JP2605473B2 - グランドピアノの弱音装置 - Google Patents

グランドピアノの弱音装置

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JP2605473B2 JP2264502A JP26450290A JP2605473B2 JP 2605473 B2 JP2605473 B2 JP 2605473B2 JP 2264502 A JP2264502 A JP 2264502A JP 26450290 A JP26450290 A JP 26450290A JP 2605473 B2 JP2605473 B2 JP 2605473B2
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【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、グランドピアノに組み込まれる、打鍵操作
時等の発音を通常の時より小さくさせる弱音装置に関す
る。
「従来の技術」 第9図はグランドピアノの公知の鍵駆動装置の一例を
示すものである。
従来の弱音装置を説明する前に、この図に基づき鍵駆
動装置について簡単に説明すると、符号1は棚板1上に
Xを中心に鉛直方向回動自在に配される鍵である。鍵1
の奥部上方(この明細書において、第9図中右側を手前
側、左側を奥側とする)に位置するサポートレール3に
はサポート4がピン4aに中心に鉛直方向回動自在に設け
られている。サポート4は、その下面に取り付けられた
サポートヒール5が、鍵1に植設されたキャプスタンス
クリュウ6に当接されることによって角度位置が決定さ
れる。サポート4の揺動先端部にはジャック7がピン7a
を中心に揺動自在に支持されている。
また、符号9はシャンクレールであり、そこにはシャ
ンクフレンジ10に取り付けられたピン11aを中心に、ハ
ンマー11が鉛直揺動自在に取り付けられている。ハンマ
ー11は、弦12を打つハンマーフエルト13とそれを支持す
るシャンク部14からなっており、前記鍵1が打鍵操作さ
れるとき、シャンク部14はジャック7の先端にローラ15
を介して押圧されて回動する。
なお、17はダンパーであり、鍵1の奥端によって、ダ
ンパレバー18、ダンパーワイヤ19を介して操作される。
上記鍵駆動装置において、鍵1を打鍵操作すると、鍵
はXを中心に時計方向へ回転する。それに伴いサポート
4は、下面をキャプスタンスクリュウ6およびサポート
ヒール5を介して押圧され、ピン4aを中心に反時計方向
へ回転し、ジャック7およびローラ15を介してハンマー
シャンク部14を押し上げる。この結果、ハンマー11はピ
ン11aを中心に時計方向へ回転しハンマーフエルト13で
弦12を打って発音させる。
この発音のとき、ダンパー17は、ダンパーレバー18お
よびダンパーワイヤ19を介し鍵1の奥端部分に操作され
て持ち上がっているが、その後押圧力が解除されて鍵1
が元の位置に復帰すると、自重により下降して弦12に触
れて止音させる。
第10図は上記鍵駆動装置における鍵1とサポート4と
の関係を示す模式図である。
鍵1の打鍵操作に伴うサポート4の動きは上述した通
りであり、このときの鍵1の手前側端部の動きとサポー
ト4の揺動先端(ジャック支持用のピン7a)との関係
は、第11図に示すように、鍵1の手前側端部の下降量
(あがき量)に比例してサポート4の揺動先端の上昇量
が増加する関係となる。
ピン7aの上昇量は、鍵1のバランス比A:B(鍵1の先
端から支点Xまでの距離Aと、支点Xからキャプスタン
スクリュウ6までの長さBとの比)と、サポート4のレ
バー比C:D(サポート4の回転中心4aからキャプスタン
スクリュウ6との当接部までの長さCとサポート4の回
転中心4aからピン7aまでの長さDとの比)によって決定
される。
