JP3617970B2 - 無限軌道式走行装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧ショベルやトラクタ等の走行装置として用いられる無限軌道式走行装置の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種油圧ショベルやトラクタ等のように、機体を走行させる走行装置として無限軌道式走行装置が装備されているものがある。このような無限軌道走行装置は、機体の下部に設けられた走行体フレームの左右両側部に、前後方向一方に駆動スプロケット(駆動ホイール)を設け、前後方向他方にアイドルホイール(従動ホイール)を設けて、これら両ホイール間に無限軌道帯を懸回し、駆動スプロケットの回転駆動に伴い無限軌道帯が両ホイール間をエンドレスに移送することにより、機体が前進または後進するように構成されている。この場合に、両ホイール間の無限軌道帯に対し、接地面側部位(下側部位)には複数の下部ローラ(接地ローラ、下部転輪、トラックローラ)が設けられ、非接地面側部位(上側部位)には上部ローラ(上部転輪、キャリヤローラ)が設けられており、無限軌道帯の移送を誘導するようにしている。
ところで前記上部ローラは、走行体フレームに一体的に設けられた支持受け体に支持されるが、この場合に、例えばローラ軸の両端部を支持受け体により支持するようにしたものがあり、このようなものの従来構成としては、例えば図7(A)、(B)に示すようなものが知られている。この支持受け体21は、矩形平板状の中央部に上部ローラ22が遊嵌する開口21aが形成され、対向する左右両側面部においてローラ軸を支持するように構成されたローラ支持部21bと、これらローラ支持部21bを走行体フレームに連結するための前後一対の板状の連結片部21cとで構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで前記従来の支持受け体21では、連結片部21cが上部ローラ22のローラ軸方向、即ち、無限軌道帯の走行方向に直交する方向に長い板状体で形成されているため、機体が山中等の柔らかい地面を走行したような場合に、前後一対の連結片部21cのあいだに泥土が入り込んでしまうことがあり、泥土が一旦入り込んでしまった場合では、なかなか排出されにくく、特にこれが冬季の場合では前記入り込んだ泥土が凍結してしまうようなこともあり、このようになると、上部ローラの円滑な回転を損なう等の問題があった。
そこで、図7(C)に示すように、支持受け体を分割型とし、一対の支持受け体23によりローラ軸両端部をそれぞれ支持する構成として、泥土が支持受け体23のあいだに溜らないようにしたのものが提唱される。しかるにこのものは、ローラ軸を支持するローラ支持部23aと、走行体フレームに連結するための連結片部23bとが一体に形成されているため、支持受け体23により上部ローラの取付け位置を微調整することが困難であり、上部ローラの位置精度を出すのが難しくなってしまうという問題があり、前後者何れのものにもそれぞれ問題があって、ここに本発明が解決しようとする課題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の如き実情に鑑み、これらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、機体下部に設けた走行体フレームの左右両側に、前後一対のホイールを回動自在に配し、これらホイール間に無限軌道帯を懸回してなる無限軌道式走行装置において、前記無限軌道帯の移送誘導をする上部ローラのローラ軸両端部を、走行体フレームに設けた側面視略冂字形状をする左右一対の支持受け体によりそれぞれ支持するにあたり、前記支持受け体は、前記ローラ軸が支持されるローラ支持部と、走行体フレームに下端部が固定される前後一対の連結片部とに分割され、前記前後の連結片部の上端部間にローラ支持部の前後端部を上下方向および左右方向に位置調整したものを固着したことを特徴とする無限軌道式走行装置である。
そして、このようにすることにより、連結片部のあいだに泥土が溜ってしまうことがないうえ、ローラ支持部と連結片部との取付け調整をすることで支持受け体の位置調整ができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図1〜図6の図面に基づいて説明する。
図面において、1は油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、無限軌道式(クローラ式)の走行装置である下部走行体2の上方に、上部旋回体3が旋回自在に支持されており、該上部旋回体3の略中央部に、ブーム4、アーム5、バケット6等の部材装置からなるフロントアタッチメント7が装着されている。さらに、前記フロントアタッチメント7の一側にはキャビン8が設けられ、他側には燃料タンクや作動油タンク等のタンク室9がそれぞれ配されていること等、基本的な構成は従来通りとなっている。
【0006】
