JP3633112B2 - 車両のアンチロックブレーキ制御装置 - Google Patents

車両のアンチロックブレーキ制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方の座標軸及び他方の座標軸にそれぞれ前輪スリップ率及び後輪スリップ率を取った座標上に目標スリップ率ラインを設定し、該目標スリップ率ラインの原点側及び反原点側にそれぞれブレーキ増力領域及びブレーキ減力領域を画成し、前輪スリップ率及び後輪スリップ率が前記ブレーキ増力領域にあるときにブレーキ力を増力するとともに、前輪スリップ率及び後輪スリップ率が前記ブレーキ減力領域にあるときにブレーキ力を減力する車両のアンチロックブレーキ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、単一のモジュレータにより前輪ブレーキ及び後輪ブレーキのブレーキ力を変化させ得るようにしたものを既に提案している(特開平7−315193号公報参照)。しかるに、単一のモジュレータで前輪及び後輪ブレーキのブレーキ力を単純に制御する場合には、前輪及び後輪のブレーキが相互に影響し合うため、前輪及び後輪のスリップ率を独立に制御することはできず、前輪及び後輪のスリップ率を速やかに適切な値に収束させるようにした制御を行うことが望まれる。
【0003】
そこで本出願人は、単一のモジュレータで前後両輪ブレーキのブレーキ力を制御するようにした上で、前後両輪のスリップ率を速やかに適切な値に収束させ得るようにしたアンチロックブレーキ制御装置を開発した。
【0004】
上記アンチロックブレーキ制御装置は、図27に示すように、横軸に前輪スリップ率を取り、縦軸に後輪スリップ率を取った座標上に設定される目標スリップ率ラインが、横軸切片がa、縦軸切片がbである直線から構成されおり、その目標スリップ率ラインの下側(原点側)にブレーキ増力領域が画成されており、また上側(反原点側)にブレーキ減力領域が画成されている。そして前後輪のスリップ率が目標スリップ率ラインからブレーキ減力領域側に外れるとブレーキ力を減力するとともに、ブレーキ増力領域側に外れるとブレーキ力を増力することにより、前後輪のスリップ率を目標スリップ率ライン上に収束させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両を制動すると重心位置に作用する前向きの慣性力によってノーズダイブが発生するため、後輪の接地荷重が減少して後輪スリップ率が増加する。その結果、図27に矢印Aで示すようにスリップ状態が目標スリップ率ラインをブレーキ増力領域側からブレーキ減力領域側に移行してしまい、必ずしも必要でないブレーキ減力制御が行われてしまう。これを回避するために目標スリップ率ラインの縦軸切片bをb′に増加させて破線で示すような目標スリップ率ラインを設定すると、ブレーキ増力領域が全体的に広がるために低摩擦係数路において過剰スリップが発生し易くなる問題がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、車両のノーズダイブに伴う後輪スリップ率の増加を考慮することにより、路面摩擦係数の大小に関わらず適切なアンチロック制御を行うことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載に記載された発明は、一方の座標軸及び他方の座標軸にそれぞれ前輪スリップ率及び後輪スリップ率を取った座標上に目標スリップ率ラインを設定し、該目標スリップ率ラインの原点側及び反原点側にそれぞれブレーキ増力領域及びブレーキ減力領域を画成し、前輪スリップ率及び後輪スリップ率が前記ブレーキ増力領域にあるときにブレーキ力を増力するとともに、前輪スリップ率及び後輪スリップ率が前記ブレーキ減力領域にあるときにブレーキ力を減力する車両のアンチロックブレーキ制御装置において、前記目標スリップ率ラインは、前輪スリップ率が第1基準値より大きい領域において後輪スリップ率が前輪スリップ率の増加に応じて減少する第1目標スリップ率ラインと、前輪スリップ率が第1基準値より小さい領域において後輪スリップ率が、第1目標スリップ率ライン上の後輪スリップ率の最大値よりも大きい第2基準値になる第2目標スリップ率ラインと、前輪スリップ率が第1基準値に等しいときに前記第1、第2目標スリップ率ラインを接続する第3目標スリップ率ラインとから構成されることを特徴とする。
【0008】
また請求項2に記載された発明は、請求項1の構成に加えて、後輪加速度が負であるときに該後輪加速度の絶対値に応じて前記第2基準値を減少させることを特徴とする。
【0009】
また請求項3に記載された発明は、請求項2の構成に加えて、前輪スリップ率及び後輪スリップ率がブレーキ減力領域からブレーキ増力領域に移行したときに、前記減少させた第2基準値を減少前の値に向けて漸増させることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図26は本発明の一実施例を示すものであり、図1は自動二輪車の全体側面図、図2は図1の2方向矢視図、図3はブレーキ装置の構成図、図4は第1ケーブルダンパの縦断面図、図5は第2ケーブルダンパの縦断面図、図6はアクチュエータの右側面図(図7の6方向矢視図)、図7は図6の7−7線断面図、図8はアクチュエータの左側面図(図7の8方向矢視図)、図9は図7の9−9線断面図、図10は図7の10−10線断面図、図11は図6の11−11線断面図、図12は図6の12−12線断面図、図13は図8の13−13線断面図、図14は図8の14−14線断面図、図15は連動ブレーキ時の作用説明図、図16はアンチロックブレーキ時の作用説明図、図17は作用を説明するグラフ、図18は作用を説明するタイムチャート、図19は目標スリップ率ラインを示す図、図20は高摩擦係数路走行時の作用説明図、図21は低摩擦係数路走行時の作用説明図、図22は従来例と本発明との作用の差を説明する図、図23はABS減力制御開始時の作用説明図、図24はABS減力制御終了時の作用説明図、図25はABS増力制御開始時の作用説明図、図26はABS増力制御終了時のロストモーション規制制御の説明図である。
