JP3623565B2 - 近接撮影用アダプタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピントセット位置が通常の被写体距離で固定されたカメラに取り付けて用いられ、近接撮影を可能にするアダプタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、写真撮影用のカメラとしては用途や機能に応じて非常に多くの種類のものが製造され、販売されている。最近では、手軽に写真撮影を楽しむことができるように、本出願人によりレンズ付きフイルムユニットが製造販売されている。レンズ付きフイルムユニットは、撮影レンズやシャッタ装置などの撮影機構を組み込んだユニット本体に予め未露光の写真フイルムを内蔵させたもので、面倒な写真フイルムの装填操作を行うことなく、購入したその場ですぐに写真撮影ができるようにしたものである。また撮影後にもそのまま現像取扱い店に出せばよいという簡便性から、このレンズ付きフイルムユニットは一般に広く利用されている。
【0003】
このようなレンズ付きフイルムユニットにおいても、例えば「Super写ルンですHi」(商品名)等のように基本的な撮影機構のみを組み込んだものから、「Super写ルンですFlash」(商品名)等のようにストロボ装置を備え、夜間や室内での撮影を可能にしたものなど様々な種類があり、ユーザーは用途に応じたものを選択することができる。最近では、手軽に撮影できるというだけではなく、レンズ付きフイルムユニットを用いながらも、ポートレート写真を撮ったり、あるいはペットや植物をクローズアップして撮影する等、至近距離にある被写体を撮影したいという要望が増えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このレンズ付きフイルムユニットは、低価格で提供できることを利点としており、可能な限りローコストで製造する必要性から、非常に簡単な構成となっている。このため、レンズ付きフイルムユニットにおいては、撮影レンズは一定径の絞り開口が形成されたレンズホルダー上に位置決め保持されており、そのピントセット位置を変化させることはできない。しかも、撮影レンズのピントセット位置は、より多くの撮影機会において標準的な撮影が行えるように設定されており、一般的に被写界深度を考慮したうえで被写体距離1m〜∞にピントがあうように構成されている。このため、レンズ付きフイルムユニットでは、被写体距離が1mよりも近くなるとピントをあわせることが不可能となり、その像を写真フイルム上に鮮鋭に結像させることはできない。
【0005】
一眼レフカメラ等の一般のカメラにおいては、ピントセット位置を通常よりも近距離側に変更する補助レンズを備えた専用のアダプタが用意されており、これを撮影レンズの前面に取り付けることで近接撮影が可能となる。もちろん、レンズ付きフイルムユニットにおいてもこの方法を用いることは可能ではあるが、前述したようにレンズ付きフイルムユニットは低価格で提供できることを利点としているため、これに用いるアダプタについても可能な限りローコストで製造し、より安価に提供されることが要求される。
【0006】
また、ストロボ装置を内蔵するレンズ付きフイルムユニットでは、ストロボの発光量は、被写体距離1m〜4mの被写体が適正露光されるように予め決められている。したがって、このレンズ付きフイルムユニットを用いて至近距離からストロボ撮影を行うと、被写体輝度が過大となり、露光オーバーとなってしまう。しかも、ストロボ光は、通常の被写体距離での撮影範囲内に均一に照射されるように配光特性が決められているため、通常よりも近距離側に設定された撮影範囲内においては、その中央部に集光してしまい、周辺部との光量差が大きくなる。これにより、得られるプリント写真は、その中央部が極端に白くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、近接撮影を可能にし、しかも安価に製造できる近接撮影用アダプタを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1及び請求項2に記載の近接撮影用アダプタは、本体部の前面に着脱されるアダプタ本体と、このアダプタ本体に固定された補助レンズと、遮光板に複数の開口を開けて構成し、ストロボ発光窓の周辺部からのストロボ光を通過させる開口よりも中央部からのストロボ光を通過させる開口を小さくしたマスク部材とから構成され、アダプタ本体の装着により補助レンズが撮影レンズの前面に位置してピントセット位置を通常の被写体距離よりも近距離側に変更し、かつマスク部材はストロボ発光窓の前面を覆ってストロボ光を減光するとともに、この減光の度合をストロボ発光窓の周辺部よりも中央部で大きくするものである。また、アダプタ本体に、その装着時に本体部の前面に設けられたファインダ対物窓を覆い、前面に凸面を向けたハーフミラーを設け、その反射像を観察して前面側からのフレーミングができるようにするのがよい。
