JP3857429B2 - 含硫黄抗真菌剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は抗真菌剤に好適な、新規含硫黄複素環化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
水虫に代表される表在性真菌症は、生活が西洋化して靴の着用時間が増加したのに相まって、未だに確実な治療法及び治療薬が見いだされていないこともあり、現代に於ける克服されていない疾病の一つに数えられている。その為、抗真菌作用について、多くの化合物がスクリーニングをかけられた。しかしながら、in vitro或いは動物レベルに於いて活性が見いだされた物質でも、実際の臨床段階においてはドロップアウトするものが少なくなく、満足いく結果は今のところ得られたものは極めて少ない。即ち、新規の抗真菌作用を有する母核の発見が待たれていた。この様な状況は、表在性真菌に止まらず、カンジダ・アルビカンスやアスペルギルス・ニガー等の深在性真菌症に至っては毒性が極めて高く、効果がわずかでしかない、アンホテリシンBを使わざるを得ない極めて深刻な状況にある。即ち、新規母核を有する抗真菌剤の開発が望まれていた。
【0003】
一方、後記一般式(I)に表される化合物は、何れも文献未記載の化合物であり、従って、この様な化合物が優れた抗真菌作用を有することは全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下に為されたものであり、抗真菌作用を有する新規母核の化合物を見いだすことを課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは抗真菌作用を有する新規母核の化合物を求めて鋭意研究努力を重ねた結果、一般式(I)に表される化合物又は生理的に許容されるその塩にその様な作用を見いだし、発明を完成させるに至った。以下、本発明について実施の形態を中心に詳細に説明を加える。
【0006】
【化9】
【0007】
(但し、式中Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0008】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の一般式(II)に表される化合物
本発明の一般式(II)に表される化合物は、一般式(I)の化合物を製造する際の重要な反応中間体である。このものをウィティッヒ反応に付すことにより、本発明の一般式(I)に表される化合物を製造することが出来る。又、ハロゲン原子としては塩素原子が特に好ましい。又、この化合物は反応式1に示す如く、チオフェン乃至はそのハロゲン化物をルイス酸の存在下アセチル化ししかる後にこのアセチル基のメチルの水素原子をハロゲン原子で置換し、このものと対応するアミンとをアルカリ存在下、縮合する事により製造できる。これらの化合物は何れも文献未記載の新規化合物である。又、本発明のこの様な化合物として特に好ましいものは、トランス−3−クロロ−2−[2−{N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチルアミノ}アセチル]チオフェン(化合物4)、トランス−2−[2−{N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチルアミノ}アセチル]チオフェン(化合物5)、トランス−5−クロロ−2−[2−{N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチルアミノ}アセチル]チオフェン(化合物6)が挙げられる。
【0009】
【化10】
【0010】
(但し、式中Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0011】
【化15】
(化合物4)
【0012】
【化16】
(化合物5)
【0013】
【化17】
(化合物6)
【0014】
【化18】
反応式1
(式中Xは、水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0015】
(2)本発明の一般式(I)に表される化合物
本発明の一般式(I)に表される化合物は、上記一般式(II)に表される化合物を、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドとブチルリチウムで処理すること、即ち、ウィティッヒ反応に付すことにより得ることが出来る。更に、ハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。これはこの様な化合物群が優れた抗真菌活性を有するからである。この様な化合物を具体的に例示すれば、例えばトランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(3−クロロ−2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物1)、トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物2)、トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(5−クロロ−2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物3)等が例示できる。