JP3626512B2 - 電気絶縁性基板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は可撓性を有する電気絶縁性基板に関する。詳しくは可撓性を有し、機械的な加工が容易に行える配線用の電気絶縁性基板に関する。さらには、たとえば半導体素子から発熱する熱を放熱フィン等へ放散させる電気絶縁スペーサー等としても使用され得る電気絶縁性基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、各種電子機器に多用されている配線用の電気絶縁性基板の主なものは、紙基材フェノール樹脂基板、ガラス布基材エポキシ樹脂基板やガラス布/紙複合基材エポキシ樹脂基板などである。これらの基板は、安価である、加工し易い、寸法精度が良い等の長所をもつことから幅広く使われている。しかしながら、これらの基板は樹脂を含有するため、熱伝導性が低い、耐熱性が低いなどの性質をもつことから、たとえば高電圧半導体素子から発生する大量の熱を速やかに放散させるための基板としては使用困難である。
【0003】
他方、高耐熱性の基板としては、従来から熱伝導率の高いセラミックスを用いた基板が一部で使われている。熱伝導率の高いセラミックスとしては、アルミナ、ベリリア、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、マグネシアなどがある。これらのセラミック基板は高い放熱性を有するということの他にも、機械的強度が高い、化学的耐久性が高い、などの長所も併せ持っている。しかしながら、これらセラミック基板は脆い(可撓性を有せず、機械的な衝撃に弱い)、硬くて加工しにくい等の本性的な欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、可撓性を有するが故に機械的な衝撃力に対する耐久性が高く、かつ熱伝導性が良好な電気絶縁性基板を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は無機質と有機質が化学的に結合した無機・有機融合体中に平均粒径が0.05〜5μmのセラミックスの粒子が体積分率で50%以上、90%未満分散した複合構造体からなる電気絶縁性基板である。さらに、該無機・有機融合体が、Si−O−Si結合からなる無機ポリマーの骨格をSi(R)n(O−)4-n(Rはアルキル基、n=1〜3)で置換したものであることを要旨とする。
また、セラミックスの粒子がアルミナ、マグネシア、ベリリア、炭化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウムの中から選ばれた1種ないし2種以上の粒子である電気絶縁性基板を要旨とする。
【0006】
【作用】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の電気絶縁性基板は、無機質と有機質が分子レベルで化学結合したマトリックス中に所定のセラミックスが分散した複合構造体からなる板状のものである。後述するように、本複合体は著しい可撓性(変形能、あるいはフレキシビリティ)を有することを特徴とする故に、使用する際には曲げたり、部分的に凹凸を機械的につけるなどして使用することが可能である。また、セラミックス粒子を含むので、ある程度の硬さを持つ。
【0007】
本発明の電気絶縁性基板は、上述のような複合構造体からできているが、この基板が著しい可撓性を有する所以は、該複合構造体が無機質の中に有機質を化学結合でハイブリッドさせているマトリックスを含んでいるためであり、基本的にはこの有機質が本来持っている可撓性によっている。また、該複合構造体は該マトリックスとともに、このマトリックス中に分散・結合しているセラミックス粒子からも成り立っており、このセラミックス粒子が本発明の電気絶縁性基板にある程度の硬さを与えるとともに、良好な熱伝導特性も与えている。
【0008】
また、本発明中にある無機・有機融合体はSi−O─Si結合からなる無機ポリマーの骨格をSi(R)n (O−)4-n で置換している。Si−O─Si結合が無機成分を表しており、アルキル基(R)が有機成分を表している。Rとは、例えば、−CH3 、−C2 H5 、−C3 H7 、−C4 H9 等である。
