JP3636059B2 - ポジ型感光性樹脂前駆体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などに適した、紫外線で露光した部分がアルカリ水溶液に溶解するポジ型の感光性樹脂前駆体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
露光した部分がアルカリ現像により溶解するポジ型の耐熱性樹脂前駆体組成物としては、ポリアミド酸にナフトキノンジアジドを添加したもの、水酸基を有した可溶性ポリイミドにナフトキノンジアジドを添加したもの、水酸基を有したポリアミドにナフトキノンジアジドを添加したものなどが知られていた。
【0003】
しかしながら、通常のポリアミド酸にナフトキノンジアジドを添加したものではナフトキノンジアジドのアルカリに対する溶解阻害効果よりポリアミド酸のカルボキシル基の溶解性が高いために、ほとんどの場合希望するパターンを得ることが出来ないという問題点があった。そこで、ポリアミド酸のアルカリ溶解性をコントロールにするために、ポリアミド酸のカルボキシル基を、エステル基で保護したポリアミド酸誘導体が開発された(特開平4−168441号公報)。しかしながら、このポリアミド酸誘導体にナフトキノンジアジドを添加したものでは、ナフトキノンジアジドのアルカリに対する溶解阻害効果が非常に大きくなり、ほとんどの場合、希望するパターンを得ることはできるが、短時間に現像できない(以下、低感度と呼ぶ)及び微細パターンを解像しない(以下低解像度と呼ぶ)等を招くという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上の欠点を考慮し、本発明は、ポリマー合成時に特定の化合物を添加することによって得られる特定の分散度を有するポリマーに、フェノール性水酸基を有する化合物とナフトキノンジアジド化合物を添加することで得られる樹脂前駆体組成物が、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するために、現像による膜減りが少なく、かつ短時間に現像でき(以下高感度と呼ぶ)、さらに微細パターンを解像する(以下、高解像度と呼ぶ)であることを見いだし、発明に至ったものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする分散度が2.2から10のポリマーと、(b)フェノール性水酸基を有する化合物と、(c)エステル化したキノンジアジド化合物を含有し、(a)のポリマーが、アミノ基を3以上有する多価アミン類、無水物類基を3以上有する多価酸無水物類、イソシアネート基を3以上有する多価イソシアネート類から少なくとも1種選ばれる化合物を、ポリマー合成時に添加することによって得られるものであることを特徴とするポジ型感光性樹脂前駆体組成物である。
【0006】
【化6】
【0007】
(式中、R1は少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価から8価の有機基、R2は、少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価から6価の有機基、R3は水素、または炭素数1から20までの有機基を示す。nは10から100000までの整数、mは0から2までの整数、p、qは0から4までの整数を示す。p+q>0である。)
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における一般式(1)で表される構造単位を主成分とするポリマーとは、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環、オキサゾール環、その他の環状構造を有するポリマーとなり得るものである。環状構造となることで、耐熱性、耐溶剤性が飛躍的に向上する。
【0009】
上記一般式(1)は、水酸基を有したポリアミド酸を表しており、この水酸基の存在のために、アルカリ水溶液に対する溶解性が水酸基を有さないポリアミド酸よりも良好になる。特に、水酸基の中でもフェノール性の水酸基がアルカリ水溶液に対する溶解性より好ましい。また、フッ素原子を一般式(1)中に10重量%以上有することで、アルカリ水溶液で現像する際に、膜の界面に撥水性が適度に出るために、界面のしみこみなどが抑えられる。しかしながら、フッ素原子含有量が20重量%を越えると、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下すること、熱処理により環状構造にしたポリマーの耐有機溶媒性が低下すること、発煙硝酸に対する溶解性が低下するために好ましくない。このように、フッ素原子は10重量%以上20重量%以下含まれることが好ましい。
【0010】
上記一般式(1)のR1は酸二無水物の構造成分を表しており、この酸二無水物は芳香族環を含有し、かつ、少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価〜8価の有機基であることが好ましく、炭素数6〜30の3価または4価の有機基がさらに好ましい。
【0011】
具体的には、一般式(1)のR 1 (COOR 3 )m(OH)p基が一般式(2)に示されるような構造のものが好ましく、この場合、R4、R6は各々炭素数2〜20より選ばれる2価〜4価の有機基を示しているが、得られるポリマーの耐熱性より芳香族環を含んだものが好ましく、その中でも特に好ましい構造としてトリメリット酸、トリメシン酸、ナフタレントリカルボン酸残基のようなものを挙げることができる。またR5は炭素数3〜20より選ばれる3価〜6価の有機基が好ましい。さらに、R 5 に結合するr個の水酸基はアミド結合と隣り合った位置にあることが好ましい。このようなR 5 (OH)r基の例として、フッ素原子を含んだ、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、フッ素原子を含まない、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,4−ジアミノ−フェノール、2,5−ジアミノフェノール、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼンのアミノ基が結合したものなどを挙げることができる。
【0012】
また、一般式(2)のR7、R8は各々水素または炭素数1〜20までの有機基が良い。炭素数20より大きくなるとアルカリ現像液に対する溶解性が低下する。
【0013】
一般式(2)のo、sは0〜2の整数をあらわしており、rは1〜4までの整数を表している。rが5以上になると、得られる耐熱性樹脂膜の特性が低下する。
【0014】
一般式(1)のR1(COOR3)m(OH)p基が一般式(2)で表される化合物の中で、好ましいR 1 (COOR 3 )m(OH)p基を例示すると下記に示したような構造のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
【化7】