ところで、グランドピアノにおける従来の弱音装置と
しては、ハンマー11の位置を横,すなわち鍵配列方向に
ずらし、打つ弦の数を減らすことによって音を小さくす
る構造のものがある。
また、他の簡易な弱音装置として、弦12とハンマー11
との間に、マフラーフエルト等を介在させ、これによ
り、ハンマー11の打弦力を弱める構造のものがある。
「発明が解決しようとする課題」 上記した従来のグランドピアノの弱音装置のうち前者
にあっては、音色を変更できても、必ずしも音量は下が
らないという問題があった。
また、後者にあっては、高音域の音量は小さくできる
が、中音域あるいは低温域の音量は期待した程下がら
ず、かつ、音色は高次倍音程消されてしまうため、張り
のない音になってしまう欠点があった。加えて、自動演
奏装置において上記マフラーフエルトによる弱音を行う
場合、フエルトの反作用により弱い音が忠実に再現でき
なくなり、機能を果たさなくなるおそれもあった。
なお、主にアップライトピアノであるが、打弦距離を
縮める目的でハンマー11を弦12側に近付ける構造のもの
もあるが、この種の弱音装置をグランドピアノに適用す
る場合には、ハンマー11の反力が鍵1に伝わらなくなり
鍵1の重量バランス上、支点Xより奥方の鍵部分が持ち
上がる。このため、鍵1の奥端がダンバーレバー18を持
ち上げてしまい、ダンパー機能が果たせなくなる欠点が
生じる。また、打鍵操作初期ではハンマー11が動かない
ことから(ロストモーション)、鍵タッチ感が悪い欠点
もある。
本発明は上記した問題点を解消せんとして成されたも
のであり、その目的は、ロストモーションがなく良好な
タッチ感が得られ、自動演奏時の連打特性が改善でき、
かつダンパー機能を損なわせることなく音量を下げるこ
とができるグランドピアノの弱音装置を提供することを
目的とする。
「課題を解決するための手段」 本発明では係る目的を達成するために、棚板上の回転
中心回りに鉛直方向揺動自在に配設された鍵と、該鍵の
回転中より長手方向奥側上部に突出されたキャプスタン
ボタンと、鍵の奥部上方に位置するサポートレールに鉛
直方向回動自在に設けられ、かつ下面に前記キャプスタ
ンボタンが当接して、鍵の回動に伴い前記サポートレー
ルとの連結部分である回動中心回りに回動されるサポー
トと、該サポートの揺動先端部に回動自在に連結され、
上記サポートの動きに連動して弦打撃用のハンマーに鍵
側からの作用力を伝達するジャックと、上記鍵の上面で
あって、上記キャプスタンボタンと該鍵の回動中心との
間と、上記サポートの下面であって上記キャプスタボタ
ンの当接部とジャック連結部との間に介装された打鍵力
伝達部材とを備え、上記打鍵力伝達部材と上記キャプス
タンボタンとの距離を打鍵力伝達部材と上記鍵の回動支
点との距離よりも短く設定したことを特徴とするもので
ある。
ここで、以下に示す第1実施例においては、本願発明
(特許請求の範囲に記載された発明)における、打鍵伝
達部材を第2のキャプスタンスクリュウ21とし、また、
キャプスタンボタンを第1のキャプスタンスクリュウ6
として説明する。
また、第2の実施例においては、本願発明における、
打鍵伝達部材を上アーム46及び下アーム47とし、また、
キャプスタンボタンを第1のキャプスタンスクリュウ6
として説明する。
「作用」 本発明の弱音装置において打鍵操作すれば、鍵の奥側
が上昇する力は、初期においては、キャプスタンボタン
とは別に設けた打鍵力伝達部材によりサポート側へ伝達
され、キャプスタンボタンがサポートに当接した後にお
いては、このキャプスタンボタンを介してサポート側へ
伝達される。
このように、鍵の打鍵力をサポートへ伝達する部材
が、打鍵操作途中で自動的に切り替わる。
「実施例」 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第1実施例 第1図ないし第4図は本発明の第1実施例を示す。な
