JP3614967B2 - アンモニウムイオンの消去方法及び試料中の特定成分を定量する方法 - Google Patents

アンモニウムイオンの消去方法及び試料中の特定成分を定量する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中の特定成分を定量する方法であって特に臨床検査において有効な方法である。
更に詳しくは、本発明は、試料中の特定成分からアンモニウムイオンを発生させて発生したアンモニウムイオンに基づいて特定成分を測定する場合、試料中に当初から存在する内因性アンモニウムイオンを酵素反応により消去し、正確に該特定成分を測定する方法に関するものである。
更に本発明は、アンモニウムイオンに基づいて特定成分を測定する場合に限定されず、より広範囲の物質に基づいてより広範囲の特定成分を測定することのできる汎用性のある、試料中の特定成分を定量する方法である。
本明細書においては、次の常用される略語を使用することもある。
α−KG : α−ケトグルタル酸
GLDH : グルタミン酸脱水素酵素
NADH : ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型
NADPH : ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元型
NAD(P)H : NADHまたはNADPHを示す
NAD : ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化型
NADP : ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸酸化型
NAD(P) : NADまたはNADPを示す
G6P : グルコース6−リン酸
G6PDH : グルコース6−リン酸脱水素酵素
ATP : アデノシン5′−三リン酸
GTP : グアノシン5′−三リン酸
【0002】
【従来の技術】
試料中の特定成分を測定するとき、試料等にアンモニウムイオンが存在すると、その特定成分を正確に測定できないことがある。例えば、試料中の特定成分からアンモニウムイオンを発生させ、そのアンモニウムイオンの量を測定することにより、該特定成分の量を測定する場合、その試料に当初からアンモニウムイオンが含まれているときは、該特定成分の量を正確に測定できにくい。
そのような特定成分として、尿素窒素、クレアチン、クレアチニン、ロイシンアミノペプチダーゼ、カルシウムイオン等が知られている。これらの成分は、以下の式のように、アンモニウムイオンを酵素反応により発生させて、測定できる。
【0003】
【化1】
ウレアーゼによる尿素窒素の測定
Figure 0003614967
【0004】
【化2】
Figure 0003614967
【0005】
【化3】
Figure 0003614967
【0006】
【化4】
Figure 0003614967
【0007】
【化5】
Figure 0003614967
【0008】
【化6】
Figure 0003614967
【0009】
上記式に示されるように酵素反応によりアンモニウムイオンを発生させて特定成分を測定しようとするとき、試料中に当初からアンモニウムイオンが存在する場合にかかる内因性アンモニウムイオンが測定値に正誤差を与えて、該特定成分を正確に測定することはできない。そのため、内因性アンモニウムイオンを、あらかじめ、消去しておくことが必要となる。一方、尿素窒素などの測定すべき試料中の生体成分は不安定であるため、測定はなるべく迅速に、しかもできるだけ温和な条件で行われるのが望ましい。この様な条件に適している内因性アンモニウムイオンの消去方法は、酵素を使用した方法である。そのような方法として、以下の式に示されるように、内因性アンモニウムイオンとα−KGとをGLDHの存在下、グルタミン酸に変換させて該アンモニウムイオンを消去する方法(GLDH法)が考えられる。
【0010】
【化7】
Figure 0003614967
【0011】
この方法は、補酵素として、NADHまたはNADPHを使用しなければならない。NAD(P)Hは320〜360nmの領域の波長に大きな吸収をもつ。一方、測定しようとする試料中の特定成分からアンモニウムイオンを発生させて特定成分を測定するときも、前記した反応式から明らかなように、NAD(P)Hを用いており、従ってNAD(P)Hの反応前後のこの領域の波長における吸光度の増減を利用して測定することも多い。この場合、該特定成分を測定しようとすると、試料中の内因性アンモニウムイオンを消去するために用いたNAD(P)Hが残存し、そのためNAD(P)Hの量が多くなり、NAD(P)Hの干渉をうけ、測定可能な吸光度の範囲を越えてしまい、該特定成分の測定値が正確でなくなることがある。また、NAD(P)H自身は、還元作用があるので、大量に使用すると、試料中の特定成分を測定する方法のうちでも特に酸化反応を利用して特定成分を測定しようとする方法に悪影響を与える。よって、従来のGLDH法により内因性アンモニウムイオンを消去するときは、NAD(P)Hを大量に使用しなければならないので、GLDH法による消去方法は、使用しにくいという欠点がある。
【0012】
