JP3633830B2 - 高濃度架橋剤マスターバッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は架橋剤マスターバッチに関する。更に詳しくは、熱可塑性プラスチックやゴムといったエラストマーの架橋に使用される架橋剤マスターバッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンやエチレン・酢酸ビニル共重合体のような熱可塑性プラスチック、エチレン・プロピレン・ジエンゴムやブタジエン・アクリロニトリル共重合体のようなエラストマーは安価で豊富に得られ、且つ数々の優れた物性や特性を有しているため工業的に広く使用されている。これらエラストマーは有機過酸化物を適量添加して加熱処理を行うことにより架橋することが出来、その耐熱性を改善するための簡便な方法として工業的に実用化されている方法である。
【0003】
熱可塑性プラスチックやゴムといったエラストマーの架橋を行う際に架橋剤として有機過酸化物を純品のまま添加混合することは、有機過酸化物を炭酸カルシウムやシリカ、クレー、タルク等のエラストマー加工において不活性な充填剤(以下不活性充填剤と略す)で希釈した粉状マスターバッチやエチレン・プロピレンゴム(以下EPMと略す)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下EPDMと略す)に有機過酸化物を練り込んで板状又は粒状に加工されたマスターバッチに比べて経済面で有利であるが、有機過酸化物純品の取り扱いの安全性や架橋しようとするエラストマーへの分散性が非常に劣るため、通常、粉状又は板状、粒状のマスターバッチが工業的に使用されている。
【0004】
有機過酸化物を不活性充填剤で希釈した粉状のマスターバッチを架橋剤として使用する場合、利点としては
(1)使用時及び貯蔵時の安全性が保証される
(2)安全性や品質の許す限り任意に有機過酸化物濃度を上げることができ、使用者にとっての経済効果が大きい
(3)有機過酸化物の形状(固体、液体)によらず粉状として取り扱え、計量作業が簡便である。
であるが、欠点としては以下の点が上げられる。
(1)架橋しようとするエラストマーへの均一分散までに時間がかかる。
(2)架橋しようとするエラストマーとの混練り時に架橋剤マスターバッチの粉塵が立ち、作業者が吸入するといった作業環境上の問題が生じる。
一方、有機過酸化物をEPM又はEPDM等の合成ゴムに混練りした板状又は粒状の架橋剤マスターバッチは粉状の架橋剤マスターバッチ同様、使用時及び貯蔵時の安全性は確保できるが、これを架橋剤として使用した場合は架橋しようとするエラストマーとの均一分散までの時間が粉状のマスターバッチに比べて大幅に短縮され、なお且つ粉塵が立たないため、前記(1)及び(2)の欠点は解決できるが、これら板状又は粒状の架橋剤マスターバッチは技術上の問題で有機過酸化物含有量が最大で40重量%程度のものしか工業的に生産されていない。
【0005】
すなわち工業的に生産されている40重量%又はそれ以下の有機過酸化物を含有したEPM又はEPDMベースの架橋剤マスターバッチの場合、有機過酸化物、EPM又はEPDM、湿式又は乾式シリカが必須成分となり、必要に応じて炭酸カルシウム等の不活性充填剤を添加しオープンロールにより混練することにより生産されているが、有機過酸化物の形状やEPM又はEPDMの特性(ムーニー粘度、エチレン又はプロピレン含有量)、湿式又は乾式シリカの基本性能(比表面積、吸油量等)は考慮する必要がなく、通常、配合上の特別な工夫は必要とされていない。そのため通常は比表面積が40〜140m2/g程度、細孔容積が0.1〜0.6ml/g程度である湿式又は乾式シリカが使用されている。
【0006】
しかしながら有機過酸化物含有量が40重量%以上のものを市販のEPM又はEPDM、湿式シリカ等を使用して生産しようとした場合、オープンロールで混練り中に液体の有機過酸化物を使用した場合では、過剰の有機過酸化物の影響により、ロールにこのマスターバッチが粘着し剥離できなくなったり、又は強度の著しく劣るものができる。
一方固体の有機過酸化物の場合は、過剰成分の影響により混練り中にロール上でバンドの切断が起こり混練りができなくなるという問題が発生する。
【0007】