【0012】
図1〜図3に示すように、スイング式のパワーユニットPを備えたスクータ型自動二輪車Vの前輪Wには液圧の作用に応じて作動するディスクブレーキである前輪ブレーキBが第1車輪ブレーキとして装着され、後輪Wには作動レバー1の作動量に応じた制動力を発揮する従来周知の機械式後輪ブレーキBが第2車輪ブレーキとして装着される。また操向ハンドルの左、右両端には握持部2,2が設けられ、操向ハンドルの右端部には握持部2を握った右手で操作可能な第1ブレーキ操作部材としての第1ブレーキレバー3が軸支され、操向ハンドルの左端部には握持部2を握った左手で操作可能な第2ブレーキ操作部材としての第2ブレーキレバー3が軸支される。
【0013】
第1ブレーキレバー3と前輪ブレーキBとは、第1ブレーキレバー3の操作力を前輪ブレーキBに伝達可能な第1伝達系4を介して連結され、第2ブレーキレバー3と後輪ブレーキBの作動レバー1とは、第2ブレーキレバー3の操作力を後輪ブレーキBに機械的に伝達可能な第2伝達系4を介して連結される。しかも両伝達系4,4の中間部はアクチュエータ5に連結されており、このアクチュエータ5の作動により前輪ブレーキB及び後輪ブレーキBの制動力を調整可能である。
【0014】
第1ブレーキレバー3とアクチュエータ5とを接続する第1プッシュ・プルケーブル25には第1ケーブルダンパ24が介装され、第2ブレーキレバー3とアクチュエータ5とを接続する第2プッシュ・プルケーブル25には第2ケーブルダンパ24が介装される。これらケーブルダンパ24,24は、車体フレームのダウンチューブの右側部及び左側部に配置される。また右側の第1ケーブルダンパ24の上方にはバッテリ53が配置されるとともに、左側の第2ケーブルダンパ24の上方には電子制御ユニット52が配置される。
【0015】
尚、図1及び図2において、符号56はアクチュエータ5に設けられた後述するマスタシリンダ26のリザーバ、符号57はマスタシリンダ26(図3参照)から前輪ブレーキBに連なる管路27の上端に設けられたエア抜き用のブリーダジョイント、符号45はアクチュエータ5から後輪ブレーキBに連なる第3プッシュ・プルケーブル、符号58は燃料タンクである。
【0016】
次に、図4に基づいて第1ケーブルダンパ24の構造を説明する。
【0017】
第1プッシュ・プルケーブル25は、第1ブレーキレバー3に連なるアウターケーブル29及びアクチュエータ5に連なるアウターケーブル29′内にインナーケーブル30が移動自在に挿通されて成るものである。また第1ケーブルダンパ24は、円筒状に形成されて車体フレームに結合されるダンパケーシング31と、ダンパケーシング31内に軸方向相対移動可能に挿入される筒状の可動部材32と、ダンパケーシング31内に固定されて可動部材32が相対的に摺動する筒状の固定部材33と、ダンパケーシング31内に軸方向相対移動可能に挿入され、そのフランジ34aが可動部材32のフランジ32aに当接する摺動部材34と、可動部材32のフランジ32aと固定部材33のフランジ33aとの間に縮設された2本のばね35,35とを備える。
【0018】
固定部材33のフランジ33aには一方のアウターケーブル29の端部が固定されるとともに、可動部材32のフランジ32aには他方のアウターケーブル29′の端部が固定される。従って、両ばね35,35は、アウターケーブル29,29′を相互に離反させる方向のばね力を発揮する。
【0019】
ダンパケーシング31の一端側には、該ダンパケーシング31の一端から突出した可動部材32の一端に当接する第1荷重検知スイッチ38が固定されており、第1ブレーキレバー3からのブレーキ操作入力が所定荷重範囲にある状態、即ち第1プッシュ・プルケーブル25の牽引に応じて可動部材32がばね35,35を圧縮してストロークすると、そのストロークの所定範囲において第1荷重検知スイッチ38がオンする。
【0020】
これを更に詳述すると、第1ブレーキレバー3の操作力が所定値を越えて増加すると、つまりインナーケーブル30を矢印A方向に引く荷重が所定値を越えて増加すると、両アウターケーブル29,29′を相互に接近させようとする荷重により可動部材32がばね35,35を圧縮しながら固定部材33に向かって摺動する。その結果、可動部材32が第1荷重検知スイッチ38の検出子を作動させて該第1荷重検知スイッチ38をオンさせる。
【0021】
図5に示すように、第2ケーブルダンパ24は前記第1ケーブルダンパ24と基本的に同一の構成を有するものであり、第1ケーブルダンパ24と同一の構成要素に同一の符号を付して図示するのみで詳細な説明を省略する。但し、第2ケーブルダンパ24は摺動部材34のフランジ34aと可動部材32のフランジ32aとの間に2枚の皿ばね36,36を配置した点だけが、前記第1ケーブルダンパ24と異なっている。
【0022】
而して、第2ブレーキレバー3が第2プッシュ・プルケーブル25のインナーケーブル30を矢印A方向に引く荷重が所定範囲にあるとき、第2荷重検知スイッチ38がオンする。尚、ばね定数の小さい皿ばね36,36で第2荷重検知スイッチ38に荷重を与えているので、入力ストロークが小さいときの荷重変化を大きくし、ケーブルダンパを使用しないときを基準とした荷重ロスを比較的に小さくすることが可能となり、ブレーキ操作フィーリングに違和感を生じることがないように無効ストロークを小さくすることができる。
【0023】
次に、図6〜図10に基づいてアクチュエータ5の構造を説明する。
【0024】
アクチュエータ5は、第1遊星ギヤ機構6と、第2遊星ギヤ機構6と、サンギヤ制動手段としての電磁ブレーキ7と、正逆回転自在なモータ8とを備える。
【0025】
アクチュエータ5のケーシング9は、モータ8が取付けられる第1ケース部材10と、第1ケース部材10に結合されるとともに、モータ8の回転軸線と同一軸線上で電磁ブレーキ7が取付けられる第2ケース部材11とから構成される。電磁ブレーキ7の回転軸7a及びモータ8の回転軸8aは同軸上に配置され、且つそれらの端部において相互に突き合わさる。
【0026】
