JP3626259B2 - 油圧緩衝器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両搭載用の油圧緩衝器に関し、特に、振動周波数に感応して発生減衰力が所謂ハイカット調整されるようにした油圧緩衝器の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両に搭載される油圧緩衝器は、振動周波数に感応して発生減衰力が所謂ハイカット調整されるように構成されることが多い。
【0003】
例えば、図7に示す油圧緩衝器にあっては、基本的には、シリンダ1に対してピストンロッド2が出没されるその伸縮作動時に、ピストン部3に配設されている伸側減衰バルブ4及び圧側減衰バルブ5によって所定の大きさの減衰力が発生される。
【0004】
その一方で、該油圧緩衝器にあっては、上記減衰バルブ4,5を迂回してシリンダ1内にピストン部3によって区画されるロッド側油室Aとピストン側油室Bとを連通することになる所謂バイパス路を有してなり、該バイパス路は、シリンダ1内における振動周波数に感応して開閉されるようになっている。
【0005】
即ち、該バイパス路は、シリンダ1内における振動周波数が低周波数領域にあるときに、ピストンナット6の内空部6aに摺動可能に収装されたスプール10が所謂後退方向たる下方、又は上方に摺動することで閉鎖される。
【0006】
そして、スプール10は、その上下に形成される油室たる圧力室R1,R2にオリフィスO1又はO2を介して一次遅れの油圧が供給されることで下方又は上方に摺動する。
【0007】
因に、ここにおけるバイパス路は、ピストンロッド2の先端インロー部2aの近傍部に開穿されてロッド側油室Aに連通する横孔2cと、ピストンロッド2の先端インロー部2aの軸芯部に開穿され上記横孔2cに連通する縦孔2dと、ピストンナット6の内空部6aと、からなる。
【0008】
そして、ピストンナット6の内空部6aでは、スプール10の外周に形成された環状溝10aと、スプール10を摺動可能に収装するスプールボディ11と、スプールボディ11に上下に隔成状態に形成されて上記環状溝10aに連通する一対の開口11aと、スプールボディ11を所定位置に定着させる上下一対のリテーナ12,12と、各リテーナ12,12に形成され各開口11aに連通するスリット孔12a,12aと、によってバイパス路の一部を形成している。
【0009】
また、リテーナ12に形成の各スリット孔12aのうち、上方のスリット孔12aは、前記ピストンロッド2に開穿の縦孔2d側の内空部6a内に、下方のスリット孔12aはピストン側油室Bに連通するように設定されている。
さらに、スプール10は、これを上下方向から挟むように配設される上下一対のスプリングS1,S2で附勢されていて、無負荷の時にバランスして所謂中立状態に維持されるように設定されている。
【0010】
それ故、以上のように形成されている従来の油圧緩衝器にあっては、その伸縮作動時であって、シリンダ1内における振動周波数が低周波数領域にあるときには、高圧側油室からの油圧がオリフィスO1またはO2を介して一次遅れの油圧となって一次遅れの圧力室R1あるいはR2に供給される。
【0011】
その結果、シリンダ1内における振動周波数が低周波数領域にあるときの、例えば、該油圧緩衝器における伸側作動時には、図8に示すように、スプール10が図中で下降方向となる後退方向に摺動してバイパス路を閉鎖することになり、このとき、伸側減衰バルブ4において所定の大きさの減衰力、即ち、高い減衰力が発生されることになる。
【0012】
一方、シリンダ1内における振動周波数が低周波数領域を脱して、中周波数領域以上、特に、高周波数領域になるときには、例えば、伸側作動時において高圧側油室とされるロッド側油室Aからの圧油が伸側の一次遅れの圧力室R1に供給されなくなる。
【0013】
その結果、図7に示すように、スプール10が中立状態に維持されて、バイパス路が開放されたままの状態に維持される。
【0014】
従って、ロッド側油室Aから作動油がバイパス路を介してピストン側油室Bに流出されることになり、それまで伸側減衰バルブ4を通過することで発生されていた伸側減衰力が低い伸側減衰力に所謂ハイカット調整されることになる。
【0015】
因に、圧側作動時にも上記伸側の場合と逆方向に油が流れ、バイパス路の開閉が実現されるため発生される圧側減衰力が所謂ハイカット調整される。
【0016】
