JP3629974B2 - 鍵盤装置及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自然楽器のピアノ、電子ピアノ等の楽器用鍵盤装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自然楽器のピアノ、電子ピアノ等の鍵盤楽器においては、押鍵の強弱が発音の強弱に反映する。したがって、奏者が演奏時の音の強弱を手応えとして感じるように、押鍵時のタッチ感が重要視される。すなわち、強音のための強い押鍵には奏者に重い手応えを与え、弱音のための弱い押鍵には軽い鍵の動きが要求される。そのような押鍵の強弱に応じた抵抗力の変化は、ばね等による弾性抵抗では得難く、動作部分の適切な質量に基づく慣性抵抗によって実現される。
【0003】
したがって、各鍵の動作部分が或る程度の質量を有するのが良好なタッチ感を得る上で望ましい。そのため、各鍵に鉛等の錘を埋設したり、鍵の動作部分を2以上の回動部材で構成して連動させ、各部材に質量を持たせることにより、コンパクト化をも図った鍵盤が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の自然楽器のピアノの鍵盤は、押鍵時の良好なタッチ感を備えているが、その機構が複雑であり、また重量も大きい。一方電子楽器等に多用されている従来の簡易構造の鍵盤は、例えば特公昭63−5554号公報に見られるように、タッチ感を得るために、鍵の動作部分に質量を付与することのみを配慮しており、慣性抵抗を効率よく得ることは考慮されていなかった。特許第2508028号公報に記載された鍵盤装置は、鍵に連動するハンマ状の質量体を設けて慣性抵抗を増大させることを提案しているが、質量体の重量が大きいため鍵盤装置全体が重くなり、質量に関して効率的なタッチ感の改良を図ることはできなかった。このように、付与される質量が大きい割に良好なタッチ感が得られていないのが現状である。また、数十鍵から88鍵等という多数の鍵の全てにその質量が付与されるので、鍵盤全体が重くなりがちであった。
【0005】
そこで、本発明の第1の目的は、簡単な構造で、必要な慣性力を効率よく得ることにより、押鍵の強弱に応じた押鍵時の良好なタッチ感を与えることができる鍵盤装置を提供することにある。
【0006】
本発明の第2の目的は、上記鍵盤装置の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の第3の目的は、押鍵時の良好なタッチ感を得ることができ、且つ全体として軽量である鍵盤装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記第1の目的は、支持部材により往復動自在に設けられた鍵と、押鍵操作時に該鍵と連動して回動る中間移動部材と、該中間移動部材と連動して回動する高質量移動部材と、前記鍵の押鍵操作によって発音が制御される発音被制御手段とを備えた楽器用鍵盤装置において、非押鍵状態における前記中間移動部材及び高質量移動部材は、重力により各質量中心が前記軸回りに下降した位置をとり、前記高質量移動部材は、前記軸についての慣性モーメントの回転半径該当部分の移動距離が前記鍵及び中間移動部材の各回転軸についての各々の回転半径該当部分の移動距離よりも長く且つ質量が大きいことを特徴とする鍵盤装置により達成される(第1発明の1)。
本発明の前記第1の目的はまた、支持部材により往復動自在に設けられた鍵と、押鍵操作時に該鍵と連動して所定範囲を往復動する中間移動部材と、該中間移動部材と連動して所定範囲を往復動する高質量移動部材と、前記鍵の押鍵操作によって発音が制御される発音被制御手段とを備えた楽器用鍵盤装置において、前記高質量移動部材の移動が案内部に案内された直線運動により行なわれ、前記高質量移動部材は、その質量中心の移動距離が前記鍵及び中間移動部材の質量中心の移動距離よりも長く且つ質量が大きいことを特徴とする鍵盤装置により達成される(第1発明の2)。
【0009】
本発明の前記第2の目的は、支持部材により往復動自在に設けられた鍵と、押鍵操作時に該鍵と連動する動作速度拡大機構と、該拡大機構の出力部に連動して往復動する質量体と、前記鍵の押鍵操作によって発音が制御される発音被制御手段とを有した楽器用鍵盤装置の製造方法であって、
押鍵力F、鍵の押鍵位置での最大移動距離D、該距離Dの押鍵に要する時間Tを各々一定値に設定し、前記質量体の質量m及び前記拡大機構の動作速度の拡大率kを
m=(FT)/(2D)
の関係式に基づいて決定することを特徴とする楽器用鍵盤装置の製造方法により達成される(第2発明)。
【0010】
本発明の前記第3の目的は、支持部材により往復動自在に設けられた鍵と、押鍵操作時に該鍵と連動して所定範囲を往復動する中間移動部材と、該中間移動部材と連動して回動する高質量移動部材と、前記鍵の押鍵操作によって発音が制御される発音被制御手段とを備えた楽器用鍵盤装置において、押鍵時に回動する前記高質量移動部材に当接して該回動方向への移動をストップさせる当接部が配置され、前記高質量移動部材は、押鍵時に質量中心が該高質量移動部材の回動中心に対し水平に近い休止位置から鉛直に近い回動位置に上方へ移動し、該回動位置において、前記回動中心より後方で前記当接部に当接し且つ前記回動中心より前方に前記質量中心が位置するように配置されていることを特徴とする楽器用鍵盤装置により達成される(第3発明)。
【0011】
【作用】
鍵盤装置における押鍵時のタッチ感は、押鍵に対する抵抗感、即ち、押鍵時に鍵及びこれと連動する部材が手指に与える抵抗力として捉えることができる。その押鍵力(押鍵時の抵抗力)と各鍵の連動機構の動作との関係を以下に説明する。
【0012】
