JP2957912B2 - 生食用魚肉類の高能率保存処理方法 - Google Patents

生食用魚肉類の高能率保存処理方法

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JP2957912B2 JP6334536A JP33453694A JP2957912B2 JP 2957912 B2 JP2957912 B2 JP 2957912B2 JP 6334536 A JP6334536 A JP 6334536A JP 33453694 A JP33453694 A JP 33453694A JP 2957912 B2 JP2957912 B2 JP 2957912B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、刺身や寿司ネタとして
使用する生食用魚肉類の保存処理を高能率的に行う方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超低温のスモーク処理によって刺身や寿
司ネタとして使用する生食用の魚肉類の品質を長時間に
わたって維持可能にすることは、本発明者らが先に特開
平6−292503号として提案している。このような
生食用魚肉類に対する品質維持のための処理は、それに
よって生食用魚肉類の食感、旨味、臭等が従来の生食用
魚肉類と著しく異なるものとなる場合は、魚肉類が生食
としての商品価値を失うため、利用できない。上記既提
案のスモーク処理は、従来のスモーク処理(燻製)によ
る食品の保存性の改善方法とは全く異なるもので、生食
用魚肉類の食感、旨味、臭等が従来の生食用魚肉類と格
別相違せず、刺身等の生食用に十分対応できる範囲内
で、低温燻製による品質維持処理を行うものである。
【0003】この本発明者らの提案に係る生食用魚肉類
のスモーク方法、即ち、超低温燻煙処理方法は、一定の
温度帯で燻燃によりスモークを発生させ、これをフィル
タに通して不要な臭いやタール分を濾過した後、冷却パ
イプを通して0〜3℃に冷却し、それを密閉した低温の
スモーク室内に導き、スモーク室において網棚の上に並
べた生の魚肉の切り身に接触させることにより、超低温
でスモーク処理を行うものである。しかるに、この方法
は、魚肉の切り身が刺身と同様に薄いときには、比較的
短時間に処理を完了できるが、生食用魚肉類の高能率的
な処理のために厚い切り身等を対象とする場合には、ス
モークが十分に浸透する迄にかなりの時間を必要とする
ことがわかった。
【0004】これを具体的に説明すると、図1は、本発
明者が行った超低温のスモーク処理の実験において、魚
肉(マグロ)にスモークが浸透する状況を示すもので、
横軸にはスモーク処理した浸透時間を、縦軸にはスモー
クの浸透度(浸透深さ)を示している。なお、これらの
データは、繰り返して行った実験の結果が大体において
同じ傾向を示したので、それらの平均的な数値を示して
いる。
【0005】この実験例は、網棚に魚肉を並べてスモー
ク室に収容し、このスモーク室を密閉して低温のスモー
クを充填し、スモーク室内の圧力をそれぞれの曲線に付
した圧力に調整した場合のものである。なお、図中に示
した「10-2〜30 atom 」は、3分毎にその両者の圧
力に減圧と加圧を繰り返した場合の例である。使用した
魚肉(マグロ)は、予め食塩水に浸漬して魚肉内の体液
のゲル化を図り、食感、食味として塩辛さを感じさせな
い程度(0.8%以下)にまで水洗して食塩濃度を下げ
ることにより、ドリップ流出止めの処理をしたものであ
る。
【0006】この図1の実験結果から分かるように、1
気圧より30気圧までの各種圧力に加圧した場合に、魚
肉自体の温度やpH等によって浸透速度に差異は生ずる
が、圧力が高い程、浸透速度は速くなる傾向がある。ま
た、データを図示していないが、スモーク室を減圧した
ときには、0.5気圧の減圧でも上記加圧の場合より浸
