JP3621495B2 - 抗真菌剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗真菌剤に好適な新規化合物及びそれを含有する組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
水虫に代表される表在性真菌症は、生活が西洋化して靴の着用時間が増加したのに相まって、未だに確実な治療法及び治療薬が見いだされていないこともあり、現代に於ける克服されていない疾病の一つに数えられている。その為、抗真菌作用について、多くの化合物がスクリーニングをかけられた。しかしながら、in vitro或いは動物レベルに於いて活性が見いだされた物質でも、実際の臨床段階においてはドロップアウトするものが少なくなく、満足いく結果は今のところ得られたものは極めて少ない。即ち、新規の抗真菌作用を有する母核の発見が待たれていた。一方、後記化合物は何れも新規化合物であり、この様な化合物が抗真菌作用を有するであろうことは、全く知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、抗真菌作用を有する新規化合物を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この様な状況に鑑み、鋭意合成・抗真菌スクリーニングを重ねた結果、特定の化合物にその様な作用を見いだし、発明を完成させるに至った。以下、本発明について詳細に説明する。
【0005】
(1)本発明の化合物
本発明の化合物は、N−(6,6−ジメチル−トランス−2−ヘプテン−4−イン−1−イル)−N−メチル−3−フェノキシベンジルアミン(化合物1)又はN−(6,6−ジメチル−シス−2−ヘプテン−4−イン−1−イル)−N−メチル−3−フェノキシベンジルアミン(化合物2)であって、次に示す構造を有する。これらの化合物は、例えば、以下に示す反応式(1)に従って、合成することができる。即ち、3−フェノキシベンジルブロミドとメチルアミンを縮合させ、N−メチル−3−フェノキシベンジルアミンと為し、このものと1−ブロモ−6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−インとを更に縮合させれば、化合物1と化合物2の混合物が得られる。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ノルマルヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製すれば、化合物1と化合物2とがそれぞれ単離出来る。置換基を有するものについては対応する原料を用いれば同様に製造することが出来る。又、このものの生理的に許容される塩は、通常の方法によって製造すれば良く、例えば、対応する酸と化合物とを、非極性溶媒乃至は極性溶媒中で混合すればよい。この反応式に従って合成された化合物は、通常の方法によって、例えば、シリカゲル、アルミナ、イオン交換樹脂等を担体としたカラムクロマトグラフィー、エーテル−水、クロロホルム−水、含水アルコール−石油エーテル、ブタノール−水等の液液抽出法や再結晶法等の通常の精製手段を用いて容易に精製できる。斯くして得られた化合物は何れも文献未記載の新規化合物であり、後記実施例に示すが如く抗真菌作用を有する。又、本発明の化合物は、安全性も高いことが期待できる。塩としては、生理的に許容されるものであれば特段の限定を受けずに用いることが出来、この様な塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩等が好ましく例示できる。これらの塩で最も好ましいものは塩酸塩である。
【0007】
【化5】
【0008】
【化6】
【化7】
【0009】
(2)本発明の組成物
本発明の組成物は、上記化合物を含有することを特徴とする。上記化合物は唯一種を含有せしめても良いし二種以上を混合して含有せしめても良い。組成物としては、抗真菌剤を含有していることが知られている組成物であれば、特段の限定を受けずに用いることができる。この様な組成物としては、例えば、皮膚外用剤や洗浄・消毒用の外用剤等の医薬組成物、靴下や下着などの衣服、ハブラシやボールペン等のプラスチック製品などが例示でき、この中では、医薬組成物、取り分け皮膚外用剤が最も好ましい。組成物中へ本発明の化合物を含有せしめる方法であるが、これらは従来の技術に従って行えばよい。例えば、医薬組成物であれば、他の成分とともに乳化或いは可溶化したり、粉体成分中に混ぜ込んで造粒等すればよい。又、衣服には、繊維を製造する段階で溶融混合し紡糸したり、衣服に含浸させたりすればよい。プラスチック製品には、溶融混合するのが好ましい。又、木材等に黴防止の意味で含浸する事も可能である。
【0010】