まず、入力部(鍵)、該入力部からの入力を拡大又は縮小して伝える伝達機構、及び該伝達機構からの出力が行なわれる出力部を有する一般的な運動系として、図11に示す以下のものを想定する。
【0013】
入力部1:部材(鍵)に力Fを加えその入力部位を加速度αで移動させる。
【0014】
伝達機構2:入力部からの入力の力Fを1/k倍(したがって速度をk倍)して出力部に伝達する。簡単のため入力部及び伝達機構の質量は無視し得るものとする。
【0015】
出力部3:伝達機構からの伝達により質量mの移動部材が加速度α’で移動する。
【0016】
出力に伝えられる力をF’とすると、伝達機構の上記特性から、
F’=(1/k)F [式1]
となる。ある時間t後における入力部及び出力部の各部材の速度をv、v’とすると、
v’=kv
である。ここで、v=αt、v’=α’t であるから、上式から、
α’=kα [式2]
と表せる。出力部における力と加速度の関係は、
F’=mα’
であるから、式1及び式2を上式に代入すると、
(1/k)F=mkα
これを変形すると、
F/α=km [式3]
ここで、入力部として鍵盤装置の鍵を考え、押鍵力及びフルストロークの押鍵に要する時間を各々一定とすると、式3におけるF及びαは一定である。そうすると、式3の左辺は一定であるから、右辺のkとmとは反比例することになる。
【0017】
これは、伝達機構の係数kを大きく、すなわち速度の拡大率を大きくすると、kの2乗に反比例して出力部の質量は小さくて済むことを意味する。出力部の速度はその移動距離に比例するので、出力部の移動距離が大きくなるような伝達機構を採用すれば、小さな質量で効率よく入力部の入力抵抗を得ることができることになる。
【0018】
さらに、鍵及び移動部材の動作の観点から説明する。図12のような鍵1、伝達機構2、移動部材3からなる2種類のモデルA,Bを想定する。各モデルにおいて、鍵1は力Fで押鍵され距離D降下して止まる。この動きはレバーなどを有した伝達機構2により移動部材3に伝えられる。
【0019】
モデルA,Bにおいて、移動部材3は以下の形態をとる。
【0020】
モデルA:移動部材3は、ガイドGに沿って直線運動し、質量mの錘30を有する。
【0021】
モデルB:移動部材3は、支点Oを中心に回転運動をし、支点Oについての慣性モーメントの回転半径rに該当する位置に質量mの錘30を有する。
【0022】
簡単のため、押鍵は一定の力Fで行なわれ、鍵1、伝達機構2及び移動部材のアームの質量は無視し得るものとする。
【0023】
手指が押鍵により行なう仕事、すなわち押鍵エネルギEは、
=FD [式01]
である。移動部材は、伝達機構2によって移動させられ、典型的には錘30が初速0から最終速度に至って伝達機構から離れ、その後発音体や支持板等に当接する。したがって、伝達機構から与えられるエネルギは、伝達機構から離れる直前の速度で表される錘30の運動エネルギに等しい。詳細には、錘30が上方への動きを伴う場合は位置エネルギの増加もあるが、錘30の速度エネルギに対し、上昇による位置エネルギは僅かであるので、無視し得る。ところで、伝達機構が移動部材に与えるエネルギは、手指が鍵に与えるエネルギに等しい。したがって、押鍵エネルギは、移動部材の運動エネルギに変換されるといえる。
【0024】
次に、移動部材の運動エネルギを、モデルA,Bについて求める。
【0025】
(1) モデルA直進系の移動部材のエネルギE2は、
2 =(1/2)mv2 [式A1]
と表される。ここで、錘30が初速0から加速度αで等加速度運動をすると仮定すると、時間t後の錘30の移動距離sは、
s=(1/2)αt2 [式A2]
である。錘30の速度をvとすると、α=v/t であるから、
これを式A2に代入すると、
s=(1/2)vt となり、これを変形すると、
v=2s/t
これを式A1に代入すると、
2=(1/2)m・(2s/t)2
=2ms2/t2 [式A3]
となる。ここで、E1=E2であるから、式01,式A3より
FD=2ms2/t2
である。時間tは、押鍵に要する時間であり(錘30が移動する時間でもある)、一定(T)とすることができるので、
FD=2ms2/T2
と表せる。この式は、押鍵エネルギが一定の場合、錘30の移動距離sを長くすると、錘30の質量mは移動距離sの2乗に反比例して小さくて済むことを示している。
【0026】
(2) モデルB
回転系の移動部材のエネルギEは、移動部材の角速度をωとすると、
=(1/2)Iω [式B1]
と表される。錘30は、回転半径r、質量mであるからその慣性モーメントIは、
I=r
である。したがって、式B1は、
=(1/2)rmω [式B2]
と表される。ここで、錘30が初速0から加速度μで等加速度円運動をすると仮定すると、時間t後の錘30の移動距離δは、
δ=(1/2)rμt [式B3]
ここで、μ=ω/t であるから、
これを式B3に代入すると、
δ=(1/2)rωt となり、これを変形すると、
ω=2δ/rt
これを式B2に代入すると、
Figure 0003629974
となる。ここで、E=Eであるから、式01,式B4より
FD=2mδ/t
である。時間tは、押鍵に要する時間であり(錘30が移動する時間でもある)、一定(T)とすることができるので、
FD=2mδ/T
と表せる。この式は、押鍵エネルギが一定の場合、錘30の移動距離δを長くすると、錘30の質量mは移動距離δの2乗に反比例して小さくて済むことを示している。
【0027】
このように、回転系、直進系のいずれにおいても、押鍵エネルギが一定の場合、移動部材の錘の移動距離を長くすると、錘の質量は移動距離の2乗に反比例して小さくて済むといえる。
【0028】
