JP3167285B2 - 食肉製品の製造方法 - Google Patents

食肉製品の製造方法

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JP3167285B2 JP16296497A JP16296497A JP3167285B2 JP 3167285 B2 JP3167285 B2 JP 3167285B2 JP 16296497 A JP16296497 A JP 16296497A JP 16296497 A JP16296497 A JP 16296497A JP 3167285 B2 JP3167285 B2 JP 3167285B2
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  • Meat, Egg Or Seafood Products (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、豚肉、牛肉、家禽
肉等の食肉製品、例えば加熱食肉製品や生ハム等の非加
熱食肉製品を短期間で製造する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】食肉製品は、加熱殺菌を行う加熱食肉製
品と加熱殺菌を行わない非加熱食肉製品に大別できる。
生ハムは非加熱食肉製品に属し、食塩等を用いてその保
存性を高めている。そして、生ハム製造のための塩漬法
として、我が国食品衛生法上認められている方法には、
乾塩漬法と湿塩漬法と1本針注入法とがある。一般的
に、乾塩漬法では、原料食肉を整形後、食塩等を直接擦
り込み、冷蔵庫中に2〜3週間静置した後、必要に応じ
て脱塩し、以後3〜7日間燻煙・乾燥していた。湿塩漬
法では、原料食肉を整形後、食塩等を水に溶かした塩漬
け液に約2週間漬け込み、必要に応じて脱塩し、以後3
〜7日間燻煙・乾燥していた。塩漬け液の1本針注入法
では、原料食肉を整形後、食塩等を水に溶かした塩漬液
を1本針で注入し、7〜10日間冷蔵庫中で静置した
後、3〜7日間燻煙・乾燥していた。
【0003】上記塩漬法の内、乾塩漬法では、上記のよ
うに塩漬期間が2〜3週間と長く、冷蔵庫スペースを多
くとるばかりでなく、製品の塩分も高くなりがちで、か
つ塩分の個体毎のバラツキも大きい。湿塩漬法では、塩
漬期間は乾塩漬法よりも多少短縮されるものの約2週間
と長く、塩分の個体毎のバラツキも乾塩漬法と同様に大
きい。1本針注入法によると、生ハムの製造期間が約2
週間であり、その製造期間が3〜4週間である乾塩漬法
や湿塩漬法に比べて、製造期間の点では優れているもの
の、手作業で肉塊にまんべんなく塩漬け液を所定量1本
針で注入しなければならないことから生産性が悪い上
に、その作業には熟練を要し、到底効率的な生産法とい
いうるものではなかった。
【0004】また、生ハムについては、塩漬期間を短縮
するために、豚肉塊と塩漬ピックルとをマッサージ機械
に投入してマッサージングを行い、豚肉塊に塩漬ピック
ル成分を浸透させ、その後常法どおり製造することによ
り、表面と中心部との塩分勾配が小さく、塩分濃度が低
く肉質が柔らかい生ハムを製造する方法(特開平7−1
49号公報)、製品内の食塩濃度のバラツキの少ない生
ハムを得るために、高食塩濃度で塩漬した豚原料肉の塩
抜きを食塩濃度1〜4%塩水の循環で行う方法(特開平
6−141763号公報)及び生ハム、生ベーコン等の
非加熱食肉製品を短期間で製造するために、畜肉塊を、
塩漬剤及び畜肉塊100重量部に対して5〜30重量部
の糖類を用いて塩漬し、常法により乾燥及び燻煙を行う
非加熱食肉製品の製造法(特開平6−284877号公
報)が知られている。
【0005】ところで、一般に、食肉加工には食肉に塩
漬剤や調味料を均一に分散させるニーズがあり、多針型
のピックルインジェクターを使用することが、加熱食肉
製品では近年主流となっている。多針型のピックルイン
ジェクターを使用する方法により、ピックル液あるいは
調味液に含まれる添加物を以前より均一に分散させた製
品を製造できるようになったが、注入直後は、針の刺さ
った部分に液が溜まった状態であり、タンブリンマシン
やマッサージマシン等で力学的な刺激を与え、かつ、ピ
ックル液あるいは調味液が肉塊中に浸透し、均一に分散
するまで放置しておいてからでないと、次の工程に進む
ことができないというのが現状である。したがって、ロ
ースハムやボンレスハム等の塩漬に何日もかかるという
問題があった。
【0006】しかも、ピックル液の注入圧はその構造上
12kg/cm2 程度が限度であり、調味液の中に含ま
れる物質のうち、食塩のように低分子のものは、肉塊中
で移動しやすいが、高分子のものや、食肉を構成する物
質との反応性の高いものは、肉塊中で移動しにくく、そ
の結果として分散が悪いという欠点があった。
【0007】現状の多針型のピックルインジェクターの
改良を考えた場合、多針型のピックルインジェクターの
針の密度を更に高めることが必要であるが、針自体細い
ものでも直径約3mmであり、針を固定する治具の幅も
あり、現状の針の間隔である12〜25mmを改善する
ことは難しい。また、万一改善できたとしても、針の密
度をあげると肉への針の差し込みと取り出しの抵抗が大
きくなり、実際に装置を稼動することが難しくなる。し
たがって、多針型のピックルインジェクターによる注入
では、液を短時間により均一に肉塊中に分散させるとい
う目的を達成することは不可能であった。
【0008】また、大きな肉塊に従来の多針型のピック
ルインジェクターで注入する際、一塊の肉であっても、
部位によって硬さが異なり、一様に注入しても肉質の注
入抵抗の差で、均一に注入されないという欠点があっ
た。例えば、実公昭60−11799号公報及び特開平
6−209693号公報には、肉質の注入抵抗の差によ
るピックル液注入の不均一を解決する方法が開示されて
いるが、この方法では精度の高い結果を得ることは困難
であり、満足できるものではなかった。
【0009】他方、無針型ピックルインジェクター及び
インジェクション方法のハムなどの食肉加工品への応用
については次のような先行技術が知られている。特開平
5−244906号には、スプレイノズルを用いて高圧
下に無針型のピックルインジェクターにより肉片の中に
塩水等の液状物質を導入する方法が開示されている。該
ピックルインジェクターは、圧力ローラとコンベアで肉
塊の厚みを一定にしておき、下からスプレイノズルでイ
ンジェクションする構造であり、ノズル間隔が20mm
以内で、厚さ20mmの肉に液状物質を注入することが
可能である旨記載されているものの、該ピックルインジ
ェクターは拡散型のスプレイノズルを使用しているた
め、該公報の図5に示されるように、液状物質が同心円
状に広がり、注入されない部分や液が重複する部分が発
生し、均一に注入分散することができる方法とはいい難
く、また、該ピックルインジェクターは、肉の厚みを押
し潰して薄くした後インジェクションする構造であり、
同心円状に広がる高いスプレー圧力は肉に損傷を与える
ため、肉の厚みが厚いものには使用できないという欠点
がある。また、この方法では圧力ローラによって、肉塊
の割れや崩れ等が生じるおそれがある。したがって、こ
の導入方法では、圧力ローラで例え厚みを減らしたとし
ても、厚みが30mmを超えるような豚モモ肉やロース
肉に適用することは困難である。
【0010】米国特許第2418914号明細書には、
屠殺後短時間の内に肉を柔らかくするために、脂質物質
や少量の水からなる肉質柔軟化剤等の可食性粒子を高圧
下高速で肉表面にスプレイし、肉の深部まで浸透させる
と共に、肉の筋線維を機械的に破壊することが開示され
ているが、その可食性粒子の分散状況等の詳細について
は記載されていない。
【0011】米国特許第3016004号明細書及び米
国特許第3436230号明細書には、肉表面にノズル
