JP4112719B2 - 芳香族炭化水素化合物およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な芳香族炭化水素化合物と、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称することがある)に関する。さらに詳しくは、有機EL素子の構成材料として有用性の高い芳香族炭化水素化合物と、それを用いた発光効率に優れた有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界発光を利用した有機EL素子は、自己発光であることから視認性が高く、また完全固体素子であるために耐衝撃性に優れているという特徴を有している。したがって、薄膜ディスプレイ素子や液晶ディスプレイのバックライト、平面光源などの分野に使用されている。
【0003】
現在実用化されているエレクトロルミネッセンス素子は、分散型エレクトロルミネッセンス素子である。この分散型エレクトロルミネッセンス素子は、数十ボルト、10キロヘルツ以上の交流電圧を必要とするため、その駆動回路が複雑になっている。
このようなことから、駆動電圧を10ボルト程度まで低下させることができ、かつ高輝度に発光することのできる有機EL素子が、近年盛んに研究されている。たとえば、C.W.Tang and S.A.Van Slyke Appl.Phys.Lett.,vol.51,pp.913〜915(1987)や、特開昭63−264629号公報において、有機薄膜EL素子の構成が、透明電極/正孔注入層/発光層/背面電極の積層型であるものが提案されており、ここで用いられている正孔注入層により、効率よく正孔を発光層内に注入することができるようになされている。このような有機EL素子において用いられる発光層は、単層であってもよいのであるが、上記のように、電子輸送性と正孔輸送性とのバランスが良くなかったことから、多層に積層することにより、性能の向上が図られていた。
【0004】
ところで、このように積層構造に形成するためには、その製造工程が煩雑になり所要時間も長くなるほか、各層に薄膜性が要求されるなどの制限が多いという問題がある。さらに、近年においては、情報機器などのコンパクト化や携帯型への移行の要請が高まり、これらの駆動電圧のさらなる低電圧化の要望が増大している。そこで、このような軽量化や駆動電圧の低電圧化のために、発光材料や正孔輸送材料などの開発が試みられている。アントラセンは発光材料として知られているが、均一な薄膜の形成が困難であることから、種々の置換基を導入した誘導体が提案されている。例えば、特開平4−178488号公報、同6−228544号公報、同6−228545号公報、同6−228546号公報、同6−228547号公報、同6−228548号公報、同6−228549号公報および同8−311442号公報においては、有機EL素子用の発光材料として、縮合多環芳香族炭化水素化合物を用いることが提案されているが、これら化合物を用いたものは発光効率が充分でないという難点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の状況に鑑み、有機EL素子の構成材料として用いた際に、高い発光効率を発現する芳香族炭化水素化合物と、それを用いた有機EL素子を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために種々検討を重ねた結果、特定の化学構造を有する芳香族炭化水素化合物が、前記目的を達成することを見出し、これら知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
(1)下記一般式〔1〕で表される芳香族炭化水素化合物。
【0007】
【化2】
【0008】
〔式中、Ar1 は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、Ar2は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、Ar3およびAr4は、各々独立に置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、RとAr3は結合して酸素原子を1個以上含む5員環または6員環を形成し、nは1、mは1である。〕
(2)Ar 1 が置換基を有していてもよいアントラセニレン基、Ar 2 が置換基を有していてもよいフェニレン基、Ar 3 およびAr 4 は各々独立に置換基を有していてもよいフェニル基である前記(1)に記載の芳香族炭化水素化合物。
(3)少なくとも一対の電極間に挟持された有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記(1)または(2)に記載の芳香族炭化水素化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
(4)前記(1)または(2)に記載の芳香族炭化水素化合物を、主として発光帯域に含有させてなる、前記(3)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(5)前記(1)または(2)に記載の芳香族炭化水素化合物を、有機発光層に含有させてなる、前記(3)または(4)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(6)有機発光層に、さらに再結合サイト形成物質を含有させてなる、前記(3)〜(5)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(7)再結合サイト形成物質が、スチリルアミン系化合物、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体およびピラン誘導体の群から選択される少なくとも1つの化合物である、前記(6)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の芳香族炭化水素化合物は、前記一般式〔1〕で表される芳香族炭化水素化合物である。