JP3630790B2 - 自動変速機の作動油圧制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機の作動油圧制御装置に関し、特に、ニュートラルレンジから走行レンジにセレクトされた際のセレクトショックを低減するようにした自動変速機の作動油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、かかる自動変速機の作動油圧制御装置としては、特開平3ー28571号公報に記載のものが知られている。
【0003】
このものは、レンジ信号を入力してニュートラルレンジから走行レンジへの切換時に、一時的に作動油圧を急上昇させた後、急降下させてプリチャージ用の棚圧を作るプリチャージ圧調圧手段と、プリチャージ圧の下降時点から徐々に上記作動油圧を上昇させて、摩擦要素の容量調整圧を作る容量調整圧調圧手段とを備え、ニュートラルレンジから走行レンジへの切換時に、プリチャージ圧調圧手段によって一時的に作動油圧を急上昇させた後、急降下させることにより、摩擦要素の締結準備を迅速に行い、その後、容量調整圧調圧手段によって徐々に上記作動油圧上昇させることにより、摩擦要素が完全に締結されるときのショックを低減し、セレクトの短時間での完了とショックの低減の両立をはかるようにてしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の自動変速機の作動油圧制御装置にあっては、セレクト時における上述の棚圧の設定およびその後の作動油圧の緩増圧が、エンジンの回転状態、例えば、暖機運転中の回転上昇状態等にかかわらず一義的に設定されていることから、これに伴うトルクコンバータのタービン回転数(自動変速機入力軸回転数)によっては、セレクトの短時間での完了とショックの低減の両立とが充分に満たされない場合が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、かかる従来の問題を解決し、セレクト時、特にニュートラルレンジから走行レンジへのセレクトを短時間にかつショックをさらに伴うことなく行うことのできる自動変速機の作動油圧制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ニュートラルレンジから走行レンジにセレクトされたとき、一時的に作動油圧を急上昇させた後急降下させ発進用摩擦要素へのプリチャージ用棚圧を作るプリチャージ圧調圧手段と、前記プリチャージ圧の急降下時点から前記作動油圧を徐々に上昇させて、前記発進用摩擦要素の容量調整圧を作る容量調整圧調圧手段とを備えた自動変速機の作動油圧制御装置において、前記自動変速機の入力軸回転数またはエンジン回転数に応じて、前記プリチャージ圧調圧手段による前記プリチャージ圧の急降下時点における前記作動油圧を変更するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、ニュートラルレンジから走行レンジにセレクトされたとき、一時的に作動油圧を急上昇させた後急降下させ発進用摩擦要素へのプリチャージ用棚圧を作るプリチャージ圧調圧手段と、前記プリチャージ圧の急降下時点から前記作動油圧を徐々に上昇させて、前記発進用摩擦要素の容量調整圧を作る容量調整圧調圧手段とを備えた自動変速機の作動油圧制御装置において、前記自動変速機の入力軸回転数またはエンジン回転数が高い程、前記容量調整圧調圧手段による前記プリチャージ圧の急降下時点からの前記作動油圧の上昇速度が高くなるようにしたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
添付の図面に記載された実施例に基づき、本発明の好ましい実施の形態につき詳細に説明する。各実施例は、発明の説明のためのものであり発明を限定するものではない。事実、発明の範囲すなわち精神から逸脱することなく、本発明の中で種々の修正および変形がなされ得ることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、一実施例の部分として図示され、あるいは記述されている特徴は、さらなる実施例を生み出すべく他の実施例に用いられ得る。なお、記載された説明および図面を通して、同一機能部位には同一番号が用いられている。