第1遊星ギヤ機構6はモータ8の回転軸8aの外周に配置されており、モータ8の回転軸8aの端部外周を囲繞する第1リングギヤ16と、モータ8の回転軸8aの端部に形成された第1サンギヤ17と、第1リングギヤ16及び第1サンギヤ17に噛合する複数の第1遊星ギヤ18,18…と、それらの第1遊星ギヤ18,18…をそれぞれ回転自在に支承する第1遊星キャリア19とを備える。而して、モータ8を駆動すると第1遊星ギヤ機構6の第1サンギヤ17を回転駆動することができる。
【0027】
第2遊星ギヤ機構6は、電磁ブレーキ7の回転軸7aの端部外周を囲繞する第2リングギヤ16と、電磁ブレーキ7の回転軸7aの端部に形成された第2サンギヤ17と、第2リングギヤ16及び第2サンギヤ17に噛合する複数の第2遊星ギヤ18,18…と、それらの第2遊星ギヤ18,18…をそれぞれ回転自在に支承する第2遊星キャリア19とを備える。而して、電磁ブレーキ7は第2遊星ギヤ機構6の第2サンギヤ17の回転を制動・停止することができる。
【0028】
第1リングギヤ16及び第2リングギヤ16は同一部材であり、第1遊星ギヤ18,18…及び第2遊星ギヤ18,18…によって半径方向に位置決めされた状態で、第1遊星キャリア19及び第2遊星キャリア19間に相対回転自在に挟持される。第1、第2リングギヤ16,16を同一部材とすることにより、部品点数の削減を図るとともに、アクチューエタを小型化することができる。
【0029】
電磁ブレーキ7の回転軸7a及びモータ8の回転軸8aの前方に、それら回転軸7a,8aと平行に第1制御軸20及び第2制御軸20が配置される。第1制御軸20の内端には筒状部が形成されており、この筒状部の内周に第2制御軸20の内端の外周が相対回転自在に嵌合することにより、第1制御軸20及び第2制御軸20は第1、第2遊星ギヤ機構6,6の軸線に対して平行な共通の軸線上に同軸に配置される。
【0030】
図7及び図9から明らかなように、第1制御軸20には第1制御部材としての第1セクタギヤ48が固定され、この第1セクタギヤ48は第1遊星キャリア19に一体に設けられた被動ギヤ49に噛合される。また第1制御軸20には後述するマスタシリンダ26を作動させるピストンノッカー43が固着される。
【0031】
マスタシリンダ26は、アクチュエータ5のケーシング9に固定されるシリンダ体39と、前面を圧力室41に臨ませてシリンダ体39に摺動可能に嵌合されるピストン40と、圧力室41に収納されてピストン40を後方側(図9の右方側)に付勢するばね力を発揮する戻しばね42とを備え、シリンダ体39の前端に圧力室41に通じる管路27が接続される。
【0032】
シリンダ体39の後端から突出するピストン40の後端部には、前記ピストンノッカー43が当接する。第1セクタギヤ48が図9に実線で示す位置にあるとき、ピストン40に設けたカップシール44はシリンダ体39に形成したリリーフポート39aを開放する位置にあり、第1セクタギヤ48は前記実線位置から反時計方向(ピストン40を後退させる方向)に鎖線位置まで僅かに回動可能であり、その鎖線位置でストッパ10aに当接して回動を規制される。前記実線位置及び鎖線位置間の回動角は、リリーフポート39aの位置や各ギヤの加工精度のバラツキを考慮して設定されるもので、第1セクタギヤ48がストッパ10aに当接してピストン40が後退端に達したとき、ピストン10のカップシール44がリリーフポート39aを確実に開放し、且つカップシール44がリリーフポート39aから大きく後退しないようになっている。
【0033】
而して、第1制御軸20がピストンノッカー43でピストン40を押圧すると、ピストン40は圧力室41の容積を縮小する側に作動し、圧力室41で生じた液圧が管路27を介して前輪ブレーキBに作用することになる。
【0034】
上述したように、第1制御軸20及び第2制御軸20を第1、第2遊星ギヤ機構6,6の軸線と平行な軸線上に相互に同軸に配置したことにより、両制御軸20,20をそれぞれ異なる軸線上に配置した場合に比べて、アクチュエータ5をコンパクト化することができる。しかも、第1制御軸20に支持した第1セクタギヤ48の回転面と第2制御軸20に支持した第2セクタギヤ48の回転面との間に、第1、第2制御軸20,20と交差するようにマスタシリンダ26を配置したので、アクチュエータ5内のデッドスペースを有効利用してマスタシリンダ26をコンパクトにレイアウトすることができる。
【0035】
図6、図11及び図12には、第1ブレーキレバー3に連なる第1プッシュ・プルケーブル25と、第1ケース部材10から外部に延出する第1制御軸20との接続部が示される。第1制御軸20の外周に相対回転自在に嵌合するカラー61にアッパーアーム62及びロアアーム63が溶接されるとともに、第1制御軸20の外周にアジャストアーム64がボルト65で固定される。アッパーアーム62の先端にケーブルジョイント66を介して第1プッシュ・プルケーブル25が接続される。
【0036】
ロアアーム63の先端にピン67で枢支されたアジャストボルト68が、アジャストアーム64の中間部に支持したピン69を貫通し、その先端にアジャストナット70が螺合される。アジャストボルト68の外周に嵌合するコイルスプリング71が、前記ピン69をアジャストナット70の下端に形成した円弧面70aに当接させるべく付勢する。
【0037】
従って、アッパーアーム62と一体のロアアーム63はアジャストボルト68を介してアジャストアーム64に連結されることになり、第1プッシュ・プルケーブル25によりアッパーアーム62が回動すると、ロアアアーム63、アジャストボルト68及びアジャストアーム64にを介して第1制御軸20が回転する。そして、アジャストナット70を半回転ずつ回転させてロアアーム63とアジャストアーム64との相対角度を変化させることにより、第1制御軸20の位相を任意に微調整することができる。これにより、第1制御軸20に設けたピストンノッカー43を、図9に実線で示す位置に微調整することができる。前記アジャストボルト68及びアジャストナット70は調整手段を構成する。
【0038】