そして、一般式〔1〕で表される芳香族炭化水素化合物において、Ar1 およびAr2 が表わす炭素数6〜20のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ターフェニレン基などが挙げられ、また、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくは珪素原子のいずれかを含有する炭素数4〜30の複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、2−ヒドロキシピロール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1−ベンゾチオフェン、2−ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、カルバゾール、2−ヒドロキシピラン、2−ヒドロキシクロメン、1−ヒドロキシ−2−ベンゾピラン、キサンテン、4−ヒドロキシチオピラン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、4−ヒドロキシキノリジン、フェナンスリジン、アクリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、イミダゾール、ピラゾール、ベンゾイミダゾール、1−ヒドロキシイミダゾール、1,8−ナフチリジン、ピラジン、ヒリミジン、ピリダジン、キナクサリンキナゾリン、シノリン、フタラジン、ピュリン、テリジン、ペリミジン、1,10−フェナンスロリン、チアンスレン、フェノキサチン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン、フェナサジン、シラシクロペンタジエン、シラベンゼンなどが挙げられる。
【0010】
また、同式のAr3 およびAr4 が表わす炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ジフェニルナフチル基、ジフェニルアントラニル基、スチリル基、スチリルフェニル基などが挙げられる。これら炭化水素基の中でも、フェニル基、ナフチル基、ナフチレン基、ビフェニル基、アントラニル基が好ましいものとして挙げられる。
【0011】
そして、これらAr1 〜Ar4 が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜18のアリールオキシ基、炭素数5〜16のアリール基で置換されたアミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のエステル基、ハロゲン原子などである。
これら炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基など挙げられ、また、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、各種ペンチルオキシ基、各種ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0012】
また、Ar3 とAr4 を互いに結合して環を形成する連結基、またはRを結合部位として、この結合部位とAr2 またはAr3 のいずれかと互いに結合して環を形成する連結基としては、単結合や、下記
【0013】
【化3】
【0014】
〔上記式中のRは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニル基または、フェノキシ基を示す。〕の構造を有する連結基により環が形成されたものが好ましい。
つぎに、前記一般式〔1〕で表される芳香族炭化水素化合物について、その具体的な化合物を例示すると、以下のものが挙げられる。
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
そして、前記一般式〔1〕で表される芳香族炭化水素化合物を製造する方法については、例えば、下記一般式〔2〕
【0022】
【化10】
【0023】
〔式中のAr2 、Ar3 、Ar4 、Rおよびmは、前記一般式〔1〕におけるAr2 、Ar3 、Ar4 、Rおよびmと同一の意味を有する。〕
で表されるハロゲン化合物をグリニヤール試薬とした後、下記一般式〔3〕
【0024】
【化11】
【0025】
〔式中のAr1 、nは、前記一般式〔1〕におけるAr1 、nと同一の意味を有する。〕
で表されるジブロモ化合物をカップリングさせることにより、効率よく得ることができる。
つぎに、本発明の有機EL素子は、一対の電極間に有機発光層を挟持させて構成され、この素子に、好ましくはその発光帯域、殊に有機発光層に上記芳香族炭化水素化合物を含有させて構成されている。この有機EL素子の代表的な素子構成は、下記に示すとおりであるが、これに限定されるものではない。
【0026】
▲1▼陽極/発光層/陰極
▲2▼陽極/正孔注入層/発光層/陰極
▲3▼陽極/発光層/電子注入層/陰極
▲4▼陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
▲5▼陽極/有機半導体層/発光層/陰極
▲6▼陽極/有機半導体層/電子障壁層/発光層/陰極
▲7▼陽極/有機半導体層/発光層/付着改善層/陰極
▲8▼陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
これら各種の素子構成の中では、上記▲8▼の構成としてあるものが好ましく用いられる。そして、前記一般式〔1〕で表される芳香族炭化水素化合物は、これらの構成要素の中の主として発光帯域、殊に発光層に含有させたものが好適に用いられる。この発光層への上記芳香族炭化水素化合物の含有割合は、発光層全体に対して30〜100重量%であるものが好適である。
