JP3624527B2 - 鉄道車両の車体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の車体に係り、軽合金製型材によって構成されるものに好適な鉄道車両の車体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、鉄道車両用に、押出性、耐食性、溶接性に優れたアルミニウム材料が開発されている。それに伴い、鉄道車両では軽量化と製作の合理化の面から、この大型形材を有効に活用した車体が、現在主流となっている。特に、台枠構体は大きな車端圧縮荷重を負担する必要があり、強度的に有利な中空押出し型材を床部材として構成した構造が多く採用されてきている。このような構体としては、例えばアルミニウム合金と車両の軽量化(平成2年、日本アルミニウム連盟発行)、第308頁、320頁ないし第368頁に記載された車体構造が挙げられる。
【0003】
台枠構体のうち両端部には、相互の車両をつなぐための連結器とこれらを取付ける中梁および台車と車体を連結するための枕梁部材が必要となる。
【0004】
これらの部材には、強度的に非常に厳しい荷重が作用するため、上記の台枠構体の床部材を構成する中空押出し型材のみでは、これらの大荷重を負担することができない。
【0005】
そこで、中空の押出し型材で床部材を構成した台枠の車端部に中梁と枕梁を組合せ、剛性と強度を確保する構造がとられている。
【0006】
これらの車体構造例として、実公昭57−56929号公報に記載されているように、中空押出し型材の下面板に中梁を溶接結合する構造のものが挙げられる。また、中空押出し型材の下面に枕梁を接合した構造例として、上記、アルミニウム合金と車両の軽量化、第308頁に記載された構体構造が挙げられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来例のように、台枠構体の床部材を中空押出し型材で構成した構造においては、次のような課題がある。
【0008】
(1)中空押出し型材の下面に取付けられた中梁は、車体の中央側(長手方向)において、枕梁と直交し、結合される。したがって、中梁の高さが必要以上に高くなると枕梁の高さも大きくなる。
【0009】
この枕梁は、車体の幅方向全長にまたがるため、この部材の寸法(高さ)が床下の空間を確保する上で重要な役目を果すことになる。すなわち、床下には車体のほぼ全長にわたり、配管、配線などのぎ装部材が配設されるため、これらの部材と交差する枕梁の高さが床下空間を決める上で大きく影響することになる。
【0010】
(2)上記の中梁構造では、連結器を通して中梁に流れ込んだ荷重(車端圧縮荷重)を車体の両側面(側梁および側構体)へできるだけ早く、滑らかに伝達することが難しい。
【0011】
本発明の他の目的は、複数の型材によって構成される台枠を、効率的に製作できる台枠の製作方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、
複数の中空押出し形材の押出し方向を車体の長手方向に向けて配置して一体に結合した台枠を備えた鉄道車両の車体において、
下面に設置した枕梁と前記台枠の長手方向の端部との間の前記台枠は、車体の長手方向に沿って前記下面に配置した2つの中梁の間の第1の台枠と、車体の幅方向において前記第1の台枠の両端よりも外側の第2の台枠とからなり、
前記第1の台枠の車体の幅方向の幅として、該第1の台枠と前記第2の台枠との上面の結合のための幅は、前記第1の台枠と前記第2の台枠との下面の結合のための幅よりも大きく、前記第1の台枠と前記第2の台枠との結合以前は、第1の台枠を前記第2の台枠よりも上方から下方に移動させることができること、
により、達成される。