図7及び図10から明らかなように、第2制御軸20には第2制御部材としての第2セクタギヤ48が相対回転自在に支持され、この第2セクタギヤ48は第2遊星キャリア19に一体に設けられた被動ギヤ49に噛合される。第2制御軸20に固定した制御アーム50の先端の係止部50aが、第2セクタギヤ48に形成した長孔48aに嵌合する。これら係止部50a及び長孔48aはロストモーション機構を構成する。また図10において、第2セクタギヤ48の時計方向の回動端を規制すべく、第2ケース部材11に第2セクタギヤ48に当接可能なストッパ11aが形成される。
【0039】
図6、図13及び図14には、第2ブレーキレバー3に連なる第2プッシュ・プルケーブル25と、第2ケース部材11から外部に延出する第2制御軸20との接続部が示される。第2制御軸20にボルト72で固定されたアーム73に、ピン74を介して一対のケーブルジョイント75,76が枢支される。ケーブルジョイント75にはアウターケーブル29′及びインナーケーブル30よりなる第2プッシュ・プルケーブル25のインナーケーブル30が接続されるとともに、ケーブルジョイント76にはアウターケーブル46及びインナーケーブル47よりなる第3プッシュ・プルケーブル45の第3インナーケーブル47が接続される。
【0040】
而して、第1ブレーキレバー3の操作力を前輪ブレーキBに伝達する第1伝達系4は、第1ケーブルダンパ24を介装した第1プッシュ・プルケーブル25、マスタシリンダ26及び管路27から構成され、第2ブレーキレバー3の操作力を後輪ブレーキBに伝達する第2伝達系4は、第2ケーブルダンパ24を介装した第2プッシュ・プルケーブル25及び第3プッシュ・プルケーブル45から構成される。
【0041】
アクチュエータ5から延出する第2制御軸20の外端には角度センサ51が固定され、この角度センサ51によりアクチュエータ5の作動量が検出される。図3に示すように、前輪Wには前輪速度センサ54が、後輪Wには後輪速度センサ55がそれぞれ装着される。ところで、アクチュエータ5における電磁ブレーキ7のオン・オフ作動、並びにモータ8の回転方向及び作動量は、電子制御ユニット52により制御されるものであり、この電子制御ユニット52には、第1、第2荷重検知スイッチ38,38、角度センサ51、前輪速度センサ54及び後輪速度センサ55の検出値がそれぞれ入力される。
【0042】
次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【0043】
第1ブレーキレバー3あるいは第2ブレーキレバー3によるブレーキ操作入力が所定値以下の状態では、アクチュエータ5を作動させずに第1ブレーキレバー3あるいは第2ブレーキレバー3により前輪ブレーキBあるいは後輪ブレーキBで制動力を得るようにするものであり、第1、第2荷重検知スイッチ38,38がスイッチング作動しないときには、電子制御ユニット52によりモータ8の作動が停止されるとともに、電磁ブレーキ7がオフ状態、即ち第2サンギヤ17の自由回転を許容する状態とされる。
【0044】
このような状態で、第1ブレーキレバー3のみをブレーキ操作したときには、第1プッシュ・プルケーブル25の牽引に伴う第1制御軸20の回動によりマスタシリンダ26から液圧が出力され、その液圧が管路27を経て前輪ブレーキBに作用することにより、前輪ブレーキBで制動力が発揮されることになる。この際、第1制御軸20に入力された回動力が第1セクタギヤ48から被動ギヤ49を経て第1遊星キャリア19に伝達される。
【0045】
しかるに、モータ8が停止状態にあって第1サンギヤ17が停止しており、また第2ブレーキレバー3が非ブレーキ操作状態にあることに伴い第2遊星ギヤ機構6の第2遊星キャリア19も停止しているので、第1遊星キャリア19の回転が第1遊星ギヤ18,18…、第1、第2リングギヤ16,16及び第2遊星ギヤ18,18…を経て第2サンギヤ17に伝達され、該第2サンギヤ17を空転させることになる。従って、モータ8及び電磁ブレーキ7が作動しない限り、第1ブレーキレバー3の操作により後輪ブレーキBが作動することはない。
【0046】
また、モータ8及び電磁ブレーキ7が作動しない状態で第2ブレーキレバー3のみをブレーキ操作したときには、第2伝達系4による機械的なブレーキ操作力伝達により後輪ブレーキBで制動力が発揮される。このとき、第2プッシュ・プルケーブル25の牽引により第2制御軸20が回動しても、モータ8が停止状態にあって第1サンギヤ17が停止しており、また第1ブレーキレバー3が非ブレーキ操作状態にあることに伴い第1遊星ギヤ機構6の第1遊星キャリア19も停止しているため、第1、第2リングギヤ16,16は第1遊星ギヤ18,18…を介して回転不能に固定されている。従って、第2遊星キャリア19の回転は第2遊星ギヤ18,18を経て第2サンギヤ17に伝達され、該第2サンギヤ17を空転させることになる。従って、モータ8及び電磁ブレーキ7が作動しない限り、第2ブレーキレバー3の操作により前輪ブレーキBが作動することはない。
【0047】
第1ブレーキレバー3あるいは第2ブレーキレバー3によるブレーキ操作入力が所定値以上となったときには、アクチュエータ5を作動せしめて前輪ブレーキB及び後輪ブレーキBを連動、作動させるようにするものであり、第1、第2荷重検知スイッチ38,38がスイッチング作動したときには、電子制御ユニット52によりモータ8が作動されるとともに、電磁ブレーキ7がオン状態、即ち第2サンギヤ17が制動される。
【0048】
ここで、第2ブレーキレバー3を所定値以上の操作力でブレーキ操作したときを想定すると、図15に示すように、電磁ブレーキ7で第2サンギヤ17を制動した状態でモータ8を回転駆動すると、第1遊星キャリア19及び第2遊星キャリア19は相互に逆方向に回転駆動され、第2遊星キャリア19と一体の被動ギヤ49により第2セクタギヤ48が図15の時計方向に駆動される。しかしながら、第2セクタギヤ48はストッパ11aとの当接により回転を規制されているため、その反力で回転する第1遊星キャリア19により第1被動ギヤ49を介して第1セクタギヤ48が図15の反時計方向に回転する。その結果、マスタシリンダ26が作動してブレーキ油圧を発生し、このブレーキ油圧で前輪ブレーキBが作動する。
【0049】
