JP3624584B2 - 酸素psa用吸着剤、その製造法並びにそれを用いた酸素製造方法 - Google Patents

酸素psa用吸着剤、その製造法並びにそれを用いた酸素製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧力揺動吸着(Pressure Swing Adsorption 略してPSAと称される)により空気から酸素を分離回収するために用いる吸着剤、及びその製法並びにそれを用いた空気分離法に関するものである。
【0002】
酸素ガスは工業ガスの中でも最も重要なガスの一つであり、製鉄、パルプ漂白等を中心に広く用いられている。
【0003】
近年に至ってはゴミ焼却、ガラス溶融等の分野においてNO発生低減を目的として酸素富化燃焼が採用され始めており、地球環境保護の立場からも酸素ガスの重要性が益々増大している。
【0004】
酸素ガスの製造方法にはPSA法、膜分離法、深冷分離法等があるが、最近では高濃度の酸素ガスが低コストで得られるPSA法の比率が年々増大している。
【0005】
【従来の技術】
PSA法による酸素ガス製造には、窒素ガスを選択的に吸着するゼオライト吸着剤が用いられ、これまでは主にカルシウムカチオンでイオン交換した結晶性ゼオライトX又はAの吸着剤が用いられてきた。
【0006】
一方、米国特許3140933号においてリチウムカチオンでイオン交換した結晶性ゼオライトXが空気の分離特性に優れていることが公知となっており、最近になってリチウム交換結晶性ゼオライトXの吸着剤が見直されている。 米国特許3140933号では結晶性ゼオライトXはリチウム交換率が高いほど高性能であることが示されており、特公平5ー25527号、米国特許5268023号においてその事実が再確認されている。
【0007】
リチウム交換結晶性ゼオライトXはリチウム塩を含有する水溶液を用いて結晶性ゼオライトXをイオン交換することによって得られる。しかし希少金属であるリチウムは高価であるため、リチウム交換率の高い結晶性ゼオライトX吸着剤は非常に高価なものとなっていた。
【0008】
一方、リチウムカチオン以外に5%以上、実質的に15%〜30%のアルカリ土類カチオンを混合し、高価なリチウムカチオンの比率を低減した混合カチオン交換ゼオライトX吸着剤も提案されている(米国特許5174979号,5152813号他)。
【0009】
しかし5%以上のアルカリ土類カチオンを含有する結晶性ゼオライトXでは、窒素の吸着量は大きいものの、酸素の共吸着も大きく、結果的に窒素の選択吸着性が低いため、空気分離用の吸着剤としての性能は不十分なものであった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
リチウムカチオンでイオン交換した結晶性ゼオライトX吸着剤は、優れた窒素の選択吸着特性を有しているにも拘らず、リチウム交換率が高い吸着剤では、吸着剤コスト及びその様な吸着剤を用いて製造した酸素ガスコストが著しく高いものとなっていた。
【0011】
そこで高価なリチウムの含有率を極力低く抑え、なおかつ窒素の選択吸着性に優れるコストパーフォーマンスに優れた吸着剤の開発が強く望まれていた。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、リチウムカチオンでイオン交換した結晶性ゼオライトX吸着剤に関して詳細に検討した結果、リチウムカチオンが88%未満であっても、イオン交換における自由エネルギーに差のある混合一価カチオン水溶液でイオン交換することにより高い空気分離性能が得られ、特に結晶性ゼオライトXをまずリチウムカチオンがAlO四面体単位の会合比率で90%以上となるまでイオン交換することにより窒素の吸着に重要な役割をするイオン交換サイトであるサイトIII にリチウムカチオンを導入した後、ナトリウムカチオンを必須のカチオンとし、セシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンのいずれかの一価カチオン及び/又はこれらの混合カチオンを含む混合塩水溶液で再交換することにより、窒素吸着能に関与しないイオン交換サイトであるサイトI及びサイトIIのリチウムカチオンを抜き取ることにより特に優れた性能が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。本発明の吸着剤は高価なリチウムの含有量が少なくてすみ、高性能な吸着剤をより安価に提供することが可能である。
