JP3626416B2 - シート体案内装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート体案内装置に関し、さらに詳しくはシート体案内装置に設けられる蓋を、シート体の送給トレイとして使用することのできるシート体案内装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シート体案内装置は、シート体であるたとえば記録紙を装置本体に案内する装置であって、画像情報を記録紙に記録する画像形成装置などに使用されている。インクジェットプリンタおよびレーザビームプリンタなどの画像形成装置は、情報処理技術に関する電子部品および光デバイスなどの技術開発の進展に伴って小型化が進んでいる。画像形成装置の小型化を図る先行技術は、たとえば特開平3−192054公報などに開示されている。この先行技術は、画像形成装置の装置本体に設けられる蓋を、給紙トレイとして兼用する。すなわち、蓋を閉じたとき、蓋は装置の外装の一部となり、蓋を開けたとき、蓋を給紙トレイとして利用できるというものである。
【0003】
小型化された画像形成装置の蓋を給紙トレイと兼用する場合、画像形成装置よりも大きい寸法の記録紙に対して、蓋が給紙トレイとして充分に機能するように、蓋の長さを延長して記録紙を支持するとともに装置本体に案内する案内手段が設けられる。
【0004】
図11は従来の画像形成装置1の構成を簡略化して示す透視図であり、図12はもう一つの従来の画像形成装置2の構成を簡略化して示す透視図である。図11に示す従来の画像形成装置1は、装置本体3と、装置本体3に形成され記録紙が搬送される搬送口4に開閉自在に設けられる蓋5とを含む。また、装置本体3には、記録紙を排出する排出口6が形成される。図11(a)は、蓋5が搬送口4を閉じた位置にあり、蓋5は、画像形成装置1の外装の一部を形成している。図11(b)は、蓋5が開動作中であることを示し、蓋5の装置本体3の内方側には、案内部材7が設けられている。図11(c)は、蓋5が搬送口4を開いた位置にあり、蓋5を開いた後、案内部材7が引出されることによって、記録紙を支持し装置本体3に案内する状態になる。この状態で、案内部材7は、蓋5の記録紙搬送方向の長さを延長し、給紙トレイとして使用される。案内部材7を装置本体3内に収容する場合は、前述の動作を逆の順序で行う。
【0005】
図12に示すもう一つの従来の画像形成装置2は、前記従来の画像形成装置1に類似するけれども、異なる点は、蓋8が開動作中である図12(b)に示すように、蓋8には、案内部材が予め設けられていない。したがって、蓋8が搬送口4を開いた位置にある図12(c)に示すように、蓋8を開いた後、画像形成装置2とは別に準備される案内部材9を、蓋8に装着する。案内部材9の蓋8への装着は、たとえば次のように行われる。蓋8の装置本体3内方側表面に間隔をあけて、記録紙の搬送方向に平行に延びて設けられた一対の支持片10と、蓋8の装置本体3内方側表面とによって形成される支持溝に案内部材9を挿入して装着する。このことによって、案内部材9は、記録紙を支持し装置本体3に案内する状態になる。この状態で、案内部材9は、蓋8の記録紙搬送方向の長さを延長し、給紙トレイとして使用される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来の画像形成装置1,2には、以下のような問題点がある。蓋5,8を給紙トレイとして使用するためには、案内部材7,9によって蓋5,8の長さを、記録紙の搬送方向に延長することが必要である。案内部材7によって蓋5の長さを延長するには、案内部材7を蓋5から引出す動作を手動で行わなければならず、また案内部材9によって蓋8の長さを延長するには、案内部材9を蓋8に形成される支持溝に装着する動作を手動で行わなければならない。
【0007】
さらに、案内部材7が、蓋5から引出されたまま、および案内部材9が蓋8に装着されたままでは、案内部材7,9が蓋5,8から突出した状態であり装置本体3にあたるので、蓋5,8が搬送口4を開閉する動作の妨げとなる。
【0008】
したがって、蓋5,8が搬送口4を開閉する動作を可能にするためには、蓋5,8の長さを延長する際とは、逆の動作によって案内部材7を、蓋5に挿入し、または蓋8から取外さなければならない。すなわち、蓋5,8を給紙トレイとして使用できるけれども、使用するために必要とされる案内部材7を蓋5から引出しまたは蓋5に挿入するという動作、案内部材9を蓋8に装着または取外す動作を、蓋5,8の開閉の都度行わなければならず、動作が煩雑になるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、蓋の開閉動作と連動して蓋の長さを変更可能にし、蓋をシート体の送給トレイとして使用することのできるシート体案内装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シート体が案内される装置本体と、
