JP3635708B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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JP3635708B2 JP04587195A JP4587195A JP3635708B2 JP 3635708 B2 JP3635708 B2 JP 3635708B2 JP 04587195 A JP04587195 A JP 04587195A JP 4587195 A JP4587195 A JP 4587195A JP 3635708 B2 JP3635708 B2 JP 3635708B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELと略記する)素子に関し、さらに詳しくは、発光性に優れるとともに、素子化しても結晶化することのない熱安定性の良好な、特定のブタジエン構造を有する化合物を含有する薄膜性に優れ、かつ光輝度化及び長寿命化が図られた有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界発光を利用したEL素子は、自己発光のため視認性が高く、また完全固体素子であるため耐衝撃性に優れるという特徴を有しており、薄型ディスプレイ素子,液晶ディスプレイのバックライト,平面光源などに用いられている。現在実用化されているEL素子は、分散型EL素子である。この分散型EL素子は、数10V,10kHz以上の交流電圧を必要とするため駆動回路が複雑である上、製造コストが高く、かつ輝度や耐久性が不充分であるなどの欠点を有している。
【0003】
一方、有機薄膜EL素子は、駆動電圧が10V程度まで低下させることができ、高輝度に発光するため近年盛んに研究が行われ、多くの有機薄膜EL素子が開発されており、例えば、「Appl. Phys. Lett. 」第151巻,第913〜915ページ(1987年)、特開昭59−194393号公報、米国特許第4,539,507号明細書、特開昭63−295695号公報、米国特許第4,720,432号明細書、特開昭63−264692号公報などが報告又は提案されている。これらにおいては、陽極,正孔注入輸送層,発光層及び陰極からなる電界発光素子が開示されており、具体的には、正孔注入輸送材料として芳香族第三級アミンが、また発光材料としてアルミニウムキレート錯体が代表的な例として挙げられている。
【0004】
また、本発明に最も近接した技術として、特開平5−105638号公報記載のジスチリル化合物を用いた例があるが、この場合、素子の輝度及び耐久性が不充分である。さらに、正孔輸送性の発光材料も知られており、このようなものの代表例としてトリフェニルアミン骨格を有するスチリルアミン化合物を挙げることができる。しかしながら、このスチリルアミン化合物は正孔輸送性に優れているものの、結晶化しやすく、薄膜性に優れる有機EL素子が得られにくいという欠点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、電界発光性に優れるとともに、素子化しても結晶化することのない熱安定の良好な化合物を含有する薄膜性に優れ、かつ高輝度化及び長寿命化が図られた有機EL素子を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する有機EL素子を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のブタジエン構造を有する化合物を、有機EL素子における発光層や正孔注入輸送層などの有機機能層に含有させることにより、その目的を達成しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、一般式
【0007】
【化3】
Figure 0003635708
【0008】
〔式中、Arは置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜18の芳香族複素環式基、 1 は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基,炭素数2〜18の芳香族複素環式基又は炭素数1〜6のアルキル基、R 2 〜R4 は、それぞれ独立に水素原子,置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基,炭素数2〜18の芳香族複素環式基又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、またArとR1 とがたがいに結合して飽和若しくは不飽和の5員環又は6員環を形成していてもよい。Qは一般式(II)
【0009】
【化4】
Figure 0003635708
【0010】
で表される置換基を有していてもよいアリーレン基,あるいは置換基を有する若しくは有しないナフチレン基,アントラセニレン基,ピレニレン基,ビナフチレン基又は2価の炭素数2〜18の芳香族複素環式基、あるいは置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基3個をもつ2価又は3価のトリアリールアミノ基を示し、nは1又は2を示す。なお、ここでいう置換基とはハロゲン原子,炭素数6〜20のアリール基,炭素数1〜6のアルキル基,炭素数1〜6のアルコキシ基,炭素数7〜20のアラルキル基,炭素数6〜18のアリールオキシ基,置換若しくは無置換のアミノ基又は水酸基を示す。〕
で表されるブタジエン構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機EL素子を提供するものである。
【0011】
本発明の有機EL素子においては、一般式(I)
【0012】
【化5】
Figure 0003635708
【0013】
で表されるブタジエン構造を有する化合物が用いられる。
上記一般式(I)において、Arは置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜18の芳香族複素環式基を示すが、これらの中で置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基が好ましい。また、 1 は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基,炭素数2〜18の芳香族複素環式基又は炭素数1〜6のアルキル基、R 2 〜R4 は、それぞれ独立に水素原子,置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基,炭素数2〜18の芳香族複素環式基又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよいが、R1 は置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜18の芳香族複素環式基が好ましく、特に置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基が好適である。また、ArとR1 はたがいに結合して飽和若しくは不飽和の5員環又は6員環を形成していてもよい。