このとき、制御アーム50の係止部50aが第2セクタギヤ48の長孔48aに遊嵌しているため、アクチュエータ5の作動に伴う第2セクタギヤ48の回転は、第2ブレーキレバー3の操作に基づく第2制御軸20の回転に影響を及ぼすことがない。而して、前輪ブレーキB及び後輪ブレーキの連動作動中、第2制御軸20の回転角を検出する角度センサ51の出力に基づいてアクチュエータ5の作動が制御される。
【0050】
これを図17に基づいて更に説明すると、第2ブレーキレバー3を操作すると先ず後輪ブレーキBが第2プッシュ・プルケーブル25及び第3プッシュ・プルケーブル45を介して作動し、後輪Wのブレーキ力が立ち上がる。第2ブレーキレバー3を操作荷重が増加して第2ケーブルダンパ24の第2荷重検知スイッチ38がオンすると、アクチュエータが5が作動して前輪ブレーキBが作動する。その結果、ブレーキ力の配分は理想配分線に沿うように折れ曲がる。
【0051】
このとき、制御アーム50の係止部50aと第2セクタギヤ48の長孔48aとからなるロストモーション機構が存在しないと仮定すると、アクチュエータ5の作動後の後輪Wのブレーキ力は、ライダーによる第2ブレーキレバー3からの入力分に、アクチュエータ5の作動による増加分(図17の斜線部分)を付加したものとなり、破線で示すように後輪Wのブレーキ力が過剰になって理想配分線から大きく外れてしまい、後輪Wのロック傾向が強まる可能性がある。しかしながら実際には、後輪Wのブレーキ力はライダーによる入力分だけであるため、アクチュエータ5の作動量を適宜設定して前輪Wのブレーキ力を調整することにより、理想配分線に近いブレーキ力配分特性を容易に得ることができ、しかもブレーキフィーリングの向上にも寄与することができる。
【0052】
次に、アンチロックブレーキ制御を行う場合について説明する。
【0053】
前輪速度センサ54及び後輪速度センサ55の出力に基づいて車輪がロック傾向になったことが検出されると、電子制御ユニット52は電磁ブレーキ7をオン状態にするとともにモータ8を上記連動作動時とは逆方向に作動せしめる。そうすると、図16に示すように第1遊星キャリア19及び第2遊星キャリア19は相互に逆方向に、且つ前述した連動作動時とは逆方向に回転駆動され、第1セクタギヤ48が図16の時計方向に、また第2セクタギヤ48が反時計方向に駆動される。このとき、第1セクタギヤ48の回転は直接第1制御軸20に伝達され、第1制御軸20を前輪Wのブレーキ力を弱める方向に回転させるとともに、第2セクタギヤ48の回転はその長孔48aの端部に制御アーム50の係止部50aが当接することにより第2制御軸20に伝達され、第2制御軸20を後輪Wのブレーキ力を弱める方向に回転させる。
【0054】
而して、車輪のスリップ率に応じてアクチュエータ5のモータ8を正逆転してブレーキ力を増減することにより、車輪のロックを効果的に回避するアンチロックブレーキ制御を行うことができる。
【0055】
しかも第1、第2伝達系4,4において、アクチュエータ5と第1、第2ブレーキレバー3,3との間には、第1、第2ケーブルダンパ24,24がそれぞれ介設されており、アンチロックブレーキ制御における制動力再増力時には、モータ8を非作動状態とすることによりそれらのケーブルダンパ24,24で蓄えられた反発力を利用することが可能となり、またアンチロックブレーキ制御実行中に第1ブレーキレバー3あるいは第2ブレーキレバー3にアクチュエータ5側からの力が直接作用することを回避して、良好な操作フィーリングを得ることができる。
【0056】
ところで、本実施例のアクチュエータ5は、マスタシリンダ26に接続された第1セクタギヤ48の回動範囲を規制するストッパ10a(図9参照)を設けたことにより、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
図18において、例えば前輪Wの速度が車体速度よりも所定値を越えて低下するとアンチロックブレーキ制御が開始され、アクチュエータ5の作動により第1セクタギヤ48の回転角がブレーキ力を抜く方向に減少し、それに伴って前輪Wのブレーキ力も減少する。第1セクタギヤ48の回転角の減少に伴ってマスタシリンダ26のピストン40がピストンノッカー43に追従して後退し、図9においてカップシール44がリリーフポート39aを開放した直後、第1セクタギヤ48がストッパ10aに当接して回動を規制される。
【0058】
このとき、前記ストッパ10aが存在しないと仮定すると、図18に破線で示すように第1セクタギヤ48は更に回動して第1ブレーキレバー3のレバー反力も大きく増加し、レバーフィーリングを低下させることになる。しかも、アクチュエータ5を作動させて第1セクタギヤ48をブレーキ力が増加する方向に回動させたとき、ピストン40のカップシール44がリリーフポート39aを閉塞して圧力室41にブレーキ油圧が発生するタイミングが遅れ、応答性が低下することになる。
【0059】
しかるに、本実施例のごとく、ピストン40を後退させる方向への第1セクタギヤ48の回動をストッパ10aで規制することにより、ブレーキ力を再び増加させるべくアクチュエータ5の作動に伴って第1セクタギヤ48が駆動されたとき、ピストン40を速やかに前進させてブレーキ油圧を発生させ、応答性の低下を回避することができる。
【0060】
次に、図19〜図26に基づいてアンチロックブレーキ制御の具体的内容を更に説明する。
【0061】
図19のグラフは、横軸に前輪スリップ率λを取り、縦軸に後輪スリップ率λを取った直交座標上に太い実線で示す目標スリップ率ラインL,L,Lを設定したもので、その目標スリップ率ラインL,L,Lの内側(原点側)にブレーキ増力領域Aが設定され、外側(反原点側)にブレーキ減力領域Aが設定される。前輪スリップ率λ及び後輪スリップ率λは前輪速度センサ54で検出した前輪速度V及び後輪速度センサ55で検出した後輪速度Vから算出されるもので、非駆動輪速度である前輪速度Vから推定した推定車体速度V′を用いて、例えば次のように算出される。
【0062】
前輪スリップ率λ=(V′−V)/V′ …(1)
後輪スリップ率λ=(V′−V)/V′ …(2)
