段により行われるが、該圧力調節の作動はコンピューター及びアクチュエーターで自動的に作動させることができる。
【0047】
本発明においては、肉塊中に分散しにくい物質であっても均一に注入分散させることができる。肉塊中に分散しにくい物質としては、酵素、微生物(乳酸菌、酵母等)、植物タンパク質等の高分子物質や食肉を構成する物質との反応性が高い物質等があり、肉塊中に注入された後移動しにくく、力学的刺激や静置期間等の手段を設けても分散しにくいものである。しかし、本発明の均一分散インジェクション方法では、注入最高圧力が、前記の多針型インジェクション方法に比べて高く、また、圧力下降速度を制御することにより、これら分散しにくい物質をも肉塊中に均一に分散させることができる。
【0048】
本発明のピックルインジェクターは、ノズル間隔を10mm以下、例えば5.6mmと狭くして注入することができるので、高密度の均一な注入が可能となり、初発注入圧力を調節することにより注入深度を制御することができるため、液状物質が肉塊に注入された時点で均一に分散されており、肉塊中で分散しにくい物質も注入と同時に肉塊全体に均一に分散する。
【0049】
本発明のピックルインジェクターを用いて肉塊中へ液状物質を注入分散させる場合、複数の噴射部、例えば複数の直進水流噴射ノズル先端を、搬送コンベア等からなる搬送部により間欠的に搬送されてくる搬送トレー内の食肉塊に当接させ、食肉塊を噴射部で押さえた状態で液状物質を直線的に噴射させて注入し、搬送トレーにより食肉塊の横方向への膨張を防止したり、食肉塊の両面から液状物質を注入することが望ましい。また、食肉の塩漬又は調味に用いる場合、直進水流噴射ノズルと注入対象物である肉塊との間にクリアランスを設けると直進性が強すぎて分散が悪くなる。しかし、クリアランスが大きいほど空気の混入割合が高くなり、硬い赤身肉などに適用すると、テクスチャーの変わった肉製品が得られる場合もある。
【0050】
本発明のピックルインジェクターは、食肉塊に液状物質を注入する場合の注入位置を決める機構、すなわち注入位置決め機構を有している。注入位置決め機構としては、噴射部が少なくとも食肉塊の搬送方向において固定されたものと噴射部が少なくとも食肉塊の搬送方向に移動するものとに大別することができる。
【0051】
噴射部が少なくとも食肉塊の搬送方向において固定されている場合、注入位置決め機構としては、従来の多針型インジェクターにおけると同様に、食肉塊を該固定噴射部のある所定位置まで間欠的に搬送してくるコンベアを例示することができ、食肉塊が静止状態にあるときに液状物質を注入する。そして、肉厚が一定の場合は該固定噴射部を上下動させる必要はないが、通常は食肉塊が所定位置まで搬送され静止状態にあるときに、該固定噴射部が下降して食肉塊の上面からあるいは該固定噴射部が上昇して食肉塊の下面から液状物質を注入する。
【0052】
他方、噴射部が移動する場合、注入位置決め機構としては、その先端に噴射部を有するロボットハンドを例示することができる。ロボットハンドは、連続又は間欠的に搬送されてきた食肉塊に応じて、その噴射部を有する先端部がコントローラ等で制御され、X,Y,Z軸動が可能である(上下左右前後方向に自由に可動しうる)ものが望ましい。このようなロボットハンドを有するピックルインジェクターを用いて肉塊中へ液状物質を注入分散させる場合、1又は2以上の方向から注入することができる。注入の方向については、上から下への方向に限定されるものではなく、ノズルの位置や肉塊の載置台を順次移動・回転することにより、横から又は下からなど1又は2以上の方向から注入することができる。
【0053】
また、X,Y,Z軸動に加えて、食肉塊のどの面からも注入可能なようにその先端部が全方位に向けることができるロボットハンドを用いることもできる。このようなロボットハンドを有するピックルインジェクターを用いると、食肉塊の形状を光センサー等により自動的に計測し、計測した肉塊の形状に応じて、肉塊の載置台を順次移動・回転することなく、2方向以上の方向から同時又は順次注入することができる。
【0054】