Qは、一般式(II)
【0014】
【化6】
Figure 0003635708
【0015】
で表される置換基を有していてもよいアリーレン基、あるいは置換基を有する若しくは有しないナフチレン基,アントラセニレン基,ピレニレン基,ビナフチレン基又は2価の炭素数2〜18の芳香族複素環式基、あるいは置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基3個をもつ2価又は3価のトリアリールアミノ基を示し、nは1又は2を示す。nは1が好ましく、そしてQとしては、上記一般式(II)で表される置換基を有していてもよいアリーレン基、あるいは置換基を有する若しくは有しないナフチレン基,アントラセニレン基,ピレニレン基又はビナフチレン基が好ましいが、特に上記一般式(II) で表される置換基を有していてもよいアリーレン基、すなわちp−位に結合手を有するフェニレン基,ビフェニレン基,ターフェニレン基又はクォーターフェニレン基が好適である。
【0016】
ここで、炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基,ナフチル基,アントラセニル基,ビナフチル基,ピレニル基などが、炭素数2〜18の芳香族複素環式基としては、例えばピリジル基,キノリル基,カルバゾリル基,オキサジアゾリル基,チアジアゾリル基,トリアゾリル基,チエニル基などが、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,t−ブチル基,ネオペンチル基,n−ヘキシル基,イソヘキシル基などが挙げられる。
また、ここでいう置換基とは、ハロゲン原子,炭素数6〜20のアリール基,炭素数1〜6のアルキル基,炭素数1〜6のアルコキシ基,炭素数7〜20のアラルキル基,炭素数6〜18のアリールオキシ基,置換若しくは無置換のアミノ基又は水酸基を示す。上記ハロゲン原子としては、F,Cl,Br,Iが挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基,ナフチル基,アントラセニル基,ビナフチル基,ピレニル基などが挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,t−ブチル基,ペンチル基,ネオペンチル基,n−ヘキシル基,イソヘキシル基などが、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基,エトキシ基,n−プロポキシ基,イソプロポキシ基,n−ブチルオキシ基,イソブチルオキシ基,sec−ブチルオキシ基,t−ブチルオキシ基,ペンチルオキシ基,ネオペンチルオキシ基,n−ヘキシルオキシ基,イソヘキシルオキシ基などが、炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基,トルイルメチル基,フェニルエチル基などが、炭素数6〜18のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基,ナフトキシ基などが、置換アミノ基としては、例えばメチルアミノ基,ジメチルアミノ基,ジフェニルアミノ基などが挙げられる。これらの置換基は1個導入されていてもよく、2個以上導入されていてもよい。
また、上記一般式(I)で表される化合物においては、Qに結合する複数のAr−C(R1 )=C(R2 )−C(R3 )=C(R4 )−基は、たがいに同一であっても異なっていてもよい。
この一般式(I)で表される化合物の製造方法については特に制限はなく、種々の公知の方法によって製造することができるが、次の二つの方法で製造するのが有利である。
【0017】
<方法1>
一般式(III)
【0018】
【化7】
Figure 0003635708
【0019】
〔式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示し、Q及びR4 は前記と同じである。〕
で表されるホスホン酸エステルと、一般式(IV)
【0020】
【化8】
Figure 0003635708
【0021】
〔式中、Ar,R1 ,R2 及びR3 は前記と同じである。〕
で表されるカルボニル化合物とを、塩基の存在下に縮合させる(Wittig反応又はWittig-Hornor 反応)ことにより、製造することができる。
【0022】
<方法2>
一般式(V)
【0023】
【化9】
Figure 0003635708
【0024】
〔式中、Q及びR4 は前記と同じである。〕
で表されるカルボニル化合物と、一般式(VI)
【0025】
【化10】
Figure 0003635708
【0026】
〔式中、R,Ar,R1 ,R2 又はR3 は前記と同じである。〕
で表されるホスホン酸エステルとを、塩基の存在下に縮合させる(Wittig反応又は Wittig-Hornor反応)ことにより、製造することができる。
これらの製造方法においては、通常反応溶媒が用いられる。この反応溶媒としては、炭化水素類,アルコール類,エーテル類が好ましく、具体的にはメタノール;エタノール;イソプロパノール;ブタノール;2−メトキシエタノール;1,2−ジメトキシエタン;ビス(2−メトキシエチル)エーテル;ジオキサン;テトラヒドロフラン;トルエン;キシレン;ジメチルスホキシド;N,N−ジメチルホルムアミド;N−メチルピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。特にテトラヒドロフラン及びジメチルスルホキシドが好適である。
また、縮合剤としては、例えば水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,ナトリウムアミド,水酸化ナトリウム,n−ブチルリチウム,ナトリウムメチラート,カリウムt−ブトキシドなどが好ましく用いられ、特にn−ブチルリチウム及びカリウムt−ブトキシドが好適である。
反応温度は、使用する原料の種類などにより異なり、一概に定めることはできないが、通常0〜100℃の範囲、好ましくは0℃〜室温の範囲で選ばれる。
【0027】
上記一般式(I)で表されるブタジエン構造を有する化合物の具体例としては、以下に示す化合物(1)〜(22)などを挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0028】
【化11】
Figure 0003635708
【0029】
【化12】
Figure 0003635708
【0030】
【化13】
Figure 0003635708
【0031】