の先端を接触させて保存液等の液体を高圧で注入し、肉
線維を壊すことなく、液体を分散させる方法が開示され
ており、具体例として、ベーコンベリーの赤身と脂肪
に、赤身注入ノズル及び脂肪注入ノズルを備えた自動注
入機械を用いて、高速度液体流を注入することが記載さ
れている。
【0012】米国特許第3769037号明細書及び米
国特許第3649299号明細書には、肉中への柔軟化
剤及び/又は香味付与剤の液の浸透深度を効果的に制限
するために、3方向からの直進水流を焦点でぶつかり合
わせ、エネルギーを消失させ、拡散させることで浸透深
度を制限する方法が記載されている。
【0013】米国特許第3675567号明細書には、
上記米国特許第3769037号明細書及び米国特許第
3649299号明細書記載のインジェクションノズル
を肉と同じ速さで移動させながら、電気タイマーにより
素速くオン−オフしうるソレノイドバルブの制御によ
り、1000〜5000psiの圧力で、柔軟化剤、香
味付与剤等の液を家禽肉に高速で注入する装置が記載さ
れている。
【0014】米国特許第3739713号明細書及び米
国特許第3814007号明細書には、予め定めておい
た値に達するまでノズル通路中の液の圧力を高めてお
き、バルブ解放後、不定形の肉塊に適合する、複数本の
種々の長さのノズル通路の先端部から、素早く一気に液
体を噴射させ、液漏れが生じることがないインジェクシ
ョン装置が開示されている。
【0015】米国特許第5053237号明細書には、
低級肉の柔らかさや官能的品質を向上させるために、肉
から一定の距離だけ離したノズルから、移動している肉
に、バインダーとしての植物性油又は脂肪等が肉組織中
に充分浸入しうるような圧力で注入し、肉の結合組織を
横方向及び縦方向に切断しうる肉の処理法が記載されて
いる。
【0016】米国特許第5112270号明細書には、
ウオータージェット屠殺を行うために、超高圧(300
0〜4000kg/cm2)で頭蓋骨を破壊することが
記載されている。
【0017】米国特許第5200223号明細書には、
配管中を連続的に搬送されている肉に、高圧ノズルか
ら、短時間の細いジェットの形で液体を間欠的又は周期
的に噴射し、該液体を肉の与えられた深さまで注入する
方法が記載されている。
【0018】米国特許第5176071号明細書には、
肉に損傷が生じない手段の改善をするために、押圧ロー
ラーによってコンベア上の肉塊を予め決められた厚さに
平たくすると共にスプレーノズルに接触せしめ、肉の外
面にインジェクションストリームを噴霧することなく、
調味液等を均質に分散させる方法及び装置が記載されて
いる。
【0019】しかしながら、上記の無針型ピックルイン
ジェクター及びそれを用いたインジェクション方法は、
肉表面を傷つけるものであったり、適用対象となる肉塊
の肉厚が限定されるものであったりして、汎用性がな
く、また何よりも、種々の肉厚の原料肉を対象とした実
用的なレベルにおいて、液状物質を均一に分散させるこ
とができるとは到底いいうるものではなかった。そし
て、直進水流と注入しながらの圧力制御とを組み合わせ
た均一分散インジェクション方法については知られてい
なかった。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
従来の多針型のピックルインジェクターや、無針型ピッ
クルインジェクターを用いたインジェクション方法にお
ける問題を解決し、食肉の厚みが薄いものばかりでな
く、厚い原料肉に対しても、またその形状や大きさが種
々異なる原料肉に対して、肉質を損なうことなく、効率
良く、連続的にピックル液や調味液を肉塊中に均一に分
散させ、タンブリングマシンやマッサージマシン等を長
時間使わなくても塩漬や調味を達成することができ、更
に肉質の注入抵抗の差が有ってもピックル液や調味液を
均一に分散させることができる無針型ピックルインジェ
クターを用いた食肉製品、特に生ハム等非加熱食肉製品
の製造方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、食肉塊に
ピックル液や調味液を均一に分散させることができる方
法を見出すべく、まず現在その使用が主流である多針型
ピックルインジェクターについて検討をしたが、前記の
ようにその解決策が見当たらなかったので、無針型ピッ
クルインジェクターを使用するインジェクション方法に
ついて、高圧水発生装置と直進水流噴射ノズルを備えた
モデル機械を製作し、検討を始めた。しかし、この種の
無針型ピックルインジェクターに関する公知の知見から
は実用的なインジェクション方法には到達できなかっ
た。そこで、食肉加工用に実際に適用可能な条件を見い
出すべく、上記モデル機械の改良と肉塊中への液状物質
の注入及び分散における特性の基礎的研究に取り組ん
だ。
【0022】(注入深度)肉塊中への液状物質の注入及
び分散の特性として、まず、肉塊中への液状物質の注入
深度(注入時の肉塊表面から、注入された液状物質が肉
塊中に到達した部分までの距離)について豚モモ肉を用
いて検討した。種々の注入圧力や注入時間で実験を繰り
返したところ、注入深度は、通常注入時間には関係せ
ず、注入圧力と相関性があることがわかってきた。そこ
で、圧力に影響するノズルの孔の大きさ等の条件を一定
にして、再度実験を繰り返した。その結果、注入深度と
注入圧力とは、図1に示す関係があることがわかった。
【0023】図1からもわかるように、圧力に影響する
ノズルの孔の大きさ等の条件を一定にしておくと、肉塊
中への液状物質の注入深度と注入圧力の最高値(以下、
「注入最高圧力」という。)との関係は、一次式で表せ
得ることが明らかとなり、注入最高圧力が同一であれ
ば、注入深度が同一であることを見出した。例えば、ノ
ズルの孔の大きさを1000分の3インチと一定にした
場合には、注入深度と注入最高圧力との関係は次の一次
式で示すことができる。 P=30.0H P;注入最高圧力(kg/cm2) H;注入深度(mm)
【0024】この実験から、肉塊中への液状物質の注入
深度を注入最高圧力で制御できることがわかった。その
結果、予め肉塊の厚さを測定しておくと、必要とする注
入最高圧力を算出することができ、注入される液状物質
が肉塊を通り越して肉塊の外に噴出したり、逆に充分に
末端まで注入しえないということを防止することができ
るという知見が得られた。
【0025】(注入量)肉塊中への液状物質の注入及び
分散の特性として、次に、肉塊中への液状物質の注入量
について豚モモ肉を用いて検討した。本発明者らによっ
て改良が加えられた直進水流噴射ノズルを有するピック
ルインジェクターを用い、種々の注入圧力や注入時間で
実験を繰り返したところ、注入量は、単位時間当たりの
圧力上昇量(以下、「圧力上昇速度」という。)が一定
のとき注入圧力には関係せず、注入時間と相関性がある
ことがわかってきた。そこで、注入量と注入時間との関
係を明らかなものとすべく再度実験を繰り返した。その
結果、注入量と注入時間とは、図2に示す関係があるこ
とがわかった。
【0026】図2からもわかるように、肉塊中への液状
物質の注入量と注入最高圧力までの到達時間(以下、
「注入到達時間」という。)との関係は、概ね一次式で
表せ得ることが明らかとなった。注入量は、ノズルの数
やノズルの孔の大きさやポンプの流量などによっても変
わりうるが、例えば、ノズルの孔の大きさを1000分
の3インチ等これらの条件を一定にした場合には、注入
量と注入到達時間との関係は次の一次式で示すことがで
きる。 T=Q/45 T;注入時間(秒) Q;注入量(g) この実験から、注入到達時間が同一であれば、注入量が
同一であることを見出し、肉塊中への液状物質の注入量
を注入到達時間で制御できるという知見が得られた。
【0027】(注入率)次に、肉塊中への液状物質の注
入及び分散の特性として、肉塊中への液状物質の注入率
について検討した。ここで注入率は次の式で示される。 注入率(%)=(肉塊重量+注入液重量)/肉塊重量×