【0009】
さらに、請求項3ないし請求項5に記載の近接撮影用アダプタは、アダプタ本体が本体部の前面に装着される基板に対して起伏自在であり、アダプタ本体の起立により補助レンズ,マスク部材,ハーフミラーがそれぞれ撮影レンズ,ストロボ発光窓,ファインダ対物窓の前面から退避して通常の被写体距離での撮影が可能となるものである。なお、基板及びアダプタ本体はプラスチックで一体成形するのがよい。また、基板をゴム紐によって本体部の前面に固定するとともに、このゴム紐の引張力によってアダプタ本体を起立する方向に付勢しておくのがよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図5は、ストロボ内蔵型のレンズ付きフイルムユニットの一例を示すものである。ユニット本体11は主にプラスチック成形され、全体を外装体12によって覆われている。外装体12は、レンズ付きフイルムユニット10の外観を綺麗にするためのものであり、外面に印刷が施された紙箱等が用いられる。外装体12の所要部には、撮影レンズ13,ファインダ対物窓14,ストロボ発光部15,ストロボ充電スイッチ16,シャッターボタン17,巻上げノブ18,及びカウンタ窓19等を外部に露呈させるための開口が設けられており、この外装体12をユニット本体11に被せたままの状態で撮影操作が行えるようになっている。撮影レンズ13は、被写体距離が1m〜∞で撮影が可能となるように、そのピントセット位置が被写体距離5m〜6m程度に設定されている。またストロボ発光部15からはストロボ光が放出され、その光量はプリント時の補正を考慮して、被写体距離1m〜3mの被写体が適正露光となるように決められている。また、被写体距離1m〜3mでの撮影範囲内に均一にストロボ光が照射されるように、ストロボ光の配光特性が決められている。
【0011】
図1及び図2は、上記レンズ付きフイルムユニット10に取り付けて用いる本発明の近接撮影用アダプタを示すものである。近接撮影用アダプタ20は、アダプタ本体21及び基部22と、これらを連絡するための一対のヒンジ部23a,23bとから構成されている。アダプタ本体21,基部22,及びヒンジ部23a,23bは、樹脂により一体成形されている。ヒンジ部23a,23bはアダプタ本体21及び基部22よりも薄肉に形成されており、このヒンジ部23a,23bで屈曲自在となっている。アダプタ本体21には、ヒンジ部23a,23bと近接する位置に一対の通し穴24a,24bが形成されている。この通し穴24a,24bには、表面側からゴム紐25の両端部25a,25bが挿通され、裏面側で結び玉を形成してゴム紐25が固定される。また基部22には、ヒンジ部23a,23bとは反対側の端縁部に、ゴム紐25の中央部25cを係止するためのフック27が設けられている。
【0012】
この近接撮影用アダプタ20は、図3に示すように、レンズ付きフイルムユニット10の前面に基部22で撮影レンズ13及びファインダ対物窓14を覆うように取り付けられ、ゴム紐25をレンズ付きフイルムユニット10の背面側から廻してフック27に掛けることで固定される。アダプタ本体21は、ヒンジ部23a,23bを軸にして、基部22の前面に重ね合わせられる近接位置(同図(A)参照)と、基部22の上方に跳ね上げられた標準位置(同図(B)参照)との間で揺動自在になっている。そして近接撮影用アダプタ20がレンズ付きフイルムユニット10の前面に取り付けられると、アダプタ本体21はゴム紐25の引張力によって標準位置側に付勢されている。
【0013】
