JP3618496B2 - マルチフィラメント - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は織編物等の布帛に使用した場合、ハリ、コシ感を有するマルチフィラメント(以下繊維集合体と称す)に関する。さらに詳細には、ハリ、コシ感、さらには無撚でありながら撚糸調風合の織編物等を提供する繊維集合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成繊維、たとえばポリエステル、ポリアミドのフィラメントからなる織編物等の繊維構造物は、その構成フィラメントの単糸繊度や断面形状が単調であるがためにウ−ル、綿、麻等の天然繊維に比較して風合、光沢が単調で冷たく、またハリ、コシ感に劣り、繊維構造物としての品位が低いものであった。
近年、これらの欠点を改良するために、合成繊維に捲縮加工を施したり、複合化して捲縮を発現させたりする提案がなされているが、今だ十分には目的を達成していないのが現状である。
【0003】
たとえば、特開昭56−165015号公報、特開昭57−5921号公報、特開昭58−98435号公報、特開昭61−239010号公報等には、アルカリ易溶解性ポリマ−とポリエステルからなる複合繊維からなる織編物をアルカル減量処理することにより、ドライタッチでキシミ感のある風合や独特の光沢を織編物に付与させる方法が提案されている。
しかしながら、これらの方法では確かにドライ感は得られるものの、アルカリ減量処理により織編物等のハリ、コシ感は減少することになり、両方を兼ね備える織編物は到底得られないのである。
また特公昭45−18072号公報には麻様のシャリ感を発現させる仮撚融着糸が提案されており、特開昭63−6123号公報には混繊融着加工糸の製造方法が提案されている。
さらに風合改良のために中撚から強撚の撚を付与させる方法等の各種提案されている。
しかしながら、コストがかかり、とくに一般のポリエステル繊維織編物には適用できにくい等の問題や、合成繊維に天然繊維に近似したハリ、コシ感、ドライ感を付与させるといった点において不十分であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、天然繊維、たとえばウ−ル、麻が有するハリ、コシ感、ドライ感のある織編物を安価に得るための繊維を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、3個以上の突出部を有する多葉断面形状をし、単糸繊度が8〜25デニール、異形度が0.05〜0.80であるポリエステル系単繊維からなる無撚の繊維集合体であって、該繊維間の空隙率が15〜60%、ヤング率が80〜150g/デニールであることを特徴とする繊維集合体である。
【0006】
本発明の繊維集合体を構成するポリエステル系繊維について説明する。
該ポリエステル系繊維は単糸繊度が8〜25デニ−ル、異形度が0.05〜0.80であることが必要である。
織編物に使用した場合に良好なハリ、コシ感を有し、ある程度のザラツキ感を有してはいても天然繊維並の風合を保持するには単糸繊度がかかる範囲であることが必要である。
また、糸条の潜在トルクが強くなりすぎて、紡糸・延伸工程での毛羽・断糸の多発を抑制する上でもかかる範囲であることが必要である。この点から好ましい単糸繊度は8〜20デニ−ルである。
【0007】
さらに、無撚であっても撚糸調の良好なドライ感を得るためには、3個以上の突出部を有する多葉断面形状の繊維であること、異形度が0.05〜0.80であることも必要である。
異形度とは下記式にて定義される値である。
異形度=R/L
すなわち異形度とは、繊維断面において隣り合う突出部の先端を結ぶ線の長さをL、該突出部の間に位置する窪みの最深部から前記線への垂線の長さをRとして求めた値である。
円やかな光沢、また本発明の繊維を立毛部の一部として用いた立毛織編物において毛倒れ等の抑制の点で、異形度はかかる範囲が必要である。また、紡糸、延伸等の繊維化工程性の点でもかかる範囲であることが必要である。このような観点から好ましい異形度は0.10〜0.60の範囲である。
【0008】
無撚でありながら撚糸調のドライ感を効果よく醸し出すには、多葉断面形状をもたらす突出部の数は3個以上で、かつ上述の異形度を満足すればよいが、繊維化工程性を考慮すると該突出部の上限は8個であることが好ましい。より好ましい突出部の数は4〜6個である。
【0009】
このような多葉断面形状を形成するポリエステルとは、繊維形成性のポリエステルであればとくに限定されるものではない。たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン2,6−ジカルボン酸、4,4´−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸成分と、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、1,4ブタンジオ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル;ビスフェノ−ルAまたはビスフェノ−ルSのエチレンオキサイド付加物等の芳香族ジオ−ル;シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族ジオ−ルなどのジオ−ル成分を用いて形成された繊維形成性ポリエステルを挙げることができる。中でも汎用ポリエステルであるエチレンテレフタレ−ト単位、ブチレンテレフタレ−ト単位をを80モル%以上、とくに90モル%以上含有するポリエステルが好ましい。
