JP3629140B2 - クランク角検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃エンジンのクランクシャフトの回転角度位置を検知して検知信号を生成するクランク角検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃エンジンへ燃料をインジェクタによって噴射供給するための燃料噴射タイミングや点火プラグに火花放電させる点火タイミングの制御は、エンジンのクランクシャフトの基準角度位置から回転角度位置、すなわちクランク角に基づいて実行される。クランク角はクランク角検出装置によって検出される。このクランク角検出装置は、通常、クランク角度の所定角度毎のクランク角信号(以下、CRK信号と称する。)と、ピストンが上死点位置にある時点を示すTDC信号とを出力する。このCRK信号は、内燃エンジンの作動を制御する電子制御ユニット(ECU)のクロックパルスとしても活用され得る。
【0003】
図1は4気筒4サイクル内燃エンジンの構成を概念的に示している。クランクシャフト1はエンジン本体ブロック101においてシリンダ部(シリンダブロック)102とベアリングキャップ110により回転自在に保持されている。シリンダ部102の下方にはオイルパン104が延在している。またシリンダ部102のクランクシャフト1の軸方向一端にはタイミングベルトカバーが設けられている。シリンダ部102とタイミングベルトカバー内のタイミングベルト室103との間にはブロック101に取り付けられた仕切壁105、すなわちオイルポンプを備えるポンプハウジングが設けられている。そして、クランク角検出装置106は、従来、タイミングベルト室103の仕切壁105に近い位置に配設されていた。クランクシャフト1の一端にはプーリ107が固着されて、例えば吸排気弁駆動機構を駆動するカムシャフトを回転させるトルクを得ている。なお、クランクシャフト1の仕切壁105の近傍にはオイルシール108が設けられて、シリンダ部102の液密性が維持されている。またクランクシャフト1の他端にはフライホイール109が固着せしめられている。
【0004】
図2は従来のクランク角検出装置106のクランクシャフト1に平行な断面を示している。クランク角検出装置106は、クランクシャフト1の回転に応じて回転する円盤状回転体2とその外周部近傍において仕切壁105に固設された検出部3とから構成される。回転体2は中央に貫通孔4を有し、この中央貫通孔4によってクランクシャフト1の中心軸に垂直な面内にて回転するようにクランクシャフト1の表面の一部に形成されたスプライン溝5へ嵌合して固定されている。これにより回転体2はクランクシャフト1の回転に応動して回転するのである。回転体2の外周面には所定角度毎に磁性片あるいは着磁片からなる複数の被検知部6が形成されている。検出部3は磁束変化または磁束強さを検知するものであり、例えば、磁気コイルピックアップやMR(磁気抵抗)素子ピックアップからなる。クランクシャフト1に応動して回転体2が回転すると、いずれかの被検知部6が検出部3の近傍を通過したとき検出部3から検知パルス信号が生成される。クランクシャフト1の端部を支持する上記ベアリングキャップ110は、仕切壁105の内側、すなわち回転体の被検出部から離れた位置に設けられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近時、ECUの高性能化に伴ってより高い精度で例えば1度毎のクランク角を検出する必要が生じている。そのためには被検知部6の密度を高くしなければならず、高密度の被検知部6の各々を正しく検知するためには検出部3と被検知部6との間の間隙をより狭く設定する必要がある。例えばMR(磁気抵抗)素子ピックアップであれば間隙長は0.3〜0.5mmと非常に小さい値とする必要がある。しかしながらクランクシャフト1は、例えば3000〜4000r.p.m.の高速回転をするので、クランクシャフト1と回転体2とのラジアル方向の相対移動によりクランクシャフト1に回転ぶれを生じ、特に、ベアリングキャップ110と被検知部6との距離が大きいと回転ぶれは大きくなる。そこで、検出部3と被検知部6との間隙長を十分大きくする必要がある。よって、クランク角を高精度に検出することは実際上容易ではない。
【0006】
そこで、本発明の目的はクランク角を高精度にかつ確実に検出できるクランク角検出装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によるクランク角検出装置は、内燃エンジンのクランクシャフトに応動して回転しかつ被検知部を備えた回転体と、前記回転体の前記被検知部の位置を検出して検知信号を発生する検出部と、を含むベルト室内のクランク角検出装置であって、前記回転体は、その周縁端部に沿って屈曲部を有し、前記回転体は、前記クランクシャフトにそのラジアル方向に相対的移動自在に係合し、且つ、前記検出部を支持するために前記ベルト室の壁に固着した支持部材にベアリングを介して回転自在に支持されており、前記ベアリング、前記被検知部、及び、前記被検知部は、前記回転体の前記屈曲部と前記支持部材を含む前記ベルト室の壁とによって形成される空間内に配置されている。かかる構成により、クランクシャフトの振動やぶれを回転体へ伝達することなくラジアル方向の回転トルクのみを伝達し、さらに回転体上に設置される被検知部と検出部との間隙長を常に一定に保持するためクランク角を高精度にかつ確実に検出できるのである。また、ベアリングへの異物の混入が低減できてベアリングの耐久性を向上できるとともに、被検知部及び検出部への異物の不着も低減できてクランク角を高精度に検出できるのである。
