JP3626306B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像感光材料に関するものであり、さらに詳しくは水系溶媒の塗布液で簡便に低コストで製造でき、且つ得られる銀色調が良好で、高湿雰囲気下で保存してもカブリの低い熱現像感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
支持体上に感光性層を有し、画像露光することで画像形成を行う感光材料は、数多く知られている。それらの中でも、環境保全や画像形成手段が簡易化できるシステムとして、熱現像により画像を形成する技術が挙げられる(以降「熱現像感光材料」と表わす)。
【0003】
熱現像により画像を形成する方法は例えば、米国特許第3152904号、同第3457075号、およびD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely )による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials )Neblette第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオ ールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp )編集、第2頁、1969年)に記載されている。このような感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、および還元剤を通常(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
【0004】
この熱現像感光材料は近年益々高まっている処理の簡易化、環境保全という要求に合致するものである。
【0005】
従来このタイプの熱現像感光材料の多くはトルエン、MEK、メタノールなどの有機溶剤を溶媒とする塗布液を塗布することにより感光層、その他の層を形成している。
【0006】
しかしながら有機溶剤の使用は、製造工程での人体への悪影響、溶剤回収などのコストといった点で不利である。そこでこれらの点で有利な水溶媒の塗布液を用いて感光層を形成する技術も知られている。
【0007】
例えば、特開昭49−52626号、同53−116144号公報等にはゼラチンをバインダーとする感光層の例が、また特開昭50−151138号公報にはポリビニルアルコールをバインダーとする感光層の例が、また特開昭58−28737号公報には水溶性ポリビニルアセタールをバインダーとする感光層の例がそれぞれ記載されている。
【0008】
確かにこれらの技術を用いると有機溶剤を用いないで感光層を形成することができる。
【0009】
しかしながら、これらの技術では、高湿雰囲気下で保存すると熱現像感光材料のカブリが増大するという欠点を有していた。
【0010】
一方、熱現像感光材料の黒化部分の色調は黒色であることが好ましい。黒化部分は、場合によっては茶色味がかった色調や、黄色味がかった色調になり、このようなものは商品値価が著しく損なわれる。
【0011】
そこで良好な色調で、高湿雰囲気下でカブリの小さい熱現像感光材料を水系溶媒を塗布することにより形成する技術が望まれていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとしている課題は、環境保全やコスト面で有利な水溶媒の塗布液を塗布して感光層を形成することができ、且つ色調が良好で、高湿雰囲気下で保存してもカブリの低い熱現像感光材料を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
下記課題は、下記(1)〜(2)の本発明により達成される。
(1)支持体の少なくとも一方の面に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀を含む感光層を有し、有機銀塩と該銀塩の還元剤を含有する熱現像感光材料において、
前記感光層がスチレン−ブタジエン共重合体をバインダーとして含有し、
前記感光層は、溶媒の30wt%以上が水の塗布液を塗布乾燥して形成されたものであり、
前記支持体の感光層を有する面に少なくとも1層の非感光層を有し、該感光層と該非感光層とが同時に塗布されたものであることを特徴とする熱現像感光材料。
(2)前記支持体の感光層を有する面に少なくとも1層の非感光層を有し、該感光層と該非感光層が塗布後同時に乾燥されたものである上記(1)記載の熱現像感光材料。
(3)前記感光層のバインダーの70wt%以上がスチレン−ブタジエン共重合体である上記(1)又は上記(2)に記載の熱現像感光材料。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明における感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029 号、および米国特許第3,700,458 号に記載されている方法を用いることができる。本発明で用いることのできる具体的な方法としては、調製された有機銀塩中にハロゲン含有化合物を添加することにより有機銀塩の銀の一部を感光性ハロゲン化銀に変換する方法、ゼラチンあるいは他のポリマー溶液の中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀粒子を調製し、有機銀塩と混合する方法を用いることができる。本発明において好ましくは後者の方法を用いることができる。感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく、具体的には0.20μm 以下、より好ましくは0.01μm 以上0.15μm 以下、更に好ましくは0.02μm 以上0.12μm 以下がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合にはハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。その他、正常晶でない場合、たとえば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0015】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を好ましく用いることができる。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は好ましくは100:1 〜2:1 、より好ましくは50:1〜3:1 がよい。