装置本体に形成される搬送口を予め定める横に延びるヒンジピンによって開閉可能な蓋と、
蓋は、搬送口を閉じた位置と、予め定める角度で傾斜して搬送口を開いた位置となる2つの安定した位置をとり、
蓋に設けられ、蓋に重なった第1状態と、ヒンジピンから遠ざかる方向に蓋から突出してシート体を案内して支持する第2状態との2つの状態をとることができる案内部材と、
蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動し、蓋が搬送口を閉じた位置では案内部材を蓋に重なった前記第1状態に保ち、蓋が搬送口を開いた位置では案内部材を蓋から突出した前記第2状態に駆動する駆動手段とを含み、
前記駆動手段は、蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動してシート体の搬送方向に可逆的に移動するラック部材を備え、
前記案内部材は、蓋の装置本体内方側表面に突出して設けられる軸の軸線まわりに角変位自在に設けられ、この案内部材にはセクタ歯車が形成され、
案内部材のセクタ歯車とラック部材とが噛合し、ラック部材が移動することによって、案内部材を第1状態から第2状態および第2状態から第1状態に駆動することを特徴とするシート体案内装置である。
【0015】
本発明に従えば、蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動し、蓋が搬送口を閉じた位置では案内部材を蓋に重なった第1状態に保ち、蓋が搬送口を開いた位置では案内部材を蓋から突出してシート体を案内して支持する第2状態に駆動する駆動手段を含む。このことによって、案内部材は、蓋の開動作に連動し、第1状態から第2状態に移動することができ、また蓋の閉動作に連動し、第2状態から第1状態に移動することができる。したがって、蓋の開閉動作という簡単な操作のみで、蓋をシート体の送給トレイとして使用することが可能になる。また、駆動手段は、蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動してシート体の搬送方向に可逆的に移動するラック部材を備え、案内部材は、蓋の装置本体内方側表面に突出して設けられる軸の軸線まわりに角変位自在に設けられ、案内部材に形成されるセクタ歯車とラック部材とが噛合し、ラック部材が移動することによって案内部材を角変位させるので、第1状態または第2状態のいずれの状態へも案内部材を確実に駆動することができる。
【0016】
また本発明は、ラック部材は、
蓋の装置本体内方側表面に沿ってシート体の搬送方向に細長く延びる延在部と、
蓋の装置本体内方側表面から遠ざかる方向に屈曲する基端部とを備え、
ラック部材の基端部付近には、蓋の装置本体内方側表面に平行、かつシート体の搬送方向に垂直に延びる支持突起が形成され、
装置本体は、ラック部材を支持するラック支持ブラケットを備え、ラック支持ブラケットには支持孔が形成され、
前記支持突起は、前記支持孔に遊嵌されることを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、ラック部材は基端部を備え、蓋の装置本体内方側表面から遠ざかる方向に屈曲する基端部付近には、支持突起が形成され、支持突起は、装置本体に備わるラック支持ブラケットに形成される支持孔に遊嵌される。このことによって、簡単な構成でラック部材をシート体の送給方向に移動することが可能になるので、蓋の開閉動作に連動して容易にラック部材を移動し、ラック部材の移動によって案内部材を駆動することができる。
【0018】
また本発明は、支持孔は、ラック支持ブラケットにV字状に形成され、
V字状に形成される支持孔の角部が、ヒンジピンに最も近接するように、ラック支持ブラケットが装置本体に設けられ、
支持孔には、少なくとも休止凹部と、作動凹部と、展開凹部とがあり、
休止凹部は、V字状をなす支持孔の一端部の位置にあり、
作動凹部は、V字状をなす支持孔の角部の位置にあり、
展開凹部は、V字状をなす支持孔の他端部の位置にあり、