【化14】
Figure 0003635708
【0032】
【化15】
Figure 0003635708
【0033】
【化16】
Figure 0003635708
【0034】
上記一般式(I)で表されるブタジエン構造を有する化合物(以下、ブタジエン化合物と称す。)は、有機EL素子における発光材料,正孔注入輸送材料,電子注入輸送材料,電荷注入補助剤などとして有効である。
このブタジエン化合物を発光層とする場合は、例えば蒸着法,スピンコート法,キャスト法などの公知の方法によって、一般式(I)のブタジエン化合物を薄膜化することにより形成することができるが、特に分子堆積膜とすることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、該化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶液状態又は液相状態から固体化され形成された膜のことであり、例えば蒸着膜などを示すが、通常この分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは区別することができる。また、該発光層は、特開昭59−194393号公報などに開示されているように、樹脂などの結着剤と該化合物とを、溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化し、形成することができる。
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、適宜状況に応じて選ぶことができるが、通常5nmないし5μmの範囲で選定される。
【0035】
このEL素子における発光層は、(1)電界印加時に、陽極又は正孔注入輸送層により正孔を注入することができ、かつ陰極又は電子注入層より電子を注入することができる注入機能、(2)注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる輸送機能、(3)電子と正孔の再結合の場を発光層内部に提供し、これを発光につなげる発光機能などを有している。
なお、正孔の注入されやすさと、電子の注入されやすさに違いがあってもよいし、正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよいが、どちらか一方の電荷を移動することが好ましい。
この発光層に用いる前記一般式(I)で表される化合物は、一般にイオン化エネルギーが6.0eV程度より小さいので、適当な陽極金属又は陽極化合物を選べば、比較的正孔を注入しやすい。また電子親和力は2.8eV程度より大きいので、適当な陰極金属又は陰極化合物を選べば、比較的電子を注入しやすい上、電子,正孔の輸送能力も優れている。さらに固体状態の蛍光性が強いため、該化合物やその会合体又は結晶などの電子と正孔の再結合時に形成された励起状態を光に変換する能力が大きい。
【0036】
このブタジエン化合物を用いたEL素子の構成は、各種の態様があるが、基本的には、一対の電極(陽極と陰極)間に、前記発光層を挟持した構成とし、これに必要に応じて、正孔注入輸送層や電子注入層を介在させればよい。介在方法としては、ポリマーへの混ぜ込みや同時蒸着がある。具体的には、(1)陽極/発光層/陰極,(2)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極,(3)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入層/陰極,(4)陽極/発光層/電子注入層/陰極などの構成を挙げることができる。該正孔注入輸送層や電子注入層は、必ずしも必要ではないが、これらの層があると発光性能が一段と向上する。
また、前記構成の素子においては、いずれも基板に支持されていることが好ましく、該基板については特に制限はなく、従来EL素子に慣用されているもの、例えば、ガラス,透明プラスチック,石英などからなるものを用いることができる。
【0037】
このEL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属,合金,電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAuなどの金属,CuI,インジウムチンオキシド(以下ITOと略記する),SnO2 ,ZnOなどの誘電性透明材料が挙げられる。該陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより作製することができる。この電極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、電極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
さらに膜厚は材料にもよるが、通常10nmないし1μm,好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0038】
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属,合金,電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム,ナトリウム−カリウム合金,マグネシウム,リチウム,マグネシウム−銀合金,Al/AlO2 ,インジウムなどが挙げられる。該陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、電極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nmないし1μm,好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、このEL素子においては、該陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であることが、発光を透過するため、発光の取出し効率がよく好都合である。
【0039】
本発明の化合物を用いるEL素子の構成は、前記したように、各種の態様があり、前記(2)又は(3)の構成のEL素子における正孔注入輸送層は、正孔伝達化合物からなる層であって、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入輸送層を陽極と発光層との間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入される。その上、発光層に陰極又は電子注入層より注入された電子は、発光層と正孔注入輸送層の界面に存在する電子の障壁により、この発光層内の界面付近に蓄積されEL素子の発光効率を向上させ、発光性能の優れたEL素子とする。
【0040】