【0008】
さらに、本発明によるクランク角検出装置は、前記クランクシャフトに直交する同一平面上に前記ベアリングと、前記回転体の前記被検知部と、を配置する。かかる構成によって、クランクシャフトの軸方向を大型化することなく、ベアリングと被検知部とを配置できるとともに、被検知部の回転ぶれも低減できるのである。
【0009】
さらに、本発明によるクランク角検出装置は、前記回転体の内側空間部に前記ベアリングと、前記被検知部と、前記検出部と、を配置する。かかる構成によって、回転体の内側空間を利用して、ベアリングと、被検知部と、検出部と、をコンパクトに配置できるのである。また、被検知部及び検出部への異物の付着も低減できるので、クランク角を高精度に検出できると共に、ベアリングへの異物の侵入も低減できるので、ベアリングの耐久性も向上できて好ましい。
【0010】
さらに、本発明によるクランク角検出装置は、前記回転体が、前記内燃エンジンのカムシャフトへのトルク伝達のためのベルトプーリを兼ねているとともに、前記ベルトプーリに形成されたベルト案内部を前記同一平面上に配置する。かかる構成によって、ベルト案内部の回転ぶれを低減できるので、被検知部の回転ぶれもさらに低減できるのである。また小型化に資するとともに部品点数及び取り付け作業工程を減少させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図3は本発明のクランク角検出装置106のセンサ部を示している。すなわち、クランクシャフト1に嵌合した円盤状回転体2の外周面に磁性体を塗布して円周方向において一定間隔毎に着磁された被検知部としての被検知部6が形成されている。そして、被検知部6は、例えば1度毎に設けられたCRK信号発生用の被検知部6a及び4気筒エンジン用として180度毎に形成された各気筒上死点TDC信号発生用の被検知部6bからなっている。回転体2の外周面近傍には図2と同様に、回転体の被検知部6bの位置を検出する検出部としての検知部6aが形成されている。
【0012】
図4は本発明によるクランク角検出装置106の一実施例を示し、クランクシャフト1の中心軸を含む断面を示している。クランクシャフト1の表面の一部分には軸方向に沿って伸びる複数の溝からなるスプライン溝5を有している。一方、中央貫通孔4を有する円盤状の回転体2においては、中央貫通孔4の表面にクランクシャフト1のスプライン溝5に嵌合するような相似形状のスプライン溝5が形成されている。回転体2はその回転面に対してクランクシャフト1が垂直となるようにスプライン溝5同士を嵌合して組み合わされる。本構成によりクランクシャフト1と回転体2にあってはクランクシャフト1の中心軸方向の相対的移動は許容されないが、ラジアル方向には相対的移動が許容される一方、クランクシャフト1の回転トルクが回転体2に確実に伝達されるのである。またクランクシャフト1から回転体2へ確実に回転トルクを伝達するものであればよく、例えばクランクシャフト1に多角形断面部を成形し、これに噛合嵌合する中央貫通孔4を回転体2に形成した構成であってもよい。以上によりクランクシャフト1の回転に応動して回転体2が回転駆動される一方で、クランクシャフト1の振動が回転体2へ伝達されることを防止できるのである。さらに、回転体2は中央貫通孔4の周縁部から仕切壁105に向かって延出した第1の円筒部7を有し、円筒部7はクランクシャフト1と同心に形成され、かつクランクシャフト1の外径よりも僅かに大きい内径を有している。さらに円盤状の回転体2の外周縁部であって仕切壁105に対向する面には図3において示したと同様な磁性膜が形成され、これに被検知部6が形成されている。さらに検出部3は支持部材としてのホルダ9に固着され、ホルダ9は検出部3と被検知部6の配された回転体2の面とを対向させるように仕切壁105に固定されている。ホルダ9は中央部にクランクシャフト1の外径よりも大きい貫通孔を有し、回転体2の第1の円筒部7と同心円状であって貫通孔を囲む第2の円筒部8がホルダ9と一体に形成されている。さらに第1の円筒部7と第2の円筒部8は互いに対向しており、回転体2は第1の円筒部7と第2の円筒部8の間に設けられたベアリング10によって回転自在に支持されている。ベアリング10はボールベアリング、ローラーベアリングの如きベアリングである。すなわち、内燃エンジンのクランクシャフト1に応動して回転しかつ被検知部6を備えた回転体2と、回転体2の被検知部6の位置を検出して検知信号を発生する検出部3と、を含むクランク角検出装置106であって、回転体2は、検出部3を支持する支持部材9にベアリング10を介して回転自在に支持されている。かかる構成により、クランクシャフトの振動やぶれを回転体へ伝達することなく回転トルクのみを伝達し、被検知部6と検出部3との間の間隙長を短くすることができ、高い精度でクランク角を検知することが可能となるのである。