支持孔に遊嵌される支持突起は、蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動して、休止凹部から作動凹部をへて展開凹部へ移動し、または展開凹部から作動凹部をへて休止凹部へ移動することによって、ラック部材をシート体の搬送方向に移動することを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、支持孔に遊嵌される支持突起は、蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動し、ラック支持ブラケットにV字状に形成された支持孔内を移動することによって、ラック部材をシート体の搬送方向に移動する。したがって、簡単な機械的構造によってラック部材のシート体搬送方向の移動を実現することができるので、コストを低減することができ、また駆動手段の不具合が起こりにくく装置寿命を長くすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態のシート体案内装置である画像形成装置21の構成を簡略化して示す透視図であり、図2は図1に示す蓋26が搬送口24を閉じた位置にある状態の正面図であり、図3は図1に示す蓋26が搬送口24を開いた位置にある状態の正面図であり、図4は図1に示す画像形成装置21の構成を簡略化して示す概略断面図である。
【0021】
シート体案内装置である画像形成装置21は、たとえばインクジェットプリンタであり、シート体である記録紙22が案内される装置本体23と、装置本体23に形成される搬送口24を予め定める横に延びるヒンジピン25によって開閉可能な蓋26とを含み、蓋26は、搬送口24を閉じた位置と、90度を超える予め定める角度θ1で傾斜して搬送口24を開いた位置となる2つの安定した位置をとる。
【0022】
また画像形成装置21は、蓋26に設けられ、蓋26に重なった第1状態と、ヒンジピン25から遠ざかる方向に蓋26から突出して記録紙22を案内して支持する第2状態との2つの状態をとることができる案内部材27a,27bと、蓋26のヒンジピン25まわりの角変位に連動し、蓋26が搬送口24を閉じた位置では案内部材27a,27bを蓋26に重なった前記第1状態に保ち、蓋26が搬送口24を開いた位置では案内部材27a,27bを蓋26から突出した前記第2状態に駆動する駆動手段28とを含む。
【0023】
蓋26は、硬質の合成樹脂からなり、略矩形状を有する。蓋26の装置本体23内方側の表面29には、表面29から突出して一対の軸30a,30bが設けられる。以後、蓋26の装置本体23内方側の表面を内面29と呼ぶ。蓋26の長手方向の一辺部31には、蓋26に連なってヒンジピン25が挿通される挿通部32a,32bが設けられる。ヒンジピン25は、挿通部32と、後述する装置本体23に設けられる蓋支持ブラケット50a,50bに形成されるピン孔51a,51bとを挿通し、蓋26を開閉可能に装置本体23に装着する。このことによって、蓋26は、前述のように搬送口24を閉じた位置と、予め定められる90度を超える角度θ1で傾斜して搬送口24を開いた位置となる2つの安定した位置をとることができる。蓋26は、搬送口24を閉じた位置にあるとき、画像形成装置21の外装の一部を構成する。
【0024】
案内部材27a,27bは、硬質の合成樹脂からなるアーム状の平板部材である。案内部材27a,27bの一方の端部付近には、案内部材27a,27bを貫通する軸孔33a,33bが、それぞれ形成される。また案内部材27a,27bの一端部付近の外縁には、歯が刻まれてセクタ歯車34a,34bが形成される。案内部材27a,27bに形成される軸孔33a,33bに、蓋26の内面29に設けられた軸30a,30bがそれぞれ挿通され、案内部材27a,27bは、軸30a,30bの軸線まわりに角変位自在に装着される。案内部材27a,27bが、軸30a,30bに装着された後、軸30a,30bには図示しない抜け止め部材、たとえばeリングなどが嵌められて、案内部材27a,27bの抜け止めがされる。
【0025】
駆動手段28は、蓋26のヒンジピン25まわりの角変位に連動して記録紙22の搬送方向に可逆的に移動するラック部材35を含む。ラック部材35は、硬質の合成樹脂製の細長い部材であり、蓋26の内面29に沿って記録紙22の搬送方向に細長く延びる延在部36と、蓋26の内面29から遠ざかる方向に、延在部36と予め定める角度を有して屈曲する基端部37とを備え、ラック部材35の基端部37付近には、蓋26の内面29に平行、かつ記録紙22の搬送方向に垂直に延びる支持突起38a,38bが形成される。
【0026】
ラック部材35の延在部36には、ラック部材35の長手方向に延びる長孔である第1および第2案内孔39,40が形成される。第1および第2案内孔39,40には、第1および第2装着ピン41,42がそれぞれ挿通され、第1および第2装着ピン41,42の一端部は、蓋26の内面29に固定されて、ラック部材35が、蓋26に装着される。第1および第2装着ピン41,42の他端部には、図示しない抜け止め部材が嵌められて、ラック部材35が蓋26から外れることを防止する。