【0011】
図1は本発明の実施の一形態を示すブロック図であり、1は自動変速機、2はエンジンで、自動変速機1には周知の如く複数組の遊星歯車装置からなるギアトレーンが内蔵され、該ギアトレーンにはトルクコンバータ3を介してエンジン2の出力回転が入力される。すなわち、自動変速機1の入力軸にはトルクコンバータ3のタービンが連結され、エンジン2の出力軸にはトルクコンバータ3のポンプインペラが連結されている。
【0012】
なお、自動変速機1のギアトレーンは前述の特開平3ー28571号に記載のものと同じであり、第1シフトソレノイド42および第2シフトソレノイド44のON,OFF の切換の組み合わせでもって、各摩擦要素の締結および解放の組み合わせを行い、各種変速段が得られるようになっている。ちなみに、本発明にいう発進用摩擦要素は、ドライブレンジ時フォワードクラッチ、リバースレンジ時リバースクラッチが相当する。
【0013】
10はマイクロコンピュータ等により構成されるコントロールユニットであり、上記第1シフトソレノイド42および第2シフトソレノイド44の切換信号は、コントロールユニット10に構成された変速制御手段200から出力されるようになっており、このときの変速判断は、エンジン2のスロットルバルブ開度を検出するスロットルセンサ202から得られるスロットル開度信号および車速センサ204から得られる車速信号をパラメータとする所定のシフトスケジュールに基づいて行われる。
【0014】
24はライン圧ソレノイドであり、このライン圧ソレノイド24は例えばオンドレーンタイプのソレノイドバルブで構成され、このライン圧ソレノイド24がデューティ制御されることによりライン圧が制御されるようになっている。しかして、ライン圧ソレノイド24はコントロールユニット10に構成されたライン圧制御手段206から出力される制御信号により駆動され、通常はスロットル開度に対応した信号が出力される。
【0015】
ここで、本実施例ではコントロールユニット10内にプリチャージ圧調圧手段210および容量調整圧調圧手段212が構成され、これら両手段210、212によって、ニュートラル(N)レンジから走行(D 、R)レンジ、例えば、ニュートラル(N)レンジからドライブ(D)レンジにセレクトされたときのライン圧制御が行われるようになっている。
【0016】
すなわち、プリチャージ圧調圧手段210は、セレクトレバー214の操作でセレクトされたときに発生されるレンジ切換信号から、ニュートラルレンジから、例えば、ドライブレンジにセレクトされた信号を検出すると共に、タービン回転数センサ216から自動変速機1の入力回転数であるタービンの回転数を検出して、これらに応じてライン圧制御手段206に制御信号を出力し、ライン圧を一時的に急上昇させた後、急降下させるように制御する。
【0017】
このプリチャージ圧調圧手段210を介して調圧されるライン圧は、図2に示すように、NレンジからDレンジへの切換と同時に、一定の棚圧Pcまで急上昇され、この棚圧Pcは所定時間Tc継続された後、タービンの回転数Ntに応じた所定の圧力Pvまで急降下される。なお、この棚圧PcはNレンジからDレンジへの切換時に締結される発進用摩擦要素である前述のフォーワードクラッチにプリチャージされる。
【0018】
一方、容量調整圧調圧手段212は、プリチャージ圧調圧手段210からプリチャージ終了の信号を受けると共に、タービン回転数センサ216からのタービンの回転数信号を受けて、これらに応じてライン圧制御手段206に制御信号を出力し、タービンの回転数Ntに応じて、ライン圧の上昇速度を変更して上昇するように制御する。
【0019】
すなわち、容量調整圧調圧手段212によって制御されるライン圧は、図2に示すように、NレンジからDレンジへの切換から所定時間Tc経過後、タービンの回転数Ntに応じた所定の圧力Pvから、前記フォーワードクラッチが完全に締結されるまでの時間Ts、タービンの回転数に応じた所定の速度で上昇される。
【0020】
上述のプリチャージ圧調圧手段210および容量調整圧調圧手段212で実行される制御手順の一例を、図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。これは所定の時間毎に実行される。
