JP3619035B2 - プラズマディスプレーパネル用の隔壁形成方法及び組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細なパターンを形成するマイクロリソグラフィの手法に関する。とりわけプラズマディスプレイ用の隔壁をマイクロリソグラフィによって形成する方法に関するものであって、中でも隔壁材料を精度よく、確実かつ効果的に現像する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディスプレイや回路材料の分野で、無機材料を高精度にパターン加工する技術が強く求められている。特に、ディスプレイの分野において、小型・高精細化が進んでおり、それに伴って、パターン加工技術も技術向上が望まれている。例えば、プラズマディスプレイパネルの各画素の仕切りである壁隔の形成には、ガラスなどの無機材料を高精度かつ高アスペクト比でパターン加工できる材料が用いられている。
【0003】
一般に、ガス放電パネルであるプラズマディスプレーパネル(PDP)は、2枚の基板に挟まれた微小な放電空間としてのセルを多数備えており、セルごとに放電して発光するか、あるいは生じた紫外線によって蛍光体を発光させる。これらの微小セルの間には、セル相互の干渉を防ぐために、また両基板の間隔を一定に保つために障壁が設けられている。従来この障壁には、障壁形成用のペーストを用いてスクリーン印刷によりパターニングすることが一般的に行われてきた。
【0004】
ところで、上記したプラズマディスプレーパネルでは、放電空間をできるだけ大きくして高輝度の発光を得るために、壁面が垂直に切り立ち、幅が狭く高さが高い障壁が要求される。とくに高精度のディスプレーパネルでは、高さが例えば100ミクロンに対して幅が30〜50ミクロンという高アスペクト比の障壁が必要とされる。
【0005】
隔壁などのパターンを形成する方法として、特開平1−296534号、特開平2−165538号、特開平5−342992号の各公報では、感光性ペーストを用いてミクロフォトリソグラフィによりパターンを形成する方法が提案されている。しかしながら、感光性ペーストの感度や解像度が低いために高アスペクト比の高精細の隔壁を得ることに困難を伴う。例えば80μmを越えるような厚みのものをパターン加工する場合、現像が深部まで効果的に行われず、非パターン部分が十分に除去されない上、非パターン部が除去されても非溶解性の無機微粒子が隔壁で仕切られたセルの内部に残渣として残ってしまうという欠点があった。
【0006】
また、特開平2−165538号公報では、感光性ペーストを転写紙または転写フィルム上にコーティングした後、その転写用材料から隔壁パターンをガラス基板上に転写して隔壁を形成する方法が、また、特開平3−57138号公報では、フォトレジスト層の溝に誘電体ペーストを充填して隔壁を形成する方法がそれぞれ提案されている。さらに特開平4−109536号公報では、感光性有機フィルムを用いて隔壁を形成する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法でも、高精細度で高アスペクト比を有する隔壁を得るには、現像における非パターン部の溶解性の不足、残留無機物の除去の不完全及び隔壁構成材料の物理的強度と非パターン部の溶解性とが両立しないことなどにより、満足な方法が得られていない。
【0007】
この欠点の改善のために、特開平8−321257号公報には、隔壁形成層上にレジスト膜を設けて、レジストパターンを介してサンドブラスト加工を施す方法が開示されている。しかしながら、この方法でも、サンドブラストによるエッチングが十分深部に及ばず、アスペクト比が高い隔壁を精度よく形成できない難点がある。
【0008】
この難点を克服するために、本発明者は、さきに無機微粒子を含有する感光性組成物を隔壁形成層として、この層にパターン状の露光を与えたのち、水又はアルカリ水溶液を高圧噴射して、非パターン部を除去する方法を提案した。この方法によってパターン精度とアスペクト比が向上することが認められている。しかし、プラズマディスプレーの高精細化と高輝度化の要請が大きいので、さらに高い精度と高いアスペクト比を得る隔壁形成方法が望まれている。
この要請は、プラズマディスプレイにおいて、隔壁とともに必要な絶縁体層や誘電体層のパターン加工においても同様に望まれていることでもある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、パターン状に露光された無機微粒子を含有する隔壁形成層、とりわけプラズマディスプレイ用の隔壁形成層の現像処理に際して、パターン部分が崩れることなく、非パターン部分は実質的に完全に除去されて残留不溶解物も除かれる隔壁形成方法を提示することである。
本発明のさらなる目的は、アスペクト比が高く、かつ精度も優れたプラズマディスプレー用の隔壁形成方法を提示することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、水又はアルカリ水溶液を高圧噴射して非パターン部を除去してプラズマディスプレイ用の隔壁を形成するに際して、上記の目的を満たすには、基壁の底部に現像効果を十分に及ばせることとパターン部の表面部分が噴射圧で崩れないことという2つの相反する要求特性を両立させる必要があり、それにはパターンの表面部分の物理的強度を選択的に強化することが不可欠と考えて鋭意研究を進めた結果、本発明に達した。すなわち、本発明はつぎの構成による。
【0011】
1.基板上に少なくとも無機微粒子と有機バインダーとを含む下層と、少なくとも光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層とからなる隔壁形成用重層構成層を形成させる工程、該隔壁形成用重層構成層にパターン状の露光を与える工程、露光済みの該隔壁形成用重層構成層に水またはアルカリ水溶液に圧縮空気を注入して微気泡を含んだ水・気体混合流体を5kg/cm 2 以上の印加圧力で加圧噴射して現像を行う工程および現像済みの該隔壁形成用重層構成層を焼成する工程を順次施すことを特徴とするプラズマディスプレーパネル用の隔壁形成方法。
【0012】
2.基板上に少なくとも無機微粒子と有機バインダーとを含む下層と、少なくとも光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層とからなる隔壁形成用重層構成層を形成させる工程、該隔壁形成用重層構成層にパターン状の露光を与える工程、露光済みの該隔壁形成用重層構成層に水またはアルカリ水溶液を50kg/cm 2 以上の印加圧力で加圧噴射して現像を行う工程および現像済みの該隔壁形成用重層構成層を焼成する工程を順次施すことを特徴とするプラズマディスプレーパネル用の隔壁形成方法。
3.水またはアルカリ水溶液を扇状にひろげて噴射させる、1個のまたは扇のひろがり方向に配列した複数個の噴射ノズルより、印加圧力が50kg/cm 2 以上の水またはアルカリ水溶液を、該扇を含む面に対して直角方向に定速移動する隔壁形成用重層構成層に噴射することを特徴とする上記2に記載の隔壁形成方法。
【0013】
4.少なくとも無機微粒子と有機バインダーとを含む下層中の有機バインダーが少なくともセルロース系樹脂及びアクリル系樹脂のいずれかを含んでいることを特徴とする上記1〜3のいずれか1項に記載の隔壁形成方法。
【0014】