透が速くなっている。更に、減圧と加圧を繰り返したと
きには、一層スモークの浸透が速くなる。
【0007】しかし、いずれにしても、初期の1〜2時
間ではスモークがかなり速く浸透するが、その後の浸透
速度は極端に低下する。例えば、1気圧の場合、最初の
2時間では約7mm浸透するが、12時間では約12m
m、24時間では約15mmの浸透であり、初期の2時
間で約7mm浸透したものが、その約2倍の15mmま
で浸透するのに、24時間を要している。また、30気
圧の場合には、初期の1時間で約10mm浸透したもの
が、その後5mm浸透するのに6時間を要している。従
って、厚い魚肉、例えば15〜10cm厚のマグロの四
ツ割等には到底上記スモーク加工を適用することはでき
ない。
【0008】このように、薄い魚肉片の場合は比較的短
時間で魚肉片の芯まで十分にスモークが浸透するが、魚
肉片の厚さが大きくなると、その浸透時間(この間は冷
凍温度に保持できない。)が極端に増大することにな
る。しかも、生の魚肉では、冷凍状態に保持していない
と、時間の経過と共にドリップが流出し、変色すると同
時に、旨味及び食感が著しく低下する。また、時間の経
過に伴って鮮度が低下するのは免れず、バクテリア等の
衛生上の問題も生食をむづかしくする。
【0009】以上の結果から、スモークの浸透度を速め
てスモーク仕上げを早期に完了させるためには、減圧と
加圧を繰り返す方法が良いことは判ったが、厚い魚肉を
充分に満足できる程度に短時間に処理することができ
ず、ドリップが多量に流出して食感と味に問題が生ずる
と共に、その装置が、減圧と加圧を繰り返すために複雑
で高価なものになるという難点がある。したがって、生
の刺身と区別がつかない程度かそれ以上の旨味、食感、
鮮度を維持するためには、スモーク時間の短縮とより完
全なスモークの魚肉への浸透が不可欠の条件となる。
【0010】一方、本発明者は、魚肉に人間の舌に感じ
ない0.8%以下の食塩水を浸透させることにより、食
塩による魚肉の体液のゲル化が急速に進行して、予想以
上のドリップ止めの効果が得られ、しかも、旨味がよく
なり、従来の刺身より美味になることを確かめている。
この食塩水の浸透には、塩漬けと塩抜きを行う必要があ
り、ある程度の食塩水の浸透にもかなりの時間を要する
が、それによっても均一な浸透は望めない。魚肉は豚肉
等と違って、長時間の塩漬け、塩抜きは不可能であり、
比較的短時間で生食に利用できなくなる。その理由は、
肉がふやけて刺身等の生食に向かなくなるためである。
そのため、どうしても短時間の浸漬となるので、塩漬
け、塩抜きの効果が小さくなる。従って、この時間を要
する塩漬けを僅かの時間で完了できるようにすれば、ス
モークの浸透処理に際してのドリップ止めの効果が得ら
れ、生食の魚肉の味を大きく改善することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の技術的課題
は、魚肉に対するスモーク処理時間の短縮、及び塩漬け
時間の短縮を図り、更にスモーク及び食塩水のより完全
な浸透を実現する生食用魚肉類の高能率保存処理方法を
得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段、作用】上記課題を解決す
るための本発明の生食用魚肉類の高能率保存処理方法
は、基本的には、燻材を燻すことにより発生させたスモ
ークからフィルタによってタール分及び臭いを除去し、
これによって得られたスモークを被処理対象の生食用魚
肉類に接触させてスモーク処理を行うに際し、一定間隔
で並列配置した多数のスモーク注入針を該魚肉に刺入し
て、その先端からの上記スモークの少量の気泡状噴出を
間欠的に繰り返しながら上記スモーク注入針を抜き出す
ことにより、魚肉内に離散的に上記スモークの気泡を打
ち込む燻煙処理工程を有し、これにより生食用魚肉類に