WO98/54249ではこれら架橋剤マスターバッチの高濃度化のため、60℃でのブルックフィールド粘度が10,000ポイズ以下のEPM/EPDMに代表される液状ポリマー類を必須成分とする高濃度架橋剤マスターバッチの製造方法が開示されているが、これら常温で液状のポリマー類は比較的高価であり工業的には問題がある。
【0008】
現在生産されている有機過酸化物濃度が最大で40重量%程度の板状又は粒状の架橋剤マスターバッチは有機過酸化物純品や粉状で高濃度の架橋剤マスターバッチに比べて架橋しようとするエラストマーへの添加量が増加するため、使用者にとっては経済的に甚だ不利であり、強くEPM又はEPDMベースの高濃度架橋剤マスターバッチの供給が求められているが、現状ではこれ以上の高濃度の架橋剤マスターバッチの生産は前述した理由で技術的に解決できない課題であり、今だ実用化されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
有機過酸化物とEPM及び/又はEPDMを含有する架橋剤マスターバッチで、有機過酸化物含有量が従来のものより高濃度のエラストマー用の架橋剤マスターバッチを開発すること。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはEPM及び/又はEPDM等の常温固体の合成ゴムをベースポリマーとした有機過酸化物の高濃度架橋剤マスターバッチを鋭意研究した結果、好ましくはベースポリマーとしてプロピレン含有量が35重量%以上、好ましくは40重量%以上、更に好ましくは45%以上でムーニー粘度が100℃で30以上の合成ゴム、好ましくはEPM及び/又はEPDMを用い、(a)常温で固体の有機過酸化物の場合には、比表面積が150m2/g以上のシリカ、通常乾式及び/又は湿式シリカを配合することにより、また、(b)常温で液体の有機過酸化物の場合には、細孔容積が1.4ml/g以上、好ましくは1.5ml/g以上である多孔性シリカを配合することにより、有機過酸化物の含有量が35〜70重量%、好ましくは40〜65重量%で品質上優れた架橋剤マスターバッチが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち本発明は
(1)有機過酸化物及び合成ゴムを含む架橋剤マスターバッチにおいて、合成ゴムが、プロピレン含有量が45%以上でムーニー粘度が100℃で30以上のエチレン・プロピレンゴム及び/又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムであり、該合成ゴムの含量が架橋剤マスターバッチ全体に対して10〜30重量%であり、有機過酸化物濃度が架橋剤マスターバッチ全体に対して40%〜65%であり、かつ、比表面積が150m2/g以上であるシリカ又は細孔容積が1.4ml/g以上である多孔性シリカを14%〜30%含有することを特徴とする高濃度架橋剤マスターバッチ
(2)(a)該有機過酸化物が常温固体の有機過酸化物ある場合に、比表面積が150m2/g以上である湿式及び/又は乾式シリカを含有し、また、(b)該有機過酸化物が常温で液状の有機過酸化物ある場合に、細孔容積が1.5ml/g以上である多孔性シリカを含有することを特徴とする上記(1)記載の高濃度架橋剤マスターバッチ
(3)合成ゴムが、プロピレン含有量が45%以上でムーニー粘度が100℃で30以上のエチレン・プロピレンゴム及び/又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高濃度架橋剤マスターバッチ
(4)架橋剤マスターバッチ全体に対して、有機過酸化物40〜65重量%、合成ゴム10〜30重量%、シリカ5〜30重量%である上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の高濃度架橋剤マスターバッチ
に関するものある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の架橋剤マスターバッチに使用する有機過酸化物としては10時間半減期温度が60℃以上で、形状が常温で固体又は液体であるものが好ましい。
本発明において常温とは、0℃〜30℃程度温度を意味し、地域、季節、作業環境等により異なる。また、ここでいう10時間半減期温度とは有機過酸化物を0.2モル/l濃度としたベンゼン溶液中で熱分解したとき、有機過酸化物の濃度が10時間で半分になる温度をいう。