5.無機微粒子と有機バインダーとを含む下層と、少なくとも光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層の少なくとも一方が、二酸化珪素粉末をも含有することを特徴とする上記1〜4のいずれか1項に記載のプラズマディスプレーパネル用の隔壁形成方法。6.無機微粒子と有機バインダーとを含む下層と、少なくとも光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層の少なくとも一方が、二酸化珪素粉末をも含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマディスプレーパネル用の隔壁形成方法。
【0015】
7.光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層が、さらに下層の構成成分の少なくとも一つを含有することを特徴とする上記1〜6のいずれか1項に記載の隔壁形成方法。
【0017】
8.基板上に少なくとも無機微粒子と有機バインダーからなる下層と、少なくとも光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層とからなる隔壁形成用重層構成層を形成させる工程、該隔壁形成用重層構成層にパターン状のマスクを通して露光を与える工程、該露光済み隔壁形成用重層構成層に水またはアルカリ水溶液を圧縮空気を注入して微気泡を含んだ水・気体混合流体を5kg/cm 2 以上の印加圧力で加圧噴射するか又は水またはアルカリ水溶液を50kg/cm 2 以上の印加圧力で加圧噴射して現像を行う工程および該現像済み隔壁形成用重層構成層を400〜600℃で焼成して無機物の隔壁構造を形成させる工程を順次施すことを特徴とする上記1〜7のいずれか1項に記載の隔壁形成方法。
【0019】
9.上記1〜8のいずれかに記載の隔壁形成方法によって形成されたことを特徴とするプラズマディスプレーパネル用の隔壁構造物。
【0020】
本発明の要諦は、隔壁形成層の表層と下層をそれぞれ機能分離したことと現像液を高圧で噴射することを組み合わせることによって、発明目的に適合した隔壁を形成できたことにある。すなわち、水やアルカリ水溶液などの現像液を高圧で噴射する現像方法(以後高圧スプレー現像と呼ぶ)は、化学的な溶解作用と物理的な衝撃作用が共同的に作用するために、現像作用が隔壁形成層の深部にも及んで、非パターン部分は効果的に溶解し、液中に流れだすとともに、不溶解性の無機微粒子も除去される。一方、感光によるパターン化機能と光硬化による表面保護機能を有する表層を設けることによって隔壁構成材料を主成分とした下層からなる隔壁構造が破壊から守られる。それによって現像作用を一層強めることが可能となり、感光部と非感光部との識別性が向上する。したがって、パターニングのための露光量の許容幅がひろがり、隔壁部分が崩れることもなく、パターンの精度とアスペクト比の向上がともに可能となる。
【0021】
以下の記述において、隔壁形成層が表層と下層にそれぞれ異なる機能を持った重層構成の層からなることを表現したい場合には、隔壁形成層を重層構成層と呼ぶこともある。また、その表層を感光層、下層を隔壁構成材層又は単に壁材層とそれぞれの機能を示す呼称を用いることとする。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態についてさらに説明する。
〔隔壁構成材層〕
本発明の隔壁形成方法において、隔壁構成材層(壁材層)用の組成物は少なくとも無機微粒子および有機バインダーを必須の成分として含有しており、さらに後述するその他の成分を含んでいてもよい。それについて以下に説明する。
【0023】
(無機微粒子)
無機微粒子としては、本技術分野の用途において一般的なものであれば特に限定なく、本発明の方法が適用できるが、ガラス、セラミックス(アルミナ、コーディライト等)、金属(金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、タングステン、ルテニウムやこれらの合金)、上記金属の金属酸化物や希土類元素の酸化物、およびそれらの酸化物の複合化合物である蛍光体などの粒子が通常多く用いられる。中でもケイ素酸化物、ホウ素酸化物またはアルミニウム酸化物を必須成分とするガラスやセラミックスが多く用いられる。これらは、絶縁体であり、絶縁パターンの形成、特にプラズマディスプレイやプラズマアドレス液晶ディスプレイの隔壁の形成に用いられる。
【0024】
無機微粒子の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれる。隔壁の高さが高いほど、粒子は微細であることが望まれる。通常、平均粒子径が20μm以下で、とくに0.01〜10μのことが多い。
【0025】
透明度の高い隔壁を形成するには、現像済みのパターン化した組成物の焼成を円滑に行うことが重要であるが、焼成温度は低い方が熱エネルギーの節減になり、かつ基板、フィルターその他の材料の選択の範囲も広がるので、熱軟化温度(Ts)が400〜600℃のガラス微粒子を用いることが好ましい。また、焼成時に基板ガラスのそりを生じさせないためには、線熱膨張係数(線熱膨張率)が50〜90×10−7、さらには、60〜90×10−7のガラス微粒子を無機微粒子の60重量%以上用いることが好ましい。
【0026】
ガラス微粒子中の組成としては、酸化珪素は3〜80重量%の範囲で配合することが好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。3重量%未満の場合はガラス層の緻密性、強度及び安定性が低下し、また熱膨張係数が所望の値から外れ、ガラス基板とのミスマッチが起こりやすい。また60重量%以下にすることによって、熱軟化点が低くなり、ガラス基板への焼き付けが可能になるなどの利点がある。
【0027】
ガラス微粒子として、酸化ビスマス、酸化鉛のうち少なくとも1種類を含有し、その含有率の合計が5〜60重量%のガラス微粒子を用いたもの、あるいは酸化ホウ素、酸化ビスマスもしくは酸化鉛を合計で8〜60重量%含有し、かつ、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムのうち少なくとも1種類を3〜15重量%含有するガラス微粒子を用いたガラスが融点が低く好ましい。
【0028】
無機微粒子として種々の金属酸化物を添加することもある。金属酸化物の添加により、焼成後のパターンを着色させることができる。例えば、感光性組成物中に黒色の金属酸化物を1〜10重量%含むことによって、黒色のパターンを形成することができる。
この目的に用いる黒色あるいはそのほかの色に着色した金属酸化物として、Cr、Fe、Co、Mn、Cu、Ruの酸化物が選ばれるが、特に、FeとMnの酸化物をそれぞれ0.5〜10重量%含有することによって、より光不透過性の強い黒色のパターンを形成できる。また、着色材ではないが、耐火性フィラーとしてアルミナ、マグネシア、コージュライト、カルシア、シリカ、ジルコンなどのセラミック粉体も用いられる。
【0029】
さらに、黒色以外に、赤、青、緑等に発色する無機顔料を添加した組成物を用いることによって、各色のパターンを形成できる。これらの着色パターンは、プラズマディスプレイのカラーフィルターなどに好適に用いることができる。
【0030】
無機微粒子には、二酸化珪素粉末も好ましい。使用される二酸化珪素粉末は、結晶状でも無定形の粉末でもよく、また天然の酸化珪素を粉砕したシリカ粉末であっても合成したシリカ粉末であってもよい。とくに好ましい二酸化珪素粉末は、無定形の微粉末シリカであり、いわゆるコロイダルシリカである。二酸化珪素粉末の好ましい粒子サイズは、平均粒子サイズが0.05〜20ミクロン、より好ましくは0.2〜10ミクロンであり、例えば結着力の強化の点からコロイダルシリカ微粉末と、隔壁構造材として数ミクロンのシリカ粒子とを併用するなど、平均粒子サイズの異なる2種類の二酸化珪素粉末を混合使用してもよい。