10は、前記下部走行体2を構成する走行体フレームであって、該走行体フレーム10は、左右両側部に位置し前後方向に長いトラックフレーム11と、これらトラックフレーム11を一体化するように形成され、ジョイント部材(図示せず)を介して上部旋回体3が連結される連結部12aが上方に突出するクロスフレーム12とが一体化されたものとなっている。そして、左右のトラックフレーム11の後端部にはそれぞれ駆動スプロケット13が回動自在に軸承され、前端部にはそれぞれアイドルホイール14が回動自在に軸承され、これら前後の両ホイール13、14のあいだにそれぞれ無限軌道帯(クローラ)15が懸回されている。そうして、前記駆動スプロケット13の正逆何れかの方向への回転駆動に伴い無限軌道帯15が移送され、これに基づいて機体の前後方向への走行がなされるように設定されているている。
【0007】
また、無限軌道帯15の円滑な移送、即ち円滑な機体走行を行うため、前記各トラックフレーム11には、前記両ホール13、14間に懸回された無限軌道帯15の接地面側に位置する部位を接地方向に押圧しつつ移送誘導する下部ローラ16が、前後方向に複数並列して転動自在に設けられている。さらに、各トラックフレーム11には、無限軌道帯15の非接地面側(上側)を上方に向けて押し上げて無限軌道帯15のたるみ防止をしつつ移送誘導するための上部ローラ17が、前後方向二箇所に設けられており、これら上部ローラ17の取付け構造において本発明が実施されている。尚、本実施の形態では、上部ローラ17がトラックフレーム11の前後方向二箇所に設けられているが、機種によっては一箇所、三箇所等、適宜複数箇所に設けることができる。
【0008】
ここで、左右のトラックフレーム11は鋼材により正面視略山形状に形成されているが、これらトラックフレーム11は左右のものが線対称状に配されるものであるので、説明を簡略化するためここでは図3において下側に位置するトラックフレーム(右側トラックフレーム)11について説明し、左側のものについては省略する。
トラックフレーム11は前述したように山形状に形成され、機体外方に位置し、傾斜長が長く機体内側ほど高位となる緩傾斜状の第一上面11aと、内側に位置し、傾斜長が短く機体内側ほど低位となる急傾斜状の第二上面11bと、左右の両側片部11cとを備えて構成されている。そして、トラックフレーム11は、第一、第二上面11a、11bとの交差部を頂部11dとする山形状となっており、該頂部11dの前後端部位において、クロスフレーム12の連結部12aから放射状に延出された四本の延出片12bの延出端部が一体化されている。尚、各延出片12bは、連結部12a側ほど高位となる傾斜状に形成されている。
【0009】
そして、トラックフレーム11の上方には、前後一対の上部ローラ17がそれぞれ取付けられるが、これら各上部ローラ17は、ローラ軸17aと、ローラ軸17aに回動自在に外嵌するローラ部17bとを備えて構成されている。これら各上部ローラ17は、ローラ部17bの回転方向が無限軌道帯15の移送方向(前後方向)を向くようにするため、ローラ軸17aはトラックフレーム11に対して直交する方向に配設されるように設定されている。これによって、各ローラ軸17aは、トラックフレーム第一上面11a上と、これに対向するクロスフレーム12の延出片12b(第二上面11bの上方位置に配されている)上に位置してそれぞれ固定された第一、第二支持受け体19、20によってそれぞれ支持される設定となっている。
【0010】
さて、前記第一、第二支持受け体19、20について図6に基づいて説明するが、まず、トラックフレーム第一上面11a上に設けられ、ローラ軸17aの外側端部を支持する第一支持受け体19は、上下方向に長く、上端部が互いに対向する方向に曲折された前後一対の連結片部19aと、これら連結片部19aの上端部間に固定されるローラ支持部19bとを備え、図示するように下方が開口した側面視略字形状に構成されており、連結片部19aの下端部が第一上面11aに対して溶接等の手段により固定されるように設定されている。そして、ローラ支持部19b上面には、ローラ軸17aの外側端部を螺子17dにより螺合固定するための前後一対の螺子孔19dが穿設されている。
【0011】
一方、第一上面より高位に位置するクロスフレーム延出部12b上に設けられ、ローラ軸17aの内側端部を支持する第二支持受け体20は、第一支持受け体19よりも背低に構成され、鉛直方向を向く前後一対の連結片部20aと、これら連結片部20aの上端部間に固定されるローラ支持部20bとを備えて側面視略コ字形状に構成されており、連結片部20aの下端部が延出部12b上に対して溶接等の手段により固定されている。そして、第二支持受け体ローラ支持部20bの上面には、ローラ軸17aの外側端部を螺子17dを用いて螺合固定するための前後一対の螺子孔20dが穿設されている。そして、上部ローラ17のローラ軸17aの両端部をそれぞれ軸支部材17cを介して第一、第二支持受け体19、20に固定することにより、上部ローラ17は前後左右に位置する都合四本の連結片部19a、20aにより両持ち状に支持されるように構成されている。
尚、上部ローラ17の取付け状態において、これら上部ローラ17の上側接線位置は、前後の両ホイール13、14の上側接線位置よりも上位に位置するように設定されており、これによって、無限軌道帯15の上側部位の軌跡が上位に持ち上げられるように設定され、これによって、柔らかい地面を走行するような場合にも対応できるようにしている。
【0012】
