JP3617049B2 - 変性ポリアリーレンスルフィドの製造法 - Google Patents

変性ポリアリーレンスルフィドの製造法 Download PDF

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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変性ポリアリーレンスルフィドの製造法に関し、更に詳しくは電気・電子部品あるいは機械部品等に有用な変性ポリアリーレンスルフィドの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略すことがある)は耐熱性、成形加工性に優れ、更には良好な耐薬品性、難燃性、寸法安定性等を有するため、電気・電子部品あるいは機械部品等に広く使用されている。しかし、PASは他の樹脂、特にエポキシ樹脂あるいは金属との接着性が比較的悪い。そのため、例えばエポキシ系接着剤によるPAS同士の接合、エポキシ樹脂による電気・電子部品の封止、あるいはPASと他の材料との接合等の際に、PASとエポキシ樹脂等との接着性の悪さが問題となっていた。
【0003】
PASの接着性の改善(特開昭64‐69657号公報)、PASの成形加工性の改善(特公平3‐16386号公報)、あるいはPASへの難燃性の付与 (特公昭54‐39856号公報)を目的として、PASにエポキシ樹脂を溶融状態で混練することが知られている。しかし、このようにして得られたPAS樹脂組成物は、いずれもエポキシ樹脂、他の熱可塑性樹脂及び金属等との接着性において、未だ満足のいくものではなかった。
【0004】
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すことがある)と他の樹脂(ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド)との相溶性を高めるために、組成物中にエポキシ樹脂を混入することが知られている(特開昭59‐64657号公報、特開昭59‐155461号公報、特開昭59‐155462号公報)。しかし、これらはPPSとエポキシ樹脂とを溶融状態で混練するものであって、極性溶媒中で反応せしめるものではなく、PPSに結合するエポキシ樹脂の量が少ない。また、ここで使用されるPPSは、低粘度又は架橋されたPPSであり、本願発明のPASとは異なる。
【0005】
また、特開平5‐194706号公報には、PASとエポキシ樹脂とを極性有機溶媒中で反応させることを特徴とする変性PAS樹脂の製造方法、及び特開平5‐194707号公報には、PASの合成時に生成する反応液にエポキシ樹脂を加えて、反応させることを特徴とする変性PAS樹脂の製造方法が開示されている。これら方法は、いずれも他の樹脂との相溶性に優れ、かつ金属その他の無機基材との接着性に優れた変性PASを提供するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、PAS本来の良好な耐熱性、耐溶剤性、機械特性を維持したまま、エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂及び金属等との接着性に著しく優れた変性PASの製造法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の特開平5‐194706号公報及び特開平5‐194707号公報記載の方法において、変性に用いるPASを、下記所定の溶融粘度V及び非ニュートン指数Nを持つPASに限定した。その結果、驚くべきことに、得られた変性PASのエポキシ樹脂、他の熱可塑性樹脂及び金属等との接着性を著しく高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)溶融粘度Vが50〜5000ポイズであり、かつ非ニュートン指数Nが1.0〜1.2であるポリアリーレンスルフィド(イ)とエポキシ化合物とを極性有機溶媒中で反応させることにより、エポキシ化合物0.5〜15重量%(ポリアリーレンスルフィドに対して)をポリアリーレンスルフィドに結合させることを特徴とする変性ポリアリーレンスルフィドの製造法である。
【0009】
好ましい態様として、
(2)ポリアリーレンスルフィド(イ)が、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させ、かつ該反応中に反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめて製造したものである上記(1)記載の方法、
(3)重合工程において生じた、溶融粘度Vが50〜5000ポイズであり、かつ非ニュートン指数Nが1.0〜1.2であるポリアリーレンスルフィド(イ)の重合スラリーと、エポキシ化合物とを混合し、反応させることにより、エポキシ化合物0.5〜15重量%(ポリアリーレンスルフィドに対して)をポリアリーレンスルフィドに結合させることを特徴とする変性ポリアリーレンスルフィドの製造法
を挙げることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において使用するPAS(イ)の溶融粘度Vは、上限が5000ポイズ、好ましくは3000ポイズ、特に好ましくは2000ポイズであり、下限が50ポイズ、好ましくは60ポイズ、特に好ましくは70ポイズである。上記上限を超えては、得られた変性PASの成形性が悪くなり、上記下限未満では、得られた変性PASの接着強度が低下するため好ましくない。ここで、溶融粘度Vは、フローテスターを用い、300℃、荷重20kgf/cm、L/D=10で6分間保持した後に測定した粘度(ポイズ)である。
【0011】