その結果、上記した従来の油圧緩衝器にあっては、以上のような所謂ハイカット調整がなされることで、シリンダ1内の振動周波数が低周波数領域にあるときには、高い減衰力を発生させてバネ上の制振を可能にして操縦安定性を改善し、シリンダ1内の振動周波数が低周波数領域を脱して、特に、高周波数領域になるときには、低い減衰力を発生させて乗り心地を改善することが可能になる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の油圧緩衝器にあっては、以下のような不具合が指摘されている。
【0018】
即ち、上記した従来例としての油圧緩衝器にあっては、シリンダ1内の振動周波数が低周波数領域にあるときに、スプール10が摺動して高減衰力の発生状態を現出させるように構成されているから、シリンダ1への入力振動に低周波要素がある限り、高減衰力が発生されることになる。
【0019】
従って、入力振動が低周波と高周波とを混在する重畳波振動のときには、高周波要素があるが故に発生減衰力が低く抑えられるのが望ましいにも拘らず、低周波要素があるが故に高減衰力の発生状態のままに維持され、所謂ハイカット調整が実現されなくなる不具合がある。
【0020】
また、ピストン速度が低速域にある場合には、高圧側油室からの油圧に基づく一次遅れの油圧が一次遅れの圧力室R1あるいはR2に供給される前に開放されているバイパス路を流れる油量が多くなり、設定したスプール10の摺動を実現できなくなる危惧がある。
【0021】
特に、油圧緩衝器が静止状態から極微低速で伸縮を開始するような場合には、高圧側油室からの作動油が開放されているバイパス路を流れ、スプール10の摺動を設定通りに現出し得なくなる危惧がある。
【0022】
この発明は、前記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、振動周波数に的確に感応して所定の減衰力を発生し得て、車両への搭載に最適となる油圧緩衝器を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の構成は、シリンダ内に二つの油室が区画され、二つの油室は減衰バルブを介して開閉され、更に前記減衰バルブを迂回して二つの油室を開閉するバイパス路が形成されている油圧緩衝器において、バイパス路の途中に当該バイパス路を開閉するスプールを摺動自在に配設し、スプールの受圧面側に形成される受圧面側油室とスプールの背圧面側に形成される背圧面側油室とをオリフィスを介して連通させ、更に背圧面側油室内にはフリーピストンが摺動自在に挿入され、このフリーピストンと前記スプールとの間に当該スプールを閉じ方向に附勢するスプリングを介在させたとするものである。
【0024】
この場合、オリフィスがスプールに形成されてるのが好ましく、また、スプールの中央に通孔を形成し、スプールの受圧面上に前記通孔を開閉するチェック弁が配設され、当該チェック弁に前記通孔に照準されるオリフィスを形成させてもよい。
【0025】
さらに、受圧面側室にチェック弁を閉じ方向に附勢するスプリングを設け、このスプリングは背圧面側室に設けた他のスプリングとバランスしてスプールをバイパスが閉じる位置に静止させるようにしてもよい。
【0026】
それ故、シリンダ内における振動周波数が低周波数領域にある場合には、高圧側油室からの油圧がスプールの受圧面側に形成されている受圧面側油室に供給されると共に、オリフィスを介してスプールの背圧面側に形成されている背圧面側油室にも供給される。
【0027】
このとき、受圧面側油室と背圧面側油室との間には、油圧差が現出されず、静止状態に維持されてバイパス路が閉鎖状態に維持される。
【0028】
その結果、高圧側油室からの作動油が減衰バルブのみを通過して低圧側油室に流出し、減衰バルブで設定された所定の減衰力の発生が可能になる。
【0029】
一方、シリンダ内における振動周波数が低周波数領域を脱して、特に、高周波数領域になると、高圧側油室からの油圧が受圧面側油室には供給されるが、オリフィスを介しての油圧が背圧面側油室には供給されなくなる。
【0030】
このとき、受圧面側油室と背圧面側油室との間には、油圧差が現出されることになり、スプールが背圧面側油室に配在のスプリングの附勢力に抗して後退方向に摺動してバイパス路を開放状態にする。
【0031】
この場合、スプールの後退方向への摺動時には、背圧面側油室に配在されているフリーピストンが後退しスプールの摺動を保障する。
【0032】
その結果、高圧側油室からの作動油がバイパス路を通過して低圧側油室に流出することになり、減衰バルブを通過する油量が減り、減衰力が小さくなる。