100 直進水流噴射ノズルを有するピックルインジェクターを
用い、注入圧力や注入時間を変化させながら、豚ロース
の肉塊に一定のノズル間隔で等密度に注入して、注入率
を測定するという実験を繰り返したところ、同一の注入
率の場合、注入率は注入最高圧力と注入到達時間とに相
関性があることがわかってきた。そこで、注入最高圧力
が異なるように肉塊の厚みを調整し、注入率が110、
120、130、140%となるように、予め肉塊に注
入して得られた結果をもとに注入到達時間を調整し、各
20個の肉塊に注入した場合の注入最高圧力と注入時間
との関係を調べてみた。その結果、注入最高圧力と注入
時間とは、図3に示す関係を示すことがわかった。
【0028】図3からもわかるように、それぞれの注入
率において、注入最高圧力と注入到達時間との関係を表
す点は直線上に分布した。このことは、注入最高圧力と
注入到達時間の関係から導かれる圧力上昇速度が同一で
あれば、肉塊の厚みに応じて注入最高圧力を変化させる
と、注入時間も変化し、その結果等しい注入率が得られ
ることを意味する。また、この実験により、圧力上昇速
度(図3においては直線の傾きで表されている)を変化
させると、注入率が変化することが判明した。その結
果、圧力上昇速度を調節することにより注入率を制御す
ることが可能であるという知見が得られた。
【0029】本発明者らは、高圧水発生装置と直進水流
噴射ノズルを用いた場合の肉塊中への液状物質の注入及
び分散における特性の基礎的研究から得られた上記知
見、特に、圧力上昇速度を調節することにより注入率を
制御することが可能であるという知見に基づいて、液状
物質を注入しながら注入圧力を制御しうる機構となるよ
うに上記モデル機械に改良を加え、直進水流と注入しな
がらの圧力制御との組み合わせを特徴とする方法を見出
した(特願平9−121924号)。そして、かかる方
法を従来の生ハム製造の塩漬工程に適用したところ、塩
漬期間を大幅に短縮しうると共に、微生物学的にも安全
で、また優れた品質の生ハムを製造しうることを確認
し、本発明を完成するに至った。
【0030】すなわち、本発明は、直進水流噴射ノズル
を用いて食肉塊へ液状物質を注入する食肉製品の製造方
法において、液状物質を注入しながら注入圧力の制御を
行うことを特徴とする食肉製品、特に生ハム等の非加熱
食肉製品の製造方法に関する。
【0031】また、本発明は、必要に応じて食肉塊の物
性や肉厚又は液状物質の物性に適した直進水流噴射圧に
予め調整しておき、直進水流噴射ノズルを望ましくは固
定された食肉塊に当接させ、該直進水流噴射ノズルを用
いて液状物質を注入しながら、注入圧力をゼロ又は低圧
から漸次上昇させる等の変化など、注入圧力の制御を行
うことを特徴とする食肉製品、特に生ハム等の非加熱食
肉製品の製造方法に関する。
【0032】さらに、本発明は、直進水流噴射ノズルを
用いて、食肉塊へ液状物質を注入するに際し、注入圧力
の上昇速度を、例えば100〜20000kg/cm2
秒の範囲で変化させて、食肉塊への液状物質の注入率を
制御することを特徴とする食肉製品、特に生ハム等の非
加熱食肉製品の製造方法に関する。
【0033】
【発明の実施の形態】本発明において、食肉としては、
豚肉、牛肉、家禽肉、馬肉、羊肉及びこれらの内臓肉、
骨付き肉及び皮付き肉、並びに魚肉等を例示することが
でき、食用に供される肉であればどのような肉をも使用
することができる。
【0034】本発明において、液状物質としては、塩漬
用のピックル液の他、調味用の調味液、脂質等の組織改
良剤、天然保存剤、天然色素剤、酵素、微生物等の溶
液、分散懸濁液を例示することができ、直進水流噴射ノ
ズルから噴射しうる液状のものであれば、気体状のガス
を含むものなど、いかなるものでも使用することができ
る。
【0035】本発明において、食肉製品とは、食肉加工
品であればどのようなものでもよいが、例えば食品衛生
法上の分類に従うと、乾燥食肉製品、非加熱食肉製品、
特定加熱食肉製品、加熱食肉製品のいずれかに該当する
ものである。またこの内、非加熱食肉製品とは、食肉塊
の中心まで、例えば60℃で30分間の加熱処理又はこ
れと同等以上効力を有する処理等の加熱殺菌を行ってい
ない食肉製品をいい、例えば、各種原料の生ハムや生ベ
ーコンを例示することができる。
【0036】本発明において、直進水流とは、同心円状
に拡散して噴出することなく、直線状に収束して噴出す
る液状物質の流れをいい、直進水流噴射ノズルとは、直
進水流を噴射させるノズルをいう。また、本発明におい
て、注入圧力とは、直進水流噴射ノズルから噴出された
直後の液状物質の液圧をいい、通常は高圧水発生装置と
直進水流噴射ノズルとの間の配管中の液圧として、例え
ば圧力センサにより測定される。圧力センサを備えるこ
とにより、注入圧力をその設定値に一層正確に調整する
ことができる。
【0037】本発明において、注入圧力の制御を行う手
段としては、高圧水発生装置の出力を、サーボモータや
ステッピングモータを用いて、モータの回転数を制御す
る方法、油圧、水圧、空気圧等の流体圧を用いて液状物
質の圧力を制御する方法を例示することができ、また、
高圧水発生装置の出力を一定にして注入圧力を制御する
方法としては、ノズルの孔の径を変化させる方法、噴射
部に連結するノズル数を変化させる方法、流量調節弁等
を用いて流量を制限する方法、高圧配管に設けられたバ
ルブの開閉速度を調節したり、2以上のバルブの開閉を
調節したりする方法等を例示することができるが、制御
の簡便性・正確性及び多様な圧力制御を可能にする点か
ら、サーボモータ等を用いて、モータの回転数を制御す
る方法が望ましい。
【0038】例えば、モータとドライバとプログラマブ
ルコントローラ(PLC)から構成されているサーボモ
ータを用いる場合について説明すると、ドライバはPL
Cと接続され、モータの運転状態のPLCへの出力とP
LCの指令を受けてモータの駆動を行う。モータはドラ
イバがPLCより受けたパルス数に比例して回転を行
い、そのパルスの速さ(時間的密度)に応じて回転速度
を変化させる。そして、サーボモータにより高圧ポンプ
を駆動する場合、概略、液体の流量はモータの回転数
(位置決め)に比例し、液体の圧力はモータの回転数に
比例することになる。
【0039】本発明において、「液状物質を注入しなが
ら注入圧力の制御を行う」とは、液状物質の注入の開始
から終了までの間に、上記の注入圧力の制御を行う手段
により、注入圧力の制御を行うことをいい、高圧配管に
設けられたバルブの開閉により液状物質を一気に注入す
る場合や、注入に先立って孔径の異なるノズルに交換し
て注入圧を予め変更する場合は除かれる。そして、液状
物質を注入しながら注入圧力の制御を行う本発明の場合
は、通常注入圧力の上昇速度は100〜20000kg
/cm2・秒の範囲に設定される。図4に示される従来の
バルブの開閉によるインジェクション方法における圧力
変化と、図5に示される本発明の方法における圧力変化
とを対比することにより、本発明における「液状物質を
注入しながら注入圧力の制御を行う」ことの技術的意義
がより一層明らかなものとなる。
【0040】本発明においては、直進水流噴射ノズルか
ら液状物質を注入しながら、注入圧力を、ゼロ又は低圧
から漸次上昇、好ましくは漸次連続的に上昇させるよう
に変化させることが、液状物質を食肉塊へ均一に分散さ
せる上で望ましい。直進水流噴射ノズルを用いると、肉
塊中への液状物質の注入及び分散の特性として、注入さ
れた液状物質は、肉組織の抵抗によりある一定の深度で
横方向へ分散し、注入圧力が漸次上昇するとその注入圧
力に見合った注入深度となり、その深度における肉組織
の抵抗により、横方向に分散する。かかる現象が注入深
度の増加と共に繰り返し生じ、肉塊の表面から底部まで
液状物質が均一に分散されていくことを見出した。した
がって、注入圧力をゼロ又は低圧から漸次上昇させる
