JP3627865B2 - 透明導電性フィルム、透明導電性シートおよびタッチパネル - Google Patents
透明導電性フィルム、透明導電性シートおよびタッチパネル Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は透明プラスチックフィルム基材上に硬化物層及び透明導電性薄膜をこの順に積層した透明導電性フィルムまたは透明導電性シート、及びこれらを用いたタッチパネルに関するものであり、特にペン入力用タッチパネルに用いた際にペン摺動耐久性に優れる透明導電性フィルムまたは透明導電性シート、及びこれらを用いたタッチパネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
透明プラスチックフィルム基材上に、透明でかつ抵抗が小さい薄膜を積層した透明導電性フィルムは、その導電性を利用した用途、例えば、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどのようなフラットパネルディスプレイや、タッチパネルの透明電極など、電気、電子分野の用途に広く使用されている。
【0003】
近年、携帯情報端末やタッチパネル付きノートパソコンの普及により、従来以上にペン摺動耐久性に優れたタッチパネルが要求されるようになってきた。
【0004】
タッチパネルにペン入力する際、固定電極側の透明導電性薄膜と可動電極(フィルム電極)側の透明導電性薄膜同士が接触するが、この際にペン荷重で透明導電性薄膜にクラック、剥離などの破壊が生じない、優れたペン摺動耐久性を有する透明導電性フィルムが要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の透明導電性フィルムは次のような課題を有していた。
【0006】
厚さが120μm以下の透明プラスチックフィルム基材上に透明導電性薄膜を形成し、粘着剤層で他の透明基体と貼りあわせた透明導電性フィルムが特開平2−66809号公報に開示されている。しかしながら、後述のペン摺動耐久性試験に記載のポリアセタール製のペンを使用し、5.0Nの荷重で20万回の直線摺動試験後には、透明導電性薄膜に剥離が生じ、ペン入力に対する耐久性は不十分であった。そのため、この剥離部の白化により、タッチパネル付きディスプレイ用に使用した際に表示品位が低下するという問題があった。
【0007】
また、透明プラスチックフィルム基材上に、有機ケイ素化合物の加水分解により生成された下地層を設け、さらに結晶質の透明導電性薄膜を積層した透明導電性フィルムが、例えば特開昭60−131711号公報、特開昭61−79647号公報、特開昭61−183809号公報、特開平2−194943号公報、特開平2−276630号公報、特開平8−64034号公報などに提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの透明導電性フィルムは非常に脆く、後述のペン摺動耐久性試験に記載のポリアセタール製のペンを使用し、5.0Nの荷重で20万回の直線摺動試験後には、透明導電性薄膜にクラックが発生するという問題があった。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、上記の従来の問題点に鑑み、タッチパネルに用いた際のペン摺動耐久性に優れ、特にポリアセタール製のペンを使用し、5.0Nの荷重で20万回の摺動試験後でも透明導電性薄膜が破壊されない、透明導電性フィルムまたは透明導電性シート、及びこれらを用いたタッチパネルを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであって、上記の課題を解決することができた透明導電性フィルム、透明導電性シートおよびタッチパネルとは、以下の通りである。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明は、透明プラスチックフィルム基材上に、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層、及び透明導電性薄膜をこの順に積層した透明導電性フィルムであって、前記硬化物層は、硬化物樹脂中に非相溶な高分子樹脂を含有し、かつ前記非相溶高分子樹脂は粒子状に分散してなり、前記透明導電性薄膜の膜厚が4〜800nmであり、前記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面の自乗平均面粗さ(Rms)が広領域では4.0nm〜20.0nm、狭領域では0.3nm〜2.0nmであることを特徴とする透明導電性フィルムである。
【0012】
(ここで広領域とはRmsを算出するために原子間力顕微鏡を用いて行う評価範囲のことであり、10μm×10μmのことである。また、狭領域とは1μm×1μmを意味し、評価対象となるAFM像は傾斜補正後の面内の最大高低差が12.5nm未満のものとし、12.5nm以上のものは評価対象外とする。)
【0013】
第2の発明は、前記の硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂であり、かつ該硬化型樹脂に非相溶な高分子樹脂は重量平均分子量が5,000〜50,000のポリエステル樹脂であり、さらに前記ポリエステル樹脂が紫外線硬化型樹脂100質量部当たり0.1〜20質量部含有されていることを特徴とする第1の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0014】
第3の発明は、前記硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層と前記透明導電性薄膜との付着力が0.1N/15mm以上であることを特徴とする第1または2の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0015】
第4の発明は、前記透明導電性薄膜がインジウム−スズ複合酸化物またはスズ−アンチモン複合酸化物からなることを特徴とする第1、2、または3の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0016】
第5の発明は、前記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面とは反対面に、ハードコート層を積層することを特徴とする第1、2、3、または4の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0017】
第6の発明は、前記ハードコート層が防眩性を有することを特徴とする第5の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0018】
第7の発明は、前記ハードコート層に単層もしくは2層以上の低反射処理層を積層してなる透明導電性フィルムであって、単層の低反射処理層はハードコート層よりも小さな屈折率を有する材料からなり、2層以上の低反射処理層は、ハードコート層と隣接する層にハードコート層よりも大きな屈折率を有する材料を用い、この上の層にはこれよりも小さな屈折率を有する材料からなることを特徴とする第5または6の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0019】
第8の発明は、第1、2、3、4、5、6、または7の発明に記載の透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面とは反対面に、粘着剤を介して透明樹脂シートを貼り合わせることを特徴とする透明導電性シートである。
【0020】
第9の発明は、透明プラスチックフィルム基材上に、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層、及び透明導電性薄膜をこの順に積層した透明導電性フィルムと、透明導電性薄膜を積層したガラス板または透明導電性シートとを、それぞれの透明導電性薄膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルであって、前記透明導電性フィルムが第1、2、3、4、5、6、または7の発明に記載の透明導電性フィルムからなり、前記透明導電性シートが第8の発明に記載の透明導電性シートからなることを特徴とするタッチパネルである。