【0027】
そして、この有機EL素子は、透光性の基板上に作製する。この透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、その透光性については、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上でであるものが望ましく、さらに平滑な基板を用いるのが好ましい。
このような透光性基板としては、たとえば、ガラス板、合成樹脂板などが好適に用いられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などで成形された板が挙げられる。また、合成樹脂板としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂などの板か挙げられる。
【0028】
つぎに、上記の陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物またはこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、ITO、SnO2、ZnO等の導電性材料が挙げられる。この陽極を形成するには、これらの電極物質を、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることができる。この陽極は、上記発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きくなるような特性を有していることが望ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下としてあるものが好ましい。さらに、陽極の膜厚は、材料にもよるが通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0029】
そして、本発明の有機EL素子の発光層としては、以下の機能を併せ持つものが好適である。
▲1▼注入機能;電界印加時に陽極または正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極または電子注入層より電子を注入することができる機能
▲2▼輸送機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能
▲3▼発光機能;電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能
ただし、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさには、違いがあってもよく、また正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよいが、どちらか一方の電荷を移動することが好ましい。前記一般式〔1〕で表される芳香族炭化水素化合物は、上記の3つの条件を満たしており、これを主として発光層を形成することできる。
【0030】
また、この有機EL素子の発光層の構成材料の一部として、再結合サイト形成物質を用いることができる。この再結合サイト形成物質は、両極から注入された電子と正孔がそれぞれ再結合する場所を積極的に提供する物質、あるいは電子と正孔の再結合自体は生じないが再結合エネルギーが伝搬されて光を発する場所を提供する物質である。したがって、この再結合サイト形成物質を加えることによって、前記芳香族炭化水素化合物の単独使用の場合よりも、電子と正孔とを集中的に発光層の中央付近で再結合させて、発光層における発光輝度をさらに高めることができる。
【0031】
このようなことから、本発明の有機EL素子の発光層の構成材料に用いる再結合サイト形成物質としては、その蛍光量子収率が高いものが好ましく、ことにその値が0.3〜1.0であるものが好適である。このような再結合サイト形成物質としては、スチリルアミン系化合物、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体およびピラン誘導体の群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合物が挙げられる。また、この再結合サイト形成物質として、共役系高分子を用いることができ、ことにポリアリーレンビニレン誘導体や、炭素数1〜50のアルキル基置換あるいはアルコキシ基置換のポリアリーレンやビニレン誘導体などが挙げられる。
【0032】
また、これら再結合サイト形成物質は、発光層における発色性を考慮して選択することもことが望ましい。例えば、青色の発色を所望する場合には、ペリレンや、アミノ置換ジスチリルアリーレン誘導体などを使用することが好ましい。そして、緑色の発色を所望する場合には、キナクリドン誘導体あるいはクマリン誘導体などを使用することが好ましい。また、黄色の発色を所望する場合には、ルブレン誘導体などを使用することが好ましい。さらに、橙色や赤橙色を所望する場合には、ジシアノメチルピラン誘導体などを使用することが好ましい。
【0033】
そして、この再結合サイト形成物質の配合割合は、発光層の発光輝度や発色性を考慮して定めるのであるが、具体的には、前記芳香族炭化水素化合物100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。この再結合サイト形成物質の配合量が0.1重量部未満であると、発光輝度が低下する傾向があり、一方、20重量部を超えると、耐久性が低下する傾向がある。したがって、有機EL素子における発光輝度と耐久性とのバランスをよりよく維持するためには、この配合割合を、前記芳香族炭化水素化合物100重量部に対して、0.5〜20重量部とするのが好ましく、さらに好ましくはこの値を1.0〜10重量部とするのがよい。
【0034】