本発明(第1発明)においては、押鍵操作時に鍵と連動する中間移動部材及び高質量移動部材について、高質量移動部材は、鍵及び中間移動部材よりも移動距離が長く且つ質量が大きくされている。すなわち、移動距離が大きい部材の質量が大きくなっている。これにより、大きな慣性力(押鍵時の抵抗力)が効率的に得られることになる。すなわち、比較的小さな質量の付与により大きな慣性抵抗を得ることができるのである。このことは全ての鍵について適用されるので、鍵盤装置全体の重量を大きく軽減することができる。
【0029】
前記鍵、中間移動部材及び高質量移動部材の移動が軸まわりの回転により行なわれる場合は、前記高質量移動部材は、前記軸についての慣性モーメントの回転半径該当部分の移動距離が前記鍵及び中間移動部材の各回転軸についての各々の回転半径該当部分の移動距離よりも長くされる。上記回転半径rは、慣性モーメントI、質量mから、r=(I/m)1/2として求められる。但し、上記回転半径を前記軸から該高質量移動部材の質量中心までの距離として近似的に捉えてもよい。これは、高質量移動部材においては、金属などの高比重の部材を集中的な位置に設けるのが一般的であり、高質量の部材が集中的に配置される程、移動部材の回転半径は、その回動軸から質量中心までの距離に近づくからである。
【0030】
また、前記高質量移動部材の移動が案内部に案内された直線運動により行なわれる場合は、前記高質量移動部材は、その質量中心の移動距離が前記鍵及び中間移動部材の質量中心の移動距離よりも長くされる。
【0031】
本発明(第2発明)に係る鍵盤装置の製造方法によれば、押鍵力F、鍵の押鍵位置での最大移動距離D、該距離Dの押鍵に要する時間Tを各々一定値に設定し、前記質量体の質量m及び前記拡大機構の動作速度の拡大率kを
m=(FT)/(2D) [式4]
の関係式に基づいて決定する。これは、以下の知見に基づいている。すなわち、前述の式3 F/α=k
における鍵の加速度αと、鍵の最大移動距離Dとの関係は、
D=(1/2)αt
である。これを変形すると、
α=2D/t
である。これを式3に代入し、変形すると、
m=(FT)/(2D)
となり、これが上記式4である。すなわち、式4は式3のαをD及びTで表したものに相当する。したがって、押鍵力F、鍵の押鍵位置での最大移動距離D、該距離Dの押鍵に要する時間Tを各々一定値に設定し、上記式4に従って決定すれば、上記式3を成り立たせるk及びmを容易に求めることができるのである。これにより、大きな慣性力(押鍵時の抵抗力)が効率的に得られる鍵盤装置を、容易に製造することができる。
【0032】
本発明(第3発明)によれば、高質量移動部材は、押鍵時に質量中心が、該高質量移動部材の回動中心に対し水平に近い休止位置から鉛直に近い回動位置に上方へ回動するように構成されている。このように、休止位置において高質量移動部材が回動中心に対し水平に近いので、押鍵動作の初期には、鍵及びこれに連動する部材の質量に起因する慣性抵抗に加えて、高質量移動部材の重力も抵抗力となり、押鍵時の抵抗感に寄与する。一方、押鍵動作が進むと高質量移動部材は回動中心に対して鉛直に近い位置に至るので、高質量移動部材の重量による抵抗力は減少する。すわなち、押鍵初期は重く、押鍵が進むと軽くなるタッチ感が得られる。特に弱い力で押鍵する場合は、慣性抵抗に対し重量による抵抗が占める割合が増加するので、この効果が大きい。すなわち、前記タッチ感の変化は、弱音演奏の際の繊細なタッチを演奏に反映させる上で重要な機能であり、自然楽器のピアノのタッチ感に近いものである。さらに、本発明(第3発明)においては、高質量移動部材の回動位置において質量中心は、該高質量移動部材の回動中心を通る鉛直線よりも休止位置側となるように設けられている。したがって、押鍵を解除すれば、回動位置から自重により休止位置に復帰することになり、戻し用のばね等を設けなくても復帰動作が可能であり、構造を簡素化できる。尤も、戻し用のばねを付加して戻りをより迅速にすることも可能である。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。以下の図においては、鍵盤装置の演奏者側を前方、その反対側(自然楽器のアップライトピアノでは弦がある側)を後方と称する。
【0034】
図1は、本発明の1実施形態に係る電子ピアノ用鍵盤装置の縦断面図である。この鍵盤装置は、鍵全体が、鍵盤フレーム10に支持され、鍵盤フレーム10は、棚板11及び口棒12を有し楽器全体を覆うケースAに支持されている。鍵20は、白鍵及び黒鍵からなっており、各鍵は、鍵盤フレーム10の中央よりやや後方で間口方向に延びる支持部13により、該支持部との接触点付近の回動中心R20の回りに上下方向に回動可能に支持されている。鍵20の下側では、中間移動部材を構成する第1移動部材30が鍵盤フレーム10により支持されている。この第1移動部材30は、全体として前後方向にほぼ水平に延びており、鍵盤フレーム10の前寄りの位置に立設された支持片14及びこれを受け入れる凹部31により、該支持片の先端部を回動中心R30として回動する。これら支持片14先端部及び凹部31の係合状態を保持するために、S字状ばね41の一端部が凹部32を押しつけている。この凹部32は、第1移動部材における凹部31の直ぐ後方の凹部32であって、水平方向に一定幅を有したリブで形成され、該リブの幅方向中央部に薄板部が鉛直に延びている。該凹部32に係合するS字状ばね41の端部は中央にスリットを有した二股になっており、そのスリットに前記薄板部を挿入させて係合している。ばね41の中間部は鍵盤フレーム10上部の前後方向ほぼ中央孔411を押圧して接しており、ばね41の他端部は、鍵後方下部のばね受け部を押圧するように構成されている。これにより、S字状ばね41は、凹部32の位置で、第1移動部材30を支持片14先端部に押しつけている。
【0035】