お、この実施例において、従来例と同一構成要素には同
一符号を付しその説明を省略する。
第1図に示すように、鍵1の上面であって上記キャプ
スタンスクリュウ6と該鍵1の回転中心Xとの間と、上
記サポート4の下面であって上記キャプスタンスクリュ
ウ6の当接部とジャック連結部(ジャックピン7a)との
間には、第2のキャプスタンスクリュウ21が(以下の説
明において、従来からあるキャプスタンスクリュウ6を
第1のキャプスタンスクリュウ6と称する)、それぞれ
の鍵1に対応して上下動自在に介装されている。第2の
キャプスタンスクリュウ21は個々に長さ調整できるよう
になっていて、鍵1のそれぞれの動きを個々にサポート
4に伝えるものである。キャプスタンスクリュウ21はホ
ルダ22によって上下動自在に支持され(第2図参照)、
ホルダ22は、シャンクレール9に支持されたアーム23の
先端に取り付けられている。また、第2のキャプスタン
スクリュウ21と第1のキャプスタンスクリュウ6との距
離を第2のキャプスタンスクリュウ21と鍵1の回動支点
との距離よりも短く設定している。
アーム23は回転自在に設けられ、必要に応じて前記第
2のキャプスタンスクリュウ21を鍵1とサポート4との
間に介在させる第1図に示す状態(弱音演奏状態)と、
それを解除させる状態(通常演奏状態)とに切り替えら
れるようになっている。切替手段としては、ノブ管を介
し手動によってアーム23を回転させる機構、ペダル機構
と連動しペダル操作によってアーム23を回転させる機
構、あるいは自動演奏の場合等においてはMPU制御のア
クチュエータ駆動(例えば、ギャードモータによる駆
動)等が考えられる(共に図示略)。
なお、アーム23と連動し、ハンマーシャンク14を必要
に応じて持ち上げるリフトアーム24を配設してもよい。
リフトアーム24の先端には、フェルト等の弾性部材24a
を設ける。このように構成すると、アーム23回転時の負
荷軽減効果および弱音演奏時のハンマー戻りによる衝撃
のアクション系への伝達遮断効果を奏する。
次に、上記構成の鍵駆動機構の弱音装置の作用につい
て説明する。
A.弱音演奏 適宜手段(手動操作、ペダル操作等)によりアーム23
を回転させて、第2のキャプスタンスクリュウ21を鍵1
とサポート4との間に介装させる(第1図参照)。
このとき、あらかじめねじ調整を行うことで、第2の
キャプスタンスクリュウ21の下端および上端がそれぞれ
鍵1とサポート4に接するように設定するとともに、第
1のキャプスタンスクリュウ6とサポートヒール5との
間に、若干のクリアランスcが生じるようにする。これ
により、サポート4は、通常の演奏状態時に比べて第2
のキャプスタンスクリュウ21により反時計方向へ所定量
回動され、ジャック7およびローラ15を介してハンマー
11を時計方向へ回動させて打鍵距離Hを縮める。
また、この場合、ハンマー11の重量は、ローラ15およ
びジャック7を介してサポート4へ伝わり、そこから第
2のキャプスタンスクリュウ21を介して鍵1にも伝わ
る。このため、非打鍵操作時では、鍵1は自重に抗し反
時計方向へ回動されて、第1図中実線で示すように初期
の位置にある。また、ダイバー17も弦12に当接する位置
になる。
この状態で、打鍵操作すると、鍵1はXを中心に時計
方向に回動し、鍵1の奥方の上動い伴い、打鍵初期にお
いては、第2のキャプスタンスクリュウ21により打鍵力
がサポート4へ伝えられる。
鍵1の手前側端部の動きとサポート4の揺動先端(ジ
ャック支持用のピン7a)との関係は、第3図に示す通り
である。前記した第11図に示す第1のキャプスタンスク
リュウ6による打鍵力伝達時に比べ、初期位置が上がっ
ておりかつ傾斜がなだらかとなっているのがわかる。こ
のように傾斜がなだらかとなるのは、前記した鍵1の支
点Xから第2のキャスプタンスクリュウまでの長さが小
さくなり、かつ、サポート4の回転中心4aから第2のキ