【0013】
発明における常温固体の有機過酸化物の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンのようなジアルキルパーオキサイド類の他、ベンゾイルパーオキサイドに代表されるジアシルパーオキサイド類等が挙げられる。
常温で液体の有機過酸化物としては2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイドのようなジアルキルパーオキサイド類、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシバレリックアシッドノルマルブチルエステル、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサンのようなパーオキシケタール類が挙げられる。これらのうち好ましいものは、常温固体の有機過酸化物としてはジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンであり、常温で液体の有機過酸化物として好ましいものは、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン及び4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシバレリックアシッドノルマルブチルエステルである。
これらの有機過酸化物は通常1種類で使用するが、2種以上を混合した場合においても、液体又は固体のいずれかとして扱うことができるものであれば2種以上を混合して使用することも出来る。また、上記で常温固体として挙げられていても、高濃度で、除去可能な溶媒に溶解して、若しくは液体有機過酸化物に溶解し、液状として上記多孔性シリカに吸着させて使用することもできる。
また、これら有機過酸化物の本発明の架橋剤マスターバッチにおける含有量は35重量%〜70重量%、好ましくは40〜65重量%、より好ましくは45〜65重量%、更に好ましくは50〜65重量%である。
【0014】
本発明で使用する合成ゴムとしてはEPM及びEPDMが好ましい。EPM及びEPDMはそれぞれエチレン、プロピレン共重合体及びエチレン、プロピレン、ジエン三元共重合体を意味し、ムーニー粘度計(ML1+4 100℃)で30以上で、プロピレン含有量が35重量%以上、好ましくは40重量%、更に好ましくは45重量%以上のものが好ましい。これらのムーニー粘度及びプロピレン含量の上限は特にないが、一般的に使用されているEPM及びEPDMは、ゴムの粘性を測定するムーニー粘度計(ML1+4 100℃)で20〜150程度であり、プロピレン含有量は20〜50%程度のものであるので、現段階での実用的な上限はムーニー粘度150程度であり、またプロピレン含有量の上限は50重量%程度である。 しかし、本発明においては技術的に可能な限り、ムーニー粘度200程度、プロピレン含有量60重量%程度若しくはそれ以上のものであっても使用することができる。
【0015】
本発明において使用する比表面積が150m2/g以上のシリカとしては、比表面積が150m2/g以上のものであれば、いずれも使用可能である。通常湿式及び乾式シリカが使用され、その具体例としてはニップシールNS−P(商品名)、ニップシールVN−3(商品名)、ニップシールNS−K(商品名)等(以上日本シリカ製)、ミズカシールP−802(商品名)、ミズカシールP−554A(商品名)等(以上水沢化学工業製)、ファインシールE50(商品名)、ファインシールT32(商品名)、ファインシールX37(商品名)、ファインシールX80(商品名)、ファインシールK41(商品名)等(以上トクヤマ製)、シペルナート22(商品名)、シペルナート50S(商品名)、シペルナート50(商品名)、FK500LS(商品名)、FK700(商品名)等(以上デグサ製)の湿式シリカ、アエロジル200(商品名)、アエロジル300(商品名)、アエロジル380(商品名)等(以上日本アエロジル製)の乾式シリカが挙げられるが、本発明はこれら例示した湿式及び乾式シリカに限定されるものではない。