第1移動部材30は、前端部が鍵20の垂下片21の下端に接しており、鍵20の押鍵により該鍵と連動して回動する。押鍵による鍵20及び第1移動部材30の下降位置図1の図中の左寄り部分に一点鎖線で示す。
【0036】
第1移動部材30前端下方付近には、スイッチ基板42が鍵盤フレーム10により支持され、該基板上には導電性ゴムからなる水平断面めがね型をした1対の導通用部材43が固定されている。第1移動部材30の前部下面には、これら導通用部材42に対応する位置で下方に延びる一対の脚部を備えたアクチュエータ33が設けられている。これら1対のアクチュエータ33,スイッチ基板42及び1対の導通用部材43は、接点距離の相違による押鍵時の導通開始時間差を利用して押鍵速度を感知する押鍵スイッチを構成している。
【0037】
第1移動部材30は、鍵盤フレーム10後部まで延び、休止位置(非押鍵状態)において、鍵盤フレーム10の棚板11の底壁10B上に固定されたフェルト製ストッパ部材15により、後端部付近を支持されている。第1移動部材30の後端部は、上面を丸くされて、第2移動部材(後述)の回動のバックチェックをする支承部35となっている。さらに、第1移動部材30における支承部35の手前の位置には、第1移動部材上面から上方へ突出した押上げ部36が形成されている。押上げ部36の後部は、後方へ向かって円弧状に且つ先端側へ細くなるように延びる爪37となっている。爪37の先端は、支承部35近くに達している。鍵20が押鍵されたとき、第1移動部材30は、図1に実線で示す休止位置から一点鎖線で示す押鍵位置に移動する。鍵盤フレーム10における鍵20対応部の直ぐ後方には、フェルト製ストッパ部材16が保持部10Cにより保持されており、押鍵位置に至った第1移動部材30をストップさせる役割を果たす。
【0038】
鍵盤フレーム10の後部には、高質量移動部材を構成する第2移動部材50が装着されている。第2移動部材50は、休止位置において、基端部51を鍵盤フレーム10の支持部10Dに支持された軸17により、その軸を回動中心R50として質量中心M50が押鍵時に上下方向に移動するように、回動可能に支持取り付けられている。第2移動部材50は、全体が休止位置においてほぼ逆W字状をなしており、その中央の突部(中央突部)52は下端を第1移動部材30の押上げ部の上面に接している。前記逆W字状における回動中心R50とは反対側の端部(先端部)53は、鍵20の後端部側へ大きく湾曲している。鍵20には、この先端部53を受け入れるための凹部22が形成され、押鍵時に第2移動部材50が移動する距離を大きくするようにされている。鍵盤フレーム10における鍵20の直ぐ後ろの位置においてフェルト製ストッパ部材18が保持部10Eにより保持され、第2移動部材50は、休止位置においてストッパ部材18により、前方へ倒れた位置に保持されている。押鍵時に第2移動部材50は、図の実線で示す位置から一点鎖線で示す位置に移動する。鍵盤フレーム10の後端部近くには、底壁10Bから立ち上がった支持板19にフェルト製ストッパ部材の当接片19aが支持されており、押鍵時に移動した第2移動部材50をストップさせる役割をなす。
【0039】
次に、鍵20、第1移動部材30、第2移動部材50の質量中心の位置について説明する。この例では、前記第1発明における回転半径該当部分の代わりに、回転軸から部材の質量中心までの距離を用いて近似している。鍵20は、白鍵、黒鍵共、ほぼ全体がプラスチック製であり、その質量中心は
1097569199125_0
に示すように、鍵前後方向のほぼ中央とされている。第1移動部材30は、全体がプラスチック製であり、後端寄りの部分は耐久性及び強度を付与するためやや厚くされ、他の部分は薄くしてリブ補強されている。その結果、第1移動部材分の質量中心M30は、全長の中央からやや後方に位置している。第2移動部材50は、先ず全体をプラスチックで製造し、先端部53に錘として鉛等を埋め込み固着してある。したがって、第2移動部材50は、質量が大きくその質量中心M50は、先端部53の方へ偏って位置している。これは、移動距離の大きな第2移動部材の先端部53に大きな質量を持たせ、第2移動部材が回動位置から自重で復帰するように回動位置における質量中心M50の位置を第2移動部材の回動中心R50よりも前方にするためである。図示の例では前述の凹部22を設けているが、第1移動部材を後方へ長くして第2移動部材の設置位置を後方へずらせるか、或いは鍵盤フレーム10の当接部19を前寄りに設けて先端部53が大きく湾曲していなくても回動時に質量中心M50が第2移動部材の回動中心R50より前方に位置するようにすることにより、鍵20の凹部22を省略することができる。
【0040】
次に、この実施形態に係る鍵盤装置の作動について説明する。図1は、押鍵前の休止状態を示している。この状態から押鍵をすると、鍵20が回動中心R20を中心として下方へ回動し、垂下片21が第1移動部材30を押し下げる。これにより、第1移動部材30は、回動中心R30を中心に回動し、アクチュエータ33は、1対の導電用部材42に向かって下降して行く。この鍵20の下降と並行して、第1移動部材30及び第2移動部材50に以下の動作が生じる。
【0041】
第1移動部材30の後部は、回動中心R30を中心に上方へ回動し、押上げ部36が第2移動部材50の中央突部52を押上げる。これにより、第2移動部材50は、回動中心R50を中心に後方へ回動する。この回動と共に、第1移動部材50の押上げ部36は、第2移動部材50の中央突部52との接点を後方へ移動させ、最後は爪37の先端に至り、その後は第2移動部材50の慣性で爪37から離れて当接片19aに当接する。但し、押鍵態様によっては、第2移動部材50は、爪37から離れず当接片19aに当接することもある。この当接時又はこれに近い状態の時(当接時より少し手前に位置する時)に、鍵20のアクチュエータ33は、一対の導電用部材43と接し、押鍵スイッチをオンにし、発音機構を動作させて発音がなされる。