【0033】
シリンダ内における振動周波数が低周波数領域から高周波数領域になると、それまで発生されていた減衰力の発生状態がより低い減衰力の発生状態に変更調整され、減衰力が所謂ハイカット調整される。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図示した実施の形態に基づいて説明すると、図1に示すように、この発明の実施の形態に係る油圧緩衝器は、この種の車両搭載用の油圧緩衝器がそうであるように、例えば、車両の車軸側に配在されるシリンダ1内に車両の車体側に配在されるピストンロッド2の図中で下端側となる先端側を出没可能に挿通してなる。
【0035】
そして、ピストンロッド2の先端インロー部2aには、シリンダ1内に摺動可能に収装され該シリンダ1内に上方油室たるロッド側油室Aと下方油室たるピストン側油室Bとを区画形成するピストン部3が連設されている。
【0036】
また、ピストン部3を構成するピストン本体3aには、ロッド側油室Aとピストン側油室Bとの連通を可能にする伸側ポート3b及び圧側ポート3cが開穿されており、伸側ポート3bの下流端が伸側減衰バルブ4で、また、圧側ポート3cの下流端が吸い込みバルブ7で、それぞれ開放可能に閉塞されている。
【0037】
ピストンロッド2の先端インロー部2aには、吸い込みバルブ7とピストン本体3aと伸側減衰バルブ4が直列に挿入され、これらの部材は上記インロー部に螺着した中空なピストンナット6の上端で挾持されている。
【0038】
伸側バルブ4は、ピストンナット6の段部に支持されたスプリング4aでバックアップされている。
【0039】
また、吸い込みバルブ7は、伸側ポート3bに対向する開口7aを有してロッド側油室Aと伸側ポート3bとの連通を可能にしている。
【0040】
一方、該油圧緩衝器は、伸側減衰バルブ4及び吸い込みバルブ7を迂回してロッド側油室Aとピストン側油室Bとの連通を可能にするバイパス路を有してなるとしている。
【0041】
該バイパス路は、図示例では、ピストンロッド2の先端インロー部2aの上方近傍部に開穿されてロッド側油室Aに連通する横孔2cと、ピストンロッド2の先端インロー部2aの軸芯部に開穿されて上記横孔2cに連通する縦孔2dと、ピストンナット6の内空部6aと、ピストンナット6の周壁部6bに形成された透孔6cと、からなる。
【0042】
そして、該バイパス路は、ピストンナット6をハウジングとするように該ピストンナット6内、即ち、上記内空部6aに摺動可能に収装されたスプール10が所謂中立状態におかれて静止するときに遮断されると共に、スプール10が図中で下降方向となるその後退方向に摺動するときに開放されることになるように設定されている(図3参照)。
【0043】
即ち、図示例において、該バイパス路は、透孔6cが摺動するスプール10で開閉されることで、該バイパス路が開閉されるとしている。
【0044】
ところで、図示例にあって、ハウジングたるピストンナット6の内空部6aには、スプール10の配在によって、上方の受圧面側油室R3と下方の背圧面側油室R4とが区画形成されており、背圧面側油室R4内下方には、フリーピストン13が上下摺動自在に配設されている。
【0045】
そして、受圧面側油室R3と背圧面側油室R4にはそれぞれ第1,第2のスプリング12,12が配設されていて、該スプリング12,12がスプール10を上下から挾持し、その附勢力がバランスしてスプール10を所謂中立状態にして静止させるときに、前記透孔6cを閉塞するように設定されている。
【0046】
尚、背圧面側油室R4に配設された下方の第1のスプリング12は、図中で下端となるその基端がピストンナット6の周壁部6bに嵌着された割りリング14に担持される環状バネシート15に係止されている。
【0047】
フリーピストン13は、図中で下面側となるその背面側に配設されたスプリング13aで図中で上昇方向となる前進方向に附勢されており、該スプリング13aの図中で下端となるその基端がピストンナット6の周壁部6bのカシメ端6dに固着されたシート部材16に係止されている。
【0048】
尚、シート部材16は、開口16aを有していて、フリーピストン13の背面側とピストン側油室Bとの連通を可能にしている。
【0049】
一方、スプール10は、図中で中央となるその軸芯部に受圧面側油室R3と背圧面側油室R4との連通を許容する通孔10bを有してなると共に、図中で上面となるその受圧面に背圧面側油室R4からの油圧が通孔10bを介して受圧面側油室R3に解放されることを許容するチェック弁17を隣接させている。