【0016】
また、アルカリに対する溶解性、感光性能、耐熱性を損なわない範囲で、水酸基を有していないテトラカルボン酸、ジカルボン酸で変性することもできる。この例としては、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸やそのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基にしたジエステル化合物、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族のテトラカルボン酸やそのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基にしたジエステル化合物、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。これらは、酸成分の50モル%以下の変性が好ましいが、さらに好ましくは30モル%以下である。50モル%以上の変性を行うと、アルカリに対する溶解性、感光性が損なわれる恐れがある。
【0017】
上記一般式(1)のR2は、ジアミンの構造成分を表している。この中で、R 2 としては、得られるポリマーの耐熱性より芳香族を有するものが好ましい。R 2 (OH)q基の具体的な例としてはフッ素原子を有した、ビス(アミノ−ヒドロキシ−フェニル)ヘキサフルオロプロパン、フッ素原子を有さない、ジアミノジヒドロキシピリミジン、ジアミノジヒドロキシピリジン、ヒドロキシ−ジアミノ−ピリミジン、ジアミノフェノール、ジヒドロキシベンチジンなどの化合物や一般式(3)、(4)、(5)に示す構造のものをあげることができる。
【0018】
この中で、一般式(3)内のR9、R11、一般式(4)内のR13、一般式(5)内のR16は、得られるポリマーの耐熱性より芳香族環を有した有機基が好ましい。一般式(3)内のR10、一般式(4)内のR12、R14、一般式(5)内のR15は、得られるポリマーの耐熱性より芳香族環を有した有機基が好ましい。また一般式(3)のt、uは1あるいは2の整数を示し、一般式(4)のv、一般式(5)のwは1〜4までの整数を示す。
【0019】
一般式(1)のR2(OH)q基のうち一般式(3)で表される具体例を下記に示す。
【0020】
【化8】
【0021】
また、一般式(1)のR2(OH)q基のうち一般式(4)で表される具体例を下記に示す。
【0022】
【化9】
【0023】
一般式(1)のR2(OH)q基のうち一般式(5)で表される具体例を下記に示す。
【0024】
【化10】
【0025】
一般式(3)において、R9、R11は各々炭素数2〜20より選ばれる3価〜4価の有機基を示しており、得られるポリマーの耐熱性より芳香族環を有したものが好ましい。R 9 (OH)t基、R 11 (OH)u基は、具体的にはヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基、ヒドロキシビフェニル基、ジヒドロキシビフェニル基、ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン基、ヒドロキシジフェニルエーテル基、ジヒドロキシジフェニルエーテル基などを表す。また、ヒドロキシシクロヘキシル基、ジヒドロキシシクロヘキシル基などの脂肪族の基も使用することができる。R10は炭素数2〜30までの2価の有機基を表している。得られるポリマーの耐熱性より芳香族を有した2価の基がよく、このような例としてはフェニル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルヘキサフルオロプロパン基、ジフェニルプロパン基、ジフェニルスルホン基などをあげることができるが、これ以外にも脂肪族のシクロヘキシル基なども使用することができる。
【0026】
一般式(4)において、R12、R14は各々炭素数2〜20までの2価の有機基を表している。得られるポリマーの耐熱性より芳香族を有した2価の基がよく、このような例としてはフェニル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルヘキサフルオロプロパン基、ジフェニルプロパン基、ジフェニルスルホン基などをあげることができるが、これ以外にも脂肪族のシクロヘキシル基なども使用することができる。R13は、炭素数3〜20より選ばれる3価〜6価の有機基を示しており、得られるポリマーの耐熱性より芳香族環を有したものが好ましい。R 13 (OH)v基は、具体的にはヒロドキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基、ヒドロキシビフェニル基、ジヒドロキシビフェニル基、ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン基、ヒドロキシジフェニルエーテル基、ジヒドロキシジフェニルエーテル基などを表す。また、ヒドロキシシクロヘキシル基、ジヒドロキシシクロヘキシル基などの脂肪族の基も使用することができる。
【0027】
一般式(5)においてR15は炭素数2〜20より選ばれる2価の有機基を表している。得られるポリマーの耐熱性から芳香族を有した2価の基がよく、このような例としてはフェニル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルヘキサフルオロプロパン基、ジフェニルプロパン基、ジフェニルスルホン基などをあげることができるが、これ以外にも脂肪族のシクロヘキシル基なども使用することができる。R16は炭素数3〜20より選ばれる3価〜6価の有機基を示しており、得られるポリマーの耐熱性より芳香族環を有したものが好ましい。R 16 (OH)w基は、具体的にはヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基、ヒドロキシビフェニル基、ジヒドロキシビフェニル基、ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン基、ヒドロキシジフェニルエーテル基、ジヒドロキシジフェニルエーテル基などを表す。また、ヒドロキシシクロヘキシル基、ジヒドロキシシクロヘキシル基などの脂肪族の基も使用することができる。
【0028】
また、1〜40モル%の範囲の、他のジアミン成分を用いて変性することもできる。このような例として、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、アミノフェノキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(トリフルオロメチル)ベンチジン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホンあるいはこれらの芳香族環にアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物など、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。このようなジアミン成分を40モル%以上共重合すると得られるポリマーの耐熱性が低下する。