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い{100} 面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65% 以上がより好ましく、80% 以上が更に好ましい。ミラー指数{100} 面の比率は増感色素の吸着における{111} 面と{100} 面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985 年) に記載の方法により求めることができる。感光性ハロゲン化銀のハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀、ヨウ化銀のいずれであっても良いが、本発明においては臭化銀、あるいはヨウ臭化銀を好ましく用いることができる。特に好ましくはヨウ臭化銀であり、ヨウ化銀含有率は0.1 モル%以上40モル%以下が好ましく、0.1 モル%以上20モル%以下がより好ましい。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、好ましくはコア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。
【0016】
粒子サイズ分布は特に制限はないが単分散であることが好ましく、具体的にはハロゲン化銀粒子の投影面積の円相当直径の変動係数が20%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウム、コバルトまたは鉄から選ばれる金属の錯体を好ましく用いることができる。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を二種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9モルから1×10−2モルの範囲が好ましく、1×10−8モルから1×10−4の範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。コバルト、鉄の化合物については六シアノ金属錯体を好ましく用いることができる。具体例としては、フェリシアン酸イオン、フェロシアン酸イオン、ヘキサシアノコバルト酸イオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ハロゲン化銀中の金属錯体の含有相は均一でも、コア部に高濃度に含有させてもよく、あるいはシェル部に高濃度に含有させてもよく特に制限はない。
【0018】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0019】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は未後熟で用いることができるが、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法を用いることができる。また金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物を用いることができるが、特開平7−128768号等に記載の化合物を使用することができる。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス( オキシカルボニル) テルリド類、ビス( カルバモイル) テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス( オキシカルボニル) ジテルリド類、ビス( カルバモイル) ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニル、テルロカルボン酸エステル類、ジ( ポリ) テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P−Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることができる。貴金属増感法は本発明において特に好ましく用いられ、例えば塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許2,448,060 号、英国特許618,061 号などに記載されている化合物を好ましく用いることができる。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAg を8.3 以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
【0020】
本発明の感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1モルに対して感光性ハロゲン化銀0.01モル0.5 モル以下が好ましく、0.02モル以上0.3 モル以下がより好ましく、0.03モル以上0.25モル以下が特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速攪拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0021】
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に( 炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の) 長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0 〜10.0の範囲の錯安定定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜30重量%を構成することができる。好ましい有機銀塩はカルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を含む。これらの例は、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を含むがこれらに限定されることはない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀及び樟脳酸銀、これらの混合物などを含む。
【0022】