【0050】
チェック弁17は、第2のスプリング12で閉じ方向に附勢されている。
【0051】
尚、スプール10は、図示例にあって、その外周にハウジングたるピストンナット6の周壁部6bの内周に摺接されるシール部材10cを介装している。
【0052】
チェック弁17は、その中央にオリフィス17aを有してなるもので、図2に示すように、周辺固定部17bと、中央シート部17cと、中央シート部17cを周辺固定部17bに連設させる連結部17dと、を有してなる。
【0053】
そして、中央シート部17cが通孔10bを閉塞する大きさに設定されてなると供に、該中央シート部17cに通孔10bに照準されるオリフィス17aを開穿してなる。
【0054】
また、連結部17dは、背圧面側油室R4からの油圧が通孔10bを介して中央シート部17cに加わるときに、これが撓み部になって、中央シート部17cを上昇させるようにしてチェック弁17を開放するように機能する。
【0055】
それ故、以上のように形成されたこの実施の態様に係る油圧緩衝器では、ピストン部3がシリンダ1内を上昇する伸側行程時には、基本的には、高圧側油室となるロッド側油室Aからの作動油がピストン部3の伸側バルブ4を介して低圧側油室たるピストン側油室Bに流出される。
【0056】
そして、作動油が伸側バルブ4を通過するときに、所定の大きさの伸側減衰力が発生されることになる。
【0057】
ところで、上記の伸側行程時には、ロッド側油室Aからの作動油がバイパス路を介してもピストン側油室Bに流出されるようになり、従って、ロッド側油室Aからの油圧がピストンロッド2に開穿の横孔2c及び縦孔2dを介してピストンナット6の内空部6a、即ち、スプール10の受圧面側に形成されている受圧面側油室R3内に供給される。
【0058】
このとき、シリンダ1内における振動周波数が低周波数領域にあるときには、受圧面側油室R3に供給された油圧がチェック弁17に形成のオリフィス17aを介してスプール10の背圧面側に形成されている背圧面側油室R4にも供給され、この際、フリーピストン13は下降する。
【0059】
従って、受圧面側油室R3と背圧面側油室R4との間には、油圧差が現出されなくなり、それ故、スプール10が一対の第1,第2のスプリング12で中立状態に維持されていることと相俟って静止状態に維持されてバイパス路が閉鎖状態に維持されることになる(図1参照)。
【0060】
その結果、上記の伸側行程時には、ロッド側油室Aからの作動油が減衰バルブ4のみを通過して低圧側油室たるピストン側油室Bに流出することになり、減衰バルブ4で設定された所定の減衰力の発生が可能になる。
【0061】
上記背圧面側油室R4に供給された油圧は、ピストン部3の摺動方向が所謂逆方向になるときに、スプール10に開穿されている通孔10b及び該通孔10bを閉塞するように配設されているチェック弁17を介して受圧面側油室R3に解放される。
【0062】
一方、上記の伸側行程時において、シリンダ1内における振動周波数が低周波数領域を脱して、特に、高周波数領域になると、ロッド側油室Aからの油圧が受圧面側油室R3には供給されるが、オリフィス17aを介しての油圧が背圧面側油室R4には供給されなくなる。
【0063】
その結果、このときには、受圧面側油室R3と背圧面側油室R4との間には、油圧差が現出されることになり、従って、スプール10が背圧面側油室R4に配在のスプリング12の附勢力に抗して図中で下降方向となる後退方向に摺動して透孔6cを開き、バイパス路を開放状態にする。
【0064】
尚、スプール10の後退方向への摺動時には、背圧面側油室R4に配在されているフリーピストン13がこれを附勢するスプリング13aの附勢力に抗して図中で下降するように後退してスプール10の摺動を保障する。
【0065】
その結果、ロッド側油室Aからの作動油がバイパス路を通過してピストン側油室Bに流出することになり、伸側減衰バルブ4を通過する油量が減り、該伸側減衰バルブ4で設定された所定の減衰力が発生されなくなる。
【0066】
即ち、シリンダ1内における振動周波数が低周波数領域から高周波数領域になると、それまで発生されていた減衰力の発生状態がより低い減衰力の発生状態に変更調整される、即ち、減衰力が所謂ハイカット調整されることになる。
【0067】
上記した所謂ハイカット調整は、図4に示すこの発明の他の実施の形態に係る油圧緩衝器おけるベースバルブ部8においても現出される。
【0068】