保存処理を施すことを特徴とするものである。また、本
発明は、上記燻煙処理工程に加えて、一定間隔で並列配
置した多数の食塩水注入針を上記魚肉に刺入して、先端
からの少量の食塩水の注出を間欠的に繰り返しながら、
その食塩水注入針を抜き出すことにより、魚肉内に離散
的に上記少量の食塩水を打ち込む塩分添加工程を有し、
それらにより生食用魚肉類に保存処理を施すことを特徴
とするものである。
【0013】さらに具体的に説明すると、本発明の方法
においては、まず、所期の成分のスモークを発生させる
ために、スモーク室において、250〜400℃で燻材
を燻してスモークを発生させる。そのため、図2に例示
するようなスモーク室1が用いられる。このスモーク室
1は、その本体10の内部に燻材を燻すためのサーモス
タット付きのヒーター13を備えた燻燃台12を設け、
燻燃温度を計測しながらこのヒーター13によりスモー
クの発生をコントロールできるようにしたものである。
また、上記スモーク室の扉11の上下に設置した空気調
整器14は、数個の空気孔15を設けると共に、それら
の空気孔15の開口量を調節するための摺動可能な調整
板16を設けることによって構成したもので、これによ
り燻燃のための供給空気量を調節可能とし、少ない空気
量で燻材を所要の温度で燻せるように構成し、上記ヒー
ター13による温度制御により必要なスモーク成分を発
生するスモーク温度が設定される。
【0014】燻材は、上述したように250〜400℃
でスモークを発生させるが、それを燻すときの温度によ
りスモーク中の成分が相違することが知られている。本
発明においてスモーク発生のために用いている250〜
400℃という温度範囲は、本発明者らが、本発明の目
的に適するガス成分を効果的に発生させる温度として、
経験的、実験的に知得したものである。この温度で発生
させたスモークを用いて後述する魚肉のスモーク処理を
行うと、優れた防腐、殺菌効果を付与し、さらに酸化に
よる変色を防止する効果を付与することができる。燻材
としては、一般にスモーク処理のために用いられている
各種樹種のものを用いることができ、例えば、かし、な
ら、ぶな、さくら、はんのき、しなのき、かしわ、くる
み、くり、しらかば、ヒッコリー、ポプラ、プラタナ
ス、その他を用いることができる。
【0015】上記スモーク室1で発生したスモークは、
次にスモーク室1の排煙路に設けたスモーク濾過装置2
に導入し、発生させたスモークをフィルタ22に通し
て、主としてスモーク中のタール分及び臭いを除去し、
防腐、殺菌、変色抑制効果の高い成分を含むスモークを
通過させる。フィルタ22としては、タール分等を主体
とする比較的大きな煙粒子を捕捉するところの周知の各
種フィルタを単独で使用し、あるいはメッシュの異なる
ものなどを複合して用いることができ、一定長の筒体2
1内に必要数のフィルタ22を積層して収容し、それら
を一体化したものとして構成することができる。
【0016】このフィルタ22でスモーク中のタール分
及び臭いの大半を除去することにより、そのスモークを
被処理対象物であるマグロ等の生食用魚肉類に接触させ
てスモーク処理を行うと、過度のにおい、味、色を付与
することなく、実質的に生の状態を保持させたまま、防
腐、殺菌、変色防止効果を付与し、同時に、上記生の状
態を保持する範囲内で、適度の味、においを付与するこ
とができる。また、このスモーク処理により、タール分
中に多いとされている発癌性物質も除去することができ
る。
【0017】このスモーク濾過装置2の出口側には、パ
イプ23を介してバキュームポンプ等の吸引装置を接続
し、それによって引き出したスモークを冷却装置により
冷却し、一般的には0〜5℃、好ましくは1〜3℃とい
う超低温の冷却スモークとして、燻煙処理工程後におけ
るスモークの拡散のために魚肉を一時的に収容する冷却
室に導入するためのスモークとする。このスモークは、
次の燻煙処理工程において生食用魚肉に接触させるため