【0021】
本発明の透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材上に、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層、及び透明導電性薄膜をこの順に積層した構成を有する。中間層の硬化物層は、プラスチックフィルム基材と透明導電層との密着性を向上させ、耐薬品性を付与する目的で使用される。
【0022】
前記硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層は、さらに硬化物樹脂中に非相溶な高分子樹脂を含有し、かつ前記非相溶高分子樹脂が粒子状に分散している。この粒子状に分散した非相溶高分子樹脂により、硬化物層の表面に微粒子状の非相溶樹脂に基づく微細凸部が形成され、その上に積層した透明導電性薄膜にも同様の微細凸部が付与される。この硬化物層により形成される微細凸部により、透明導電性薄膜の広領域における自乗平均面粗さを適切な範囲に制御することができる。
【0023】
また、透明導電性薄膜を構成する複合酸化物の結晶グレインにより、狭領域における自乗平均面粗さを適切な範囲に制御することができる。これらの広領域及び狭領域における自乗平均面粗さを適切な範囲に制御することにより、ポリアセタールペンに荷重をかけ透明導電性薄膜をガラスに接触させた際に真の接触面積が減少し、ガラス面と透明導電性薄膜面との滑り性が改善される。その結果、ペン摺動耐久性をさらに向上させることができる。
【0024】
本発明でいう広領域とは10μm×10μmの測定範囲を意味し、狭領域とは1μm×1μmの測定範囲を意味する。硬化物層の表面粗さに比べ透明導電性薄膜の厚みが薄いため、硬化物層の表面形態が透明導電性薄膜面に反映される。そのため、硬化物層の表面形態を制御することにより、広領域における透明導電性薄膜の自乗平均面粗さを適正範囲にすることができる。
【0025】
一方、透明導電性薄膜を成膜する際の条件を適正化することにより、透明導電性薄膜を構成する複合酸化物の結晶グレインの形態を制御し、狭領域における透明導電性薄膜の自乗平均面粗さを適正範囲にすることができる。
【0026】
良好なペン摺動耐久性を得るためには、前記透明導電性フィルムは透明導電性薄膜面の広領域における自乗平均面粗さ(Rms)が4.0nm〜20.0nmであることが必要であり、好ましくは下限値が5.5nmであり、上限値は15.0nmである。
【0027】
前記広領域におけるRmsが4.0nm未満の平滑な表面では、透明導電性薄膜がガラスと接触する際の真の接触面積が大きくなり、ガラス面と透明導電性薄膜面との滑り性が不十分となる。その結果、ペン摺動耐久性試験時に透明導電性薄膜の摺動部分が白化したり、透明導電性薄膜が破壊され試験後ON抵抗が異常となったりする。
【0028】
一方、前記広領域におけるRmsが20.0nmを超えると、透明導電性薄膜をガラスに接触させた際に凸部に応力が集中し、凸部がペン摺動試験に耐えられず破壊するため、ペン摺動耐久性試験時に摺動部分が白化する。
【0029】
また、前記透明導電性フィルムは透明導電性薄膜面の狭領域おける自乗平均面粗さ(Rms)が0.3nm〜2.0nmであることが必要であり、好ましくは下限値が0.45nmであり、上限値が1.5nmである。
【0030】
前記狭領域おけるRmsが0.3nm未満では、透明導電性薄膜をガラスに接触させた際に真の接触面積が大きくなり、ガラス面と透明導電性薄膜面との滑り性が不十分となる。その結果、ペン摺動耐久性試験時に透明導電性薄膜の摺動部分が白化したり、透明導電性薄膜が破壊され試験後ON抵抗が異常となったりする。
【0031】
一方、前記狭領域おけるRmsが2.0nmを越えると、透明導電性薄膜を構成する複合酸化物の結晶グレインに起因する凸部に応力が集中し、凸部がペン摺動試験に耐えられず破壊するため、ペン摺動耐久性試験時に摺動部分が白化する。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる透明プラスチックフィルム基材とは、有機高分子を溶融押出し又は溶液押出しをして、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムであり、有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。
【0033】
これらの有機高分子のなかで、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、これらの有機高分子は他の有機重合体の単量体を少量共重合したり、他の有機高分子をブレンドしてもよい。
【0034】
本発明で用いる透明プラスチックフィルム基材の厚みは、10μmを越え、300μm以下の範囲であることが好ましく、上限値は260μm、下限値は70μmであることが特に好ましい。プラスチックフィルムの厚みが10μm以下では機械的強度が不足し、特にタッチパネルに用いた際のペン入力に対する変形が大きくなる傾向があり、耐久性が不十分となりやすい。一方、厚みが300μmを越えると、タッチパネルに用いた際に、フィルムを変形させるためのペン荷重が大きくなりやすく、好ましくない。
【0035】
本発明で用いる透明プラスチックフィルム基材は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0036】
また、本発明で用いる硬化型樹脂は、加熱、紫外線照射、電子線照射などのエネルギー印加により硬化する樹脂であれば特に制限はなく、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。生産性の観点からは、紫外線硬化型樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0037】
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどから合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。必要に応じて、これらの多官能性の樹脂に単官能性の単量体、例えば、ビニルピロリドン、メチルメタクリレート、スチレンなどを加えて共重合させることができる。
【0038】
また、透明導電性薄膜と硬化物層との付着力を向上するために、硬化物層を表面処理することが有効である。具体的な手法としては、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基を増加するためにグローまたはコロナ放電を照射する放電処理法、アミノ基、水酸基、カルボニル基などの極性基を増加させるために酸またはアルカリで処理する化学薬品処理法などが挙げられる。
【0039】
紫外線硬化型樹脂は、通常、光重合開始剤を添加して使用される。光重合開始剤としては、紫外線を吸収してラジカルを発生する公知の化合物を特に制限なく使用することができ、このような光重合開始剤としては、例えば、各種ベンゾイン類、フェニルケトン類、ベンゾフェノン類などを挙げることができる。光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂100質量部当たり通常1〜5質量部とすることが好ましい。
【0040】
また、本発明で使用する硬化物層は、主たる構成成分である硬化型樹脂のほかに、硬化型樹脂に非相溶な樹脂を併用することが好ましい。マトリックスの硬化型樹脂に非相溶な樹脂を少量併用することで、硬化型樹脂中で相分離が起こり非相溶樹脂を粒子状に分散させることができる。この非相溶樹脂の分散粒子により、硬化物表面に凹凸を形成させ、広領域における表面粗さを適切な範囲に制御することができる。
【0041】
硬化型樹脂が前記の紫外線硬化型樹脂の場合、非相溶樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などが例示される。
【0042】