上式に基づいて算出した前輪スリップ率λ及び後輪スリップ率λが図19の直交座標上で目標スリップ率ラインL,L,Lの内側のブレーキ増力領域Aにあれば、車両のスリップ状態が小さいとしてアクチュエータ5のモータ8を一方向に回転駆動し、前輪ブレーキB及び後輪ブレーキBのブレーキ力を共に増加させることにより、車両のスリップ状態を目標スリップ率ラインL,L,L上に移動させる。また前輪スリップ率λ及び後輪スリップ率λが目標スリップ率ラインL,L,Lの外側のブレーキ減力領域Aにあれば、車両のスリップ状態が大きいとしてアクチュエータ5のモータ8を逆方向に回転駆動し、前輪ブレーキB及び後輪ブレーキBのブレーキ力を共に減少させることにより、車両のスリップ状態を目標スリップ率ラインL,L,L上に移動させる。
【0063】
目標スリップ率ラインL,L,Lは、第1目標スリップ率ラインL、第2目標スリップ率ラインL及び第3目標スリップ率ラインLの3本のラインから構成される。
【0064】
第1目標スリップ率ラインLは、直交座標の第1象限の前輪スリップ率λが第1基準値frmdaより大きい領域(λ>frmda)に設定される右下がりのラインであり、このライン上ではλ=−aλ+b(a>0,b>0)が成立する。即ち、第1目標スリップ率ラインL上では、前輪スリップ率λが増加すれば後輪スリップ率λが減少し、前輪スリップ率λが減少すれば後輪スリップ率λが増加するため、前輪W及び後輪Wのトータルのスリップ率が一定に保持される。
【0065】
前記第1目標スリップ率ラインLの下方には破線で示す第1目標スリップ率ラインL′が平行に設定されており、両第1目標スリップ率ラインL,L′の間が不感帯とされる。車両のスリップ状態がブレーキ増力領域Aからブレーキ減力領域Aに移行する場合には第1目標スリップ率ラインLが基準となるが、ブレーキ減力領域Aからブレーキ増力領域Aに移行する場合には第1目標スリップ率ラインL′が基準となる。このように、不感帯ではブレーキ増力方向への制御が停止されるので、アンチロックブレーキ制御時におけるブレーキ増力制御により前後輪スリップ率λ,λが不所望に大きくなるのを防止し、過剰スリップの収束を速めることができる。
【0066】
第2目標スリップ率ラインL2 は、直交座標の第1象限の前輪スリップ率λF <frmdaの領域における横軸と平行なライン(λR =rrmda0)として設定されるもので、この第2目標スリップ率ラインL2 、前記したλ F <frmdaの領域において後輪スリップ率λ R が、第1目標スリップ率ラインL 1 上の後輪スリップ率λ R の最大値よりも大きい第2基準値rrmdaになるよう設定され(図19参照)、しかもこの第2目標スリップ率ラインL 2 後輪速度VR の時間微分値である後輪加速度dVR /dt=Rrwに応じて減少側に移動する。即ち、後輪加速度Rrw≧0のときの第2目標スリップ率ラインL2 はλR =rrmda0であり、後輪加速度Rrwが負値であって後輪速度VR が減少傾向(ロック傾向)にあるときには、第2目標スリップ率ラインL2 ′は前記第2目標スリップ率ラインL2 よりも下方(原点側)のλR =rrmdaに移動する。この第2基準値rrmdaは次式により決定される。
【0067】
rrmda=rrmda0−K×|Rrw| …(3)
rrmda0;正の定数
K;正の係数
|Rrw|;負値である後輪速度の絶対値
而して、後輪加速度Rrw≧0のとき、第2目標スリップ率ラインL′=Lは最も上方に位置しており、後輪加速度Rrw<0のときは、その絶対値|Rrw|の大きさに応じて下方に移動する。従って、後輪Wのロック傾向が強まる低摩擦係数路ほど、第2目標スリップ率ラインL′は下方に移動する。
【0068】
また、車両のスリップ状態がブレーキ減力領域Aからブレーキ増力領域Aに移行すると、第2目標スリップ率ラインL′は第2目標スリップ率ラインLに向けて所定の速度で上方に移動する。この第2目標スリップ率ラインL′の上方への移動速度は図20及び図21において傾きαの破線で示されており、この傾きαは高摩擦係数路におけるブレーキ増力時の後輪速度Vの減少率よりも僅かに小さく設定されており(図20参照)、また低摩擦係数路におけるブレーキ増力時の後輪速度Vの減少率よりもかなり小さく設定されている(図21参照)。
【0069】
第3目標スリップ率ラインLは、直交座標上において前輪スリップ率λが1基準値frmdaに等しくなるライン(λ=frmda)上に設定されており、前記第1目標スリップ率ラインL及び第2目標スリップ率ラインLを相互に接続する。
【0070】
さて、ブレーキ増力制御により前輪W及び後輪Wのブレーキ力を増加させると、車両の重心位置に作用する前向きの慣性力によって前輪Wの接地荷重が増加して前輪スリップ率σが減少する一方、後輪Wの接地荷重が減少して後輪スリップ率σが増加する。その結果、図19の前輪スリップ率σが小さい領域(σ<frmda)において、摩擦係数が大きい路面であるにも関わらず、車両のスリップ状態がブレーキ増力領域A側からブレーキ減力領域A側に簡単に移行してしまい、必ずしも必要のないブレーキ減力制御が行われる可能性がある。
【0071】
しかしながら、前述したように路面摩擦係数が大きい場合には後輪Wが比較的にロックし難いために負値である後輪加速度Rrwの絶対値|Rrw|が小さくなり、その結果、第2目標スリップ率ラインL′は、最も上方の第2目標スリップ率ラインLの近傍に留まって第1目標スリップ率ラインLの延長線よりも上方に位置することになる。これにより、車両のスリップ状態はブレーキ増力領域Aからブレーキ減力領域A側に移行し難くなり、必ずしも必要のないブレーキ減力制御が行われる不具合が回避される。
【0072】
一方、路面摩擦係数が小さい場合には後輪Wがロックし易いために負値である後輪加速度Rrwの絶対値|Rrw|が大きくなり、第2目標スリップ率ラインL′は大きく下方に移動することになる。その結果、車両のスリップ状態はブレーキ増力領域A側からブレーキ減力領域A側に移行し易くなり、ブレーキ減力制御が速やかに行われて後輪Wのロックが未然に回避される。
【0073】