これらのものは、通常の方法に従って塩へと導くことが出来る。即ち、水系或いは非水系溶媒中で対応する酸を添加することにより塩とすることが出来る。本発明で好ましい塩の種類としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸などの鉱酸塩、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸等の有機酸塩等が例示でき、この中では塩酸塩が特に好ましい。これは、安定性と経済性に優れるからである。かくして得られた一般式(I)に表される化合物又はその塩は、優れた抗真菌作用を有するため、本発明の抗真菌剤として使用することが出来る。又、本発明の抗真菌剤は安全性にも優れるため、その投与経路は問わない。本発明の化合物の抗真菌剤としての投与量は、患者の状態や症状により異なるが、例えば、経口投与や注射による投与であれば、成人1日、1〜10000mgを1回乃至は数回に分けて投与するのが好ましく、皮膚外用剤であれば0.1〜10重量%含有するものを適量塗布するのが好ましく、膣座剤であれば、0.1〜10重量%含有する座剤を1回乃至は数回取り替えて投与するのが好ましい。
【0016】
(3)本発明の医薬組成物
本発明の医薬組成物は、上記本発明の抗真菌剤を含有することを特徴とする。後記実施例に示す如く、本発明の抗真菌剤は優れた抗真菌作用を有するため、本発明の医薬組成物は、表在性真菌症や深在性真菌症の治療や悪化の予防、再発防止に大変有益である。本発明の医薬組成物としては、例えば、液剤、クリーム、軟膏などの皮膚外用剤、錠剤、カプセル剤、散剤などの経口製剤、注射剤、膣座剤等の剤形が好ましく例示できる。本発明の医薬組成物には、上記抗真菌剤以外に、通常医薬組成物で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、経口製剤や注射剤であれば、賦形剤、結合剤、被覆剤、滑沢剤、糖衣剤、崩壊剤、増量剤、矯味矯臭剤、乳化・可溶化・分散剤、安定剤、pH調整剤、等張剤等が例示でき、皮膚外用剤や膣座剤であれば、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が例示できる。これらの上記抗真菌剤と任意成分とを常法に従って処理することにより、本発明の医薬組成物は製造することが出来る。
【0017】
【化19】
(化合物1)
【0018】
【化20】
(化合物2)
【0019】
【化21】
(化合物3)
【0020】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定を受けないことは言うまでもない。
【0021】
<実施例1>
トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(3−クロロ−2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物1)の合成
[工程A]
メチレンクロリド50mlに3−クロロチオフェン2gと無水酢酸1.74gを溶解した。室温で攪拌しながら、塩化アルミニウム3.83gを少しずつ加え、2時間攪拌し、氷と濃塩酸の上に、反応物を一気に注ぎ、メチレンクロリド70mlで抽出し、水で3回、飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮し2−アセチル−3−クロロチオフェンを茶色の油状物質として得た。このもの2.18gをジエチルエーテルに溶かし、臭素0.7mlを室温で攪拌しながら加えた。15分攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と氷の上に反応物を一気に注いだ。酢酸エチル100mlで抽出し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、2−(2−ブロモアセチル)−3−クロロチオフェンを茶色の油状物質として得た。N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチルアミンの0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMF)10mlに溶解させ、炭酸ナトリウムを0.5gを混合し、これにDMF5mlに2−(2−ブロモアセチル)−3−クロロチオフェン0.75gを溶かした液を、室温で攪拌しながら滴下した。3時間攪拌した後、氷と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の上に、この反応液を一気に注いだ。酢酸エチル100mlで抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物4を黄色油状物質として得た。(収量0.23g、収率23.6%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。(溶媒;CDCl3、δppm、以下に示すNMRの数値は同様のものを示す。)1.24(s,9H)、2.39(s,3H)、3.24(dd,2H,J=1.35Hz、6.75Hz)、3.78(s,2H),5.66(d,1H,J=15.7Hz)、6.09(td,1H,J=6.75Hz、15.7Hz)、7.01(d,1H,J=5.40Hz)、7.53(d,1H,J=5.40Hz)
【0022】
