JP2010080290A - 透明導電性フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面に結晶質の酸化インジウムを主とした透明導電膜が積層された透明導電性フィルムであって、透明導電膜の酸化インジウムの結晶粒径が30〜1000nmであり、かつ透明導電膜の結晶質部に対する非晶質部の比が0.00〜0.50である透明導電性フィルム。透明導電膜は、酸化スズを0.5〜8質量%含む酸化インジウムが好ましい。
【選択図】 なし
Description
ペン摺動耐久性を向上させる手段として、可動電極(フィルム電極)側の透明導電性薄膜を結晶質にする方法がある(特許文献1〜11)。
特許文献1〜7は、透明プラスチックフィルム基材上に有機珪素化合物の加水分解により生成された下地層を設け、さらに結晶質の透明導電性薄膜を成膜した透明導電性フィルムである。しかしながら、これらの透明導電性フィルムは、後述のペン摺動耐久性試験に記載のポリアセタール製のペンを使用し、5.0Nの荷重で30万回の直線摺動試験後には、透明導電性薄膜に剥離が生じた結果、白化してしまい、ペン摺動に対する耐久性は不十分であった。
1. 透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面に結晶質の酸化インジウムを主とした透明導電膜が積層された透明導電性フィルムであって、透明導電膜の酸化インジウムの結晶粒径が30〜1000nmであり、かつ透明導電膜の結晶質部に対する非晶質部の比が0.00〜0.50であることを特徴とする透明導電性フィルム。
2. 透明導電膜が、酸化インジウムを主成分として、酸化スズを0.5〜8質量%含むことを特徴とする1.に記載の透明導電性フィルム。
3. 透明導電膜の厚みが、10〜100nmである1.又は2.に記載の透明導電性フィルム。
透過型電子顕微鏡下で透明導電膜層に観察される酸化インジウムの結晶粒について、すべての結晶粒の最長部を測定し、それらの測定値の平均値を結晶粒径とする。ここで、図1〜4に結晶粒の最長部に関する例を示す。
また、結晶質部に対する非晶質部の比を見積もる方法は、透過型電子顕微鏡下で観察したときの結晶質部と非晶質部の面積比から算出する。
前記の比が0.50以下であれば、結晶粒が非晶部の中に島状に浮いているような状態はとらず、結晶粒同士がすべてつながっている状態をとる。このような状態であれば、ペン摺動耐久試験を行っても、結晶粒同士でお互いを支えあうので、ペン摺動耐久性が非常に高いものが得られる。
〔1〕透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面に結晶質の酸化インジウムを主とした透明導電膜を成膜する方法において、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比が8.0×10−4〜3.0×10−3とし、かつ酸素分圧は8.0×10−3〜30×10−3Paとして、かつ成膜中はフィルム温度を80℃以下に保持して透明プラスチックフィルム上に透明導電膜を成膜することが望ましい。
まず1点目として、スパッタリングで、プラスチックフィルムに成膜をすると、フィルムが加熱され成膜雰囲気中の水分量が増加してしまい、到達真空度を測定したときの水分量より増加する。
酸素分圧を高い値にする意図は次の通りである。酸素分圧を高い状態で成膜すると、酸化インジウムの酸素欠損部分が補われるために、非常にエネルギー的に安定した結晶構造を持つ膜が得られることになる。
その結果、透明プラスチック基材上で結晶粒の発生確率が増大し、さらには結晶成長が容易になるために、非常に優れたペン摺動耐久性を発現することになる。ただし、酸素分圧を30×10−3Paより大きくすると表面抵抗が実用的な水準を超えてしまうので望ましくない。ここで表面抵抗の実用的な水準は、50〜1000Ω/□程度である。
また、直径が500nmより大きい微粒子を用いると、結晶粒が大きく成長し過ぎるため、透明導電膜を成膜したときに突起が発生しやすくなる。その突起をきっかけにして結晶粒も剥離し、透明導電性薄膜が破壊されてしまう場合がある。上記微粒子は透明プラスチックフィルムに塗布する硬化型樹脂層等に分散させて使用することが望ましい。ただし、硬化型樹脂層等の有機成分の総量に対して上記微粒子は1〜30質量%の割合で含むことが望ましい。
なお、本発明の透明導電性フィルムの全光線透過率は70〜95%が好ましく、表面抵抗は50〜1000Ω/□が好ましい。
本発明で用いる透明プラスチックフィルム基材とは、有機高分子をフィルム状に溶融押出し又は溶液押出しをして、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムであり、有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー等が挙げられる。
また、本発明で用いる前記硬化型樹脂は、加熱、紫外線照射、電子線照射等のエネルギー印加により硬化する樹脂であれば特に制限はなく、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。生産性の観点からは、紫外線硬化型樹脂を主成分とすることが好ましい。