【0027】
第1および第2案内孔39,40が形成される延在部36の内縁と、第1および第2装着ピン41,42とが当接した状態で、ラック部材35は、長手方向に摺動することができる。したがって、ラック部材35は、第1および第2案内孔39,40によって案内され、第1および第2案内孔39,40の長さL1の範囲内で、記録紙22の搬送方向に移動することができる。また、延在部36側の端部である遊端部43付近の側部には歯が刻まれて、第1および第2歯部44,45が形成される。第1および第2歯部44,45は、前述の案内部材27a,27bに形成されるセクタ歯車34a,34bとそれぞれ噛合する。
【0028】
図5は、画像形成装置21の部分拡大斜視図である。装置本体23の背面49には、予め定める間隔をあけて、一対の蓋支持ブラケット50a,50bが設けられる。蓋支持ブラケット50a,50bには、ヒンジピン25を支持するピン孔51a,51bがそれぞれ形成される。一対の蓋支持ブラケット50a,50bと、蓋26に形成される前記挿通部32a,32bとが、整合される。ヒンジピン25が、蓋支持ブラケット50a,50bのピン孔51a,51bと挿通部とを挿通することによって、蓋26が装置本体23に装着される。
【0029】
また、装置本体23には、搬送口24に臨んで張出し部46が、装置本体23を重力方向に直交する水平方向に載置したとき、水平面に平行な方向に短く延びて形成される。張出し部46には、ラック部材35を支持する一対のラック支持ブラケット47a,47bが設けられる。一対のラック支持ブラケット47a,47bは、略直方体の形状を有する合成樹脂製の部材であり、張出し部46から垂直に立ちあがり、ラック部材35の挿入が可能となる間隔をあけ、対向して設けられる。ラック支持ブラケット47a,47bには、略V字状の透孔である支持孔48a,48bが形成され、支持孔48a,48bには、ラック部材35に形成される前記支持突起38a,38bが、それぞれ遊嵌される。
【0030】
図6は支持孔48aに遊嵌された支持突起38aの動作を示す側面図であり、図7は蓋26が搬送口24を閉じた位置にある状態を示す側面図であり、図8は蓋26が開閉途中の位置にある状態を示す側面図であり、図9は蓋26が搬送口24を開いた位置にある状態を示す側面図であり、図10は図7〜図9に示す蓋26の動作を合わせて示す側面図である。ここで、図7〜図10は、いずれも蓋26の一方の側面板のみを除いた状態で示されている。
【0031】
ラック支持ブラケット47a,47bは、ラック支持ブラケット47a,47bに略V字状に形成される支持孔48a,48bのV字が、装置本体23の張出し部46に対してほぼ横向きになるように、すなわちV字をなす支持孔48a,48bの角部が、ヒンジピン25に最も近接するように、装置本体23に設けられる。
【0032】
支持孔48a,48bは、休止凹部52と、第1案内凸部53と、作動凹部54と、第2案内凸部55と、展開凹部56と、第1案内部57と、交差部58と、第2案内部59とからなる。休止凹部52は、V字をなす支持孔48a,48bの一端部の位置にある。休止凹部52には、ヒンジピン25に近づく方向に、第1案内凸部53および作動凹部54が連なり、作動凹部54は、V字をなす支持孔48a,48bの角部の位置にある。
【0033】
作動凹部54には、ヒンジピン25から遠ざかる方向に、第2案内凸部55および展開凹部56がさらに連なり、展開凹部56は、V字をなす支持孔48a,48bの他端部の位置にある。展開凹部56には、第1案内部57、交差部58および第2案内部59が連なり、第2案内部59は、前記休止凹部52に連なる。休止凹部52から第2案内部59までの連続する各部によって、支持孔48a,48bが構成される。
【0034】
支持孔48a,48bにそれぞれ遊嵌された一対の支持突起38a,38bの動作は、同一であるので、以下では一方の支持突起38aの動作についてのみ説明する。図7に示す蓋26が搬送口24を閉じた位置にあるとき、ラック部材35の基端部37付近に形成された支持突起38aは、支持孔48aの休止凹部52に位置する。
【0035】
蓋26をたとえば手動で開くとき、蓋26は、搬送口24を閉じた位置から、図8に示す開閉途中の位置にある状態に移行し、さらに図9に示す搬送口24を開いた位置に移行する。まず、蓋26が、搬送口24を閉じた位置から開閉途中の位置に移行する過程において、ラック部材35は、蓋26の開動作によって、ヒンジピン25まわり角変位するとともに、重力によって蓋26の内面29に沿いヒンジピン25に近づく方向に移動する。このことによって、支持突起38aは、休止凹部52から、ヒンジピン25に近づく方向、すなわち第1案内凸部53に案内されて作動凹部54へと移動する。これは、図6に示すA位置からB位置への移動である。