ャプスタンスクリュウとの当接部までの長さが大きくな
るからである。
ここで、打鍵行程中において第1のキャプスタンスク
リュウ6がサポートヒール4に接触する点を鍵の鉛直方
向移動量の範囲内に合わせると(鍵先端(図示しない鍵
1の右端)鉛直方向の全移動量は例えば10mm)、最初は
第2のキャプスタンスクリュウ21によって打鍵力が伝わ
り、第1のキャプスタンスクリュウ6がサポート4に当
接した後は、第1のキャプスタンスクリュウ6を介して
打鍵力が伝達される。
これを表したものが第4図である。この図は第3図と
第11図を合成したものであり、この図から、初期におい
てはサポート4の揺動先端(ジャックピン7a)の移動速
度は遅く、第1のキャプスタンスクリュウ6がサポート
4に当接した後では高速に切り替わって従来のものと同
程度の速度で動くことがわかる。この後半の高速になる
部分が短く十分な加速が行えないこと、および前記した
ように打鍵距離Hが短くなることから、弦12を打つハン
マー11の力が弱くなり、結果として音量を小さくでき
る。
加えて、常にハンマー11の重量がジャック7およびサ
ポート4等を介して鍵1に伝わっているので、良好なタ
ッチ感が得られ、かつ不必要な時に鍵1が動くことも防
止できる。
このように、鍵1の動きに応じて該鍵1の動きを伝達
する部材が変わるのは、以下の2つの理由からである。
一つは、新たに設けた第2のキャプスタンスクリュウ
21の下端が、鍵1の上面であって第1のキャプスタンス
クリュウ6と鍵と回動中心Xとの間に当接するからであ
る。
すなわち、第2のキャプスタンスクリュウ21が、鍵1
の第1のキャプスタンスクリュウ6が取り付けられた部
分よりも鍵1の回転中心側に当接するため、鍵1が回動
する際、第1のキャプスタンスクリュウ6が取り付けら
れた部分に比べて第2のキャプスタンスクリュウ21が当
接する部分の方が移動量が小さい。したがって、打鍵操
作時の鍵1の回動初期において、第1のキャプスタンス
クリュウ6とサポート4との間に隙間cが形成され、該
第1のキャプスタンスクリュウ6を介して打鍵力が伝達
できない場合でも、鍵1の回動が進むに連れて、第1の
キャプスタンスクリュウ6とサポート4とが接触する場
合があり、それ意向の鍵の回動に対しては第1のキャプ
スタンスクリュウ6が打鍵力を伝達することとなる。
他の一つは、上記新ない設けた第2のキャプスタンシ
ュクリュウ21の上端が、サポート4の下面であって第1
のキャプスタンスクリュウ6当接部とジャック連結部
(ジャックピン7a)との間に当接するからである。
すなわち、第2のキャプスタンスクリュウ21がサポー
ト4に当接する部分は第1のキャプスタンスクリュウ6
が当接する部分よりも揺動先端側であり、サポート4
が、第2のキャプスタンスクリュウ21と第1のキャプス
タンスクリュウ6とによって、例えば同量押圧されて回
動することを考えると、サポート4は回転中心側である
第1のキャプスタンスクリュウ6によって押圧される方
がより多く回動する。
ここで、上記したように鍵1が回動する際、第2のキ
ャプスタンスクリュウ21の移動量よりも第1のキャプス
タンスクリュウ6の移動量の方が大きいことから、結
局、鍵回動初期においては、第2のキャプスタンスクリ
ュウ21によってサポート4側へ打鍵力が伝わり、中期以
降においては、第1のキャプスタンスクリュウ6によっ
て打鍵力が伝わることとなる。
B.通常演奏 また、適宜手段(手動操作、ペダル操作)によりホル
ダ22を回転させて、第2のキャプスタンスクリュウ21を
鍵1とサポート4との間に介装させる状態を解除する。
これにより、鍵駆動装置は、第9図に示す構造のものと
実質的に同じになり、弱音状態が解除されて通常の演奏
が行える。
第5図は第2のキャプスタンスクリュウ21の支持構造
の変形例である。
このように、第2のキャプスタンスクリュウ21は、回