【0021】
まず、ステップS1において現在のレンジ位置がNレンジか否かが判断され、「YES」の場合はステップS2に進み、フラッグFを0にセットする。そして、ステップS3に進みタービン3Bの回転数Ntを現在のタービン回転数Ntsにセットした後、ステップ4において、プリチャージ圧調圧手段210に設けられたタイマー1に所定時間Tcを、また、容量調整圧調圧手段212に設けられたタイマー2に時間Tsをセットする。さらに、ステップS12に進み通常時ライン圧制御を行うよう設定する。
【0022】
なお、上記タイマー1および2は一定時間毎に減算(−1)され、0になったところで停止される。
【0023】
一方、上記ステップS1で「NO」と判断された場合は、NレンジからDレンジにセレクトされたものとしてステップS5に進み、上記ステップS4でセットされたタイマー2が0になったかどうか、つまり、締結時間Tsが経過したか否かが判断される。「YES」の場合は発進用摩擦要素の締結が完了したことを意味し、ステップS12に進み通常時ライン圧制御を行うよう設定する。
【0024】
上記ステップS5で「NO」と判断された場合は、ライン圧過渡制御に移行し、まず、ステップS6においてタイマー1が0になったかどうか、つまり、プリチャージの所定時間Tcが経過したか否かが判断され、「NO」の場合にはステップS8に進み、ライン圧PLがプリチャージの棚圧Pcになるように設定する。
【0025】
一方、ステップS6において「YES」と判断された場合、つまり、プリチャージの所定時間Tcが終了したときには、ステップS7に進みフラッグFが1か否かを判断する。「NO」の場合にはステップS9に進み、ライン圧PLをタービン3Bの回転数Ntに応じた所定の圧力Pvにセットする。
【0026】
このタービンの回転数Ntに応じた所定の圧力Pvは、例えば、図4(A)に示すように、タービンの回転数Ntが大きくなるに従い大きくなるように予め設定され、テーブルに記憶されている。従って、例えば、ステップS3において得られた現在のタービン回転数がNt2の場合には、ライン圧PLはPv2に設定されることになる。
【0027】
ステップS9の次にはステップS10に進み、フラッグFを1にセットしてこのルーチンを終わる。
【0028】
一方、ステップS7において「YES」と判断された場合、つまり、タービンの回転数Ntに応じた所定の圧力Pvが既に設定されているときは、ステップS11に進み、ライン圧PLを所定圧Pvからタービンの回転数Ntに応じた所定の速度でもって上昇させるべく設定する。
【0029】
すなわち、上昇速度を表す傾きθは、例えば、図4(B)に示すように、タービンの回転数Ntが大きくなるに従い大きくなるように予め設定され、テーブルに記憶されている。従って、例えば、ステップS3において得られた現在のタービン回転数がNt2の場合には、傾きθはθ2に設定され、ライン圧PLは(Pv2+θ2・t)に設定されることになる。
【0030】
従って、本実施の形態による自動変速機の油圧制御装置にあっては、NレンジからDレンジにセレクトされてライン圧がフォーワードクラッチに供給される際、図2に示すように、まずプリチャージ棚圧Pcの高い油圧がフォーワードクラッチに導入されるので、このフォーワードクラッチの締結準備に必要なプリチャージ部分が迅速に充填される。そして、この充填後の圧力はタービン回転数に応じた値Pvに設定されるのでクラッチの過剰な滑りが防止される。さらに、プリチャージ後はタービン回転数に応じた上昇速度でもってライン圧が高められるので、ここでもクラッチの滑りを押さえつつ締結時間を短縮することができる。
【0031】
なお、上述した実施の形態においては、タービン回転数に応じてライン圧を設定したが、これに替えてエンジン回転数を用いてもよく、またNレンジから走行レンジにセレクトされる例として、NからDレンジの例に基づいて説明したが、これはNからRレンジにセレクトされる場合にも適用されることはいうまでもない。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、セレクト時、特にニュートラルレンジから走行レンジへのセレクトを短時間にかつショックをさらに伴うことなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態による作動を説明するためのタイムチャートである。