に用いることができるが、燻煙処理工程では非常に短時
間に処理を完了するので、特に冷却したスモークを用い
る必要はない。
【0018】スモークの冷却装置としては、冷却液を満
たした冷却槽内に上記吸引装置により引き出されたスモ
ークを通す蛇行冷却パイプを備え、スモークをこの冷却
パイプ中に通すことにより冷却して、0〜5℃のスモー
クとして送出するような装置を用いることができる。ま
た、上記吸引装置で引き出したスモークをビニール袋等
の気嚢、あるいは適宜容器に収容し、それを必要があれ
ば冷蔵装置に保管して0〜5℃程度に冷却しておき、こ
の気嚢または容器を、燻煙処理工程において、以下に述
べるスモーク打込機のスモーク供給口に接続し、それに
収容した冷却スモークを生食用魚肉に接触させることも
できる。このスモークの冷却を要しないことは、先に説
明した通りである。
【0019】燻煙処理工程においては、前記の実験例か
ら、常圧、加圧等、何れの場合にも魚肉に対する初期の
1時間当りのスモーク浸透度が4mm以上あることに着
目し、図3及び図4に示すようなスモーク打込機3によ
り、上記浸透度を考慮したほぼ一定の間隔(例えば、5
mm間隔)で並列配置した多数のスモーク注入針32を
該魚肉Mに刺入して、その先端から上記スモークの少量
を気泡状に噴出させ、スモーク注入針32を抜き出しな
がらその噴出を間欠的に繰り返して、一定間隔に一定量
のスモークを打ち込むことにより、スモークの少量の気
泡を魚肉内に離散的に打ち込み、それを魚肉Mに対して
内部から万遍なく浸透、拡散させる。
【0020】上記スモーク打込機3は、図4に示すよう
に、一定の間隔(例えば、5mm間隔)で多数のスモー
ク注入針32を並設した注入針支持体31の多数を、そ
れぞれの注入針32が、隣接する注入針支持体31にお
ける隣り合う注入針32の間に位置するようにして、即
ち、注入針32が互い違いになるように列設し、これに
より、上記多数の注入針支持体31で構成される打込機
本体30に、数十本ないし数百本の上記スモーク注入針
32を、一定間隔で多数行多数列に規則正しく配列させ
たものとし、スモーク注入針32の内部の通孔を通して
それを差込んだ魚肉M内に一定間隔にスモークを注入す
るものである。それぞれの注入針支持体31には、前記
スモーク濾過装置2若しくはスモークの冷却装置を通し
て送られてきたスモーク、またはビニール袋等の気嚢に
収容して保管されたスモークを導入するための、スモー
ク供給管33を設けている。
【0021】上記スモーク濾過装置2または冷却装置か
らのスモークを導入する場合には、スモークの配管をス
モーク供給管33に接続すればよいが、ビニール袋等の
気嚢に収容して保管されたスモークを導入する場合に
は、その気嚢をスモーク供給管33に着脱可能として、
スモークがなくなったときに逐次交換し、スモークをス
モーク注入針32に送給することができる。このスモー
クは、必要に応じて、スモーク供給管33に設けた加圧
装置で5〜10kg/cm2程度に加圧して供給することがで
きる。
【0022】上記各注入針支持体31には、図3に示す
ように、一つの気泡状のスモークを送出するに必要な容
量を持った気室35の多数を各スモーク注入針32に対
応させて列設してなる可動バルブ34を、図示を省略し
た駆動装置により矢印方向に往復動自在に設けている。
この可動バルブ34における各気室35には、該可動バ
ルブ34の移動によりスモーク供給管33に連通する分
配器36からの個別流路37と通断される供給通孔3
8、及び可動バルブ34の移動によりスモーク注入針3
2に連通した注入流路39と通断される注入通孔40を
設けている。上記個別流路37と供給通孔38とは、可
動バルブ34が一方の移動端(左端)にあるときに連通
し、他方の移動端にあるときに、図3に示しているよう
に、非連通となるものであり、また、スモーク注入針3