メルカプト基またはチオン基を含む化合物の銀塩及びこれらの誘導体を使用することもできる。これらの化合物の好ましい例としては、3−メルカプト−4− フェニル−1,2,4− トリアゾールの銀塩、2−メルカプトベンズイミダゾールの銀塩、2−メルカプト−5− アミノチアジアゾールの銀塩、2−(エチルグリコールアミド)ベンゾチアゾールの銀塩、S−アルキルチオグリコール酸( ここでアルキル基の炭素数は12〜22である) の銀塩などのチオグリコール酸の銀塩、ジチオ酢酸の銀塩などのジチオカルボン酸の銀塩、チオアミドの銀塩、5−カルボキシル−1− メチル−2− フェニル−4− チオピリジンの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、2−メルカプトベンズオキサゾールの銀塩、米国特許第4,123,274 号に記載の銀塩、例えば3−アミノ−5− ベンジルチオ−1,2,4− チアゾールの銀塩などの1,2,4−メルカプトチアゾール誘導体の銀塩、米国特許第3,301,678 号に記載の3−(3− カルボキシエチル)−4−メチル−4− チアゾリン−2− チオンの銀塩などのチオン化合物の銀塩を含む。さらに、イミノ基を含む化合物も使用することができる。これらの化合物の好ましい例としては、ベンゾトリアゾールの銀塩及びそれらの誘導体、例えばメチルベンゾトリアゾール銀などのベンゾトリアゾールの銀塩、5−クロロベンゾトリアゾール銀などのハロゲン置換ベンゾトリアゾールの銀塩、米国特許第4,220,709 号に記載のような1,2,4−トリアゾールまたは1−H−テトラゾールの銀塩、イミダゾール及びイミダゾール誘導体の銀塩などを含む。例えば、米国特許第4,761,361 号及び同第4,775,613 号に記載のような種々の銀アセチリド化合物をも使用することもできる。
【0023】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はないが、短軸と長軸を有する針状結晶が好ましい。本発明においては短軸0.01μm 以上0.2 0 μm 以下、長軸0.10μm 以上5.0 μm 以下が好ましく、短軸0.01μm 以上0.15μm 以下、長軸0.10μm 以上4.0 μm 以下がより好ましい。有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100 分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積荷重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積荷重平均直径で割った値の100 分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化にたいする自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ( 体積荷重平均直径) から求めることができる。
【0024】
本発明に用いることのできる有機銀塩は、好ましくは脱塩をすることができる。脱塩を行う方法としては特に制限はなく公知の方法を用いることができるが、円心濾過、吸引濾過、限外濾過等の公知の濾過方法を好ましく用いることができる。
【0025】
本発明に用いることのできる有機銀塩は粒子サイズの小さい、凝集のない微粒子を得る目的で、分散剤を使用した固体微粒子分散物とする方法が用いられる。有機銀塩を固体微粒子分散化する方法は、分散助剤の存在下で公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミル)を用い、機械的に分散することができる。
【0026】
有機銀塩を分散剤を使用して固体微粒子化する際には、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸の共重合体、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸共重合体、などの合成アニオンポリマー、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロースなどの半合成アニオンポリマー、アルギン酸、ペクチン酸などのアニオン性ポリマー、特開昭52−92716号、WO88/04794 号などに記載のアニオン性界面活性剤、特願平7−350753号に記載の化合物、あるいは公知のアニオン性、ノニオン性、カチオン性界面活性剤や、その他ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の公知のポリマー、或いはゼラチン等の自然界に存在する高分子化合物を適宜選択して用いることができる。
【0027】
分散助剤は、分散前に有機銀塩の粉末またはウェットケーキ状態の有機銀塩と混合し、スラリーとして分散機に送り込むのは一般的な方法であるが、予め有機銀塩と混ぜ合わせた状態で熱処理や溶媒による処理を施して有機銀塩粉末またはウェットケーキとしても良い。分散前後または分散中に適当なpH調整剤によりpHコントロールしても良い。
【0028】
機械的に分散する以外にも、pHコントロールすることで溶媒中に粗分散し、その後、分散助剤の存在下でpHを変化させて微粒子化させても良い。このとき、粗分散に用いる溶媒として有機溶媒を使用しても良く、通常有機溶媒は微粒子化終了後除去される。
【0029】
調整された分散物は、保存時の微粒子の沈降を抑える目的で攪拌しながら保存したり、親水性コロイドにより粘性の高い状態(例えば、ゼラチンを使用しゼリー状にした状態)で保存したりすることもできる。また、保存時の雑菌などの繁殖を防止する目的で防腐剤を添加することもできる。
【0030】
本発明の感材においては、還元剤は任意の層に添加していもよい。
【0031】
有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質であってよい。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、有機銀塩の6〜60モル%として存在すべきである。多層構成において、還元剤をエマルジョン層以外の層に加える場合は、わずかに高い割合である約8〜80モル%がより望ましい傾向がある。
【0032】