GLDH法の改良法で、かつ、少量のNAD(P)Hを使用する方法も、提案されている。すなわち、NAD(P)Hが酸化されて生じるNAD(P)を、GLDH以外の脱水素酵素(以下、共役脱水素酵素と記載することもある)とその基質の作用により、NAD(P)Hに再生することで、使用するNAD(P)Hを少量にする方法も知られている。このような共役脱水素酵素を用いる方法としては、以下の式に示すように、イソクエン酸及びイソクエン酸脱水素酵素を用いるイソクエン酸脱水素酵素法(特開昭62−6700)、グルコース及びグルコース脱水素酵素を用いるグルコース脱水素酵素法(特開平5−103697)が知られている。
【0013】
【化8】
Figure 0003614967
【0014】
イソクエン酸脱水素酵素法においては、用いられるイソクエン酸脱水素酵素は、金属要求性なので、EDTA等のキレート化剤を添加することにより、反応が停止する。従ってこのキレート化剤を、アンモニウムイオンの消去反応後に特定成分の測定に用いる試薬と一緒に添加することにより、アンモニウムイオンの消去反応を停止させるとともに、目的とする特定成分の定量を行う方法が採用されている。一方、臨床検査分野では、一般に、血液を採取する際、血液を凝固をさせないためにEDTAやクエン酸等のキレート化剤を血液に添加し、カルシウムイオンをキレート化する。このような処理をした生体試料を測定するとき、上記のイソクエン酸脱水素酵素法では、イソクエン酸脱水素酵素の反応が阻害され、アンモニウムイオンの消去反応が阻害されやすい。また、試料中の特定成分として臨床的に意義があるロイシンアミノペプチダーゼを測定する際に、前記反応式で示したようにロイシンアミドを基質に用いる場合、内因性アンモニウムイオンの存在は測定誤差を及ぼすので、あらかじめ消去することが望ましいが、イソクエン酸脱水素酵素法を用いると、キレート化剤が試薬中に存在することになるので、Mg2+またはMn2+で活性化されるロイシンアミノペプチダーゼの活性を阻害してしまう。さらに、前記反応式で示したようにトランスグルタミナーゼによって試料中の特定成分としてカルシウムイオンを定量しようとするときも、内因性のアンモニウムイオンを消去することが望ましいが、キレート化剤を利用するイソクエン酸脱水素酵素法を用いると、カルシウムイオンがキレート化されてしまうので、使用できない。このように、金属要求性の酵素を用い、かつ、アンモニウムイオンが反応中間体である試料中の特定成分の測定方法においては、内因性アンモニウムイオンの消去法としては、このようなイソクエン酸脱水素酵素法は適切ではない。
【0015】
一方、グルコース脱水素酵素法においても、該酵素法で基質として使用されるグルコースの影響により測定できる特定成分の範囲が限定される等の問題がある。
即ち、臨床検査分野用の自動分析装置を用いる場合、尿素窒素などと同時にグルコースを測定することが一般化されているので、グルコース脱水素酵素法においては、基質として用いるグルコースがグルコースの測定系に影響を及ぼす可能性がある。そのため、この分野でのグルコース脱水素酵素法の使用は限定されてしまう。
また、グルコース脱水素酵素法の問題点のひとつに、グルコース脱水素酵素の阻害剤に適当なものがないことがあげられる。現に、特開平5−103697に記載されている阻害剤は、モノヨード酢酸であるが、モノヨード酢酸は、タンパク質、特に酵素のSH基に特異的に反応する物質の一種で、アルコール脱水素酵素やホスホグリセルアルデヒド脱水素酵素等の、活性中心にSH基をもつ酵素の活性を阻害してしまう物質であるため、このような阻害剤を用いると、試料中の特定成分の測定に利用する酵素が限定されてしまう。
したがって、試料中の特定成分を測定する方法で内因性アンモニウムイオンが存在すると特定成分を正確に測定できない場合において、使用に際して汎用性をもち、かつ、特定成分を正確に測定できる、内因性アンモニウムイオンの消去方法が求められていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、試料中に、アンモニウムイオンが当初から存在すると特定成分を正確に測定できない場合、あらかじめ、その試料中のアンモニウムイオンを消去する方法を提供することである。また、試料中のアンモニウムイオンを消去することにより、試料中の該特定成分を正確に測定する方法及びそれに用いるキットを提供することである。
更に本発明は、アンモニウムイオンに基づいて特定成分を測定する場合に限定されず、より広範囲の物質に基づいてより広範囲の特定成分を測定することができる汎用性のある、試料中の特定成分を測定する方法及びそれに用いるキットを提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
〔A〕本発明者らは、上記現状に鑑み、試料中に予め存在するアンモニウムイオンの影響を受けない、試料中の特定の生体成分の正確な測定方法について鋭意、検討した。その結果、内因性アンモニウムイオンに、α−KGとGLDHとを作用させて内因性アンモニウムイオンをグルタミン酸に変換させるGLDHによる内因性アンモニウムイオンの消去法において、G6PDHを共役脱水素酵素として用いるGLDH法の改良法、即ち、内因性アンモニウムイオンに、α−KG、GLDH、G6P、G6PDH及びNADPHを作用させることにより、高濃度の内因性アンモニウムイオンを短時間で消去できることを見い出した。
