JP3627177B2 - 鋼管埋設杭 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に軟弱地盤に構造物を建築する際に基礎工事で使用される鋼管埋設杭に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、軟弱地盤に構造物を建築する場合の基礎工事は、構造物を支え難いために杭打ちを行ない、下層の堅固な地層に加重を伝達するようにしている。杭打ちは、長尺状の杭を構造物に合わせて複数本地中に埋設して行なわれる。杭を地中に埋設する方法としては、杭を杭打機で叩いて圧入したり、筒状の杭を回転させて埋設したりする。杭としては一般的に木材またはコンクリートあるいは鋼材が使用されているが、最近においては主に軽量で強度を有する鋼管が使用されることが多くなってきた。鋼管を埋設する場合には、特に、現場近隣の環境に対して静音化や無振動化等を図るために、鋼管の外周面に螺旋状の羽根を形成し、施工機械に支持された鋼管自体を回転させながら地中内に直接埋設する方法が採用されている。この鋼管は一般的に鋼管埋設杭と呼ばれる。この場合、鋼管埋設杭の先端部には掘削された土が内部に侵入しないように蓋が取付けられていた。
【0003】
従来、鋼管埋設杭11は、図10に示すように、パイプ状に形成された杭本体12の先端に閉塞蓋13を介して先細り状の掘削刃14が形成され、先端部外周面に掘削爪15が2か所形成されるとともに、掘削爪15の元部から杭11の元部側に沿って螺旋状の杭先端羽根16が形成されている。そして、鋼管埋設杭11を回転させると掘削爪15と掘削刃14によって土を掘削しながら、杭先端羽根16によって地中内を斜めに削りながら埋設されていく。この方法においては、前述のように施工時振動が著しく少なくまた騒音も極めて少ない。さらに狭い場所での深層支持杭の施工が可能であるとともに、施工時における排土がなく現場をきれいに保つことができる。しかも鋼管は軽量のため持ち運びも便利という利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、杭を埋設する場合に重要なことの一つには、埋設されるすべての杭の鉛直度を精度よく保たなければならないことにある。そのためには、埋設される鋼管埋設杭が地中に強固に支持されていなければならなかった。特に、回転して埋設する場合に小さな障害物によって芯ずれを起こしやすいので、施工時には特に注意を要しなければならず、従来の鋼管埋設杭11では、掘削爪刃14が杭の軸心に対して2枚対向する位置に配置されているものの、杭先端羽根16が1枚であるため、杭11が回転し始める際に慣性力でその杭心をずらしたまま掘削したり、掘削中に障害物に干渉して偏心したり、あるいは掘削したときの土が羽根の裏に貼着され回転力の反対に反力が発生して偏心したりして心ずれを起こしやすかった。その結果、埋設する鋼管埋設杭11が支柱に強固に支持されず傾き施工精度を低下させやすかった。しかも、従来の鋼管埋設杭は、掘削爪15が多種類に設定されていないことから、多種の地質に対応できなかった。
【0005】
また、埋設された鋼管埋設杭は、地中から杭を引き抜きしにくいように、埋設された鋼管埋設杭に摩擦力を付与して強固に地中に支持する必要があるとともに、垂直方向の急激な振動(例えば、直下型の地震)に対して基礎を保護するために免震可能に構成されていることが必要であった。
【0006】
従来の鋼管埋設杭11は、杭先端羽根16が1枚で杭本体12から垂直方向に延設されていることから、地中から杭を引き抜きやすく、垂直方向の振動を吸収することができなかった。
【0007】