また表面をメチルクロロシラン等で処理した表面処理シリカも比表面積が150m2/g以上で有れば同様に使用可能である。本発明の高濃度架橋剤マスターバッチに比表面積が150m2/g以上のものであれば湿式及び乾式シリカの区別なく使用可能であり、これらを1種又は2種以上混合して使用され得る。また、比表面積が200m2/g以上のものであればより好ましい。
【0016】
本発明において常温で液体の有機過酸化物の架橋剤マスターバッチで使用しうるシリカとは細孔容積が1.5ml/g以上の細孔を有する多孔性シリカ(ゲル状シリカ)であり、その具体例としてはミズカシールP−707(商品名)、ミズカシールP−740(商品名)、ミズカシールP−78F(商品名)、ミズカシールP−78D(商品名)、ミズカソルブC−1(商品名)、ミズカソルブC−6(商品名)等(以上水沢化学工業製)の他、サイリシア250(商品名)、サイリシア250N(商品名)、サイリシア256(商品名)、サイリシア256N(商品名)、サイリシア310(商品名)、サイリシア320(商品名)、サイリシア350(商品名)、サイリシア358(商品名)等(以上富士シリシア製)が挙げられるが、本発明はこれら例示した多孔性シリカに限定されるものではなく、細孔容積が1.4ml/g以上、好ましくは1.5ml/g以上であればいずれも使用可能であり、本発明の高濃度架橋剤マスターバッチに1種又は2種以上を混合して使用され得る。これらの多孔性シリカは通常粉末状のものが使用され、好ましい粒度は平均粒径1〜15μm程度である。
【0017】
シリカの比表面積及び細孔容積は−196℃でのN2吸着等温線を測定することによって行われ、通常BET法と言われている方法で、最も一般的で信頼性の高い方法である。
本発明で記載した乾式及び湿式シリカの比表面積及び多孔性シリカの細孔容積の値はいずれも各シリカメーカーの公表値である。
本発明におけるシリカの比表面積及び多孔性シリカの細孔容積の上限は特にないが、実用的には、工業的に一般的に使用されている範囲内のものである。たとえば エラストマーの加工等で工業的に使用されている湿式及び乾式シリカの比表面積は通常40〜700m2/g程度のものであり、 また工業的に使用されている細孔を有する多孔性シリカ(通常ゲル状シリカ)の細孔容積は通常0.4〜1.8ml/gであるので、通常は比表面積は700m2/g程度のものが現段階での上限でり、細孔容積は通1.8ml/g程度が現状での上限である。しかし、それ以上のもの例えば比表面積1000m2/g程度 のものや、細孔容積2.0ml/gのものも使用できることは当然である。
又有機過酸化物濃度を高濃度にする上では、比表面積の大きいものが好ましく、比表面積200m2/g以上のもの、若しくは細孔容積1.5ml/g以上、より好ましくは1.6mlのものが好ましい。
【0018】
本来湿式シリカは粒子の凝集により多少の細孔を有しており多孔性シリカに属するものであり両者を厳密に区別することはできないが、湿式シリカの場合、その細孔容積は多くて0.6ml/g程度である。しかし湿式シリカであっても本発明でいう1.4ml/g以上、好ましくは1.5ml/gの細孔容積を有するものであれば、本発明における多孔性シリカとして使用しうる。
【0019】
本発明の高濃度架橋剤マスターバッチは有機過酸化物、合成ゴム好ましくはEPM及び/又はEPDM及びシリカが必須成分であるが、必要に応じ本発明の架橋剤マスターバッチの性能及び貯蔵安定性を損なわない限り、エラストマーの加工で一般的に使用されている無機充填剤が使用可能である。好ましい無機充填剤としては沈降製炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カーボンブラック等が挙げられ、これらを脂肪酸、シラン系カップリング剤等で表面処理されたものであっても良い。これらは本発明の高濃度架橋剤マスターバッチに1種又は2種以上を混合して使用され得る。
これら無機充填剤の本発明の高濃度架橋剤マスターバッチにおける含有量は架橋剤マスターバッチ全体の10重量%以下が好ましい。
【0020】
また本発明の架橋剤マスターバッチの貯蔵安定性を損なわない限り、エラストマーの加工で一般的に使用される酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃化剤、顔料、染料、プロセスオイル、滑剤などを本発明の架橋剤マスターバッチに任意の割合で配合することができる。通常マスターバッチ全体の5%以下程度である。