前記ポリエステル樹脂は、重量平均分子量で5,000〜50,000と高分子量であることが好ましい。前記平均分子量の下限値は、8,000であることが特に好ましく、上限値は30,000であることが特に好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量が5,000未満であると、ポリエステル樹脂が硬化物層中で適切な大きさの粒子となって分散することが困難となる傾向があり好ましくない。一方、ポリエステル樹脂の重量平均分子量が50,000を超えると、塗布液を調整する際、溶剤に対する溶解性が低下しやすくなるので好ましくない。
【0043】
前記の高分子量のポリエステル樹脂は、二価アルコールと二価カルボン酸を重合することにより得られる非結晶性の飽和ポリエステル樹脂であり、上記の紫外線硬化型樹脂と共通の溶媒に溶解することができるものである。
【0044】
前記の二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどを挙げることができる。
【0045】
また、前記の二価カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などを挙げることができる。
【0046】
溶媒に対する溶解性が不十分とならない範囲で、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールのような三価以上のアルコール、及び、無水トリメリット酸や無水ピロメリット酸のような三価以上のカルボン酸を共重合することができる。
【0047】
本発明において、硬化物層の主たる構成成分である硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用い、硬化型樹脂に非相溶な高分子樹脂として高分子量のポリエステル樹脂を用いる場合、それらの配合割合は、ペン摺動耐久性の点から、紫外線硬化型樹脂100質量部当たりポリエステル樹脂0.1〜20質量部であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂の配合比の上限値は、10質量部がさらに好ましく、特に好ましくは5質量部である。また、前記ポリエステル樹脂の配合比の下限値は、0.2質量部がさらに好ましく、特に好ましくは0.5質量部である。
【0048】
前記ポリエステル樹脂の配合量が紫外線硬化型樹脂100質量部当たり0.1質量部未満であると、硬化物層表面に形成される凸部の高さが小さくなったり、凸部の個数が減少する傾向にあり、本発明で規定する広領域における自乗平均面粗さの下限範囲外となりやすい。
【0049】
一方、前記ポリエステル樹脂の配合量が紫外線硬化型樹脂100質量部当たり20質量部を超えると、本発明で規定する広領域における自乗平均面粗さの上限範囲外となりやすい。そのため、硬化物層の強度が低下し、耐薬品性が悪化しやすくなる。
【0050】
しかしながら、ポリエステル樹脂は紫外線硬化型樹脂と屈折率に差異があるため、硬化物層のヘーズ値が上昇し透明性を悪化させる傾向があるので好ましくない。逆に、高分子量のポリエステル樹脂の分散粒子による透明性の悪化を積極的に利用し、ヘーズ値が高く防眩機能を有する防眩フィルムとして使用することもできる。
【0051】
前記の紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤及び高分子量のポリエステル樹脂は、それぞれに共通の溶剤に溶解して塗布液を調製する。使用する溶剤には特に制限はなく、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのようなアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのようなエステル系溶剤、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのようなエーテル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのようなケトン系溶剤、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどのような芳香族炭化水素系溶剤などを単独に、あるいは混合して使用することができる。
【0052】
塗布液中の樹脂成分の濃度は、コーティング法に応じた粘度などを考慮して適切に選択することができる。例えば、塗布液中に紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤及び高分子量のポリエステル樹脂の合計量が占める割合は、通常は20〜80質量%である。また、この塗布液には、必要に応じて、その他の公知の添加剤、例えば、シリコーン系レベリング剤などを添加してもよい。
【0053】
本発明において、調製された塗布液は透明プラスチックフィルム基材上にコーティングされる。コーティング法には特に制限はなく、バーコート法、グラビアコート法、リバースコート法などの従来から知られている方法を使用することができる。
【0054】
コーティングされた塗布液は、次の乾燥工程で溶剤が蒸発除去される。この工程で、塗布液中で均一に溶解していた高分子量のポリエステル樹脂は微粒子となって紫外線硬化型樹脂中に析出する。塗膜を乾燥した後、プラスチックフィルムに紫外線を照射することにより、紫外線硬化型樹脂が架橋・硬化して硬化物層を形成する。この硬化の工程で、高分子量のポリエステル樹脂の微粒子はハードコート層中に固定されるとともに、硬化物層の表面に突起を形成させる。該突起の高さ及び個数により、広領域における自乗平均面粗さを制御することができる。
【0055】
また、硬化物層の厚みは0.1〜15μmの範囲であることが好ましい。硬化物層の厚みの下限値は、0.5μmがより好ましく、特に好ましくは1μmである。また、硬化物層の厚みの上限値は、10μmがより好ましく、特に好ましくは8μmである。硬化物層の厚みが0.1μm未満の場合には、突起が十分に形成されにくくなる。一方、15μmを超える場合には生産性の観点から好ましくない。
【0056】
本発明で用いる透明導電性薄膜としては、透明性及び導電性をあわせもつ材料であれば特に制限はないが、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、銀および銀合金、銅および銅合金、金等が単層もしくは2層以上の積層構造したものが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物またはスズ−アンチモン複合酸化物が好適である。
【0057】
透明導電性薄膜の膜厚は4〜800nmの範囲である。前記透明導電性薄膜の膜厚の上限値は、500nmが特に好ましい。また、前記透明導電性薄膜の膜厚の下限値は、5nmが特に好ましい。透明導電性薄膜の膜厚が4nmよりも薄い場合、連続した薄膜になりにくく良好な導電性を示しにくい傾向がある。一方、800nmよりも厚い場合、透明性が低下しやすくなる。
【0058】
本発明における透明導電性薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。
【0059】
例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0060】
本発明で、透明導電性薄膜の表面を適度に粗くするのは、タッチパネルに用いた際のペン摺動耐久性試験において、ガラス基板との摩擦が生じる真の接触面積を小さくして滑り性を向上させ、導電性薄膜の表面凸部にかかる応力集中を小さくすることにより、ペン摺動耐久性を向上させるためである。
【0061】
透明導電性薄膜の狭領域における自乗平均面粗さを0.3nm〜2.0nmとするためには、透明導電性薄膜を成膜する際に、次の二つの方法を用いることが有効である。
(1)フィルム基板の温度を高くする。
(2)成膜雰囲気中の水分や有機物などの不純物を除去する。
【0062】
透明導電性薄膜の表面粗さを適度に高くするためには、基板となるフィルムの温度を高くすることが重要なポイントの1つである。これは、透明導電性薄膜の成膜時に、蒸着粒子が堆積する際に基板(フィルム)表面でマイグレーションが生じるために、より大きな複合酸化物(例えば、ITO)グレインが最表面において形成される。その結果、ITOグレイン間の界面における溝深さが深くなり、表面粗さを適度に高くすることができる。