と、注入した液状物質の均一分散性に優れた製品が得ら
れる。なお、肉塊の特定部位に液状物質を分散させる目
的等の観点から、注入圧力を、ゼロ又は低圧から漸次連
続的に上昇させることなく、段階的に上昇させることも
できる。
【0041】液状物質を注入しながら注入圧力の制御を
行うことなく、従来行われていたように、最初から、急
激に注入圧力を上げると直進性が強くなり、ノズル近傍
に液状物質が分散することなく、注入圧力に見合った注
入深度の箇所に液状物質が滞留することになる。肉塊中
で均一な分散状態を得るためには、本発明のように、注
入しながら注入圧力を、前記サーボモータ等を用いたモ
ータの回転数制御等を利用して制御し、ゼロ又は低圧か
ら徐々に一定の圧力上昇速度で注入最高圧力まで上昇さ
せることが必要である。
【0042】必要とされる注入最高圧力は、食肉塊の物
性(赤身と脂肪の割合、肉の硬さ、骨の有無等)、食肉
塊の肉厚・形状、液状物質の物性(溶質又は分散質の分
子量、粘度、肉成分との反応性の有無等)、直進水流噴
射ノズル先端と食肉塊との距離等によっても種々調整可
能であるが、通常7〜3000kg/cm2 、望ましく
は300〜2000kg/cm2 の範囲に設定される。
注入最高圧力が7kg/cm2 未満の場合、肉塊の応力
よりも注入圧力が低いため、肉塊中に十分分散せず、逆
に注入最高圧力が3000kg/cm2 を超えると、肉
塊の損傷が大きくなり、好ましくない。したがって、通
常使用される肉の厚さや、肉塊中での分散、損傷等を考
慮した場合、注入最高圧力300〜2000kg/cm
2 の範囲で種々設定することが好ましい。
【0043】例えば、食肉塊の物性は肉への注入抵抗に
大きく関与し、食肉の由来や部位により、その応力は約
7kg/cm2 から26kg/cm2 程度までばらつい
ており、従来の多針型のピックルインジェクターの注入
圧力は高くても12kg/cm2 程度であるから、これ
が肉の由来や部位の違いによる注入の不均一の原因とな
っていたが、本発明による食肉塊への液状物質の均一分
散インジェクション方法においては、格段に高い注入圧
力(直流水流噴射圧力)を使用するため、肉の注入抵抗
の差による、注入方向及びそれと直交する方向への不均
一分散という問題は払拭される。また、食肉塊をピック
ルインジェクターの噴射部のマニホールドにより一定の
力で押さえつけることにより、均一分散の精度がさらに
上昇する。
【0044】液状物質が肉塊を通り越して肉塊の外に噴
出したり、逆に液状物質が充分に末端まで注入分散しな
いのを防止するためには、押圧ローラー等を用いて肉厚
を予め一定にする方法もあるが、前記のように、直進水
流噴射ノズルからの液状物質の注入最高圧力を制御・調
節することによって、液状物質の注入深度を制御するこ
とができるので、本発明においては、肉厚を測定し、測
定値に基づいて注入最高圧力を算出し、圧力制御を行う
工程を全て自動化しておく方法が望ましい。肉厚の自動
測定装置としては、光センサーを用いる方式やロボット
アームの先端に設けられたノズルが肉塊に接触すること
により肉厚を自動的に計測する方式等がある。
【0045】また、肉厚が一定な食肉塊や物性が一定な
食肉塊の場合など、予め注入最高圧力を設定しておくこ
ともできる。特に、結合組織からなる硬い膜状の層が存
在する外モモや肩ロース等の食肉塊や、赤身と脂肪が交
互に層状となっており、結合組織からなる硬い膜状の層
が存在するバラ肉等の食肉塊の場合は、液状物質が肉塊
を通り越して肉塊の外に噴出するように注入最高圧力を
あらかじめ設定することもできる。 例えば、ベー
コンの原料であるバラ肉の場合、従来の多針型ピックル
インジェクターでは、結合組織からなる硬い膜状物によ
り、液状物質をそれ以遠に浸透させることができないば
かりか、液状物質をむしろ分散させる必要のない脂肪の
層部分に溜まった液状物質により、柔らかい脂肪の層が
膨らむ等の不都合があったが、本発明によると、その応
力が小さい脂肪の層部分にはあまり分散せず、硬い膜状
物の層以遠も含め、赤身の層部分全体に液状物質が均一
に分散した優れたベーコンが得られる。
【0046】本発明においては、前記のように、直進水
流噴射ノズルからの液状物質の注入最高圧力に到達する
までの注入時間を制御・調節することによって、液状物
質の注入量を制御することができる。注入最高圧力に到
達するまでの注入時間は、肉質、液状物質の物性等によ
って種々設定しうるが、通常0.05〜10秒、好まし
くは0.1〜5秒、より好ましくは0.3〜2秒に設定
される。注入時間が0.05秒未満の場合は、必要な圧
力まで到達しなかったり流量が少なく肉塊中での分散が
不十分になるおそれがある。また、10秒を超えると注
入に時間がかかり、注入量は増加するが、肉塊中におけ
る液状物質の保持力には限界があるため、注入時に注入
箇所から漏出する液状物質が増加し、注入率の精度が悪
くなる傾向がある。したがって、設定した注入率のより
高い精度と、注入効率の点から、注入時間を0.3〜2
秒に設定することが好ましい。
【0047】本発明においては、前記のように、直進水
流噴射ノズルからの液状物質の圧力上昇速度を変化させ
て、食肉塊への液状物質の注入率を制御・調節すること
ができる。本発明におけるように、注入しながら注入圧
力を制御することなく、例えば1個のバルブの開閉のみ
で液状物質を注入する従来の方法では、圧力が瞬時に上
昇し、その後前記図4に示すように変化する。このよう
な従来方法の場合は、注入された液状物質を肉塊中で均
一に分散させることはできないが、本発明のように、圧
力上昇速度を100〜20000kg/cm2・秒、好ま
しくは200〜10000kg/cm2・秒、より好まし
くは1000〜4000kg/cm2・秒に設定して、注
入しながら制御することにより、液状物質を均一に肉塊
中に分散させることができる。圧力上昇速度が100k
g/cm2・秒未満の場合は、注入に時間がかかり、注入
量は増加するが、肉塊中における液状物質の保持力には
限界があるため、注入時に注入箇所から漏出する液状物
質が増加し、注入率の精度が悪くなる傾向がある。ま
た、圧力上昇速度が20000kg/cm2・秒を超える
場合は、圧力上昇速度が速すぎて、従来のバルブの開閉
による噴射のように一気に圧力が上昇し、注入しながら
注入圧力の制御が困難となり、肉塊中での十分な分散が
達成できなくなる。さらに、あらかじめ設定した注入率
のより高い精度と、肉塊中での液状物質の十分な均一分
散とを達成するためには、圧力上昇速度を1000〜4
000kg/cm2・秒に設定することが望ましい。
【0048】前記のように、注入深度は注入最高圧力に
比例し、注入量は注入到達時間に比例するので、例えば
一定のノズル間隔で等密度に注入した場合、同一の圧力
上昇速度であれば肉塊が厚くなると注入最高圧力は高く
なり、それに比例して注入時間が長くなるため、注入量
は多くなる。逆に、肉塊が薄くなると注入最高圧力は低
くなり、それに比例して注入時間が短くなるため、注入
量は少なくなる。
【0049】例えば、10cm角の肉塊に注入した後
に、高さだけを半分の5cmにした肉塊に同じ圧力上昇
速度で注入する場合、注入最高圧力と注入深度との関係
から必要な注入最高圧力は半分になり、同じ圧力上昇速
度なので注入時間も半分になる。その結果、高さだけ半
分にした肉塊は、注入重量も半分となっているので同じ
注入率となる。したがって、同じ圧力上昇速度で一定の
ノズル間隔で等密度に注入すれば、肉塊の幅や厚み等の
大きさが異なる場合にも、単位体積当たりの注入量は常
に等しくなるので、同じ注入率が得られる。
【0050】また、同じ厚さの肉塊に対して一定のノズ
ル間隔で等密度に注入した場合、圧力上昇速度を上げる
と注入時間が短くなり注入量も少なくなる。その結果、
注入率が低下するが、逆に、圧力上昇速度を下げると注
入時間が長くなり注入量も多くなる。その結果、注入率