【0029】
一般式(1)のR3は水素、または炭素数1〜20の有機基を表している。得られるポジ型感光性樹脂前駆体溶液の安定性からは、R3は有機基が好ましいが、アルカリ水溶液の溶解性より見ると水素が好ましい。本発明においては、水素原子とアルキル基を混在させることができる。このR3の水素と有機基の量を制御することで、アルカリ水溶液に対する溶解速度が変化するので、この調整により適度な溶解速度を有したポジ型感光性樹脂前駆体組成物を得ることができる。好ましい範囲は、R3の10%〜90%が水素原子であることである。R3の炭素数が20を越えるとアルカリ水溶液に溶解しなくなる。以上よりR3は、炭素数1〜16までの炭化水素基を少なくとも1つ以上含有し、その他は水素原子であることが好ましい。
【0030】
本発明では、一般式(1)で表される構造単位を主成分とする分散度が2.2から10のポリマーであることが特徴であり、本発明における分散度とは、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割った値で定義され、分子量測定に利用されるゲルパーミッションクロマトグラフィ(以下、GPCと呼ぶ。)を用いて、容易に算出される。本発明でいう分散度(Mw/Mn)とは、下記の条件で設定されたGPC(Model510、Waters社製)を用いて、ポリマーサンプルを測定し、標準ポリスチレンの校正曲線により、ポリマーのMw、Mnを算出し、これらを用いて求めたものである。
【0031】
GPC設定条件
接続カラム:TSKガードカラムα、TSK−GELα2500、TSK−GELα40000(以上東ソー(株))製
カラム温度:40℃
使用展開溶媒:NMP(LiCl(0.05mol/l)、H3PO4 (0.05mol/l)を含む)
使用展開溶媒の流速:0.4 ml/min。
【0032】
一般式(1)において、分散度が2.2から10のポリマーは、アミノ基を3以上有する多価アミン類、無水物類基を3以上有する多価酸無水物類、イソシアネート基を3以上有する多価イソシアネート類等の分散度調節剤を、ポリマー合成時に、添加する事によって、容易に得ることができる。このポリマーの好ましい分散度は、2.5から9であり、特に好ましくは2.5から8.5である。
【0034】
分散度調節剤の導入割合は、多価イソシアネート類、多価アミン類、多価酸無水物類では、ジアミン成分に対して、0.1〜70モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜65モル%導入することによって、容易に前記分散度を有するポリマーを得ることができる。0.1モル%未満であると分散度が2.1以下になり、このポリマーを用いてポジ型感光性樹脂前駆体組成物を作成した場合、高解像度を有するが低感度となり、本発明の高解像度かつ高感度を有しない。また、71モル%以上であると、分散度が11以上になり、このポリマーを用いてポジ型感光性樹脂前駆体組成物を作成した場合、高感度を有するが低解像度となり、本発明の高解像度かつ高感度を有しない。
【0036】
ここで言う多価アミン類とはアミノ基を3以上有する化合物であり、具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0037】
【化11】
【0038】
なかでも好ましくは下記の化合物である。
【0039】
【化12】
【0044】
また、ここで言う多価酸無水物類とは無水物類基を3以上有する化合物であり、具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0045】
【化15】
【0046】
なかでも好ましくは下記の化合物である。
【0047】
【化16】
【0052】
多価イソシアネート類とはイソシアネート基を3以上有する化合物であり、具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0053】
【化19】
【0054】
なかでも好ましくは下記の化合物である。
【0055】
【化20】
【0056】
上記に、一連の分散度調節剤を具体的に示したが、分散度が上記範囲内になるものであれば、分散度調節剤種は特に限定されない。
【0057】
また一般式(1)のmはカルボキシル基の数を示しており、0〜2までの整数を示している。一般式(1)または一般式(2)のnは本発明のポリマーの構造単位の繰り返し数を示しており、10〜100000の範囲であることが好ましい。
【0058】
ポリアミド酸と類似の耐熱性高分子前駆体としてポリヒドロキシアミドをポリアミド酸の代わりに使用することも出来る。このようなポリヒドロキシアミドの製造方法としては、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を縮合反応させることで得ることが出来る。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物を加える方法やピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下するなどがある。
【0059】
ポリヒドロキシアミドを使用する場合、ポリヒドロキシアミドの溶液にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルのような感光剤を加えることで、紫外線で露光した部分をアルカリ水溶液で除去できるポジ型の感光性耐熱性樹脂前駆体組成物を得ることが出来る。
【0060】
さらに、基板との接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲で R1、R2にシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを1〜10モル%共重合したものなどがあげられる。
【0061】
本発明のポジ型感光性樹脂前駆体組成物に含まれる(a)のポリマーは一般式(1)で表される構造単位のみからなるものであっても良いし、他の構造単位との共重合体あるいはブレンド体であっても良い。その際、一般式(1)で表される構造単位を50モル%以上含有していることが好ましい。共重合あるいはブレンドに用いられる構造単位の種類および量は最終加熱処理によって得られるポリイミド系ポリマの耐熱性を損なわない範囲で選択することが好ましい。
【0062】
本発明の感光性樹脂前駆体組成物に含まれる(a)のポリマーは、公知の方法を利用して合成される。例えば、低温中でテトラカルボン酸2無水物、ジアミン化合物及び分散度調節剤を反応させる方法、テトラカルボン酸2無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン及び分散度調節剤を添加し、その後、縮合剤を加えて反応させる方法、テトラカルボン酸2無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミン及び分散度調節剤を添加し、反応させる方法などの方法を利用して合成することができる。