本発明に使用される二酸化珪素粉末は、市販のもの、とくに市販のコロイダルシリカを用いることができる。
【0031】
また、無機微粒子として、成分の異なる微粒子を組み合わせて用いることもできる。特に、熱軟化点の異なるガラス微粒子やセラミックス微粒子を用いることによって、焼成時の収縮率を抑制することができる。
無機微粒子は、隔壁の主要な構成材料となるので壁材層の全固形物成分の60重量%以上、好ましくは70〜95重量%用いられる。
【0032】
(有機バインダー)
バインダーとしては、結合剤としての機能のほかに比較的低温で燃焼して気化し、炭化物が障壁中に残留しないことが必要であり、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルプロピルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレートなどのセルロース系樹脂、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリ(2−エチルメチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)などのメタクリル酸エステル重合体樹脂、対応するアクリル酸エステル重合体樹脂及び上記成分の共重合体樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、αースチレン重合体、αーメチルスチレン重合体など既知のバインダー成分が用いられるが、その中でもセルロース誘導体は、隔壁形成用の組成物に好ましいバインダーである。
セルロース誘導体の置換基の置換率は、セルロース水酸基の10〜90%,好ましくは30〜80%である。たとえばエチルセルロースでは、45〜60%の置換率のものが適している。
これらのバインダーは、単一種のポリマーを用いてもよく、また互いに混和するポリマー同士であれば上記した他のセルロース誘導体又は非セルロース系ポリマーと混合して使用してもよい。混合比率は、混和できて、かつバインダーとしての機能が維持されるかぎり任意である。
【0033】
バインダーとして用いるセルロース誘導体は、上記のほかに水溶性基で置換されたセルロース誘導体を副次的成分として加えてもよく、この樹脂は、水溶性基のほかに低級アルキル基又は低級アシル基を置換基として含んでいてもよい。置換基の水溶性基は、ヒドロキシアルキル基(炭素数1〜3)及びカルボキシメチル基である。
【0034】
これらのヒドロキシアルキルセルロースのヒドロキシアルキル基の置換率は、グルコース1単位当たり1.3〜7.0当量であり、好ましくは1.5〜5.0当量である。置換率は、グルコース1単位当たり3.0を超える場合は、ヒドロキシアルキル置換したそのヒドロキシアルキル基にさらに置換が行われることを意味する。置換率が1.3当量以下では溶解性、混和性が不十分となり、7.0当量を超えると置換度を上げにくく、製造コストが高くなる。
とくに好ましいセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルフタール酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、硫酸セルロースである。
【0035】
メチルセルロースは、アルカリセルロースと塩化メチル又はジメチル硫酸から常法により合成される。さらにエチレンオキサイドと常法によって反応させることによってヒドロキシエチルメチルセルロースが得られる。
エチルセルロースは、アルカリセルロースを加圧下で塩化エチルと反応させて得られる。ほかのアルキルセルロースも同様の方法で合成できる。
ヒドロキシエチルセルソースは、セルロースとエチレンオキサイドから常法により合成される。
カルボキシメチルセルロースは、苛性アルカリの存在下でセルロースとモノクロル酢酸を常法により反応させて得られる。また、硫酸セルロースはセルロースとジメチルホルムアミドとを定法によって反応させて得られる。そのほかのセルロース誘導体も同様の公知の方法で合成できる。また、市販もされている。
【0036】
単官能性あるいは多官能性の重合性モノマーが付加したモノマー多置換型セルロース誘導体を用いることもできる。
とくに好ましい重合性官能基含有セルロース誘導体としては、前記したヒドロキシアルキルセルロースあるいはヒドロキシアルキル・アルキル共置換セルロース誘導体のウレタンアクリレート付加物である。その具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの反応生成物、2,4−トリレンジイソシアネートの一方のイソシアネート基を2−ヒドロキレエチルメタクリレートと反応させた後、さらに残余のイソシアネート基をトリエタノールアミンと反応させた反応生成物が挙げられる。
【0037】
壁材層に占めるバインダーの好ましい量は、壁材層中の全固形物中の0.005〜10.0重量%であり、より好ましくは、0.01〜5.0重量%である。また、水溶性基置換セルロース誘導体を他の混和可能のポリマーと混合したバインダーを使用してもよい。水溶性基置換セルロース誘導体を混合する場合、その混合比率は、組み合わせるポリマーの種類によって適当な範囲があるが、通常水溶性基置換セルロース誘導体が全バインダー樹脂量の80重量%以下、好ましくは50重量%以下であり、添加しなくてもよい。
【0038】
さらに、添加剤としてはフタル酸エステル類、グリコール酸エステル類などの可塑剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤を加えてもよいが、高圧スプレー処理の効果を高めるためには、少量にとどめるのがよく、これらの添加量の和はバインダー樹脂の20重量%を超えないことが望ましい。
【0039】
本発明においては、バインダーを無機微粒子などの成分と混和するために、適当な溶剤を用いる。好適な溶剤は、バインダー樹脂に対する良溶媒であって、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテートなどのエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、トルオール、キシロールなどのアルコール類、エチルエーテル、2−エトキシエタノールなどのグリコール類、メチレンクロライドなどが挙げられる。そのほか少量の高沸点溶剤を添加して隔壁構成層用の組成物の塗布物性を調節してもよい。
【0040】
(加水分解性有機金属化合物)
無機微粒子が分散している壁材層には、加水分解性有機金属化合物を添加して粒子同士あるいは粒子・バインダー間の結合を強めておくことが好ましい場合が多い。加水分解性有機金属化合物とは下記一般式(1)で表される加水分解重合性化合物を意味する。
(R1)n−X−(OR2)4−n (1)
一般式(1)中、R1およびR2は同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、又はアリール基を表し、XはSi、Al、TiまたはZrを表し、0〜2の整数を表す。R1またはR2がアルキル基を表す場合に、炭素数としては好ましくは1から4である。またアルキル基またはアリール基は置換基を有してもよい。尚、この化合物は低分子化合物であり分子量1000以下であることが好ましい。
【0041】
加水分解重合性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものに対応するジルコネートを挙げることができる。
【0042】
加水分解重合性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらの内特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0043】