PAS(イ)の非ニュートン指数Nは、上限が1.2、好ましくは1.1であり、下限が1.0、好ましくは1.05である。上記上限を超えては、接着強度の低下をもたらす。ここで、上記非ニュートン指数Nは、キャピログラフを用いて300℃、L/D=40の条件下で、剪断速度及び剪断応力を測定し、下記式(I)を用いて算出した値である。N値が1に近いほどPASは線状であり、N値が高いほど分岐、架橋が進んでいることを示す。
【0012】
【数1】
SR=K・SS (I)
(ここで、SRは剪断速度(sec−1)、SSは剪断応力(dyne/cm)、そしてKは定数を示す。)
上記のようにPAS(イ)は、実質的に非架橋構造を有し、好ましくは実質的に線状の分子構造を有するものである。特公昭45‐3368号公報の方法により製造した低分子量PASを熱酸化処理して架橋した高分子量PASでは、良好な接着強度を有する変性PASを得ることができない。
【0013】
上記のPAS(イ)は、好ましくは下記の方法で製造することができる。
【0014】
即ち、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させてPASを製造する方法において、反応中に反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめる方法である。
【0015】
該方法としては、例えば特開平5‐222196号公報に記載の方法を使用することができる。
【0016】
還流される液体は、水とアミド系溶媒の蒸気圧差の故に、液相バルクに比較して水含有率が高い。この水含有率の高い還流液は、反応溶液上部に水含有率の高い層を形成する。その結果、残存のアルカリ金属硫化物(例えばNaS)、ハロゲン化アルカリ金属(例えばNaCl)、オリゴマー等が、その層に多く含有されるようになる。従来法においては230℃以上の高温下で、生成したPASとNaS等の原料及び副生成物とが均一に混じりあった状態では、高分子量のPASが得られないばかりでなく、せっかく生成したPASの解重合も生じ、チオフェノールの副生成が認められる。しかし、本発明では、反応缶の気相部分を積極的に冷却して、水分に富む還流液を多量に液相上部に戻してやることによって上記の不都合な現象が回避でき、反応を阻害するような因子を真に効率良く除外でき、高分子量PASを得ることができるものと思われる。但し、本発明は上記現象による効果のみにより限定されるものではなく、気相部分を冷却することによって生じる種々の影響によって、高分子量のPASが得られるのである。
【0017】
この方法においては、反応の途中で水を添加することを要しない。しかし、水を添加することを全く排除するものではない。但し、水を添加する操作を行えば、この方法の利点のいくつかは失われる。従って、好ましくは、重合反応系内の全水分量は反応の間中一定である。
【0018】
反応缶の気相部分の冷却は、外部冷却でも内部冷却でも可能であり、自体公知の冷却手段により行える。たとえば、反応缶内の上部に設置した内部コイルに冷媒体を流す方法、反応缶外部の上部に巻きつけた外部コイルまたはジャケットに冷媒体を流す方法、反応缶上部に設置したリフラックスコンデンサーを用いる方法、反応缶外部の上部に水をかける又は気体(空気、窒素等)を吹き付ける等の方法が考えられるが、結果的に缶内の還流量を増大させる効果があるものならば、いずれの方法を用いても良い。外気温度が比較的低いなら(たとえば常温)、反応缶上部に従来備えられている保温材を取外すことによって、適切な冷却を行うことも可能である。外部冷却の場合、反応缶壁面で凝縮した水/アミド系溶媒混合物は反応缶壁を伝わって液相中に入る。従って、該水分に富む混合物は、液相上部に溜り、そこの水分量を比較的高く保つ。内部冷却の場合には、冷却面で凝縮した混合物が同様に冷却装置表面又は反応缶壁を伝わって液相中に入る。
【0019】
一方、液相バルクの温度は、所定の一定温度に保たれ、あるいは所定の温度プロフィールに従ってコントロールされる。一定温度とする場合、 230〜275 ℃の温度で 0.1〜20時間反応を行うことが好ましい。より好ましくは、 240〜265 ℃の温度で1〜6時間である。より高い分子量のPASを得るには、2段階以上の反応温度プロフィールを用いることが好ましい。この2段階操作を行う場合、第1段階は 195〜240 ℃の温度で行うことが好ましい。温度が低いと反応速度が小さすぎ、実用的ではない。 240℃より高いと反応速度が速すぎて、十分に高分子量なPASが得られないのみならず、副反応速度が著しく増大する。第1段階の終了は、重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が1モル%〜40モル%、且つ分子量が 3,000〜20,000の範囲内の時点で行うことが好ましい。より好ましくは、重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が2モル%〜15モル%、且つ分子量が 5,000〜15,000の範囲である。残存率が40モル%を越えると、第2段階の反応で解重合など副反応が生じやすく、一方、1モル%未満では、最終的に高分子量PASを得難い。その後昇温して、最終段階の反応は、反応温度 240〜270 ℃の範囲で、1時間〜10時間行うことが好ましい。温度が低いと十分に高分子量化したPASを得ることができず、また 270℃より高い温度では解重合等の副反応が生じやすくなり、安定的に高分子量物を得難くなる。
【0020】
実際の操作としては、先ず不活性ガス雰囲気下で、アミド系溶媒中のアルカリ金属硫化物中の水分量が所定の量となるよう、必要に応じて脱水または水添加する。水分量は、好ましくは、アルカリ金属硫化物1モル当り0.5 〜2.5 モル、特に0.8 〜1.2 モルとする。2.5 モルを超えては、反応速度が小さくなり、しかも反応終了後の濾液中にフェノール等の副生成物量が増大し、重合度も上がらない。0.5 モル未満では、反応速度が速すぎ、十分な高分子量の物を得ることができない。