尚、この実施の形態に係る油圧緩衝器は、シリンダ1の外周に外筒1aを有していて、シリンダ1と外筒1aとの間にリザーバ室Cを形成する複筒式に形成されている。
【0069】
そして、外筒1aの下端とシリンダ1の下方、即ち、後述するベースバルブ部8の下方をボトム部材1bで閉塞し、リザーバ室Cがベースバルブ部8を介してシリンダ1内のピストン側油室Bに連通されるとしている。
【0070】
この実施の形態のベースバルブ部8は、圧側減衰バルブ5と吸い込みバルブ7を配設させるバルブシート部材8aの下方に配設の筒状スぺーサ8bの内部に所謂ハイカット調整を可能にする構造部分を配在する態様に構成されている。
【0071】
バルブシート部材8aは、その外周側がシリンダ1の下端と筒状スぺーサ8bの上端との間に挟持されており、筒状スぺーサ8bの内側油室Dとピストン側油室Bとの連通を可能にする圧側ポート8c及び伸側ポート8dを有している。
【0072】
そして、圧側ポート8cの下流端が圧側減衰バルブ5で開放可能に閉塞されると共に、伸側ポート8dの下流端が吸い込みバルブ7で開放可能に閉塞されるとしている。
【0073】
尚、上記内側油室Dは、筒状スぺーサ8bに開穿の通孔8eを介して前記リザーバ室Cに連通している。
【0074】
バルブシート部材8aは、その軸芯部に固定ピン9を貫通させてなり、該固定ピン9にナット18が螺着されることで、上記圧側減衰バルブ5と吸い込みバルブ7の所定位置への配設を実現している。
【0075】
そして、この実施の形態にあっては、上記ナット18をスプール10を摺動可能に収装させるハウジングに設定しており、上記固定ピン9に開穿されている透孔9aを介してハウジング内、即ち、ナット18の内空部18aをピストン側油室Bに連通させるとしている。
【0076】
上記ハウジングとしてのナット18は、その一部たる上端部を除いて、前記したピストンナット6と同一の構造に形成されているもので、スプール10を摺動させる周壁部18bと、スプール10の摺動で開閉される透孔18cと、周壁部18bの下端部たるカシメ端18dと、を有してなる。
【0077】
また、該ナット18の内空部18aにおける所謂ハイカット調整のための構造は、前記した実施例のピストンナット6の内空部6aにおける構造と同一に構成されている。
【0078】
従って、その構成が同一となる部分については、図中に同一の符号を付するのみとして、その詳しい説明を省略する。
【0079】
それ故、以上のように形成されたこの実施の形態の油圧緩衝器にあっても、前記した実施の形態の場合と同様に、シリンダ1内における振動周波数が低周波数領域から高周波数領域になると、高圧側油室たるピストン側油室Bからの作動油の通過で、それまで圧側減衰バルブ5で発生されていた圧側減衰力の発生状態がより低い圧側減衰力の発生状態に変更調整される、即ち、圧側減衰力が所謂ハイカット調整されることになる。
【0080】
次に、図5は、本発明の他の実施の形態を示すもので、これは、図1の実施の形態を変形したものであり、スプール10の中央にオリフィス20を形成して受圧面側油室R3と背圧面側油室R4とを連通させている。
【0081】
また、背圧面側油室R4内にはフリーピストン13を摺動自在に設け、このフリーピストン13とスプール10との間にスプール10を閉じ方向に附勢するスプリング12を介在させている。
【0082】
この場合、スプール10は、スプリング12で附勢され、中立時にはその外周上端21がピストンナット6の内周段部22に当接し、バイパス路、即ち透孔6cを閉じる。
【0083】
従って、振動周波数が低周波数領域の時受圧面側油室R3の油圧がオリフィス20を介して背圧面側油室R4に導かれるから、両油室R3,R4は同圧となってスプール10は変位せず、バイパス路は閉じたままとなる。
【0084】
他方、振動周波数が高周波数領域になると圧油がオリフィス20を流れず、その結果受圧面側油室R3の内圧が高くなり、これがスプリング12に打ち勝つとスプール10がスプリング12に抗して下降し、透孔6cを開く。
【0085】
その他の構成,効果は図1の実施の形態と同じである。
【0086】
さらに、図6は、本発明の他の実施の形態を示し、これは、図4の実施の形態におけるベースバルブ部8を変形したものである。
【0087】
即ち、この場合には、図5と同じくスプール10の中央にオリフィス20を形成し、スプール10の下方たる背圧面側油室R4にスプール10を閉じ方向に附勢するスプリング12を設けている。
【0088】