図1及び図2において、基部22とアダプタ本体21とには一対の係合爪28a,28bが設けられており、これらが互いに係合したときにアダプタ本体21がゴム紐25の引張力に抗して近接位置で位置決め保持される。基部22側の係合爪28aの周囲にはスリット28cが形成されており、係合爪28aの前面28dを押圧すると、係合爪28aが撓んで係合爪28bとの係合が解除される。基部22にはヒンジ部23a,23bの間に突起29が設けられており、アダプタ本体21が近接位置から標準位置側に移動したときに、この突起29がアダプタ本体21に当接して更なる移動を阻止する。これにより、アダプタ本体21は標準位置で位置決めされる。なお、アダプタ本体21の周辺部には裏面側に突出した外周壁21aが設けられており、アダプタ本体21が近接位置に位置決めされたときに、外周壁21aが基部22の側方に覆い被さり、基部22とアダプタ本体21との間に外光が入り込むことを防止している。
【0014】
基部22には、レンズ付きフイルムユニット10の前面に露呈している撮影レンズ13及びファインダ対物窓14をそれぞれ露呈させるための2つの露呈開口31,32が形成されている。またアダプタ本体21には、2つの開口33,34が形成されている。これらの開口33,34は、アダプタ本体21が近接位置に位置決めされたときに、基部22に設けられた露呈開口31,32と各々対峙する位置に形成されており、開口33には補助レンズ35が、また開口34には被写体光の一部を反射する凸面状のハーフミラー36がそれぞれ嵌め込まれている。補助レンズ35は、ピントセット位置を通常の被写体距離よりも近距離側に変更するもので、焦点距離fが80mm〜800mm程度のレンズを用いればよい。本実施形態では、焦点距離が32mm程度の撮影レンズ13と併用したときに、被写界深度を考慮して被写体距離0.5mで撮影が可能となるように、焦点距離fが500mmのレンズを補助レンズ35として用いた。またハーフミラー36は、凸面の曲率半径Rを小さくするほどこのハーフミラー36上に映る範囲が広がり、逆に曲率半径Rを大きくすると映る範囲が狭まる。本実施形態においては、被写体距離0.5mでの撮影範囲がこのハーフミラー36上に丁度映るように曲率半径Rを設定した。
【0015】
またアダプタ本体21には、側方に突出してマスク部37が一体に設けられている。マスク部37には、大きさの異なる3種類の穴38a,38b,38cが複数形成されている。マスク部37の中央部には最も小さな穴38aが主に形成され、中央部から離れるにしたがってより大きな穴38b,38cが形成されている。このマスク部37は、アダプタ本体21が近接位置に位置決めされたときにストロボ発光部15の前面に配置され、ストロボ発光部15から放たれたストロボ光の光束の一部を遮る。
【0016】
マスク部37の各部の遮光量は、穴38a,38b,38cの占める面積に反比例するので、面積が最も小さくなる中央部で最も多くなり、面積が最も大きくなる周辺部に近づくにしたがって減少する。穴38a,38b,38cの各々の大きさ及び形成個数は、ストロボ発光部15から放たれるストロボ光の光量,拡散の程度,及び主要被写体までの距離に応じて定めればよい。発明者らの測定によれば、通常の被写体距離でストロボ撮影を行って被写体が適正露光となる光量のストロボ光を放出した場合、被写体距離0.5mの被写体に対しては、ストロボ光を(1/10)〜(1/5)光量の範囲内に減光すれば、実用上問題のない露光量の被写体像を得られることが確認されている。また、ストロボ発光部15から放たれるストロボ光は、ストロボ発光部15の周辺部での光量が中央部の光量の50%以上であれば、被写体距離1mよりも近距離に規定された撮影範囲内にほぼ均一に照射されることが確認された。そこで、本実施形態においては、ストロボ発光部15から放たれるストロボ光のうち90%の光束を遮り、10%光量のストロボ光のみが被写体に向けて照射されるようにした。また、マスク部37の周辺部を通過するストロボ光の光量が中央部を通過する光量の65%程度となるように、穴38a,38b,38cの大きさ,形成個数,及び配置を決定した。そして図4に示すように、マスク部37の縦横の長さA,Bを各々14.0mm,24.5mm、穴38a,38b,38cの各径をそれぞれ1.0mm,1.8mm,2.5mmとし、穴38a,38b,38cの形成個数をそれぞれ8個,16個,8個とした。また、穴38a,38b,38cの配置は図4に示したとおりである。
【0017】
上記のように構成された近接撮影用アダプタ20の製造工程においては、まずアダプタ本体21,基部22,及びヒンジ部23a,23bが樹脂により成形される。次に、アダプタ本体21の開口33,34に背面側から補助レンズ35とハーフミラー36とが嵌め込まれる。この後、ゴム紐25の両端部25a,25bが、アダプタ本体21の通し穴24a,24bに表面側から挿通され、裏面側で結び玉が形成される。これにより、ゴム紐25がアダプタ本体21に固定される。そして、基部22の表面にアダプタ本体21の裏面が当接するようにヒンジ部23a,23bを折り曲げ、一対の係合爪28a,28bを係合させると、近接撮影用アダプタ20が完成する。