[工程B]
ベンゼン10mlにメチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.4gを懸濁させ、窒素雰囲気下室温で攪拌しながら、1.63Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えた。5分間攪拌した後、化合物4の0.23gをベンゼン5mlに溶かした液を滴下した。室温で1晩攪拌した後、氷水の上に注ぎ反応を止めた。これよりベンゼン100mlで抽出し、飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製し、淡黄色の油状物質として化合物1を得た。(収量0.04g、収率17.5%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.22(s,3H)、3.07(dd,2H,J=1.35Hz、6.75Hz)、3.25(s,2H)、5.45(s,1H)、5.62(d,1H,J=10.5Hz)、5.70(s,1H)、6.06(td,1H,J=6.75Hz、10.5Hz)、6.89(d,1H,J=5.40Hz)、7.16(d,1H,J=5.40Hz)
【0023】
[C工程]
化合物1の0.04gをイソプロピルエーテル50mlに溶解させ、室温で攪拌しながら4N−HCl酢酸エチル溶液0.04mlを加えた。室温で一晩攪拌し後、析出した白色結晶を濾取し、乾燥させ化合物1の塩酸塩を得た。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.23(s,9H)、2.66(d,3H,J=5.40Hz)、3.45〜3.73(m,2H)、4.01〜4.19(m,2H)、5.72(d,1H,J=10.3Hz)、5.95(s,1H)、6.12(s,1H)、6.25(td,1H,J=7.56Hz、10.3Hz)、6.70(d,1H,J=5.13Hz)、7.31(d,1H,J=5.13Hz)、12.9(bs,1H)
【0024】
又、融点は174〜175℃であり、赤外スペクトルは次に示すとおりである。(単位はcm-1)
2970、2953、2926、2901、2686、2668、2632、1408、1399、964.9、930.9、888.9
【0025】
<実施例2>
トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物2)
実施例1の出発物質の2−アセチル−3−クロロチオフェンを2−アセチルチオフェンに変え、工程Aを行い、化合物5を黄色油状物質として得た。(収率39.9%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.36(s,3H)、3.19(dd,2H,J=1.35Hz、6.75Hz)、3.65(s,2H),5.66(dd,1H,J=1.35Hz、15.9Hz)、6.10(td,1H,J=6.75Hz、15.9Hz)、7.12(t,1H,J=4.05Hz)、7.62(dd,1H,J=1.08Hz、4.05Hz)、7.91(dd,1H,J=1.08、4.05Hz)
【0026】
このものを実施例1の化合物1の工程Cと同様に処理して塩酸塩を得た。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.21(s,9H)、3.05(s,3H)、4.05(bs,2H)、4.50〜4.55(m,2H)、5.85(d,1H,J=13.2Hz)、6.31(td,1H,J=7.56Hz、13.2Hz)、7.23(m,1H)、7.80〜7.84(m,2H)、13.3(bs,1H)
【0027】
このものの融点は175.5〜177.5℃であり、赤外吸収スペクトルは次の通りである。(単位はcm-1)
3424、2968、1668、1413、1359、1261
【0028】
この化合物5を実施例1の工程Bと同様の操作を行い、化合物2を得た。(収率35.8%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.23(s,3H)、3.08(dd,2H,J=1.62Hz、6.75Hz)、3.28(s,2H),5.12(s,1H)、5.51(s,1H)、5.64(td,1H,J=1.62Hz、15.9Hz)、6.09(td,1H,J=6.75Hz、15.9Hz)、6.98(m,1H)、7.16〜7.23(m,2H)
【0029】
実施例1と同様に化合物2の塩酸塩を作成した。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.21(s,9H)、2.68(d,3H,J=4.86)、3.53〜3.81(m,2H)、3.89〜4.15(m,2H)、5.81(d,1H,J=15.9Hz)、5.83(s,1H)、5.94(S,1H)、6.28(td,1H,J=7.29Hz、15.9Hz)、7.06(m,1H)、7.18(m,1H)、7.29(m,1H)、12.8(bs,1H)
【0030】
このもの融点は152.5〜154.5℃であり、赤外吸収スペクトルは次の通りである。(単位はcm-1)
2967、2932、2906、2825、2678、2613、1624、1474、1451、1400、977
【0031】
<実施例3>
トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(5−クロロ−2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物3)実施例1の出発物質の2−アセチル−3−クロロチオフェンを2−アセチル−5−クロロチオフェンに変え、同様に処理して化合物6を黄色油状物質として得た。(収率51.1%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.32(s,3H)、3.16(dd,2H,J=1.49Hz、7.02Hz)、3.49(s,2H),5.66(dd,1H,J=1.49Hz、15.9Hz)、6.09(td,1H,J=7.02Hz、15.9Hz)、6.95(d,1H,J=4.05Hz)、7.75(d,1H,J=4.05Hz)
【0032】
このものを実施例1の化合物1の工程Cと同様の操作を行い塩酸塩を得た。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.22(s,9H)、3.03(s,3H)、4.03(bs,2H)、4.53(s,2H)、5.83(d,1H,J=15.9Hz)、6.28(td,1H,J=7.56Hz、15.9Hz)、7.05(d,1H,J=4.32Hz)、7.65(d,1H,J=4.32Hz)、13.2(bs,1H)
【0033】
このものの融点は171〜173℃であり、赤外吸収スペクトルは次の通りである。(単位はcm-1)
3438、2969、2930、2867、1664、1417、1327、1256
【0034】
この化合物6を実施例1と工程Bと同様の操作を行い、化合物3を得た。(収率34.6%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.21(s,3H)、3.07(dd,2H,J=1.35Hz、6.75Hz)、3.20(s,2H),5.07(s,1H)、5.40(s,1H)、5.63(td,1H,J=1.35Hz、15.9Hz)、6.09(td,1H,J=6.75Hz、15.9Hz)、6.77(d,1H,J=3.78Hz)、7.00(d,1H,J=3.78Hz)
【0035】
実施例1の工程Cと同様の操作を行い、化合物3の塩酸塩を作成した。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.22(s,9H)、2.69(d,3H,J=4.86)、3.55〜4.09(m,2H×2)、5.80〜5.86(m,4H)、6.26(td,1H,J=7.56Hz、15.9Hz)、6.87(d,1H,J=4.05)、7.01(d,1H,J=4.05Hz)、12.9(bs,1H)
【0036】
このもの融点は146〜148℃であり、赤外吸収スペクトルは次の通りである。(単位はcm-1)
3432、2970、2954、2909、2867、2692、2641、2577、2508、1623、1474、1449
【0037】
<実施例4>
抗菌性試験(発育阻止濃度の測定)
トリコフィトンに対する本発明の化合物の抗真菌作用を求めた。即ち、トリコフィトン・メンタグロファイテス(T.mentagrophytes TIMM1189)を予めサブロー寒天培地の斜面に27℃で2週間培養して分生子を充分つくらせる。これをツィーン80を0.05重量/容量%含有する滅菌生理食塩水で白金耳で擦りながら洗浄し分生子を浮遊させる。これを二枚重ねのガーゼで濾過し分生子のみを生理食塩水に浮遊する形で取り出した。分生子の濃度を105個/mlになるように調整し試験菌菌液とした。一方、化合物を4mgとり、ジメチルスルホキサイド1mlを加え原液とし、これを順次ジメチルスルホキサイドで2倍希釈し希釈薬剤液を調整した。組織培養用96穴マイクロプレートの各ウェルにサブロー・デキストロース培地175μl、薬剤溶液5μl、試験菌菌液20μlを加え、良く混和した後、27℃で1週間培養し目視にて完全に発育を阻止する最小濃度を探し、最小発育阻止濃度とした。結果は、化合物1の塩酸塩が0.20μg/mlであり、化合物2の塩酸塩が0.05μg/mlであり、化合物3の塩酸塩が0.12μg/mlであった。これより本発明の抗真菌剤の抗真菌作用が優れていることがわかる。
【0038】
<実施例5>
下記に示す処方に従って本発明の医薬組成物である、水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
ワセリン 99重量部
化合物1の塩酸塩 1重量部
【0039】
<実施例6>
下記に示す処方に従って本発明の医薬組成物である、水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
ワセリン 99重量部
化合物2の塩酸塩 1重量部
【0040】
<実施例7>
下記に示す処方に従って本発明の医薬組成物である、水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
ワセリン 99重量部
化合物3の塩酸塩 1重量部
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、抗真菌作用を有する新規化合物が提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は抗真菌剤に好適な、新規含硫黄複素環化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