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の還元剤が開示されている。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フエノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2′−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ビブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2′,4′−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの、5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−t−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)および2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルチミン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオンなどがある。
【0033】
前述の成分に加えて、画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含むと有利になることがある。例えば色調剤材料は全銀保持成分の0.1 〜10重量%の量で存在してよい。色調剤は、米国特許第3080254号、同第3847612号および同第4123282号に示されるように、写真技術において周知の材料である。
【0034】
色調剤の例は、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5− オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2− ピラゾリン−5− オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド( 例えば、N−ヒドロキシ−1,8− ナフタルイミド) ;コバルト錯体( 例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート) ;3−メルカプト−1,2,4− トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5− ジフェニル−1,2,4− トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4− チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−( アミノメチル) アリールジカルボキシイミド、( 例えば、(N,N− ジメチルアミノメチル) フタルイミドおよびN,N−( ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3− ジカルボキシイミド) ;ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤( 例えば、N,N−ヘキサメチレンビス(1− カルバモイル−3,5− ジメチルピラゾール) 、1,8−(3,6− ジアザオクタン) ビス( イソチウロニウムトリフルオロアセテート) および2−トリブロモメチルスルホニル)−( ベンゾチアゾール));ならびに3−エチル−5[(3−エチル−2− ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4− オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1− ナフチル) フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4− フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体( 例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など) との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩、または4−(1− ナフチル) フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジンおよび2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体;フタラジンとフタル酸誘導体( 例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など) との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III) 酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4− ジオン、8− メチル−1,3− ベンズオキサジン−2,4− ジオンおよび6−ニトロ−1,3− ベンズオキサジン−2, 4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4− ジオン;ピリミジンおよび不斉− トリアジン( 例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4− アミノピリミジンなど) 、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体( 例えば、3,6−ジメルカプト−1,4− ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a− テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o− クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a− テトラアザペンタレン) などがある。