動軸30に取り付けられた板バネ31によって上下動自在に
支持してもよい。なお、この構造のものにおいても、回
動軸30を回動操作することにより、キャプスタンスクリ
ュウ21を鍵1とサポート4との間に介装させる状態、お
よびその状態を解除する状態に切り替えることができ
る。
なお、上記実施例においては、鍵1とサポート4との
間に介在させる打鍵力伝達部材としてキャプスタンスク
リュウ21を用いているが、これに限られることなく他の
部材でもよく、実施例の如く鍵あるいはサポートに点接
触し、かつそれ自体長さ調整できるものであればより好
ましい。
第2実施例 第6図ないし第8図は本発明の第2実施例を示す。な
お、この実施例において、前記した第1実施例で用いた
構成要素と同一構成要素には同一符号を付しその説明を
省略する。
第6図において、40はアクションブラケット41に固定
されたコラムであり、該コラム40の側部にはブラケット
42が取り付けられている。ブラケット42の側面には楕円
状のカム44が回動自在に設けられている。また、ブラケ
ット42の先端には軸45が設けられ、この軸45には上アー
ム46と下アーム47とが回動自在に支持されている。上ア
ーム46は、先端の上方折曲部46aがサーポート4の下面
の第1のキャプスタンスクリュウ6の当接部とジャック
連結部との間に接し得るように位置決めされ、また、下
アーム47は、先端の下方折曲部47aが鍵1の上面の第1
のキャプスタンスクリュウ6の支持部と鍵1の回動中心
Xと間に当接し得るように位置決めされている。さら
に、上アーム46と下アーム47との間にはコイルバネ48が
先端を各アーム46,47の溝46b,47bに嵌入されて設けら
れ、これにより上アーム46と下アーム47とはそれぞれの
折曲部46a,47aが互いに離間するように付勢されてい
る。上記上アーム46、下アーム47およびコイルバネ48は
各鍵1ごとに合計88セット設けられ、楕円状のカム44の
軸は88鍵にわたって一体に設けられて駆動部に連結さ
れ、また、軸45および楕円状のカム44は各音域(セクシ
ョン)ごとに設けられている。
さらに、上記楕円状のカム44は、図示しない回動手
段、例えば専用レバーやリンク等の手動機構、あるいは
モータやローラリソレノイドを用いた電動アクチュエー
タによって、90度ごとに回動操作されるようになってい
る(第6図および第7図参照)。次に、上記構成の鍵駆
動機構の弱音装置の作用について説明する。
A.弱音演奏 第7図に示すように、楕円状のカム44を長手方向が水
平状態になるように回動操作する。すると、上アーム46
と下アーム47はそれぞれ前端(第7図中右側端部)がカ
ム44に当接することなく軸45を中心に自由回転状態にな
り、コイルバネ48の付勢力によって両アーム46,47は回
転し、下アーム47の下方折曲部47aは鍵1に接触し、上
アーム46の上方折曲部46aはサポート4に接触する。こ
のとき、鍵1は下方位置が定められており上方へ浮き上
がることなくサポート4が浮き上がる。これに伴い、ジ
ャック7が突き上げられ、ハンマー11と弦12との打弦距
離Hが例えば47.5±1.5mmから15±3mmまで縮められる。
この状態では第1のキャプスタンスクリュウ6とサポー
トヒール5との間には2〜3mmの隙間が生じる。
この状態で鍵1を打鍵すると、鍵1の奥側は上がり始
める。このとき、第1のキャプスタンスクリュウ6がサ
ポートヒール5へ接触するまでは下アーム47が軸45を中
心に鍵1に接触したまま回転してコイルバネ48を縮め、
これに伴いコイルバネ48のサポート4への押圧力が強ま
りサポート4は若干上昇する。次に、キャプスタンスク
リュウ6がサポートヒーム5へ接触した後は、この接触
部分を介して鍵1からサポート4へ力の伝達が行われ、
キャプスタンスクリュウ6からの押圧力によってサポー
ト4が突き上げられる。このとき上下のアーム46,47は