(1)全光線透過率
JIS−K7105に準拠し、日本電色工業(株)製NDH−1001DPを用いて、全光線透過率を測定した。
JIS−K7194に準拠し、4端子法にて測定した。測定機は、三菱油化(株)製 Lotest AMCP−T400を用いた。
透明導電性薄膜層を積層したフィルム試料片を1mm×10mmの大きさに切り出し、導電性薄膜面を外向きにして適当な樹脂ブロックの上面に貼り付けた。これをトリミングしたのち、一般的なウルトラミクロトームの技法によってフィルム表面にほぼ平行な超薄切片を作製した。
この切片を透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM−2010)で観察して著しい損傷がない導電性薄膜表面部分を選び、加速電圧200kV、直接倍率40000倍で写真撮影を行った。
透過型電子顕微鏡下で観察される結晶粒において、すべての結晶粒の最長部を測定し、それらの測定値の平均値を結晶粒径とする。ここで、図1〜4に結晶粒の最長部に関する例を示す。
透過型電子顕微鏡下で観察したときの結晶質部と非晶質部の面積比から算出した。
透明導電性薄膜層を積層したフィルム試料片を1mm×10mmの大きさに切り出し、電子顕微鏡用エポキシ樹脂に包埋した。これをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定し、包埋した試料片の短辺に平行な断面薄切片を作製した。次いで、この切片の薄膜の著しい損傷がない部位において、透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM−2010)を用い、加速電圧200kV、明視野で観察倍率1万倍にて写真撮影を行って得られた写真から膜厚を求めた。
透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にプラズマCVD法で厚みが20nmのインジウム−スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜(日本曹達社製、S500)を用いた。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して、配置しタッチパネルを作製した。次にポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重をかけ、30万回(往復15万回)の直線摺動試験をタッチパネルに行った。この時の摺動距離は30mm、摺動速度は60mm/秒とした。この摺動耐久性試験後に、まず、摺動部が白化しているかを目視によって観察した。さらに、ペン荷重0.5Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗(可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値)を測定した。ON抵抗は10kΩ以下であるのが望ましい。
透明導電性フィルムを得る手法は上記の〔1〕の方法を採用している。
これらの実施例は表1に示した条件のもと、以下の通り実施した。
真空槽にフィルムを投入し、真空引きをした。真空引き時間が長いほどスパッタリング時の成膜中の水分圧が減少するので、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比は真空引き時間を変えることで制御した。
酸素導入後に不活性ガスとしてアルゴンを導入し全圧を0.5Paにした。
酸化スズを含む酸化インジウム焼結ターゲット、あるいは酸化スズを含まない酸化インジウム焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度で電力を投入し、DCマグネトロンスパッタリング法により、透明導電膜を成膜した。膜厚についてはフィルムがターゲット上を通過するときの速度を変えて制御した。また、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比については、ガス分析装置(インフィコン社製、トランスペクターXPR3)を用いて測定した。
透明導電膜を成膜したフィルムは、熱処理した後、表1に記載の測定を実施した(ただし、熱処理しないで測定したものもある)。 測定結果を表1に示した。
到達真空度5.0×10−4Paにした後、酸素を4.0×10−2Pa導入、次に不活性ガスとしてアルゴンを導入し全圧を0.15Paにした。イオンプレーティング法により透明導電膜を成膜した。成膜条件は、蒸着材料として5質量%の酸化スズを含む酸化インジウムを用い、放電電圧80V、ハース電位+40V、放電電流120Aでアーク放電を行い、透明導電膜を20nm成膜した。この透明導電性フィルムを大気圧下で150℃、1時間熱処理した。熱処理後の表面抵抗は410Ω/□であり、全光線透過率は89%であった。透過型電子顕微鏡で観察したところ、結晶粒径は500nm、結晶質部に対する非晶質部の比が0.33であった。ペン摺動部は透明で、ON抵抗は0.4kΩであった。