また、かかるアンモニウムイオンの消去反応後に、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させながら、生成するアンモニウムイオンにα−KG及びGLDHをNADPHではなくNADHとともに作用させ、そのNADHの減少を測定することにより、試料中の特定成分を正確に精度良く測定できることを見出した。
また、かかるアンモニウムイオンの消去反応後に、特にホスファターゼを作用させてG6Pおよび/またはNADPHを不活性化させ、この不活性化と同時もしくはその後に、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させ、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、及びNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定することにより、試料中の特定成分を極めて正確に精度良く測定できることを見出した。
本発明は上記した知見に基づいて完成されたものである。
【0018】
従って、本発明は、試料にα−KG、GLDH、G6P、G6PDH及びNADPHを作用させることにより、当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去することを特徴とする、該アンモニウムイオンの消去方法である。
更に本発明は、予め、試料に、α−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを作用させることにより、当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去し;
次いで、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させながら、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、及びNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定する
ことにより、該試料中の該特定成分を定量する方法である。
更に本発明は、予め、試料に、α−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを作用させることにより当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去し;
次いで、ホスファターゼを作用させることによりG6Pまたは/およびNADPHを不活性化させ;
この不活性化と同時もしくはその後、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させ、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、及びNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定する
ことにより、該試料中の該特定成分を定量する方法である。
【0019】
更に本発明は、試料中の特定成分を定量するためのキットであって、
i) α−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを含む第1試薬、並びに、
ii) 酵素作用により特定成分からアンモニウムイオンを生成させる試薬であってかつNADHを含む第2試薬
を含むキットである。
更に本発明は、上記のキットにおいて、第2試薬に更にホスファターゼを含む試料中の特定成分を測定するためのキットである。
【0020】
〔B〕上記〔A〕において述べた発明のうち、アンモニウムイオンの消去反応後に、特にホスファターゼを作用させてG6Pおよび/またはNADPHを不活性化させ、この不活性化と同時もしくはその後に、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させ、生成するアンモニウムイオンを測定することにより、試料中の特定成分を測定する発明に基づいて、本発明者らは更に検討を行った。
その結果、消去反応後にホスファターゼを作用させて、消去反応に用いた試薬を不活性化させる手法は、アンモニウムイオンに基づいて試料中の特定成分を測定する場合に限定されず、より広範囲の物質に基づいてより広範囲の特定成分を測定する方法に適用できることを見出し、更に汎用性のある本発明の方法を完成させた。
【0021】
従って、更に本発明は、予め、試料に、特定物質除去酵素反応のための必須成分としてホスファターゼの基質となり得る成分を含む特定物質除去酵素反応試薬を、作用することにより、当初から試料中に存在している特定物質を消去し;
次いで、ホスファターゼを作用させることによりホスファターゼの基質となり得るその成分を不活性化させ;
この不活性化と同時もしくはその後、酵素作用により特定成分から特定物質を生成させる試薬を作用し、生成した特定物質を定量する
ことを特徴とする試料中の特定成分を定量する方法である。
更に本発明は、試料中の特定成分を定量するためのキットであって;
i) 特定物質除去酵素反応のための必須成分としてホスファターゼの基質となり得る成分を含む、特定物質除去酵素反応試薬;及び
ii)酵素作用により特定成分から特定物質を発生させて特定成分を測定する試薬であって、かつ、ホスファターゼを含む特定成分測定用試薬;