【0063】
例えば、スパッタリング法により巻き取り式装置を用いて、透明導電性薄膜をフィルム上に成膜する場合には、フィルム背面(透明導電性薄膜形成面とは反対面)に接触するロール温度を高くすることで、基板となるフィルムの温度を高くすることが可能である。
【0064】
基板となる透明プラスチックフィルムに透明導電性薄膜を成膜する際の温度は、10〜150℃とすることが好ましい。成膜時の温度が150℃を越えると、プラスチックフィルム表面が柔らかくなり、真空チェンバー走行中にフィルム表面に傷が発生しやすくなる。また、10℃未満の温度では表面粗さの大きな導電性薄膜を得ることが難しくなる。
【0065】
ロール温度を制御するには、ロール内に水路を設けて、この水路中に温度調整された熱媒を流せばよい。この熱媒としては、特に制限はないが、水やオイル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの単体およびこれらの混合物が好適である。
【0066】
また、表面粗さの高い透明導電性薄膜を得るためには、成膜雰囲気中の水や有機物などの不純物をできるだけ除去することも重要なポイントである。
【0067】
例えば、スパッタリング法にて成膜する場合には、スパッタリングを行う前に真空チェンバー内の圧力を0.001Pa以下の真空度まで排気した後に、Arなどの不活性ガスと酸素などの反応性ガスを真空チェンバーに導入し、0.01〜10Paの圧力範囲において放電を発生させ、スパッタリングを行うのが好ましい。また、蒸着法、CVD法などの他の方法においても同様である。
【0068】
このようにして形成した硬化物層上に透明導電性薄膜をスパッタリングなどの真空プロセスにより成膜するが、硬化物層中および/またはプラスチックフィルム中に揮発成分を含んでいると、真空プロセスに悪影響を与える。
【0069】
硬化物層中および/またはプラスチックフィルム中に揮発成分を含んでいると、例えば、スパッタリング法でインジウム−スズ複合酸化物薄膜をフィルム基板上に形成させる場合、スパッタリングされたインジウム原子と硬化物層から揮発したガスが気相中で衝突して、インジウム原子のエネルギーが低下する。この結果、硬化物層上に形成される透明導電性薄膜の自乗平均面粗さは低下する。
【0070】
また、硬化物層から揮発したガス成分が導電性薄膜中に不純物として取り込まれると、膜組成の変動や膜構造の変化などにより、膜質の良くない透明導電性薄膜が形成され、硬化物層上に形成される透明導電性薄膜の自乗平均面粗さが低下する。
【0071】
このような表面が平滑で自乗平均面粗さ(Rms)の低い透明導電性薄膜が積層された透明導電性フィルムをタッチパネルに用いると、5.0Nの荷重で20万回の直線摺動試験後に、透明導電性薄膜が摩耗劣化し好ましくない。
【0072】
例えば、硬化物層中に存在する揮発成分としては、前述した硬化物層の塗工に用いた塗工液の溶剤や紫外線硬化反応に寄与しなかった、残留の光重合開始剤およびその副生成物などが挙げられる。
【0073】
前記の揮発成分を減少させるためには、紫外線照射による架橋反応の後に加熱処理を施すのが好適である。このときの加熱処理温度は100〜200℃の範囲であることが好ましい。100℃未満では揮発成分を減少させる効果が不十分となりやすく、200℃を越える温度では、フィルムの平面性を保つのが難しくなる傾向にある。
【0074】
また、スパッタリング等を行う真空チェンバーの中でフィルムを真空暴露することで揮発成分を減少させることも有効な手段である。真空暴露の際にフィルムに接触するロール温度を高くしておいたり、赤外線ヒーターによるフィルム加熱を併用することで揮発成分をより減少させることが可能となる。
【0075】
この時の真空度としては、1,000Pa以下であることが好ましく、さらに好ましくは100Pa以下である。100Paよりも高い圧力では揮発成分除去の効果が十分ではない。
【0076】
また、真空暴露時間は、1分〜100分とすることが好ましい。真空暴露時間が1分未満では、揮発成分除去の効果が十分ではない。一方、100分を超える時間では、生産性が著しく低下するために、工業的に不適である。
【0077】
しかしながら、硬化型樹脂に非相溶の高分子樹脂を併用しない場合には、ペン摺動耐久性の点から、真空暴露時間を長めにすることが好ましい。具体的には、真空暴露時間を15分間以上とすることが好ましく、特に好ましくは20分間以上とする。
【0078】
さらに、真空暴露の際にフィルム温度を高くすることでより効率的に揮発成分の低減を行うことができる。フィルム温度としては、0〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜180℃の範囲である。
【0079】
フィルム温度を制御するためには、フィルムに接触するロール温度を高くすること、あるいは赤外線ヒーターによるフィルム加熱を併用する手段が有効である。この時のロール温度としては、上記フィルム温度と同様に0〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜180℃の範囲である。
【0080】
また、赤外線ヒーターは近赤外線型、中赤外線型、遠赤外線型のうちいずれでもよい。赤外線ヒーターへの投入電力は、5〜50,000W/m2・minの範囲が好ましい。5W・m2/min未満の投入電力ではフィルム温度を上昇させる効果がなく、50,000W/m2・minよりも高い投入電力では、フィルム温度が高くなりすぎ、フィルムの平面性が低下するために好ましくない。
【0081】
前記のように、成膜雰囲気中の水分や有機物などの不純物を可能な限り除去することで、膜質に優れ、かつ狭領域における自乗平均面粗さが0.3nm〜2.0nmである透明導電性薄膜を有する透明導電性フィルムが得られる。そのため、この透明導電性薄膜をタッチパネルに用いると、ポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mmR)を用いて、5.0Nの荷重で20万回の直線摺動試験を行った後でも透明導電性薄膜の劣化が見られない。
【0082】
また、狭領域における自乗平均面粗さ(Rms)がさらに高い透明導電性薄膜を得るために、成膜後に加熱、紫外線照射などの手段でエネルギーを付与してもよい。これらのエネルギー付与手段のうち、酸素雰囲気下での加熱処理が好適である。
【0083】
加熱処理温度は150〜200℃の範囲が好ましい。150℃未満の温度では、膜質改善の効果が十分である。一方、200℃を超える温度ではフィルムの平面性を維持するのが難しくなり、さらに透明導電性薄膜の結晶化度が非常に高くなり、脆い透明導電性薄膜となってしまう。
【0084】
また、加熱処理時間としては0.2〜60分の範囲が好適である。0.2分未満では、たとえ220℃程度の高温で加熱処理を行なっても膜質改善の効果が十分でなく好ましくない。一方、60分を超える加熱処理時間では工業的に不適である。
【0085】
また、加熱処理を行なう雰囲気は、予め0.2Pa以下の圧力まで排気した後に酸素で満たした空間で行うことが好ましい。このときの圧力は大気圧以下であることが好ましい。
【0086】
また、タッチパネルとした際の最外層(ペン入力面)の耐擦傷性をさらに向上させるために、透明プラスチックフィルムの透明導電性薄膜を形成させた表面とは反対面(タッチパネルとした際の最外層のペン入力面)に、ハードコート層を設けることが好ましい。前記ハードコート層の硬度は、鉛筆硬度で2H以上であることが好ましい。2H未満の硬度では、透明導電性フィルムのハードコート層としては耐擦傷性の点で不十分である。
【0087】
前記ハードコート層の厚みは0.5〜10μmであることが好ましい。厚みが0.5μm未満では、耐擦傷性が不十分となりやすく、10μmよりも厚い場合には生産性の観点から好ましくない。
【0088】
前記ハードコート層に用いられる硬化型樹脂組成物は、アクリレート系の官能基を有する樹脂が好ましく、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリート等のオリゴマーまたはプレポリマーなどが挙げられる。