図20及び図21において、破線は前輪スリップ率σが小さい領域(σ<frmda)における目標スリップ率ラインを示しており、この目標スリップ率ラインを後輪速度Vが上から下に横切るとブレーキ減力領域Aに入ってブレーキ減力制御が行われるとともに、下から上に横切るとブレーキ増力領域Aに入ってブレーキ増力制御が行われる。ブレーキ減力領域Aからブレーキ増力領域Aに移行したとき、目標スリップ率ラインはL′からLに一気に復帰せず、前述したように傾きαを以て目標スリップ率ラインLまで緩やかに復帰する。
【0074】
図22から明らかなように、仮にブレーキ減力領域Aからブレーキ増力領域Aに移行したときに目標スリップ率ラインをL′からLに一気に復帰させた場合(一点鎖線参照)、それに続くブレーキ増力領域Aからブレーキ減力領域Aへの移行はp点において行われる。一方、本発明の如く目標スリップ率ラインをL′からLに向けて徐々に復帰させた場合(破線参照)、ブレーキ増力領域Aからブレーキ減力領域Aへの移行はp′点において行われる。従って、本発明によればブレーキ減力領域Aへ移行するタイミングを早めて過剰スリップの発生を防止し、安定性の高いアンチロックブレーキ制御を行うことが可能となる。
【0075】
ところで、制御アーム50の係止部50a及び第2セクタギヤ48の長孔48aよりなるロストモーション機構は、第2ブレーキレバー3の操作により作動するアクチュエータ5の駆動力を、前輪ブレーキBだけに伝達して後輪ブレーキBに伝達しないために必要であるが、ABS制御時には前記ロストモーション機構により制動力の応答性が低下する場合があるため、アクチュエータ5のモータ8を以下のように制御することにより応答性の向上を図っている。
【0076】
図23(A)はABS減力制御の開始時の制御を示すものである。ABS制御が行われていないとき(以下、CBS制御時という)、第2セクタギヤ48は時計方向に回転してストッパ11aに当接した位置(図15参照)にあり、この状態からアクチュエータ5によるABS減力制御が開始されると、第2セクタギヤ48は図23(A)に矢印で示す反時計方向(ABS方向)に回転してストッパ11aから離間する。このとき、第2セクタギヤ48の長孔48aは制御アーム50の係止部50aに対して空動し、その長孔48aの端部aが係止部50aに当接した後に第2制御軸20が回転を開始するため、後輪Wのブレーキ力の減力開始までに前記空動期間に相当するタイムラグが発生することになる。
【0077】
そこで、図23(B)に示すように、アクチュエータ5の電磁ブレーキ7をオンしてモータ8をABS減力方向に駆動するとき、その初期に一時的にパルス状デューティを出力して長孔48aの端部aを制御アーム50の係止部50aに速やかに当接させることにより、最小限のタイムラグで第2制御軸20を回転させて後輪Wのブレーキ力の減力応答性を高めることができる。
【0078】
図24(A)はABS減力制御の終了時の制御を示すものである。減力の終了に続いてライダーによるブレーキングが終了し、電磁ブレーキ7がオフしてアクチュエータ5による次のCBS制御に備えるとき、予め第2セクタギヤ48を時計方向(CBS方向)に所定角度だけ回転させ、ABS減力制御中に制御アーム50の係止部50aに当接していた長孔48aの端部aに代えて、反対側の端部bを前記係止部50aに当接させる。これにより、続くCBS制御により第2セクタギヤ48が時計方向(CBS方向)に回転を開始したとき、その回転をタイムラグなしに第2制御軸20に伝達し、後輪Wのブレーキ力を速やかに立ち上げて応答性を高めることができる。
【0079】
そのために、図24(B)に示すように、ライダーによるブレーキングが終了して電磁クラッチ7がオフすると同時に、CBS方向のパルス状のデューティが出力される。
【0080】
図25(A)はABS減力制御に続くABS増力制御の開始時の制御を示すものである。ABS減力制御が終了して次のABS増力制御に備えるとき、予め第2セクタギヤ48を時計方向(CBS方向)に所定角度だけ回転させ、ABS減力制御中に制御アーム50の係止部50aに当接していた長孔48aの端部aに代えて、反対側の端部bを前記係止部50aに当接させる。これにより、続くABS増力制御により第2セクタギヤ48が時計方向(CBS方向)に回転を開始したとき、その回転をタイムラグなしに第2制御軸20に伝達し、後輪Wのブレーキ力を速やかに立ち上げて応答性を高めることができる。
【0081】
ABS減力制御が終了して次のABS増力制御に備えるべく予め第2セクタギヤ48を時計方向(CBS方向)に所定角度だけ回転させたとき、その第2セクタギヤ48がストッパ11aに当接して時計方向(CBS方向)の回転が規制されると、その反力で回転する第1遊星キャリア19により第1被動ギヤ49を介して第1セクタギヤ48が図15の反時計方向に回転する。その結果、マスタシリンダ26が作動してブレーキ油圧を発生し、このブレーキ油圧で前輪ブレーキBが不要な作動をする。
【0082】
上述した前輪ブレーキBの不要な作動を回避するには、前記CBS方向のパルス状デューティの出力により長孔48aの端部bが係止部50aに当接した後、モータ8に所定時間だけ電気的な制動力を発生させて回転を規制する。而して、モータ8に制動力を発生させて回転を規制することにより、第2セクタギヤ48がストッパ11aに当接した後に、モータ8が慣性によってCBS方向に回転を続けることがなくなり、第2セクタギヤ48がストッパ11aから受ける反力で第1セクタギヤ48が回転して前輪ブレーキBが作動することが防止される。
【0083】
そのために、図25(B)に示すように、アクチュエータ5の電磁ブレーキ7をオンしてモータ8をABS増力方向(CBS方向)に駆動するとき、その初期に一時的に大きいCBS方向のデューティを出力して長孔48aの端部bを制御アーム50の係止部50aに速やかに当接させる。続いて、前述した慣性によるモータ8のCBS方向の回転を防止すべく、所定時間に亘ってモータ8に電気的な制動力を作用させ、その後にデューティ指令値に基づいてモータ8をABS増力方向(CBS方向)に駆動する。
【0084】