2に連通する注入流路39と注入通孔40とは、可動バ
ルブ34が一方の移動端にあって上記個別流路37と供
給通孔38とが連通するときに非連通となり、逆に、図
3に示しているように、個別流路37と供給通孔38と
が非連通となったときに連通するものである。
【0023】さらに、上記スモーク打込機3には、図示
しない駆動装置によってその打込機本体30を昇降させ
る駆動部材41を連結している。この駆動部材41は、
その下動によりスモーク注入針32を一旦魚肉Mに深く
刺入した後、間欠的に、すなわち、魚肉に刺入したスモ
ーク注入針32の先端からスモークの少量を気泡状に噴
出させるごとに、スモーク注入針32を魚肉Mから引き
抜く方向に一定の距離(例えば、5mm)だけ駆動され
るものであり、その結果、図5に示すように、魚肉M内
におけるスモーク注入針32の通過跡50には、スモー
クの気泡51が注入針32の配列面(水平面)内及び魚
肉の厚さ方向にもほぼ均等に分散した状態に打ち込まれ
る。なお、上記駆動部材41は間欠的に駆動する必要は
なく、それを連続的に駆動しながら一定の時間間隔でス
モークの打ち込みを行うこともできる。
【0024】スモークの気泡51の打ち込みは、前記可
動バルブ34を駆動装置により矢印方向に往復駆動すれ
ばよく、即ち、図3において、可動バルブ34が左端に
あって個別流路37と供給通孔38とが連通し、各気室
35に加圧したスモークが充填されている状態から、該
可動バルブ34を同図に示す位置まで移動させ、注入流
路39を注入通孔40に連通させると、気室35に充填
されていたスモークがその圧力によりスモーク注入針3
2を通して送出される。このスモークの送出後に可動バ
ルブ34を左端に復帰させると、再び個別流路37と供
給通孔38とが連通し、各気室35に加圧したスモーク
が充填される。
【0025】また、上記スモーク注入針32を魚肉内に
刺入するときに、それが湾曲したり折れ曲がるのを抑制
するため、上記打込機本体30には、各スモーク注入針
32を挿通するガイド穴44を持った針ガイド43を設
けている。この針ガイド43は、昇降腕45により打込
機本体30に保持されて昇降駆動を制御され、駆動部材
41によりスモーク注入針32が魚肉M内への刺入のた
めに下降を開始する際には、図3に示すように注入針3
2の先端に近い位置にあり、該針ガイド43が駆動部材
41と共に下動して魚肉Mに接触したときからは、その
位置に停止した状態に保持され、またスモーク注入針3
2が魚肉Mから引き抜かれるときには、魚肉表面を押え
てスモーク注入針32と共に魚肉が持ち上げられるのを
抑止し、スモーク注入針32の先端に近い部分が針ガイ
ド43のガイド穴44に達した後には、スモーク注入針
32と共に上動せしめられるものである。
【0026】魚肉に対するスモークの打ち込みを自動化
するためには、駆動部材41の昇降と同期するコンベヤ
によって魚肉Mを間欠的に移送しながら、該魚肉へのス
モークの打ち込みを行うことになるが、上記打込機本体
30を固定状態に保ち、魚肉の載置台を昇降させて、上
記駆動部材41による魚肉Mへのスモーク注入針32の
刺入と相対的に同様の動作を行わせることができる。こ
の場合、上記針ガイド43も前述した場合と相対的に同
じ動きを行うことになる。
【0027】魚肉内に一定間隔で打ち込まれたスモーク
の気泡は、魚肉内で上下左右に拡散するので、スモーク
注入針32の縦横の間隔及び駆動部材41による気泡の
打ち込み間隔の適切な設定により、20分〜2時間、望
ましくは30分〜1時間でそれを魚肉全体に浸透させる
ことができる。逆に、上記スモーク注入針32の間隔及
び駆動部材41の移動時における気泡の噴出間隔によっ
て決まる気泡間の間隔は、離散的に打ち込んだスモーク
の気泡が、20分〜2時間、望ましくは30分〜1時間
の間に魚肉全体に浸透するような間隔に設定する必要が
ある。
【0028】但し、必要以上に間隔を縮めると、より沢