【0010】
該ポリエステルの極限粘度、共重合成分の種類、その共重合量を調整することによって、無撚でありながら撚糸調であって、さらに所望の諸物性を繊維に付与させることができ、織編物に使用した場合に変化に富んだ表情を有する、天然繊維に近似した布帛を得ることが可能となる。
【0011】
かかる多葉断面形状を有するポリエステル系単繊維からなる繊維集合体の空隙率は15〜60%、好ましくは20〜40%である。空隙率が高くなると軽量化は期待できるものの、織編物とした場合の繊維密度が小さくなり、撚糸調の織編物が得られたとしてもハリ、コシ感の点で不十分なものとなる。また、空隙率が小さすぎる、すなわち、繊維が密集している状態ではゴワゴワ感を禁じ得ず、本発明の目的とするドライ感を有する織編物は到底得られないのである。
該空隙率は繊維集合体を構成するポリエステル系単繊維の異形度と大きく関係があり、単繊維の異形度を満足することにより、繊維集合体としての空隙率が満足できるのである。
すなわち、本発明における個々の要件は独立した要件ではなく、いずれもが密接に関係したものであり、これらの要件を満足することによってはじめてハリ、コシ感、ドライ感を有し、無撚でありながら撚糸調の織編物を得ることができるのである。
【0012】
また、本発明の繊維集合体は、特定の多葉断面形状および太繊度を有するポリエステル系単繊維からなる繊維集合体であることから、該単繊維により生じる曲げモ−メントが大きくなる、すなわち潜在トルクが発現し易いのである。その潜在トルクをより発現し易くするために繊維集合体には十分な空間が保持されていなければならない。
本発明の繊維集合体はこれらをすべてを兼ね備え、かつこれらの相乗効果によりハリ、コシ感、撚糸調のドライ感を備えた織編物などの布帛を得ることができるのである。
【0013】
その意味で、本発明の繊維集合体のヤング率は80〜150g/デニ−ル、とくに90〜140g/デニ−ルであることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係わるポリエステル系単繊維には平均粒径が0.05〜3μmの微粒子を0.05〜10重量%含有させてもよい。微粒子の添加によって織編物のドライ感がより向上することになる。微粒子の凝集、毛羽・断糸の発生を考慮すると平均粒径は0.1〜1.0μm、含有量は0.5〜8.0重量%の範囲であることが好ましい。
微粒子の種類としては酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、シリカ、酸化セリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができ、これらの微粒子は1種類のみならず、2種類以上を併用してもよい。
該微粒子のポリエステル系単繊維への添加時期は、ポリエステルの重合段階におけるエステル交換反応前のジオ−ル成分のスラリ−に添加する方法、二軸混練機によるマスタ−チップ作成時に添加する方法などがあるが、紡糸時にポリエステルに添加させることもできる。
【0015】
本発明に係わるポリエステル系単繊維には上述の微粒子の他に、繊維に通常添加させる酸化防止剤、蛍光増白剤、安定剤、紫外線吸収剤などを添加することもできる。
【0016】
本発明の繊維集合体は、特定形状、特定繊度のポリエステル系単繊維からなり、また特定の繊維物性、空隙率を有することから、かかる繊維集合体からなる織編物などの繊維構造物はハリ、コシ感とともに撚糸調のドライ感を有する。該繊維構造物は本発明の繊維集合体100%で構成されていてもよく、他の合成繊維、天然繊維と併用して使用してもよい。無撚でありながら撚糸調のドライ感を発現させるためには、繊維構造物中の30重量%以上が本発明の繊維集合体であることが好ましい。
【0017】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法により測定・算出された値である。
(1)ポリエステルの極限粘度(dl/g)
フェノ−ル/テトラクロロエタン等重量混合溶媒を使用して30℃で測定した。
(2)繊維の異形度
繊維断面の光学顕微鏡写真を撮影し、上記の方法により測定、算出した。
(3)繊維集合体の空隙率
ヤ−ンを3本引き揃え、2500T/Mの下撚をかけ、それを3本合糸してS撚400T/Mの上撚をかけた撚糸をミクロト−ムで切った繊維断面の光学顕微鏡写真を撮影した。該写真を拡大し、繊維と空隙部に切り分け、その重量比で空隙率を算出した。
空隙率(%)=(空隙部重量)×100/(繊維重量+空隙部重量)
(4)繊維集合体のヤング率(g/デニ−ル)
