JP3839518B2 - 抗真菌剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗真菌剤として有用な新規ベンジルアミン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
水虫に代表される表在性真菌症は、生活が西洋化して靴の着用時間が増加したのに相まって、未だに確実な治療法及び治療薬が見いだされていないこともあり、現代に於ける克服されていない疾病の一つに数えられている。その為、抗真菌作用について、多くの化合物がスクリーニングにかけられた。しかしながら、in vitro或いは動物レベルに於いて活性が見いだされた物質でも、実際の臨床段階においてはドロップアウトするものが少なくなく、満足いく結果は今のところ得られたものは極めて少ない。即ち、新規の抗真菌作用を有する母核の発見が待たれていた。一方、後記化合物1〜3は何れも新規化合物であり、この様な化合物が抗真菌作用を有するであろうことは、全く知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、抗真菌作用を有する新規母核を見いだし、抗真菌作用を有する新規化合物を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この様な状況に鑑み、新規母核を見いだすべく鋭意合成・抗真菌スクリーニングを重ねた結果、一般式(I)に示す化合物群にその様な作用を見いだし、発明を完成させるに至った。以下、本発明について詳細に説明する。
【0005】
【化6】
一般式(I)
(但し、式中R1、R4はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していても良い炭素数6〜18の芳香族炭化水素を表し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、m、nはそれぞれ独立に1〜4の整数を表す。)
【0006】
(1)本発明の化合物
本発明の化合物は、一般式(I)に表されるベンジルアミン誘導体から選ばれる後記化合物1〜3及び生理的に許容されるこれらの塩である。生理的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、燐酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の鉱酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩等が例示できる。これらの内最も好ましいものは塩酸塩である。これらの塩は、一般式(I)に表される化合物を用いて常法に従って得ることが出来る。例えば、極性又は非極性溶媒中で一般式(I)に表される化合物と酸とを混合すればよい。一般式(I)に表される化合物は、次に示す反応式1に従って合成できる。即ち、安息香酸誘導体から導いた、N−メチルベンジルアミン誘導体に対応するベンジルハライド乃至はベンゾイルハライドを反応させ、ベンゾイルハライドの場合は、リチウムアルミニウムハイドライド等で還元すれば、それぞれ同様に一般式(I)に表される化合物が得られる。かくして得られた化合物は、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや再結晶などの通常の精製手段で精製することが出来る。この様な一般式(I)に表される化合物のうち本発明化合物は、4−ターシャリーブチル−N−メチル−N−(2−フェニルベンジル)ベンジルアミン(化合物1)、4−ターシャリーブチル−N−メチル−N−(3−フェニルベンジル)ベンジルアミン(化合物2)、4−ターシャリーブチル−N−メチル−N−(4−フェニルベンジル)ベンジルアミン(化合物3)である。
【0007】
【化7】
反応式1
(但し、R6、R7はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していても良い芳香族基を表し、R5は置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニル基を表す。)
【0008】
【化8】
化合物1
【0009】
【化1】
(化合物2)
【0010】
【化2】
(化合物3)
【0012】
(2)本発明の組成物