山のスモーク注入針が必要になるばかりでなく、より多
数の気泡を打込むことになり、しかも魚肉中に入るスモ
ーク打込針31と気泡とで魚肉中の圧力が上昇するの
で、スモークを打ち込むための圧力を増大させたりする
必要が生じ、針の強度とか、曲りにも影響することにな
る。一方、気泡の打ち込み間隔が大きくなると、当然の
ことながら、魚肉全体に対する浸透に時間が必要にな
る。したがって、作業温度その他の条件を勘案して適切
に設定することが必要である。
【0029】また、魚肉内に気泡として打ち込むスモー
クの量は、魚肉全体に浸透させるに必要な最小限の量と
して、前記可動バルブ34における気室35の容量及び
そこに供給されるスモークの圧力等により設定される。
気室35にその容量を外部から調整できる機構を設けれ
ば、一層簡易に調整することができる。このスモークの
気泡は、魚肉内への浸透により完全に消失させるもので
あるから、必要以上に打ち込むことは避けなければなら
ない。
【0030】使用するスモーク注入針32の径は、その
注入針により魚肉Mに残る傷跡、スモークの注入圧力、
注入針32の曲りに対する強度等から、直径1mm以下
が望ましい。スモーク注入針32は、魚肉Mに傷跡を残
さないという点ではその径が細い程よいが、強度の高い
特殊鋼製の針を用いても、15cmの肉厚のマグロの肉
に多数の注入針を同時に打込む時、限界は直径約0.8
mmであり、それ以上でないと注入針が曲がったり折れ
たりして使用が困難である。
【0031】なお、一般的なマグロの肉の場合、筋繊維
の方向に注入針を打込むと、直径1mmの針1本にかか
る力は約140〜150gであるが、それと直交する方
向に注入針を打込む場合には、直径1mmの針1本にか
かる力が約450g前後になる。このため、厚い魚肉を
対象とし、任意の方向からスモーク注入針32を刺入し
ようとすると、注入針32の強度を高める必要があるこ
とがわかる。また、注入針32の形状は、肉中にスモー
クを万遍なく均等に速く拡散浸透させるために、図6に
示すような袋針を用いた方がより望ましいが、先端を斜
めにカットした通常の注射針状のものであっても差し支
えない。
【0032】次に、上記燻煙処理工程と相前後して行う
ところの塩分添加工程について説明する。この塩分添加
工程は、前記スモークの打ち込みと実質的に同じ方法
で、食塩水注入針により、食感、食味として塩辛さを感
じさせない程度(0.8%以下)に薄い食塩水(必要に
応じて、調味料、香辛料、ビタミンC等を含ませること
ができる。)を打込むことにより、著しく旨味を改善す
ると共に、魚肉中の水分のゲル化を急速に進行させて、
ドリップ止めの効果を促進させるためのものである。特
に、この食塩の添加を行うと、上記水分のゲル化によ
り、肉片を切断しても、前記スモーク注入針32の針跡
だけでなく、この食塩水注入針の針跡をも目視できない
ように仕上げることができる。また、上述した食塩の添
加効果としては、一般的に、魚肉の防腐保存性の改善、
保水性及び結着性の発現、魚肉の色の固定、フレーバー
の改善等を挙げることができるが、その色の固定やフレ
ーバーの改善には、主として食塩中の微量成分である硝
酸塩、亜硝酸塩が機能し、保水性及び結着性の発現によ
るドリップ止めには、食塩自体が機能するものと考えら
れる。
【0033】この塩分添加のため、前記スモーク打込機
3と実質的に同じ構成を有し、打ち込み対象物とその打
ち込み量等を異にするだけの食塩水打込機を用い、それ
により、一定間隔で並列配置した多数の食塩水注入針を
上記魚肉に刺入して、先端からの少量の食塩水の注出を
間欠的に繰り返しながら、その食塩水注入針を抜き出す
ことにより、魚肉内に離散的に上記少量の食塩水を打ち
込みを行う。食塩水打込機の動作は、前記スモーク打込
機と実質的に同一である。このようにして必要量の食塩
水を魚肉に打ち込むと、塩漬けのように必要以上の水分