【0035】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤または/および有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤前駆体によって、付加的なかぶりの生成に対して更に保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することができる。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038 号および同第2,694,716 号に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437 号および同第2,444,605 号に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663 号に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135 号に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652 号に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448 号に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405 号に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839 号に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263 号および同第2,597,915 号に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665 号および同第4,442,202 号に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557 号および同第4,137,079 号、第4,138,365 号および同第4,459 ,350号に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985 号に記載のリン化合物などがある。
【0036】
本発明を実施するために必要ではないが、乳剤層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的に好ましい水銀(II)塩は酢酸水銀および臭化水銀である。
【0037】
本発明においては還元剤、色調剤、カブリ防止剤などの感材構成に必要な素材の添加方法はいかなる方法を用いてもよいが、有機銀塩と同様に分散剤を使用した固体微粒子分散物として添加する方法が好ましく用いられる。固体微粒子化する具体的な方法としては有機銀塩を固体微粒子化した方法と同様にして目的と固体微粒子分散物を得ることができる。微粒子化した固体分散物の粒子サイズとしては、平均粒径0.005μm 〜10μm 、好ましくは0.01μm 〜3μm であり、さらには、0.05μm 〜0.5μm であることが好ましい。
【0038】
本発明にも用いられる「スチレン−ブタジエン共重合体」とは、分子鎖中にスチレンとブタジエンを含むポリマーである。スチレン−ブタジエンのモル比は50:50〜95:5、より好ましくは60:40〜90:10が好ましい。
【0039】
本発明の「スチレン−ブタジエン共重合体」としては、これ以外にメチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などの酸、またはアクリロニトリル、ジビニルベンゼンなどのその他のビニルモノマーを共重合してもよい。この場合、スチレン−ブタジエンは50〜99重量%、より好ましくは60〜97重量%存在することが好ましい。
【0040】
本発明で用いられる、スチレン−ブタジエン共重合の分子量は数平均分子量が2000〜1000000、より好ましくは5000〜500000の範囲が好ましい。
【0041】
本発明のスチレン−ブタジエン共重合体は、通常はランダム共重合体である。本発明のスチレン−ブタジエン共重合体は直鎖ポリマーでもよいし、枝分れしたものでも架橋したものでもよい。そして、通常、0.05〜0.3μm 程度の平均粒径の粒子として用いる。
【0042】
本発明のスチレン−ブタジエン共重合体の具体例としては、以下のようなものがある。
【0043】
【化1】
【0044】
さらに、本発明に用いることができるスチレン−ブタジエン共重合体としては、以下のようなものが市販されている。
【0045】
ニッポルL×410、430、435、416、ニッポル2507(以上日本ゼオン(株)、DL−670、L−5702、1235(以上旭化成工業(株))、ラックスター3307B、DS203、7132C、DS807(以上大日本インキ化学(株))など。
【0046】
本発明の熱現像感光材料の「感光層」とは感材の層のうち、ハロゲン化銀を含有する層である。(本発明の必須構成要件のうちの非感光性銀塩や還元剤は必ずしも、感光層に含む必要はない。)
【0047】
本発明の感光層の少なくとも1層は前述のスチレン−ブタジエン共重合体を含む。スチレン−ブタジエン共重合体は、1種でも2種以上ブレンドして用いてもよい。
【0048】
本発明の感光層のスチレン−ブタジエン共重合体の塗布量は1.0〜40g/m2、より好ましくは3.0〜30g/m2程度が好ましい。
【0049】
本発明の感光層は、バインダーの50wt% 以上、好ましくは70wt% 以上がスチレン−ブタジエン共重合体であることが望ましい。バインダー全体がスチレン−ブタジエン共重合体であってもよい。バインダーの残りの成分は、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体などが好ましい。
【0050】
本発明の感光層はその溶媒の30wt%以上、好ましくは50wt%以上、より好ましくは70wt%以上が水である塗布液を、塗布乾燥して形成される。感光層の塗布液の溶媒の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。
【0051】
具体的な溶媒組成としては、水/メチルアルコール=90/10または70/30または50/50、水/イソプロピルアルコール=90/10、水/ブチルセルソルブ=95/5、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=90/5/5または80/15/5(以上重量比)などがある。
【0052】
本発明の感光層の塗布液は上記の溶媒を用い固形分濃度が0.5〜12wt% 、より好ましくは1〜8wt% の範囲とすることが好ましい。
【0053】
本発明における増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので有ればいかなるものでも良い。増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロホーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。本発明に使用される有用な増感色素は例えばRESEARCH DISCLOSURE Item17643IV−A 項(1978 年12月p.23) 、同Item1831X 項(1979 年8 月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種レーザーイメージャー、スキャナー、イメージセッターや製版カメラの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。