サポート4および鍵1にそれぞれ接触した姿勢で軸45を
中心に回転する。
この状態においては第8図に示すように上アーム46の
サポート4への接触位置の上がり量Yと下アーム47と鍵
1との接触位置の上がり量Xは、前者の方が大きいため
最初のときにコイルバネ48のたわんだ量がこの過程中に
元に戻り、打鍵して打鍵力を保持しているとき演奏者が
鍵1を介してコイルバネ48から受ける作用力は小さくな
る。
つまり、上アーム46のサポート4への接触位置の上が
り量Yは、下アーム47と鍵1との接触位置の上がり量X
を用いて表すと、 Y=(B×F/C×G)×X となる。(B:鍵1の回転中心からキャプスタンスクリュ
ウ6までの長さ、F:サポート4の回転中心から上アーム
46への当接部までの長さ、C:サポート4の回転中心から
キャプスタンスクリュウ6への当接部までの長さ、G:鍵
1の回転中心から下アーム47への当接部までの長さ) 一つのピアノを例に採れば、B:125mm、F:82mm、C:62m
m、G:105mmであり、Y/Xは1.57倍となる。
したがって、第1のキャプスタンスクリュウ6がサポ
ートヒール5へ接触するまでは、コイルバネ48の負荷が
鍵1から演奏者に伝わり「から」を感じることはなく、
接触後はコイルバネ48の負荷はゼロとなるよう減少して
いき、ジャック7の抜ける際の抵抗を感じるグランドピ
アノのタッチ感とほぼ同等とキーアクションが得られ
る。
ハンマー11は第1のキャプスタンスクリュウ6がサポ
ートヒール5へ接触してか加速されるが、打弦距離Hが
縮められているため速度が出ず、弦12を打つハンマー11
の力が弱くなり、音量が低減する。さらに、常にハンマ
ー11の重量が上下のアーム46,47を介して鍵1に伝わっ
ているため、タッチ感の劣化もなく、不必要な時に鍵1
が動いたり鍵1のバランスくずれによる止音不良も生じ
ない。なお、上下のアームの先端屈曲部46a,47aとサポ
ート4、鍵1との接触面に接触防音防止用部材(例え
ば、フエルト等)を介装してもよい。
B.通常演奏 手動あるいは自動操作によって楕円状のカム44を90度
回転させて第6図に示すようにカム44の長手方向が上下
方向となるようにする。このとき、カム44の先端が上,
下アーム46,47の前端部内面を押圧し、コイルバネ48に
抗して上,下アーム46,47を双方の先端折曲部46a,47aど
うしが接近する方向に回転させる。
この状態では、両アーム46,47は鍵1およびサポート
に接触しておらず、鍵1が打鍵操作されると、鍵1の奥
端が上がり、第1のキャプスタンスクリュウ6を介して
サポート4が上がり、ジャック7が突き上げられ、ハン
マー11が弦12を打ち発音するという通常の打弦動作が行
われる。
なお、この実施例においては、上アーム46、下アーム
47、コイルバネ48等の部材を、ブラケット42を介して一
体化して所定位置に組み突ける構成であり、新規のグラ
ンドピアノには勿論、既存のグランドピアノにも容易に
組み付けることができる利点がある。
「発明の効果」 以上説明したように本発明によれば、初期において
は、キャプスタンボタンとは別に設けた打鍵力伝達部材
により打鍵力がサポート側へ伝達され、キャプスタンボ
タンがサポートに当接した後においては、このキャプス
タンボタンを介してサポート側へ伝達されることとな
り、常に鍵の動きがハンマーに伝わるので、ロストモー
ションがなく良好なタッチ感が得られる。また、ハンマ
ーを弦に近付けることで打鍵距離を短くできるから、ハ
ンマーの往復に要する時間が短縮でき、自動演奏等の弱
音時の連打特性が改善でき、例えばピアニシモのトリル
や連打演奏の忠実な再現が可能となる。さらに、弱音状
態に切り替えた場合、鍵の奥方は下がったままであり、
したがってダンパーによる止音機能が損なわれることも
ない。
また、打鍵力伝達部材とキャプスタンボタンとの距離