ここで、上記の「中梁」、「第1の台枠」、「第2の台枠」、「中空押出し形材」は実施例の「中梁6」、「中梁6,6の間の中空形材1」、「中梁6(6)と側梁2(2)との間の中空形材1」、「中空押出し形材1」にそれぞれ相当する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例を図1ないし図5によって説明する。図1は本発明を適用した鉄道車両の車体における台枠の構造を示す平面図である。図2は図1におけるA−A部断面図、図3は図1におけるB−B部断面図である。図4は図1におけるC−C部断面図である。図5は、図2の中梁の構造を示すa部の拡大断面図である。同図において、床部材1は軽合金製の中空押出し型材で構成されており、この床部材1は車体の長手方向に沿って配置されている。この床部材1は車体の幅方向に複数並べられ、それぞれ溶接によって接合されている。前記床部材1同士は、該床部材1の上面および下面すなわち両面を溶接することによって接合される。前記複数の床部材1すなわち本実施例の場合は5本の床部材1を接合して台枠を構成している。これらの床部材1の車体幅方向両端部には、側梁2が車体長手方向に沿って配置されている。各側梁2は、軽合金製の中空押出し型材で構成されており、前記床部材1より垂直寸法が長く構成されている。前記5本の床部材1の下面には、枕梁3が接合されている。この枕梁3は、前記5本の床部材1によって構成される台枠の台車によって支持される位置に設置されている。前記枕梁3の両端部分には、空気バネ受5が構成されている。前記複数の床部材1の長手方向端部には、端梁4が設置されている。この端梁4は、軽合金製の押出し型材で構成されており、車体幅方向に沿って配置されている。
【0014】
中梁6は、前記端梁4と枕梁3の間に設置される。この中梁6には、連結器が取付けられ、該連結器により隣接した車両に連結される。中梁6の車体中央側(車体長手方向の)の端部は、枕梁3に結合される。
【0015】
個々で、枕梁3に作用する荷重について考える。枕梁3は、空気バネの位置で支持され、車体重量が両側面の側構体を通過して付加される。
【0016】
図6は、上記の荷重が作用したとき、枕梁3に作用する曲げモーメント分布(枕梁の面外に作用する曲げモーメント)を示したものである。
【0017】
次に、中梁6に設けられた連結器を介して作用する車端荷重は、その一部を床部材1へ、他の残りは中梁の端部で結合される枕梁に伝達される。図7は、この荷重が作用した時は、枕梁に作用する曲げモーメント分布(枕梁の面内に作用する曲げモーメント)を示したものである。
【0018】
枕梁3の大きさ(高さおよび幅)は、上記曲げモーメントにより発生する応力の組合せによる最大応力を許容値以内に押さえることで決定される。特に、車端荷重が大きい条件の車種のものほど、枕梁の大きさは、上記の後者の応力により大きく影響されることになる。
【0019】
本発明では、図1および図2に示したとおり、枕梁3を含む車端部側において、中空押出し型材よりなる床部材1の中梁が取付けられる範囲(図1の斜線部に相当する部材)を該中空押出し型材とは別個の部材で構成する。図5は、この部材の詳細構造を示したものである。中梁6は、床部材1の上面の位置まで一体で成形した型材で構成する。この中梁6は、図5に示したように型材を分割した構造でも、これらを一体に成形した構造でもよい。
【0020】
図5に示した別部材(図1の斜線部に相当する部材)と一般の床部材(中空押出し型材)を容易に結合できるように、次に示す構造を採用する。すなわち、該別部材と一般の床部材を結合する位置において、該別部材の床部材に相当する下面板8の幅を上面板8′の幅より短くする。この構造により、図5の例では該別部材を先組みし、この一体化した別部材を該床部材へ上方から挿入し、両者を溶接結合することにより、台枠構体を構成することができる。
【0021】
図1に示した中梁構造部(斜線部)のうち、枕梁3と重なる部分については、図5に示した部材のうち、床部材の部分(中空構造部となる床部材厚さに相当する範囲)を残し、その下側に突出している部材を削り落して使用する。中梁6のうち、床部材に相当する部分より下側に突出した構造部には、2つのフランジ7および7′を設けている。
【0022】
中梁は、その高さが一般的に、連結器が取付けられる位置において最も高く、枕梁に近づくに従って低くなる構造をとる。上記の中梁6のフランジ7′は中梁の最も高い位置を示す。
【0023】
本発明では、中梁の加工を容易にするため、フランジ7より上の部分と下の部分を機械加工することにより、中梁の車体長手方向にその高さを変えられる構造としている。連結器は、中梁構造部のうち、床部材より最も突出した(背の高いすなわち垂直寸法が長い)位置に取付けられる。
【0024】