そして、上記噴射ロボットハンドの先端部に、食肉塊搬送用手段を設けておくと、ロボットハンドで食肉塊を移動させながら液状物質を注入し、注入終了と同時に次の処理工程へ処理済食肉塊を搬送するようにすることもできる。このロボットハンドの先端部に食肉塊搬送用手段を設けて食肉塊を移動させながら液状物質を注入する場合、肉固定用スライドガイドで、注入時に両側から肉塊を固定してから注入することが、肉に損傷を与えないという観点から望ましいが、肉の筋線維等の組織を切断したいような場合には肉塊を連続的に移動しながら直進水流を注入してもよい。このような食肉塊搬送用手段としては、搬送用の爪や、搬送用の吸引部を有するものを例示することができるが、搬送の確実性から搬送用爪を有するものが好ましい。
【0055】
そして、これらのロボットハンドの注入位置決め機構や搬送用爪等による移動しながらの注入処理は、予め設定されたプログラムや、食肉塊の形状等に基づくプログラムにより運転することが好ましい。
【0056】
上記のように構成されたピックルインジェクターは、注射針を使用しないことから、ノズルの間隔を従来の多針型ピックルインジェクターに比較し格段に狭めることができ、かつ、噴射部の構成として分岐配管を平行にしたマニホールドを1乃至複数個連結し、1つの駆動で複数の平行な噴射を高密度で行うことを実現したので、1回の処理で液状物質を効率良く肉塊中に注入すると同時に分散させることができる。
【0057】
また、本発明に用いられるピックルインジェクターは高圧水発生装置を用いて、肉の抵抗圧力よりも格段に高い圧力で注入するので、硬い肉も軟らかい肉も同様に均一に注入することが可能であり、従来の多針型ピックルインジェクターの場合に問題となっていた肉質の注入抵抗の差は、ほとんど影響しない。
【0058】
本発明の場合、針を使用しないため針による肉塊内部の微生物の汚染がなく、注入液が注入と同時に肉中に緻密に分散するため、注入時に肉からの注入液の漏出がほとんどない。従って、注入により微生物に汚染された注入液を使用することなく製造可能となる。このように、本発明によると、注入液の肉中での分散が均一であり、バラツキも小さいため、安定した品質で、かつ安全性についても、細菌数、水分活性値において、食品衛生法の規格基準に合致するものが得られる。
【0059】
【実施例】
以下、実施例を挙げてこの発明をさらに具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明のピックルインジェクターを用いて、豚バラ肉に対してピックル液を注入し、ベーコンを製造した場合について、図1〜6を参照して説明する。図1は2つの噴射部を有するピックルインジェクターを備えた本発明の食肉加工装置の長手方向の概略縦断面図である。図2は該食肉加工装置の短手方向の概略縦断面図である。図3は該食肉加工装置の反転手段による搬送トレーの反転の様子を示す説明図である。図4は同じく該食肉加工装置の反転手段による搬送トレーの反転の様子を示す説明図である。図5は同じく該食肉加工装置の反転手段による搬送トレーの反転の様子を示す説明図である。図6は該食肉加工装置の概略上面図である。
【0060】
図1〜6において、1は搬送トレー、2は搬送コンベア、3は第一噴射部、4は第二噴射部、5はマニホールド、6は直進水流噴射ノズル、7はバルブユニット、8はバルブ、9は反転装置、10はトレー昇降アーム、11は搬送トレーの側面突出部、12はトレー昇降シリンダ、13は反転機構、Mは豚バラ肉、M1は豚バラ肉の既注入面、M2は豚バラ肉の未注入面をそれぞれ示す。
【0061】
搬送トレー1に収容された豚バラ肉Mは、間欠的に移動する搬送コンベア2により第一噴射部3の下に搬送されてくると、第一噴射部3が下降し、第一噴射部3に設けられた8個のマニホールド5の複数の直進水流噴射ノズル6の先端が搬送トレー1内の豚バラ肉Mを押さえつけた状態で、バルブユニット7の各バルブ8が順次開閉されていき、豚バラ肉Mの片面全体にピックル液が注入された。注入後の豚バラ肉Mが収容された搬送トレー1は、搬送コンベア2により反転ステーションまで搬送される(図3参照)。