前記正孔注入輸送層に用いられる正孔伝達化合物は、電界を与えられた2個の電極間に配置されて陽極から正孔が注入された場合、該正孔を適切に発光層へ伝達しうる化合物であって、例えば104 〜106 V/cmの電界印加時に、少なくとも10-6cm2 /(V・秒)の正孔移動度をもつものが好適である。このような正孔伝達化合物については、前記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、本発明のブタジエン化合物,及び従来、光導電材料において、正孔の電荷輸送材として慣用されているものやEL素子の正孔注入輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0041】
従来、公知の該電荷輸送材としては、例えばトリアゾール誘導体(米国特許第3,112,197号明細書などに記載のもの)、オキサジアゾール誘導体(米国特許第3,189,447号明細書などに記載のもの)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報などに記載のもの)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許第3,615,402 号明細書,同3,820,989 号明細書,同3,542,544 号明細書,特公昭45−555号公報,同51−10983号公報,特開昭51−93224号公報,同55−17105号公報,同56−4148号公報,同55−108667号公報,同55−156953号公報,同56−36656号公報などに記載のもの)、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729 号明細書,同4,278,746 号明細書,特開昭55−88064号公報,同55−88065号公報,同49−105537号公報,同55−51086号公報,同56−80051号公報,同56−88141号公報,同57−45545号公報,同54−112637号公報,同55−74546号公報などに記載のもの)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404 号明細書,特公昭51−10105号公報,同46−3712号公報,同47−25336号公報,特開昭54−53435号公報,同54−110536号公報,同54−119925号公報などに記載のもの)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450 号明細書,同3,180,703 号明細書,同3,240,597 号明細書,同3,658,520 号明細書,同4,232,103 号明細書,同4,175,961 号明細書,同4,012,376号明細書,特公昭49−35702号公報,同39−27577号公報,特開昭55−144250号公報,同56−119132号公報,同56−22437号公報,西独特許第1,110,518 号明細書などに記載のもの)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501 号明細書などに記載のもの)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203 号明細書などに記載のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報などに記載のもの)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報などに記載のもの)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462 号明細書,特開昭54−59143号公報,同55−52063号公報,同55−52064号公報,同55−46760号公報,同55−85495号公報,同57−11350号公報,同57−148749号公報などに記載されているもの)、スチルベル誘導体(特開昭61−210363号公報,同61−228451号公報,同61−14642号公報,同61−72255号公報,同62−47646号公報,同62−36674号公報,同62−10652号公報,同62−30255号公報,同60−93445号公報,同60−94462号公報,同60−174749号公報,同60−175052号公報などに記載のもの)などを挙げることができる。
【0042】
これらの化合物を正孔伝達化合物として使用することができるが、次に示すポルフィリン化合物(特開昭63−295695号公報などに記載のもの)及び芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書,特開昭53−27033号公報,同54−58445号公報,同54−149634号公報,同54−64299号公報,同55−79450号公報,同55−144250号公報,同56−119132号公報,同61−295558号公報,同61−98353号公報,同63−295695号公報などに記載のもの)、特に該芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0043】
該ポルフィリン化合物の代表例としては、ポルフィリン;5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン銅(II);5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン亜鉛(II);5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)−21H,23H−ポルフィリン;シリコンフタロシアニンオキシド;アルミニウムフタロシアニンクロリド;フタロシアニン(無金属);ジリチウムフタロシアニン;銅テトラメチルフタロシアニン;銅フタロシアニン;クロムフタロシアニン;亜鉛フタロシアニン;鉛フタロシアニン;チタニウムフタロシアニンオキシド;マグネシウムフタロシアニン;銅オクタメチルフタロシアニンなどが挙げられる。また該芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン;2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミン)−4’−〔4(ジ−p−トリルアミン)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベン;N−フェニルカルバゾールなどが挙げられる。
【0044】
上記EL素子における該正孔注入輸送層は、これらの正孔伝達化合物一種又は二種以上からなる一層で構成されてもよいし、あるいは、前記層とは別種の化合物からなる正孔注入輸送層を積層したものであってもよい。