【0089】
また、反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用できる。
【0090】
本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合することが好ましい。
【0091】
また、前記ハードコート層に用いられる硬化型樹脂組成物としては、ポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの混合物が特に好適である。ポリエステルアクリレートは塗膜が非常に硬くてハードコート層として適している。しかしながら、ポリエステルアクリレート単独の塗膜では耐衝撃性が低く脆くなりやすいという問題がある。そこで、塗膜に耐衝撃性及び柔軟性を与えるために、ポリウレタンアクリレートを併用することが好ましい。すなわち、ポリエステルアクリレートにポリウレタンアクリレートを併用することで、塗膜はハードコート層としての硬度を維持しながら、耐衝撃性及び柔軟性という機能を付与することができる。
【0092】
両者の配合割合は、ポリエステルアクリレート樹脂100質量部に対し、ポリウレタンアクリレート樹脂を30質量部以下とするのが好ましい。ポリウレタンアクリレート樹脂の配合割合が30質量部を超えると、塗膜が柔らかくなりすぎて耐衝撃性が不十分となる傾向がある。
【0093】
前記の硬化型樹脂組成物の硬化方法は、通常の硬化方法、すなわち、加熱、電子線または紫外線の照射によって硬化する方法を用いることができる。例えば、電子線硬化の場合は、コックロフトワルトン型、ハンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用される。また、紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハイライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0094】
さらに、電離放射線硬化の場合には、前記の硬化型樹脂組成物中に光重合開始剤や光増感剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などが挙げられる。また、光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が好ましい。
【0095】
ハードコート層に防眩性を付与するためには、硬化型樹脂中にCaCO3やSiO2などの無機粒子を分散させたり、ハードコート層の表面に凹凸形状を形成させることが有効である。例えば、凹凸を形成するためには、硬化型樹脂組成物を含む塗液を塗工後、表面に凸形状を有する賦形フィルムをラミネートし、この賦形フィルム上から紫外線を照射し硬化型樹脂を硬化させた後に、賦形フィルムのみを剥離することにより得られる。
【0096】
前記の賦型フィルムには、離型性を有するポリエチレンテレフタレート(以後、PETと略す)等の基材フィルム上に所望の凸形状を設けたもの、あるいは、PET等の基材フィルム上に繊細な凸層を形成したもの等を用いることができる。その凸層の形成は、例えば、無機粒子とバインダー樹脂からなる樹脂組成物を用いて基材フィルム上に塗工することにより得ることができる。
【0097】
前記バインダー樹脂は、例えば、ポリイソシアネートで架橋されたアクリルポリオールを用い、無機粒子としては、CaCO3やSiO2などを用いることができる。また、この他にPET製造時にSiO2等の無機粒子を練込んだマットタイプのPETも用いることができる。
【0098】
この賦型フィルムを紫外線硬化型樹脂の塗膜にラミネートした後紫外線を照射して塗膜を硬化する場合、賦型フィルムがPETを基材としたフィルムの場合、該フィルムに紫外線の短波長側が吸収され、紫外線硬化型樹脂の硬化が不足するという欠点がある。したがって、紫外線硬化型樹脂の塗膜にラミネートする賦型フィルムの透過率が20%以上のものを使用することが必要である。
【0099】
また、タッチパネルに用いた際に可視光線の透過率をさらに向上させるためにハードコート層上に、低反射処理を施してもよい。この低反射処理は、ハードコート層の屈折率とは異なる屈折率を有する材料を単層もしくは2層以上に積層することが好ましい。
【0100】
単層構造の場合、ハードコート層よりも小さな屈折率を有する材料を用いるのが好ましい。また、2層以上の多層構造とする場合は、ハードコート層と隣接する層は、ハードコート層よりも大きな屈折率を有する材料を用い、この上の層にはこれよりも小さな屈折率を有する材料を選ぶのがよい。このような低反射処理を構成する材料としては、有機材料でも無機材料でも上記の屈折率の関係を満足すれば特に限定されない。例えば、CaF2、MgF2、NaAlF4、SiO2、ThF4、ZrO2、Nd2O3、SnO2、TiO2、CeO2、ZnS、In2O3、などの誘電体を用いるのが好ましい。
【0101】
この低反射処理は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などのドライコーティングプロセスでも、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式などのウェットコーティングプロセスでもよい。
【0102】
さらに、この低反射処理層の積層に先立って、前処理として、コロナ放電処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、プライマ処理、易接着処理などの公知の表面処理をハードコート層に施してもよい。
【0103】
本発明の透明導電性フィルムを用い、透明導電性薄膜を形成していない面と粘着剤を介して透明樹脂シートと積層することで、タッチパネルの固定電極に用いる透明導電性積層樹脂シートが得られる。すなわち、タッチパネルの固定電極の基板をガラスから透明樹脂シートに変更することで、軽量かつ割れにくいタッチパネルを作製することができる。
【0104】
前記粘着剤は透明性を有するものであれば特に制限はないが、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが好適である。この粘着剤の厚さは特に制限はないが、通常1〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。粘着剤の厚みが1μm未満の厚さの場合、実用上問題のない接着性を得るのが難しく、100μmを越える厚さでは生産性の観点から好ましくない。
【0105】
この粘着剤を介して貼合わせる透明樹脂シートは、ガラスと同等の機械的強度を付与するために使用するものであり、厚さは0.05〜5mmの範囲が好ましい。前記透明樹脂シートの厚みが0.05mm未満では、機械的強度がガラスに比べ不足する。一方、厚さが5mmを越える場合には、厚すぎてタッチパネルに用いるには不適当である。また、この透明樹脂シートの材質は、前記の透明プラスチックフィルムと同様のものを使用することができる。
【0106】
図14に、本発明の透明導電性フィルムを用いた、タッチパネルの例を示す。これは、透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を、透明導電性薄膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルにおいて、一方のパネル板に本発明の透明導電性フィルムを用いたものである。
【0107】
このタッチパネルは、ペンにより文字を入力した時に、ペンからの押圧により、対向した透明導電性薄膜同士が接触し、電気的にONの状態になり、タッチパネル上でのペンの位置を検出することができる。このペン位置を連続的かつ正確に検出することで、ペンの軌跡から文字を認識することができる。この際、ペン接触側の可動電極が本発明の透明導電性フィルムを用いると、ペン摺動耐久性に優れるため、長期にわたって安定なタッチパネルとすることができる。
【0108】
なお、本発明の透明導電性フィルム及び透明導電性シートを使用して得た、ガラス基板を用いないプラスチック製のタッチパネルの断面図を図15に示した。このプラスチック製のタッチパネルは、ガラスを用いていないため、非常に軽量であり、かつ、衝撃により割れたりすることがない。