【0042】
当接片19aに当接した第2移動部材50は、当接時の反発で前方へ戻され、中央突部52が第1移動部材30の支承部35に接し、当接片19aから少し離れた位置で保持される。すなわち、支承部35により、第2移動部材50が反発後のバックチェック(押鍵状態で当接片[自然楽器では発音体である弦又は金属片]への当接直後に第2移動部材の戻りを止めること)をされる。第2移動部材50の質量中心M50は、第2移動部材が当接片19aに当接した位置にあるときに、回動中心R50よりも前方に位置している。また、鍵20の質量中心M20は回動中心R20よりも前方に位置し、第1移動部材30の質量中心M30は回動中心R30よりも後方に位置している。したがって、押鍵を解除すると、鍵20、第1移動部材30、第2移動部材50は、各々質量中心のある側が重力により下降して休止位置に戻る。
【0043】
この実施形態に係る鍵盤装置は、前述の通り、押鍵操作時に鍵と連動する第2移動部材50は、鍵20及び第1移動部材30よりも質量中心の移動距離が長く且つ質量が大きくされている。したがって、大きな慣性力(押鍵時の抵抗力)が効率的に得られることになり、比較的小さな質量の付与により大きな慣性抵抗を得ることができる。
【0044】
なお、前述の第2移動部材50のバックチェックを確実にするために、本実施形態においては、以下の構造を採用している。すなわち、図2にバックチェック時の状態を示すように、第2移動部材50の中央突部52の下面は、弧状の凹面54となっており、その凹形状は第2移動部材50の回動中心R50からの距離が中央突部の先端側から基端側へ僅かに小さくなるように決められている。図2では、一点鎖線で示す円弧55が回動中心R50から等距離の線であり、この円弧55と中央突部52下面54との間の寸法増加部分が戻り回動方向に先端を向けた一種の楔を構成する。したがって、押鍵により上昇位置に保持されている第1移動部材30の支承部35に対し、当接部19aで反発して戻ってきた第2移動部材50が接するときに、中央突部52下面54と支承部35上面とは楔効果により接触過程で漸増的に強い圧力を生じることになる。これにより、第2移動部材50は、戻り止めが不十分になったり、支承部35との当接後に再び後方へ押し戻されたりすること(リバウンド)がない。
【0045】
これに関し、バックチェック時の前記楔効果を適切に得るためには、図4に示すように、中央突部52下面が支承部35上面に接しようとする点540の進行方向540s(回動中心R50回りの回動の接線方向)とその点における中央突部下面54の接平面540tとのなす角αは、小さい方がよく、好ましくは45度以下とされる。
【0046】
一方、バックチェック後に中央突部52から支承部35が離れるには、前記楔効果に影響されない動作をするのが好ましい。押鍵を解除することにより第1移動部材30は戻り回動し、支承部35は下降する。図5に示すように、支承部35が中央突部下面54と接している点541からの支承部35の移動方向541sは、中央突部下面54から垂直に近い方向であるのが望ましい。好ましくは、支承部35の移動方向541sは、点541における中央突部下面の54接平面541tに対して、通常は45度以上の角度の方向とされる。
【0047】
さらに、この実施形態においては、第1移動部材30の押上げ部36は後部に、先へ細くなった爪37を備えている。これにより、強い打鍵後のバックチェックの際、勢いよく戻ってきた第2移動部材50は、図3に示すように、中央突部52を押上げ部36に当接させててからも、ある程度摺動し基端部寄りの位置で停止する。このとき、中央突部52の先端部は、第1移動部材30の押上げ部36に接する位置に至る。押上げ部36の後部は、前述の通り先の方へ細くなった爪37となっているので、中央突部36先端部は爪37を押して変形させながら停止位置に至る。このように、強い打鍵後のバックチェックは、中央突部下面の凹面及び押上げ部36の爪37により、確実に行なわれるのである。このように、押鍵の際に第2移動部材50を駆動する押上げ部36と、バックチェックの作用をなす支承部35との接近した配置は、鍵盤装置全体のコンパクト化に寄与している。
【0048】
確実なバックチェックにより得られるさらなる効果について、以下に説明する。演奏時の通常の押鍵は、手指を鍵20に接触させて鍵を最下位置まで押し下げ、その後、押鍵を解除して鍵を元の位置に戻すというようにして行なわれる。この場合は、鍵盤装置の第1移動部材30及び第2移動部材50も元の位置に戻り、押上げ部36が中央突部52に接して、次の押鍵の待機状態となる。しかし、1つの鍵に対して非常に速い連打を行なう場合があり、このときは、鍵20を最下位置から僅かに戻した位置で次の押鍵動作に入る。この2回目以後の押鍵動作の際、鍵盤装置においては、第1移動部材30も第2移動部材50も元の位置に戻っていない。しかし、第2移動部材50は、第1移動部材30によりバックチェックの状態で保持されているので、第1移動部材の支承部35が第2移動部材の中央突部52を押上げて第2移動部材50を回動させることができる。こうして、速い連打においても、第2移動部材の回動を伴った押鍵が確実に行なわれるので、タッチ感が失われない。また、自然楽器の場合には、第2移動部材による連続した発音体の打撃が得られる。
【0049】
なお、第2移動部材の戻りを迅速にし、或いは連打性をより向上させるために、第2移動部材50の回動軸17の回りに捩りコイルばねを設けてもよい。
【0050】