この発明は、上述の課題を解決するものであり、回転して埋設する際に、埋設された鋼管埋設杭を強固に地中に支持することによって、心ずれを起こすことなくバランスよく掘削ができ、しかも、垂直方向の急激な振動を吸収することができて容易な構成で多種の地質に対応できるように構成された鋼管埋設杭を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかわる鋼管埋設杭では、上記の課題を解決するために以下のように構成するものである。即ち、
円環状に形成されて下端部が開口された杭本体と、前記杭本体の先端部に土を掘削する掘削刃と、と有して地中に埋設される鋼管埋設杭であって、
前記掘削刃が、前記杭本体の軸心に対して対称位置に一対形成され、
各掘削刃が、前記杭本体の外周面に形成された螺旋状の杭推進羽根と、前記杭推進羽根の先端に連接して配置されるとともに前記杭本体の先端面より突出して形成された掘削羽根と、を有して形成され、
前記掘削羽根が、前記杭推進羽根の延長線上に下傾して形成され、
前記掘削羽根における、前記杭本体の下面に対する傾斜角度が、前記杭推進羽根における、前記杭本体の下面に対する傾斜角度より大きく形成され、
前記掘削羽根に、前記杭本体内に配置される管閉塞部が配設されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記掘削羽根と前記管閉塞部とは、間に胴体部を配設して掘削羽根体を形成し、前記掘削羽根体が、前記杭本体と別体で形成された後、前記管閉塞部が、前記杭本体内の前記中間部位に配置されるとともに、前記掘削羽根が前記杭推進羽根の先端に連接されて前記掘削刃が構成されていることが望ましい。
【0010】
また好ましくは、前記管閉塞部の外周面の一部あるいは全部が、前記杭本体の内周面に固着されていればよい。
【0011】
さらに、前記管閉塞部に、前記杭本体内に挿通されるソイルセメント供給管の噴射ノズル用挿入口が形成されていてもよい。
【0012】
【発明の効果】
本発明の鋼管埋設杭は、回転された鋼管埋設杭が土を掘削する際、螺旋状に形成された一対の杭推進羽根は、土を斜め方向に削り鋼管埋設杭を地中に埋設する推進力を発揮させて鋼管埋設杭を進行させる。また、杭推進羽根に先端で連接された一対の掘削羽根は、杭本体の回転により杭本体の先端で土を掘削することになる。対称位置に配置された一対の杭推進羽根は、土を斜め方向に削ることから、バランスよく杭本体を推進させるとともに排土を出さず、また、杭推進羽根に連接された一対の掘削羽根は、杭推進羽根との連接部位が杭本体より大きな外径で形成されていることから、掘削する際に、掘削した土を杭本体内に侵入させにくく、さらに杭本体内に配置された管閉塞部により、土の他、地中内の水やヘドロを杭本体内に侵入させない。従って、杭本体内を空洞化させて杭本体周辺の土の圧密度を高めることによって、埋設された鋼管埋設杭を強固に支持できる。
【0013】
しかも、掘削羽根の外側面が、杭推進羽根の外側面から内方に向かって一対形成されていることから、対称位置にある一対の掘削羽根は回転バランスを取りながら地中内に侵入することができ、例え障害物があっても偏心することなく進むことができる。そのため、鋼管埋設杭は鉛直度を保ちながら埋設される。
【0014】
さらに、対称位置にある杭推進羽根の先端から延設された掘削羽根は、杭本体の下方で両側に開くように配置されることから、垂直方向の急激な振動(例えば、直下型地震)に対してばね作用を有することとなり、免震効果を得ることができる。従って、掘削羽根の免震効果により基礎を保護することが可能となる。
【0015】
また、この鋼管埋設杭は、杭推進羽根に連接される掘削羽根体が、杭本体と別体で製作できることから、部品点数を少なくして管理を容易にできるとともに、地質に適する掘削羽根を適宜選定して現地作業で鋼管埋設杭を製作することもできる。
【0016】
さらに、管閉塞部の外周面が、杭本体の内周面に、一部または全部を固着していれば、埋設された杭本体の強度を向上することができる。