【0021】
本発明の架橋剤マスターバッチは前記した各成分を混合することにより製造される。製造の実際に当たっては、エラストマーの加工で一般的に用いられているオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機、トランスファーミキサーなどが使用可能であるが、最も好ましい混合機としてはオープンロールである。本発明の架橋剤マスターバッチは板状又は粒状で製造されるものであり、その加工に際してはペレタイザー、裁断機等が使用される。
【0022】
次に本発明の架橋剤マスターバッチを使用して架橋可能なエラストマーの架橋方法について説明する。
本発明の架橋剤マスターバッチは架橋可能なエラストマーの架橋に好適に使用し得るものである。架橋し得るエラストマーの具体例としては、EPM、EPDM、エチレン−酢酸ビニル共重合体、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。
【0023】
本発明の高濃度架橋剤マスターバッチは、これら架橋し得るエラストマーに対して0.2〜20重量%、好ましくは1〜10重量%使用される。
架橋の実際の方法は、それ自体公知の方法で実施されるが、例えばオ−プンロ−ル、ニ−ダ−等の混合機で、まず架橋し得るエラストマ−とタルク、炭酸カルシウム等の不活性充填剤、カーボンブラック等の顔料や加工性向上のためのプロセスオイル等を均一に混合した後、本発明の高濃度架橋剤マスターバッチを必要量添加し混練り後、プレス、押出機等により通常140〜200℃で5〜30分間熱処理することにより架橋されるが、これら架橋条件は使用される有機過酸化物の種類及び架橋しようとするエラストマーの種類によって決められる。
【0024】
本発明より初めて有機過酸化物含有量が最大で70%程度、好ましくは65重量%程度の高濃度架橋剤マスターバッチが可能となり、且つこの新規架橋剤マスターバッチは優れた貯蔵安定性を有し、又使用時には粉塵が立たず、エラストマーへの分散性に優れた性能を有する。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0026】
実施例1
カヤクミルD(化薬アクゾ製、ジクミルパーオキサイド、融点38℃、純度99%)とニプシールNS−P(比表面積170m2/g)を表−1で示される割合で均一に混合し、ついでエスプレン532(住友化学製、EPDM、ムーニー粘度(ML1+4 120℃)80、プロピレン含有量45%)を表−1で示される割合で配合しオープンロールで均一に混練りしたのち、室温まで冷却後ペレタイザーを使用して本発明の粒状の高濃度架橋剤マスターバッチを得た。
【0027】
実施例2
パーカドックス14(化薬アクゾ製、1,3−ビス(tertーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、融点43℃、純度99%)、シペルナート50S(比表面積450m2/g)、軽質炭酸カルシウム(一般市販品)を表−1で示される割合で均一に混合し、ついでkeltan312(出光DSM製、EPDM、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)52、プロピレン含有量50%)を表−1で示される割合でオープンロールで均一に混練りしたのち、室温まで冷却し裁断機を使用して50cm角板状の本発明の高濃度架橋剤マスターバッチを得た。
【0028】
実施例3
カヤクミルD、アエロジル200(比表面積200m2/g)、表面処理炭酸カルシウム(白石工業製、白艶華CCR)及びプロセスオイルとしてポリブテン(一般市販品)を表−1で示される割合で均一に混合し、ついで三井EPT0045(三井化学製、EPM、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)38、プロピレン含有量49%)を表−1で示される割合でオープンロールで均一に混練りしたのち、室温まで冷却し裁断機により50cm角板状の本発明の高濃度架橋剤マスターバッチを得た。
【0029】
実施例4