【0018】
この製造工程においては、アダプタ本体21,基部22,及びヒンジ部23a,23bが一体に成形され、単一部品となっているので、その取り扱いが容易である。また、アダプタ本体21上に補助レンズ35,ハーフミラー36,及びゴム紐25の3部品を組み付けるだけなので、複雑な工程を要することなく、簡単に近接撮影用アダプタ20を組み立てることができる。しかも、構成部品数が少ないので、部材管理が簡便になる。さらに、ゴム紐25は廉価で入手がし易いので近接撮影用アダプタ20をより安価に製造することができる。
【0019】
この近接撮影用アダプタ20をレンズ付きフイルムユニット10に取り付ける場合には、まず基部22の裏面をレンズ付きフイルムユニット10の前面に当接させ、開口31,32内に撮影レンズ13及びファインダ対物窓14が入り込むように位置決めする。そして、ゴム紐25の中央部25cを引っ張り、レンズ付きフイルムユニット10の上面,背面,及び底面に廻してフック27に掛けると、近接撮影用アダプタ20がレンズ付きフイルムユニット10の前面に固定される。
【0020】
レンズ付きフイルムユニット10を用いて撮影を行うときには、撮影者は、まず巻上げノブ18の回動がロックされるまで回動操作し、撮影準備が完了してシャッターチャージ状態にあることを確認する。
【0021】
撮影者が自らを被写体として撮影を行うときには、アダプタ本体21を近接位置に移動し、係合爪28a,28bを係合させて基部22の前面に固定する。これにより、撮影レンズ13及びファインダ対物窓14の前面に、それぞれ補助レンズ35及びハーフミラー36が配置される。また、ストロボ発光部15の前面にはマスク部37が配置される。そしてストロボ撮影を併せて行うときには、ストロボ充電スイッチ16を押圧してストロボ発光用の電荷を充電する。
【0022】
撮影者は、レンズ付きフイルムユニット10を自身に向けて構え、ハーフミラー36を観察しながら、このハーフミラー36上に自身の像が収まるようにフレーミングする。この後シャッターボタン17を押圧すると、ストロボ発光部15からストロボ光が放出され、このストロボ光を照射された撮影者の像が写真フイルムに露光される。
【0023】
この際、撮影レンズ13の前面に補助レンズ35が配置され、ピントセット位置が通常の被写体距離よりも近距離側に変更されているので、主要被写体である撮影者の顔にピントがあっており、写真フイルム上には鮮鋭な像が結像される。また、ストロボ発光部15の前面にマスク部37が配置されているので、ストロボ発光部15から放出されたストロボ光は光束の一部が遮られ、穴38a,38b,38cを通過した光束のみが被写体に照射される。したがって、至近距離にある撮影者に照射されるストロボ光の光量が抑えられ、適正露光の被写体像が得られる。またマスク部37は、その中央部に小さな穴38aを主に形成し、中央部から離れるにしたがってより大きな穴38b,38cを配置しているので、ストロボ発光部15から放たれ、マスク部37を通過したストロボ光は、中央部と周辺部との光量差が小さくなり、通常よりも近距離にある撮影範囲内の全域に偏りなく照射される。したがって、写真フイルム上には自然な被写体像が露光される。さらに、ハーフミラー36の表面が凸面状に形成され、被写体距離0.5mでの撮影範囲が映るように構成されているので、このハーフミラー36上に映った像とほぼ同じ構図の像が露光される。
【0024】
また、例えば花のクローズアップ撮影を行う場合には、撮影者はアダプタ本体21を近接位置にセットした後に、花に近接した位置でレンズ付きフイルムユニット10を構える。そして、ファインダ接眼窓(図示せず)から覗き込んでフレーミングを行う。この際、ファインダ対物窓14の前面にハーフミラー36が位置しているが、このハーフミラー36は被写体光の一部を反射するだけなので、撮影者は、ファインダ接眼窓,ファインダ対物窓14,及びハーフミラー36を通して花の像を容易に確認することができ、ハーフミラー36がフレーミングの妨げとなることはない。そしてシャッターボタン17を押圧すると、花の像が写真フイルム上に露光される。この場合においても、撮影レンズ13の前面に補助レンズ35が位置し、ピントセット位置が通常よりも近距離側に変更されているので、至近距離にある花の像は写真フイルム上に鮮鋭に結像される。