本発明の組成物は、上記化合物を含有することを特徴とする。上記化合物は唯一種を含有せしめても良いし二種以上を混合して含有せしめても良い。組成物としては、抗真菌剤を含有していることが知られている組成物であれば、特段の限定を受けずに用いることができる。この様な組成物としては、例えば、皮膚外用剤や洗浄・消毒用の外用剤等の医薬組成物、靴下や下着などの衣服、ハブラシやボールペン等のプラスチック製品などが例示でき、この中では、医薬組成物、取り分け皮膚外用剤が最も好ましい。組成物中へ本発明の化合物を含有せしめる方法であるが、これらは従来の技術に従って行えばよい。例えば、医薬組成物であれば、他の成分とともに乳化或いは可溶化したり、粉体成分中に混ぜ込んで造粒等すればよい。又、衣服には、繊維を製造する段階で溶融混合し紡糸したり、衣服に含浸させたりすればよい。プラスチック製品には、溶融混合するのが好ましい。又、木材等に黴防止の意味で含浸する事も可能である。
【0013】
本発明の組成物は、化合物1〜3以外に、これらの組成物が通常含有する任意成分を含有することができる。かかる任意成分としては、医薬組成物においては、賦形剤、着色剤、矯味矯臭剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、安定剤、pH調節剤、糖衣剤、乳化・分散・可溶化剤等が挙げられ、中でも皮膚外用剤では、流動パラフィンやワセリン等の炭化水素類、ゲイロウやミツロウ等のエステル類、オリーブ油や牛脂等のトリグリセライド類、セタノールやオレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸やオレイン酸等の脂肪酸類、プロピレングリコールやグリセリン等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤類、カチオン界面活性剤類、増粘剤等が例示できる。又、衣服やプラスチックでは、可塑剤、架橋剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が例示できる。本発明の組成物に於ける本発明の化合物の含有量であるが、0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜15重量%がより好ましく、0.1〜10重量%が更に好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、発明の実施の形態について、例を挙げて詳細に説明するが、本発明がこれらの例のみに限定を受けないことは言うまでもない。
【0015】
(例1)製造例
クロロホルム100mlにオルトフェニル安息香酸10g、塩化チオニル18.7gを混合し4時間加熱還流した。反応物を減圧濃縮し、これを氷冷下40%メチルアミン水溶液40mlに滴下した。混合物を室温まで戻し、4日間攪拌し反応させた。2N塩酸を加え反応を止め、クロロホルムで抽出し有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を取り溶媒を溜去し、N−メチル−2−フェニル安息香酸アミドを得た。これをエーテル中0.54gのリチウムアルムニウムハイドライドで還元し、1.46gのN−メチル−2−フェニルベンジルアミンを得た。これと1.45gのp−ターシャリーブチル安息香酸から誘導した酸クロライドをベンゼン中でトリエチルアミンの存在下反応させ、反応液に水とクロロホルムを加え抽出し、有機層を取り、希塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄した。溶媒を溜去し黄色結晶として、N−メチル−N−(2−フェニルベンジル)−4−ターシャリーブチル安息香酸アミドを2.42g得た。これをテトラヒドロフラン中リチウムアルミニウムハイドライドで還元し、ジエチルエーテルで抽出してN−メチル−(4−ターシャリーブチルベンジル)−N−メチル−2−フェニルベンジルアミン(化合物1)を0.83g(収率35.7%)得た。NMR(溶媒:重クロロホルム)は次の通りであった。
1H−δppm;1.31(9H,s)、2.10(2H,s)、3.44(2H,s)7.17〜7.69(13H,m)
化合物1をジエチルエーテル20mlに溶かし、4N塩酸−酢酸エチル溶液を滴下した。ジエチルエーテル160mlを加え析出した白色沈澱を濾取し、ジエチルエーテル−エタノール混合溶媒より再結晶し白色結晶を0.48g得た。(収率52.5%)NMR(1H−δppm、溶媒:重クロロホルム)スペクトルは次に示す。融点147〜149℃。
1.29(9H.s)、2.3(3H,d)、3.80〜4.06(2H,m)、4.18〜4.33(2H,m)、7.16〜8.28(13H,m)、12.4(1H,s)
尚、IRスペクトルは以下の通り。(KBr錠剤、cm−1)