【0063】
また、ポリマー中に導入された、本発明に使用の分散度調節剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、分散度調節剤が導入されたポリマーを、酸性溶液に溶解し、ポリマーの構成単位であるアミン成分と酸無水成分に分解、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、本発明に使用の分散度調節剤を容易に検出できる。これとは別に、分散度調節剤が導入されたポリマー成分を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトル及びC13NMRスペクトル測定でも、容易に検出可能である。
【0064】
本発明で使用されるフェノール性水酸基を有する化合物としては、たとえば、Bis−Z、BisOC−Z、BisOPP−Z、BisP−CP、Bis26X−Z、BisOTBP−Z、BisOCHP−Z、BisOCR−CP、BisP−MZ、BisP−EZ、Bis26X−CP、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisCR−IPZ、BisOCP−IPZ、BisOIPP−CP、Bis26X−IPZ、BisOTBP−CP、TekP−4HBPA(テトラキスP−DO−BPA)、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisOFP−Z、BisRS−2P、BisPG−26X、BisRS−3P、BisOC−OCHP、BisPC−OCHP、Bis25X−OCHP、Bis26X−OCHP、BisOCHP−OC、Bis236T−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、BisRS−OCHP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)が挙げられる。
【0065】
これらのうち、好ましいフェノール性水酸基を有する化合物としては、たとえば、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−F等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいフェノール性水酸基を有する化合物としては、たとえば、Bis−Z、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisRS−2P、BisRS−3P、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−Fである。このフェノール性水酸基を有する化合物を添加することで、得られる樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するために、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像が容易になる。
【0066】
このようなフェノール性水酸基を有する化合物の添加量としては、ポリマー100重量部に対して、好ましくは1から50重量部であり、さらに好ましくは3から40重量部の範囲である。
【0067】
本発明に添加される(c)のエステル化したキノンジアジド化合物としては、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物は、(b)のフェノール性水酸基を有する化合物と同じであっても異なってもよい。このような化合物としては、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X(以上商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、メチレンビスフェノール、BisP−AP(商品名、本州化学工業(株)製)などの化合物に4−ナフトキノンジアジドスルホン酸あるいは5−ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合で導入したものが好ましいものとして例示することが出来るが、これ以外の化合物を使用することもできる。
【0068】
また、本発明で用いるナフトキノンジアジド化合物の分子量が1000以上になると、その後の熱処理においてナフトキノンジアジド化合物が十分に熱分解しないために、得られる膜の耐熱性が低下する、機械特性が低下する、接着性が低下するなどの問題が生じる可能性がある。このような観点より見ると、好ましいナフトキノンジアジド化合物の分子量は300から1000である。さらに好ましくは、350から800である。このようなナフトキノンジアジド化合物の添加量としては、ポリマー100重量部に対して、好ましくは1から50重量部である。
【0069】
また、必要に応じて上記、感光性樹脂前駆体組成物と基板との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を混合しても良い。また、2酸化ケイ素、2酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを添加することもできる。
【0070】
さらにシリコンウエハなどの下地基板との接着性を高めるために、シランカップリング剤、チタンキレート剤などを感光性樹脂前駆体組成物のワニスに0.5から10重量%添加したり、下地基板をこのような薬液で前処理したりすることもできる。
【0071】
ワニスに添加する場合、メチルメタクリロキシジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、などのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤をワニス中のポリマーに対して0.5から10重量%添加する。
【0072】
基板を処理する場合、上記で述べたカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5から20重量%溶解させた溶液をスピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などで表面処理をする。場合によっては、その後50℃から300℃までの温度をかけることで、基板と上記カップリング剤との反応を進行させる。
【0073】
次に、本発明の感光性樹脂前駆体組成物を用いて耐熱性樹脂パターンを形成する方法について説明する。
【0074】
感光性樹脂前駆体組成物を基板上に塗布する。基板としてはシリコンウエハ、セラミックス類、ガリウムヒ素などが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティングなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが通常、乾燥後の膜厚が、0.1から150μmになるように塗布される。