水虫に代表される表在性真菌症は、生活が西洋化して靴の着用時間が増加したのに相まって、未だに確実な治療法及び治療薬が見いだされていないこともあり、現代に於ける克服されていない疾病の一つに数えられている。その為、抗真菌作用について、多くの化合物がスクリーニングをかけられた。しかしながら、in vitro或いは動物レベルに於いて活性が見いだされた物質でも、実際の臨床段階においてはドロップアウトするものが少なくなく、満足いく結果は今のところ得られたものは極めて少ない。即ち、新規の抗真菌作用を有する母核の発見が待たれていた。この様な状況は、表在性真菌に止まらず、カンジダ・アルビカンスやアスペルギルス・ニガー等の深在性真菌症に至っては毒性が極めて高く、効果がわずかでしかない、アンホテリシンBを使わざるを得ない極めて深刻な状況にある。即ち、新規母核を有する抗真菌剤の開発が望まれていた。
【0003】
一方、後記一般式(I)に表される化合物は、何れも文献未記載の化合物であり、従って、この様な化合物が優れた抗真菌作用を有することは全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下に為されたものであり、抗真菌作用を有する新規母核の化合物を見いだすことを課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは抗真菌作用を有する新規母核の化合物を求めて鋭意研究努力を重ねた結果、一般式(I)に表される化合物又は生理的に許容されるその塩にその様な作用を見いだし、発明を完成させるに至った。以下、本発明について実施の形態を中心に詳細に説明を加える。
【0006】
【化9】
【0007】
(但し、式中Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0008】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の一般式(II)に表される化合物
本発明の一般式(II)に表される化合物は、一般式(I)の化合物を製造する際の重要な反応中間体である。このものをウィティッヒ反応に付すことにより、本発明の一般式(I)に表される化合物を製造することが出来る。又、ハロゲン原子としては塩素原子が特に好ましい。又、この化合物は反応式1に示す如く、チオフェン乃至はそのハロゲン化物をルイス酸の存在下アセチル化ししかる後にこのアセチル基のメチルの水素原子をハロゲン原子で置換し、このものと対応するアミンとをアルカリ存在下、縮合する事により製造できる。これらの化合物は何れも文献未記載の新規化合物である。又、本発明のこの様な化合物として特に好ましいものは、トランス−3−クロロ−2−[2−{N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチルアミノ}アセチル]チオフェン(化合物4)、トランス−2−[2−{N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチルアミノ}アセチル]チオフェン(化合物5)、トランス−5−クロロ−2−[2−{N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチルアミノ}アセチル]チオフェン(化合物6)が挙げられる。
【0009】
【化10】
【0010】
(但し、式中Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0011】
【化15】
(化合物4)
【0012】
【化16】
(化合物5)
【0013】
【化17】
(化合物6)
【0014】
【化18】
反応式1
(式中Xは、水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0015】
(2)本発明の一般式(I)に表される化合物
本発明の一般式(I)に表される化合物は、上記一般式(II)に表される化合物を、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドとブチルリチウムで処理すること、即ち、ウィティッヒ反応に付すことにより得ることが出来る。更に、ハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。これはこの様な化合物群が優れた抗真菌活性を有するからである。この様な化合物を具体的に例示すれば、例えばトランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(3−クロロ−2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物1)、トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物2)、トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(5−クロロ−2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物3)等が例示できる。これらのものは、通常の方法に従って塩へと導くことが出来る。即ち、水系或いは非水系溶媒中で対応する酸を添加することにより塩とすることが出来る。