パーカドックス14、ファインシールX80(比表面積250m2/g)及びタルク(一般市販品)を表−1で示される割合で均一に混合し、ついでJSR−EP11(日本合成ゴム製、EPM、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)40、プロピレン含有量49%)を表−1で示される割合でオープンロールで均一に混練りしたのち、室温まで冷却してペレタイザーにより本発明の粒状の高濃度架橋剤マスターバッチを得た。
【0030】
実施例1〜実施例4で得られた本発明の架橋剤マスターバッチについて40℃で貯蔵し安定性試験を行なった。架橋剤マスターバッチの配合比及び得られた結果を表−1及び表−2に示した。表において、硬度はRubber Tester TypeCを使用して測定した。また、表中において、配合量は重量%を示し,下記の記号はそれぞれ下記の意味を表す。
PO : 有機過酸化物
KYKD : カヤクミルD
PKD14 : パ−カドックス14
三井0045: 三井EPT0045
EP11 : JSR−EP11
エス532 : エスプレン532
KT312 : Keltan312
ニプNSP : ニプシールNS−P
シペ50S : シペルナート50S
ファイ50S: ファインシール50S
アエロ200: アエロジル200
軽炭カル : 軽質炭酸カルシウム
【0031】
【0032】
【0033】
実施例5
トリゴノックス29(化薬アクゾ製、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、常温で液体、純度95%)、サイリシア250N(細孔容積1.80ml/g)、白艶華CCR及びポリブテン(一般市販品)を表−3で示される割合で均一に混合し、ついでエスプレン532を表−3で示される割合で配合しオープンロールで均一に混合したのち、室温まで冷却後、裁断機により50cm角板状の本発明の高濃度架橋剤マスターバッチを得た。
【0034】
実施例6
トリゴノックス29とミズカソルブC−1(細孔容積1.70ml/g)を表−3で示される割合で均一に混合し、ついでKeltan312を表−3で示される割合で配合しオープンロールで均一に混合したのち、室温まで冷却後、裁断機を使用して50cm角板状の本発明の高濃度架橋剤マスターバッチを得た。
【0035】
実施例7
カヤヘキサAD(化薬アクゾ製、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、常温で液体、純度93%)、ミズカシールP−707(細孔容積1.57ml/g)及びタルク(一般市販品)を表−3で示される割合で均一に混合し、ついで三井EPT0045を表−3で示される割合で配合しオープンロールで均一に混合したのち、室温まで冷却後、ペレタイザーを使用して本発明の粒状の高濃度架橋剤マスターバッチを得た。
【0036】
実施例8
トリゴノックス17(化薬アクゾ製、4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシバレリックアシッドノルマルブチルエステル、常温で液体、純度90%)、サイリシア350(細孔容積1.60ml/g)を表−3で示される割合で均一に混合し、ついでJSR−EP11を表−3で示される割合で配合しオープンロールで均一に混合したのち、室温まで冷却後、ペレタイザーを使用して本発明の粒状の高濃度架橋剤マスターバッチを得た。
【0037】
実施例5〜実施例8で得られた本発明の架橋剤マスターバッチについて40℃で貯蔵し安定性試験を行なった。 架橋剤マスターバッチの配合比及び得られた結果を表−4に示した。 また、表中において、配合量は重量%を示し,下記の記号はそれぞれ下記の意味を表す。
TRN29:トリゴノックス29
KYHAD:カヤヘキサAD
サイ :サイリシア
ミソ :ミズカソルブ
ミシ :ミズカシール
多孔性Si:多孔性シリカ
その他は表−1と同じ意味を表す。
【0038】
【0039】
【0040】
表−2及び表−4における結果から本発明によって得られた高濃度架橋剤マスターバッチは貯蔵中の有機過酸化物の損失が少なく、形状や硬度変化がほとんど見られない貯蔵安定性に優れた架橋剤マスターバッチであると言える
【0041】
実施例9〜12
実施例1〜4で得られた各組成物の架橋剤としての性能を評価するため表−5に示した割合で配合した各成分をバンバリーミキサーで混合して得たEPDMコンパウンドに実施例1〜4で得られた本発明の高濃度架橋剤マスターバッチを表−5に示した割合で2本ロールで分散させて各エラストマー組成物を得た。