【0021】
反応時の気相部分の冷却は、一定温度での1段反応の場合では、反応開始時から行うことが望ましいが、少なくとも 250℃以下の昇温途中から行わなければならない。多段階反応では、第1段階の反応から冷却を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終了後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度合いは、通常反応缶内圧力が最も適した指標である。圧力の絶対値については、反応缶の特性、攪拌状態、系内水分量、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とのモル比等によって異なる。しかし、同一反応条件下で冷却しない場合に比べて、反応缶圧力が低下すれば、還流液量が増加して、反応溶液気液界面における温度が低下していることを意味しており、その相対的な低下の度合いが水分含有量の多い層と、そうでない層との分離の度合いを示していると考えられる。そこで、冷却は反応缶内圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程度に行うのが好ましい。冷却の程度は、都度の使用する装置、運転条件などに応じて、当業者が適宜設定できる。
【0022】
ここで使用する有機アミド系溶媒は、PAS重合のために知られており、たとえばN‐メチルピロリドン、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルカプロラクタム等、及びこれらの混合物を使用でき、N‐メチルピロリドンが好ましい。これらは全て、水よりも低い蒸気圧を持つ。アルカリ金属硫化物も公知であり、たとえば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物である。これらの水和物及び水溶液であっても良い。又、これらにそれぞれ対応する水硫化物及び水和物を、それぞれに対応する水酸化物で中和して用いることができる。安価な硫化ナトリウムが好ましい。
【0023】
ジハロ芳香族化合物は、たとえば特公昭45‐3368号公報記載のものから選ぶことができるが、好ましくはp‐ジクロロベンゼンである。又、少量(20モル%以下)のジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン又はビフェニルのパラ、メタ又はオルトジハロ物を1種類以上用いて共重合体を得ることができる。例えば、m‐ジクロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、p,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,m´‐ジクロロジフェニルエーテル、p,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,m´‐ジクロロジフェニルスルホン、p,p´‐ジクロロビフェニル、m,p´‐ジクロロビフェニル、m,m´‐ジクロロビフェニルである。
【0024】
PASの分子量をより大きくするために、ポリハロ芳香族化合物をジハロ芳香族化合物に対して好ましくは1.0モル%以下の濃度で使用することもできる。該ポリハロ芳香族化合物は、1分子に3個以上のハロゲン置換基を有する化合物であり、例えば1,2,3‐トリクロロベンゼン、1,2,4‐トリクロロベンゼン、1,3,5‐トリクロロベンゼン、1,3‐ジクロロ‐5‐ブロモベンゼン、2,4,6‐トリクロロトルエン、1,2,3,5‐テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5‐トリクロロ‐2,4,6‐トリメチルベンゼン、2,2´,4,4´‐テトラクロロビフェニル、2,2´,6,6´‐テトラブロモ‐3,3´,5,5´‐テトラメチルビフェニル、1,2,3,4‐テトラクロロナフタレン、1,2,4‐トリブロモ‐6‐メチルナフタレン等及びそれらの混合物が挙げられ、1,2,4‐トリクロロベンゼン、1,3,5‐トリクロロベンゼンが好ましい。
【0025】
また、他の少量添加物として、末端停止剤、修飾剤としてのモノハロ化物を併用することもできる。
【0026】
こうして得られた高分子量PASは、当業者にとって公知の後処理法によって副生物から分離することができる。
【0027】
水洗浄は、好ましくはPAS製造工程で生成した重合スラリーを濾過した後、濾過ケーキを水に分散させることにより行われる。例えば、上記のようにして得られたPAS(イ)の重合スラリーを濾過し、溶媒を少ししか含まないPASケーキを得る。該PASケーキを、重量で好ましくは1〜5倍の水中に投入して、好ましくは常温〜90℃で、好ましくは5分間〜10時間攪拌混合した後、濾過する。該攪拌混合及び濾過操作を好ましくは2〜10回繰り返すことにより、PASに付着した溶媒及び副生塩の除去を行って水洗浄を終了する。上記のようにして水洗浄を行うことにより、フィルターケーキに水を注ぐ洗浄方法に比べて少ない水量で効率的な洗浄が可能となる。
【0028】