【0054】
赤色光への分光増感の例としては、He−Ne レーザー、赤色半導体レーザーやLED などのいわゆる赤色光源に対しては、特開昭54−18726号に記載のI−1からI−38 の化合物、特開平6−75322 号に記載のI−1からI−35 の化合物および特開平7−287338号に記載のI−1からI−34 の化合物、特公昭55−39818号に記載の色素1 から20、特開昭62−284343 号に記載のI−1からI−37 の化合物および特開平7−287338号に記載のI−1からI−34 の化合物などが有利に選択される。
【0055】
750 〜1400nmの波長領域の半導体レーザー光源に対しては、シアニン、メロシアニン、スチリル、ヘミシアニン、オキソノール、ヘミオキソノールおよびキサンテン色素を含む種々の既知の色素により、スペクトル的に有利に増感させることができる。有用なシアニン色素は、例えば、チアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核およびイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核およびピラゾロン核などの酸性核も含む。上記のシアニンおよびメロシアニン色素において、イミノ基またはカルボキシル基を有するものが特に効果的である。例えば、米国特許第3,761,279 号、同第3,719,495 号、同第3,877,943 号、英国特許第1,466,201 号、同第1,469,117 号、同第1,422,057 号、特公平3−10391 号、同6−52387 号、特開平5−341432号、同6−194781号、同6−301141号に記載されたような既知の色素から適当に選択してよい。
【0056】
本発明に用いられる色素の構造として特に好ましいものは、チオエーテル結合含有置換基を有するシアニン色素( 例としては特開昭62−58239号、同3−138638号、同3−138642号、同4−255840号、同5−72659 号、同5−72661 号、同6−222491号、同2−230506号、同6−258757号、同6−317868号、同6−324425号、特表平7−500926号、米国特許第5,541,054 号に記載された色素) 、カルボン酸基を有する色素( 例としては特開平3−163440号、同6−301141号、米国特許第5,441,899 号に記載された色素) 、メロシアニン色素、多核メロシアニン色素や多核シアニン色素( 特開昭47−6329 号、同49−105524 号、同51−127719 号、同52−80829号、同54−61517号、同59−214846 号、同60−6750 号、同63−159841 号、特開平6−35109 号、同6−59381 号、同7−146537号、同7−146537号、特表平55−50111号、英国特許第1,467,638 号、米国特許第5,281,515 号に記載された色素) が挙げられる。
【0057】
また、J−bandを形成する色素として米国特許第5,510,236 号、同第3,871,887 号の実施例5 記載の色素、特開平2−96131 号、特開昭59−48753号が開示されており、本発明に好ましく用いることができる。
【0058】
これらの増感色素は単独に用いてもよく、2 種以上組合せて用いてもよい。増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せおよび強色増感を示す物質はResearch Disclosure 176 巻17643(1978年12月発行) 第23頁IVのJ 項、あるいは特公昭49−25500号、同43−4933 号、特開昭59−19032号、同59−192242 号等に記載されている。
【0059】
本発明に用いられる増感色素は2種以上を併用してもよい。増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加させるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセロソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−メトキシ−1− プロパノール、3−メトキシ−1− ブタノール、1−メトキシ−2− プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。
【0060】
また、米国特許第3,469,987 号明細書等に開示されているように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、この溶液を水または親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22091号等に開示されているように、色素を酸に溶解し、この溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液として乳剤中へ添加する方法、米国特許第3,822,135 号、同第4,006,025 号明細書等に開示されているように界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤中に添加する方法、特開昭53−102733 号、同58−105141 号に開示されているように親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法、特開昭51−74624号に開示されているように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、この溶液を乳剤中へ添加する方法を用いることもできる。また、溶解に超音波を用いることもできる。
【0061】