本発明で好ましい塩の種類としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸などの鉱酸塩、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸等の有機酸塩等が例示でき、この中では塩酸塩が特に好ましい。これは、安定性と経済性に優れるからである。かくして得られた一般式(I)に表される化合物又はその塩は、優れた抗真菌作用を有するため、本発明の抗真菌剤として使用することが出来る。又、本発明の抗真菌剤は安全性にも優れるため、その投与経路は問わない。本発明の化合物の抗真菌剤としての投与量は、患者の状態や症状により異なるが、例えば、経口投与や注射による投与であれば、成人1日、1〜10000mgを1回乃至は数回に分けて投与するのが好ましく、皮膚外用剤であれば0.1〜10重量%含有するものを適量塗布するのが好ましく、膣座剤であれば、0.1〜10重量%含有する座剤を1回乃至は数回取り替えて投与するのが好ましい。
【0016】
(3)本発明の医薬組成物
本発明の医薬組成物は、上記本発明の抗真菌剤を含有することを特徴とする。後記実施例に示す如く、本発明の抗真菌剤は優れた抗真菌作用を有するため、本発明の医薬組成物は、表在性真菌症や深在性真菌症の治療や悪化の予防、再発防止に大変有益である。本発明の医薬組成物としては、例えば、液剤、クリーム、軟膏などの皮膚外用剤、錠剤、カプセル剤、散剤などの経口製剤、注射剤、膣座剤等の剤形が好ましく例示できる。本発明の医薬組成物には、上記抗真菌剤以外に、通常医薬組成物で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、経口製剤や注射剤であれば、賦形剤、結合剤、被覆剤、滑沢剤、糖衣剤、崩壊剤、増量剤、矯味矯臭剤、乳化・可溶化・分散剤、安定剤、pH調整剤、等張剤等が例示でき、皮膚外用剤や膣座剤であれば、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が例示できる。これらの上記抗真菌剤と任意成分とを常法に従って処理することにより、本発明の医薬組成物は製造することが出来る。
【0017】
【化19】
(化合物1)
【0018】
【化20】
(化合物2)
【0019】
【化21】
(化合物3)
【0020】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定を受けないことは言うまでもない。
【0021】
<実施例1>
トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(3−クロロ−2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物1)の合成
[工程A]
メチレンクロリド50mlに3−クロロチオフェン2gと無水酢酸1.74gを溶解した。室温で攪拌しながら、塩化アルミニウム3.83gを少しずつ加え、2時間攪拌し、氷と濃塩酸の上に、反応物を一気に注ぎ、メチレンクロリド70mlで抽出し、水で3回、飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮し2−アセチル−3−クロロチオフェンを茶色の油状物質として得た。このもの2.18gをジエチルエーテルに溶かし、臭素0.7mlを室温で攪拌しながら加えた。15分攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と氷の上に反応物を一気に注いだ。酢酸エチル100mlで抽出し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、2−(2−ブロモアセチル)−3−クロロチオフェンを茶色の油状物質として得た。N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチルアミンの0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMF)10mlに溶解させ、炭酸ナトリウムを0.5gを混合し、これにDMF5mlに2−(2−ブロモアセチル)−3−クロロチオフェン0.75gを溶かした液を、室温で攪拌しながら滴下した。3時間攪拌した後、氷と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の上に、この反応液を一気に注いだ。酢酸エチル100mlで抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物4を黄色油状物質として得た。(収量0.23g、収率23.6%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。(溶媒;CDCl3、δppm、以下に示すNMRの数値は同様のものを示す。)1.24(s,9H)、2.39(s,3H)、3.24(dd,2H,J=1.35Hz、6.75Hz)、3.78(s,2H),5.66(d,1H,J=15.7Hz)、6.09(td,1H,J=6.75Hz、15.7Hz)、7.01(d,1H,J=5.40Hz)、7.53(d,1H,J=5.40Hz)
【0022】
[工程B]