【0017】
また、上記のように構成された鋼管埋設杭を地中に埋設した後、筒状の杭本体内に、ソイルセメント球根を構築させる場合、管閉塞部に形成された挿入口により、ソイルセメントの噴射ノズルを挿通させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
本形態の鋼管埋設杭(以下、埋設杭という)1は、図1〜3に示すように、先端面2aに開口部2bを有する円筒状の杭本体2と、杭本体2の先端部に形成される一対の掘削刃3と、を有して構成されている。一対の掘削刃3は、杭本体2の軸心に対して相対する位置に形成され、それぞれ杭推進羽根4と、杭推進羽根4と一体的に固着される掘削羽根5と、を有して形成され、さらに、杭本体2の元部には埋設杭1を回転するための回転機に係合する係合突起部6が形成されている。
【0020】
杭推進羽根4は、杭本体2の外径の約2倍程の大きさで形成されるとともに杭本体2の先端部外周面に沿って杭本体2の先端面2aに対して約10°前後の傾斜角度α1を有して杭本体2の約半周分を螺旋状に形成されるように配置されている。なお、杭推進羽根4の長さは特に限定するものではなく、杭本体2の半周以上、あるいは半周以下に形成されていてもよい。
【0021】
各杭推進羽根4、4の先端部に固着されるそれぞれの掘削羽根5、5は、本形態においては、図2または図4に示すように、矩形状に形成された1枚の胴体部51の一端に連接されて一体的に形成された掘削羽根体50として杭本体2に固着されている。胴体部51は筒状の杭本体2の内径と略同一寸法の幅を有して杭本体2内に挿入されて杭本体2に溶着され、各掘削羽根5、5はお互いに相対する方向に向かって胴体部51から所定角度を有して屈折するように形成されるとともに、図3中、各掘削羽根5、5は、上面5a、5aの幅寸法がそれぞれ杭推進羽根4、4の幅寸法と略同一に形成され、上面5a、5aから下面5b、5bに向かって軸心側に傾斜する傾斜面5c、5cを有して形成されている。従って、各掘削羽根5、5は台形状に形成される。
【0022】
一端に掘削羽根5、5が固着された胴体部51の他端には、管閉塞壁52が固着されている。管閉塞壁52は、杭本体2内に挿入して、掘削羽根5によって掘削された土、または水あるいはヘドロ等を杭本体2内に侵入するのを防止するために、杭本体2内を覆うように、胴体部51に対して直交するように形成されている。
【0023】
掘削羽根5が胴体部51と一体的に形成された掘削羽根体50は強度を有するために、掘削する際に破損するおそれがなく使用でき、また、2枚の掘削羽根5、5を1個の部品として扱えるので部品管理を容易にすることができる。
【0024】
さらに、掘削羽根5の、胴体部51からの屈折角度(杭本体2に固着した場合には杭本体2の先端面2aに対する角度)α2は、掘削抵抗を小さくして掘削しやすくするために前述の杭推進羽根の傾斜角度α1より大きく設定されることが望ましく、また、地質の種類によって各種の角度に設定される。例えば、砂質の場合には約15〜20°ぐらいが適当であり、粘土質の場合では約20〜25°、固結シルトの場合では約25〜30°が適当である。従って、地質が軟弱であればあるほど屈折角度を小さく形成すればよい。
【0025】
掘削羽根体50の胴体部51を杭本体2に溶着する際、図4中に示す掘削羽根体50を、各掘削羽根5、5の上面5a、5aを杭推進羽根4、4の先端部に連接するように合わせて胴体部51を杭本体2の下端部に形成された開口部2b内に挿入して溶着する。これによって、杭推進羽根4と掘削羽根5とが一体的に形成され掘削刃3を構成することになる。
【0026】