を打鍵力伝達部材と鍵の回動支点との距離よりも短く設
定し、打鍵力伝達部材を鍵の回動支点から遠ざけるよう
に配置しているので、鍵に埋め込まれた重りによるモー
メントに対抗できるよう、鍵に対するハンマーの負荷に
よるモーメントを大きくすることができ、この結果、鍵
の演奏者側が下がるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第4図は本発明の第1実施例を示すもので、第
1図は打弦機構の側断面図、第2図は打鍵力伝達部材
(第2のキャプスタンスクリュウ)の支持状態を示す拡
大斜視図、第3図は打鍵力伝達部材を用いて鍵の回動力
をサポートに伝達する場合の鍵とサポートとの移動量の
関係を示す説明図、第4図は本実施例の鍵とサポートと
の移動量の関係を示す説明図、第5図は打鍵力伝達部材
の支持構造の変形例を示す斜視図である。 第6図ないし第8図は本発明の第2実施例を示すもの
で、第6図は打弦機構の側断面図、第7図は打弦機構の
動きを説明するために示す側断面図、第8図は上記打鍵
機構において鍵とサポートとの移動量の関係を示す説明
図である。 第9図は従来のグランドピアノの打鍵機構の一例を示す
側断面図、第10図は鍵とサポートとの関係を示す模式
図、第11図は上記従来の打鍵機構において鍵とサポート
との移動量の関係を示す説明図である。 1……鍵 2……棚板 3……サポートレール 4……サポート 4a……ピン 6……第1のキャプスタンスクリュウ(キャップスタン
ボタン) 7……ジャック 11……ハンマー 11a……ハンマーピン 21……第2のキャプスタンスクリュウ(打鍵力伝達部
材) 22……ホルダ 23……アーム 44……楕円状のカム 45……軸 46……上アーム(打鍵力伝達部材) 47……下アーム(打鍵力伝達部材) 48……コイルバネ X……鍵回動中心

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】棚板上の回転中心回りに鉛直方向揺動自在
    に配設された鍵と、 該鍵の回転中心より長手方向奥側上部に突出されたキャ
    プスタンボタンと、 鍵の奥部上方に位置するサポートレールに鉛直方向回動
    自在に設けられ、かつ下面に前記キャプスタンボタンが
    当接して、鍵の回動に伴い前記サポートレールとの連結
    部分である回動中心回りに回動されるサポートと、 該サポートの揺動先端部に回動自在に連結され、上記サ
    ポートの動きに連動して弦打撃用のハンマーに鍵側から
    の作用力を伝達するジャックと、 上記鍵の上面であって、上記ピャプスタンボタンと該鍵
    の回動中心との間と、上記サポートの下面であって上記
    キャプスタンボタンの当接部とジャック連結部との間に
    介装された打鍵力伝達部材と、 を備え、 上記打鍵力伝達部材と上記キャプスタンボタンとの距離
    を打鍵力伝達部材と上記鍵の回動支点との距離よりも短
    く設定したことを特徴とするグランドピアノの弱音装
    置。
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DE4117453A DE4117453C2 (de) 1990-05-28 1991-05-28 Flügelmechanik mit einem Anschlagsdämpfungsmechanismus
KR1019910008728A KR970005213B1 (ko) 1990-05-28 1991-05-28 그랜드피아노의 뮤팅(muting)장치
US07/706,580 US5239907A (en) 1990-05-28 1991-05-28 Muting device of grand piano

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