ベンゼン10mlにメチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.4gを懸濁させ、窒素雰囲気下室温で攪拌しながら、1.63Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えた。5分間攪拌した後、化合物4の0.23gをベンゼン5mlに溶かした液を滴下した。室温で1晩攪拌した後、氷水の上に注ぎ反応を止めた。これよりベンゼン100mlで抽出し、飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製し、淡黄色の油状物質として化合物1を得た。(収量0.04g、収率17.5%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.22(s,3H)、3.07(dd,2H,J=1.35Hz、6.75Hz)、3.25(s,2H)、5.45(s,1H)、5.62(d,1H,J=10.5Hz)、5.70(s,1H)、6.06(td,1H,J=6.75Hz、10.5Hz)、6.89(d,1H,J=5.40Hz)、7.16(d,1H,J=5.40Hz)
【0023】
[C工程]
化合物1の0.04gをイソプロピルエーテル50mlに溶解させ、室温で攪拌しながら4N−HCl酢酸エチル溶液0.04mlを加えた。室温で一晩攪拌し後、析出した白色結晶を濾取し、乾燥させ化合物1の塩酸塩を得た。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.23(s,9H)、2.66(d,3H,J=5.40Hz)、3.45〜3.73(m,2H)、4.01〜4.19(m,2H)、5.72(d,1H,J=10.3Hz)、5.95(s,1H)、6.12(s,1H)、6.25(td,1H,J=7.56Hz、10.3Hz)、6.70(d,1H,J=5.13Hz)、7.31(d,1H,J=5.13Hz)、12.9(bs,1H)
【0024】
又、融点は174〜175℃であり、赤外スペクトルは次に示すとおりである。(単位はcm-1)
2970、2953、2926、2901、2686、2668、2632、1408、1399、964.9、930.9、888.9
【0025】
<実施例2>
トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物2)
実施例1の出発物質の2−アセチル−3−クロロチオフェンを2−アセチルチオフェンに変え、工程Aを行い、化合物5を黄色油状物質として得た。(収率39.9%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.36(s,3H)、3.19(dd,2H,J=1.35Hz、6.75Hz)、3.65(s,2H),5.66(dd,1H,J=1.35Hz、15.9Hz)、6.10(td,1H,J=6.75Hz、15.9Hz)、7.12(t,1H,J=4.05Hz)、7.62(dd,1H,J=1.08Hz、4.05Hz)、7.91(dd,1H,J=1.08、4.05Hz)
【0026】
このものを実施例1の化合物1の工程Cと同様に処理して塩酸塩を得た。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.21(s,9H)、3.05(s,3H)、4.05(bs,2H)、4.50〜4.55(m,2H)、5.85(d,1H,J=13.2Hz)、6.31(td,1H,J=7.56Hz、13.2Hz)、7.23(m,1H)、7.80〜7.84(m,2H)、13.3(bs,1H)
【0027】
このものの融点は175.5〜177.5℃であり、赤外吸収スペクトルは次の通りである。(単位はcm-1)
3424、2968、1668、1413、1359、1261
【0028】
この化合物5を実施例1の工程Bと同様の操作を行い、化合物2を得た。(収率35.8%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.23(s,3H)、3.08(dd,2H,J=1.62Hz、6.75Hz)、3.28(s,2H),5.12(s,1H)、5.51(s,1H)、5.64(td,1H,J=1.62Hz、15.9Hz)、6.09(td,1H,J=6.75Hz、15.9Hz)、6.98(m,1H)、7.16〜7.23(m,2H)
【0029】
実施例1と同様に化合物2の塩酸塩を作成した。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.21(s,9H)、2.68(d,3H,J=4.86)、3.53〜3.81(m,2H)、3.89〜4.15(m,2H)、5.81(d,1H,J=15.9Hz)、5.83(s,1H)、5.94(S,1H)、6.28(td,1H,J=7.29Hz、15.9Hz)、7.06(m,1H)、7.18(m,1H)、7.29(m,1H)、12.8(bs,1H)
【0030】
このもの融点は152.5〜154.5℃であり、赤外吸収スペクトルは次の通りである。(単位はcm-1)
2967、2932、2906、2825、2678、2613、1624、1474、1451、1400、977
【0031】
<実施例3>