一方、前記(3)の構成のEL素子における電子注入層(電子注入輸送層)は、電子伝達化合物からなるものであって、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有している。このような電子伝達化合物について特に制限はなく、本発明のブタジエン化合物、及び従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。従来公知の該電子伝達化合物の好ましい例としては、
【0045】
【化17】
Figure 0003635708
【0046】
などのニトロ置換フルオレノン誘導体、
【0047】
【化18】
Figure 0003635708
【0048】
などのチオピランジオキシド誘導体、
【0049】
【化19】
Figure 0003635708
【0050】
などのジフェニルキノン誘導体〔「ポリマー・プレプリント( Polymer Preprints),ジャパン」第37巻,第3号,第681ページ(1988年)などに記載のもの〕、あるいは
【0051】
【化20】
Figure 0003635708
【0052】
などの化合物〔「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(J.Apply.Phys.)」第27巻,第269頁(1988年)などに記載のもの〕や、アントラキノジメタン誘導体(特開昭57−149259号公報,同58−55450号公報,同61−225151号公報,同61−233750号公報,同63−104061号公報などに記載のもの)、フレオレニリデンメタン誘導体(特開昭60−69657号公報,同61−143764号公報,同61−148159号公報などに記載のもの)、アントロン誘導体(特開昭61−225151号公報,同61−233750号公報などに記載のもの)
また、次の一般式(VII) 又は(VIII)
【0053】
【化21】
Figure 0003635708
【0054】
〔式中、Ar1 〜Ar3 及びAr5 は、それぞれ独立に置換又は無置換のアリール基を示し、Ar4 は置換又は無置換のアリーレン基を示す。〕
で表される電子伝達化合物が挙げられる。ここで、アリール基としてはフェニル基,ナフチル基,ビフェニル基,アントラニル基,ペリレニル基,ピレニル基などが挙げられ、アリーレン基としてはフェニレン基,ナフチレン基,ビフェニレン基,オキシビフェニレン基,アントラセニレン基,ペリレニレン基,ピレニレン基などが挙げられる。また、置換基としては炭素数1〜10のアルキル基,炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基などが挙げられる。この一般式(VII) 又は(VIII)で表される化合物は、薄膜形成性のものが好ましい。
一般式(VII) 又は(VIII)で表される化合物の具体例としては、
【0055】
【化22】
Figure 0003635708
【0056】
【化23】
Figure 0003635708
【0057】
【化24】
Figure 0003635708
【0058】
など、「Appl. Phys. Lett. 」第55巻、第1489ページ(1989年)に開示されているオキサジアゾール誘導体などを挙げることができる。
なお、正孔注入輸送層及び電子注入層は電荷の注入性,輸送性,障壁性のいずれかを有する層であり、上記した有機材料の他にSi系,SiC系,CdS系などの結晶性ないし非結晶性材料などの無機材料を用いることもできる。
有機材料を用いた正孔注入輸送層及び電子注入層は、発光層と同様にして形成することができ、無機材料を用いた正孔注入輸送層及び電子注入層は真空蒸着法やスパッタリングなどにより形成できるが、有機及び無機のいずれの材料を用いた場合でも発光層のときと同様の理由から真空蒸着法により形成することが好ましい。
【0059】
次に、本発明のEL素子を作製する好適な方法の例を、各構成の素子それぞれについて説明する。前記の陽極/発光層/陰極からなるEL素子の作製法について説明すると、まず適当な基板上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させ、陽極を作製したのち、この上に発光材料である一般式(I)で表されるプタジエン化合物の薄膜を形成させ、発光層を設ける。該発光材料の薄膜化の方法としては、例えばスピンコート法,キャスト法,蒸着法などがあるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくいなどの点から、蒸着法が好ましい。
該発光材料の薄膜化に、この蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する発光層に用いる有機化合物の種類,分子堆積膜の目的とする結晶構造,会合構造などにより異なるが、一般にボート加熱温度50〜400℃,真空度10-5〜10-3Pa,蒸着速度0.01〜50nm/sec,基板温度−50〜+300℃,膜厚5nmないし5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。次にこの発光層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望のEL素子が得られる。なお、このEL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極,発光層,陽極の順に作製することも可能である。
【0060】
また、一対の電極間に正孔注入輸送材料,発光材料,電子注入材料を混合させた形で電極間に挟持させ発光層とした、陽極/発光層/陰極からなる素子の場合の作製方法としては、例えば適当な基板の上に、陽極用物質からなる薄膜を形成し、正孔注入輸送材料,発光材料,電子注入材料,ポリビニルカルバゾールなどの結着剤などからなる溶液を塗布するか、又はこの溶液から浸漬塗工法により薄膜を形成させ発光層とし、その上に陰極用物質からなる薄膜を形成させるものがある。ここで、作製した発光層上に、さらに発光層の材料となる素子材料を真空蒸着し、その上に陰極用物質からなる薄膜を形成させてもよい。あるいは、正孔注入輸送材料,電子注入材料及び発光材料を同時蒸着させ発光層とし、その上に陰極用物質からなる薄膜を形成させてもよい。
【0061】
次に、陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極からなるEL素子の作製法について説明すると、まず、陽極を前記のEL素子の場合と同様にして形成したのち、その上に、正孔伝達化合物からなる薄膜をスピンコート法などにより形成し、正孔注入輸送層を設ける。この際の条件は、前記発光材料の薄膜形成の条件に準じればよい。次に、この正孔注入輸送層の上に、順次発光層及び陰極を、前記EL素子の作製の場合と同様にして設けることにより、所望のEL素子が得られる。なお、このEL素子の作製においても、作製順序を逆にして、陰極,発光層,正孔注入輸送層,陽極の順に作製することも可能である。