しかし、中立時にはスプール10がスプリング12で押上げられ、その外周上端21がナット18の内周段部22に当接して透孔18cを閉じている。
【0089】
その他の構成,効果は図4,図5の実施の形態と同じである。
【0090】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、シリンダ内の振動周波数が低周波数領域にあるときに、スプールが閉じ状態に維持されてバイパス路を閉鎖して言わば高い減衰力の発生を可能にする一方で、シリンダ内の振動周波数が低周波数領域を脱し、特に、高周波数領域になるときには、スプールが摺動してバイパス路を開放して言わば低い減衰力の発生を可能にするように構成されてなるから、入力振動が低周波と高周波とを混在する重畳波振動の場合であっても、高周波要素に感応して発生減衰力を低くする調整、即ち、所謂ハイカット調整が確実に実現されることになる利点がある。
【0091】
また、この発明によれば、スプールは、振動周波数が低周波数領域にあるときには、スプリングの附勢力によって中立状態におかれて閉じ状態におかれるように構成されてなるから、ピストン速度が低速域にあり、所定の油圧を確保し得ないような事態であっても、確実にバイパス路を閉鎖して所定の高減衰力の発生状態を実現できることになる利点がある。
【0092】
そして、この発明によれば、特に、油圧緩衝器が静止状態から極微低速で伸縮を開始するような場合にあっても、スプールによるバイパス路の閉鎖が予め実現されているから、高圧側油室からの作動油がバイパス路を介して低圧側油室に流出されることがなく、確実に所定の高減衰力の発生を期待できる利点がある。
【0093】
従って、この発明に係る油圧緩衝器は、振動周波数に的確に感応して所定の減衰力を発生し得て、車両への搭載に最適となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態に係る油圧緩衝器を示す縦断面図である。
【図2】チェック弁を示す平面図である。
【図3】ハウジングたるピストンナット内に収装されたスプールが摺動した状態を示す部分縦断面図である。
【図4】この発明の他の実施の形態に係る油圧緩衝器をベースバルブ部を中心にして示す縦断面図である。
【図5】他の実施の形態に係る油圧緩衝器の一部切欠き縦断面図である。
【図6】他の実施の形態に係るベースバルブの一部切欠き縦断面図である。
【図7】従来例としての油圧緩衝器を図1と同様に示す縦断面図である。
【図8】図7に示す油圧緩衝器における要部の作動状態を図3と同様に示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
2 ピストンロッド
3 ピストン部
4 減衰バルブとしての伸側減衰バルブ
5 減衰バルブとしての圧側減衰バルブ
6 ハウジングとしてのピストンナット
6a,18a 内空部
8 ベースバルブ部
9 固定ピン
10 スプール
10b 通孔
12,13a スプリング
13 フリーピストン
17 チェック弁
17a オリフィス
18 ハウジングとしてナット
20 オリフィス
13 フリーピストン
17a,20 オリフィス
A ロッド側油室
B ピストン側油室
D 内側油室
R3 受圧面側油室
R4 背圧面側油室
Claims (4)
- シリンダ内に二つの油室が区画され、二つの油室は減衰バルブを介して開閉され、更に前記減衰バルブを迂回して二つの油室を開閉するバイパス路が形成されている油圧緩衝器において、バイパス路の途中に当該バイパス路を開閉するスプールを摺動自在に配設し、スプールの受圧面側に形成される受圧面側油室とスプールの背圧面側に形成される背圧面側油室とをオリフィスを介して連通させ、更に背圧面側油室内にはフリーピストンが摺動自在に挿入され、このフリーピストンと前記スプールとの間に当該スプールを閉じ方向に附勢するスプリングを介在させたことを特徴とする油圧緩衝器。
- オリフィスがスプールに形成されている請求項1の油圧緩衝器。
- スプールの中央に通孔を形成し、スプールの受圧面上に前記通孔を開閉するチェック弁が配設され、当該チェック弁に前記通孔に照準されるオリフィスが形成されている請求項1の油圧緩衝器。
- 受圧面側室にチェック弁を閉じ方向に附勢するスプリングを設け、このスプリングは背圧面側室に設けた他のスプリングとバランスしてスプールをバイパスが閉じる位置に静止させている請求項3の油圧緩衝器。
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