トランス−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−2−(5−クロロ−2−チエニル)−2−プロペニルアミン(化合物3)実施例1の出発物質の2−アセチル−3−クロロチオフェンを2−アセチル−5−クロロチオフェンに変え、同様に処理して化合物6を黄色油状物質として得た。(収率51.1%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.32(s,3H)、3.16(dd,2H,J=1.49Hz、7.02Hz)、3.49(s,2H),5.66(dd,1H,J=1.49Hz、15.9Hz)、6.09(td,1H,J=7.02Hz、15.9Hz)、6.95(d,1H,J=4.05Hz)、7.75(d,1H,J=4.05Hz)
【0032】
このものを実施例1の化合物1の工程Cと同様の操作を行い塩酸塩を得た。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.22(s,9H)、3.03(s,3H)、4.03(bs,2H)、4.53(s,2H)、5.83(d,1H,J=15.9Hz)、6.28(td,1H,J=7.56Hz、15.9Hz)、7.05(d,1H,J=4.32Hz)、7.65(d,1H,J=4.32Hz)、13.2(bs,1H)
【0033】
このものの融点は171〜173℃であり、赤外吸収スペクトルは次の通りである。(単位はcm-1)
3438、2969、2930、2867、1664、1417、1327、1256
【0034】
この化合物6を実施例1と工程Bと同様の操作を行い、化合物3を得た。(収率34.6%)このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.24(s,9H)、2.21(s,3H)、3.07(dd,2H,J=1.35Hz、6.75Hz)、3.20(s,2H),5.07(s,1H)、5.40(s,1H)、5.63(td,1H,J=1.35Hz、15.9Hz)、6.09(td,1H,J=6.75Hz、15.9Hz)、6.77(d,1H,J=3.78Hz)、7.00(d,1H,J=3.78Hz)
【0035】
実施例1の工程Cと同様の操作を行い、化合物3の塩酸塩を作成した。このものの1H−NMRは次に示すとおりである。
1.22(s,9H)、2.69(d,3H,J=4.86)、3.55〜4.09(m,2H×2)、5.80〜5.86(m,4H)、6.26(td,1H,J=7.56Hz、15.9Hz)、6.87(d,1H,J=4.05)、7.01(d,1H,J=4.05Hz)、12.9(bs,1H)
【0036】
このもの融点は146〜148℃であり、赤外吸収スペクトルは次の通りである。(単位はcm-1)
3432、2970、2954、2909、2867、2692、2641、2577、2508、1623、1474、1449
【0037】
<実施例4>
抗菌性試験(発育阻止濃度の測定)
トリコフィトンに対する本発明の化合物の抗真菌作用を求めた。即ち、トリコフィトン・メンタグロファイテス(T.mentagrophytes TIMM1189)を予めサブロー寒天培地の斜面に27℃で2週間培養して分生子を充分つくらせる。これをツィーン80を0.05重量/容量%含有する滅菌生理食塩水で白金耳で擦りながら洗浄し分生子を浮遊させる。これを二枚重ねのガーゼで濾過し分生子のみを生理食塩水に浮遊する形で取り出した。分生子の濃度を105個/mlになるように調整し試験菌菌液とした。一方、化合物を4mgとり、ジメチルスルホキサイド1mlを加え原液とし、これを順次ジメチルスルホキサイドで2倍希釈し希釈薬剤液を調整した。組織培養用96穴マイクロプレートの各ウェルにサブロー・デキストロース培地175μl、薬剤溶液5μl、試験菌菌液20μlを加え、良く混和した後、27℃で1週間培養し目視にて完全に発育を阻止する最小濃度を探し、最小発育阻止濃度とした。結果は、化合物1の塩酸塩が0.20μg/mlであり、化合物2の塩酸塩が0.05μg/mlであり、化合物3の塩酸塩が0.12μg/mlであった。これより本発明の抗真菌剤の抗真菌作用が優れていることがわかる。
【0038】
<実施例5>
下記に示す処方に従って本発明の医薬組成物である、水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
ワセリン 99重量部
化合物1の塩酸塩 1重量部
【0039】
<実施例6>
下記に示す処方に従って本発明の医薬組成物である、水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
ワセリン 99重量部
化合物2の塩酸塩 1重量部
【0040】
<実施例7>
下記に示す処方に従って本発明の医薬組成物である、水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
ワセリン 99重量部
化合物3の塩酸塩 1重量部
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、抗真菌作用を有する新規化合物が提供できる。
Claims (8)
- 請求項1又は2に記載の化合物又は生理的に許容されるその塩を有効成分とする抗真菌剤。
- 真菌が足及び/又は爪白癬の病原菌であることを特徴とする、請求項3に記載の抗真菌剤。
- 請求項3又は4に記載の抗真菌剤を含有する医薬組成物。
- 請求項6又は7に記載の化合物をウィティッヒ反応に付することを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物の製造方法。
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