本発明に用いる増感色素を本発明のハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば米国特許第2,735,766 号、同第3,628,960 号、同第4,183,756 号、同第4,225,666 号、特開昭58−184142 号、同60−196749 号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/および脱塩前の時期、脱銀工程中および/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113920 号等の明細書に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後、塗布までの時期の乳剤が塗布される前ならばいかなる時期、工程において添加されてもよい。また、米国特許第4,225,666 号、特開昭58−7629 号等の明細書に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加してもよく、分割して添加する化合物および化合物の組み合わせの種類を変えて添加してもよい。
【0062】
本発明における増感色素の使用量としては感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10−6〜1モルが好ましく、10−4〜10−1がさらに好ましい。
【0063】
本発明の感光層には、ハロゲン化銀とバインダー以外、必要に応じて非感光性銀塩、銀塩の還元剤、後述する色調剤やヒドラジン誘導体、染料、フィラー、界面活性剤、架橋剤などを添加してもよい。
【0064】
本発明の感材には必要に応じて、表面保護層、中間層、アンチハレーション層などの非感光層を設けてもよい。これらの非感光層は有機溶媒の塗布液を塗布して設けてもよいし、本発明の感光層と同様の水系溶媒の塗布液を塗布して設けてもよいが、後者が好ましい。この場合、バインダーとしてはゼラチン、ポリビニルアルコールおよびポリマーラテックスなどを用いることができる。
【0065】
本発明の非感光層には必要に応じて非感光性銀塩、還元剤、マット剤、すべり剤、染料、色調剤、界面活性剤、フィラー、架橋剤などを添加してもよい。
【0066】
本発明の感光層や非感光層の塗布方法では、多層が同時に塗布できるスライドホッパー等の装置で感光層と非感光層を同時に塗布を行う。
以上
【0067】
本発明の感光層、非感光層の乾燥方法にも特に制限はない。感材により異なるが30〜200℃程度の温度で30秒〜30分程度乾燥することが好ましい。感光層と非感光層を同時に乾燥させることは特に好ましい。
【0068】
この場合も上記の温度時間範囲で乾燥することが好ましい。感光層と非感光層を同時に乾燥することにより、良好な面状を得ることができる。
【0069】
本発明の感光層や非感光層は必要に応じ、乾燥前に0〜20℃程度の温度で5秒〜10分程度保持してもよい。
【0070】
本発明の感材に用いる支持体の材質には特に制限はない。例えば、紙、ポリエステル、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリカーボネートなどを用いることができる。これらのうち厚さ50〜200μm 程度の2軸延伸したポリエチレンテレフタレートは、強度、その他の点で特に好ましい。支持体は必要に応じて、塩化ビニリデンなどの下塗り層を設けてもよい。
【0071】
本発明の感材を露光する方法に特に制限はない。タングステンランプ、水銀ランプ、レーザー光源、CRT光源、キセノンランプ、ヨードランプ等を使用する公知の方法を用いることができる。これらのうちでは、レーザー光源を使用する方法が特に好ましい。
【0072】
【実施例】
実施例1
(ハロゲン化銀粒子Aの調製)
水700ml にフタル化ゼラチン22g 及び臭化カリウム30mgを溶解して温度40℃にてpHを5.0 に合わせた後、硝酸銀18.6g を含む水溶液159ml と臭化カリウムと沃化カリウムを92:8 のモル比で含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。ついで硝酸銀55.4gを含む水溶液476ml と六塩化イリジウム酸二カリウムを8μモル/リットルと臭化カリウムを1モル/リットルで含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で30分間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させ脱塩処理をし、フェノキシエタノール0.1 gを加え、 pH5.9、 pAg8.0 に調製した。沃化銀含有量コア8モル%、平均2モル%、粒子サイズ0.07μm、投影面積直径の変動係数8%、(100) 面比率86%の立方体粒子であった。
【0073】
調製したハロゲン化銀粒子Aに対し、沃化カリウムを銀に対して1モル%添加して35℃にて1時間攪拌した。その後温度を60℃に昇温し、ハロゲン化銀1モルに対して増感色素Aを5×10−4モル、増感色素Bを2×10−4モル攪拌しながら添加した。その後、銀1モル当たりチオ硫酸ナトリウム85μモルと2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルジフェニルスルフィンセレニドを11μモル、2μモルのテルル化合物1、塩化金酸3.3μモル、チオシアン酸230μモルを添加し、120分間熟成した後、30℃に急冷してハロゲン化銀粒子Aの調製を終了した。
【0074】
【化2】
【0075】
【化3】
【0076】
(有機酸銀微結晶分散物の調製)
ベヘン酸40g、ステアリン銀酸7.3 g、水500ml を温度90℃で15分間攪拌し、1NーNaOH187mlを15分間かけて添加し、1Nの硝酸水溶液61mlを添加して50℃に降温した。次に1N硝酸銀水溶液124ml を2分間かけて添加し、そのまま30分間攪拌した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、濾水の伝導度30μS/cmになるまで固形分を水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして取り扱い、乾燥固形分34.8g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール12gおよび水150ml 添加し、良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mm のジルコニアビーズ840 g用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて5時間分散し、電子顕微鏡観察により平均短径0.04μm,平均長径0.8 μm、投影面積変動係数30%の針状粒子である有機酸銀の微結晶分散物の調製を終了した。