この有機EL素子の有機発光層を形成する材料は、上記のほか、所望の色調によって、次のような化合物が用いられる。例えば、紫外域から紫色の発光を得る場合には、下記の一般式〔4〕で表される化合物が好適に用いられる。
【0035】
【化12】
【0036】
〔上記式中、Xは下記一般式〔5〕
【0037】
【化13】
【0038】
(上記式中、nは2〜5の整数を示す)で表される基を示し、Yは下記一般式〔6〕
【0039】
【化14】
【0040】
で表される基を示す。
この一般式〔4〕で表される化合物におけるフェニル基、フェニレン基、ナフチル基には、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、スルホニル基、カルボニル基、アミノ基、ジメチルアミノ基またはジフェニルアミノ基等の単数または複数の置換基を有する化合物を用いてもよい。また、これら置換基が複数ある場合には、それらが互いに結合し、飽和5員環あるいは6員環を形成していてもよい。さらに、この化合物の形態については、フェニル基、フェニレン基、ナフチル基にパラ位で結合したものが、結合性が良く、かつ平滑な蒸着膜が形成し易いことから好ましい。上記一般式〔4〕で表される化合物の具体例を示せば、下記のとおりである。
【0041】
【化15】
【0042】
【化16】
【0043】
これら化合物の中では、特にp−クォーターフェニル誘導体、p−クインクフェニル誘導体が好ましい。
また、青色から緑色の発光を得るためには、例えばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物を用いることができる。これら化合物の具体例としては、例えば特開昭59−194393号公報に開示されている化合物を挙げることができる。さらに他の有用な化合物は、ケミストリー・オブ・シンセティック・ダイズ(1971)628〜637頁および640頁に列挙されている。
【0044】
前記キレート化オキシノイド化合物としては、例えば、特開昭63−295695号公報に開示されている化合物を用いることができる。その代表例としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体や、ジリチウムエピントリジオン等が好適な化合物として挙げることができる。
【0045】
また、前記スチリルベンゼン系化合物としては、例えば、欧州特許第0319881号明細書や欧州特許第0373582号明細書に開示されているものを用いることができる。そして、特開平2−252793号公報に開示されているジスチリルピラジン誘導体も、発光層の材料として用いることができる。このほか、欧州特許第0387715号明細書に開示されているポリフェニル系化合物も発光層の材料として用いることができる。
【0046】
さらに、上述した蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物およびスチリルベンゼン系化合物等以外に、例えば12−フタロペリノン(J. Appl. Phys.,第27巻,L713(1988年))、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(以上Appl. Phys. Lett.,第56巻,L799(1990年))、ナフタルイミド誘導体(特開平2−305886号公報)、ペリレン誘導体(特開平2−189890号公報)、オキサジアゾール誘導体(特開平2−216791号公報、または第38回応用物理学関係連合講演会で浜田らによって開示されたオキサジアゾール誘導体)、アルダジン誘導体(特開平2−220393号公報)、ピラジリン誘導体(特開平2−220394号公報)、シクロペンタジエン誘導体(特開平2−289675号公報)、ピロロピロール誘導体(特開平2−296891号公報)、スチリルアミン誘導体(Appl. Phys. Lett.,第56巻,L799(1990年)、クマリン系化合物(特開平2−191694号公報)、国際特許公報WO90/13148やAppl. Phys. Lett.,vol58,18,P1982(1991)に記載されているような高分子化合物等も、発光層の材料として用いることができる。
【0047】
本発明では特に発光層の材料として、芳香族ジメチリディン系化合物(欧州特許第0388768号明細書や特開平3−231970号公報に開示のもの)を用いることが好ましい。具体例としては、4,4’−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、およびそれらの誘導体を挙げることができる。
【0048】
また、特開平5−258862号公報等に記載されている一般式(Rs−Q)2 −Al−O−L〔式中、Lはフェニル部分を含んでなる炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−Lはフェノラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子を示し、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個を上回り結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート環置換基を示す〕で表される化合物も挙げられる。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
【0049】
このほか、特開平6−9953号公報等によるドーピングを用いた高効率の青色と緑色の混合発光を得る方法が挙げられる。この場合、ホストとしては、上記の発光材料、ドーパントとしては青色から緑色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系あるいは上記のホストとして用いられているものと同様な蛍光色素を挙げることができる。具体的には、ホストとしてジスチリルアリーレン骨格の発光材料、特に好ましくは4,4’−ビス(2,2−ジフエニルビニル)ビフェニル、ドーパントとしてはジフェニルアミノビニルアリーレン、特に好ましくは例えばN,N−ジフェニルアミノビニルベンゼンを挙げることができる。