本発明の組成物は、一般式(I)に示される化合物以外に、これらの組成物が通常含有する任意成分を含有することができる。かかる任意成分としては、医薬組成物においては、賦形剤、着色剤、矯味矯臭剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、安定剤、pH調節剤、糖衣剤、乳化・分散・可溶化剤等が挙げられ、中でも皮膚外用剤では、流動パラフィンやワセリン等の炭化水素類、ゲイロウやミツロウ等のエステル類、オリーブ油や牛脂等のトリグリセライド類、セタノールやオレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸やオレイン酸等の脂肪酸類、プロピレングリコールやグリセリン等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤類、カチオン界面活性剤類、増粘剤等が例示できる。又、衣服やプラスチックでは、可塑剤、架橋剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が例示できる。本発明の組成物に於ける本発明の化合物の含有量であるが、0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜15重量%がより好ましく、0.1〜10重量%が更に好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、発明の実施の形態について、例を挙げて詳細に説明するが、本発明がこれらの例のみに限定を受けないことは言うまでもない。
【0012】
(例1)N−(6,6−ジメチル−トランス−2−ヘプテン−4−イン−1−イル)−N−メチル−3ーフェノキシベンジルアミン(化合物1)及びN−(6,6−ジメチル−シス−2−ヘプテン−4−イン−1−イル)−N−メチル−3ーフェノキシベンジルアミン(化合物2)の製造
以下に示す方法に従って化合物1及び2を製造した。即ち、四塩化炭素90ml溶媒にm−フェノキシトルエン10.16gとN−ブロモサクシンイミド9.82gと過酸化ベンゾイル0.15gとを秤込み、3時間加熱還流し反応させた。放冷後、反応物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出溶媒;クロロホルム)3−フェノキシベンジルブロミドを10.9g得た。このもの9.91gを20mlノメタノールに溶かし、氷冷した40%メチルアミン−メタノール溶液に攪拌しながら滴下し氷冷下15分攪拌し、室温に戻し更に42時間攪拌した。溶媒溜去後1N希塩酸を加えエーテルで洗浄した後、水層を3N水酸化ナトリウムでアルカリ性にし、エーテルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を溜去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール=50:1)で精製しN−メチル−3−フェノキシベンジルアミン4.34gを得た。このものをN,N−ジメチルホルムアミド20mlに溶解し、更に炭酸ナトリウム2.16gを混合し、氷冷下、1−ブロモ−6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イン4.0gをN,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶かしたものを滴下し加えた。これを室温に戻し、18時間反応させ、減圧濃縮した後、ジエチルエーテルと水を加え、液液抽出した。有機層を取り、水及び飽和食塩水で洗浄し、N,N−ジメチルホルムアミドを除去し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。これを濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=10:1)濃縮し、N−(6,6−ジメチル−トランス−2−ヘプテン−4−イン−1−イル)−N−メチル−3ーフェノキシベンジルアミン(化合物1)及びN−(6,6−ジメチル−シス−2−ヘプテン−4−イン−1−イル)−N−メチル−3ーフェノキシベンジルアミン(化合物2)をそれぞれ2.92g(収率44.1%)、1.08g(収率16.3%)で得た。NMR(δppm)は次に示すとおりであった。
(化合物1)
1.24(9H,s)、2.18(3H,s)、3.03(2H,dd)、3.47(2H,s)、5.63(1H,dt)、6.06(1H,dt)、6.88(1H,m)、6.96〜7.15(5H,m)、7.22〜7.40(3H,m)
(化合物2)
1.24(9H,s)、2.22(3H,s)、3.26(2H,dd)、3.50(2H,s)、5.61(1H,dt)、5.93(1H,dt)、6.89(1H,m)、6.95〜7.15(5H,m)、7.22〜7.38(3H,m)
次にこの化合物1の塩酸塩の製造を検討した。即ち。化合物1の2.92gを酢酸エチル25mlに溶解させ、4規定の塩酸−酢酸エチル溶液を2.4mlを滴下し加えた。更にジエチルエーテル150mlを加え、析出した白色結晶を集めた。これをジエチルエーテルとエタノールの混合液から再結晶し、3.06g(収率94.4%)の白色結晶を得た。このものの融点は201.5〜203℃であった。NMR、IRは次に示すとおりであった。
NMR(δppm)