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で用いる吸着剤の母ゼオライト結晶は3.0より大でないSiO/Alモル比を有する結晶性ゼオライトXであり、特にSiO/Alモル比が1.8〜2.5の結晶性ゼオライトXであることが好ましい。
【0015】
結晶性ゼオライトXは結晶学的にはフォージャサイト型(以降FAU型と略記する)に分類され、以下の化学式で表される。
【0016】
O・Al・mSiO・lHO (m=2〜3,M:2/n 価のカチオン,l=0〜8)
ここで吸着剤のゼオライト種が結晶性ゼオライトXでなければならない理由を説明する。
【0017】
ゼオライトへの窒素及び酸素の吸着は物理吸着であり、特に窒素及び酸素の極性(四重極子)による静電的な吸着が主な吸着駆動力である。窒素は酸素に比べ高い四重極子モーメントを有するため、ゼオライトへの吸着が静電的な引力だけであれば窒素吸着は酸素吸着に比べ高い選択性が得られ、比揮発度として定義される窒素と酸素の選択性(ここでは分離係数と表現する)に高い値が期待できる。
【0018】
一方、窒素及び酸素はゼオライトに対して分散力(分子間力)によっても吸着される。分散力による吸着は吸着分子の極性に関係なく、窒素吸着と酸素吸着の選択性はないため、分離係数は1に近付く。分散力はゼオライト結晶と吸着分子との相互作用であるため、ゼオライト内の吸着空間が小さいほど分散力の影響が大きくなり、窒素吸着と酸素吸着の選択性は低下する。
【0019】
そのため窒素吸着の選択性を高めるためには母ゼオライト結晶の吸着空間は大きくなくてはならず、細孔の大きい結晶性ゼオライトXが空気分離には最も適したゼオライト種である。
【0020】
一方、結晶性ゼオライトYも結晶学的に結晶性ゼオライトXと同じFAUに属することが知られている。しかし、結晶性ゼオライトYは窒素吸着にとって重要なイオン交換サイトIII にリチウムカチオンが交換されないという特異的な性質を有するため、本発明の母ゼオライトには用いることができない。
【0021】
次に本発明で用いる吸着剤の母ゼオライト結晶が3.0より大でないSiO/Alモル比を有する結晶性ゼオライトXでなければならない理由を説明する。
【0022】
SiO/Alモル比が3以上では、ゼオライトはYとなり、先に述べた理由により用いることができない。
【0023】
ゼオライトの静電引力はゼオライトの交換カチオンによって形成されるため、カチオン数は多い方が好ましい。ゼオライトのカチオンはゼオライトのAlO四面体に対し電荷2価分が存在し得るが、単位重量当りのAlO比率の高いゼオライト、即ちSiO/Al比の小さいゼオライトほど吸着サイトが多くなる。
【0024】
結晶性ゼオライトXはSiO/Alモル比が3未満を取り得るが、本発明では特にSiO/Alモル比が小さい1.8〜2.5において高い性能が得られる。
【0025】
以上の理由から本発明の吸着剤の母ゼオライト結晶は結晶中のミクロ細孔が大きく、かつSiO/Al比の小さい結晶性ゼオライトX、すなわちSiO/Alモル比が3より大でない、特に1.8〜2.5の結晶性ゼオライトXであることが好ましい。
【0026】
次に本発明の吸着剤のイオン交換率について説明する。
【0027】
本発明の吸着剤はリチウムカチオンの比率はAlO四面体単位に会合しているリチウムカチオンが全カチオンの80%以上88%未満であり、特に85%以上88%未満であることが好ましい。
【0028】
本発明の最終的なリチウム交換率が88%以上、特に90%以上ではリチウムが高価であるため吸着剤コストが高くなるため好ましくない。一方リチウム交換率が80%未満では、目的のイオン交換サイトIII に十分なリチウムカチオンが残存できないために好ましくない。
【0029】
本発明の吸着剤はリチウム以外のカチオンとして、セシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンのいずれかの一価カチオン及び/又はこれらの混合カチオンを含むが、これらの一価カチオンの含有量は1%以上5%未満、特に2%から4%の範囲が好ましい。これら一価カチオンの含有量が5%以上ではサイトIII のLiを10%以上維持することはできず、空気分離特性が著しく低減する。カチオンの存在位置(サイト)に関しては後に詳述する。リチウムカチオンとこれら一価カチオン以外のカチオンは、ナトリウムカチオンである。
【0030】
本発明の吸着剤は結晶性X型ゼオライトのカチオン交換サイトIII に位置するリチウムカチオンが10%以上20%未満である。