【0075】
次に感光性樹脂前駆体組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性樹脂前駆体組成物皮膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50度から150度の範囲で1分から数時間行うのが好ましい。
【0076】
次に、この感光性樹脂前駆体組成物皮膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いるのが好ましい。
【0077】
耐熱性樹脂のパターンを形成するには、露光後、現像液を用いて露光部を除去することによって達成される。現像液としては、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクロン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をする。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしても良い。
【0078】
現像後、200度から500度の温度を加えて耐熱性樹脂皮膜に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分から5時間実施する。一例としては、130度、200度、350度で各30分づつ熱処理する。あるいは室温より400度まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0079】
本発明による感光性樹脂前駆体組成物により形成した耐熱性樹脂皮膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜などの用途に用いられる。
【0080】
【実施例】
以下実施例および技術をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の感光性樹脂前駆体ポリマー及び組成物の評価は以下の方法により行った。
【0081】
ポリマーのGPC測定による分散度の算出
下記の条件で設定されたGPC(Model510、Waters社製)を用いて、ポリマーサンプルを測定し、標準ポリスチレンの校正曲線により、ポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び、分散度(Mw/Mn)を算出した。
【0082】
GPC設定条件
接続カラム:TSKガードカラムα、TSK−GELα2500、TSK−GELα40000(以上東ソー(株))製
カラム温度:40℃
使用展開溶媒:NMP(LiCl(0.05mol/l)、H3PO4 (0.05mol/l)を含む)
使用展開溶媒の流速:0.4 ml/min。
【0083】
感光性樹脂前駆体膜の作製
6インチシリコンウエハ上に、感光性樹脂前駆体組成物(以下ワニスと呼ぶ)をプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ついでホットプレ−ト(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて、120℃で4分プリベークすることにより、感光性樹脂前駆体膜を得た。
【0084】
膜厚の測定方法
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を使用し、屈折率1.64で測定を行った。
【0085】
露光
露光機((株)ニコン製i線ステッパーNSR−1755−i7A)に、パターンの切られたレチクルをセットし、露光時間を変化させて(365nmの強度)i線露光を行った。
【0086】
現像
大日本スクリーン製造(株)製SCW−636の現像装置を用い、50回転で水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38%水溶液を10秒間噴霧した。この後、0回転で60秒間静置し、400回転で水にてリンス処理、3000回転で10秒振り切り乾燥した。
【0087】
残膜率の算出
残膜率は以下の式に従って算出した。
残膜率(%)=現像後の膜厚÷プリベーク後の膜厚×100
感度の算出
露光、現像後、50μmのライン・アンド・スペースパターン(1L/1S)を1対1の幅に形成する露光時間(以下、これを最適露光時間という)を求めた。
【0088】
解像度の算出
露光、現像後、50μmのライン・アンド・スペースパターン(1L/1S)を1対1の幅に形成する最適露光時間における最小のパターン寸法を解像度とした。
【0089】
合成例1 ヒドロキシル基含有酸無水物(a)の合成
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)18.3g(0.05モル)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3モル)をガンマブチロラクトン100gに溶解させ、−15℃に冷却した。ここにガンマブチロラクトン50gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11モル)を反応液の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で4時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1lに投入して酸無水物(a)を得た。
【0090】
【化21】
【0091】
合成例2 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(b)の合成
BAHF18.3g(0.05モル)をアセトン100ml、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに4−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mlに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0092】
固体30gを300mlのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mlに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、ジアミン化合物(b)を得た。得られた固体をそのまま反応に使用した。
【0093】
【化22】
【0094】
合成例3 ヒドロキシル基含有ジアミン(c)の合成
2−アミノ−4−ニトロフェノール15.4g(0.1モル)をアセトン50ml、プロピレンオキシド30g(0.34モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここにイソフタル酸クロリド11.2g(0.055モル)をアセトン60mlに溶解させた溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させた。その後、室温に戻して生成している沈殿をろ過で集めた。