さらに、陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入層/陰極からなるEL素子の作製法について説明すると、まず、前記のEL素子の作製の場合と同様にして、陽極,正孔注入輸送層,発光層を順次設けたのち、この発光層の上に、電子伝達化合物からなる薄膜をスピンコート法などにより形成して、電子注入層を設け、次いでこの上に、陰極を前記EL素子の作製の場合と同様にして設けることにより、所望のEL素子が得られる。
なお、このEL素子の作製においても、作製順序を逆にして、陽極,電子注入層,発光層,正孔注入輸送層,陽極の順に作製してもよい。
【0062】
このようにして得られた本発明の有機EL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+,陰極を−の極性として電圧1〜30V程度を印加すると、発光が透明又は半透明の電極側より観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れず発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+,陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0063】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0064】
製造例1 ブタジエン化合物(2)の製造
(1)ホスホン酸エステルの製造
次に示す反応式に従ってホスホン酸エステルを製造した。
【0065】
【化25】
Figure 0003635708
【0066】
4,4’−ビス(ブロモメチル)−1,1’−ビフェニル19.0g(55.0ミリモル)と亜リン酸トリエチル11.0g(66.0ミリモル)とを125℃で反応させたのち、n−ヘキサン100ミリリットルで洗浄し、ホスホン酸エステルの白色沈殿9.5g(収率80%)を得た。
このものの融点は97℃であり、またプロトン核磁気共鳴スペクトル〔1 H−NMR,基準:テトラメチルシラン(TMS),溶媒:CDCl3 〕を求めたところ、次の結果が得られた。
δ=7.6〜7.0ppm(8H,m),4.0ppm(8H,q),3.1ppm〔4H,d(J=20.0Hz,リンと水素との結合定数)〕,1.3ppm(12H,t)
【0067】
(2)ブタジエン化合物(2)の製造
次に示す反応式に従って、ブタジエン化合物〔2〕を製造した。
【0068】
【化26】
Figure 0003635708
【0069】
上記(1)で得られたホスホン酸エステル1.36g(3.0ミリモル),3,3−ジフェニルアクロレイン1.37g(6.6ミリモル)及びカリウムt−ブトキシド786mgをジメチルスルホキシド(DMSO)30ミリリットルに懸濁し、室温(20〜25℃)にて反応させた。得られた反応物を一晩放置したのち、メタノール40ミリリットルと水10ミリリットルとの混合液を添加し、次いで生じた沈殿をろ取し、シリカゲルカラムにて精製することにより、黄色粉末1.43g(収率85%)が得られた。このものの融点は267℃であった。
さらに、この黄色粉末を270℃で昇華精製し、これをトルエンから再結晶したものをサンプルとして用いた。
この化合物は、下記の分析結果よりブタジエン化合物(2)と同定された。
▲1▼プロトン核磁気共鳴スペクトル〔 1H−NMR,基準:テトラメチルシラン(TMS),溶媒,CDCl3
δ=8.5〜7.0ppm(34H,m)
▲2▼元素分析
Figure 0003635708
▲3▼質量分析
m/z=562
【0070】
製造例2〜7
ブタジエン化合物(3),(9),(10),(14),(11)及び(12)の製造
第1表に示す種類のアルデヒドとホスホン酸エステルを用い、製造例1−(2)と同様にしてブタジエン化合物を製造した。
【0071】
【表1】
Figure 0003635708
【0072】
【表2】
Figure 0003635708
【0073】
製造例8 ブタジエン化合物(8)の製造
次に示す反応式に従って、ブタジエン化合物(8)を製造した。
【0074】
【化27】
Figure 0003635708
【0075】
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)アクロレイン294mg(1.0ミリモル)及び製造例1−(1)で得られたホスホン酸エステル453mg(1.0ミリモル)をジメチルスルホキシド10ミリリットルに溶かし、これにカリウムt−ブトキシド200mgを加えて一晩攪拌した。反応終了液にメタノール10ミリリットル及び水5ミリリットルを加え、生じた沈殿をろ取したのち、シリカゲルで精製した。収量は441mg(収率60%)であった。
このものは、下記の分析結果よりブタジエン化合物(8)と同定された。
▲1▼プロトン核磁気共鳴スペクトル〔 1H−NMR,基準:テトラメチルシラン(TMS),溶媒,CDCl3
δ=8.5〜7.0ppm(30H,m),2.4ppm(24H,m)
▲2▼元素分析
Figure 0003635708
▲3▼質量分析
m/z=735
【0076】
製造例9 ブタジエン化合物(21)の製造
(1)ビス(ブロモアセチル)ヒドラシドの製造
次に示す反応式に従って、ビス(ブロモアセチル)ヒドラジドを製造した。
【0077】
【化28】
Figure 0003635708
【0078】
α−ブロモ酢酸メチル3.04g(20.0ミリモル)をヒドラジン1水和物20ミリリットルに加え、8時間加熱還流したのち、室温まで冷却し、生じた沈殿をろ取した。この沈殿をピリジン10ミリリットルに溶かし、塩化α−ブロモアセチル3.15g(20.0ミリモル)を加えた。この反応混合物を3時間加熱還流したのち、氷水中に注ぎ、生じた沈殿をろ取し、N,N−ジメチルホルムアミドから再結晶し、ビス(ブロモアセチル)ヒドラシド3.8g(収率70%)を得た。
(2)ホスホン酸エステルの製造
次に示す反応式に従って、ホスホン酸エステルを製造した。
【0079】
【化29】
Figure 0003635708
【0080】
上記(1)で得られたビス(ブロモアセチル)ヒドラジド3.8g(14ミリモル)をオキシ塩化リン10ミリリットルに加え、12時間加熱還流したのち、反応混合物を氷水中に加え、生じた沈殿をろ取した。次いで、これをN,N−ジメチルホルムアミドから再結晶し、ビス(ブロモメチル)オキサジアゾール1.07g(4.2ミリモル,収率30%)を得た。次に、これに亜リン酸トリエチル1.0ミリリットルを加え、6時間加熱還流したのち、室温まで冷却後、冷ヘキサン中に反応混合物を注ぎ、ホスホン酸エステルを白色固体としてろ取した。収量は1.55g(収率100%)であった。
(3)ブタジエン化合物(21)の製造
次に示す反応式に従って、ブタジエン化合物(21)を製造した。
【0081】
【化30】
Figure 0003635708
【0082】