1.25(9H,s)、2.62(3H,d)、3.52(1H,m)、3.70(1H,m)、3.99(1H,dd)、4.17(1H,dd)、5.80(1H,d)、6.26(1H,dt)、7.0〜7.1(4H,m)、7.17(1H,t)、7.35〜7.53(4H,m)12.99(1H,b)
同様にして化合物2の1.08gより塩酸塩を作成し、1.06g(収率88.5%)得た。
NMR(δppm)
1.25(9H,s)、2.64(3H,d)、3.70〜3.93(2H,m)、4.04(1H,m)、4.23(1H,m)、5.98(1H,d)、6.27(1H,m)、6.98〜7.14(4H,m)、7.17(1H,t)、7.35〜7.55(4H,m)12.96(1H,b)
【0013】
(例5)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物1とを混合し、溶融成形し歯ブラシの柄を作成した。
ポリスチレン小球 99重量部
化合物1 1重量部
【0014】
(例6)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物2とを混合し、溶融成形し歯ブラシの柄を作成した。
ポリスチレン小球 90重量部
化合物1の塩酸塩 10重量部
【0015】
(例7)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物3とを混合し、溶融成形しボールペンの軸を作成した。
ポリスチレン小球 99.9重量部
化合物2 0.1重量部
【0016】
(例8)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物4とを混合し、溶融成形しボールペンの軸を作成した。
ポリスチレン小球 99重量部
化合物2の塩酸塩 1重量部
【0017】
(例9)組成物の例
下記に示す処方に従って水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
ワセリン 99重量部
化合物1の塩酸塩 1重量部
【0018】
(例10)組成物の例
下記に示す処方に従って水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
吸水軟膏 99重量部
化合物1 1重量部
【0019】
(例11)組成物の例
下記に示す処方成分を攪拌可溶化して液剤を得た。
エタノール 92重量部
メタクリル酸アルキルエステルコポリマー 2重量部
化合物2 1重量部
プロピレングリコール 5重量部
【0020】
【実施例】
実施例1
抗菌性試験(生育阻止濃度の測定)
トリコフィトンに対する本発明の化合物の抗真菌作用を求めた。即ち、トリコフィトン・メンタグロファイテス(T.mentagrophytes TIMM1189)及びトリコフィトン・ラブラム(T.rubrum IFO5808)をそれぞれ予めサブロー寒天培地の斜面に27℃で2週間培養して分生子を充分つくらせる。これをツィーン80を0.05重量/容量%含有する滅菌生理食塩水で白金耳で擦りながら洗浄し分生子を浮遊させる。これを二枚重ねのガーゼで濾過し分生子のみを生理食塩水に浮遊する形で取り出した。分生子の濃度を105個/mlになるように調整し試験菌菌液とした。一方、化合物1の塩酸塩を4mgとり、ジメチルスルホキサイド1mlを加え原液とし、これを順次ジメチルスルホキサイドで2倍希釈し希釈薬剤液を調整した。組織培養用96穴マイクロプレートの各ウェルにサブロー・デキストロース培地175μl、薬剤溶液5μl、試験菌菌液20μlを加え、良く混和した後、27℃で1週間培養し目視にて完全に発育を阻止する最小濃度を探し、最小生育阻止濃度とした。結果は、トリコフィトン・メンタグロファイテス(T.mentagrophytes TIMM1189)に対しては、化合物1の塩酸塩は100μg/mlであり、トリコフィトン・ラブラム(T.rubrum IFO5808)に対しては化合物1の塩酸塩は100μg/mlであった。これより、本発明の化合物はトリコフィトンに対して優れた抗菌作用を有していることが判る。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、抗真菌剤に好適な新規化合物が提供できる。
Claims (5)
- N−(6,6−ジメチル−トランス−2−ヘプテン−4−イン−1−イル)−N−メチル−3−フェノキシベンジルアミン、N−(6,6−ジメチル−シス−2−ヘプテン−4−イン−1−イル)−N−メチル−3−フェノキシベンジルアミン又は生理的に許容されるそれらの塩。
- 生理的に許容される塩が塩酸塩である請求項1記載の化合物。
- 請求項1又は2に記載の化合物からなる抗真菌剤。
- 請求項1又は2に記載の化合物から選ばれる1種又は2種以上を含有する抗真菌組成物。
- 用途が医薬であることを特徴とする請求項4記載の抗真菌組成物。
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1996
- 1996-02-01 JP JP3872096A patent/JP3621495B2/ja not_active Expired - Fee Related
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