この際、杭推進羽根4の杭本体2の先端面2aに対する傾斜角度α1は前述のように約10°前後であるため、掘削羽根5は杭推進羽根4の延長線上に対して、図1中、下方に傾斜するように形成される。さらに、杭推進羽根4の外径と略同一径の下面5aを有する掘削羽根5が、杭本体2の先端面2aより前方に突出された位置で土を掘削するため、掘削された土は杭本体2の開口部2b内に侵入しにくくなる。
【0027】
管閉塞壁52は、図2に示すように、杭本体2内において推進羽根4、4の上端部とほぼ同一高さかあるいはそれより上方に位置するように配置され、杭本体2の内周面に隙間を有して配置されていてもよく、あるいは管閉塞壁52の外周面の一部あるいは全部が、杭本体2の内周面に固着するように配置されていてもよい。杭本体2の内周面に一部または全部が固着されていれば、埋設された杭本体2の強度を向上させることができる。従って、管閉塞壁52の配置によって、土はさらに杭本体2内に侵入しにくくなり、また土の他、水やヘドロも杭本体2内に侵入されにくくなる。これによって、杭本体2内は空洞化ができて、杭本体2周辺の土の圧密度が向上して杭本体を強固に支持することができる。
【0028】
なお、管閉塞壁52は、杭本体2内の空間部を1か所でほぼ塞ぐものであればその形状は限定されるものではなく、図5に示すように丸板状の管閉塞壁52Aでもよく、また、図6に示すように矩形板状の管閉塞壁52Bでもよい。矩形板状の管閉塞壁52Bの場合では、4頂点部を杭本体2の内周面に溶接で固着すれば、杭本体2の強度を向上することができて望ましい。
【0029】
さらに、図7に示すように、三角板状の管閉塞壁52Cを形成して3頂点部を杭本体2内に溶接してもよく、図8に示すように丸板状に複数(図例では2か所)の切欠孔53Dを形成した管閉塞壁52Dでもよい。
【0030】
上記埋設杭1を埋設した後で、セメント球根を構築する場合には、管閉塞壁52は、図6〜8に示すような、管閉塞壁52と杭本体2の内周面との間に空間部を有しているものを使用する。セメント球根を構築する際に、埋設された杭本体2内にソイルセメントを供給する供給管が挿通され、ソイルセメント供給管の先端部には噴射ノズルが装着されている。この噴射ノズルを、図6における4か所の空間部(挿入口)53B、または図7における空間部53C(挿入口)あるいは図8における切欠孔53D(挿入口)のいずれかに挿入して、埋設された掘削羽根5、5の裏側から供給することとなる。
【0031】
従って、各種の屈折角度で形成された掘削羽根5を有する各掘削羽根体50を予め備えていれば、施工工事前に予め行なわれた地質調査に基づいて適宜な掘削羽根体50を固着した埋設杭1を用意することができる。掘削する地質に適した埋設杭1を埋設することにより、掘削時、埋設杭1の回転抵抗値を従来の1枚刃より小さいトルクで施工することができる。また、この埋設杭1は、予め杭推進羽根4を固着した杭本体2に、地質に適する掘削羽根5を別に持ち運び現場で製作することができる。
【0032】
しかも、杭本体2の下方で両側に開くように配置された掘削羽根5、5は、垂直方向の急激な振動(例えば、直下型地震)に対してばね作用を有することとなり、免震効果を得ることができる。従って、掘削羽根5、5の免震効果により、基礎を保護することが可能となる。
【0033】
この免震効果は、鋼管径(杭本体2の外径)によって掘削羽根の厚み寸法を対応させることで、それぞれの鋼管ごとにおいてさらに増長することができる。例えば、JIS規格で規定されている杭本体径が114.3mmの場合では、掘削羽根5の厚みが9mmであればよく、また杭本体径が139.8mmの場合では、掘削羽根5の厚みが13mm、杭本体径が165.2mmの場合では、掘削羽根5の厚みが16mm…というように、杭本体径が大きくなるにつれて、掘削羽根5の板厚を大きくすればよい。
【0034】