一般式(1)で表される化合物は、一種のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。また、一般式(1)の化合物は、部分的に加水分解後、脱水縮合していてもよい。なお、生成物の物性を調整するために必要に応じてトリアルキルモノアルコキシシランを添加することできる。加水分解重合性有機金属化合物は、本発明における無機相を構成する化合物であるが、無機相の保存安定性、とくに平板印刷用原板の基板に塗布する前の画像形成材料の溶液の状態における保存安定性を高めるために、一般式(1)で表される加水分解重合性有機金属化合物が部分加水分解重合した無機重合体の活性金属水酸基、例えば、シラノール基(Si−OH)を保護することが有効である。シラノール基の保護は、t−ブタノール、i−プロピルアルコール等の高級アルコールでシラノール基をエーテル化(Si−OR)することにより達成することができる(ここでRは、上記のアルコール類中のアルキル基を意味する)。具体的には、シリカ微粒子が分散した無機相に前記高級アルコールを添加することにより実施することができる。このとき無機相の性質により、例えば、無機相を加熱して脱離した水を留去する等の手段を用いて無機相を脱水して保存安定性をさらに向上させることができる。
【0044】
加水分解重合性有機金属化合物は、壁材層中の必須成分ではないが、使用する場合には、加水分解重合性有機金属化合物の添加量は、広い範囲で用いることができ、通常壁材層中の無機微粒子の1〜80%、好ましくは1〜50%、より好ましくは1〜20%の範囲で用いられる。
【0045】
(その他の壁材層への添加化合物)
壁材層の組成物には必要に応じて、有機成分と無機成分の親和性を向上させて組成物の安定化と分散性の向上のためにラジカル重合性モノマーを添加することができる。ラジカル重合性モノマーとは、ラジカル重合が可能なモノマーであればよく、特にシラン化合物が好ましい。ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、N−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシプロペニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(トレメチルシロキシ)シラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ジニルメチルビス(メチルエチルケトキシミン)シラン、ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジエチルとシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリフェシキシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、KBM1003(商品名;信越化学工業株式会社製)、KBM1403(商品名;信越化学工業株式会社製)、KBM503(商品名;信越化学工業株式会社製)、KBM5102(商品名;信越化学工業株式会社製)、KBM5403(商品名;信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0046】
上記のラジカル重合性化合物は、壁材層の必須成分ではないが、その中に添加する場合の含有量は、加水分解性有機金属化合物の量の10〜500%、好ましくは30〜400%の範囲で用いられる。
【0047】
(溶剤)
本発明においては、バインダーを無機微粒子などの成分と混和するために、適当な溶剤を用いる。好適な溶剤は、バインダー樹脂に対する良溶媒又は良分散剤であって、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテートなどのエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、トルオール、キシロールなどのアルコール類、エチルエーテル、2−エトキシエタノールなどのグリコール類、水、メチレンクロライド、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、グリセリン、そのほか成分の性質に応じて適した公知の溶剤を使用できる。また、少量の高沸点溶剤を添加して隔壁構成層用の組成物の塗布物性を調節してもよい。
【0048】
さらに、添加剤としてはフタル酸エステル類、グリコール酸エステル類などの可塑剤、海面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調節用の酸またはアルカリ剤など加えてもよいが、高圧スプレー処理の効果を高めるためには、少量にとどめるのがよく、これらの添加量の和はバインダー樹脂の20重量%を超えないことが望ましい。
【0049】
〔感光層〕
(光重合性モノマー)
本発明における光重合性モノマーとは、光重合性基を有するモノマーであって、単官能性でも多官能性でもよい。ここに光重合性基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルアミノ基、グリシジル基、アセチレン性不飽和基などを挙げることができる。
【0050】
その具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソプロポニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0051】
そのほか、芳香族環を含んだモノマー、たとえばフェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレートビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマー、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール及び上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに変えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0052】
また、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレンビスアクリルアミド、多価アミン化合物と不飽和酸とを縮合させた不飽和酸アミド、水酸基を有する不飽和アミド、例えば、N−メチロールアクリルアミドと多価カルボン酸、多価エポキシなどと反応させて得られる不飽和アミド化合物などの不飽和酸アミドも用いられる。
【0053】
また、これらの光重合性モノマーには、壁材層のバインダーとして前記したバインダー樹脂もしくは上記光重合性モノマーを重合させて得たポリマー又はオリゴマーに、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性を持たせた感光性ポリマーや感光性オリゴマーも用いることができる。
好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などがあげられる。
【0054】
このような側鎖をオリゴマーやポリマーに付加させる方法は、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどがあげられる。イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等がある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量付加させることが好ましい。