が増加する。したがって、圧力上昇速度を変化させるこ
とにより、単位時間当たりの注入量が変化するので、圧
力上昇速度を調節することにより注入率を制御すること
が可能となる。
【0051】これらの制御は、圧力を調節する手段によ
り行われるが、該圧力調節の作動は、人力はもとより、
肉厚と注入率の情報をもとにコンピューター及びアクチ
ュエーターで自動的に作動させることができることはい
うまでもない。
【0052】本発明においては、肉塊中に分散しにくい
物質であっても均一に注入分散させることができる。肉
塊中に分散しにくい物質としては、酵素、微生物(乳酸
菌、酵母等)、高分子物質や食肉を構成する物質との反
応性が高い物質等があり、肉塊中に注入された後移動し
にくく、力学的刺激や静置期間等の手段を設けても分散
しにくいものである。しかし、本発明の均一分散インジ
ェクション方法では、注入最高圧力が、前記の多針型イ
ンジェクション方法に比べて格段に高く、また、圧力上
昇速度を制御することにより、これら分散しにくい物質
をも肉塊中に均一に分散させることができる。
【0053】本発明に使用されるピックルインジェクタ
ーは、ノズル間隔を10mm以下、例えば5.6mmと
狭くして注入することができるので、高密度の均一な注
入が可能となり、注入最高圧力を調節することにより注
入深度を制御することができるため、液状物質が肉塊に
注入された時点で均一に分散されており、肉塊中で分散
しにくい物質も注入と同時に肉塊全体に均一に分散す
る。
【0054】本発明において、ピックルインジェクター
を用いて肉塊中へ液状物質を注入分散させる場合、直進
水流噴射ノズル先端を食肉塊に当接させ、液状物質を直
線的に噴射させて食肉塊に液状物質を注入分散させるこ
とが望ましい。食肉の塩漬又は調味に用いる場合、直進
水流噴射ノズルと注入対象物である肉塊との間にクリア
ランスを設けると直進性が強すぎて分散が悪くなる。し
かし、クリアランスが大きいほど空気の混入割合が高く
なり、硬い赤身肉などに適用すると、テクスチャーの変
わった肉製品が得られる場合もある。
【0055】本発明において、ピックルインジェクター
を用いて肉塊中へ液状物質を注入分散させる場合、搬送
用爪つきロボットで肉塊を注入箇所まで搬送し、肉固定
用スライドガイドで、注入時に両側から肉塊を固定して
から注入することが、肉に損傷を与えないという観点か
ら望ましいが、肉の筋線維等の組織を切断したいような
場合には肉塊を移動しながら直進水流を注入してもよ
い。
【0056】本発明において、ピックルインジェクター
を用いて肉塊中へ液状物質を注入分散させる場合、1又
は2以上の方向から注入することができる。注入の方向
については、上から下への方向に限定されるものではな
く、ノズルの位置や肉塊の載置台を順次移動することに
より、横から又は下からなど1又は2以上の方向から注
入することができる。また、食肉塊の形状を光センサー
等により自動的に計測し、計測した肉塊の形状に応じ
て、2方向以上の方向から同時又は順次注入することが
できる直進水流噴射ノズルを用いることもできる。
【0057】次に、本発明において用いられる無針型ピ
ックルインジェクターについて図6及び図7により説明
する。この無針型ピックルインジェクターは、中に液状
物質が収容されている液体タンク1と、ダイヤフラムポ
ンプ2と、サーボモータ3及び高圧プランジャーポンプ
4からなり、サーボモータ3により高圧プランジャーポ
ンプ4を駆動させることにより、液体タンク1からの液
状物質を増圧するための高圧水発生装置5と、耐圧35
00kg/cm2のフレキシブルホース及び耐圧420
0kg/cm2のステンレス配管からなる高圧配管6
と、直進水流の噴射ノズルを備えたマニホールド7、肉
塊搬送用爪8を上下動させるシリンダピストン9、ポテ
ンションメータ10やスプリング11などからなる肉厚
測定部12を有する先端部が、コントローラ13等で制
御されX,Y,Z軸動が可能である(上下左右前後方向
に自由に可動しうる)ロボット14と、図示していない
肉塊搬送用コンベヤに接続されている肉塊搬送部15
と、液状物質の噴射位置に肉塊搬送部15に設けられた
肉塊固定用ガイド16とから構成されている。
【0058】この装置を利用したインジェクション方法
を説明する。肉塊搬送用コンベヤから搬送されてきた肉
塊17が肉塊搬送部15の一端に載置されると、ロボッ
ト14の先端部が該肉塊17の方へ移動し、その先端部
に設けられた肉塊搬送用爪8がシリンダピストン9によ
り下降し、肉塊17を引っかけて、液状物質の噴射位置
まで運んでくる。噴射位置まで運ばれた肉塊17は、肉
塊固定用ガイド16により固定されると共に、ロボット
14の先端部が下降し、マニホールド7の先端が肉塊1
7を押し付けると同時にスプリング11が圧縮圧を吸収
し、その変位をポテンションメータ10で検出し、演算
して肉厚が自動的に測定される。この測定値に基づいて
予めプログラムされた注入最高圧力を算定し、かかる注
入最高圧力に関する情報及び予めプログラムされた注入
到達時間及び注入率に関する情報がサーボモータ3に伝
えられ、サーボモータ3により高圧プランジャーポンプ
4が駆動し、肉塊に当接しているマニホールド7の噴射
ノズルの先端から液状物質が直進水流として噴射される
結果、液状物質を注入しながら注入圧力が制御される。
すなわち、ゼロ又は低圧から肉厚により算出された注入
最高圧力まで、注入率に基づき算出された注入時間と注
入最高圧力までの圧力差により算出される圧力の上昇速
度で、注入圧力を漸次上昇させ肉塊17に液状物質が注
入される。次いで、注入圧力をゼロに戻し、必要に応じ
て、ロボット14を移動させて次の注入を行い、肉塊1
7全体に液状物質が注入される。液状物質の注入が終了
した肉塊17は、ロボット14の先端部に設けられた肉
塊搬送用爪8により搬出される。以後、上記の操作が繰
り返し行われる。
【0059】肉塊を固定する肉塊固定用ガイド16を設
けることにより、肉塊に不必要な傷が付かないばかりで
なく、噴射ノズルを備えたマニホールド7の先端部と肉
塊17が当接する場合、肉塊の厚みがより一定に保たれ
る結果、高圧の液状物質の圧力制御がやり易くなる。た
だし、液状物質の注入による肉塊17の膨張に対処でき
るように、肉塊17を固定する機構の周りにスプリング
等を設けておくと良い。
【0060】次に、本発明において用いられる無針型ピ
ックルインジェクターについての異なる実施例を図8に
より説明する。なお、上記無針型ピックルインジェクタ
ーと同一構成部分には、同一符号を付してある。この無
針型ピックルインジェクターは、中に液状物質が収容さ
れている液体タンク1と、サーボモータ3により駆動
し、液体タンク1からの液状物質を増圧するための高圧
水発生装置5と、耐圧3500kg/cm2のフレキシ
ブルホース及び耐圧4200kg/cm2のステンレス
配管からなる高圧配管6と、流量調節部18と、直進水
流の噴射ノズルが取り付けられたマニホールド7が固着
されているX軸駆動具19と、Y軸駆動具20と、Z軸
駆動具21と、X軸駆動具19とY軸駆動具20とZ軸
駆動具21の動きを制御し、噴射部の位置決めをすると
共に、注入圧力を制御するコントローラ13と、間欠的
に移動して肉塊17を噴射部の方へ搬送する肉塊搬送用
コンベヤ22と、注入時に両側から肉塊17を押さえて
固定するための肉塊固定用ガイド16とから構成されて
いる。
【0061】この装置を利用したインジェクション方法
を説明する。肉塊搬送用コンベア22により搬送された
肉塊17は、注入時に肉塊が動くと、動いた距離だけ肉
が切断されるので、肉塊固定用ガイド16で挟まれ、固
定される。マニホールド7が上から降りて来て肉塊に当
接する。コントローラ13は、注入率に応じた圧力上昇
速度と、噴射部の高さに応じた注入最高圧力を算定し、
かかる注入最高圧力に関する情報及び予めプログラムさ
れた注入到達時間及び注入率に関する情報に基づいてサ
