JP3776155B2 - ベンゾフェノン誘導体及びそれを含有する組成物 - Google Patents

ベンゾフェノン誘導体及びそれを含有する組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗真菌剤に好適な新規化合物を含有する抗真菌剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
水虫に代表される表在性真菌症は、生活が西洋化して靴の着用時間が増加したのに相まって、未だに確実な治療法及び治療薬が見いだされていないこともあり、現代に於ける克服されていない疾病の一つに数えられている。その為、抗真菌作用について、多くの化合物がスクリーニングをかけられた。しかしながら、in vitro或いは動物レベルに於いて活性が見いだされた物質でも、実際の臨床段階においてはドロップアウトするものが少なくなく、満足いく結果は今のところ得られたものは極めて少ない。即ち、新規の抗真菌作用を有する母核の発見が待たれていた。一方、後記化合物1は新規化合物であり、この化合物が抗真菌作用を有するであろうことは、全く知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、新規化合物を有効成分とする抗真菌剤組成物を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この様な状況に鑑み、鋭意合成・抗真菌スクリーニングを重ねた結果、化合物にその様な作用を見いだし、発明を完成させるに至った。以下、本発明について詳細に説明する。
【0005】
(1)本発明の化合物
本発明の化合物は、N−(4−tert ブチルベンジル)−N−メチル3−アミノメチルベンゾフェノン(化合物1)であって、次に示す構造を有する。この化合物は、以下に示す反応式(1)に従って、合成することができる。即ち、3−メチルベンゾフェノンのメチル基をN−ブロモサクシイミド等でブロモ化し、このものと1−ターシャリーブチル−4−メチルアミノメチルベンゼンを縮合すれば容易に本発明の化合物である、化合物1が得られる。この反応式に従って合成された化合物は、通常の方法によって、例えば、シリカゲル、アルミナ、イオン交換樹脂等を担体としたカラムクロマトグラフィー、エーテル−水、クロロホルム−水、含水アルコール−石油エーテル、ブタノール−水等の液液抽出法や再結晶法等の通常の精製手段を用いて容易に精製できる。斯くして得られた化合物は文献未記載の新規化合物であり、後記実施例に示すが如く抗真菌作用を有する。又、本発明の化合物は、安全性も高いことが期待できる。
【0007】
【化4】
Figure 0003776155
化合物1
【0008】
【化5】
Figure 0003776155
反応式1
【0009】
(2)本発明の組成物
本発明の組成物は、上記化合物を含有することを特徴とする。組成物としては、抗真菌剤を含有していることが知られている組成物であれば、特段の限定を受けずに用いることができる。この様な組成物としては、例えば、皮膚外用剤や洗浄・消毒用の外用剤等の医薬組成物、靴下や下着などの衣服、ハブラシやボールペン等のプラスチック製品などが例示でき、この中では、医薬組成物、取り分け皮膚外用剤が最も好ましい。組成物中へ本発明の化合物を含有せしめる方法であるが、これらは従来の技術に従って行えばよい。例えば、医薬組成物であれば、他の成分とともに乳化或いは可溶化したり、粉体成分中に混ぜ込んで造粒等すればよい。又、衣服には、繊維を製造する段階で溶融混合し紡糸したり、衣服に含浸させたりすればよい。プラスチック製品には、溶融混合するのが好ましい。又、木材等に黴防止の意味で含浸する事も可能である。
【0010】
本発明の組成物は、化合物以外に、これらの組成物が通常含有する任意成分を含有することができる。かかる任意成分としては、医薬組成物においては、賦形剤、着色剤、矯味矯臭剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、安定剤、pH調節剤、糖衣剤、乳化・分散・可溶化剤等が挙げられ、中でも皮膚外用剤では、流動パラフィンやワセリン等の炭化水素類、ゲイロウやミツロウ等のエステル類、オリーブ油や牛脂等のトリグリセライド類、セタノールやオレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸やオレイン酸等の脂肪酸類、プロピレングリコールやグリセリン等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤類、カチオン界面活性剤類、増粘剤等が例示できる。又、衣服やプラスチックでは、可塑剤、架橋剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が例示できる。本発明の組成物に於ける本発明の化合物の含有量であるが、0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜15重量%がより好ましく、0.1〜10重量%が更に好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、発明の実施の形態について、例を挙げて詳細に説明するが、本発明がこれらの例のみに限定を受けないことは言うまでもない。
【0012】
(例1)N−(4−tert ブチルベンジル)−N−メチル3−アミノメチルベンゾフェノン(化合物1)の製造