【0036】
次に、蓋26が、開閉途中の位置から搬送口24を開いた位置に移行する過程において、蓋26は、ヒンジピン25まわりにさらに角変位され、それにともなってラック部材35は、蓋26の内面29に沿ってヒンジピン25に近づく方向へさらに移動する。ラック部材35の移動によって、第1および第2装着ピン41,42が、延在部36に形成される第1および第2案内孔39,40に臨むラック部材35の遊端部43側内縁に当接する。この状態で、ラック部材35は、蓋26と一体に角変位するので、延在部36と角度θ2にて屈曲している基端部37は、ラック部材35の延在部36と基端部37とによって形成される屈曲部を支点とするかのように角変位する。このことによって、支持突起38aは、ヒンジピン25から遠ざかる方向、すなわち作動凹部54から第2案内凸部55に案内されて展開凹部56へと移動する。これは、図6に示すB位置からC位置への移動である。
【0037】
蓋26の開動作にともない、蓋26がヒンジピン25まわりに角変位して、搬送口24を閉じた位置から、搬送口24を開いた位置に移動するとき、前述のように支持突起38a,38bは、支持孔48a,48bの形成されるラック支持ブラケット47a,47bの内縁に沿って、休止凹部52から作動凹部54へと移動し、さらに作動凹部54から展開凹部56へと移動する。このような支持突起38a,38bの動作によって、ラック部材35は、蓋26の内面29に沿って記録紙22の搬送方向に移動することができる。
【0038】
蓋26は、ヒンジピン25を中心として角変位するのに対して、ラック部材35は、支持突起38a,38bが支持孔48a,48bに遊嵌された状態にあるので、基端部37が、常に支持孔48a,48b付近に存在する状態で角変位する。したがって、蓋26と支持突起38a,38bすなわち基端部37とが、ヒンジピン25に対して同じ方向である装置本体23側にあるときと、ヒンジピン25に対して異なる方向にあるときとでは、蓋26に対するラック部材35の位置が相対的に変化する。
【0039】
蓋26が、搬送口24を閉じた位置にあるとき、蓋26と支持突起38a,38bとは、ともに装置本体23側にあり、ラック部材35は、その全長が蓋26と重複して装置本体23側にある。蓋26が、搬送口24を開いた位置にあるとき、蓋26は、ヒンジピン25に対して装置本体23と反対側にあるけれども、支持突起38a,38bすなわち基端部37は、ヒンジピン25に対して装置本体23側にあるので、ラック部材35は、基端部37からほぼヒンジピン25までの長さが装置本体23側に存在することになり、ラック部材35が蓋26と重複する長さが短くなる。すなわち、ラック部材35は、蓋26の内面に沿って記録紙22の搬送方向に相対的に移動する。
【0040】
前述のように、ラック部材35は、ラック部材35を蓋26に装着する第1および第2装着ピン41,42と、第1および第2案内孔39,40の形成されるラック部材35の内縁とが摺動して記録紙22の搬送方向に案内されるので、蓋26の内面29に沿って移動することができる。ラック部材35に形成された第1および第2歯部44,45と、案内部材27a,27bに形成されたセクタ歯車34a,34bとは噛合しているので、ラック部材35が記録紙22の搬送方向に移動するとき、案内部材27a,27bは、軸30a,30bの軸線まわりに確実に角変位され、蓋26に重なった第1状態から、ヒンジピン25から遠ざかる方向に蓋26から突出した第2状態に駆動される。
【0041】
このように、電動機などの駆動手段を設けることなく、支持突起38a,38bの形成されたラック部材35と、支持孔48a,48bの形成されたラック支持ブラケット47a,47bとによる簡単な構成で、確実に案内部材27a,27bを第1状態と第2状態とに可逆的に駆動することができる。
【0042】
蓋26から突出した第2状態にある案内部材27a,27bは、蓋26の長さを記録紙22の搬送方向に延長するので、記録紙22を支持し、装置本体23に案内する送給トレイとして好適に使用される。また、案内部材27a,27bは、蓋26の装置本体23内方側に設けられるので、蓋26に重なった第1状態にある案内部材27a,27bを、装置本体23内に収容することができる。案内部材27a,27bを、装置本体23に収容可能とすることによって、装置の小型化を実現することができ、このとき蓋26を装置の外装の一部に使用できる。
【0043】