【0062】
搬送トレー1が搬送コンベア2により反転ステーションまで搬送されると、反転装置9のトレー昇降アーム10が閉じて搬送トレー1の側面突出部11を支持した状態でトレー昇降シリンダ12により、下向きで待機している空の搬送トレー1と当接するまで上方に持ち上げられ(図4参照)、トレーチャックでクランプした状態で反転機構13により反転される(図5参照)。上記空の搬送トレーに豚バラ肉の既注入面M1が下に、未注入面M2が上にくるように移載された後、トレー昇降シリンダ12によりもとの反転ステーションの位置まで下降する。この搬送トレー1に収容された豚バラ肉Mは、間欠的に移動する搬送コンベア2により第二噴射部4の下に搬送され、同様にピックル液が未注入面M2の全面に注入された。
【0063】
ピックル液の注入条件は、初発注入圧力を350kg/cm2 、注入時間を約0.2秒とし、バルブ開放後の圧力の制御をしなかった場合と圧力を制御した場合との比較を行った。図7はバルブ開放後の圧力の制御をしなかった場合の注入2回分の注入圧力の変化を表す図であり、図8はバルブ開放後の圧力を制御した場合の注入2回分の注入圧力の変化を表す図である。
【0064】
図7に示すように、バルブ開放後の圧力の制御をしなかった場合、バルブ開放直後に圧力が急激に低下し、その後の圧力下降速度が遅くなった。注入終了直後の豚バラ肉を切断し、断面を評価したところ、注入部分の中心部にピックル液が滞留しており、その前後は殆ど分散が見られなかった。また、注入後常法に従い製造したベーコンにおいてもピックル液の滞留が認められ、ピックル液が分散していない部分は断面の発色が不十分であった。
【0065】
他方、図8に示すように、バルブ開放後の圧力の制御をした場合、バルブ開放後の圧力下降速度はほぼ一定となり、圧力は徐々に低下した。注入終了直後の豚バラ肉を切断し、断面を評価したところ、注入部分の中心部にピックル液の滞留は認められず、注入部分全体に均一に分散していた。また、注入後常法に従い製造したベーコンにおいてもピックル液の滞留が認められず、全体に均一に発色した高品質の製品が得られ得た。
【0066】
表1は、豚バラ肉20枚にピックル液を注入した場合の注入率を示す。バルブ開放後の圧力の制御をしなかった場合、ピックル液の滞留部分よりのピックル液の漏出が認められたため、注入率のバラツキが大きかったが、バルブ開放後の圧力の制御をした場合、注入率のバラツキが極端に小さくなった。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては、次に列挙するような効果がある。
1.肉塊中へ液状物質を従来に比べて優れた均一さで注入分散させることが可能となり、肉質の注入抵抗の差による液状物質の注入の不均一を解決することができる。
2.肉塊中で分散の悪い物質を物理的に分散させることに利用することができ、ピックル液組成に今まで利用できなかった物質を使うことができる。
3.注入直後で、均一な分散がほぼ完了しているため、タンブリングマシンやマッサージマシン等で力学的な刺激を長時間与える必要がなく、塩漬時間又は調味時間を大巾に短縮することが可能となる。
4.初発注入圧力を調節することにより注入深度を制御する方法が得られたため、薄い肉から厚いブロック肉まで液状物質を均一に注入分散させることが可能となり、また、無針型の為、多針型では不可能もしくは不具合であった魚肉や骨付き、皮付きの原料肉に対しても、液状物質を均一に注入分散させることが可能となった。
5.初発注入圧力を調節することにより注入深度を制御する方法と、注入時間を調節することにより注入量を制御する方法が得られたため、圧力下降速度を調節することにより注入率を制御することが可能となり、注入率の異なる多規格の製品を製造することが可能となった。
6.先に開発した前記のピックルインジェクターに比べて安価な部材・部品を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の2つの噴射部を有するピックルインジェクターを備えた本発明の食肉加工装置の長手方向の概略縦断面図である。