【0050】
白色の発光を得る発光層としては特に制限はないが、下記のものを用いることができる。
▲1▼有機EL積層構造体の各層のエネルギー準位を規定し、トンネル注入を利用して発光させるもの(欧州特許第0390551号公報)。
▲2▼▲1▼と同じくトンネル注入を利用する素子で実施例として白色発光素子が記載されているもの(特開平3−230584号公報)。
【0051】
▲3▼二層構造の発光層が記載されているもの(特開平2−220390号公報および特開平2−216790号公報)。
▲4▼発光層を複数に分割してそれぞれ発光波長の異なる材料で構成されたもの(特開平4−51491号公報)。
▲5▼青色発光体(蛍光ピーク380〜480nm)と緑色発光体(480〜580nm)とを積層させ、さらに赤色蛍光体を含有させた構成のもの(特開平6−207170号公報)。
【0052】
▲6▼青色発光層が青色蛍光色素を含有し、緑色発光層が赤色蛍光色素を含有した領域を有し、さらに緑色蛍光体を含有する構成のもの(特開平7−142169号公報)。
これらの中では、上記▲5▼の構成のものが特に好ましい。
さらに、赤色蛍光体としては、下記に示すものが好適に用いられる。
【0053】
【化17】
【0054】
つぎに、上記材料を用いて発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、LB法等の公知の方法を適用することができる。発光層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態または液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
【0055】
また特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光層を形成することができる。
このようにして形成される発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常5nm〜5μmの範囲が好ましい。この発光層は、上述した材料の1種または2種以上からなる一層で構成されてもよいし、また、前記発光層とは別種の化合物からなる発光層を積層したものであってもよい。
【0056】
つぎに、正孔注入・輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい。このような正孔注入・輸送層としてはより低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば104 〜106 V/cmの電界印加時に、少なくとも10-66cm2 /V・秒であるものが好ましい。本発明の芳香族炭化水素化合物と混合して正孔注入・輸送層を形成する材料としては、前記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0057】
このような正孔注入・輸送層の形成材料としては、具体的には、例えばトリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、特開昭54−53435号公報、同54−110536号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同55−85495号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)、特開平1−211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等を挙げることができる。
【0058】
正孔注入・輸送層の材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物(特開昭63−2956965号公報等に開示のもの)、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同54−149634号公報、同54−64299号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)、芳香族第三級アミン化合物を用いることもできる。
【0059】
また米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する、例えば4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、また特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン等を挙げることができる。さらに、発光層の材料として示した前述の芳香族ジメチリディン系化合物の他、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入・輸送層の材料として使用することができる。
【0060】
そして、この正孔注入・輸送層を形成するには、上述の化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化すればよい。この場合、正孔注入・輸送層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmである。この正孔注入・輸送層は、正孔輸送帯域に本発明の芳香族炭化水素化合物を含有していれば、上述した材料の1種または2種以上からなる一層で構成されてもよいし、また、前記正孔注入・輸送層とは別種の化合物からなる正孔注入・輸送層を積層したものであってもよい。
【0061】
また、有機半導体層は、発光層への正孔注入または電子注入を助ける層であって、10-10 S/cm以上の導電率を有するものが好適である。このような有機半導体層の材料としては、含チオフェンオリゴマーや特開平8−193191号公報に記載の含アリールアミンオリゴマー等の導電性オリゴマー、含アリールアミンデンドリマー等の導電性デンドリマー等を用いることができる。