蓋26が搬送口24を開いた位置から閉じた位置に戻す閉動作によって、案内部材27a,27bを、蓋26から突出した第2状態から、蓋26に重なった第1状態へ容易に戻すことができる。蓋26を閉動作することによって、支持突起38a,38bは、蓋26の開動作の場合とは逆の順序で動作をする。すなわち、支持突起38a,38bは、展開凹部56から作動凹部54へと移動し、さらに作動凹部54から休止凹部52へと移動する。蓋26の閉動作にともなう前述の支持突起38a,38bの動作によって、ラック部材35は、記録紙22の搬送方向とは逆の方向に移動するので、案内部材27a,27bは、蓋26から突出した第2状態から、蓋26と重なった第1状態へと駆動される。
【0044】
このように、蓋26の開閉動作という簡単な操作で、案内部材27a,27bを蓋26に重なった第1状態と、蓋26から突出した第2状態とに、可逆的に駆動することができるので、蓋26を記録紙22の送給トレイとして使用することが容易に可能となる。
【0045】
図4に戻り、本実施の形態の画像形成装置21の画像形成動作を説明する。画像形成を開始するとき、まず矢符60方向に、蓋26をヒンジピン25まわりに角変位させ、予め定める90度を超える角度θ1で傾斜して搬送口24を開いた位置に移動する。蓋26の角変位にともない、前述のように、ラック部材35、支持突起38a,38bおよびラック支持ブラケット47a,47bを含む駆動手段28が、案内部材27a,27bを、軸30a,30bまわりに角変位させるので、案内部材27a,27bは、蓋26に重なった第1状態から、ヒンジピン25から遠ざかる方向に蓋26から突出した第2状態へと駆動される。
【0046】
このことによって、蓋26は、記録紙22の搬送方向に、案内部材27a,27bの蓋26から突出した長さが延長され、案内部材27a,27bは、記録紙22を案内して支持し、装置本体23に供給できる状態になる。すなわち、蓋26と案内部材27a,27bとは、送給トレイとしての機能を有する状態になるので、蓋26と案内部材27a,27b上に記録紙22を載置する。なお図4では、画像形成装置21の全体構成を簡略化して示し、説明を簡単にするために駆動手段28については、記載が省略されている。
【0047】
蓋26および案内手段27a,27bから、記録紙22の案内される装置本体23は、給紙ローラ61と、さばき板62と、PSローラ63および第1アイドルローラ64と、画像形成部65と、排紙ローラ66および第2アイドルローラ67と、排紙トレイ68と、ハウジング69とを含む。
【0048】
給紙ローラ61は、記録紙22の搬送方向に直交する幅方向に平行な回転軸線を有し、装置本体23のハウジング69に回転自在に支持される。給紙ローラ61には、図示しない電動機などの駆動機構が接続されて、回転駆動される。さばき板62は、幅方向に細長く延びる略直方体の板状部材であり、給紙ローラ61の表面に当接して設けられ、給紙ローラ61に対してばね部材71によって、予め定める圧力で押圧される。給紙ローラ61と記録紙22との摩擦力が、さばき板62の給紙ローラ61に対する押圧力よりも大きくなる最表層の1枚の記録紙22が、給紙ローラ61とさばき板62との間に送給されて、矢符70方向に搬送される。このことによって、記録紙22は、給紙ローラ61以降に1枚ずつ搬送される。
【0049】
PSローラ63および第1アイドルローラ64は、給紙ローラ61の軸線と平行な軸線を有し、ハウジング69に回転自在に支持される。PSローラ63には、図示しない電動機などの駆動機構が接続される。PSローラ63は、画像情報に基づき、画像情報に応答した画像形成開始のタイミングと記録紙22の搬送方向の記録開始位置とを同調させて、第1アイドルローラ64との間で記録紙22を挟圧搬送する。このとき、第1アイドルローラ64は、PSローラ63に押圧されて従動回転する。PSローラ63と第1アイドルローラ64とによって挟圧搬送された記録紙22は、画像形成部65に送られる。
【0050】
画像形成部65は、インクヘッドを搭載するインクキャリッジ72と、インクキャリッジ72に臨んで設けられるプラテン73とを含む。インクキャリッジ72は、図示しないインクキャリッジ保持シャフトに保持され、図示しない駆動機構によって幅方向に駆動される。画像情報に応答した画像形成開始のタイミングと同調してPSローラ63によって、記録紙22が画像形成部65に送給されたとき、インクキャリッジ72は幅方向に駆動されるとともに、画像情報に応じてインクヘッドからインクが吐出されて記録紙22表面に画像が形成される。
【0051】