【0031】
結晶性ゼオライトXには3つのイオン交換サイト(サイトI、サイトII、サイトIII と称する)が存在することは良く知られている。結晶性ゼオライトXのサイト位置を図1に示した。
【0032】
イオン交換サイトに位置するカチオンは、その周辺に静電場を形成し、極性物質を吸着する。サイトIII に位置するリチウムカチオンは結晶表面に裸で存在し、強い静電場が形成できるため、窒素吸着にとって好都合なサイトである。
【0033】
従来のイオン交換技術では、リチウムカチオンが全カチオンの80%未満ではリチウムカチオンは熱力学的に安定なサイトであるサイトI及びサイトIIに全て位置してしまう。そのためリチウム交換率が80%以下では窒素吸着能が低く、交換率が80%以上で初めてリチウムカチオンがサイトIII に位置し、交換率が高くなるにつれて窒素吸着性能が向上していた。
【0034】
本発明の吸着剤ではリチウムカチオン交換率が低いが、ゼオライトXの交換サイトIII に存在する有効なリチウムカチオンを10%以上とすることにより、交換率が90%以上の場合と同等の窒素の選択吸着性能が発揮することができる。一方、結晶性ゼオライトXのサイトIII に存在し得るカチオンは全カチオンの20%までであり、20%以上のリチウムカチオンをサイトIII に位置させることは不可能である。
【0035】
結晶性ゼオライトXのリチウムカチオンの比率は化学分析(ICP等)により正確に求めることができる。イオン交換サイトIII に存在するリチウムカチオンの比率は、エックス線結晶構造解析、又は中性子線解析によっても求めることができるが、より簡便には窒素の吸着特性から見積もることができる。
【0036】
従来のイオン交換法によるリチウム交換結晶性ゼオライトXは、リチウムカチオン交換率が80%から交換サイトIII に位置し始めるため、リチウム交換率が80%以上の結晶性ゼオライトXでは、サイトIII に位置するリチウムカチオンと窒素吸着性能が比例関係にあり、結晶性ゼオライトXのリチウム交換率とサイトIII に存在するリチウムの比率は窒素吸着特性(窒素吸着量、分離係数)から見積もることができる。
【0037】
次に本発明の結晶性ゼオライトX吸着剤の製造方法について説明する。
【0038】
本発明で用いる母ゼオライト結晶は3.0より大でないSiO/Alモル比を有する結晶性ゼオライトXであるが、結晶性ゼオライトXの製造方法は特に限定されず、公知の方法で合成することができる。例えばSiO/Alモル比が小さい結晶性ゼオライトXの製造方法は米国特許2882244号他に開示されている。
【0039】
本発明の吸着剤はバインダーを含んでも良いが、バインダー成分をゼオライト化したもの(バインダレス)でもかまわない。バインダー種は限定されず、シリカバインダー、アルミナバインダー、珪酸アルミニウムバインダー、粘土バインダー等が例示できる。バインダーは吸着性能を有しないためバインダーの比率は少ないことが好ましい。
【0040】
本発明の吸着剤のサイズ、形状も限定されず、例えば径が1.0〜2.0mmのビーズ形状、ペレット形状が例示できる。
【0041】
本発明の吸着剤は上述の結晶性ゼオライトXをリチウムカチオンで90%以上イオン交換し、結晶性ゼオライトXのイオン交換サイトのIII にリチウムカチオンを十分に交換しておくことが好ましい。この段階におけるリチウムカチオンの交換率は全カチオンの90%以上、特に95%から100%であることが好ましい。
【0042】
イオン交換方法は特に限定されないが、例えば結晶性ゼオライトXを水酸化リチウムでpH10〜11に調整したリチウム塩水溶液(例えば塩化リチウム水溶液)と接触させる方法が例示できる。イオン交換はバッチ式でも流通式でも良いが、流通式のイオン交換が効率的である。イオン交換の温度も特に限定されないが、温度は高い方が効率的であり40℃〜100℃、特に60℃〜90℃で実施することが好ましい。
【0043】
本発明ではリチウムカチオンで十分にイオン交換した結晶性ゼオライトXから、窒素の吸着に関与しない交換サイトI及びサイトIIのリチウムカチオンを他のカチオンで再イオン交換する。
【0044】
図2にカチオン交換の自由エネルギーの序列の一部を例示した。出発原料であるナトリウムカチオンの状態が基準となるためナトリウム型ゼオライトのエネルギー準位を0とした。
【0045】
この図2からわかる様に、ナトリウムカチオンからセシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンへのイオン交換する△Gは負の値であり、反応は進みやすい。