【0062】
つぎに、電子注入層は、発光層への電子の注入を助ける層であって、電子移動度が大きく、また付着改善層は、この電子注入層の中で特に陰極との付着が良い材料からなる層である。電子注入層に用いられる材料としては、8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体が好適である。上記8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノールまたは8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウムを電子注入材料として用いることができる。
【0063】
そして、オキサジアゾール誘導体としては、下記一般式〔7〕〜〔9〕、
【0064】
【化18】
【0065】
〔上記式中、Ar1 ,Ar2 ,Ar3 ,Ar5 ,Ar6 ,Ar9 は、各々独立に置換または無置換のアリール基を示し、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。また、Ar4 ,Ar7 ,Ar8 は、各々独立に置換または無置換のアリーレン基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕で表される電子伝達化合物が挙げられる。
【0066】
これら一般式〔7〕〜〔9〕におけるアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基が挙げられる。また、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基などが挙げられる。そして、これらへの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基またはシアノ基等が挙げられる。この電子伝達化合物は、薄膜形成性の良好なものが好ましく用いられる。
【0067】
そして、これら電子伝達性化合物の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【0068】
【化19】
【0069】
つぎに、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属などが挙げられる。
この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
【0070】
ここで、発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、さらに、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
つぎに、本発明の有機EL素子を作製する方法については、上記の材料および方法により陽極、発光層、必要に応じて正孔注入層、および必要に応じて電子注入層を形成し、最後に陰極を形成すればよい。また、陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
【0071】
以下、透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子の作製例について説明する。
まず、適当な透光性基板上に、陽極材料からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着法あるいはスパッタリング法により形成し、陽極とする。次に、この陽極上に正孔注入層を設ける。正孔注入層の形成は、前述したように真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物(正孔注入層の材料)、目的とする正孔注入層の結晶構造や再結合構造等により異なるが、一般に蒸着源温度50〜450℃、真空度10-7〜10-3torr、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選択することが好ましい。
【0072】
次に、この正孔注入層上に発光層を設ける。この発光層の形成も、所望の有機発光材料を用いて真空蒸着法、スパッタリング、スピンコート法、キャスト法等の方法により、有機発光材料を薄膜化することにより形成できるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により発光層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物により異なるが、一般的に正孔注入層の形成と同様な条件範囲の中から選択することができる。
【0073】
次に、この発光層上に電子注入層を設ける。この場合にも正孔注入層、発光層と同様、均質な膜を得る必要から真空蒸着法により形成することが好ましい。蒸着条件は正孔注入層、発光層と同様の条件範囲から選択することができる。
本発明の芳香族炭化水素化合物は、上記有機化合物層のいずれの層に含有させるかによって異なるが、真空蒸着法を用いる場合は他の材料との共蒸着をすることができる。またスピンコート法を用いる場合は、他の材料と混合することによって含有させることができる。
【0074】
そして、最後に陰極を積層して有機EL素子を得ることができる。陰極は金属から構成されるもので、蒸着法、スパッタリングを用いることができる。しかし、下地の有機物層を製膜時の損傷から守るためには真空蒸着法が好ましい。
以上の有機EL素子の作製は、一回の真空引きで、一貫して陽極から陰極まで作製することが好ましい。
【0075】
この有機EL素子に直流電圧を印加する場合、陽極を+、陰極を−の極性にして、5〜40Vの電圧を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れず、発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加した場合には、陽極が+、陰極が−の極性になった時のみ均一な発光が観測される。この場合、印加する交流の波形は任意でよい。