【0055】
同様に、バインダーとして用いることができるセルロース誘導体として前記した重合性基を置換したセルロース誘導体も、高分子ではあるが、重合性の化合物であり、本発明においては、感光層に光重合性モノマーとして好ましく添加できる。この場合は、壁材層と感光層との結合性がよい利点がある。
【0056】
(重合開始剤)
感光層には、必須の成分として光重合性モノマーとともに、重合開始剤を含ませる。本発明において、重合開始剤とは、光ラジカル発生剤、光酸発生剤および光塩基発生剤をいう。ここに光ラジカル発生剤と光酸発生剤または光塩基発生剤と双方の性質を有するものも重合開始剤に含まれる。
【0057】
光ラジカル発生剤としては、例えば、DBE[CAS No.10287−53−3]、ベンゾインメチルエーテル、アニシル(p,p’−ジメトキシベンジル)、TAZ−110(商品名:みどり化学株式会社製)、ベンゾフェノン、TAZ−111(商品名:みどり化学株式会社製)、IR−651及び369(商品名:チバガイギー社製)などを挙げることができる。
【0058】
光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている公知の光により酸を発生する化合物およびそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0059】
たとえば S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056 号等に記載のホスホニウム塩、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988) 、特開平2−150,848 号等に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al.,Polymer J.17,73(1985) 等に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al.,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed., 17,1047(1979) 等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al.,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988) 等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、特開昭63−298339 号等に記載の有機ハロゲン化合物、K.Meier et al.,J.Rad.Curing,13(4),26(1986)、特開平2−161445号等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、 J.W.Walker et al., J.Am.Chem.Soc.,110,7170(1988)、 H.M.Houlihan et al.,Macormolecules,21,2001(1988)、等に記載のo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、 H.Adachi et al.,Polymer Preprints,Japan,37(3)、 特開平2−245756号号等に記載のイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544 号等に記載のジスルホン化合物を挙げることができる。
【0060】
好ましい化合物の例としては以下の化合物群を挙げることができる。
(a)トリハロメチル基が置換したオキサゾール誘導体またはs−トリアジン誘導体。たとえば、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロベンジリデンメチル)オキサジアゾール、2,4,6−トリクロロメチルトリアジンなど。
(b)2〜3個のアリール基と結合したヨードニウム塩又はスルホニウム塩。たとえば、ビス−(4,4’−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウム、トリフルオロメチルスルフォネートなど。
(c)ジスルホン誘導体またはイミノスルホネート誘導体。たとえば、ビス(4−クロロフェニルスルフォン)、1,3−ジオキソ−2−(4−メトキシフェニルスルフォキシ)−4,5−ベンゾピロ−ルなど。
(d)とりわけ、ベンゾイントシレート、α−メチルベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、DNB−101(商品名:みどり化学株式会社製)、NB−101(商品名:みどり化学株式会社製)、NB−201(商品名:みどり化学株式会社製)。
【0061】
本発明の隔壁形成方法に用いる感光層組成物において、光酸発生剤の含有量は、通常光重合性モノマーの量の0.001〜40重量%、好ましくは0.05〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%の範囲で用いられる。
光酸発生剤が少ないと感度が低下し、パターンが崩れてプロファイルが劣化する傾向があり、光酸発生剤が多いと現像残りが増加したり、プロファイルが逆台形となりやすい傾向がある。
【0062】
光塩基性発生剤としては、例えば、NBC−101(商品名:みどり化学株式会社製)、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルカルバメートなどを挙げることができる。
【0063】
光ラジカル発生剤と光酸発生剤と双方の性質を有するものとしては、例えば、TAZ−113(商品名:みどり化学株式会社製)、TPS−105(商品名:みどり化学株式会社製)、BBI−101(商品名:みどり化学株式会社製)、BBI−105(商品名:みどり化学株式会社製)、DPI−105(商品名:みどり化学株式会社製)などを挙げることができる。
【0064】
重合開始剤の添加量は、有機相、無機相の性質により適宜選択されるが、通常光重合性モノマーに対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜12重量部である。
【0065】
(溶媒)
溶媒には、親水性溶媒、特に水が好ましいが、そのほかの感光層成分と混和しうる適当な溶剤を用いることができる。好適な溶剤は、バインダー樹脂に対する良溶媒又は良分散剤として壁材層の項で前記した溶媒を用いることができる。溶媒の添加量は、感光性組成物の粘度が塗布に適した後述する範囲になる範囲に入るように適切に調節される。感光剤は溶液であってもペースト状であってもよい。
【0066】
さらに、添加剤としては、壁材層の項で前記したフタル酸エステル類、グリコール酸エステル類などの可塑剤、海面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調節用の酸またはアルカリ剤など加えてもよく、これらの添加量の和は感光層組成物の固形成分の10重量%を超えないことが望ましく、なくてもよい。
【0067】
感光層の必須成分は、光重合性モノマー、重合開始剤および溶剤であり、光重合性モノマーと重合開始剤の混合比率は、モノマーが70〜99.5に対して重合開始剤が0.5〜30であり、好ましくはモノマーが80〜99に対して重合開始剤が1〜20である。
【0068】