また、PAS(イ)には酸処理を施すことが好ましい。該酸処理は、好ましくは100℃以下の温度、特に好ましくは常温〜80℃の温度で実施される。該温度が上記上限を超えると、酸処理後のPAS分子量が低下するため好ましくない。該酸処理に使用する酸溶液のpHは、好ましくは3.5〜6.0、特に好ましくは4.0〜5.5である。該pHを採用することにより、被処理物であるPAS中の‐SA(Aはアルカリ金属を示す)末端の大部分を‐SH末端に転化することができる。pHが上記範囲未満では、酸の使用量が多くコスト高となり、上記範囲を超えては、PAS中のアルカリ金属末端の除去が不十分となる。該酸処理に要する時間は、上記酸処理温度及び酸溶液の濃度に依存するが、好ましくは5分間以上、特に好ましくは10分間以上である。上記未満では、PAS中の‐SA末端を‐SH末端に十分に転化できず好ましくない。上記酸処理には、例えば酢酸、ギ酸、シュウ酸、フタル酸、塩酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、ホウ酸、ケイ酸、炭酸、プロピオン酸等が使用され、酢酸が特に好ましい。該処理を施すことにより、PAS中の不純物であるアルカリ金属、例えばナトリウム含有量を好ましくは500ppm以下、特に好ましくは150ppm以下とすることができ、変性PASの接着強度を更に増加せしめることができる。
【0029】
上記のPAS(イ)と反応させるエポキシ化合物は、例えば特開平5‐194706号公報記載のものから選ぶことができ、好ましくは共役又は非共役ジエン、共役又は非共役環状ジエン及び共役又は非共役ジエンを有する不飽和カルボン酸エステル等のエポキシ化物、脂肪族ジオール、脂肪族の多価アルコール、ビスフェノール類、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等とエピクロルヒドリン又はβ‐メチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、ジカルボン酸とエピクロルヒドリン又はβ‐メチルエピクロルヒドリンとを反応して得られるポリグリシジルエステル等が挙げられる。本明細書でエポキシ化合物とは、いわゆるエポキシ樹脂を包含する。
【0030】
PAS(イ)とエポキシ化合物との反応を行うに際し、両者の仕込み割合は、PAS(イ)100重量部に対して、エポキシ化合物が好ましくは0.5〜150重量部、特に好ましくは1〜100重量部である。エポキシ化合物の量が上記下限未満では、PASへのエポキシ化合物の結合量が少なく、優れた接着強度を持つ変性PASを製造することができない。
【0031】
PAS(イ)とエポキシ化合物との反応に媒体として用いられる極性有機溶媒としては、例えば、上記のPAS重合に使用したのと同じ有機アミド系溶媒、あるいはジメチルスルホキシド等が挙げられる。該反応に際し、反応温度は、好ましくは室温〜300℃、特に好ましくは100〜280℃であり、反応時間は、好ましくは10分間〜20時間である。
【0032】
反応終了後、スラリーを濾過し、得られたケーキをアセトン、NMP等のエポキシ化合物を溶解し得る溶剤で洗浄して未反応のエポキシ化合物を除去し、次いで乾燥する。NMPのような高沸点の有機溶媒で洗浄した場合は、乾燥を容易にするため、更にイオン交換水、温水等で洗浄することが望ましい。
【0033】
好ましくは本発明は、重合工程において生じた、溶融粘度Vが50〜5000ポイズであり、かつ非ニュートン指数Nが1.0〜1.2であるポリアリーレンスルフィド(イ)の重合スラリーからポリアリーレンスルフィド(イ)を分離せずに、重合スラリーとエポキシ化合物とを混合し、反応させることにより、エポキシ化合物をポリアリーレンスルフィドに対して0.5〜15重量%結合させることを特徴とする変性ポリアリーレンスルフィドの製造法である。
【0034】
該方法において、PAS(イ)の重合スラリーは、上記と同じく特開平5‐222196号公報記載の方法により製造し得る。
【0035】
PAS(イ)の重合スラリーとエポキシ化合物との反応を行うに際して、エポキシ化合物の量は、重合スラリー100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部、特に好ましくは0.1〜20重量部である。エポキシ化合物の量が上記下限未満では、PASへのエポキシ化合物の結合量が少なく、優れた接着強度を持つ変性PASを製造することができない。
【0036】
使用するエポキシ化合物は上記と同じであり、また、エポキシ化合物の添加は、PAS合成(重合)完了後直ちに重合スラリーの温度が高いうちに行ってもよいし、または、PAS合成(重合)完了後十分な時間を経て重合スラリーが冷えてから行ってもよい。また、エポキシ化合物はそのまま重合スラリーに添加してもよいし、有機溶媒、好ましくはPASの重合に使用した溶媒に溶解して溶液として添加してもよい。
【0037】
反応温度及び反応時間は上記のPAS変性と同じであり、また、反応終了後の濾過、洗浄等も上記と同じく行うことができる。
【0038】
反応終了後、上記と同じく未反応のエポキシ化合物を除去した後、イオン交換水、温水等で洗浄し、PASの合成時に副生した塩を除去する。次いで、乾燥することによって変性PASが得られる。
【0039】
上記いずれのPAS変性方法においても、PAS(イ)とエポキシ化合物との反応を行うに際し、必要ならば、反応系中にエポキシ化合物の硬化剤やPAS (イ)とエポキシ化合物との反応を促進する触媒を存在させることができる。硬化剤は、本発明による反応に従ってPASに結合したエポキシ化合物と更に他のエポキシ化合物との結合を促す作用を有するので、PASに結合するエポキシ化合物の量を増大するのに役立つ。硬化剤としては、エポキシ化合物の硬化剤として一般に用いられているアミン類、酸無水物、イミダゾール類、多硫化物、フェノール樹脂等を加えることができる。これらの硬化剤に硬化促進剤を併用することもできる。PASとエポキシ化合物との反応を促進する触媒としては第三級アミン及びホスフィンが好ましく用いられる。それらの具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0040】