【0013】
なお、上記した実施例の構成において検出部3を支持する支持部材としてのホルダ9は仕切壁105、すなわちオイルポンプのハウジングに固定されているが、ホルダ9はオイルポンプのハウジングと一体に形成されたものであってもよい。この場合は、部品点数の削減が可能となると共に、ベアリング10の支持剛性やベアリング10の位置決め精度も向上する。
【0014】
図5は、本発明の他の実施例である。クランク角検出装置106のクランクシャフトの中心軸を含む断面を示している。本実施例においては、回転体2の外周縁部から第1の円筒部7と同心円状に仕切壁105に向かって延出する第3の円筒部11が回転体2と一体に形成されている。第3の円筒部11の外周面には被検知部6が形成されている。すなわち、クランクシャフト1に直交する同一平面上にベアリング10と、回転体2の被検知部6と、を配置する。かかる構成によってクランクシャフト1の軸方向を大型化することなく、ベアリング10と被検知部6とを配置できるとともに、被検知部6の回転ぶれも低減できるのである。
【0015】
図6は、本発明のさらなる実施例としてのクランク角検出装置106のクランクシャフトの中心軸を含む断面を示している。本実施例においては、被検知部6が第3の円筒部11の内壁面に沿って円周方向に分布配置される。これに対応して検出部3は第3の円筒部11の内壁面に対向するようにホルダ9に固着されている。すなわち、回転体2の内側空間部にベアリング10と、被検知部6と、検出部3と、を配置する。かかる構成によって、回転体2の内側空間を利用して、クランクシャフト1の軸方向を大型化することなく、ベアリング10と被検知部6とを配置できるとともに、被検知部6の回転ぶれも低減できるのである。また、被検知部6及び検出部3への異物の付着も低減できるので、クランク角を高精度に検出できると共に、ベアリング10への異物の侵入も低減できるので、ベアリング10の耐久性も向上できて好ましい。
【0016】
図7は、本発明のさらなる実施例としてのクランク角検出装置106のクランクシャフトの中心軸を含む断面を示している。本実施例においては、回転体2と一体に形成された第3の円筒部11の外周面にベルトを案内する溝であるベルト案内部12が形成されてプーリ107を兼ねている。すなわち、回転体2が、内燃エンジンのカムシャフトへのトルク伝達のためのベルトプーリ107を兼ねているとともに、ベルトプーリ107に形成されたベルト案内部12をクランクシャフト1に直交しベアリング10と被検知部6を含む同一平面上に配置する。かかる構成によりベルト案内部12の回転ぶれを低減できるので、被検知部の回転ぶれもさらに低減できるのである。また、ベルト案内部12の内側空間を利用して、ベアリング10と、被検知部6と、検出部3と、をコンパクトに配置できる。またプーリ107に吸排気弁を駆動するためのカムシャフトを駆動するベルトを巻架してカムシャフト駆動用プーリを別に設ける必要をなくして小型化に資するとともに部品点数及び取り付け作業工程を減少させることができる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のクランク角検出装置によれば、内燃エンジンのクランクシャフトに応動して回転しかつ被検知部を備えた回転体と、前記回転体の前記被検知部の位置を検出して検知信号を発生する検出部と、を含むクランク角検出装置であって、前記回転体は、前記検出部を支持する支持部材にベアリングを介して回転自在に支持されており、前記クランクシャフトから前記回転体へのトルクの伝達が前記クランクシャフトと前記回転体とのラジアル方向での相対的移動を許容するトルク伝達手段によってなされる。かかる構成により、クランクシャフトの振動やぶれを回転体へ伝達することなく回転トルクのみを伝達し、さらに回転体上に設置される被検知部と検出部との間隙長を常に一定に保持できるため当該間隙長を短く設計することができ、クランク角を高精度にかつ確実に検出できるのである。
【0018】
さらに、本発明によるクランク角検出装置は、前記クランクシャフトに直交する同一平面上に前記ベアリングと、前記回転体の前記被検知部と、を配置する。かかる構成によって、クランクシャフトの軸方向を大型化することなく、ベアリングと被検知部とを配置できるとともに、被検知部の回転ぶれも低減できるのである。
【0019】
さらに、本発明によるクランク角検出装置は、前記回転体の内側空間部に前記ベアリングと、前記被検知部と、前記検出部とを配置する。かかる構成によって回転体内部の内側空間を利用して、ベアリングと、被検知部と、検出部と、をコンパクトに配置できるのである。また、被検知部及び検出部への異物の付着も低減できるので、クランク角を高精度に検出できると共に、ベアリングへの異物の侵入も低減できるので、ベアリングの耐久性も向上できて好ましい。。