【図2】本発明の2つの噴射部を有するピックルインジェクターを備えた食肉加工装置の短手方向の概略縦断面図である。
【図3】本発明の2つの噴射部を有するピックルインジェクターを備えた食肉加工装置の反転手段による搬送トレーの反転の様子を示す説明図である。
【図4】本発明の2つの噴射部を有するピックルインジェクターを備えた肉加工装置の反転手段による搬送トレーの反転の様子を示す説明図である。
【図5】本発明の2つの噴射部を有するピックルインジェクターを備えた食肉加工装置の反転手段による搬送トレーの反転の様子を示す説明図である。
【図6】本発明の2つの噴射部を有するピックルインジェクターを備えた食肉加工装置の概略上面図である。
【図7】図7はバルブ開放後の圧力の制御をしなかった場合の注入2回分の注入圧力の変化を表す図である。
【図8】図8はバルブ開放後の圧力を制御した場合の注入2回分の注入圧力の変化を表す図である。
【符号の説明】
1 搬送トレー 2 搬送コンベア
3 第一噴射部 4 第二噴射部
5 マニホールド 6 直進水流噴射ノズル
7 バルブユニット 8 バルブ
9 反転装置 10 トレー昇降アーム
11 搬送トレーの側面突出部 12 トレー昇降シリンダ
13 反転機構 M 豚バラ肉
M1 豚バラ肉の既注入面 M2 豚バラ肉の未注入面
Claims (9)
- 予め所定の圧力に高められている高圧の液状物質を、直進水流噴射ノズルを用いて食肉塊へ注入するインジェクション方法であって、高圧の初発注入圧力で注入を開始し、その後、注入圧力がゼロ又は低圧まで漸次下降するように注入圧力を制御しながら液状物質を注入することを特徴とする食肉塊への液状物質のインジェクション方法。
- 配管内の予め所定の圧力に高められている高圧の液状物質を、該配管に設けられたバルブを開き、高圧の初発注入圧力で注入を開始し、その後注入圧力を低圧又はゼロまで下降させながら注入することを特徴とする請求項1記載の食肉塊への液状物質のインジェクション方法。
- 初発注入圧力の高圧化と注入圧力の制御とをサーボモーターを用いて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の食肉塊への液状物質のインジェクション方法。
- トレー内の食肉塊を複数の噴射部で押さえつけ、各噴射部から順次液状物質を注入し、トレーにより食肉塊の横方向への膨張を防止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の食肉塊への液状物質のインジェクション方法。
- 食肉塊の両面から液状物質を注入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の食肉塊への液状物質のインジェクション方法。
- 請求項1〜5記載の食肉塊への液状物質のインジェクション方法を用いることを特徴とする食肉製品の製造方法。
- 食肉塊に予め所定の圧力に高められている高圧の液状物質を注入する装置であって、高圧液発生部と、直進水流噴射ノズルを有する液状物質の噴射部と、該噴射部から食肉塊へ液状物質を注入するに際し、高圧の初発注入圧力で注入を開始するためのバルブと、液状物質を注入しながら、注入圧力がゼロ又は低圧まで漸次下降するように注入圧力の制御を行うことができる圧力制御部とを備えたことを特徴とするピックルインジェクター。
- 単流を複流に分岐するマニホールドが複数個連結された噴射部と、液状物質の噴射部と、それぞれ独立して開閉することができる複数のバルブからなるバルブユニットと、モーターの回転数を制御することにより注入圧力の制御を行うことができる圧力制御部とを備えたことを特徴とする請求項7記載のピックルインジェクター。
- 食肉塊の搬送部と、該搬送部の上方に配置された2つの噴射部を有する、請求項7又は8記載のピックルインジェクターと、該ピックルインジェクターの2つの噴射部間の搬送部に設けられた食肉塊反転手段とを備えた食肉加工装置。
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