【0076】
【実施例】
つぎに、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
アルゴンガス雰囲気下に、フェニルアセチレン20gと、テトラヒドロフラン50ミリリットルを反応容器に仕込み、ついで、−70℃においてn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6モル濃度)15ミリリットルを入れ、さらに、p−ジブロモベンゼン45gを加え、室温に戻して3時間反応させた。
【0077】
得られた反応液を水に注入し、トルエンにより抽出して、抽出液を無水硫酸マグネシウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。ここで得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4−ブロモジフェニルアセチレン17gを得た。
そして、この4−ブロモジフェニルアセチレン17gを、2−ヨードフェノール18g、沃化銅3g、およびジメチルホルムアミド100ミリリットルと混合して、加熱還流下に4時間反応させた。得られた反応液を濾過し、溶媒を減圧下に留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2−フェニル−3−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン3gを得た。
【0078】
つぎに、アルゴンガス気流下、マグネシウム粉末1gと、テトラヒドロフラン20ミリリットルを反応器に仕込み、これに、2−フェニル−3−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン2gをテトラヒドロフラン20ミリリットルに溶解させた溶液を滴下し、加熱還流下に3時間反応させた。
ついで、アルゴンガス気流下、9,10−ジブロモアントラセン(東京化成社製)1gと、ジイソブチルアルミニウムハイドライドのトルエン溶液(アルドリッチ社製;1モル濃度溶液)5ミリリットル、パラジウムジクロライドトリフェニルホスフィン錯体(東京化成社製)0.2g,およびテトラヒドロフラン100ミリリットルを反応器に仕込み、加熱還流下に4時間反応させた。
【0079】
そして、得られた反応液に、上記で得たグリニヤール試薬を滴下して、加熱還流下に48時間反応させた。このようにして得られた反応生成液を、水200ミリリットル中に注ぎ込み、析出した結晶を濾取した。この結晶は、さらにシリカゲルカラムにより精製して、目的物0.45gを得た。
得られた目的化合物につき、FD−MSを測定した結果、C54H34O2 =714に対して、714のピークが得られ、このものは下記化学構造を有する芳香族炭化水素化合物であると認められた。
【0080】
【化20】
【0081】
[実施例2]
アルゴンガス雰囲気下に、水素化ナトリウム1.5gと、テトラヒドロフラン50ミリリットルを反応容器に仕込み、これにエチルベンゾイルアセテート(アルドリッチ社製)10gをテトラヒドロフラン50ミリリットルに溶解させた溶液を滴下し、攪拌下に2時間反応させた後、さらにp−ジブロモベンゼン(東京化成社製)12gをテトラヒドロフラン20ミリリットルに溶解させた溶液を滴下して、4時間反応させた。
【0082】
得られた反応液を水に注入し、酢酸エチルで抽出し、抽出液を無水硫酸マグネシウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。ここで得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、α−(P−ブロモフェニル)エチルベンゾイルアセテート7gを得た。
そして、塩化アルミニウム5gとフェノール2g、および塩化メチレン20ミリリットルを別の反応器に仕込み、これに、上記で得たα−(P−ブロモフェニル)エチルベンゾイルアセテート7gを少量づつ添加し、攪拌下に4時間反応させた。
【0083】
得られた反応液を氷水中に投入し、塩化メチレンで抽出し、抽出液を無水硫酸マグネシウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。ここで得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、3−(P−ブロモフェニル)−4−フェニルクマリン2.2gを得た。
つぎに、アルゴンガス気流下、マグネシウム粉末1gと、テトラヒドロフラン20ミリリットルを反応器に仕込み、これに、上記で得た3−(P−ブロモフェニル)−4−フェニルクマリン2gをテトラヒドロフラン20ミリリットルに溶解させた溶液を滴下し、加熱還流下に3時間反応させた。
【0084】
ついで、アルゴンガス気流下、4,4’−ジブロモビフェニル(東京化成社製)0.7gと、ジイソブチルアルミニウムハイドライドのトルエン溶液(アルドリッチ社製;1モル濃度溶液)5ミリリットル、パラジウムジクロライドトリフェニルホスフィン錯体(東京化成社製)0.2g,およびテトラヒドロフラン100ミリリットルを反応器に仕込み、加熱還流下に4時間反応させた。
【0085】
そして、得られた反応液に、上記で得たグリニヤール試薬を滴下して、加熱還流下に48時間反応させた。このようにして得られた反応生成液を、水200ミリリットル中に注ぎ込み、析出した結晶を濾取した。この結晶は、さらにシリカゲルカラムにより精製して、目的物0.5gを得た。
得られた目的化合物につき、FD−MSを測定した結果、C42H26O4 =594に対して、594のピークが得られ、このものは下記化学構造を有する芳香族炭化水素化合物であると認められた。
【0086】