【0020】
さらに、本発明によるクランク角検出装置は、前記回転体が、前記内燃エンジンのカムシャフトへのトルク伝達のためのベルトプーリを兼ねているとともに、前記ベルトプーリに形成されたベルト案内部を前記クランクシャフトに直交する同一平面上に配置する。かかる構成によってベルト案内部の回転ぶれを低減できるので被検知部の回転ぶれもさらに低減できるのである。また小型化に資するとともに部品点数及び取り付け作業工程を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃エンジンの構成概略を示す模式図である。
【図2】従来のクランク角検出装置を示す断面図である。
【図3】本発明によるクランク角検出装置の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の1つの実施例としてのクランク角検出装置を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施例としてのクランク角検出装置を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施例としてのクランク角検出装置を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施例としてのクランク角検出装置を示す断面図である。
【主要部分の符号の説明】
1 クランクシャフト
2 回転体
3 検出部
4 中央貫通孔
5 スプライン溝
6 被検知部
7 第1の円筒部
8 第2の円筒部
9 ホルダ
10 ベアリング
11 第3の円筒部
12 ベルト案内部
Claims (3)
- 内燃エンジンのクランクシャフトに応動して回転しかつ被検知部を備えた回転体と、前記回転体の前記被検知部の位置を検出して検知信号を発生する検出部と、を含むベルト室内のクランク角検出装置であって、
前記回転体は、その周縁端部に沿って屈曲部を有し、前記回転体は、前記クランクシャフトにそのラジアル方向に相対的移動自在に係合し、且つ、前記検出部を支持するために前記ベルト室の壁に固着した支持部材にベアリングを介して回転自在に支持されており、前記ベアリング、前記被検知部、及び、前記検出部は、前記回転体の前記屈曲部と前記支持部材を含む前記ベルト室の壁とによって形成される空間内に配置されていることを特徴とするクランク角検出装置。 - 前記クランクシャフトに直交する同一平面上に前記ベアリングと、前記回転体の前記被検知部と、を配置することを特徴とする請求項1記載のクランク角検出装置。
- 前記回転体が、前記内燃エンジンのカムシャフトへのトルク伝達のためのベルトプーリを兼ねているとともに、前記ベルトプーリに形成されたベルト案内部を前記同一平面上に配置することを特徴とする請求項2記載のクランク角検出装置。
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JP08480998A JP3629140B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | クランク角検出装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
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JPH11281346A JPH11281346A (ja) | 1999-10-15 |
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ID=13841059
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JP08480998A Expired - Fee Related JP3629140B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | クランク角検出装置 |
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Families Citing this family (1)
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CN110520614B (zh) * | 2017-03-30 | 2022-05-03 | 本田技研工业株式会社 | 内燃机 |
-
1998
- 1998-03-31 JP JP08480998A patent/JP3629140B2/ja not_active Expired - Fee Related
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