各架橋剤マスターバッチの添加量はそれぞれの有機過酸化物がEPDM100部に対して12mg当量になる量をEPDMコンパウンドに加えた。
各架橋剤マスターバッチのEPDMコンパウンドに対する分散時間を表−5に示した。
次いで各エラストマー組成物を180℃、15分の条件で架橋を行った。
これらエラストマー組成物の架橋特性はキュラストメーター(JSR3 型)を用いて行った。T10は最大トルクの10%に達するまでの時間、T90は最大トルクの90%に達するまでの時間を表す。
又架橋エラストマーについてJISK−6301に準拠した引張試験、引裂試験を行った。TBは破断時の引張強さ、EBは破断時の伸び、HSは硬度を示し、TRは引き裂き強さを表す。
【0042】
組成物比と共に試験結果を表−5に示した。
表−5中、JSR−EP86は日本合成ゴム株式会社製EPDMの商品名である。又HAFカ−ボンブラックとして旭カ−ボン(株)#70を、ナフテン系プロセスオイルとして日本サン石油(株)製、サンパ−2280を使用した。更に老化防止剤としてはフェノ−ル系老化防止剤を使用した。なお、表中において、下記の記号はそれぞれ下記の意味を表す。
TMPT :トリメチロールプロパントリメタクリレート
JSREP86:JSR−EP86
HAF−C :HAFカ−ボンブラック
NPオイル :ナフテン系プロセスオイル
A :実施例1で得られたマスターバッチ
B :実施例2で得られたマスターバッチ
C :実施例3で得られたマスターバッチ
D :実施例4で得られたマスターバッチ
マスターバッチの欄で「A7.2」の記載は実施例1で得られたマスターバッチを、エラストマー中に7.2%含むことを意味し、その他の同様な記載も同様な意味を示す。
【0043】
【0044】
実施例13〜16
実施例5〜8で得られた各架橋剤マスターバッチについても同様な架橋試験を行った。 ただし架橋条件は実施例13,14では150℃で15分、実施例15は180℃で15分、実施例16では160℃で15分で行った。
各架橋剤マスターバッチの添加量はそれぞれの有機過酸化物がEPDM100部に対して12mg当量になる量をEPDMコンパウンドに加えた。
他は実施例9〜12と同じ条件で行った。
結果を表−6に示した。
なお、表中の略称等は下記のもの以外は表−5と同じ意味を示す。
E :実施例5で得られたマスターバッチ
F :実施例6で得られたマスターバッチ
G :実施例7で得られたマスターバッチ
H :実施例8で得られたマスターバッチ
【0045】
【0046】
表−5及び表−6における結果から本発明の架橋剤マスターバッチは架橋しようとするエラストマーへの分散性に優れ、架橋特性のほか引張強度、引裂強度等の機械的強度に優れた架橋エラストマーを与える。
【0047】
【発明の効果】
本発明の架橋剤マスターバッチは貯蔵安定性に優れ、且つ従来の架橋剤マスターバッチでは到底成し得なかった有機過酸化物含有量の高濃度化が達成された。
Claims (2)
- 有機過酸化物及び合成ゴムを含む架橋剤マスターバッチにおいて、合成ゴムが、プロピレン含有量が45%以上でムーニー粘度が100℃で30以上のエチレン・プロピレンゴム及び/又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムであり、該合成ゴムの含量が架橋剤マスターバッチ全体に対して10〜30重量%、有機過酸化物濃度が架橋剤マスターバッチ全体に対して40%〜65重量%、比表面積が150m2/g以上であるシリカ又は細孔容積が1.4ml/g以上である多孔性シリカの含有量が14%〜30重量%で、かつ充填剤が含まれないか又は10重量%以下で含有することを特徴とする高濃度架橋剤マスターバッチ。
- (a)該有機過酸化物が、常温固体の有機過酸化物ある場合に、比表面積が150m2/g以上である湿式及び/又は乾式シリカを含有し、また、(b)該有機過酸化物が液状の有機過酸化物ある場合に、細孔容積が1.5ml/g以上である多孔性シリカを含有することを特徴とする請求項第1項に記載の高濃度架橋剤マスターバッチ。
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