【0109】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、透明導電性フィルムの物性、透明導電性薄膜面の広領域及び狭領域における自乗平均面粗さ(Rms)、タッチパネルのペン摺動耐久性試験は、下記の方法により測定した。
【0110】
(1)自乗平均面粗さ(Rms)
走査型プローブ顕微鏡(Seiko Instruments社製、SPI3800/SPA300)を使用して、原子間力顕微鏡(AFM)により評価した。スキャナーはFS−20Aを使用した。カンチレバーはシリコン製のSI−DF20を使用した。ともにSeiko Instruments社から購入できる一般的に使用されているものである。観察モードはDFMモードで行った。観察に用いるカンチレバーは探針汚染による分解能低下がないように常に新品を使用した。また観察時における磨耗劣化を防ぐために、分解能を犠牲にしない範囲でできる限り探針にかかる負荷が小さい条件で行った。
【0111】
広領域における自乗平均面粗さ(Rms)の評価は、前記AFMにより10μm×10μmの面積を分解能512ピクセル×512ピクセルで観察することで行った。走査速度は0.25Hz以下で行ったが、分解能に支障がなければ、この速度にこだわる事はない。観察後付属のソフトウエアによりデータの傾斜を補正し、その後、付属のソフトウエアにより表面粗さ評価を行った。自乗平均面粗さ(Rms)の算出はランダムに評価したAFM像10点以上の平均値とした。
【0112】
狭領域における自乗平均面粗さ(Rms)評価は、前記AFMにより1μm×1μmの面積を分解能256ピクセル×256ピクセル以上で観察することで行った。走査速度は0.5Hz以上で行ったが、分解能に支障がなければ、この速度にこだわる事はない。観察後付属のソフトウエアによりデータの傾斜を補正し、その後、付属のソフトウエアにより表面粗さ評価を行った。自乗平均面粗さ(Rms)の算出はランダムに評価したAFM像10点以上の平均値とした。
【0113】
ただし、評価対象となるAFM像は傾斜補正後の面内の最大高低差が12.5nm未満のものとし、12.5nm以上のものは評価対象外とした。これは硬化型樹脂により誘起される導電層の凹凸、突起を狭領域平均自乗粗さ評価対象内に含有させないための処理である。もし含有させた場合、硬化型樹脂により導入される広領域で評価されるべき表面粗さを狭領域で評価する表面粗さに含ませることになってしまうためである。
【0114】
(2)光線透過率及びヘイズ
JIS−K7105に準拠し、日本電色工業(株)製NDH−1001DPを用いて、光線透過率及びヘイズを測定した。
【0115】
(3)表面抵抗率
JIS−K7194に準拠し、4端子法にて測定した。測定機は、三菱油化(株)製 Lotest AMCP−T400を用いた。単位はΩ/□である。
【0116】
(4)ペン摺動耐久性試験
ポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重をかけ、20万回(往復10万回)の直線摺動試験をタッチパネルに行った。この時の摺動距離は30mm、摺動速度は60mm/秒とした。この摺動耐久性試験後に、まず、摺動部が白化しているかを目視によって観察した。さらに、ペン荷重0.5Nで上記の摺動部にかかるように20mmφの記号○印を筆記し、タッチパネルがこれを正確に読みとれるかを評価した。さらに、ペン荷重0.5Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗(可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値)を測定した。
【0117】
(5)付着力測定
ポリエステル系接着剤を用いて、厚さ40μmのアイオノマーフィルムを厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにラミネートし、付着力測定用積層体を作製した。この付着力測定用積層体のアイオノマー面と透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面を対向させ、130℃でヒートシールした。この積層体を付着力測定用積層体と透明導電性フィルムとを180度剥離法で剥離し、この剥離力を付着力とした。この時の剥離速度は1000mm/分とした。
【0118】
実施例1
光重合開始剤含有アクリル系樹脂(大日精化工業社製、セイカビームEXF−01J)100質量部に、共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、バイロン200、重量平均分子量18,000)を3質量部配合し、溶剤としてトルエン/MEK(8/2:質量比)の混合溶媒を、固形分濃度が50質量%になるように加え、撹拌して均一に溶解し塗布液を調製した。
【0119】
両面に易接着層を有する二軸配向透明PETフイルム(東洋紡績社製、A4340、厚み188μm)に、塗膜の厚みが5μmになるように、調製した塗布液をマイヤーバーを用いて塗布した。80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042−5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm2)し、塗膜を硬化させた。次いで、180℃で1分間の加熱処理を施して、揮発成分の低減を行なった。
【0120】
また、この硬化物層を積層した二軸配向透明PETフィルムを真空暴露するために、真空チェンバー中で巻き返し処理を行なった。このときの圧力は0.002Paであり、暴露時間は10分とした。また、センターロールの温度は40℃とした。
【0121】
次に、この硬化物層上にインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を成膜した。このとき、スパッタリング前の圧力を0.0007Paとし、ターゲットとして酸化スズを5質量%含有した酸化インジウム(三井金属鉱業社製、密度7.1g/cm3)に用いて、2W/cm2のDC電力を印加した。また、Arガスを130sccm、O2ガスを10sccmの流速で流し、0.4Paの雰囲気下でDCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。ただし、通常のDCではなく、アーク放電を防止するために、日本イーエヌアイ製RPG−100を用いて5μs幅のパルスを50kHz周期で印加した。また、センターロール温度を50℃として、スパッタリングを行った。
【0122】
また、雰囲気の酸素分圧をスパッタプロセスモニター(伯東社製、SPM200)にて常時観測しながら、インジウム−スズ複合酸化物薄膜中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量計およびDC電源にフィートバックした。以上のようにして、厚さ22nmのインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を堆積した。
【0123】
<タッチパネルの作製>
この透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にプラズマCVD法で厚みが20nmのインジウム−スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜(日本曹達社製、S500)を用いた。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して、配置しタッチパネルを作製した。
【0124】
実施例2
実施例1において硬化物層形成させるための塗付液に添加する共重合ポリエステル樹脂を光重合開始剤含有アクリル系樹脂100質量部に対し、9質量部配合した以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製した。さらに、この導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0125】