【0046】
一方、ナトリウムカチオンからリチウムカチオンへのイオン交換の△Gは正の値で、反応は起りにくく、さらにイオン交換の△GはサイトI、サイトII、サイトIII の順で大きくなり、サイトIII >サイトII>サイトIの順番で交換しにくい。リチウムでのイオン交換においてサイトIII >サイトII>サイトIの順番で△Gが大きいことは、イオン交換平衡定数から求められる。
【0047】
本発明ではリチウムカチオンで十分にイオン交換した結晶性ゼオライトXから、窒素の吸着に関与しない交換サイトI及びサイトIIのリチウムカチオンを他のカチオンで再イオン交換する。しかしリチウムカチオンでイオン交換した結晶性ゼオライトXをナトリウムカチオン単独のイオン交換液で再交換すると、サイトIII のリチウムカチオンの交換が最も大きな負の△Gを有するため、窒素吸着に重要なカチオンであるサイトIII のリチウムカチオンが優先的にイオン交換されてしまう。
【0048】
ここで本発明者等は、ナトリウムカチオンとセシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンのいずれかの一価カチオン及び/又はこれらの混合カチオンを含む混合イオン交換溶液の再交換においてはサイトIII のリチウムカチオンがナトリウムカチオンにイオン交換されるよりサイトI及びサイトIIのリチウムカチオンがセシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンのいずれかの一価カチオンとイオン交換する△Gの方が大きいことを見出し、ナトリウムカチオンとセシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンのいずれかの一価カチオン及び/又はこれらの混合カチオンを含むカチオンの混合塩系の再イオン交換ではサイトI及びサイトIIのリチウムカチオンを抜き取れることを見出した。
【0049】
本発明で再イオン交換に用いるイオン交換溶液はナトリウムカチオンと、セシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンのいずれかの一価カチオン及び/又はこれらの混合カチオンの両方を含有しなければならない。
【0050】
セシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンのいずれかの一価カチオン及び/又はこれらの混合カチオンの使用量は、再イオン交換された後の結晶性ゼオライトXの全交換カチオンの5%未満でなければならず、特に2%から4%の範囲が好ましい。これらの一価カチオンが結晶性ゼオライトXの全交換カチオンの5%以上では窒素の選択吸着性能が損なわれる。
【0051】
本発明のイオン交換では再イオン交換するイオン交換液の濃度は0.1N以下であり、特に0.01N以下であることが好ましい。再イオン交換液のイオン強度が強い(即ち濃度が高い)と、△Gの大きいサイトIII のリチウムカチオンが抜ける反応が進行しやすくなるため好ましくない。
【0052】
また再イオン交換温度も同上の理由から低い方が好ましく、60℃以下で行うことが好ましく、好都合なことに室温(25℃)で実施すれば良い。
【0053】
また再イオン交換時間は短い方が好ましい。再交換時間が長いと、イオン交換サイトがエネルギー的に安定な状態に移行し、サイトIII のリチウムカチオンがサイトI及びサイトIIと再交換してしまう。再イオン交換時間は5時間以内、特に2時間以内が好ましい。
【0054】
本発明の吸着剤のイオン交換処理によってサイトI及びサイトIIから回収されたリチウムは、イオン交換、化学沈殿法等により分離回収し、有効に再利用できる。リチウムカチオンの回収、再利用方法には各種公知の手法が適用出来るが、その方法は限定されるものではない。
【0055】
次に本発明の吸着剤は、上述のイオン交換の後、洗浄、乾燥及び熱処理(活性化)を施し初めて目的の吸着剤として用いる。
【0056】
洗浄、乾燥及び活性化条件は特に限定されないが、洗浄は純水、又は微量の水酸化リチウムでpHを弱アルカリに調整した水を用いることが例示できる。
【0057】
乾燥は、低温で行うことが好ましく室温から100℃、特に30℃〜60℃で行うことが好ましい。
【0058】
活性化は結晶性ゼオライトXに吸着している水分を加熱により除去する処理であるが、なるべく低温の水蒸気分圧の低い状態で行うことが好ましい。例えば、真空中300℃〜600℃における真空加熱処理や、加熱した低露点の空気、純窒素又は純酸素等を供給する内熱式の熱処理が例示できる。