上記のようにPAS(イ)とエポキシ化合物とを反応させると、PAS中の‐SX基(Xはアルカリ金属又は水素原子である)とエポキシ化合物中のエポキシ基が反応して結合すると考えられる。更に、この結合によって生成する水酸基が別のエポキシ化合物のエポキシ基と反応する可能性がある。該反応により、エポキシ化合物は、PASに対して、上限が15重量%、好ましくは12重量%、特に好ましくは10重量%、かつ下限が0.5重量%、好ましくは0.8重量%、特に好ましくは1.0重量%で変性PAS中に結合される。上記下限未満では接着強度及び相溶性が低く、上記上限を超えてはPAS本来の良好な耐熱性、耐溶剤性、機械特性等の低下を招き好ましくない。
【0041】
本発明の方法により製造した変性PASは、その用途に応じて種々の特性を付与する目的から、繊維状又は粒子状充填剤を適当量配合して使用することができる。そのような充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、繊維状チタン酸カリウム、アスベスト及び炭化ケイ素や窒化ケイ素等を初めとする各種のウィスカー等の繊維状無機及び有機充填剤、グラファイト、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、窒化ホウ素、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、バイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、雲母、ネフェリンシナイト、フェライト、アタパルジャイト、ウォラストナイト、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、二硫化モリブデン、黒鉛、石こう、ガラス粉、ガラスビーズ、石英、石英ガラス、鉄、亜鉛、銅、アルミニウム、ニッケル等の無機粒子状充填剤が挙げられる。これらの充填剤は一種又は二種以上を配合することができる。
【0042】
また、本発明の方法により製造した変性PASは、他の多くの樹脂やエラストマーに対し優れた相溶性を示すため、各種の樹脂やエラストマーとブレンドして使用することができる。ブレンドされる樹脂及びエラストマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、スチレン、α‐メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル等の単独重合体及び共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46等のポリアミド、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリアリールエーテル、ポリスルフィド等の単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、上記以外のポリエステル及びエラストマー等が挙げられる。これらの樹脂及びエラストマーを混合するには、PASとこれらの樹脂やエラストマーとの共通の同一溶媒に溶解して混合する方法及び押出機等の溶融混練機を用いて混合する方法が採られる。
【0043】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0044】
【実施例】
実施例中の各特性値は下記の如く測定した。
<溶融粘度V
島津製作所製フローテスターCFT‐500Cを用いて測定した。
<非ニュートン指数N>
東洋精機製作所製キャピログラフ 1B P‐Cを用いて、剪断速度及び剪断応力を測定して算出した。
<エポキシ化合物の結合量>
エポキシ化合物の結合量[(結合エポキシ化合物の重量/PAS重量)×100(%)]は、IRスペクトルを使用して、予め、変性に使用した反応前のポリフェニレンスルフィド(PPS)と変性に使用したエポキシ化合物を種々の割合でブレンドしたものから作成した検量線を用いて、エポキシ化合物のC=C伸縮振動に基く1520cm−1とPPSのC=C伸縮振動に基く1400cm−1の吸光度比から求めた値である。
<エポキシ樹脂との接着強度>
PPS60重量部とガラスファイバー(日東紡績株式会社製、商標、CS 3J‐961S)40重量部をドライブレンドした後、二軸異方向回転押出機を用い320℃で混練して、ペレットを作成した。得られたペレットから、シリンダー温度320℃、金型温度130℃に設定した射出成形機により、JIS K6850に従う試験片を作成した。次いで、JIS K6850に準拠し、得られた試験片をエポキシ樹脂系接着剤[主剤(XNR3101、商標、長瀬チバ株式会社製)/硬化剤(XNH3101、商標、長瀬チバ株式会社製)=100重量部/33.3重量部]を用いて90℃、30分間の硬化条件で接着した後、引張速度5mm/分、チャック間距離130mmで引張試験を行い、接着強度を測定した。
<アルミニウムとの接着強度>
二枚のアルミニウム板(厚さ:0.1mm)の間にロの字形のポリイミドフィルム(厚さ:50μm)の枠を挟み、その枠中にPPS粉末を入れ、300℃で1分間予熱した後、熱プレス機を用いて100kgf/cmで1分間加圧してPPSとアルミニウムとを接着した。次いで、該接着後のアルミニウム板を幅10mmの短冊状に裁断して試験片を作成した。該試験片について、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmで180度方向に引張って剥離試験を行い、接着強度を測定した。
<ナトリウム含有量>
PPS粉末を700℃マッフル炉で燃焼した後、その残渣を塩酸で溶解し、原子吸光分析計として、島津製作所製AA‐670を用いて測定した。
【0045】