【0095】
この沈殿をGBL200mlに溶解させて、5%パラジウム−炭素3gを加えて、激しく攪拌した。ここに水素ガスを入れた風船を取り付け、室温で水素ガスの風船がこれ以上縮まない状態になるまで攪拌を続け、さらに2時間水素ガスの風船を取り付けた状態で攪拌した。攪拌終了後、ろ過でパラジウム化合物を除き、溶液をロータリーエバポレーターで半量になるまで濃縮した。ここにエタノールを加えて、再結晶を行い、目的の化合物の結晶を得た。
【0096】
【化23】
【0097】
合成例4 ヒドロキシル基含有ジアミン(d)の合成
2−アミノ−4−ニトロフェノール15.4g(0.1モル)をアセトン100ml、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに4−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mlに溶解させた溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させた。その後、室温に戻して生成している沈殿をろ過で集めた。この後、合成例2と同様にして目的の化合物の結晶を得た。
【0098】
【化24】
【0099】
合成例5 三価酸無水物(e)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)14.1g(0.033モル)と無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11モル)をガンマブチロラクトン150gに溶解させ、5℃に冷却した。ここにガンマブチロラクトン50gに溶解させたトリエチルアミン11.1g(0.11モル)を反応液の温度が30℃を越えないように滴下した。滴下終了後、室温で4時間反応させた。この溶液を濾過しトリエチルアミンの塩酸塩を除去、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1lに投入して酸無水物(e)を得た。
【0100】
【化25】
【0101】
合成例6 三価酸無水物(f)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)10.1g(0.033モル)と無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11モル)をガンマブチロラクトン150gに溶解させ、5℃に冷却した。ここにガンマブチロラクトン50gで希釈したトリエチルアミン11.1g(0.11モル)を反応液の温度が30℃を越えないように滴下した。滴下終了後、室温で4時間反応させた。この溶液を濾過しトリエチルアミンの塩酸塩を除去、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1lに投入して酸無水物(f)を得た。
【0102】
【化26】
【0103】
合成例7 三価酸無水物(g)の合成
乾燥窒素気流下、3,4,4’−トリアミノジフェニルエーテル(東京化成工業(株)製)7.1g(0.033モル)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3モル)をガンマブチロラクトン100gに溶解させ、−15℃に冷却した。ここにガンマブチロラクトン50gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11モル)を反応液の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で4時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1lに投入して酸無水物(g)を得た。
【0104】
【化27】
【0105】
合成例8 キノンジアジド化合物(1)の合成
乾燥窒素気流下、BisRS−2P(商品名、本州化学工業(株)製)16.10g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド26.86g(0.1モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン10.12gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入させた。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(1)を得た。
【0106】
【化28】
【0107】
合成例9 キノンジアジド化合物(2)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)、15.31g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド40.28g(0.15モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gを用い、合成例8と同様にしてキノンジアジド化合物(2)を得た。
【0108】
【化29】
【0109】
合成例10 キノンジアジド化合物(3)の合成
乾燥窒素気流下、BIR−PTBP(商品名、旭有機材工業(株)製)19.72g(0.05モル)と4−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド26.86g(0.1モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン10.12gを用い、合成例8と同様にしてキノンジアジド化合物(3)を得た。
【0110】
【化30】
【0111】
合成例11 キノンジアジド化合物(4)の合成
乾燥窒素気流下、ビスフェノールA 11.41g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド26.86g(0.1モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン10.12gを用い、合成例8と同様にしてキノンジアジド化合物(4)を得た。
【0112】
【化31】
【0113】
各実施例、比較例に使用したフェノール性水酸基を有する化合物を下記に示した。
【0114】
【化32】
【0115】
比較例1
乾燥窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.2g(0.016モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、4−エチニルアニリン(富士写真フイルム(株)製)1.11g(0.0095モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50gに溶解させた。ここにヒドロキシ基含有酸無水物(a)21.4g(0.03モル)をNMP14gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間反応させた。その後、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間攪拌した。得られた溶液について、0.04gを計りとり、NMP10gで希釈して、まず、GPC測定を行った。