以上は、電子ピアノ用鍵盤装置を中心にした説明であるが、本発明鍵盤装置は、自然楽器のピアノ又はチェレスタ等に適用することもできる。これらの自然楽器においては、発音体が弦又は金属片である。これらの発音体は、図1における当接片19の位置に置かれる。図6は、発音体として金属片19’を用いたチェレスタの例を示している。この場合、第2移動部材50には、発音体を打撃するためのフェルト製等の打撃用突片56が固着される。これら自然楽器の場合は、図1の実施形態におけるアクチュエータ33,スイッチ基板42,導通用部材43は省略される。
【0051】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図7は、電子ピアノの鍵盤装置の例を示している。この実施形態においては、図1に示した実施形態と同様の部材には同じ番号を付してその説明を省略する。また、図1に示した実施形態の部材に対応し、機能が近似する部材には添え字aを付す。
【0052】
図7に示す鍵盤装置が、図1に示した鍵盤装置と異なる主要点は、第2移動部材50aが、鍵20の面より下方に納まっている点である。これにより、図1のものより鍵盤装置がコンパクトとなっている。
【0053】
図7の鍵盤装置においても、図1の鍵盤装置と同様に、鍵20が後端部を支持部13に支持され、回動中心R20aを中心に上下方向に回動可能とされている。鍵20の下側に第1移動部材30aが配置されている。この第1移動部材30aは、全体として前後方向にほぼ水平に延びており、鍵盤フレーム10の支持片14及びこれを受け入れる凹部により、回動中心R30aを中心として回動する。 第1移動部材30は、前端部上面が鍵20の垂下片21に接し、後方へは鍵盤フレーム10後部まで延び、休止位置において、後端部のフェルト製接触片38を第2移動部材50aの上面に接することにより、位置を保持されている。第1移動部材30aの後部には上下方向に貫通する空所39が形成されている。空所の後方には第2移動部材を押上げるための爪37a及び接触部35aが設けられている。
【0054】
第2移動部材50aは、第1移動部材30aの空所39の下方に位置する軸17aを中心に上下方向に回動可能であり、軸支部から斜め上後方へ延びる小アーム52aと、軸支部から後方へほぼ水平に延びる大アーム53aとを備えて、全体はほぼL字状をなしている。小アーム52aの先端部は、第1移動部材30aの爪37a及び接触部35aに各々接するように後方及び鍵幅方向に拡張した係止部520を備えている。支持部13の後部には、第2移動部材50aが回動した際に当接する当接片19aが設けられている。
【0055】
図7の鍵盤装置は、次のように作動する。図7は、押鍵前の休止状態を示している。この状態から押鍵をすると、図8に示すように、鍵20が回動中心R20aを中心として回動し、垂下片21が第1移動部材30aを押し下げる。これに伴って、第1移動部材30aの後部は、回動中心R30aを中心に上方へ回動し、爪37aが第2移動部材50aの係止部520を押上げる。これにより、第2移動部材50aは、回動中心R50aを中心に前上方へ回動する。回動が進むと、図9に示すように、第2移動部材50aの接触部35aが係止部520を押上げ、その後は第2移動部材50aの慣性で接触部35aから離れて当接片19aに当接する。この当接時又はこれに近い状態の時に、鍵20のアクチュエータ33は、一対の導電用部材43と接し、押鍵スイッチをオンにし、発音機構を動作させて発音がなされる。
【0056】
当接片19aに当接した第2移動部材50aは、当接時の反発で後下方へ戻され、係止部520が第1移動部材30aの接触部35aに接し、当接片19aから少し離れた位置で保持され、図10に示すようなバックチェック状態となる。図10に示す状態は、押鍵が強く、係止部520が接触部35a上を僅かに滑って爪37aに受け止められた場合であるが、押鍵が或る程度弱い場合は、係止部520は爪37aに至る前に接触部35aで保持される。
【0057】
この状態で、第2移動部材50aの質量中心M50aは、回動中心R50aよりも後方に位置している。また、鍵20の質量中心M20aは回動中心R20aよりも前方に位置し、第1移動部材30aの質量中心M30aは回動中心R30aよりも後方に位置している。したがって、押鍵を解除すると、鍵20、第1移動部材30a、第2移動部材50aは、各々質量中心のある側が重力により下降して休止位置に戻る。なお、戻りをより迅速にするために、第2移動部材50aの回動軸の回りに捩りコイルばねを設けてもよい。
【0058】
この実施形態に係る鍵盤装置も、前述の通り、押鍵操作時に鍵と連動する第2移動部材50aは、鍵20及び第1移動部材30aよりも質量中心の移動距離が長く且つ質量が大きくされている。したがって、大きな慣性力(押鍵時の抵抗力)が効率的に得られることになり、比較的小さな質量の付与により大きな慣性抵抗を得ることができる。
【0059】
次に、図13に示す本発明のさらに他の実施形態について説明する。図1及び図7に示した実施形態は、移動部材中の高質量の部分(錘)が、移動部材と共に回動する回転系のものであったが、図13の鍵盤装置は、高質量部分(錘)が直線運動をする直進系のものである。図13は、鍵、鍵盤フレーム、移動部材等の錘の直線運動に関連する部材のみを示しており、他の部材は前述の例と同様であるので、省略している。この例では、鍵20の下方で鍵盤フレーム10に支持された移動部材が配置されている。鍵20は、下方に開いた中空部を有し、フレーム10により後端部を回動中心R20bとして回動可能に支持されている。移動部材は、フレーム10に固定された支持部100に各一端を回動可能に支持された1対のレバー状の第1移動部材30bと、該第1移動部材の各他端に軸部51bを介して回動可能に連結されたもう1対のレバー状の第2移動部材50bと、第2移動部材の先端に回動可能に装着された1対のローラ状の第3移動部材60と、第1移動部材及び第2移動部材を互いに接近するように引っ張るコイルばね70とを備え、全体として逆W字形をなしている。質量は移動部材の内、第3移動部材が最も大きくされている。非押鍵状態では、第3移動部材60はフレーム10の上面に接しており、軸部51bは鍵20の天面に接してコイルばね70の作用により鍵20を上方に押上げており、鍵20は図外ストッパに当接して位置を保持している。