実施例及び比較例で使用したエポキシ化合物は、下記の通りである。
・ビスフェノールA型エポキシ化合物(油化シェルエポキシ株式会社製、エピコート828、商標、平均分子量:約340、エポキシ当量:180g/当量)
・クレゾールノボラック型エポキシ化合物(東都化成株式会社製、YDCN‐704、商標、平均分子量:約1200、エポキシ当量:200g/当量)
【0046】
【実施例1】
4mオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.3重量%NaS)513.4kgとN‐メチル‐2‐ピロリドン(以下ではNMPと略すことがある)1190kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら液温204℃まで昇温して、水126.1kgを留出させた(残存する水分量は硫化ソーダ1モル当り1.09モル)。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、p‐ジクロロベンゼン(以下ではp‐DCBと略すことがある)589.0kg及びNMP400kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いて1kg/cmGまで加圧して昇温を開始した。液温220℃で3時間攪拌しつつ反応を進め、オートクレーブ上部に散水することにより冷却した。その後、昇温して液温260℃で3時間攪拌し反応を行った。次に降温させると共にオートクレーブ上部の冷却を止めた。オートクレーブ上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保持した。反応中の最高圧力は、8.9kg/cmGであった。
【0047】
得られたスラリー(S‐1)を濾過して溶媒を除去し、次に、得られた濾過ケーキを約80℃の温水中に投入しスラリー化して水洗浄を行った後、濾過した。次に、再び水でスラリー化して、該スラリーに酢酸を加えてpH5に調節して酸処理を実施した。酸処理後、再度水洗浄を行った。次に、120℃で約12時間熱風循環乾燥機中で乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。
【0048】
得られたPPS(P‐01)は、溶融粘度Vが750ポイズであり、かつ非ニュートン指数Nは1.09であった。また、ナトリウム含有量は130ppmであった。
【0049】
次に、150リットルオートクレーブに、上記PPS(P‐01)8.0kg、NMP72kg及びビスフェノールA型エポキシ化合物80gを仕込んだ。オートクレーブ中のガスを窒素ガスで置換した後、撹拌しながら昇温して240℃で3時間反応を行った。その後、室温まで冷却し、濾過した。得られた濾過ケーキを約100℃のNMP30リットル中に投入して約30分間十分に攪拌した後、濾過した。このNMP洗浄及び濾過の操作を3回繰返して、未反応のエポキシ化合物を除去した。次に、該濾過ケーキを約80℃の温水60リットル中に投入して約30分間十分に攪拌した後、濾過した。この水洗浄及び濾過の操作を4回繰返した。次に、該ケーキを120℃で12時間熱風循環乾燥機中で乾燥して変性PPS(P‐1)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは880ポイズ、エポキシ化合物の結合量は0.7重量%、そしてナトリウム含有量は110重量ppmであった。
【0050】
【実施例2】
ビスフェノールA型エポキシ化合物を800g仕込んだ以外は、実施例1と同一に実施して変性PPS(P‐2)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは1100ポイズ、エポキシ化合物の結合量は2.6重量%、そしてナトリウム含有量は100重量ppmであった。
【0051】
【実施例3】
PPS(P‐01)とエポキシ化合物との反応を190℃で行った以外は、実施例2と同一に実施して変性PPS(P‐3)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは1000ポイズ、エポキシ化合物の結合量は1.8重量%、そしてナトリウム含有量は110重量ppmであった。
【0052】
【実施例4】
ビスフェノールA型エポキシ化合物を8kg仕込んだ以外は、実施例1と同一に実施して変性PPS(P‐4)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは1940ポイズ、エポキシ化合物の結合量は5.3重量%、そしてナトリウム含有量は120重量ppmであった。
【0053】
【実施例5】
エポキシ化合物として、クレゾールノボラック型エポキシ化合物を使用した以外は、実施例1と同一に実施して変性PPS(P‐5)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは980ポイズ、エポキシ化合物の結合量は1.2重量%、そしてナトリウム含有量は120重量ppmであった。
【0054】
【実施例6】
エポキシ化合物として、クレゾールノボラック型エポキシ化合物800gを使用した以外は、実施例5と同一に実施して変性PPS(P‐6)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは4650ポイズ、エポキシ化合物の結合量は8.5重量%、そしてナトリウム含有量は90重量ppmであった。
【0055】
【実施例7】
エポキシ化合物として、クレゾールノボラック型エポキシ化合物8kgを使用した以外は、実施例5と同一に実施して変性PPS(P‐7)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは11000ポイズ、エポキシ化合物の結合量は11.0重量%、そしてナトリウム含有量は110重量ppmであった。