【0116】
次に、この得られた溶液40gに上記に示したナフトキノンジアジド化合物(1)2g、フェノール性水酸基を有する化合物としてBis−Z(商品名、本州化学工業(株)製)1gを加えて感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスAを得た。得られたワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリイミド前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0117】
実施例1
乾燥窒素気流下、合成例2で得られたジアミン(b)13.6g(0.0225モル)、分散度調節剤として、下記に示したスミジュールN3300(住友バイエルウレタン(株)製)0.56g(0.0011モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50gに溶解させた。ここにヒドロキシ基含有酸無水物(a)17.5g(0.025モル)をピリジン30gとともに加えて、60℃で6時間反応させた。
【0118】
【化33】
【0119】
反応終了後、溶液を水2lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。このようにして得たポリマーの固体0.01gを計りNMP10gに溶解させ、得られた溶液についてまず、GPC測定を行った。
【0120】
次に、得たポリマーの固体10gを計り、上記に示したナフトキノンジアジド化合物(2)2g、フェノール性水酸基を有する化合物としてBisRS−2P(商品名、本州化学工業(株)製)2.0g、ビニルトリメトキシシラン1gとをガンマブチロラクトン30gに溶解させて感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスBを得た。得られたワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリイミド前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0121】
実施例2
乾燥窒素気流下、合成例3で得られたジアミン化合物(c)16.06g(0.0425モル)、分散度調節剤として、下記に示した3,4,4’−トリアミノジフェニルエーテル(東京化成工業(株)製)3.61g(0.0166モル)、1、3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)をNMP50gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物12.4g(0.04モル)をNMP21gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。ここに無水マレイン酸0.98g(0.01モル)を加え、50℃で2時間攪拌後、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール14.7g(0.1モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間攪拌した。得られた溶液について0.04gを計りとり、NMP10gで希釈して、まず、GPC測定を行った。
【0122】
【化34】
【0123】
次に、得られた溶液30gに上記に示したナフトキノンジアジド化合物(3)1.6g、フェノール性水酸基を有する化合物としてTrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)0.8gを溶解させて感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスCを得た。得られたワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリイミド前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0124】
実施例3
乾燥窒素気流下、合成例4で得られたジアミン化合物(d)6.08g(0.025モル)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.21g(0.021モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン0.62g(0.0025モル)をNMP70gに溶解させた。ヒドロキシル基含有酸無水物(a)24.99g(0.035モル)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物4.41g(0.015モル)、分散度調節剤として、合成例5で得られた三価酸無水物(e)1.42g(0.0015モル)、合成例6で得られた三価酸無水物(f)0.83g(0.001モル)を室温でNMP25gとともに加え、そのまま室温で1時間、その後50℃で2時間攪拌した。ついで、グリシジルメチルエーテル17.6g(0.2モル)をNMP10gで希釈した溶液を加え、70℃で6時間攪拌した。得られた溶液について0.04gを計りとり、NMP10gで希釈して、まず、GPC測定を行った。
【0125】
次に、このポリマー溶液40gに上記に示したナフトキノンジアジド化合物(4)2.5g、フェノール性水酸基を有する化合物としてBIR−PC(商品名、旭有機材工業(株)製)2gを溶解させて感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスDを得た。得られたワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリイミド前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0126】
実施例4
乾燥窒素気流下、合成例4で得られたジアミン化合物(d)6.08g(0.025モル)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.21g(0.021モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン0.62g(0.0025モル)をNMP70gに溶解させた。ヒドロキシル基含有酸無水物(a)24.99g(0.035モル)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物4.41g(0.015モル)、分散度調節剤として、合成例7で得られた三価酸無水物(g)2.21g(0.0030モル)を室温でNMP25gとともに加え、そのまま室温で1時間、その後50℃で2時間攪拌した。ついで、グリシジルメチルエーテル17.6g(0.2モル)をNMP10gで希釈した溶液を加え、70℃で6時間攪拌した。得られた溶液について0.04gを計りとり、NMP10gで希釈して、まず、GPC測定を行った。