ーボモータ3が高圧プランジャーポンプ4を駆動させ、
肉塊に当接しているマニホールド7に取り付けられた噴
射ノズルの先端から液状物質が直進水流として噴射され
る。その結果、液状物質を注入しながら注入圧力が制御
される。一箇所の注入が終わると、コントローラ13の
働きでマニホールド7を次の位置に移動させ、次の注入
を行う。肉塊固定用ガイド16の長さの領域内にある肉
塊の注入が終わると、肉塊搬送用コンベア22が動き肉
塊を搬送し、上記動作を繰り返し、肉塊に対して液状物
質を均一に注入分散させる。
【0062】このインジェクターの噴射部は、X,Y,
Z方向に移動可能であり、肉塊17のような被注入物を
固定しておき、マニホールド7を動かし注入を行うこと
ができるようになっている。噴射部、すなわちマニホー
ルド7のX,Y,Z方向の3軸動は、1軸又は2軸を固
定することにより、2軸又は1軸のみの動きが可能とな
ることはいうまでもない。
【0063】次に、上記ピックルインジェクターの主要
部であるマニホールド7の構造について説明する。高圧
配管6からの単流を複数に分岐する部材はマニホールド
7と呼ばれ、従来の高圧水装置の噴射部は、単孔式もし
くは、マニホールド内の配管を放射状に分岐した形状で
あったが、本発明者らは、食肉用のピックルインジェク
ターとして利用できる様にマニホールド7を加工し、マ
ニホールド内の配管を分岐し、該配管を平行に並べた。
ここでいう平行とは、1列に平行に並べる場合ばかりで
なく、千鳥形等多列に平行に並べる場合も含まれる。各
配管の先端部のノズルからは、高圧の液状物質が直進水
流として噴射され、並べられた各ノズルから肉に対し同
時に注入される。また、複数個のマニホールドを連結し
たり、1つのマニホールドに多数のノズルを取り付ける
と、一回の処理で液状物質を効率良く注入するが可能と
なる。
【0064】次に、本発明者らにより作製された噴射部
の構造について図9及び図10により説明する。マニホ
ールド7内には、13本の分岐配管23が10mmの間
隔で、かつ平行に4列10mmの間隔で設けられ、各分
岐配管23の噴出孔の先端には直進水流噴射ノズル24
が取り付けられている。既存の多針型ピックルインジェ
クターの針間隔に相当するノズル24の間隔は、10m
mとしたので、1つのマニホールド7には、数多くの分
岐配管23を設けることができ、より密度の高い注入が
可能となる。また、直進水流の噴射ノズル24の孔の径
は1000分の3インチとした。噴射圧力はノズルの孔
の径の4乗に反比例することが知られており、径が小さ
いほど高圧が得られることになる。
【0065】上記のように構成されたピックルインジェ
クターで液状物質を注入すると、注入しながら圧力を制
御する手段が具備されているので、肉厚に応じた注入最
高圧力まで、注入率に応じた圧力上昇速度で圧力を漸次
上昇させることができ、肉塊中の液状物質は、圧力が上
がると更に先に進み、次の肉組織の抵抗により横方向へ
分散するという動作を繰り返し、肉塊中に均一に分散さ
せることができる。そして、注射針を使用しないことか
ら、ノズルの間隔を従来の多針型ピックルインジェクタ
ーに比較し格段に狭めることができ、かつ、噴射部の構
成として分岐配管を平行にしたマニホールドを一つ若し
くは複数連結し、一つの駆動で複数の平行な噴射を高密
度で行うことを実現したので、一回の処理で液状物質を
効率良く肉塊中に注入すると同時に分散させることがで
きる。
【0066】また、注入最高圧力を調節することにより
注入深度を制御する方法が得られた為、薄い肉から厚い
ブロック肉まで同一の機械を用いて液状物質を均一に注
入分散させることができる。また、注入最高圧力を調節
することにより注入深度を制御する方法と、注入時間を
調節することにより注入量を制御する方法が得られたた
め、圧力上昇速度を調節することにより注入率を制御す
ることが可能となった。さらに、本発明に用いられるピ
ックルインジェクターは高圧水発生装置を用いて、肉の
抵抗圧力よりも格段に高い圧力で注入するので、硬い肉
も軟らかい肉も同様に均一に注入することが可能であ
り、従来の多針型のピックルインジェクターの場合に問
題となっていた肉質の注入抵抗の差は、ほとんど影響し
ないことが判明した。
【0067】次に、高密度に直進水流噴射ノズルを配置
した噴射部を設けた本発明において用いられるピックル
インジェクターを使用して、非加熱食肉製品である生ハ
ムを製造する場合について説明する。生ハム製造におけ
る塩漬工程においては、上記のように乾塩漬法、湿塩漬
法、1本針注入法が行われているが、何れの方法も、製
造に多くの時間がかかり、個々の肉塊や肉の部位、表面
部と中心部で、食塩等の分散にバラツキが起こる傾向が
ある。生ハムは、食塩濃度が高いため、分散のバラツキ
による品質への影響が大きい。また、加熱処理を行わな
いため、食塩等の分散については、安全上十分に注意す
る必要がある。従って、食品衛生法では、乾塩漬法、湿
塩漬法、1本針注入法は認められているものの、多針を
用いた自動注入機による注入法は、針によって食肉の深
部を肉塊表面の微生物が汚染するおそれがあり、また、
注入時に肉から漏出した注入液を回収して使用する構造
となっているため、生ハムの塩漬法としては現在までの
ところ認められていない。
【0068】一方、本発明の場合、針を使用しないため
針による肉塊内部の微生物の汚染がなく、注入液が注入
と同時に肉中に緻密に分散するため、塩漬け液の注入時
に肉からの注入液の漏出がほとんどない。従って、注入
により微生物に汚染された注入液を使用することなく製
造可能となる。また、注入液が肉中に均一に分散するた
め、注入と同時に肉塊の全ての部分が、食品衛生法で規
定された塩漬肉の水分活性値まで確実に低下する。この
ように、本発明によると、注入液の肉中での分散が均一
であり、バラツキも小さいため、安定した品質で、かつ
安全性についても、細菌数、水分活性値において、食品
衛生法の規格基準に合致するものが得られる。さらに、
塩漬け液の注入量を適宜変化させることができることか
ら、いかなる食塩濃度の製品でも簡単に調製することが
できる。
【0069】
【実施例】以下、実施例を挙げてこの発明をさらに具体
的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施
例に限定されるものではない。 (実施例例1)上記インジェクション装置を用いて以下
のようにインジェクションを行った。肉塊搬送用コンベ
ヤから搬送されてきた豚肉塊17が肉塊搬送部15の一
端に載置されると、ロボット14の先端部が該肉塊17
の方へ移動し、その先端部に設けられた肉塊搬送用爪8
により肉塊17を液状物質の噴射位置まで運んでくる。
噴射位置まで運ばれた肉塊17は、肉塊固定用ガイド1
6により固定されると共に、ロボット14の先端部が下
降し、マニホールド7の先端が肉塊17を押し付けると
同時にスプリング11が圧縮圧を吸収し、その変位をポ
テンションメータ10で検出し、演算して肉厚が自動的
に測定され、測定値に基づいて予めプログラムされた注
入最高圧力を算定し、かかる注入最高圧力に関する情報
及び予めプログラムされた注入到達時間及び注入率に関
する情報がサーボモータ3に伝えられ、サーボモータ3
により高圧プランジャーポンプ4が駆動し、肉塊に当接
している噴射ノズル24の先端から液状物質を直進水流
として噴射し、圧力をゼロに戻す。次いで、コントロー
ラ13に組み込まれたロボット14のプログラムに応じ
てこの動作を繰り返し、豚肉塊17全体に注入後、ロボ
ット14の先端部に設けられた肉塊搬送用爪8により豚
肉塊17を搬出した。
【0070】この試験と、同一の液状物質を用いて、同
等の豚肉塊に対し既存の多針型ピックルインジェクター
で行った試験との注入後の塩分の分布状態の比較を図1
1に示す。図11において、その上側は、本発明のピッ
クルインジェクターを用いた場合の注入後の塩分の分布