3419、2961、2905、1476、755、704
【0016】
(例2)製造例
クロロホルム100mlにp−ターシャリーブチル安息香酸10.1g、塩化チオニル20.2gを混合し、5時間加熱還流した。溶媒と残存塩化チオニルを減圧溜去した後、10mlのクロロホルムに溶解し、40%メチルアミン−メタノール溶液17mlに氷冷下滴下した。これを室温に戻し48時間攪拌した。反応溶液に2N塩酸100mlを加え、ジクロロメタン100mlで抽出し、有機層に水、次いで飽和食塩水を加え洗浄した。これを更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し溶媒を溜去し、N−メチル−4−ターシャリーブチル安息香酸アミドを得た。これをジエチルエーテル110mlに溶解し、リチウムアルミニウムハイドライド3gを混合し、窒素雰囲気下6時間加熱還流した。氷冷下水を加え反応を停止させた後不溶物を濾過しジエチルエーテルで不溶物を洗浄した。水で濾液を洗い、溶媒を減圧溜去してN−(4−ターシャリーブチルベンジル)−N−メチルアミンを3.69g得た。一方、3−フェニルトルエン9.83gを四塩化炭素100mlに溶かし、N−ブロモサクシンイミド10.5g、過酸化ベンゾイル150mgを加え、3時間加熱還流した。反応液を冷却し、濾過により不溶物を除去し、濾液を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=10:1)6.51g(収率45%)の3−(ブロモメチル)ビフェニルを得た。N−(4−ターシャリーブチルベンジル)−N−メチルアミン2.78gと3−(ブロモメチル)ビフェニルとを室温でN,N−ジメチルホルムアミド中、炭酸ナトリウムの存在下24時間攪拌して反応させ、クロロホルムと飽和食塩水で抽出し、有機層を取り濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:クロロホルム=9:1)で精製し、4−ターシャリーブチル−N−メチル−N−(3−フェニルベンジル)ベンジルアミン(化合物2)2.97g(収率:60.9%)を黄色油状物質として得た。1H−NMR(δppm、重クロロホルム)は次に示す。融点175〜176℃。
1.26(9H,s)、2.18(3H,s)、3.49(2H,s)、3.54(2H,s)、7.23〜7.59(13H,m)
例1と同様にこのものの塩酸塩を作成した。収量2.71g(収率:82.5%)。1H−NMR(δppm、重クロロホルム)及びIR(cm−1)は次に示す通り。
(NMR)
1.33(9H,s)、2.61(3H,d)、4.04〜4.14(2H,m)、4.24〜4.37(2H,m)、7.35〜7.84(13H,m)、12.9(1H,s)
(IR)
2960、2515、1460、459、701
【0017】
(例3)製造例
例1と同様にp−フェニル安息香酸2.47gより、4−ターシャリーブチル−N−メチル−N−(4−フェニルベンジル)ベンジルアミン(化合物3)を黄色油状物質として0.63g得た。1H−NMRスペクトル(δppm、重クロロホルム)は次に示すとおり。
(NMR)
1.32(9H,s)、2.16(3H,s)、3.48(2H,s)、3.50(2H,s)、7.29〜7.65(13H,s)
例1と同様このものの塩酸塩を作成した。収量0.51g(収率:73.1%)。融点230℃以上。1H−NMR(δppm、重クロロホルム)、IR(cm−1)は次に示す通り。
(NMR)
1.33(9H,s)、2.59(3H,s)、4.10(2H,s)、4.27(2H,d)、7.36〜7.73(13H,m)、12.6(1H,s)
(IR)
3428、2960、2614、2566、1466、763
【0018】
(例4)参考製造例
例2と同様に、4.06gのクロロジフェニルメタンより、4−ターシャリーブチル−N−ジフェニルメチル−N−メチルベンジルアミン(化合物4)を油状物質として0.83g得た。(収率:58.4%)1H−NMRスペクトル(δppm、重クロロホルム)は次に示す通り。
(NMR)
1.29(9H,s)、2.06(3H,s)、3.46(2H,s)、4.45(1H,s)、7.09〜7.50(14H,m)
例1と同様に塩酸塩を作成した。収量は0.47g(収率:51.1%)。融点は220℃以上。1H−NMR(δppm、重クロロホルム)、IR(cm−1)は次に示す通り。
(NMR)
1.35(9H,s)、2.57(3H,d)、4.38(2H,s)、4.83(1H,d)、7.21〜8.05(14H,m)、13.2(1H,s)
(IR )