実施例3
実施例1において硬化物層形成させるための塗付液に添加する共重合ポリエステル樹脂を光重合開始剤含有アクリル系樹脂100質量部に対し、0.2質量部配合した以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製した。さらに、この導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0126】
実施例4
実施例1において、二軸配向透明PETフィルム基材/硬化物層からなる積層体の、硬化物層面とは反対面にハードコート層樹脂としてポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの混合物からなる紫外線硬化型樹脂(大日精化工業社製、EXG)を乾燥後の膜厚が5μmになるようにグラビアリバース法により塗布し、溶剤を乾燥させた。この後、160Wの紫外線照射装置の下を10m/分の速度で通過させ、紫外線硬化型樹脂を硬化させ、ハードコート層を形成させた。次いで、180℃で1分間の加熱処理をおこない、揮発成分の低減を行った。
【0127】
このハードコート層/二軸配向透明PETフィルム基材/硬化物層からなる積層体の硬化物層上に、実施例1と同様にしてインジウム−スズ複合酸化物薄膜を成膜した。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0128】
実施例5
実施例1と同様にして、二軸配向透明PETフィルム基材/硬化物層からなる積層体を作製した。この積層体の硬化物層面とは反対面に、ハードコート層樹脂としてポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの混合物からなる紫外線硬化型樹脂(大日精化工業社製、EXG)を乾燥後の膜厚が5μmになるようにグラビアリバース法により塗布し、溶剤を乾燥した。その後、表面に微細な凸形状が形成されたPETフィルムのマット賦形フィルム(東レ社製、X)をマット面が紫外線硬化型樹脂と接するようにラミネートした。このマット賦形フィルムの表面形状は、平均表面粗さ0.40μm、山の平均間隔160μm、最大表面粗さ25μmである。
【0129】
このようにラミネートしたフィルムを160Wの紫外線照射装置の下を10m/分の速度で通過させ、紫外線硬化型樹脂を硬化させた。次いで、マット賦形フィルムを剥離して、表面に凹形状加工が施され防眩効果を有するハードコート層を形成させた。次いで、180℃で1分間の加熱処理をおこない、揮発成分の低減を行った。
【0130】
この防眩性ハードコート層/二軸配向透明PETフィルム基材/硬化物層からなる積層体の硬化物層上に、実施例1と同様にしてインジウム−スズ複合酸化物薄膜を透明導電性薄膜として成膜した。さらに、この透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0131】
実施例6
実施例5と同様にして防眩性ハードコート層/二軸配向透明PETフィルム基材/硬化物層/透明導電性薄膜層からなる積層体を作製し、次いで、この防眩性ハードコート層上に順次TiO2薄膜層(屈折率:2.30、膜厚15nm)、SiO2薄膜層(屈折率:1.46、膜厚29nm)、TiO2薄膜層(屈折率:2.30、膜厚109nm)、SiO2薄膜層(屈折率:1.46、膜厚87nm)を積層することで反射防止処理層を形成した。TiO2薄膜層を形成するには、チタンをターゲットに用いて、直流マグネトロンスパッタリング法で、真空度を0.27Paとし、ガスとしてArガスを500sccm、O2ガスを80sccmの流速で流した。また、基板の背面には0℃の冷却ロールを設けて、透明プラスチックフィルムを冷却した。このときのターゲットには7.8W/cm2の電力を供給し、ダイナミックレートは23nm・m/分であった。
【0132】
SiO2薄膜を形成するには、シリコンをターゲットに用いて、直流マグネトロンスパッタリング法で、真空度を0.27Pa、ガスとしてArガスを500sccm、O2ガスを80sccmの流速で流した。また、基板の背面には0℃の冷却ロールを設けて、透明プラスチックフィルムを冷却した。このときのターゲットには7.8W/cm2の電力を供給し、ダイナミックレートは23nm・m/分であった。さらに、この透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0133】
実施例7
実施例1と同様にして作製した透明導電性フィルムをアクリル系粘着剤を介して、厚みが1.0mmのポリカーボネート製のシートに貼り付けて、透明導電性積層シートを作製した。この透明導電性積層シートを固定電極として用い、実施例4の透明導電性フィルムを可動電極に用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0134】
実施例8
二軸配向透明PETフィルムを真空暴露するために、真空チェンバー中で巻き返す際のセンターロールの温度及びITOをスパッタリングする際のセンターロールの温度を20℃とした以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製した。さらに、この導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0135】
実施例9
真空チェンバー中で巻き返し処理を行う時の圧力を0.0007Paとし、暴露時間を30分、真空チェンバー中で巻き返す際のセンターロールの温度を50℃、ITOをスパッタリングする際のセンターロールの温度を60℃とした以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製した。さらに、この導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0136】
比較例1
180℃で1分間の加熱処理及び10分間の真空暴露処理の揮発成分低減のプロセスを省略した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製した。さらに、この導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0137】
比較例2
硬化物層を形成するための塗液に共重合ポリエステル樹脂を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製した。さらに、この導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0138】
比較例3
実施例1において硬化物層形成させるための塗付液に添加する共重合ポリエステル樹脂を光重合開始剤含有アクリル系樹脂100質量部に対し、30質量部を配合した以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製した。さらに、この導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0139】
比較例4
実施例1と同様に透明導電性フィルムを製作し、オーブンで200℃に加熱し、5分間保持した以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製した。さらにこの導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0140】
表1の結果より、実施例1〜9記載の透明導電性フィルムおよび透明導電性シートは、透明導電性薄膜の広領域および狭領域における自乗平均面粗さ(Rms)がともに本発明で規定した要件をすべて満足する。そのため、この透明導電性フィルムを用いたタッチパネルは、ポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重をかけ20万回の摺動試験を行なった後でも白化もなく、ON抵抗にも異常がなかった。また、入力した記号○印も正確に認識していた。
【0141】