【化21】
【0087】
〔実施例3〕
有機EL素子の透光性基板としてガラス基板(サイズ;25mm×75mm×1.1mm)を用いた。このガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物からなる透明性陽極を設けた。この透明性陽極は、約750オングストロームの厚さに被覆した。
【0088】
ついで、この透明性陽極を設けたガラス基板を、真空蒸着装置(日本真空技術社製)に入れて、10-6torrに減圧した。そして、この透明性陽極の上に、銅フタロシアニンを300オングストロームの厚さで蒸着して、正孔注入層を形成した。この際の蒸着速度は、2オングストローム/秒であった。
つぎに、この正孔注入層の上に、下記
【0089】
【化22】
【0090】
の化合物を200オングストロームの厚さで蒸着し、正孔輸送層を形成した。この際の蒸着速度は、2オングストローム/秒であった。
ついで、実施例1において得られた芳香族炭化水素化合物と、下記
【0091】
【化23】
【0092】
の化合物とを同時蒸着して、400オングストロームの厚さを有する発光層を形成した。この場合、実施例1において得られた芳香族炭化水素化合物の蒸着速度は50オングストローム/秒とし、4,4´−ビス〔2−(4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル)ビニル〕ビフェニルの蒸着速度は1オングストローム/秒とした。
【0093】
さらに、この発光層の上に、下記
【0094】
【化24】
【0095】
のトリス(8−キノリノール)アルミニウムを、蒸着速度2オングストローム/秒で蒸着して、電子輸送層を形成した。
そして、最後にこの電子輸送層上に、アルミニウムとリチウムとを同時蒸着することにより、2000オングストロームの厚さを有する陰極を形成した。このアルミニウムの蒸着速度は10オングストローム/秒とし、リチウムの蒸着速度は0.1オングストローム/秒とした。
このようにして得られた有機EL素子を、6Vの電圧で駆動したところ、電流密度は、1.1mA/cm2 であり、130cd/m2 の青色発光であった。そして、この場合の発光効率は、6.2ルーメン/Wであった。
【0096】
〔実施例4〕
実施例3において、発光層の形成に用いた実施例1で得た芳香族炭化水素化合物に代えて、実施例2で得られた芳香族炭化水素化合物を用いた他は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
ここで得られた有機EL素子についても、6Vの電圧で駆動した。この素子においては、電流密度は1.1mA/cm2 であり、127cd/m2 の青色発光であった。そして、この場合の発光効率は、6.0ルーメン/Wであった。
【0097】
〔比較例1〕
実施例3において、発光層の形成に用いた実施例1で得た芳香族炭化水素化合物に代えて、下記
【0098】
【化25】
【0099】
で表される発光材料として公知の芳香族炭化水素化合物を用いた他は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
ここで得られた有機EL素子についても、6Vの電圧で駆動した。この素子においては、電流密度は1.2mA/cm2 であり、44cd/m2 の 発光であった。そして、この場合の発光効率は、1.9ルーメン/Wであった。
【0100】
〔比較例2〕
実施例3において、発光層の形成に用いた実施例1で得た芳香族炭化水素化合物に代えて、下記
【0101】
【化26】
【0102】
で表される発光材料として公知の芳香族炭化水素化合物を用いた他は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
ここで得られた有機EL素子についても、6Vの電圧で駆動した。この素子においては、電流密度は1.2mA/cm2 であり、72cd/m2 の 発光であった。そして、この場合の発光効率は、3.1ルーメン/Wであった。
【0103】
【発明の効果】
本発明の芳香族炭化水素化合物は、有機EL素子の構成材料として有用性が高く、またこの化合物をその構成材料、殊に発光層の形成材料として製造した有機EL素子は、低電圧駆動が可能であり、高い発光効率が得られる。
Claims (7)
- Ar 1 が置換基を有していてもよいアントラセニレン基、Ar 2 が置換基を有していてもよいフェニレン基、Ar 3 およびAr 4 は各々独立に置換基を有していてもよいフェニル基である請求項1に記載の芳香族炭化水素化合物。
- 少なくとも一対の電極間に挟持された有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、請求項1または2に記載の芳香族炭化水素化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 請求項1または2に記載の芳香族炭化水素化合物を、主として発光帯域に含有させてなる請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 請求項1または2に記載の芳香族炭化水素化合物を、有機発光層に含有させてなる請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 有機発光層に、さらに再結合サイト形成物質を含有させてなる請求項3〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 再結合サイト形成物質が、スチリルアミン系化合物、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体およびピラン誘導体の群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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