インクキャリッジ72が、幅方向に1回走行すると、記録紙22の搬送が一旦停止し、記録紙22が予め定められた長さだけ矢符70方向に搬送される。ここで、予め定められた長さとは、インクキャリッジ72に搭載されたインクヘッドのインクノズルが有する記録紙22搬送方向の長さである。記録紙22が、予め定められた長さを搬送された後、前述のインクキャリッジ72の幅方向への駆動とインクヘッドからのインクの吐出とが、行われる。これらの動作が繰返し行われることによって、記録紙22の表面に、記録紙22の1枚分に対応する画像情報が形成される。
【0052】
画像情報の形成された記録紙22は、排紙ローラ66に向って搬送される。排紙ローラ66および第2アイドルローラ67は、給紙ローラ61の軸線と平行な軸線を有し、ハウジング69に回転自在に支持される。排紙ローラ66には、図示しない駆動機構が接続される。排紙ローラ66の駆動機構は、たとえば給紙ローラ61に接続される駆動機構の駆動力を歯車等によって伝達するなどして兼用されてもよい。第2アイドルローラ67は、排紙ローラ66に押圧されて従動回転する。画像情報の形成された記録紙22は、排紙ローラ66と第2アイドルローラ67とに挟圧搬送され、ハウジング69に形成される排出口74から排紙トレイ68に排出され、一連の画像形成動作が完了する。
【0053】
記録紙22上への画像形成が終了したとき、蓋26および案内部材27a,27b上に載置された記録紙22を除去する。その後、矢符75方向に、蓋26をヒンジピン25まわりに角変位させる。蓋26の角変位に連動し、前記駆動手段28が、案内部材27a,27bを、軸30a,30bまわりに角変位させるので、案内部材27a,27bは、蓋26から突出した第2状態から、蓋26に重なった第1状態へと駆動される。このことによって、蓋26が、装置本体23の搬送口24を開いた位置から閉じた位置に移動するとき、案内部材27a,27bは、蓋26の移動を妨げることがない。また、蓋26が、搬送口24を閉じた位置にあるとき、案内部材27a,27bは、蓋26の装置本体23内方側にあるので、装置本体23に収容され、蓋26は、画像形成装置21の外装の一部を構成する。
【0054】
以上に述べたように、本発明の実施の形態では、シート体案内装置は、画像形成装置21であるけれども、これに限定されることなく、画像読取装置、ファクシミリ装置および複写機などの原稿送給装置、また本のカバー材供給装置などであってもよい。また、蓋26および案内部材27a,27b等は、搬送口24であるシート体が供給される開口部に設けられるけれども、これに限定されることなく、排出口のようなシート体が排出される開口部に設けられてもよい。
【0055】
また、案内部材27a,27bは、蓋26の装置本体23内方側に設けられるけれども、これに限定されることなく、装置本体23外方側に設けられてもよい。また、案内部材27a,27bの第1状態と第2状態との駆動は、ラック部材35に形成される第1および第2歯部44,45と,案内部材27a,27bに形成されるセクタ歯車34a,34bとの噛合によって行われるけれども、これに限定されることなく、ラック部材35と案内部材27a,27bとが、板ばね部材などによって接続され、ラック部材35の直線運動を案内部材27a,27bの角変位運動に変えるものであってもよい。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動し、蓋が搬送口を閉じた位置では案内部材を蓋に重なった第1状態に保ち、蓋が搬送口を開いた位置では案内部材を蓋から突出してシート体を案内して支持する第2状態に駆動する駆動手段を含む。このことによって、案内部材は、蓋の開動作に連動し、第1状態から第2状態に移動することができ、また蓋の閉動作に連動し、第2状態から第1状態に移動することができる。したがって、蓋の開閉動作という簡単な操作のみで、蓋をシート体の送給トレイとして使用することが可能になる。また駆動手段は、蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動してシート体の搬送方向に可逆的に移動するラック部材を備え、案内部材は、蓋の装置本体内方側表面に突出して設けられる軸の軸線まわりに角変位自在に設けられ、案内部材に形成されるセクタ歯車とラック部材とが噛合し、ラック部材が移動することによって案内部材を角変位させるので、第1状態または第2状態のいずれの状態へも案内部材を確実に駆動することができる。
【0059】
また本発明によれば、ラック部材は基端部を備え、蓋の装置本体内方側表面から遠ざかる方向に屈曲する基端部付近には、支持突起が形成され、支持突起は、装置本体に備わるラック支持ブラケットに形成される支持孔に遊嵌される。このことによって、簡単な構成でラック部材をシート体の送給方向に移動することが可能になるので、蓋の開閉動作に連動して容易にラック部材を移動し、ラック部材の移動によって案内部材を駆動することができる。