【0127】
次に、このポリマー溶液40gに上記に示したナフトキノンジアジド化合物(4)2.5g、フェノール性水酸基を有する化合物としてBIR−PC(商品名、旭有機材工業(株)製)2gを溶解させて感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスEを得た。得られたワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリイミド前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0128】
実施例5
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン15.56g(0.0425モル)、分散度調節剤として下記に示したデスモジュールRE(住友バイエルウレタン(株)製)、2.76g(0.0075モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50g、に溶解させ、溶液の温度を50〜60℃に保ち、1時間攪拌反応を続けた。その後溶液の温度を−15℃まで冷却し、グリシジルメチルエーテル26.4g(0.3モル)を添加した。この−15℃の溶液に、ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド7.38g(0.025モル)、イソフタル酸ジクロリド5.08g(0.025モル)をガンマブチロラクトン25gに溶解させた溶液を内部の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、6時間−15℃で攪拌を続けた。
【0129】
【化35】
【0130】
反応終了後、溶液を水3lに投入して白色の沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。このようにして得たポリマーの固体0.01gを計りNMP10gに溶解させ、得られた溶液についてまず、GPC測定を行った。
【0131】
このようにして得られたポリマー粉体10gに上記に示したナフトキノンジアジド化合物(2)2g、Bis−Z(商品名、本州化学工業(株)製)1.0gをNMP30gに溶解させて感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物のワニスFを得た。得られたワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0132】
比較例2
比較例1の4,4’−ジアミノフェニルエーテル3.2gを5.01g(0.025モル)に変更し、分散度調節剤を用いない他は、比較例1と同様に行い、ポリマー溶液につづいて、感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスGを得た。得られたポリマー溶液を用いて前記のようにGPC測定を、ワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリイミド前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0133】
比較例3
実施例1の分散度調節剤を用いない他は、実施例1と同様に行い、ポリマー溶液つづいて、感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスHを得た。得られたポリマー溶液を用いて前記のようにGPC測定を、ワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリイミド前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0134】
比較例4
実施例2の分散度調節剤およびフェノール性水酸基を有する化合物TrisP−PAを用いない他は、実施例2と同様に行い、ポリマー溶液つづいて、感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスIを得た。得られたポリマー溶液を用いて前記のようにGPC測定を、ワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリイミド前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0135】
比較例5
実施例3の分散度調節剤を用いない他は、実施例3と同様に行い、ポリマー溶液つづいて、感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスJを得た。得られたポリマー溶液を用いて前記のようにGPC測定を、ワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリイミド前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0136】
比較例6
実施例5の2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン15.56gを18.3g(0.05モル)に変更し、分散度調節剤を用いない他は、実施例5と同様に行い、ポリマー溶液つづいて、感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物のワニスKを得た。得られたポリマー溶液を用いて前記のようにGPC測定を、ワニスを用いて前記のように、シリコンウエハ上に感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体膜を作製、露光、現像し、ワニスの感度、残膜率、解像度について評価を行った。
【0137】
実施例1〜5、比較例1〜6の評価結果については表1に示した。
【0138】
【表1】
【0139】
【発明の効果】
本発明によれば、アルカリ水溶液で現像でき、解像度、感度、残膜率の優れたポジ型の感光性樹脂前駆体組成物を得ることができる。
Claims (5)
- (a)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする分散度が2.2から10のポリマーと、(b)フェノール性水酸基を有する化合物と、(c)エステル化したキノンジアジド化合物を含有し、(a)のポリマーが、アミノ基を3以上有する多価アミン類、無水物類基を3以上有する多価酸無水物類、イソシアネート基を3以上有する多価イソシアネート類から少なくとも1種選ばれる化合物を、ポリマー合成時に添加することによって得られるものであることを特徴とするポジ型感光性樹脂前駆体組成物。
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