上記のように形成された埋設杭1は、図9に示す杭打ち手順により、地中に埋設される。なお、本形態の杭打ちは複数の杭をつなぎ合わせて1本の埋設杭1を形成するように行なわれる。もちろん1本の長い埋設杭1を1回で杭打ちすることもできる。まず、持ち運ばれた埋設杭1は図示しない施工機械にセットされ、図9(a)に示すように、埋設杭1を吊り込んで杭心に合わせてセットする建て込みが行なわれる。建て込みが行なわれた後、図9(b)のように埋設杭1を固定する。この固定は、施工機械に装着された振れ止め装置7を杭本体2に取り付けることによって行なわれる。
【0035】
次に、図9(c)のように埋設杭1の回転埋設が行なわれる。埋設杭1の回転前に埋設杭1の鉛直度を確認するとともに一対の掘削刃3の中心位置を確認する。埋設杭1の元部側一端は施工機械の減速機モータ8に取付けられ、減速機モータ8の駆動により埋設杭1は正回転され地中に埋設される。この際、杭本体2の回転とともに螺旋状に形成された一対の掘削羽根5は、土を斜めの方向から削りとるとともに、杭推進羽根4の推進力によって、埋設杭1は、地中内を奥に向かって押し進み埋設される。
【0036】
一方、一対の掘削羽根5は、先端を先細り状に形成されているため、回転することによって、土を掘削しながら土中を奥深く進行する。この際、元部側の上面5aが杭推進羽根4の外径と略同一の径であり、杭本体2の外径より大きい掘削羽根5は、掘削した土を掘削羽根5の外側に排土して、土を杭本体2の内部に挿入させず埋設杭1の回りを汚すことがなく土中深く進行することとなる。
【0037】
従って、対称位置に、一対配置されて先細り状の掘削羽根5が、土に対して抵抗を少なくして押し進めるとともに、心ずれを起こしにくいために、例え障害物があっても垂直方向に進行することができる。
【0038】
なお、掘削羽根5の杭本体2の下面に対する傾斜角度は、掘削される地質により、適宜設定されている。
【0039】
1本目の埋設杭1の元部側端面が地表面より僅かに上方の位置まで埋設されれば、図9(d)に示すように2本目の埋設杭1Aを減速機モータにセットし1本目の埋設杭1に溶接して継ぎ足しを行なう。なお2本目の埋設杭1Aには、掘削刃は形成されておらず、一本目の杭本体2の上端面に2本目の杭本体2Aの下端面を当接させた状態で溶接することとなる。
【0040】
この際、2本目の埋設杭1Aの鉛直度を確認して溶接作業を行なう。そして、前述と同様に埋設杭1を回転させてさらに深く埋設杭1を埋設する。複数の埋設杭1を継ぎ足して所定の深さまで埋設杭1が埋設されれば、図9(e)に示すように、減速機モータ8を逆転させて埋設杭1の係合突起部6(図1参照)を係合解除させた後、減速機モータ8を埋設杭1から外して埋設完了となる。
【0041】
上記のように、埋設杭1に対称位置に配置された一対の杭推進羽根4は,土を斜め方向に削ることから、バランスよく杭本体2を推進させるとともに排土を出さず、杭推進羽根4に連接された一対の掘削羽根5は、杭推進羽根4との連接部位が杭本体2より大きな外径で形成されていることから、掘削する際に、掘削した土を杭本体2内に侵入させにくく、さらに杭本体2内に配置された管閉塞壁52により、土の他、地中内の水やヘドロを杭管内に侵入させない。従って、杭本体2内を空洞化させて杭本体2周辺の土の圧密度を高めることによって、埋設された埋設杭1を強固に支持できる。
【0042】
しかも、掘削羽根5、5の外側面が、杭推進羽根4、4の外側面から内方に向かって一対形成されていることから、対称位置にある一対の掘削羽根5、5は回転バランスを取りながら地中内に侵入することができ、例え障害物があっても偏心することなく進むことができる。そのため、埋設杭1は鉛直度を保ちながら埋設される。
【0043】