が魚肉に付与されずに、前記スモークと同様に、魚肉の
内部まで全体的に塩分を短時間に浸透させることができ
て、スモークの浸透処理に際してのすぐれたドリップ止
めの効果が得られ、また、魚肉がふやけて刺身等の生食
に向かなくなることはない。
【0034】上述した燻煙処理及び塩分添加処理後の魚
肉類は、打ち込んだスモーク及び食塩水を魚肉全体に完
全に浸透、拡散させるために、20分〜2時間程度は冷
凍することなく保持する必要がある。この間を利用して
魚肉表面にも適度のスモークを浸透させるため、上記処
理後の魚肉は、0〜5℃の冷却スモークを充満させた冷
却室内に、20分〜2時間収容するのが望ましく、これ
により、外表面に接触する低温スモークを魚肉の外表面
から浸透させると同時に、気泡として打ち込んだスモー
ク及び食塩水を魚肉内に浸透、拡散させ、消失させるこ
とができる。この場合に、食肉類は、従来の方式のよう
に燻室内の網棚上にに配列状態で収容し、それらを上記
スモーク冷却装置から導入された冷却スモークと接触さ
せればよい。外表面へのスモーク接触の必要がなけれ
ば、上記冷却室に冷却スモークを充満させることなく、
冷却室内を単に温度制御された状態に保持することもで
きる。
【0035】なお、上述した燻煙処理工程及び塩分添加
工程、並びに、その後のスモーク及び食塩水を魚肉内に
浸透、拡散させる工程において、魚肉を高い温度に保持
することは好ましいことではなく、そのため、0〜5℃
程度の温度で処理するのが望ましいが、特に、上記燻煙
処理工程及び塩分添加工程は、処理の時間が非常に短
く、1分以内の処理が可能であるため、室温で処理して
も何ら差し支えない。また、スモーク及び食塩水を魚肉
内に浸透、拡散させる工程は、温度が高くなるほどその
時間を短縮することができるので、それらを考慮して適
切に設定されるべきである。また、魚肉中に打ち込む上
記スモーク及び食塩水は、それらの打ち込み量、濃度並
びに打込みの間隔等をコンピュータにより自由にコント
ロール可能とすることにより、瞬時に機械的調整を行う
ことが可能になる。
【0036】人々の食生活において、塩なしの食生活は
到底考えられず、凡ゆる料理、調理品には塩分が使用さ
れていると云っても過言ではない。また、野菜その他の
各種の生の食品において、塩辛さを感じない程度の食塩
の添加は、その食品の味を非常によくするものである。
例えば、茄子やキュウリは、塩なしの生のままよりも、
若干の塩分を付け、さらに塩を使って一夜漬けにするの
が、一層味をよくするために有効である。このことは、
どんな料理にしても同じことである。本発明は、全く同
じ原理で、生の魚をカットして何の手も加えない刺身
に、醤油やワサビをつけて食べる代わりに、茄子の一夜
漬けに相当する味を改善した刺身を提供することにもな
り、しかもそれを生食用魚肉類の保存性を高めながら実
現することができる。
【0037】
【実施例】以下に、本発明に係る高能率保存処理方法の
実施例を示す。図2に示すようなスモーク室において燻
材を燻すことにより発生させたスモークを、実質的に図
3及び図4に示すようなスモーク打込機によりマグロの
切り身に打ち込んだ。スモーク注入針は直径が1mmの
ものを用い、その間隔は、いずれの方向にも約5mmと
し、スモーク注入針からの気泡の噴出の間隔は約4mm
とした。また、上記スモーク打込機と実質的に同じ構成
を有する食塩水打込機により、0.8%の食塩水をスモ
ークの打ち込みを行った直後のマグロに打ち込んだ。ス
モークの浸透時間は、厚さ3cmの生マグロで芯まで浸
透するのに、0℃で約40時間、3℃で約25〜30時
間を要するが、この例では、スモーク及び食塩水の打ち
込みを数十秒、それらの拡散による消失を3℃の冷却室
で30分程度で完了することができた。また、ドリップ
の流出、肉色の変色もなく、生マグロの刺身以上に良好
な食感と旨味を得ることができた。さらに、処理した肉