【0077】
(素材固体微粒子分散物の調製)
テトラクロロフタル酸、4−メチルフタル酸、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、フタラジン、トリブロモメチルフェニルスルホンについて固体微粒子分散物を調製した。テトラクロロフタル酸に対し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.81gと水94.2cc添加して良く攪拌してスラリーとして10時間放置した。その後、平均直径0.5 mmのジルコニア製ビーズを100cc 用意し、スラリーと一緒にベッセルに入れ、有機酸銀微結晶分散物の調製に用いたものと同じ分散機で5時間分散してテトラクロロフタル酸の固体微粒子分散液を得た、粒子径は70ウエイト%が1.0 μm以下であった。その他の素材については適宜分散剤の使用量、及び所望の平均粒子経を得るために分散時間を変更し、それぞれの素材について固体微粒子分散液を得た。
【0078】
(乳剤層塗布液の調製)
先に調製した有機酸銀微結晶分散物(銀1モル相当)に対し、ハロゲン化銀粒子Aをハロゲン化銀10モル%/有機酸銀相当と、以下のポリマーラテックスおよび素材を添加して乳剤塗布液とした。ポリマーラテックスの平均粒径は0.1μm 程度であった。
【0079】
バインダー(種類は表1のとおり) 430 g
テトラクロロフタル酸 5 g
1,1−ビス(2=ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−ト
リメチルヘキサン 98 g
フタラジン 9.2 g
トリブロモメチルフェニルスルホン 12 g
4−メチルフタル酸 7 g
【0080】
【表1】
【0081】
(乳剤面保護層塗布液の調製)
イナートゼラチン10gに対し、界面活性剤A を0.26g 、界面活性剤B を0.09g 、シリカ微粒子(平均粒径サイズ2.5 μm)0.9 g、1,2−(ビスビニルスルホニルアセトアミド)エタン0.3 g、水64g添加して表面保護層とした。
【0082】
【化4】
【0083】
(発色剤分散物の調整)
酢酸エチル35gにたいし、下記化合物1、2をそれぞれ2.5g,7.5g添加して攪拌して溶解した。その液にあらかじめ溶解したポリビニルアルコール(PVA205(クラレ(株))10重量%溶液を50g添加し、5分間ホモジナイザーで攪拌した。その後、酢酸エチルを脱溶媒で揮発させ、最後に水で希釈し、発色剤分散物を調製した。
【0084】
【化5】
【0085】
(バック面塗布液の調製)
ポリビニルアルコール(PVA205(クラレ(株))30gにたいし、先に調製した発色剤分散物50g、下記化合物20g、水250g及びシルデックスH121(洞海化学社製真球シリカ、平均サイズ12μm)1.8g添加してバック面塗布液とした。
【0086】
【化6】
【0087】
<試料の作成>
青色染料で青味付けした厚さ175μm の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の一方の面にスライドホッパーを用いてバック層塗布液をバインダー塗布量が1.5g/m2となるよう塗布して、15℃60%RHの雰囲気下に1分間保持した後、40℃で20分間乾燥した。続いてこの反対面に感光層を塗布して40℃で20分間乾燥した。さらにその上に表面保護層を塗布して15℃60%RHの雰囲気下に2分間保持した後40℃で20分間乾燥した。各層の塗布量は、感光層は塗布銀量が2.2g/m2(バインダー塗布量約9g/m2)、表面保護層はバインダー塗布量が2g/m2となるようにした。
【0088】
いずれの場合も塗布速度は10m/min とした。
【0089】
これらのサンプルを25℃60%RHの雰囲気で10日間保存した後、以下の評価を実施した。
【0090】
<写真性の評価>
(常温写真性)
25℃60%RHで24時間調湿した試料を810nmダイオードを備えたレーザー感光計で露光した後、125℃25秒間加熱処理(現像)した。なお加熱処理は直径10cmのステンレスロ−ラ−に試料を圧着して行った。露光時の試料面とレーザー光の角度は80°とした。また、露光と現像は25℃60%RHの雰囲気で行った。得られた画像の光学濃度を濃度計で測定して最高濃度(Dmax)、最低濃度(Dmin=カブリ)感度を求めた。感度はDminより0.3高い光学濃度を与える露光量を求め各試料の露光量と試料101の露光量の比の逆数で表した。(常湿写真性)
【0091】
さらに調湿、露光、現像を25℃80%RHの雰囲気で同様の測定を行なった。(高湿写真性)
【0092】
<色調の評価>
常湿写真性の評価に用いた試料の最高濃度部分の色調を目視で評価し、以下の様にランク付けした。実用上許容されるのは、○レベルのみである。
○:黒色
△:茶色味をおびた黒色
×:茶色
【0093】
以上の評価の結果を上記表1に示した。この表から分かるように、本発明の実施例による感光材料は、常温、高湿のどのような温度状態においても写真性が良好(特にカブリが低い)であり、しかも色調も良好であった。
【0094】
実施例2
感光層と表面保護層を同時に塗布・乾燥する以外は実施例1と同様の評価を実施したところ、写真性や色調に関して実施例1と同様の結果が得られた。
【0095】
ただし実施例1の試料105から113の面状にわずかな乱れがあったのに反して実施例2の試料には面状の乱れがなく、より良好であった。
Claims (3)
- 支持体の少なくとも一方の面に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀を含む感光層を有し、有機銀塩と該銀塩の還元剤を含有する熱現像感光材料において、
前記感光層がスチレン−ブタジエン共重合体をバインダーとして含有し、
前記感光層は、溶媒の30wt%以上が水の塗布液を塗布乾燥して形成されたものであり、
前記支持体の感光層を有する面に少なくとも1層の非感光層を有し、該感光層と該非感光層とが同時に塗布されたものであることを特徴とする熱現像感光材料。 - 前記支持体の感光層を有する面に少なくとも1層の非感光層を有し、該感光層と該非感光層が塗布後同時に乾燥されたものである請求項1記載の熱現像感光材料。
- 前記感光層のバインダーの70wt%以上がスチレン−ブタジエン共重合体である請求項1又は請求項2に記載の熱現像感光材料。
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