【図3】本発明の実施の形態の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態の所定圧(A)および上昇速度(B)を設定するマップである。
【符号の説明】
1 自動変速機
2 エンジン
3 トルクコンバータ
10 コントロールユニット
24 ライン圧ソレノイド
202 スロットルセンサ
204 車速センサ
210 プリチャージ圧調圧手段
212 容量調整圧調圧手段
216 タービン回転数センサ
Claims (6)
- ニュートラルレンジから走行レンジにセレクトされたとき、一時的に作動油圧を急上昇させた後急降下させ発進用摩擦要素へのプリチャージ用棚圧を作るプリチャージ圧調圧手段と、
前記プリチャージ圧の急降下時点から前記作動油圧を徐々に上昇させて、前記発進用摩擦要素の容量調整圧を作る容量調整圧調圧手段とを備えた自動変速機の作動油圧制御装置において、
前記自動変速機の入力軸回転数またはエンジン回転数に応じて、前記プリチャージ圧調圧手段による前記プリチャージ圧の急降下時点における前記作動油圧を変更するようにしたことを特徴とする自動変速機の作動油圧制御装置。 - ニュートラルレンジから走行レンジにセレクトされたとき、一時的に作動油圧を急上昇させた後急降下させ発進用摩擦要素へのプリチャージ用棚圧を作るプリチャージ圧調圧手段と、
前記プリチャージ圧の急降下時点から前記作動油圧を徐々に上昇させて、前記発進用摩擦要素の容量調整圧を作る容量調整圧調圧手段とを備えた自動変速機の作動油圧制御装置において、
前記自動変速機の入力軸回転数またはエンジン回転数が高い程、前記容量調整圧調圧手段による前記プリチャージ圧の急降下時点からの前記作動油圧の上昇速度が高くなるようにしたことを特徴とする自動変速機の作動油圧制御装置。 - ニュートラルレンジから走行レンジにセレクトされたとき、一時的に作動油圧を急上昇させた後急降下させ発進用摩擦要素へのプリチャージ用棚圧を作るプリチャージ圧調圧手段と、
前記プリチャージ圧の急降下時点から前記作動油圧を徐々に上昇させて、前記発進用摩擦要素の容量調整圧を作る容量調整圧調圧手段とを備えた自動変速機の作動油圧制御装置において、
前記入力軸回転数またはエンジン回転数が高い程、前記プリチャージ圧の急降下時点における前記作動油圧が高くなるように前記自動変速機の入力軸回転数またはエンジン回転数に応じて、前記プリチャージ圧調圧手段による前記プリチャージ圧の急降下時点における前記作動油圧を変更するようにしたことを特徴とする自動変速機の作動油圧制御装置。 - ニュートラルレンジから走行レンジにセレクトされたとき、一時的に作動油圧を急上昇させた後急降下させ発進用摩擦要素へのプリチャージ用棚圧を作るプリチャージ圧調圧手段と、
前記プリチャージ圧の急降下時点から前記作動油圧を徐々に上昇させて、前記発進用摩擦要素の容量調整圧を作る容量調整圧調圧手段とを備えた自動変速機の作動油圧制御装置において、
前記自動変速機の入力軸回転数またはエンジン回転数が高い程、前記容量調整圧調圧手段による前記プリチャージ圧の急降下時点からの前記作動油圧の上昇速度が高くなるようにし、前記自動変速機の入力軸回転数またはエンジン回転数に応じて、前記プリチャージ圧調圧手段による前記プリチャージ圧の急降下時点における前記作動油圧を変更するようにしたことを特徴とする自動変速機の作動油圧制御装置。 - 前記入力軸回転数またはエンジン回転数が高い程、前記プリチャージ圧の急降下時点における前記作動油圧は高いことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の作動油圧制御装置。
- 前記入力軸回転数またはエンジン回転数が高い程、前記プリチャージ圧の急降下時点における前記作動油圧は高いことを特徴とする請求項4に記載の自動変速機の作動油圧制御装置。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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