JIS L 1013に準拠して強伸度カ−ブから初期ヤング率を算出し、100%伸長時の強度で表示した。
(5)繊維構造物の風合評価
▲1▼ハリ・コシ感
◎:ウ−ルに似たハリ、コシ感を有し、かつ反発感がある。
○:ウ−ルに似たハリ、コシ感を有する。
△:ハリ、コシ感が今1歩である。
×:ハリ、コシ感が全くない。
▲2▼ドライ感
◎:撚糸調の良好な風合である。
○:撚糸調の風合を有する。
△:ドライ感がやや劣る。
×:ドライ感が全くない。
【0018】
実施例1
微粒子としてシリカ(日産化学社製、平均粒径0.045μm)2.5重量%添加したポリエチレンテレフタレ−ト(極限粘度:0.68)を用いて、6ホ−ルの十字型スリットノズルより、口金温度290℃で吐出し、巻取速度1000m/分で巻き取った。ついで、得られた繊維を80℃のホットロ−ラ、130℃のホットプレ−トで、倍率3.5倍(最大延伸倍率の0.7倍)の条件で延伸を施し、80デニ−ル/6フィラメントのマルチフィラメントを得た。繊維化工程性は良好で問題はなかった。
この繊維集合体を用いて製編し、精練、熱セット、染色、仕上げ加工を行った。単繊維および繊維集合体の評価結果を表1に示す。
ハリ、コシ感に富み、撚糸調のドライ感を有する編物であった。
【0019】
実施例2〜5
繊維断面の突出部の数を3にした以外(実施例2)、微粒子として硫酸バリウム(同和工業社製、平均粒径0.50μm)を5重量%添加した以外(実施例3)、単糸繊度を18デニ−ル(90デニ−ル/5フィラメント)とした以外(実施例4)、微粒子として酸化チタン(チタン工業社製、平均粒径0.20μm)を3重量%とした以外(実施例5)は、実施例1と同様にして紡糸、延伸を施し、得られたマルチフィラメントを用いて製編し、加工処理を施した。
単繊維および繊維集合体の評価結果を表1に示す。
ハリ、コシ感に富み、撚糸調のドライ感を有する編物であった。
【0020】
比較例1〜2
単糸繊度を72デニ−ル/24フィラメントとした以外(比較例1)、硫酸バリウム(同和工業社製、平均粒径0.50μm)を5重量%添加し、単糸繊度を72デニ−ル/24フィラメントとした以外(比較例2)は実施例1と同様にして紡糸、延伸を施し、得られたマルチフィラメントを用いて製編し、加工処理を施した。
単繊維および繊維集合体の評価結果を表1に示す。
単糸繊度が小さいので、ハリ、コシ感は実施例により得られた編物に比較して若干劣ってはいるが実用性に問題はなかった。しかしながら撚糸調のドライ感はなかった。
【0021】
比較例3
単糸繊度を28デニ−ルとした以外は実施例1と同様にして紡糸、延伸を施し、得られたマルチフィラメントを用いて製編し、加工処理を施した。
単繊維および繊維集合体の評価結果を表1に示す。
繊維化工程性、とくに延伸工程での毛羽・断糸の発生頻度が激しく、また布帛の風合もザラツキ感が強く、ドライ感にはほど遠いものであった。
【0022】
比較例4
実施例1において、断面形状を丸断面とし、微粒子を添加しなかった以外は同様にして紡糸、延伸を施し、得られたマルチフィラメントを用いて製編し、加工処理を施した。
単繊維および繊維集合体の評価結果を表1に示す。
ハリ・コシ感はあるものの、無撚状態であり、ドライ感は有していなかった。
【0023】
比較例5
実施例1において、ポリエチレンテレフタレ−トに替えて、ナイロン−6(宇部興産社製、1013BK)を用い、紡糸温度260℃で実施した以外は同様にして紡糸、延伸を施し、得られたマルチフィラメントを用いて製編し、加工処理を施した。
単繊維および繊維集合体の評価結果を表1に示す。
ポリエステルに比較してヤング率が小さく、ハリ・コシ感はなく、ドライ感にも満足仕切れないものであった。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
本発明の繊維集合体は太繊度、特定の異形度を有するポリエステル系繊維からなり、また集合体として特定の空隙度を有することから、かかる繊維集合体を主体とする織編物などの繊維構造物はハリ、コシ感があるととも、無撚でありながら撚糸調のドライ感を有する。
Claims (1)
- 3個以上の突出部を有する多葉断面形状をし、単糸繊度が8〜25デニール、異形度が0.05〜0.80であるポリエステル系単繊維からなる無撚のマルチフィラメントであって、該繊維間の空隙率が15〜60%、ヤング率が80〜150g/デニールであることを特徴とするマルチフィラメント。
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JPH10195715A JPH10195715A (ja) | 1998-07-28 |
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1996
- 1996-12-26 JP JP34720696A patent/JP3618496B2/ja not_active Expired - Fee Related
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