上記(2)で得られたホスホン酸エステル370.2mg(1.0ミリモル)と3,3−ジフェニルアクロレイン516.4mg(2.0ミリモル)をジメチルスルホキシド10ミリリットルに溶かし、これにカリウムt−ブトキシド350mgを加えて室温で一晩攪拌した。次いで、反応終了液にメタノール10ミリリットル及び水5ミリリットルを加え、生じた沈澱をろ取し、さらにN,N−ジメチルホルムアミドから再結晶して白色結晶290mg(収率60%)を得た。
このものは、以下に示す分析結果より、ブタジエン化合物(21)と同定された。
▲1▼プロトン核磁気共鳴スペクトル〔 1H−NMR,基準:テトラメチルシラン(TMS),溶媒,CDCl3
δ=8.5〜7.0ppm(26H,m)
▲2▼元素分析
Figure 0003635708
▲3▼質量分析
m/z=478
【0083】
実施例1(発光材料としての検討)
25mm×75mm×1.1mmのガラス基板上に蒸着法により厚さ100nmのITO膜(陽極に相当)を設けたものを透明支持基板とした。この透明支持基板をイソプロピルアルコールで5分間超音波洗浄し、さらに純水中で5分間超音波洗浄したのち、UVイオン洗浄器(サムコインターナショナル社製)にて基板温度150℃で20分間洗浄した。
この透明支持基板を乾燥窒素ガスで乾燥して市販の蒸着装置〔日本真空技術(株)製〕の基板ホルダーに固定し、モリブテン製の抵抗加熱ボートに銅フタロシアニン錯体(以下、CuPcと略記する)200mgを入れた。次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧したのち、CuPcの入った加熱ボートに通電して450℃まで加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/秒でCuPcを蒸着して正孔注入層にあたる膜厚60nmのCuPc層を設けた。
【0084】
次に、上記の抵抗加熱ボートを取り出し、別の三つの抵抗加熱ボートを装着し、この三つの抵抗加熱ボートには、それぞれN,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(1−ナフチル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(以下、NPDと略記する),製造例1で得られたブタンジエン化合物(2)(以下、DPBBiと略記する)及び4,4”−ビス〔2−{4−(N,N’−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル−1,1’:4’,1”〕ビフェニル(以下、DPAVBiと略記する)を入れた。
まず、NPDの入った抵抗加熱ボートに通電し加熱してNPDを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒にて蒸着し、膜厚20nmのNPD層を設けた。次いでDPBBi,DPAVBiの入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、DPBBi,DPAVBiをそれぞれ蒸着速度4nm/秒,0.1nm/秒で同時に蒸着し、電荷注入補助剤としてDPAVBiを含む膜厚40nmのDPBBi−DPAVBi層を発光層として設けた。
【0085】
次に、これら三層の有機物層を積層した透明支持基板を真空槽から取り出し、発光層の上にステンレススチール製のマスクを配置して再び基板ホルダーに固定した。次いで、モリブテン製の抵抗加熱ボートにトリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下、Alqと略す。)200mgを入れて真空槽に装着した。さらに、マグネシウムリボン1gを入れたモリブデン製の抵抗加熱ボートと銀ワイヤー500mgを入れたタングステン製バスケットとを真空槽に装着した。その後、真空槽を1×10-4Paまで減圧した。減圧後、Alqを入れたボートを270℃まで加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で発光層上にAlqを蒸着して膜厚20nmのAlq層(電子注入層に相当)を設けた。続けて、銀ワイヤー入りのバスケットに通電して蒸着速度0.1nm/秒で銀を蒸着させると同時にマグネシウムリボン入りのボートに通電して蒸着速度1.4〜2.0nm/秒でマグネシウムを蒸着した。この二元同時蒸着により、Alq層上に膜厚160nmのマグネシウム−銀層(陰極に相当)が形成された。
この素子のITO電極を陽極とし、マグネシウム−銀電極を陰極として、直流8.7Vを印加したところ、13.0mA/cm2 の電流が流れ青色の発光を得た。この際発光輝度は850cd/m2 であった。
【0086】
実施例2〜7(発光材料としての検討)
実施例1において、発光材料としてブタジエン化合物(2)の代わりに、製造例2〜7で得られた第2表に示すブタジエン化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施した。結果を第2表に示す。
また、得られた素子を大気中に放置した結果、いずれも1ヶ月間経過後も結晶化は観測されなかった。
【0087】
【表3】
Figure 0003635708
【0088】
実施例8(正孔注入輸送材料としての検討)
実施例1と同様の洗浄処理を行った透明支持基板を、乾燥窒素ガスで乾燥して、市販の蒸着装置〔日本真空技術(株)製〕の基板ホルダーに固定し、モリブデン製の抵抗加熱ボートにAlq200mgを入れ、また別のモリブデン製ボートに、正孔注入輸送材料として、製造例8で得られたブタジエン化合物(8)200mgを入れて真空槽を4×10-4Paまで減圧した。その後、化合物(8)の入った加熱ボートに通電して350℃まで加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で化合物(8)を蒸着して、膜厚60nmの正孔注入輸送層を設けた。
【0089】
次いで、これを真空槽より取り出すことなく、正孔注入輸送層上に、もう一つのボートよりAlqを発光層として50nm積層蒸着した。この際のボート温度は250℃、蒸着速度は0.2〜0.4nm/秒、基板温度は室温であった。このようにして積層蒸着したものを真空槽より取り出し、ステンレススチール製のマスクを配置し、再び基板ホルダーに固定した。次に、モリブデン製の抵抗加熱ボートにマグネシウムリボン1gを入れ、また別のタングステン製バスケットに銀ワイヤー500mgを入れて真空槽に装着した。その後真空槽を1×10-4Paまで減圧したのち、銀ワイヤー入りのバスケットに通電して蒸着速度0.1nm/秒で銀を蒸着させると同時に、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.4〜2.0nm/秒でマグネシウムを蒸着した。この二元同時蒸着によりAlq層上に膜厚160nmのマグネシウム−銀層(陰極に相当)が形成された。