【0025】
一方、標準撮影を行う場合には、撮影者は係合爪28aの前面28dを押圧して係合爪28a,28bの係合を解除する。アダプタ本体21の上方にはゴム紐25の端部25a,25bが係止され、ゴム紐25の引張力によってアダプタ本体21が標準位置側に付勢されているので、係合爪28a,28bの係合を解除すると同時に、アダプタ本体21が上方に跳ね上げられる。そして、アダプタ本体21が基部22とほぼ水平になるまで跳ね上げられ、その端部が基部22に設けられた突起29に当接すると、アダプタ本体21の移動が停止する。これにより、撮影レンズ13及びファインダ対物窓14の前面から補助レンズ35及びハーフミラー36が退避され、基部22の開口31,32から撮影レンズ13及びファインダ対物窓14が露呈する。また、ストロボ発光部15の前面からマスク部37が退避する。
【0026】
ストロボ撮影を行う場合には、撮影者はストロボ充電スイッチ16を押圧してストロボ発光用の電荷を充電する。この後、撮影者がファインダ接眼窓から覗き込んでフレーミングを行い、シャッターボタン17を押圧すると、ストロボ発光部15からストロボ光が放出され、このストロボ光を照射された被写体像が撮影レンズ13を通して写真フイルム上に露光される。この際、撮影レンズ13の前面から補助レンズ35が退避し、被写体距離1m〜∞でピントがあうようになっているので、写真フイルム上には鮮鋭な被写体像が結像される。また、ストロボ発光部15の前面からマスク部37が退避しているので、ストロボ発光部15から放出されたストロボ光の全光束が被写体に照射され、適正露光の被写体像が得られる。
【0027】
なお、上記実施形態では、マスク部に正円状の穴を形成する例について説明したが、開口の形状は角形や矩形としてもよく、これらを混在させてもよい。また、開口の大きさも3種類に限るものではなく、より多くの種類の開口を組み合わせることで、ストロボ光の配光性をより良化させることができる。さらに、開口の内周壁に傾斜をもたせ、被写体側に近づくにしたがって径が大きくなるようにるように形成してもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、近接撮影用アダプタをレンズ付きフイルムユニットに取り付けて用いる場合について説明したが、本発明の近接撮影用アダプタは、レンズ付きフイルムユニットに限定されるものではなく、ピントセット位置を変化させることができず、近接撮影が不可能なカメラであればいずれのカメラにでも適用することができる。
【0029】
また、上記実施形態では、ストロボ内蔵型のカメラに用いるアダプタについて説明したが、ストロボ装置を備えていないカメラに用いる場合には、切換え部にマスク部を設ける必要はない。
【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明の近接撮影用アダプタによれば、アダプタ本体にピントセット位置を通常の被写体距離よりも近距離側に変更する補助レンズと、ストロボ光を減光するマスク部材とを固定し、このアダプタ本体を本体部の前面に装着することで補助レンズとマスク部材とが撮影レンズ及びストロボ発光窓の前面に位置決めされるので、このアダプタ本体を本体部に装着すればピントセット位置が通常よりも近距離側に変更されるとともに、被写体に向けて照射されるストロボ光が減光される。したがって、この状態で至近距離から撮影を行えば、被写体にピントが合い、鮮鋭な被写体像を得ることができる。また、ストロボ撮影を併用したとしても、近距離の被写体に過多光量のストロボ光が照射されることが防止され、適正露光の被写体像を得ることができる。さらに、マスク部材によるストロボ光の減光量を、ストロボ発光窓の周辺部よりも中央部で大きくしてあるので、このマスク部材を通過したストロボ光は、中央部と周辺部との光量差が小さくなり、通常よりも近距離側に規定された撮影範囲の全域に均一な光量で照射される。
【0031】