【0056】
【実施例8】
実施例1と同一にしてPPSスラリー(S‐1)を製造した。得られたスラリーを濾過して溶媒を除去し、次に、得られた濾過ケーキを約80℃の温水1500リットル中に投入して約30分間十分に撹拌した後、濾過した。この水洗浄及び濾過の操作を7回繰返した。次いで、120℃で約8時間熱風循環乾燥機中で乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。
【0057】
得られたPPS(P‐02)は、溶融粘度Vが790ポイズであり、かつ非ニュートン指数は1.10であった。また、ナトリウム含有量は380ppmであった。
【0058】
次に、実施例2と同じく反応を実施して変性PPS(P‐8)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは1050ポイズ、エポキシ化合物の結合量は1.8重量%、そしてナトリウム含有量は260重量ppmであった。
【0059】
【比較例1】
実施例1と同一に実施してPPS(P‐01)を得た。エポキシ化合物との反応は実施しなかった。
【0060】
【比較例2】
実施例8と同一に実施してPPS(P‐02)を得た。エポキシ化合物との反応は実施しなかった。
【0061】
【比較例3】
オートクレーブ上部の冷却を行わなかった以外は、実施例1と同一にしてPPSの重合反応及び後処理を実施した。得られたポリマーは淡黄土色の粉末であった。ここで、PPS重合反応中の最高圧力は、10.6kg/cmGであった。
【0062】
得られたPPS(P‐03)の溶融粘度Vは41ポイズ、非ニュートン指数Nは1.0であり、ナトリウム含有量は880ppmであった。
【0063】
次に、実施例2と同一にして、PPS(P‐03)とエポキシ化合物とを反応して変性PPS(P‐C1)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは98ポイズ、エポキシ化合物の結合量は0.7重量%、そしてナトリウム含有量は460重量ppmであった。
【0064】
【実施例9】
150リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.3重量%NaS)19.413kgとNMP45.0kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら液温204℃まで昇温して、水4.600kgを留出させた(残存する水分量は硫化ソーダ1モル当り1.08モル)。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、p‐DCB22.273kg及びNMP18.0kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いて1kg/cmGまで加圧して昇温を開始した。液温220℃で3時間攪拌しつつ反応を進め、オートクレーブ上部に散水することにより冷却した。その後、昇温して液温260℃で3時間攪拌し反応を行った[該スラリー(S‐2)中に含まれるPPSの溶融粘度Vは730ポイズ、非ニュートン指数Nは1.08であった]。次に、ビスフェノールA型エポキシ化合物500gをNMP2.0kgに溶解した溶液を加圧注入ポンプを用いてオートクレーブ中に注入し、更に260℃で1時間反応を進めた。次に降温させると共にオートクレーブ上部の冷却を止めた。オートクレーブ上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保持した。反応中の最高圧力は、9.0kg/cmGであった。
【0065】
得られたスラリーを濾過して溶媒を除去し、次に、得られた濾過ケーキを約100℃のNMP60リットル中に投入して約30分間十分に撹拌した後、濾過した。このNMP洗浄及び濾過の操作を3回繰返して、未反応のエポキシ化合物を除去した。次に、該濾過ケーキを約80℃の温水120リットル中に投入して約30分間十分に撹拌した後、濾過した。この水洗浄及び濾過の操作を4回繰返した。次いで、120℃で約12時間熱風循環乾燥機中で乾燥して変性PPS(P‐9)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは910ポイズ、エポキシ化合物の結合量は1.0重量%、そしてナトリウム含有量は320重量ppmであった。
【0066】
【実施例10】
エポキシ化合物として、クレゾールノボラック型エポキシ化合物1.5kgを使用し、エポキシ化合物添加後の反応を240℃で3時間とした以外は、実施例9と同一に実施して変性PPS(P‐10)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは1300ポイズ、エポキシ化合物の結合量は1.8重量%、そしてナトリウム含有量は380重量ppmであった。
【0067】
【実施例11】
実施例1と同一にしてPPSスラリー(S‐1)を得た。次に、冷却後の該スラリー10kgとビスフェノールA型エポキシ化合物50gを、150リットルオートクレーブ中に仕込んだ。オートクレーブ中のガスを窒素ガスで置換した後、撹拌しながら昇温して240℃で3時間反応を行った。その後、得られたスラリーを実施例9と同じく処理して変性PPS(P‐11)を得た。該変性PPSの溶融粘度Vは860ポイズ、エポキシ化合物の結合量は0.7重量%、そしてナトリウム含有量は310重量ppmであった。
【0068】
【比較例4】