そしてこのものにおいて、第一、第二支持受け体19、20は、ローラ支持部19b、20bの各上下方向位置および左右方向位置とがそれぞれ調整された状態で走行体フレーム10に設けられるようになっており、これによって、各上部ローラ17の取付け状態の調整ができるように構成されている。
つまり、各支持受け体19、20は、一対の連結片部19a、20aの上端部間にローラ支持部19b、20bを溶接等の手段により固着することで一体化されるように構成されており、連結片部19b、20bに対するローラ支持部19a、20aの固着位置、即ち、連結片部19b、20bの上端部端面におけるローラ支持部19a、20aの固着位置について、図6(A)に示すように、上下方向においては板厚方向にずらすことが可能であり、左右方向においては板幅方向にずらすことが可能であり、このように位置ズレして溶着することでそれぞれの位置調整ができるようになっている。これによって、上部ローラ17の取付け箇所における組立による寸法誤差等を、支持受け体19、20の調整で吸収できるようになっている。
【0013】
尚、下部ローラ16は、前記上部ローラ17と同様の構成となっており、ローラ軸16aの両端部は、トラックフレーム両側片部11cの下端部に支持されるようになっている。つまり、トラックフレーム両側片部11cの下端部には左右方向に幅広の取付け片部11eが一体的に形成されており、ここに、下部ローラ16のローラ軸端部が内嵌支持された軸支持部材16bを、前後方向に所定間隙を存する状態で螺合固定するように設定されている。
【0014】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、油圧ショベル1は、走行体フレーム10を構成する左右のトラックフレーム11に懸回された無限軌道帯15のエンドレスな移送に基づいて走行するが、この場合に、無限軌道帯15の移送誘導をする上部ローラ17は、ローラ軸17aの左右両端部が走行体フレーム10(トラックフレーム第一上面11aおよびクロスフレーム延出片12b)に固着された第一、第二支持受け体19、20を介してそれぞれ両持ち状に軸承されているので、強度的に優れた上部ローラ17とすることができる。しかもこのものでは、ローラ軸17a両端部が、左右それぞれ別個の支持受け体19、20によって支持されているので、左右の支持受け体19、20のあいだに泥土が入り込んでしまうような不具合を回避することができ、従来の左右の支持受け体が一体に形成されているもののように、前後の連結片部のあいだに泥土が入り込んだまま排出されず、ローラ軸の回転が損なわれるような不具合を確実に防止できる。
【0015】
さらにこのものでは、ローラ軸17aの一端部を支持する第一、第二の各支持受け体19、20を、前後一対の連結片部19a、20aと、これら連結片部19a、20aの上端部間に固着されるローラ支持部19b、20bとに分割された構成としたので、連結片部19a、20aにローラ支持部19b、20bを固着する場合に、ローラ支持部19b、20bを連結片部19a、20aに対して上下、左右に位置調整した状態で固着することで、上部ローラ17のトラックフレーム11への取付け状態を位置調整することができる。この結果、例えば、走行体フレーム10に組み立て誤差があったような場合であっても、各支持受け体19、20の組み立て(固着)過程で前述したような調整をすることで、上部ローラ17の位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】油圧ショベルの全体斜視図である。
【図2】走行体フレームの側面図である。
【図3】走行体フレームの平面図である。
【図4】図4(A)、(B)、(C)はそれぞれ図3のX−X断面図、要部の平面図、図4(B)のY−Y矢視図である。
【図5】上部ローラの取付け状態を説明する走行体フレームの断面図である。
【図6】図6(A)、(B)はそれぞれ支持受け体の分解斜視図、支持受け体の作用を説明する斜視図、
【図7】図7(A)、(B)、(C)はそれぞれ第一の従来例を示す斜視図、第一の従来例に上部ローラを組込んだ状態を示す斜視図、第二の従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
10 走行体フレーム
11 トラックフレーム
12 クロスフレーム
13 駆動スプロケット
15 無限軌道帯
16 下部ローラ
17 上部ローラ
17a ローラ軸
17b ローラ部
19 第一支持受け体
19a 連結片部
19b ローラ支持部
20 第二支持受け体
20a 連結片部
20b ローラ支持部

Claims (1)

  1. 機体下部に設けた走行体フレームの左右両側に、前後一対のホイールを回動自在に配し、これらホイール間に無限軌道帯を懸回してなる無限軌道式走行装置において、前記無限軌道帯の移送誘導をする上部ローラのローラ軸両端部を、走行体フレームに設けた側面視略冂字形状をする左右一対の支持受け体によりそれぞれ支持するにあたり、前記支持受け体は、前記ローラ軸が支持されるローラ支持部と、走行体フレームに下端部が固定される前後一対の連結片部とに分割され、前記前後の連結片部の上端部間にローラ支持部の前後端部を上下方向および左右方向に位置調整したものを固着したことを特徴とする無限軌道式走行装置。
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