次に、本発明中にあるセラミックスの粒子は、アルミナ、マグネシア、ベリリア、炭化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウムの中から選ばれた1種ないし2種以上の粒子である。これらのセラミックスは電気的な絶縁性が高く、かつ多くのセラミックスのうちで高い熱伝導率を有することから、本発明の主旨である電気絶縁性基板を構成する前記複合構造体の構成成分としてふさわしいものである。
【0009】
セラミックスの粒子径は0.05〜5μmの範囲が好ましい。0.05μm未満の粒子では、非常に微細であるために凝集しやすく、均一に分散することが困難である。5μmを越える粒子では溶液中での沈降が速いため、この場合にも均一に分散することが困難である。
本発明中にある複合構造体を構成する成分のうち、セラミックス粒子の体積分率は50%以上、90%未満である。50%未満の場合は本発明の電気絶縁性基板の熱伝導率が充分に高くならず、また硬度も低下するので放熱板として実用上好ましくない。また、90%以上の場合は可撓性が低下し、機械的な加工性も低下する。
【0010】
以下に本発明の電気絶縁性基板を好適に製造し得る方法の一例について述べる。平均粒径0.3μmのアルミナ粒子を用意する。次いで、テトラエトキシシランを加水分解してできたSi(OH)4 とポリジメチルシロキサンを前記のアルミナ粒子の存在下にて脱水および縮合反応させ、無機質と有機質とが分子レベルで融合した粘稠なゾルをつくる。このゾルの粘度を調整後、ドクターブレード法により厚み約1mmの板状に成形する。この板をさらに脱水・縮合・乾燥させ、ゲル状の板とする。この板をさらに300℃で熱処理して、目的とする電気絶縁性基板を得ることができる。
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0011】
【実施例】
表1に示した各種セラミックス粉を調整・用意した。次いで、テトラエトキシシランを加水分解してできたSi(OH)4 とポリジメチルシロキサンを、溶液中によく分散させたセラミックス粒子の存在下にて脱水および縮合反応させ、無機質と有機質とが分子レベルで融合した粘稠なゾルをつくった。このゾルの粘度を調整後、ドクターブレード法により厚み約1mmの板状に成形した。この板をさらに脱水・縮合・乾燥させ、ゲル状の板とした。この板をさらに300℃で熱処理して、目的とする電気絶縁性基板を得た。
これらの基板の可撓性の評価を次のようにして行った。すなわち、厚み1mmで20mmφの板状に加工した試料を、直径200mmの鋼製ロール表面に密着するように押しつけて、破損、クラック等の有無を調べる方法である。この試験を行った結果、これらの基板はどれも破損せず、またクラックも認められなかった。
次に、これらの基板の熱伝導率をレーザーフラッシュ法にて測定した。この結果を表1に示す。セラミックス単体の熱伝導率(例えば、アルミナで約25W/mK、窒化アルミニウムで約150W/mKなど)と比較すると小さいが、汎用基板であるガラス−エポキシ樹脂基板の熱伝導率(約0.2W/mK)と比較すると大きい。また、これらの基板の体積抵抗率を直流2端子法で測定したところ、表1に示したように、すべての基板が1013Ω・cm以上の体積抵抗率を有しており、電気絶縁性基板として充分な絶縁性を示した。
【0012】
【表1】
【0013】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の電気絶縁性基板は可撓性が高く、かつ熱伝導率が高いので、高電圧半導体素子用の電気絶縁性基板をはじめとして、熱放散性が要求される配線用の基板や、電気絶縁スペーサー等としても幅広く利用することができ、その工業的な効果が大きい。
Claims (3)
- 無機質と有機質が化学的に結合した無機・有機融合体のマトリックス中に平均粒径が0.05〜5μmのセラミックスの粒子が体積分率で50%以上、90%未満分散した複合構造体からなる、電気絶縁性基板。
- 無機・有機融合体が、Si−O−Si結合からなる無機ポリマーの骨格をSi(R)n(O)4-n基(Rはアルキル基、n=1〜3)で置換したものであることを特徴とする請求項1記載の電気絶縁性基板。
- セラミックスの粒子が、アルミナ、マグネシア、ベリリア、炭化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウムの中から選ばれた1種ないし2種以上の粒子であることを特徴とする請求項1記載の電気絶縁性基板。
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