3412、2969、2473、1457、908、707
【0019】
(例5)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物1とを混合し、溶融成形し歯ブラシの柄を作成した。
ポリスチレン小球 99重量部
化合物1の塩酸塩 1重量部
【0020】
(例6)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物2とを混合し、溶融成形し歯ブラシの柄を作成した。
ポリスチレン小球 90重量部
化合物2の塩酸塩 10重量部
【0021】
(例7)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物3とを混合し、溶融成形しボールペンの軸を作成した。
ポリスチレン小球 99.9重量部
化合物3の塩酸塩 0.1重量部
【0022】
(例8)組成物の例
下記に示す処方に従ってポリスチレンとの組成物を作成した。即ち、ポリスチレン小球と本発明の化合物である、化合物4とを混合し、溶融成形しボールペンの軸を作成した。
ポリスチレン小球 99重量部
化合物4の塩酸塩 1重量部
【0023】
(例9)組成物の例
下記に示す処方に従って水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
ワセリン 99重量部
化合物1の塩酸塩 1重量部
【0024】
(例10)組成物の例
下記に示す処方に従って水虫治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分をニーダーに秤込み混練りして軟膏を得た。
吸水軟膏 99重量部
化合物2 1重量部
【0025】
(例11)組成物の例
下記に示す処方成分を攪拌可溶化して液剤を得た。
エタノール 92重量部
メタクリル酸アルキルエステルコポリマー 2重量部
化合物3 1重量部
プロピレングリコール 5重量部
【0026】
(例12)組成物の例
下記に示す処方成分を攪拌可溶化して液剤を得た。
エタノール 92重量部
メタクリル酸アルキルエステルコポリマー 2重量部
化合物4の塩酸塩 1重量部
プロピレングリコール 5重量部
【0027】
【実施例】
実施例1
抗菌性試験(生育阻止濃度の測定)
トリコ
フィトンに対する本発明の化合物の抗真菌作用を求めた。即ち、トリコフィトン・メンタグロフィテス(T.mentagrophytes TIMM1189)を予めサブロー寒天培地の斜面に27℃で2週間培養して分生子を充分つくらせる。これをツィーン80を0.05重量/容量%含有する滅菌生理食塩水で白金耳で擦りながら洗浄し分生子を浮遊させる。これを二枚重ねのガーゼで濾過し分生子のみを生理食塩水に浮遊する形で取り出した。分生子の濃度を105個/mlになるように調整し試験菌菌液とした。一方、化合物1〜4の塩酸塩を4mgとり、ジメチルスルホキサイド1mlを加え原液とし、これを順次エタノールで2倍希釈し希釈薬剤液を調整した。組織培養用96穴マイクロプレートの各ウェルにサブロー・デキストロース培地175μl、薬剤溶液5μl、試験菌菌液20μlを加え、良く混和した後、27℃で1週間培養し目視にて完全に発育を阻止する最小濃度を探し、最小生育阻止濃度とした。結果は、表1に示す。この表より本発明の化合物が優れた抗真菌作用を有していることが判る。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、抗真菌剤に好適な新規化合物が提供できる。
【化3】
【化3】
【化4】
【化4】
【化5】
【化5】
Claims (5)
- 4−ターシャリーブチル−N−メチル−N−(2−フェニルベンジル)ベンジルアミン、4−ターシャリーブチル−N−メチル−N−(3−フェニルベンジル)ベンジルアミン及び4−ターシャリーブチル−N−メチル−N−(4−フェニルベンジル)ベンジルアミンから選ばれるベンジルアミン誘導体又は生理的に許容されるその塩。
- 生理的に許容される塩が塩酸塩である、請求項1記載のベンジルアミン誘導体又は生理的に許容されるその塩。
- 請求項1又は2記載のベンジルアミン誘導体又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含有する医薬組成物。
- 抗真菌剤である請求項3記載の医薬組成物。
- トリコフィトン・メンタグロフィテス(T.mentagrophytes )に対する抗真菌剤である請求項3記載の医薬組成物。
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