オートクレーブ上部の冷却を行わなかった以外は、実施例9と同一にしてPPSの重合スラリー(S‐3、スラリー中に含まれるPPSの溶融粘度Vは38ポイズ、非ニュートン指数Nは1.0であった)を製造し、更に実施例9と同一にして反応を行い変性PPS(P‐C2)を得た。ここで、PPS重合反応中の最高圧力は、10.4kg/cmGであった。
【0069】
変性後に得られたスラリーの濾過性が悪くPPSの洗浄が困難であったため、未反応のエポキシ化合物を完全には除去することができなかった。従って、得られたPPSの溶融粘度Vが14000ポイズと著しく高かった。該P‐C2は溶融粘度が高いので成形できず、従って接着強度を測定していない。
【0070】
各実施例及び比較例において得られたPPSについて、接着強度を測定した。
その結果を、下記の表1及び2に示す。
【0071】
【表1】
Figure 0003617049
【0072】
【表2】
Figure 0003617049
*1:重合スラリーにエポキシ化合物を加えて変性した例
*2:変性されていないPPS
実施例1〜7は、オートクレーブの上部冷却を実施して製造した本発明のPPS(イ)に酸処理を施し、次いでエポキシ化合物を用いて変性したものである。これに対して、比較例1は、実施例1〜7で製造した変性前のPPSを用いたものである。実施例1〜7の変性PPSは、比較例1の変性前PPSと比べて、著しく良好な接着強度を有していた。実施例1、2及び4は、変性に用いるエポキシ化合物の量を変化させたものである。変性に用いるエポキシ化合物の量を増やすと、変性PPS中のエポキシ化合物の結合量が増加し、接着強度も高くなった。実施例3は、PPSとエポキシ化合物との反応温度を190℃に下げた以外は、実施例2と同一にして行ったものである。変性PPS中のエポキシ化合物の結合量は多少低下したが、接着強度は十分に満足すべきものであった。実施例5、6及び7は、夫々実施例1、2及び4で使用したビスフェノールA型エポキシ化合物をクレゾールノボラック型エポキシ化合物に代えたものである。夫々対応する実施例と比較して、より良好な接着強度が得られた。いずれも変性PPS中のエポキシ化合物の結合量はより増加した。
【0073】
実施例8は、オートクレーブの上部冷却を実施して製造した本発明のPPS (イ)に、酸処理を施さずして、エポキシ化合物を用いて変性したPPSを用いたものである。これに対して、比較例2は、実施例8で製造した、酸処理をしていない変性前PPSを用いたものである。実施例8の変性PPSは、比較例2の変性前PPSと比べて、著しく良好な接着強度を有していた。また、実施例8は、酸処理を施さず、実施例2と同様に変性したものである。酸処理を実施した実施例2と比べて、接着強度は低下したものの、本発明の効果は十分に達成し得るものであった。
【0074】
比較例3は、オートクレーブの上部冷却をせずに製造したPPSを、エポキシ化合物により変性したものである。上部冷却をせずに製造した変性前PPSのVは著しく低かった。該PPSを変性しても、実施例1〜8のように高い接着強度を持つ変性PPSは得られなかった。
【0075】
実施例9〜11は、オートクレーブの上部冷却を伴う重合工程で得たPPSの重合スラリーからPPSを分離せずに、重合スラリーにエポキシ化合物を添加して、PPSを変性したものである。エポキシ化合物による変性を行っていない比較例1及び2と比べて、接着強度はいずれも著しく良好であった。実施例9及び10は、PPSの重合スラリーに高温下で、夫々ビスフェノールA型エポキシ化合物又はクレゾールノボラック型エポキシ化合物を添加して、PPSを変性したものである。実施例10の変性PPSがより高い接着強度を示した。実施例11は、予め実施例1と同一にしてPPS(イ)の重合スラリーを製造し、冷却後の該スラリーとエポキシ化合物とを混合して反応させたものである。得られた変性PPSの接着強度は、実施例1に比べて、低下したものの、本発明の効果は十分達成し得るものであった。また、比較例4は、オートクレーブの上部冷却をしなかった以外は、実施例9と同一にしてPPSの重合スラリーを製造し、更に実施例9と同一にして変性したものである。変性後に得られたPPSスラリーの濾過性が悪く、PPSの洗浄が困難であり、変性PPSから未反応のエポキシ化合物を完全には分離することができなかった。従って、得られたPPSのVが著しく高くなり、成形ができなかった。
【0076】
【発明の効果】
本発明は、PAS本来の良好な耐熱性、耐溶剤性、機械特性を維持したまま、エポキシ樹脂、他の熱可塑性樹脂及び金属等との接着性に著しく優れた変性PASの製造法を提供する。

Claims (3)

  1. 溶融粘度Vが50〜5000ポイズであり、かつ非ニュートン指数Nが1.0〜1.2であるポリアリーレンスルフィド(イ)とエポキシ化合物とを極性有機溶媒中で反応させることにより、エポキシ化合物0.5〜15重量%(ポリアリーレンスルフィドに対して)をポリアリーレンスルフィドに結合させることを特徴とする変性ポリアリーレンスルフィドの製造法。
  2. ポリアリーレンスルフィド(イ)が、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させ、かつ該反応中に反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめて製造したものである請求項1記載の方法。
  3. 重合工程において生じた、溶融粘度Vが50〜5000ポイズであり、かつ非ニュートン指数Nが1.0〜1.2であるポリアリーレンスルフィド(イ)の重合スラリーと、エポキシ化合物とを混合し、反応させることにより、エポキシ化合物0.5〜15重量%(ポリアリーレンスルフィドに対して)をポリアリーレンスルフィドに結合させることを特徴とする変性ポリアリーレンスルフィドの製造法。
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