塗布液Aに5質量%の酸化スズを含む酸化インジウムからなる粒子サイズが30nmの微粒子を15質量%含有させ、前記二軸配向透明PETフィルムに塗膜の厚みが5μmになるように、調製した塗布液をマイヤーバーを用いて塗布した。80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042−5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm2)し、塗膜を硬化させ硬化型樹脂層を形成した。前記硬化型樹脂層を有するフィルムを真空槽に投入し、到達真空度5.0×10−4Paにした後、酸素を5.0×10−3Pa導入、次に不活性ガスとしてアルゴンを導入し全圧を0.5Paにした。5質量%の酸化スズを含む酸化インジウム焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度で電力を投入し、DCマグネトロンスパッタリング法により、前記コート層側に透明導電膜を20nm成膜した。この透明導電性フィルムを大気圧下で150℃、1時間熱処理した。熱処理後の表面抵抗は200Ω/□であり、全光線透過率は89%であった。透過型電子顕微鏡で観察したところ、結晶粒径は150nm、結晶質部に対する非晶質部の比が0.35であった。ペン摺動部は透明で、ON抵抗は0.4kΩであった。
表1に記載の条件で実施例1と同様に透明導電性フィルムを作製して評価した。結果を表1に示した。
(比較例17)
前記二軸配向透明PETフィルムに塗布液Aを塗膜の厚みが5μmになるように、調製した塗布液をマイヤーバーを用いて塗布した。80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042−5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm2)し、塗膜を硬化させ硬化型樹脂層を形成した。前記硬化型樹脂層を有するフィルムを真空槽に投入し、到達真空度5.0×10−4Paにした後、酸素を5.0×10−3Pa導入、次に不活性ガスとしてアルゴンを導入し全圧を0.5Paにした。5質量%の酸化スズを含む酸化インジウム焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度で電力を投入し、DCマグネトロンスパッタリング法により、前記コート層側に透明導電膜を20nm成膜した。この透明導電性フィルムを大気圧下で150℃、1時間熱処理した。熱処理後の表面抵抗は205Ω/□であり、全光線透過率は88%であった。透過型電子顕微鏡で観察したところ、結晶粒径は100nm、結晶質部に対する非晶質部の比が1.5であった。ペン摺動部は白化しており、ON抵抗は900kΩであった。
塗布液Aに5質量%の酸化スズを含む酸化インジウムからなる粒子サイズが600nmの微粒子を15質量%含有させ、前記二軸配向透明PETフィルムに塗膜の厚みが5μmになるように、調製した塗布液をマイヤーバーを用いて塗布した。80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042−5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm2)し、塗膜を硬化させ硬化型樹脂層を形成した。前記硬化型樹脂層を有するフィルムを真空槽に投入し、到達真空度5.0×10−4Paにした後、酸素を5.0×10−3Pa導入、次に不活性ガスとしてアルゴンを導入し全圧を0.5Paにした。5質量%の酸化スズを含む酸化インジウム焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度で電力を投入し、DCマグネトロンスパッタリング法により、前記コート層側に透明導電膜を20nm成膜した。この透明導電性フィルムを大気圧下で150℃、1時間熱処理した。熱処理後の表面抵抗は195Ω/□であり、全光線透過率は89%であった。透過型電子顕微鏡で観察したところ、結晶粒径は1200nm、結晶質部に対する非晶質部の比が0.25であった。ペン摺動部は白化しており、ON抵抗は900kΩであった。
Claims (3)
- 透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面に結晶質の酸化インジウムを主とした透明導電膜が積層された透明導電性フィルムであって、透明導電膜の酸化インジウムの結晶粒径が30〜1000nmであり、かつ透明導電膜の結晶質部に対する非晶質部の比が0.00〜0.50であることを特徴とする透明導電性フィルム。
- 透明導電膜が、酸化インジウムを主成分とし、酸化スズを0.5〜8質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の透明導電性フィルム。
- 透明導電膜の厚みが、10〜100nmである請求項1又は2いずれかに記載の透明導電性フィルム。
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