本構造を採用することにより、中梁に車端荷重が作用すると、中梁に流れ込んだ荷重が比較的滑らかに上側に位置する床部材に伝達される。車端荷重が床部材に容易に流れ込めば(車体長手方向に距離を必要とせずに)、中梁のうち床部材より下側に突出した構造部の荷重分担が少なくなるため、この構造部と連結される枕梁に作用する荷重も小さくなる。
【0025】
以上のことから、図7に示したとおり、枕梁に作用する曲げモーメントが軽減され、枕梁の高さを最小限にすることができる。
【0026】
本実施例によれば、中梁の床部材厚さより下側へ突出した構造部に2枚のフランジを設けており、両フランジ間の高さを機械加工で変えることにより、車体長手方向に任意の高さを有する軽量化した中梁構造を提供できる効果がある。
【0027】
前記実施例の台枠構造によれば、台枠の車体長手方向における床下空間を確保する上で支配的となる枕梁の高さを最小限にすることにより、車体長手方向に配置される配管、配線などを艤装する空間が確保でき、床下の艤装作業が大幅に改善される。また、一般の床部材とは別部材で構成した中梁構造部を先組みできる構造としているため、複雑な構成となる中梁構造部の製作が容易となり、枕梁に艤装のための複雑な加工を施す必要がなく、製作の合理化の面からも効果が大きい。
【0028】
さらに、中梁と床部材を一体の押出し型材で構成するため、中梁部材が母材化され、溶接結合部がなくなることによってその強度が向上するため、中梁の軽量化を図ることができる。
【0029】
ここで、特許請求の範囲中の「中梁」、「第1の台枠」、「第2の台枠」、「中空押出し形材」は前記実施例の「中梁6」、「中梁6,6の間の中空形材1B」、「中梁6 ( 6 ) と側梁2(2)との間の中空形材1C(1C)」、「中空押出し形材1」である。また、これを図2、図5に示す。図2、図5において、1B、1Cの矢印は車体の幅方向の範囲を示している。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、中梁構造部分を床部材とは別に独立して組立てることができるため、台枠製作の作業性を向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による鉄道車両の車体の一実施例の台枠部分を示した平面図である。
【図2】図1のA−A部における断面図である。
【図3】図1のB−B部における断面図である。
【図4】図1のC−C部における断面図である。
【図5】図2のa部に示された中梁の拡大断面図である。
【図6】台枠の枕梁に作用する垂直荷重の曲げモーメントの分布状態を示したモーメント分布図である。
【図7】台枠の枕梁に作用する車端荷重の曲げモーメントの分布状態を示したモーメント分布図である。
【符号の説明】
1…床部材、中空押出し形材、1B…中梁6,6の間の中空形材、1C…中梁6(6) と側梁2(2)との間の中空形材、2…側梁、3…枕梁、4…端梁、5…空気バネ受、6…中梁。
Claims (1)
- 複数の中空押出し形材の押出し方向を車体の長手方向に向けて配置して一体に結合した台枠を備えた鉄道車両の車体において、
下面に設置した枕梁と前記台枠の長手方向の端部との間の前記台枠は、車体の長手方向に沿って前記下面に配置した2つの中梁の間の第1の台枠と、車体の幅方向において前記第1の台枠の両端よりも外側の第2の台枠とからなり、
前記第1の台枠の前記中空押し出し形材の上下面は、前記第2の台枠の前記中空押し出し形材の上下面と実質的に同一面に結合されており、
前記第1の台枠の前記幅方向の両側の前記中空形材の下面には、前記中梁を押出しによって一体に備えており、
前記第1の台枠の車体の幅方向の幅として、該第1の台枠と前記第2の台枠との上面の結合のための幅は、前記第1の台枠と前記第2の台枠との下面の結合のための幅よりも大きく、前記第1の台枠と前記第2の台枠との結合以前は、第1の台枠を前記第2の台枠よりも上方から下方に移動させることができること、
を特徴とする鉄道車両の車体。
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- 1996-03-19 JP JP06249496A patent/JP3624527B2/ja not_active Expired - Fee Related
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