【0059】
本発明の結晶性ゼオライトX吸着剤は、AlO四面体に会合しているリチウムカチオンが88%未満であるため、先に提案されているAlO四面体に会合しているリチウムカチオンが88%以上の吸着剤(米国特許4859217号,特公平5ー25527)とは異なるものである。
【0060】
本発明の結晶性ゼオライトX吸着剤は、アルカリ土類金属カチオンを全く用いておらず、従来提案されていたアルカリ土類金属カチオンが5%以上の結晶性ゼオライトX吸着剤(米国特許5174979号,5152813号他)とは全く異なるものである。
【0061】
本発明の結晶性ゼオライトX吸着剤は、リチウム以外の元素が一価カチオンであるため、二価又は三価のカチオンを添加することを提案している既報特許(特公平8ー4707号、特開平7ー256094号)とは異なるものである。
【0062】
本発明の吸着剤はリチウムカチオンの全交換率は米国特許5268023号と重複しているが、米国特許5268023号の方法ではサイトIII のリチウムカチオンは最大で8%までしか入り得ないため、サイトIII のリチウムカチオンが10%以上の本発明の吸着剤は米国特許5268023号の吸着剤とは異なるものである。
【0063】
本発明の吸着剤は、優れた窒素の選択吸着能を有するため、空気から窒素を選択的に吸着させ、製品として酸素ガスを得る圧力揺動吸着法(PSA法)に用いる吸着剤として極めて優れた性能を有するものである。
【0064】
本発明でいう圧力揺動吸着法(PSA法)は、圧力を変動させながら空気中の窒素を選択的に吸着させ、製品として酸素ガスを得る酸素PSA法であればその運転条件等には特に限定はなく、4塔式から3、2塔式のPSA法、VSA法、VPSA法等、揺動吸着の稼働圧力範囲に依らず高い性能が発揮できるものである。
【0065】
【実施例】
次に本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
実施例1〜10
結晶性ゼオライトXをまず1Nの塩化リチウム(水酸化リチウムでpH〜11に調整)を用いリチウム交換率を95%とし、純水で洗浄した。次に塩濃度が0.01N以下のナトリウムと、ルビジウム、セシウム、タリウム、銀、カリウムの混合塩化物水溶液を用い、室温(25℃)、1時間再イオン交換した。再イオン交換した結晶性ゼオライトXは、純水で洗浄後、40℃で一晩乾燥し、350℃の真空状態で1時間活性化した。活性化時の圧力は5torr以下で行った。
【0067】
表1、表2及び図3〜6に母ゼオライトである結晶性ゼオライトXのSiO/Alモル比(Si/Al)、Li/Al比、カチオン交換率、700torrにおける窒素吸着量(QN2)、窒素分圧700torrにおける空気の分離係数(α)を示した。
【0068】
【表1】
Figure 0003624584
【0069】
【表2】
Figure 0003624584
【0070】
窒素分圧が700torrにおける空気の分離係数(α:比揮発度)は以下の数1で算出した。
【0071】
【数1】
Figure 0003624584
【0072】
図3〜6には従来技術で得られるLi交換ゼオライトの性能も併せて示した。本発明の方法ではリチウムカチオン交換率が80%台で、従来技術を用いた場合より高い窒素吸着量、分離係数が得られた。
【0073】
実施例11〜20
結晶性ゼオライトX90重量%、バインダーとしてカオリンバインダー10重量%よりなる直径1.5mmφの成型体を造粒し、実施例1〜10の組成となる様にイオン交換した吸着剤を用いて、実際のPSA操作を行った。
【0074】
PSA操作は、容量2リットルの吸着塔が2本からなる2塔式とし、吸着サイクルは、吸着1分、脱着30秒、複圧30秒とした。圧力スイング範囲は、吸着圧力890torr(窒素分圧700torr)、脱着圧力180torrとし、吸着塔の温度は0℃及び10℃の2点で行った。
【0075】
結果を表3及び表4に示した。
【0076】
【表3】
Figure 0003624584
【0077】
【表4】
Figure 0003624584
【0078】
本発明の吸着剤は、実際のPSA操作においても高い性能を示し、特に実プラントにおいて問題となる低温特性(0℃)においても高い性能が発揮された。
【0079】
比較例1〜4