状態を示し、その下側は、既存の多針型ピックルインジ
ェクターを用いた場合の注入後の塩分の分布状態を示
し、また、左側が注入直後、右側が72時間静置した後
の分布状態である。
【0071】また、分布状態は、それぞれの豚肉塊を上
下2分割、左右3分割し、合計6つの箇所から試料を得
て測定した。この図11から明らかなように、本発明に
よる食肉へのインジェクション方法は、従来の多針型ピ
ックルインジェクターを用いた場合に比較して、格段の
均一さで液状物質を注入すると同時に均一に分散させる
ことができた。
【0072】(実施例2)次に、高密度に直進水流噴射
ノズルを配置した噴射部を用いた場合の、本発明に用い
られるピックルインジェクターについて説明する。表1
は、60個の直進水流噴射ノズルの付いた噴射部を構成
に含むピックルインジェクターで豚のもも肉の外モモ、
内モモ、ラム、マル及びシキンボの各部位に注入した場
合と、既存の多針型ピックルインジェクターを使用した
場合の注入率の比較を示すものである。なお、サンプル
としての豚肉塊は各々につき40ブロック使用した。
【0073】
【表1】
【0074】表1からもわかるように、全体の標準偏差
が、既存の多針型ピックルインジェクターでは7.3%
であるのに対して、本発明において用いられるインジェ
クション方法では、0.8%と非常に小さく、注入率の
バラツキが極端に少ないことがわかった。また、既存の
多針型ピックルインジェクターの最大値及び最小値は、
不良品として扱われる数値であるのに対して、本発明の
最大値及び最小値は、製品として許容される範囲であ
り、上記ピックルインジェクターを使用することにより
不良品が削減されることがわかった。
【0075】(実施例3)次に、高密度に直進水流噴射
ノズルを配置した噴射部を用いた場合の、本発明におい
て用いられるピックルインジェクターの異なる実施例に
ついて説明する。表2は、豚ロース肉に注入した場合
の、本発明のピックルインジェクターと既存の多針型ピ
ックルインジェクターを使用した場合の注入率の比較を
示す。なお、サンプルとしての豚肉塊は各々につき50
ブロック使用した。
【0076】
【表2】
【0077】豚ロース肉とは、肩からモモに伸びた背最
長筋という長い肉塊であるが、モモ側の肉質が硬い為、
一本のロース肉を一律で注入した場合、通常モモ側に液
状物質が入りにくく、肩側に入りすぎる問題がある。表
2の右が、既存の多針型ピックルインジェクターを使用
した場合であり、カタ側にいく程注入率が高くなってお
り、しかもバラツキが大きかった。表2の左が、本発明
において用いられるピックルインジェクターを使用した
場合で、肉質の硬さによる影響をほとんど受けず、バラ
ツキも小さかった。
【0078】(実施例4)次に、高密度に直進水流噴射
ノズルを配置した噴射部を設けた本発明において用いら
れるピックルインジェクターを使用して、魚肉に注入し
た場合の実施例について説明する。 表3は、半身のサ
ーモンを頭部から尾部に向かって4分割して、本発明に
おいて用いられるピックルインジェクターを使用した場
合と、既存のインジェクターを使用した場合の注入率の
比較(サンプル数は各々につき10個)を示す。なお、
サンプルとしてのサーモンは10匹使用した。
【0079】
【表3】
【0080】魚肉は、頭部から尾部に向けて厚みに勾配
がある為、厚みの薄い尾部には液状物質が入りにくい傾
向がある。表3の結果から、既存のインジェクターを使
用した場合、厚みの厚い中央部よりも薄い尾部のほうが
注入率が低くなったが、本発明において用いられるピッ
クルインジェクターを使用した場合、厚みによる注入率
への影響はほどんどなかった。また、全体の標準偏差
が、既存のインジェクターの5.5%に比較して、本発
明において用いられるピックルインジェクターでは0.
8%と非常に小さく、前記実施例の豚ロース肉、モモ肉
と同様に、魚肉に注入した場合に於いても注入率のバラ
ツキが極端に低減されることが明らかとなった。
【0081】(実施例5)次に、高密度に直進水流噴射
ノズルを配置した噴射部を設けた本発明において用いら
れるピックルインジェクターを使用して、食用赤色3号
を溶解した注入液を豚ロース肉に注入した場合について
説明する。図12は、豚ロース肉に、本発明のピックル
インジェクターと既存の多針型ピックルインジェクター
を使用して、上記注入液を注入した場合の分散状態の比
較を示す。図12の上側は、本発明において用いられる
ピックルインジェクターを用いた場合の注入後の分散状
態を示し、下側は、既存の多針型ピックルインジェクタ
ーを用いた場合の注入後の分散状態を示す。また、左側
が注入直後、右側が72時間静置した後の分散状態であ
る。
【0082】図12の結果から、既存の多針型ピックル
インジェクターを用いて注入した場合、注入直後の分散
が悪く、食用赤色3号のような肉蛋白質との反応性の高
い物質は、肉塊中に注入された後移動することができな
い為に、72時間静置後も分散状態に変化はなかった。
それに対して、本発明のピックルインジェクターを用い
て注入した場合、注入直後に食用赤色3号が均一に分散
していることが明らかになった。
【0083】(実施例6)豚肉塊を使用する生ハム製造
における塩漬工程において、本発明において用いられる
インジェクション方法を適用して製造した場合と、従来
法である乾塩漬法を適用して製造した場合における、製
造工程中の歩留、製造期間、及び製品の官能検査の結果
を表4に示す。表4からもわかるように、乾塩漬法は塩
漬に2週間、製品とするまでに約3週間かかった。それ
に対して本発明のインジェクション方法を使用した場
合、塩漬が1日で、製品とするまでの期間も1週間未満
であり、大幅な製造期間の短縮を図ることができる上、
製造歩留もアップすることがわかった。また、官能検査
でも、塩分バラツキがなく、しっとりとした良好な食感
であった。なお、官能評価は専門のパネラー10名によ
り行った。
【0084】
【表4】
【0085】(実施例7)豚ロース肉塊を使用した生ハ
ム製造における塩漬工程において、本発明において用い
られるインジェクション方法を適用して製造した場合
と、従来法である1本針注入法、湿塩漬法を適用して製
造した場合のそれぞれについて、製造期間と中心部の水
分活性値の推移の結果を図13に示す。図13からもわ
かるように、本発明の方法によると、注入液の肉中での
分散が均一であり、バラツキも小さいことから、塩漬日
数がわずか1日間で水分活性値が0.97未満となり、
1本針注入法、湿塩漬法よりも塩漬期間を大幅に短縮す
ることができた。また、本発明により製造される生ハム
製品の細菌数も、上記従来法により製造される生ハム製
品と同様に、食品衛生法の規格基準である、検体1g
中、大腸菌(E.coli)100以下、黄色ブドウ球菌10
00以下、サルモネラ菌陰性、との条件に適合してお
り、本発明によると、安全性についても問題のない生ハ
ム製品が得られることがわかった。
【0086】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
にあっては、次に列挙するような効果がある。 1.高圧水のピックルインジェクターを用い、肉と直進
水流噴射ノズルを接触させ、液状物質を注入しながら圧
力を制御する方法により、肉塊中へ液状物質を従来に比
べて格段な均一さで注入分散させることが可能となり、
本発明方法は食肉製品、特に生ハム等の非加熱食肉製品
の製造法に適している。しかも、この方法においては、
肉質の注入抵抗の差による液状物質の注入の不均一を同
時に解決することができた。 2.更に、この方法は、肉塊中で分散の悪い物質を物理
的に分散させることに利用することができ、ピックル液
組成に今まで利用できなかった物質を使うことができる
ようになった。 3.注入直後で、均一な分散がほぼ完了しているため、
タンブリングマシンやマッサージマシン等で力学的な刺