一方、比較例1〜4記載の透明導電性フィルムおよび透明導電性シートは、透明導電性薄膜の広領域あるいは狭領域における自乗平均面粗さ(Rms)のどちらかが本発明で規定した要件を満足していない。そのため、比較例1及び2記載の透明導電フィルムを用いたタッチパネルはポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重をかけ20万回の摺動試験を行なった後に白化が生じ、ON抵抗に異常が生じた。また入力した記号○印も正確に認識されなかった。
【0142】
また、比較例3記載の透明導電性フィルムでは光線透過率が低く、ヘイズも高くなり、実用上十分な光学特性を得ることができなかった。また比較例4記載の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルではポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重をかけ20万回の摺動試験を行なった後に白化やON抵抗に異常は生じなかったものの、入力した記号○印が正確に認識されず、実用上十分な性能を満足することができなかった。
【0143】
【表1】
【0144】
【発明の効果】
本発明の透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材上に、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層、及び透明導電性薄膜をこの順に積層した透明導電性フィルムであって、前記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面の自乗平均面粗さ(Rms)が広領域では4.0nm〜20.0nm、狭領域では0.3nm〜2.0nmであることを特徴とする透明導電性フィルムであるため、前記透明導電性フィルムを用いたペン入力用タッチパネルは、ペンの押圧で対向の透明導電性薄同士が接触しても、剥離、クラック等を生じることがないなどペン摺動耐久性に優れており、かつ位置検出精度や表示品位にも優れている。したがって、ペン入力タッチパネルとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図2】実施例2のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図3】実施例3のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図4】実施例4のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図5】実施例5のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図6】実施例6のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図7】実施例7のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図8】実施例8のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図9】実施例9のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図10】比較例1のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図11】比較例2のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図12】比較例3のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図13】比較例4のタッチパネルからの出力形状を示した説明図である。
【図14】本発明の透明導電性フィルムを用いた、タッチパネルの例の説明図である。
【図15】本発明の透明導電性フィルムを用いた、ガラス基板を使用しないタッチパネルの例の説明図である。
【符号の説明】
1 摺動試験部
2 タッチパネル出力形状
10 透明導電性フィルム
11 透明プラスチックフィルム基材
12 硬化物層
13 透明導電性薄膜
14 ハードコート層
20 ビーズ
30 ガラス板
40 透明導電性シート
41 粘着剤
42 透明樹脂シート
Claims (9)
- 透明プラスチックフィルム基材上に、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層、及び透明導電性薄膜をこの順に積層した透明導電性フィルムであって、前記硬化物層は、硬化物樹脂中に非相溶な高分子樹脂を含有し、かつ前記非相溶高分子樹脂が粒子状に分散してなり、前記透明導電性薄膜の膜厚が4〜800nmであり、前記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面の自乗平均面粗さ(Rms)が広領域では4.0nm〜20.0nm、狭領域では0.3nm〜2.0nmであることを特徴とする透明導電性フィルム。(ここで広領域とはRmsを算出するために原子間力顕微鏡(AFM)を用いて行う評価範囲のことであり、10μm×10μmのことである。また、狭領域とは1μm×1μmを意味し、評価対象となるAFM像は傾斜補正後の面内の最大高低差が12.5nm未満のものとし、12.5nm以上のものは評価対象外とする。)
- 前記の硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂であり、かつ該硬化型樹脂に非相溶な高分子樹脂は重量平均分子量が5,000〜50,000のポリエステル樹脂であり、さらに前記ポリエステル樹脂が紫外線硬化型樹脂100質量部当たり0.1〜20質量部含有されていることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
- 前記硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層と前記透明導電性薄膜との付着力が0.1N/15mm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電性フィルム。
- 前記透明導電性薄膜が、インジウム−スズ複合酸化物またはスズ−アンチモン複合酸化物からなることを特徴とする請求項1、2、または3記載の透明導電性フィルム。
- 前記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面とは反対面に、ハードコート層を積層することを特徴とする請求項1、2、3、または4記載の透明導電性フィルム。
- 前記ハードコート層が防眩性を有することを特徴とする請求項5記載の透明導電性フィルム。
- 前記ハードコート層に単層もしくは2層以上の低反射処理層を積層してなる透明導電性フィルムであって、単層の低反射処理層はハードコート層よりも小さな屈折率を有する材料からなり、2層以上の低反射処理層は、ハードコート層と隣接する層にハードコート層よりも大きな屈折率を有する材料を用い、この上の層にはこれよりも小さな屈折率を有する材料からなることを特徴とする請求項5または6記載の透明導電性フィルム。
- 請求項1、2、3、4、5、6、または7記載の透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面とは反対面に、粘着剤を介して透明樹脂シートを貼り合わせることを特徴とする透明導電性シート。
- 透明プラスチックフィルム基材上に、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層、及び透明導電性薄膜をこの順に積層した透明導電性フィルムと、透明導電性薄膜を積層したガラス板または透明導電性シートとを、それぞれの透明導電性薄膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルであって、前記透明導電性フィルムが請求項1、2、3、4、5、6、または7記載の透明導電性フィルムからなり、前記透明導電性シートが請求項8記載の透明導電性シートからなることを特徴とするタッチパネル。
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