この素子のITO電極を陽極とし、マグネシウム−銀電極を陰極として、直流8.7Vを印加したところ、12.5mA/cm2 の電流が流れ、緑色の発光を得た。この際発光輝度は450cd/m2 であった。
【0090】
実施例9 (電子注入輸送材料としての検討)
実施例1と同様の洗浄処理を行った透明支持基板を乾燥窒素ガスで乾燥して市販の蒸着装置〔日本真空技術(株)製〕の基板ホルダーに固定し、モリブテン製の抵抗加熱ボートにN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(以下、TPDと略記する)200mgを入れ、また別のモリブテン製ボートに4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(以下、DPVBiと略記する)200mgを入れ、真空槽を4×10-4Paまで減圧した。その後、TPDの入ったボートを215〜220℃まで加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で透明支持基板上に蒸着して膜厚60nmの正孔注入層を製膜した。この際基板上の温度は室温であった。
これを真空槽より取り出すことなく、正孔注入層上にDPVBiを発光層として40nm積層した。次に、この積層蒸着したものを真空槽より取り出し、ステンレススチール製のマスクを配置して再び基板ホルダーに固定した。次いで、モリブデン製抵抗加熱ボートに電子注入輸送材料である製造例9で得られたブタジエン化合物(21)200mgを入れ、さらに他のモリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウムリボン1gを入れ、またタングステン製バスケットに銀ワイヤー500mgを入れ真空槽に装着した。その後、真空槽を1×10-4Paまで減圧したのち、化合物(21)の入った抵抗加熱ボートに通電して300〜310℃まで加熱して、化合物(21)を蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で蒸着し、電子注入輸送層を発光層上に20nm積層した。
【0091】
次いで、銀ワイヤー入りのバスケットに通電して蒸着速度0.1nm/秒で銀を蒸着させると同時に、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.4〜2.0nm/秒でマグネシウムを蒸着した。この二元同時蒸着により、電子注入輸送層上に膜厚160nmのマグネシウム−銀層(陰極に相当)が形成された。
この素子のITO電極を陽極とし、マグネシウム−銀電極を陰極として、直流8.7Vを印加したところ、19.0mA/cm2 の電流が流れ、青色の発光を得た。この際発光輝度は970cd/m2 であった。
【0092】
比較例1
実施例1において、発光材料として、ブタジエン化合物(2)の代わりに、式
【0093】
【化31】
Figure 0003635708
【0094】
で示される化合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてEL素子を作製した。
この素子のITO電極を陽極とし、マグネシウム−銀電極を陰極とし、直流8.7Vを印加したところ、9.5mA/cm2 の電流が流れ、青色の発光を得た。この際、発光輝度は316cd/m2 であった。
また、発光効率は1.2ルーメン/wであり、実施例1の発光効率2.4ルーメン
/wに比べて低かった。
【0095】
【発明の効果】
本発明の有機EL素子は、電界発光性に優れるとともに、素子化しても結晶化することのない熱安定性の良好なブタジエン構造を有する化合物を含有するものであって、薄膜性に優れる、輝度が高い、寿命が長いなどの特徴を有している。
したがって、本発明の有機EL素子は、例えば情報産業機器のディスプレイなどとして好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 一般式(I)
    Figure 0003635708
    〔式中、Arは置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜18の芳香族複素環式基、 1 は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基,炭素数2〜18の芳香族複素環式基又は炭素数1〜6のアルキル基、R 2 〜R4 は、それぞれ独立に水素原子,置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基,炭素数2〜18の芳香族複素環式基又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、またArとR1 とがたがいに結合して飽和若しくは不飽和の5員環又は6員環を形成していてもよい。Qは一般式(II)
    Figure 0003635708
    で表される置換基を有していてもよいアリーレン基、あるいは置換基を有する若しくは有しないナフチレン基,アントラセニレン基,ピレニレン基,ビナフチレン基又は2価の炭素数2〜18の芳香族複素環式基、あるいは置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基3個をもつ2価又は3価のトリアリールアミノ基を示し、nは1又は2を示す。なお、ここでいう置換基とはハロゲン原子,炭素数6〜20のアリール基,炭素数1〜6のアルキル基,炭素数1〜6のアルコキシ基,炭素数7〜20のアラルキル基,炭素数6〜18のアリールオキシ基,置換若しくは無置換のアミノ基又は水酸基を示す。〕
    で表されるブタジエン構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 一般式(I)において、nが1であり、かつR1 が置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜18の芳香族複素環式基、及びQが一般式(II) で表される置換基を有していてもよいアリーレン基,あるいは置換基を有する若しくは有しないナフチレン基,アントラセニレン基,ピレニレン基又はビナフチレン基である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 一般式(I)で表されるブタジエン構造を有する化合物を、一対の電極の間に挟持する有機機能層のいずれかに含有させてなる請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 有機機能層が発光層,正孔注入輸送層及び/又は電子注入輸送層からなるものである請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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