激を長時間与える必要がなく、塩漬時間又は調味時間を
大巾に短縮することが可能となった。 4.注入最高圧力を調節することにより注入深度を制御
する方法が得られたため、薄い肉から厚いブロック肉ま
で液状物質を均一に注入分散させることが可能となり、
また、無針型の為、多針型では不可能もしくは不具合で
あった魚肉や骨付き、皮付きの原料肉に対しても、液状
物質を均一に注入分散させることが可能となった。 5.注入最高圧力を調節することにより注入深度を制御
する方法と、注入時間を調節することにより注入量を制
御する方法が得られたため、圧力上昇速度を調節するこ
とにより注入率を制御することが可能となり、注入率の
異なる多規格の製品を製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のピックルインジェクターで注入した場
合の注入深度と注入最高圧力の関係を表すグラフであ
る。
【図2】本発明のピックルインジェクターで注入した場
合の注入時間と注入量の関係を表すグラフである。
【図3】本発明のピックルインジェクターで注入した場
合の注入率110、120、130、140%における
注入最高圧力と注入時間の関係を表すグラフである。
【図4】従来の無針型ピックルインジェクターで注入し
た場合の注入圧力の経時変化を表すグラフである。
【図5】本発明の無針型ピックルインジェクターで注入
した場合の注入圧力の経時変化を表すグラフである。
【図6】本発明のピックルインジェクターの斜視図であ
る。
【図7】本発明のピックルインジェクターにおけるロボ
ットの正面図である。
【図8】本発明の別のピックルインジェクターの斜視図
である。
【図9】本発明のピックルインジェクターの噴射部の縦
断面図である。
【図10】本発明のピックルインジェクターの噴射部の
底面図である。
【図11】本発明のピックルインジェクターと既存の多
針型ピックルインジェクターとを用いた場合における、
注入後の食塩の分布状態の比較を示す説明図である。
【図12】本発明のピックルインジェクターと既存の多
針型ピックルインジェクターとを用いた場合における、
注入後の着色料の分散状態の比較を示す説明図である。
【図13】生ハムの各種製法における製造工程別の製造
期間と中心部の水分活性値の推移を示す説明図である。
【符号の説明】
1 液体タンク 13 コントロ
ーラ 2 ダイヤフラムポンプ 14 ロボット 3 サーボモータ 15 肉塊搬送
部 4 高圧プランジャーポンプ 16 肉塊固定
用ガイド 5 高圧水発生装置 17 肉塊 6 高圧配管 18 流量調節
部 7 マニホールド 19 X軸駆動
具 8 肉塊搬送用爪 20 Y軸駆動
具 9 ピストンシリンダ 21 Z軸駆動
具 10 ポテンションメータ 22 肉塊搬
送用コンベヤ 11 スプリング 23 分岐配
管 12 肉厚測定部 24 噴射ノ
ズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−244906(JP,A) 特開 平9−194029(JP,A) 米国特許3436230(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/318 JICSTファイル(JOIS) WPI(DIALOG)

Claims (20)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直進水流噴射ノズルを用いて食肉塊へ液
    状物質を注入する食肉製品の製造方法において、液状物
    質を注入しながら注入圧力の制御を行うことを特徴とす
    る食肉製品の製造方法。
  2. 【請求項2】 注入圧力の制御が、注入圧力の変化であ
    ることを特徴とする請求項1記載の食肉製品の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 注入圧力の変化が、注入圧力をゼロ又は
    低圧からの漸次上昇であることを特徴とする請求項1又
    は請求項2記載の食肉製品の製造方法。
  4. 【請求項4】 注入圧力の最高値を制御することによっ
    て、液状物質の注入深度を制御することを特徴とする請
    求項1乃至請求項3のいずれか記載の食肉製品の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 注入圧力の最高値が7〜3000kg/
    cm2 であることを特徴とする請求項4記載の食肉製品
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 注入圧力の最高値に到達するまでの注入
    時間を制御することによって、液状物質の注入量を制御
    することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか
    記載の食肉製品の製造方法。
  7. 【請求項7】 注入圧力の最高値に到達するまでの注入
    時間が0.05〜10秒であることを特徴とする請求項
    6記載の食肉製品の製造方法。
  8. 【請求項8】 注入圧力の上昇速度を変化させて、食肉
    塊への液状物質の注入率を制御することを特徴とする請
    求項1乃至請求項7のいずれか記載の食肉製品の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 注入圧力の上昇速度が100〜2000
    0kg/cm2・秒であることを特徴とする請求項8記載
    の食肉製品の製造方法。
  10. 【請求項10】 食肉塊の物性に応じて、予め注入圧力
    の最高値を調整することを特徴とする請求項1乃至請求
    項9のいずれか記載の食肉製品の製造方法。
  11. 【請求項11】 食肉塊の肉厚を測定し、測定値に基づ
    いて注入圧力の最高値を算出し、圧力制御を行う工程が
    全て自動化されていることを特徴とする請求項1乃至請
    求項10のいずれか記載の食肉製品の製造方法。
  12. 【請求項12】 食肉塊の肉厚に応じて、予め注入圧力
    の最高値を調整することを特徴とする請求項1乃至請求
    項10のいずれか記載の食肉製品の製造方法。
  13. 【請求項13】 液状物質の物性に応じて、予め圧力上
    昇速度を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項
    12のいずれか記載の食肉製品の製造方法。
  14. 【請求項14】 食肉塊を固定することを特徴とする請
    求項1乃至請求項13記載の食肉製品の製造方法。
  15. 【請求項15】 直進水流噴射ノズルを食肉塊に当接し
    て用いることを特徴とする請求項1乃至請求項14のい
    ずれか記載の食肉製品の製造方法。
  16. 【請求項16】 食肉塊の形状に応じて、1又は2以上
    の方向から注入することができる直進水流噴射ノズルを
    用いることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいず
    れか記載の食肉製品の製造方法。
  17. 【請求項17】 注入間隔を狭くして注入することを特
    徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか記載の食肉
    製品の製造方法。
  18. 【請求項18】 食肉製品が非加熱食肉製品である請求
    項1乃至請求項17のいずれか記載の食肉製品の製造方
    法。
  19. 【請求項19】 非加熱食肉製品が生ハムである請求項
    18記載の食肉製品の製造方法。
  20. 【請求項20】 請求項1乃至請求項19のいずれかの
    製造方法で製造された食肉製品。
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