片を切断しても、スモーク注入針の針跡ばかりでなく、
食塩水注入針の針跡も目視できなかった。
【0038】
【発明の効果】以上に詳述したように、本発明の方法に
よれば、魚肉に対するスモーク処理時間の短縮、及び塩
漬け時間の短縮を図り、更にスモーク及び食塩水のより
完全な浸透を実現する高能率保存処理方法を得ることが
できる。また、上述した塩分添加処理により、生食用魚
肉の味を改善すると共に、処理後の肉片におけるドリッ
プの流出を抑制し、スモーク注入針の針跡ばかりでなく
食塩水注入針の針跡も目視できない状態とすることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明者が行った超低温のスモーク処理の実験
において、魚肉にスモークが浸透する状況の時間的変化
を示すグラフである。
【図2】本発明の方法において所期の成分のスモークを
発生させるために用いるスモーク室の断面図である。
【図3】本発明の実施に用いるスモーク打込機の構成を
示す断面図である。
【図4】同スモーク打込機におけるスモーク注入針の配
列状態を示す下面図である。
【図5】スモーク注入針による魚肉内へのスモークの気
泡の打ち込みの態様を示す説明図である。
【図6】上記スモーク注入針の一例を示す要部断面図で
ある。
【符号の説明】
M 魚肉 1 スモーク室 2 スモーク濾過装置 3 スモーク打込機 22 フィルタ 32 スモーク注入針 51 気泡
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23B 4/00 - 4/32

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】燻材を燻すことにより発生させたスモーク
    からフィルタによってタール分及び臭いを除去し、これ
    によって得られたスモークを被処理対象の生食用魚肉類
    に接触させてスモーク処理を行うに際し、 一定間隔で並列配置した多数のスモーク注入針を該魚肉
    に刺入して、その先端からの上記スモークの少量の気泡
    状噴出を間欠的に繰り返しながら上記スモーク注入針を
    抜き出すことにより、魚肉内に離散的に上記スモークの
    気泡を打ち込む燻煙処理工程を有し、 これにより生食用魚肉類に保存処理を施すことを特徴と
    する生食用魚肉類の高能率保存処理方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の方法における燻煙処理工
    程に加えて、 一定間隔で並列配置した多数の食塩水注入針を上記魚肉
    に刺入して、先端からの少量の食塩水の注出を間欠的に
    繰り返しながら、その食塩水注入針を抜き出すことによ
    り、魚肉内に離散的に上記少量の食塩水を打ち込む塩分
    添加工程を有し、 それらにより生食用魚肉類に保存処理を施すことを特徴
    とする生食用魚肉類の高能率保存処理方法。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2に記載の方法にお
    いて、 フィルタを経たスモークを気嚢に収容し、その気嚢によ
    りスモークを多数のスモーク注入針に送給する、ことを
    特徴とする生食用魚肉類の高能率保存処理方法。
  4. 【請求項4】請求項1ないし請求項3のいずれかに記載
    の方法において、 処理後の魚肉類を、0〜5℃の冷却スモークを充満させ
    た冷却室内に20分〜2時間収容し、外表面に接触する
    冷却スモークを魚肉の外表面から浸透させると同時に、
    スモーク注入針により気泡として打ち込んだスモークを
    魚肉内に浸透、拡散させる、ことを特徴とする生食用魚
    肉類の高能率保存処理方法。
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