【0060】
また本発明によれば、支持孔に遊嵌される支持突起は、蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動し、ラック支持ブラケットにV字状に形成された支持孔内を移動することによって、ラック部材をシート体の搬送方向に移動する。したがって、簡単な機械的構造によってラック部材のシート体搬送方向の移動を実現することができるので、コストを低減することができ、また駆動手段の不具合が起こりにくく装置寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態のシート案内装置である画像形成装置21の構成を簡略化して示す透視図である。
【図2】図1に示す蓋26が搬送口24を閉じた位置にある状態の正面図である。
【図3】図1に示す蓋26が搬送口24を開いた位置にある状態の正面図である。
【図4】図1に示す画像形成装置21の構成を簡略化して示す概略断面図である。
【図5】画像形成装置21の部分拡大斜視図である。
【図6】支持孔48aに遊嵌された支持突起38aの動作を示す側面図である。
【図7】蓋26が搬送口24を閉じた位置にある状態を示す側面図である。
【図8】蓋26が開閉途中の位置にある状態を示す側面図である。
【図9】蓋26が搬送口24を開いた位置にある状態を示す側面図である。
【図10】図7〜図9に示す蓋26の動作を合わせて示す側面図である。
【図11】従来の画像形成装置1の構成を簡略化して示す透視図である。
【図12】もう一つの従来の画像形成装置2の構成を簡略化して示す透視図である。
【符号の説明】
21 画像形成装置
22 記録紙
23 装置本体
24 搬送口
26 蓋
27 案内部材
28 駆動手段
Claims (3)
- シート体が案内される装置本体と、
装置本体に形成される搬送口を予め定める横に延びるヒンジピンによって開閉可能な蓋と、
蓋は、搬送口を閉じた位置と、予め定める角度で傾斜して搬送口を開いた位置となる2つの安定した位置をとり、
蓋に設けられ、蓋に重なった第1状態と、ヒンジピンから遠ざかる方向に蓋から突出してシート体を案内して支持する第2状態との2つの状態をとることができる案内部材と、
蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動し、蓋が搬送口を閉じた位置では案内部材を蓋に重なった前記第1状態に保ち、蓋が搬送口を開いた位置では案内部材を蓋から突出した前記第2状態に駆動する駆動手段とを含み、
前記駆動手段は、蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動してシート体の搬送方向に可逆的に移動するラック部材を備え、
前記案内部材は、蓋の装置本体内方側表面に突出して設けられる軸の軸線まわりに角変位自在に設けられ、この案内部材にはセクタ歯車が形成され、
案内部材のセクタ歯車とラック部材とが噛合し、ラック部材が移動することによって、案内部材を第1状態から第2状態および第2状態から第1状態に駆動することを特徴とするシート体案内装置。 - ラック部材は、
蓋の装置本体内方側表面に沿ってシート体の搬送方向に細長く延びる延在部と、
蓋の装置本体内方側表面から遠ざかる方向に屈曲する基端部とを備え、
ラック部材の基端部付近には、蓋の装置本体内方側表面に平行、かつシート体の搬送方向に垂直に延びる支持突起が形成され、
装置本体は、ラック部材を支持するラック支持ブラケットを備え、ラック支持ブラケットには支持孔が形成され、
前記支持突起は、前記支持孔に遊嵌されることを特徴とする請求項1記載のシート体案内装置。 - (a)支持孔は、ラック支持ブラケットにV字状に形成され、
(b)V字状に形成される支持孔の角部が、ヒンジピンに最も近接するように、ラック支持ブラケットが装置本体に設けられ、
(c)支持孔には、少なくとも休止凹部と、作動凹部と、展開凹部とがあり、
休止凹部は、V字状をなす支持孔の一端部の位置にあり、
作動凹部は、V字状をなす支持孔の角部の位置にあり、
展開凹部は、V字状をなす支持孔の他端部の位置にあり、
(d)支持孔に遊嵌される支持突起は、
蓋のヒンジピンまわりの角変位に連動して、休止凹部から作動凹部をへて展開凹部へ移動し、または展開凹部から作動凹部をへて休止凹部へ移動することによって、ラック部材をシート体の搬送方向に移動することを特徴とする請求項2記載のシート体案内装置。
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