感光層は、壁材層と独立の構成であってもよいが、壁材層中の適当な成分を含有することが好ましいことも多い。また、壁剤層の組成物の中に感光層の成分である光重合性モノマー、重合開始剤および溶剤を添加して感光層とすることも好ましい。この場合には、感光層は、感光層としての機能を有している上、隔壁の構造材料として隔壁にも取り込まれる。感光層をこのように壁材層組成物を基にして構成する場合には、その比率(容積比)は、壁材層組成物が10〜90、好ましくは30〜70、より好ましくは50〜70に対して本来の感光層成分が10〜90、好ましくは30〜70、より好ましくは30〜50である。
感光層中に、壁材層の特定の成分を添加する場合には、その添加量(固形成分全量に対する添加比率)は、その成分が壁材層に用いらるときの添加比率を超えない範囲である。
【0069】
〔感光性重層構成層の作製〕
プラズマディスプレー用の隔壁形成用の壁材層は、ガラスフリットなどの無機微粒子、バインダー、溶媒および必要により紫外線吸光剤、加水分解重合性有機金属化合物、前記シラン化合物などのラジカル重合性化合物等の各成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラや混練機で均質に混合分散し作製する。溶媒は、水系溶媒が適しており、とくに水で分散できる場合は、水が用いられる。そのほか、下記する公知の溶媒を単独あるいは組み合わせて使用してもよい。
【0070】
感光層用の組成物は、光重合性モノマー、重合開始剤、溶媒及び必要に応じて壁材層成分などを混合して溶解または混練して、組成によって溶液または分散液とする。また、多種成分から構成される場合は、無機微粒子と親水性成分を水系混合溶媒と混合し、重合開始剤、光重合性モノマーなどを混合して極性溶媒に溶解して有機相とし、これら有機相と無機相を分散混合することもできる。
また、有機成分と無機成分を混合してから、溶剤に溶解或いは分散させてもよい。
【0071】
壁材層および感光層の各組成物の粘度は無機微粒子、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は200〜20万cps(センチ・ポイズ)である。例えばガラス基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、200〜5000cpsが好ましい。スクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには、5万〜20万cpsが好ましい。ブレードコート法やダイコーター法などを用いる場合は、1000〜30000cpsが好ましい。
【0072】
ガラス基板やセラミックスの基板、もしくは、ポリマー製フィルムの上に、壁材層組成物を全面塗布、もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター等の一般的な方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、コーターのギャップ、スクリーンのメッシュ、組成物の粘度を選ぶことによって調製できる。
塗布後直ちにあるいは乾燥後、感光層を重層塗布する。その塗布には、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、スピンコーター、ブレードコーター等の一般的な装置を用いて塗布できる。
【0073】
〔パターン形成(隔壁形成)〕
塗布した後、隔壁などのパターン形成が行われる。通常、露光装置を用いてマスクを通しての露光を行うことが多い。用いるマスクは、感光性有機成分の種類によって、ネガ型もしくはポジ型のどちらかを選定する。
また、フォトマスクを用いずに、赤色や青色の可視光レーザー光、Arイオンレーザー、UVイオンレーザーなどで直接描画する方法を用いても良い。
【0074】
露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機等を用いることができる。また、大面積の露光を行う場合は、ガラス基板などの基板上に感光性組成物を塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。
【0075】
この際使用される活性光源は、たとえば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられるが、これらの中で紫外線が好ましく、その光源としてはたとえば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みによって異なるが、1〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.1〜30分間露光を行なう。好ましい照射エネルギーは50〜300mJ/cm2である。
【0076】
〔現像工程〕
露光後、感光部分と非感光部分の水またはアルカリ性現像液に対する溶解度差を利用してパターン部分を残し、非パターン部分を溶解する現像を行う。現像は、水またはアルカリ性現像液を加圧噴射して行う前記した高圧スプレー現像によって行う。本発明では、加圧噴射の効果が強力でかつ深部に及ぶので、水による現像で非パターン部が実質的に除去される。とくに前記した水溶性基置換セルロース誘導体を含んだ感光性組成物は、本発明の加圧噴射による水現像に適している。一方、パターン部は、感光層が光硬化してレジスト膜を形成して壁材層が保護される。
【0077】
(現像液)
現像液は、必ずしも水に限らない。隔壁形成層中の有機成分が溶解可能である有機溶媒も使用できる。隔壁形成層中にカルボキシル基等の酸性基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。その場合、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液も使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。
【0078】
有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。アルカリ濃度が低すぎると可溶部が除去されず、アルカリ濃度が高すぎると、パターン部を剥離させ、また非可溶部を腐食させるおそれがあり好ましくない。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
(高圧スプレー現像)
【0079】
高圧スプレー現像の好ましい実施形態は、現像液の作用の仕方によって超高圧スプレー現像とバブルジェット現像に分類することができる。
【0080】
はじめに、超高圧スプレー現像について説明する。水またはアルカリ水溶液の加圧噴射の噴射角は、現像作用に大きな影響を及ぼす。感光性重層構成層の面に対して垂直である場合が、もっとも現像作用は強い。一方、プラズマディスプレー用の隔壁材料に由来する無機微粒の除去は、単に現像作用が強いだけでは不十分で、機械的な現像液の衝撃によって不要の無機微粒子を基板から除去しなければないが、そのためには垂直方向より0〜35度、好ましくは0〜20度ほど進行方向に対して斜め前または斜め後ろの角度で噴射するのがよい。水またはアルカリ水溶液を噴射するための印加圧力は、噴射ノズルの形状によって異なる。本発明の好ましい実施形態である猫目型ノズル(断面が凹レンズ状)の場合、50〜350kg/cm2 、好ましくは100〜300kg/cm2 の圧力が効果的である。
【0081】
また、本発明の経済的実施形態として連続現像工程を採用するのが実際的であるが、その場合に組成物層の幅方向に水またはアルカリ水溶液が均等に行きわたるように、扇型のひろがりをもって噴射する噴射ノズルを単独または扇のひろがり方向に複数配列し、扇面に対して直角方向に感光性重層構成層を定速移動しながら水またはアルカリ水溶液の噴射部分を通過する方法をとって連続現像処理を行うことが好ましい。
【0082】