【0060】
図示はしないが、第1移動部材30b及び第2移動部材50bの質量中心は各レバー状部材の長手方向中心部にあり、第3移動部材の質量中心はローラ状部材の中心部にある。
【0061】
この鍵盤装置は、押鍵により第1移動部材30b及び第2移動部材50bが相互間の角度を広げるように回動し、これに伴って第3移動部材60はフレーム10の上面に沿って直進する。この運動により、第2移動部材50bは第1移動部材30bのほぼ2倍の角速度で回動し、第3移動部材60は第2移動部材50bの先端に配置されているので、移動部材中、最も移動距離が長い。したがって、この実施形態に係る鍵盤装置においても、大きな慣性力(押鍵時の抵抗力)が効率的に得られることになり、比較的小さな質量の付与により大きな慣性抵抗を得ることができる。
【0062】
また図7、図13の鍵盤装置についも、図1のものと同様、電子ピアノ以外に、自然楽器のピアノ又はチェレスタ等に適用することもできる。
【0063】
以上の両実施形態において、中間移動部材を1つの移動部材で構成したが、これを連動する2以上の移動部材で構成することも可能である。
【0064】
次に、本発明中、上記第2発明の実施形態について説明する。第2発明は、以上に示したような鍵盤装置を製造するにあたって、鍵及び鍵と連動する移動部材の間に成り立つべき動作の拡大率k及び移動部材の好適な質量mを容易に求めるための方法であり、前述の式4、すなわち、
m=(FT)/(2D)
に基づいて質量体の質量m及び拡大機構の動作速度の拡大率kを決定するというものである。1例として、図1に示した鍵盤装置を対象にして説明する。
【0065】
鍵20への押鍵力Fを200gとし、鍵の押鍵位置での最大移動距離Dを1cm、該距離Dの押鍵に要する時間Tを0.15秒に設定する。力の単位をN(ニュートン)として単位換算をした値を前述の式4に当てはめると、
Figure 0003629974
となる。
【0066】
ここで、第1移動部材30及び第2移動部材50による拡大機構の拡大率を8倍と設定すると、上記式4’から
m=2.21/8=0.034(kg)
したがって、第2移動部材50の錘の質量は、約34gが適切であることが分かる。
【0067】
また、第1移動部材30及び第2移動部材50による拡大機構の拡大率を10倍と設定すると、上記式4’から
m=2.21/10=0.022(kg)
したがって、第2移動部材50の錘の質量は、約22gが適切であることが分かる。
【0068】
実際には、上式では無視した質量、すなわち、上記錘以外の部分である鍵20、第1移動部材30、第2移動部材の錘以外の質量が関係してくるので、上記錘の質量の最終的な決定にはこれらの影響が考慮される。
【0069】
また、式4に従う仕様決定において、拡大機構による拡大率kを大きくとる、すなわち質量体の移動距離を大きくすることにより、質量体の質量mをkに反比例して小さくできる結果、mはかなり小さくできる。したがって、拡大率によっては必ずしも他の移動部材や鍵より質量体の質量が大きくなくても、効率的な慣性力(押鍵時の抵抗力)の付与を行なうことができる。
【0070】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明(第1発明)においては、押鍵操作時に鍵と連動する中間移動部材及び高質量移動部材について、高質量移動部材は、鍵及び中間移動部材よりも、各回転軸についての慣性モーメントの回転半径該当部分の移動距離、又は質量中心の移動距離が長く且つ質量が大きくされている。したがって、大きな慣性力(押鍵時の抵抗力)が効率的に得られ、比較的小さな質量の付与により大きな慣性抵抗を得ることができる。これにより、簡単な構造で押鍵時の良好なタッチ感を得ることができる。また、効率的な質量付与は、は全ての鍵について適用されるので、鍵盤装置全体の重量を大きく軽減することができる。
【0071】
本発明(第2発明)によれば、押鍵力F、鍵の押鍵位置での最大移動距離D、該距離Dの押鍵に要する時間Tを各々一定値に設定し、上記式4に従って決定すれば、上記式3を成り立たせるk及びmを容易に求めることができ、大きな慣性力(押鍵時の抵抗力)が効率的に得られる鍵盤装置を容易に製造することができる。
【0072】
本発明(第3発明)によれば、高質量移動部材は、押鍵時に質量中心が、該高質量移動部材の回動中心に対し水平に近い休止位置から鉛直に近い回動位置に上方へ移動する。特に、高質量移動部材は、該回動位置において、前記回動中心より後方で当接部に当接し且つ前記回動中心より前方に前記質量中心が位置するように配置されている。したがって、鍵及びこれに連動する部材の質量に起因する慣性抵抗に加えて、押鍵動作の初期には高質量移動部材の重力も抵抗力となり押鍵時の抵抗感に寄与する。一方、押鍵動作が進むと、高質量移動部材は、質量中心が回動中心に対し鉛直に近い回動位置にまで達し、前記回動中心より後方で前記当接部に当接し且つ前記回動中心より前方に前記質量中心が位置することとなる。このように、鉛直に近い回動位置へと移動するにつれて、高質量移動部材の重量による抵抗力は減少する。すわなち、押鍵初期は重く、押鍵が進むと軽くなるタッチ感が得られ、弱音演奏の際の繊細なタッチを演奏に反映させることができる。さらに、本発明(第3発明)においては、高質量移動部材の回動位置において質量中心は、該高質量移動部材の回動中心より前方に位置するように設けられているので、戻し用のばね等を設けなくても自重により復帰動作が可能である。特に、水平に近い休止位置から鉛直に近い回動位置に上方へ回動する移動部材が高質量であるので、その大きな質量を利用して、休止位置への迅速な復帰作用を簡単な構造で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係る鍵盤装置の縦断側面図である。