図26(A),(B)はABS増力制御の終了時の制御を示すものである。増力の終了に続いてライダーによるブレーキングがし、電磁ブレーキ7がオフしたとき、第2セクタギヤ48を反時計方向(ABS方向)に所定角度だけ回転させ、ABS増力制御中に制御アーム50の係止部50aに当接していた長孔48aの端部bを該係止部50aから離間させる。これにより、第2セクタギヤ48と第2被動ギヤ49との噛合面圧が開放されて第2ブレーキレバー3とアクチュエータ5とが切り離され、ライダーが感じる第2ブレーキレバー3のリリース感が向上する。
【0085】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0086】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載に記載された発明によれば、一方の座標軸及び他方の座標軸にそれぞれ前輪スリップ率及び後輪スリップ率を取った座標上に目標スリップ率ラインが設定され、この目標スリップ率ラインが前輪スリップ率が第1基準値より小さい領域において後輪スリップ率が、第1目標スリップ率ライン上の後輪スリップ率の最大値よりも大きい第2基準値になる第2目標スリップ率ラインを有するので、制動時に車両の慣性力によってノーズダイブが発生することに伴い後輪の接地荷重が減って後輪スリップ率が増加しても、前記第2基準値の設定によりスリップ状態が第2目標スリップ率ラインをブレーキ増力領域側からブレーキ減力領域側に越え難くなり、これにより必ずしも必要のないブレーキ減力制御が行われるのを回避することができる。また、前輪スリップ率が第1基準値より大きくなった場合には、第1目標スリップ率ラインによりブレーキ増力領域及びブレーキ減力領域が区画されるので、前後輪のスリップ率の増加に伴って速やかにブレーキ減力制御を行わしめ、制動時における車両安定性を確保することができる。
【0087】
また請求項2に記載された発明によれば、後輪加速度が負であるときに該後輪加速度の絶対値に応じて第2基準値を減少させるので、低摩擦係数路で後輪のロック傾向が強まったときにスリップ状態が第2基準値をブレーキ増力領域側からブレーキ減力領域側に越え易くし、これにより速やかにブレーキ減力制御を行わしめて車両安定性を確保することができる。
【0088】
また請求項3に記載された発明によれば、スリップ状態がブレーキ減力領域からブレーキ増力領域に移行したときに、一旦減少させた第2基準値が減少前の値に向けて漸増するので、再びブレーキ減力領域に移行するタイミングを早めることができる。その結果、ブレーキ増力領域においてスリップ率が過剰になるのを防止して車両安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動二輪車の全体側面図
【図2】図1の2方向矢視図
【図3】ブレーキ装置の構成図
【図4】第1ケーブルダンパの縦断面図
【図5】第2ケーブルダンパの縦断面図
【図6】アクチュエータの右側面図(図7の6方向矢視図)
【図7】図6の7−7線断面図
【図8】アクチュエータの左側面図(図7の8方向矢視図)
【図9】図7の9−9線断面図
【図10】図7の10−10線断面図
【図11】図6の11−11線断面図
【図12】図6の12−12線断面図
【図13】図8の13−13線断面図
【図14】図8の14−14線断面図
【図15】連動ブレーキ時の作用説明図
【図16】アンチロックブレーキ時の作用説明図
【図17】作用を説明するグラフ
【図18】作用を説明するタイムチャート
【図19】目標スリップ率ラインを示す図
【図20】高摩擦係数路走行時の作用説明図
【図21】低摩擦係数路走行時の作用説明図
【図22】従来例と本発明との作用の差を説明する図
【図23】ABS減力制御開始時の作用説明図
【図24】ABS減力制御終了時の作用説明図
【図25】ABS増力制御開始時の作用説明図
【図26】ABS増力制御終了時の作用説明図
【図27】従来例の目標スリップ率ラインを示す図
【符号の説明】
ブレーキ増力領域
ブレーキ減力領域
frmda 第1基準値
rrmda 第2基準値
第1目標スリップ率ライン
第2目標スリップ率ライン
第3目標スリップ率ライン
Rrw 後輪加速度
λ 前輪スリップ率
λ 後輪スリップ率

Claims (3)

  1. 一方の座標軸及び他方の座標軸にそれぞれ前輪スリップ率(λF )及び後輪スリップ率(λR )を取った座標上に目標スリップ率ラインを設定し、該目標スリップ率ラインの原点側及び反原点側にそれぞれブレーキ増力領域(A1 )及びブレーキ減力領域(A2 )を画成し、前輪スリップ率(λF )及び後輪スリップ率(λR )が前記ブレーキ増力領域(A1 )にあるときにブレーキ力を増力するとともに、前輪スリップ率(λF )及び後輪スリップ率(λR )が前記ブレーキ減力領域(A2 )にあるときにブレーキ力を減力する車両のアンチロックブレーキ制御装置において、
    前記目標スリップ率ラインは、
    前輪スリップ率(λF )が第1基準値(frmda)より大きい領域において後輪スリップ率(λR )が前輪スリップ率(λF )の増加に応じて減少する第1目標スリップ率ライン(L1 )と、
    前輪スリップ率(λF )が第1基準値(frmda)より小さい領域において後輪スリップ率(λR )が、第1目標スリップ率ライン(L 1 )上の後輪スリップ率(λ R )の最大値よりも大きい第2基準値(rrmda)になる第2目標スリップ率ライン(L2 )と、
    前輪スリップ率(λF )が第1基準値(frmda)に等しいときに前記第1、第2目標スリップ率ライン(L1 ,L2 )を接続する第3目標スリップ率ライン(L3 )と
    から構成されることを特徴とする、車両のアンチロックブレーキ制御装置。
  2. 後輪加速度(Rrw)が負であるときに該後輪加速度(Rrw)の絶対値に応じて前記第2基準値(rrmda)を減少させることを特徴とする、請求項1記載の車両のアンチロックブレーキ制御装置。
  3. 前輪スリップ率(λF )及び後輪スリップ率(λR )がブレーキ減力領域(A2 )からブレーキ増力領域(A1 )に移行したときに、前記減少させた第2基準値(rrmda)を減少前の値に向けて漸増させることを特徴とする、請求項2記載の車両のアンチロックブレーキ制御装置。
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