また、アダプタ本体に被写体光の一部を反射する凸面状のハーフミラーを取り付けておき、このアダプタ本体をカメラに装着したときにハーフミラーがファインダ対物窓を覆うようにしてあるので、ハーフミラー上に撮影者自身が映るようにフレーミングを行えば、自らの像を写真フイルムに鮮鋭に写し込むことができる。しかも、ハーフミラーが凸面を前面に向けて設けられているので、このハーフミラー上には通常よりも近距離での撮影範囲の像が映る。したがって、ハーフミラー上に映った像と同じ構図で被写体像が結像される。さらに、ハーフミラーは被写体光の一部を反射するだけなので、このハーフミラーをファインダ対物窓の前面に配置したままで、ファインダーを通して被写体を確認することができる。したがって、クローズアップ撮影を行う場合においても、ハーフミラーがフレーミングの妨げとなることはない。
【0032】
また、アダプタ本体を本体部の前面に装着される基板に対して起伏自在とし、アダプタ本体の起立により補助レンズ,マスク部材,ハーフミラーがそれぞれ撮影レンズ,ストロボ発光窓,ファインダ対物窓の前面から退避して通常の撮影距離での撮影が可能となるので、このアダプタ本体の起伏によって通常撮影と近接撮影とを切換えて行うことが可能となる。また、アダプタ本体と基板とをプラスチックで一体に成形すると単一部品として構成されるので、その取り扱いが容易になるとともに、構成部品数が少なくなるので部材管理が簡便になり、安価に近接撮影用アダプタを製造することができる。しかも、アダプタ本体に補助レンズ及びハーフミラーを組み付けるだけなので、複雑な工程を要することなく、近接撮影用アダプタを簡単に組み立てることができる。また、焦点距離の異なる補助レンズを複数種類用意しておき、撮影レンズのピントセット位置に応じた補助レンズを選択して組み付けるようにすれば、同じ製造工程で、様々な本体部に対応したアダプタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の近接撮影用アダプタの構成を示す概略図である。
【図2】図1に示した近接撮影用アダプタの要部断面図である。
【図3】本発明の近接撮影用アダプタをレンズ付きフイルムユニットに取り付けた状態を示す説明図で、(A)はアダプタ本体が近接位置に、(B)はアダプタ本体が標準位置に位置決めされている状態を表している。
【図4】マスク部の構成を示す説明図である。
【図5】ストロボ内蔵型レンズ付きフイルムユニットの外観図である。
【符号の説明】
10 レンズ付きフイルムユニット
11 ユニット本体
13 撮影レンズ
14 ファインダ対物窓
15 ストロボ発光部
20 近接撮影用アダプタ
21 アダプタ本体
22 基部
23a,23b ヒンジ部
35 補助レンズ
36 ハーフミラー
37 マスク部
38a,38b,38c 穴

Claims (5)

  1. ストロボ発光窓と、ピントセット位置が通常の被写体距離に固定された撮影レンズとが組み込まれた本体部の前面に着脱自在に取りつけられる近接撮影用アダプタにおいて、
    本体部の前面に着脱されるアダプタ本体と、このアダプタ本体に固定された補助レンズと、遮光板に複数の開口を開けて構成され、ストロボ発光窓の周辺部からのストロボ光を通過させる開口よりも中央部からのストロボ光を通過させる開口を小さくしたマスク部材とからなり、アダプタ本体の装着により前記補助レンズは前記撮影レンズの前面に位置してピントセット位置を前記通常の被写体距離よりも近距離側に変更し、かつ前記マスク部材はストロボ発光窓の前面を覆ってストロボ光を減光するとともに、この減光の度合をストロボ発光窓の周辺部よりも中央部で大きくすることを特徴とする近接撮影用アダプタ。
  2. 前記アダプタ本体は、その装着時に前記本体部の前面に設けられたファインダ対物窓を覆い、前面に凸面を向けたハーフミラーを備え、その反射像を観察して前面側からのフレーミングができるようにしたことを特徴とする請求項1記載の近接撮影用アダプタ。
  3. 前記アダプタ本体は前記本体部の前面に装着される基板に対して起伏自在であり、アダプタ本体の起立により前記補助レンズ,マスク部材,ハーフミラーはそれぞれ撮影レンズ,ストロボ発光窓,ファインダ対物窓の前面から退避して通常の被写体距離での撮影が可能となることを特徴とする請求項2記載の近接撮影用アダプタ。
  4. 前記基板及びアダプタ本体はプラスチックで一体成形されていることを特徴とする請求項3記載の近接撮影用アダプタ。
  5. 前記基板をゴム紐によって前記本体部の前面に固定するとともに、前記ゴム紐の引張力によって前記アダプタ本体を起立する方向に付勢してあることを特徴とする請求項3又は4記載の近接撮影用アダプタ。
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