【図2】図1の鍵盤装置の作動を示す説明図である。
【図3】図1の鍵盤装置の作動を示す説明図である。
【図4】図1の鍵盤装置の作動を示す説明図である。
【図5】図1の鍵盤装置の作動を示す説明図である。
【図6】図1の鍵盤装置の自然楽器への適用例を部分的に示す縦断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る鍵盤装置の一部の斜視図である。
【図8】図7の鍵盤装置の作動を説明するための縦断側面図である。
【図9】図7の鍵盤装置の作動を説明するための縦断側面図である。
【図10】図7の鍵盤装置の作動を説明するための縦断側面図である。
【図11】本発明の作動原理の説明図である。
【図12】本発明の作動原理の他の説明図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係る鍵盤装置の一部の縦断側面図である。
【符号の説明】
10…鍵盤フレーム(支持部材)、20…鍵、30,30a,30b…第1移動部材(中間移動部材)、33…アクチュエータ、42…スイッチ基板、43…導電用部材、50,50a、50b…第2移動部材(高質量移動部材)、60…第3移動部材、M20,M20a…鍵の質量中心、M30,M30a…第1移動部材(中間移動部材)の質量中心、M50,M50a…第2移動部材(高質量移動部材)の質量中心、R20,R20a,20b…鍵の回動中心、R30,R30a…第1移動部材(中間移動部材)の回動中心、R50,R50a…第2移動部材(高質量移動部材)の回動中心

Claims (6)

  1. 支持部材により往復動自在に設けられた鍵と、押鍵操作時に該鍵と連動して回動する中間移動部材と、該中間移動部材と連動して回動する高質量移動部材と、前記鍵の押鍵操作によって発音が制御される発音被制御手段とを備えた楽器用鍵盤装置において、
    非押鍵状態における前記中間移動部材及び高質量移動部材は、重力により各質量中心が各々の回動軸回りに下降した位置をとり、
    前記高質量移動部材は、その回動軸についての慣性モーメントの回転半径該当部分の移動距離が前記鍵及び中間移動部材の各回軸についての各々の回転半径該当部分の移動距離よりも長く且つ質量が大きいことを特徴とする鍵盤装置。
  2. 支持部材により往復動自在に設けられた鍵と、押鍵操作時に該鍵と連動して所定範囲を往復動する中間移動部材と、該中間移動部材と連動して所定範囲を往復動する高質量移動部材と、前記鍵の押鍵操作によって発音が制御される発音被制御手段とを備えた楽器用鍵盤装置において、
    前記高質量移動部材の移動が案内部に案内された直線運動により行なわれ、前記高質量移動部材は、その質量中心の移動距離が前記鍵及び中間移動部材の質量中心の移動距離よりも長く且つ質量が大きいことを特徴とする鍵盤装置。
  3. 支持部材により往復動自在に設けられた鍵と、押鍵操作時に該鍵と連動する動作速度拡大機構と、該拡大機構の出力部に連動して往復動する質量体と、前記鍵の押鍵操作によって発音が制御される発音被制御手段とを有した楽器用鍵盤装置の製造方法であって、
    押鍵力F、鍵の押鍵位置での最大移動距離D、該距離Dの押鍵に要する時間Tを各々一定値に設定し、前記質量体の質量m及び前記拡大機構の動作速度の拡大率kを
    2m=(FT2)/(2D)
    の関係式に基づいて決定することを特徴とする楽器用鍵盤装置の製造方法。
  4. 支持部材により往復動自在に設けられた鍵と、押鍵操作時に該鍵と連動して所定範囲を往復動する中間移動部材と、該中間移動部材と連動して回動する高質量移動部材と、前記鍵の押鍵操作によって発音が制御される発音被制御手段とを備えた楽器用鍵盤装置において、
    押鍵時に回動する前記高質量移動部材に当接して該回動方向への移動をストップさせる当接部が配置され、前記高質量移動部材は、押鍵時に質量中心が該高質量移動部材の回動中心に対し水平に近い休止位置から鉛直に近い回動位置に上方へ移動し、該回動位置において、前記回動中心より後方で前記当接部に当接し且つ前記回動中心より前方に前記質量中心が位置するように配置されていることを特徴とする楽器用鍵盤装置。
  5. 支持部材により往復動自在に設けられた鍵と、押鍵操作時に該鍵と連動して所定範囲を往復動する中間移動部材と、該中間移動部材と連動して回動する高質量移動部材と、前記鍵の押鍵操作によって発音が制御される発音被制御手段とを備えた楽器用鍵盤装置において、
    押鍵時に回動する前記高質量移動部材に当接して該回動方向への移動をストップさせる当接部が配置されており、前記高質量移動部材が該当接部に接触し反発した後の戻り回動の際に前記中間移動部材と接する前記高質量移動部材の接触面が、該戻り回動に沿う方向に延び、該接触面は、前記高質量移動部材の回動中心からの距離が該戻り回動に伴って変化する中間移動部材との接触位置の方へ僅かに小さくされていることを特徴とする鍵盤装置。
  6. 前記中間移動部材は、戻り回動をする前記高質量移動部材が前記接触面に接してさらに戻り回動をしたときに接触する位置に、変形しつつ前記高質量移動部材を停止させる爪を 備えていることを特徴とする請求項5に記載の鍵盤装置。
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