上記の噴射圧、衝撃角度、水流ひろがり形状など本発明の目的を満たすための機能を有して特に好ましく使用できる高圧噴射式現像装置は、超高圧ジェット精密洗浄システムAFシリーズ(旭サナック(株))である。中でも高圧用にはAF5400Sが、低圧用にはAF2800IIが、適している。しかしながら、上記の噴射圧、衝撃角度及び水流ひろがり形状を有する装置であれば、この機種に限定されず、本発明の隔壁形成方法の現像手段に適用できる。
【0083】
つぎに、バブルジェット現像について説明する。本発明の高圧スプレー現像においては、噴射する水またはアルカリ性水溶液は、その中に微気泡を含んだいわゆるバブルジェットの形であってもよい。バブルジェットは、5〜20kg/cm2 の圧力の加圧水(またはアルカリ性水溶液)に圧縮空気を送り込んで得る水・気体混合流体で、この混合流体を高圧で噴射して隔壁形成層に適用すると、隔壁形成層に対して気泡、水滴及び水流の衝撃効果と気泡の表面こすり効果が相加的に起こり、不溶解性の残差の除去がとくに円滑に行われる。したがって、バブルジェット方式、すなわち直径が0.01〜1mm程度の微気泡と水滴とを同時に適用する方式の場合には、印加圧力は5〜20kg/cm2 、好ましくは5〜10kg/cm2 であり、上記した微気泡によらない超高圧スプレー現像とは作用機構に相違があるものと考えられる。バブルジェット方式の現像を行うには、機材洗浄などに通常使用されるバブルジェット装置を使用することができる。好ましい装置には島田理化工業(株)製の枚葉式洗浄装置が挙げられるが、これに限定されない。
【0084】
いずれのタイプの高圧スプレー現像でも、本発明の方法では、隔壁形成に預からない無機微粒子が非パターン部組成物層の深部でも効果的に除去されるので、隔壁の高さを高くすることが可能であり、また、一般には除去しにくい大型の無機粒子を使用することも可能である。したがって、本発明の方法では、1回に塗布される感光性重層構成層の厚みを15〜300ミクロンと高くすることが可能であり、好ましくは50〜200ミクロンである。また、とくに壁の高い隔壁を形成する場合には、重ね塗布によって厚みを増すこともできる。高圧噴射によって300ミクロンの高さの隔壁形成でも効果的に現像できて隔壁を形成させることができる。
【0085】
本発明の隔壁形成方法は、公知の隔壁形成性の感光性組成物層に広く適用できるが、好ましい感光性組成物層は、無機微粒子、水溶性基置換セルロース誘導体、光重合性モノマー、重合開始剤および加水分解重合性有機金属化合物を含有し、それらが機能的に感光層と壁材層に分けられた組成物層である。セルロース誘導体は、組成物中の構成成分との親和性がよく、したがって組成物の透明性を保っているので、とくに高さの高い隔壁の形成の場合にも深部まで露光の効果が及んで隔壁パターン精度の向上に寄与している。しかも水で現像できるので高圧スプレー噴射現像に適している。
【0086】
〔焼成工程〕
次に焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や、温度は組成物や基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素等の雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。
焼成温度は400〜600℃で行う。また、以上の塗布や露光、現像、焼成の各工程中に、乾燥、予備反応の目的で、50〜300℃加熱工程を導入しても良い。
【0087】
以上の工程によって得られた隔壁層を有するガラス基板はプラズマディスプレイの前面側もしくは背面側に用いることができる。また、プラズマアドレス液晶ディスプレイのアドレス部分の放電を行うための基板として用いることができる。
【0088】
形成した隔壁層の間に蛍光体を塗布した後に、前背面のガラス基板を合わせて封着し、ヘリウム、ネオン、キセノン等の希ガスを封入することによって、プラズマディスプレイのパネル部分を製造できる。さらに、駆動用のドライバーICを実装することによって、プラズマディスプレイを製造することができる。
【0089】
また、プラズマディスプレイを高精細化するため、つまり、一定の画面サイズで画素の数を増やすためには、1画素の大きさを小さくする必要がある。この場合、隔壁間のピッチを小さくする必要があるが、ピッチを小さくすると、放電空間が小さくなり、また、蛍光体の塗布面積が小さくなることから、輝度が低下する。具体的には、42インチのハイビジョンテレビ(1920×1035画素)や23インチのOAモニター(XGA:1024×768画素)を実現しようとすると、画素のサイズを450μm角の大きさにする必要があり、各色を仕切る隔壁は150μmピッチで形成する必要がある。この場合、隔壁の線幅が大きいと放電のための空間が確保できないことや蛍光体の塗布面積が小さくなることによって、輝度を向上することが困難になる。
【0090】
本発明の技術を用いることによって、隔壁の幅を小さくすることができる。特に、隔壁幅20〜40μmのストライプ状隔壁を形成するプラズマディスプレイを得ることができ、高精細化時の輝度向上に有効である。
【0091】
また、高さが100〜170μm、ピッチが100〜160μmの高精細隔壁を形成することによって、ハイビジョンテレビやコンピューターモニターに用いることができる高精細プラズマディスプレイを提供できる。
【0092】
以上、プラズマディスプレーパネル製作の例について本発明の態様を説明したが、本発明の方法は、プラズマディスプレーパネル製作への適用に限定されず、マイクロリソグラフィ分野でパターンと非パターン部のディスクリミネーションを向上させる目的に利用できる。
【0093】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を用いて、具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定はされない。
実施例1
(隔壁形成層の作製)
壁材層用の組成物として、下記成分を混合してペースト状の組成物を作成した。
【0094】
アルミナ粉末(平均粒径サイズ0.1μm) 15部
低融点ガラスA(平均粒径サイズ1μm、表1参照) 60部
エチルセルロース 0.5部
ターピネオール(terpineol) 4.5部
ペグミア(メトキシプロピルアセテート) 20部
この組成物を30cm角のソーダガラス基板に、複数回塗布によって、120μmの塗布厚みになるように塗布を行って低融点ガラスと耐火性フィラーがバインダー中に分散された壁材層を設けた後、80℃で30分乾燥した。
次に、感光層用の組成物として、下記成分を混合してペースト状の組成物を作成した。
【0095】
次に、上記のガラス基板上の壁材層の上に感光層を厚さ20μm に塗布して重層構成とした後、80℃で30分乾燥した。
【0096】
【表1】
【0097】
(パターン露光)
次に、フォトマスクを介して露光を行った。マスクには、ピッチ130μm、線幅30μmのクロム製ネガマスクを用いた。
露光は、50mW/cm2の出力の超高圧水銀灯で50mJ/cm2の光量で紫外線露光を行った。
【0098】
(現像)現像は、露光済みの感光性重層構成層を5mm/secの一定速度で試料台上を搬送させながら、超高圧ジェット精密洗浄システムAF5400S(旭サナック(株)製)を使用して扇状に拡がる薄層の水スプレーを感光製組成物面に噴射して行った。水の噴射は、扇状のスプレー面が、組成物の進行方向に直角であり、かつ組成物面に垂直な面に対して10°傾けた角度で組成物の進行方向に向けてスプレーが当たる角度関係で行った。また、そのときの印加圧力は、150kg/cm2 に設定した。
【0099】
(焼成)