以下に示す方法に従って化合物1を製造した。即ち、四塩化炭素90ml溶媒に3−メチルベンゾフェノン9.7gとN−ブロモサクシイミド8.8gと過酸化ベンゾイル0.15gとを秤込み、3時間加熱還流し反応させた。放冷後、反応物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=20:1→4:1)3−ブロモメチルベンゾフェノンを7.31g得た。N,N−ジメチルホルムアミド20mlに1−ターシャリーブチル−4−メチルアミノベンゼン1.64gと炭酸ナトリウム0.98gを混合し、氷冷下、3−ブロモメチルベンゾフェノン2.31gをジメチルホルムアミド30mlに溶かしたものを滴下し加えた。これを室温に戻し、12時間反応させ、クロロホルムと水を加え、液液抽出した。有機層を取り、水及び飽和食塩水で洗浄し、ジメチルホルムアミドを除去し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。これを濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出溶媒;クロロホルム)濃縮し、N−(4−tert ブチルベンジル)−N−メチル3−アミノメチルベンゾフェノン(化合物1)を3.02g得た。NMR(δppm)は次に示すとおりであった。
1.31(9H,s)、2.20(3H,s)、3.52(2H,s)、3.57(2H,s)、7.25〜7.82(13H,m)
次にN−(4−tert ブチルベンジル)−N−メチル3−アミノメチルベンゾフェノンの塩酸塩の製造を検討した。即ち。化合物1の3.02gを酢酸エチル15んlに溶解させ、4Nの塩酸の酢酸エチル溶液を2.3mlを滴下し加えた。更にジエチルエーテル180mlを加え、析出した白色結晶を集めた。これをジエチルエーテルとエタノールの混合液から再結晶し、2.3gの白色結晶を得た。このものの融点は157〜159℃であった。NMR、IRは次に示すとおりであった。
NMR(δppm)
1.33(9H,s)、2.60(3H,d)、4.04〜4.16(2H,m)、4.23〜4.40(2H,m)、7.46〜8.35(13H,m)、13.0(1H,s)
IR(cm-1)
3428、2959、1660、1285、716
【0013】
(例5)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物1とを混合し、溶融成形し歯ブラシの柄を作成した。
ポリスチレン小球 99重量部
化合物1 1重量部
【0014】
(例6)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物2とを混合し、溶融成形し歯ブラシの柄を作成した。
ポリスチレン小球 90重量部
化合物1 10重量部
【0015】
(例7)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物3とを混合し、溶融成形しボールペンの軸を作成した。
ポリスチレン小球 99.9重量部
化合物1 0.1重量部
【0016】
(例8)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物4とを混合し、溶融成形しボールペンの軸を作成した。
ポリスチレン小球 99重量部
化合物1 1重量部
【0017】
(例9)組成物の例
下記に示す処方に従って水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
ワセリン 99重量部
化合物1 1重量部
【0018】
(例10)組成物の例
下記に示す処方に従って水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
吸水軟膏 99重量部
化合物1 1重量部
【0019】
(例11)組成物の例
下記に示す処方成分を攪拌可溶化して液剤を得た。
エタノール 92重量部
メタクリル酸アルキルエステルコポリマー 2重量部
化合物1 1重量部
プロピレングリコール 5重量部
【0020】
【実施例】
実施例1
抗菌性試験(生育阻止濃度の測定)
トリコフィトンに対する本発明の化合物の抗真菌作用を求めた。即ち、トリコフィトン・メンタグロファイテス(T.mentagrophytes TIMM1189)及びトリコフィトン・ラブラム(T.rubrum IFO5808)をそれぞれ予めサブロー寒天培地の斜面に27℃で2週間培養して分生子を充分つくらせる。これをツィーン80を0.05重量/容量%含有する滅菌生理食塩水で白金耳で擦りながら洗浄し分生子を浮遊させる。これを二枚重ねのガーゼで濾過し分生子のみを生理食塩水に浮遊する形で取り出した。分生子の濃度を105個/mlになるように調整し試験菌菌液とした。一方、化合物1を4mgとり、ジメチルスルホキサイド1mlを加え原液とし、これを順次ジメチルスルホキサイドで2倍希釈し希釈薬剤液を調整した。組織培養用96穴マイクロプレートの各ウェルにサブロー・デキストロース培地175μl、薬剤溶液5μl、試験菌菌液20μlを加え、良く混和した後、27℃で1週間培養し目視にて完全に発育を阻止する最小濃度を探し、最小生育阻止濃度とした。結果は、トリコフィトン・メンタグロファイテス(T.mentagrophytes TIMM1189)に対しては、化合物1は50μg/mlであり、トリコフィトン・ラブラム(T.rubrum IFO5808)に対しては化合物1は100μg/mlであった。これより、本発明の化合物はトリコフィトンに対して優れた抗菌作用を有していることが判る。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、抗真菌剤に好適な新規化合物が提供できる。

Claims (1)

  1. N−(4−tert ブチルベンジル)−N−メチル3−アミノメチルベンゾフェノン又は生理的に許容されるその塩を含有する抗真菌剤組成物
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