結晶性ゼオライトXをまず1Nの塩化リチウム(水酸化リチウムでpH〜11に調整)を用いリチウム交換率を87%及び95%とした。リチウム交換率95%の成形体は塩濃度が0.01N以下の塩化ナトリウム単独水溶液で、室温(25℃)、1時間再イオン交換し、リチウム交換率を87%とした。
【0080】
再イオン交換した結晶性ゼオライトXは、実施例と同様に純水で洗浄後、40℃で一晩乾燥し、350℃の真空状態で1時間活性化した。活性化時の圧力は5torr以下で行った。
【0081】
結果を実施例と同様に表1、表2及び図3〜6示したが、本発明の方法に比べ低い性能しか得られなかった。
【0082】
比較例5〜8
実施例と同様の成型体を用い、比較例1〜4の組成となる様にイオン交換した吸着剤を用いて、実際のPSA操作を行った。PSA操作は、実施例と同様の装置、条件で行った。結果を表3、表4に示した。
【0083】
比較例の吸着剤では酸素量、回収率において、劣る結果しか得られなかった。
【0084】
【発明の効果】
本発明の吸着剤は、結晶性ゼオライトXにおいて窒素の選択吸着に役に立たないサイト(サイトI、サイトII)に位置するリチウムカチオンの含有率が少なく、かつ高い窒素の吸着能を有するサイト(サイトIII )に位置するリチウムカチオンの含有率が多いため、圧力揺動吸着法(PSA法)によって酸素ガスを得るために用いる吸着剤として優れたコストパフォーマンスを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶性ゼオライトXにおいて、3つのイオン交換サイト(サイトI、サイトII、サイトIII と称する)の位置を示す図である。
【図2】イオン交換の自由エネルギー序列を示す図である。
【図3】SiO/Al=2.5の場合の実施例1〜5及び比較例1〜2におけるLi交換率による窒素吸着量及びサイトIII のLi交換率の変化を示す図である。
【図4】SiO/Al=2.5の場合の実施例1〜5及び比較例1〜2におけるLi交換率による分離係数及びサイトIII のLi交換率の変化を示す図である。
【図5】SiO/Al=2.0の場合の実施例6〜10及び比較例3〜4におけるLi交換率による窒素吸着量及びサイトIII のLi交換率の変化を示す図である。
【図6】SiO/Al=2.0の場合の実施例6〜10及び比較例3〜4におけるLi交換率による分離係数及びサイトIII のLi交換率の変化を示す図である。

Claims (5)

  1. 3.0より大でないSiO2/Al23モル比を有する結晶性ゼオライトXであり、なおかつAlO2四面体単位に会合しているリチウムカチオンが全カチオンの80%以上88%未満であり、セシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンのいずれかのカチオン及び/又はこれらの混合カチオンが1%以上5%未満であり、残りのカチオンがナトリウムイオンである結晶性ゼオライトX吸着剤。
  2. 請求項1に記載の結晶性ゼオライトX吸着剤において、結晶性ゼオライトXのカチオン交換サイトIII に位置するリチウムカチオンが全カチオンの10%以上20%未満であることを特徴とする結晶性ゼオライトX吸着剤。
  3. 3.0より大でないSiO2/Al23モル比を有する結晶性ゼオライトXのAlO2四面体単位に会合しているチオンの90%以上をリチウムカチオンでイオン交換した後、ナトリウムカチオンを必須のカチオンとし、セシウムカチオン、ルビジウムカチオン、カリウムカチオン、タリウムカチオン、銀カチオンのいずれかの一価カチオン及び/又はこれらの混合カチオンを含む混合塩水溶液で再イオン交換し、AlO2四面体単位に会合しているリチウムカチオンを80%以上88%未満とした後、洗浄、乾燥並びに活性化することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の結晶性ゼオライトX吸着剤を製造する方法。
  4. 請求項3に記載の結晶性ゼオライトX吸着剤の製造方法において、当該混合塩水溶液の全カチオン濃度が0.1N以下であり、温度60℃以下、5時間以内で再イオン交換し、AlO2四面体単位に会合しているリチウムカチオンを80%以上88%未満とした後、洗浄、乾燥並びに活性化することを特徴とする結晶性ゼオライトX吸着剤の製造法。
  5. 請求項1又は請求項2に記載の結晶性ゼオライトX吸着剤を用い、該吸着剤に空気中の窒素を選択的に吸着させて酸素を分離回収する、圧力揺動吸着による空気分離方法。
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