現像済みの重層構成層を580°Cで30分間多少の通気性が保たれた状態で焼成した。重層構成層中の有機成分は、焼成中に完全に揮散しており、残存成分は認められなかった。
【0100】
(結果)
得られた隔壁パターン試料を切断して走査型電子顕微鏡で断面観察した。現像不良(局部的な溶解過度、溶解不足)によるパターンの欠落、断絶、未露光部の除去不良、および溶解残渣の残存などの欠陥が認められない、かつ有機物を含まない良好な矩形断面のプラズマディスプレー用の隔壁構造物を得ることができた。
【0101】
実施例2
実施例1の壁材構成層及び感光層の組成を下記のように変更し、感光層の塗布厚みを5μmとした以外は、実施例1と同じ方法でプラズマディスプレー用の隔壁構造物を作成した。
<壁材層用の組成物の組成>
アルミナ粉末(平均粒径サイズ0.1μm) 10部
低融点ガラスA(平均粒径サイズ1μm、表1参照) 60部
エチルセルロース 1部
ヒドロキシプロピルセルロース 1部
コロイダルシリカNPC−ST−30(日産化学工業(株)製) 2部
エポキシエステル1600A(共栄化学(株)製) 1部
N−メチル−2−ピロリドン 10部
酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル 10部
ターピネオール(terpineol) 5部
【0102】
実施例1と同様に、得られたプラズマディスプレー用の隔壁構造物を顕微鏡で観察評価した結果、実施例1と同様に現像不良(局部的な溶解過度、溶解不足)によるパターンの欠落、断絶、未露光部の除去不良、および溶解残渣の残存などの欠陥が認められない、かつ有機物を含まない良好な形状であった。
【0103】
実施例3
実施例1における現像にバブルジェットによる現像、すなわち加圧状態で気体を気泡として混入させた水によって現像を行い、その他は実施例1と同じ方法でプラズマディスプレー用の隔壁構造物を作成した。
島田理化工業(株)製の枚葉式洗浄装置のバブルジェット洗浄装置を使用して圧力10kg/cm2 で架台上に置かれて低速搬送されるパターン露光した感光性重層構成層の表面に特殊ノズルからバブルジェットを吹きつけて現像を行った。現像時間(バブルジェットがあたる時間)は、20秒であった。また、バブルジェットの使用液量は、重層構成層の面積当たり0.25リットル/dm2 であった。
実施例1と同様に、得られたプラズマディスプレー用の隔壁構造物を顕微鏡で観察評価した結果、実施例1と同様に現像不良(局部的な溶解過度、溶解不足)によるパターンの欠落、断絶、未露光部の除去不良、および溶解残渣の残存などの欠陥が認められない、かつ有機物を含まない良好な形状であった。
【0104】
実施例4
実施例2における現像にバブルジェットすなわち加圧状態で気体を気泡として混入させた水を使用し、その他は実施例2と同じ方法でプラズマディスプレー用の隔壁構造物を作成した。
また、バブルジェットによる現像条件は、実施例3と同じとした。
実施例2と同様に、得られたプラズマディスプレー用の隔壁構造物を顕微鏡で観察評価した結果、実施例2と同様に現像不良(局部的な溶解過度、溶解不足)によるパターンの欠落、断絶、未露光部の除去不良、および溶解残渣の残存などの欠陥が認められない、かつ有機物を含まない良好な形状であった。
【0105】
【発明の効果】
無機微粒子を含有する壁材層を下層とし、感光性で光硬化性の感光層を上層とした感光性重層構成層に、パターン露光を与え、水またはアルカリ性水溶液を感光性重層構成層に高圧噴射して現像することによって無機微粒子の残留がなく、高い隔壁であってもパターンの乱れのない高精度のパターン形成を行うことができる。
とくにプラズマディスプレー用の隔壁その他の壁構造物を形成できる。
Claims (9)
- 基板上に少なくとも無機微粒子と有機バインダーとを含む下層と、少なくとも光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層とからなる隔壁形成用重層構成層を形成させる工程、該隔壁形成用重層構成層にパターン状の露光を与える工程、露光済みの該隔壁形成用重層構成層に水またはアルカリ水溶液に圧縮空気を注入して微気泡を含んだ水・気体混合流体を5kg/cm2以上の印加圧力で加圧噴射して現像を行う工程および現像済みの該隔壁形成用重層構成層を焼成する工程を順次施すことを特徴とするプラズマディスプレーパネル用の隔壁形成方法。
- 基板上に少なくとも無機微粒子と有機バインダーとを含む下層と、少なくとも光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層とからなる隔壁形成用重層構成層を形成させる工程、該隔壁形成用重層構成層にパターン状の露光を与える工程、露光済みの該隔壁形成用重層構成層に水またはアルカリ水溶液を50kg/cm2以上の印加圧力で加圧噴射して現像を行う工程および現像済みの該隔壁形成用重層構成層を焼成する工程を順次施すことを特徴とするプラズマディスプレーパネル用の隔壁形成方法。
- 水またはアルカリ水溶液を扇状にひろげて噴射させる、1個のまたは扇のひろがり方向に配列した複数個の噴射ノズルより、印加圧力が50kg/cm2 以上の水またはアルカリ水溶液を、該扇を含む面に対して直角方向に定速移動する隔壁形成用重層構成層に噴射することを特徴とする請求項2に記載の隔壁形成方法。
- 少なくとも無機微粒子と有機バインダーとを含む下層中の有機バインダーが少なくともセルロース系樹脂及びアクリル系樹脂のいずれかを含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の隔壁形成方法。
- 無機微粒子と有機バインダーとを含む下層と、少なくとも光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層の少なくとも一方が、二酸化珪素粉末をも含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマディスプレーパネル用の隔壁形成方法。
- 無機微粒子と有機バインダーとを含む下層中の無機微粒子が、低融点ガラス粉末、耐火性フィラー、金属微粒子、金属酸化物から選ばれた少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の隔壁形成方法。
- 光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層が、さらに下層の構成成分の少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の隔壁形成方法。
- 基板上に少なくとも無機微粒子と有機バインダーからなる下層と、少なくとも光重合性モノマー、重合開始剤および溶媒を含む表層とからなる隔壁形成用重層構成層を形成させる工程、該隔壁形成用重層構成層にパターン状のマスクを通して露光を与える工程、該露光済み隔壁形成用重層構成層に水またはアルカリ水溶液に圧縮空気を注入して微気泡を含んだ水・気体混合流体を5kg/cm2以上の印加圧力で加圧噴射するか又は水またはアルカリ水溶液を50kg/cm2以上の印加圧力で加圧噴射して現像を行う工程および該現像済み隔壁形成用重層構成層を400〜600℃で焼成して無機物の隔壁構造を形成させる工程を順次施すことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の隔壁形成方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の隔壁形成方法によって形成されたことを特徴とするプラズマディスプレーパネル用の隔壁構造物。
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