さらに、対称位置にある杭推進羽根4、4の先端から延設された掘削羽根5、5は、杭本体2の下方でそれぞれ両側に開くように配置されることから、垂直方向の急激な振動(例えば、直下型地震)に対してばね作用を有することとなり、免震効果を得ることができる。従って、掘削羽根5の免震効果により基礎を保護することが可能となる。
【0044】
また、この埋設杭1は、杭推進羽根4に連接される掘削羽根体5が、杭本体2と別体で製作できることから、部品点数を少なくして管理を容易にできるとともに、地質に適する掘削羽根5を適宜選定して現地作業で埋設杭1を製作することもできる。
【0045】
さらに、管閉塞壁52の外周面が、杭本体2の内周面に、一部または全部を固着していれば、埋設された杭本体2の強度を向上することができる。
【0046】
また、上記のように構成された埋設杭1を地中に埋設した後、筒状の杭本体2内に、ソイルセメント球根を構築させる場合、管閉塞壁52に形成された挿入口により、ソイルセメントの噴射ノズルを挿通させることができる。
【0047】
なお、上記形態の埋設杭1は一形態を示すものであり、上記形態に限定されるものではない。例えば、管閉塞壁52を杭本体2の先端面に固着させてもよく、また、上記の掘削羽根5が2枚一体ではなくそれぞれの杭推進羽根4に傾斜角度を有して別々に溶着されるように形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一形態による鋼管埋設杭を示す正面図
【図2】図1における要部断面図
【図3】図1における底面図
【図4】図2における掘削羽根体を示す斜視図
【図5】図2における管閉塞壁の一形態を示す断面図
【図6】同管閉塞壁の別の形態を示す断面図
【図7】同管閉塞壁の別の形態を示す断面図
【図8】同管閉塞壁のさらに別の形態を示す断面図
【図9】図1の鋼管埋設杭の施工手順を示す作用図
【図10】従来の鋼管埋設杭を示す一部正面図
【符号の説明】
1…鋼管埋設杭
2…杭本体
2b…開口部
3…掘削刃
4…杭推進羽根
5…掘削羽根
50…掘削羽根体
51…胴体部
52…管閉塞壁
53…空間部(挿入口)

Claims (4)

  1. 円環状に形成されて下端部が開口された杭本体と、前記杭本体の先端部に土を掘削する掘削刃と、と有して地中に埋設される鋼管埋設杭であって、
    前記掘削刃が、前記杭本体の軸心に対して対称位置に一対形成され、
    各掘削刃が、前記杭本体の外周面に形成された螺旋状の杭推進羽根と、前記杭推進羽根の先端に連接して配置されるとともに前記杭本体の先端面より突出して形成された掘削羽根と、を有して形成され、
    前記掘削羽根が、前記杭推進羽根の延長線上に下傾して形成され、
    前記掘削羽根における、前記杭本体の下面に対する傾斜角度が、前記杭推進羽根における、前記杭本体の下面に対する傾斜角度より大きく形成され、
    前記掘削羽根に、前記杭本体内に配置される管閉塞部が配設されていることを特徴とする鋼管埋設杭。
  2. 前記掘削羽根と前記管閉塞部とは、間に胴体部を配設して掘削羽根体を形成し、前記掘削羽根体が、前記杭本体と別体で形成された後、前記管閉塞部が、前記杭本体内の上下両端間の中間部位に配置されるとともに、前記掘削羽根が前記杭推進羽根の先端に連接されて前記掘削刃が構成されることを特徴とする請求項1記載の鋼管埋設杭。
  3. 前記管閉塞部の外周面の一部あるいは全部が、前記杭本体の内周面に固着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の鋼管埋設杭。
  4. 前記管閉塞部に、前記杭本体内に挿通されるソイルセメント供給管の噴射ノズル用挿入口が形成されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の鋼管埋設杭。
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