を含むキットである。
【0022】
【発明の実施の形態】
上記〔A〕及び〔B〕において述べた発明について、以下に詳細に説明する。
【0023】
〔A〕−1.本発明のアンモニウムイオン消去方法
本発明のアンモニウムイオン消去方法は、試料に、α−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを作用させることにより、当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去することを特徴とする、該アンモニウムイオンの消去方法である。
本発明のアンモニウムイオン消去方法を式で示すと以下の通りである。
【0024】
【化9】
Figure 0003614967
【0025】
〔A〕−2.本発明の特定成分定量方法
本発明の特定成分定量方法は、本発明のアンモニウムイオン消去方法を利用したものである。すなわち、本発明の特定成分定量方法は、予め、試料に、α−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを作用させることにより、当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去し;次いで、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させながら、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、及びNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定することにより、該試料中の該特定成分を定量する方法である。
【0026】
本発明の特定成分定量方法は、アンモニウムイオンの消去反応(以下、第1段階と記載することもある)、次いで、特定成分の測定反応(以下、第2段階と記載することもある)の2段階により実施できる。
第1段階では、予め、試料にα−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを作用させることにより、当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去する。
第1段階終了の後、第2段階では、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させながら、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、及びNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定することにより試料中の特定成分を定量する。
【0027】
本発明の特定成分定量方法を、特定成分として試料中の尿素窒素を測定する場合を例にとって式で示すと以下のようになる。
【0028】
【化10】
試料中の尿素窒素の測定
第1段階
Figure 0003614967
第2段階
【化11】
Figure 0003614967
【0029】
本発明の特定成分定量方法は、上記式から判るように、第1段階及び第2段階とも、α−KG及びGLDHの作用により、アンモニウムイオンがグルタミン酸に変換する反応を含む。しかし、第1段階ではGLDHが作用する補酵素はNADPHであり、第2段階ではGLDHが作用する補酵素はNADHであり、この点が相異なる。
本発明の特定成分定量方法の第1段階では、NADPHは、アンモニウムイオンを消去するために作用させる成分の1つであるが、少量にできることに特徴がある。アンモニウムイオン消去の際、NADPHは、α−KG、グルタミン酸及び当初から試料中に存在するアンモニウムイオンの作用によりNADPに変換される。第1段階では、同時に、そのNADPは、G6PDH及びG6Pの作用によりNADPHに戻され、戻されたNADPHは、さらに、アンモニウムイオン消去反応に再使用される。したがって、第1段階ではアンモニウムイオンを消去するためのNADPHは少量ですむ。
【0030】
本発明の特定成分定量方法では、第2段階においてNADHの減少を測定することによって、試料中の特定成分を定量する。
ところで、NADPHまたはNADHの水溶液の濃度を測定するときは、それらは互いに類似した性質を持つので、互いに同様な方法で測定することが多い。そのため、水溶液中のNADHを測定するときは、NADPHが混在していると測定しにくいことが多い。
例えば、NADPHとNADHの水溶液とは、ともに波長320〜360nmの領域で吸収をもつので、その波長領域におけるNADPHまたはNADHの水溶液の吸光度を測定することにより、NADPHまたはNADHの濃度を測定できる。そこで、本発明の特定成分定量方法の第2段階で試料中のNADHの減少を波長320〜360nmでの吸光度で測定することにより試料中の特定成分を定量する場合に、高濃度のNADPHが反応液に混在するときには、波長320〜360nmにおける反応液の吸光度は、測定可能範囲である吸光度値2程度を大きく越えてしまうときがあり、試料中のNADHの減少を波長320〜360nmでの吸光度で測定することができにくい問題がある。
【0031】
一方、本発明の特定成分定量方法においては、第2段階での反応液中に、第1段階で使用したNADPHが存在している。しかし、本発明の特定成分定量方法においては、そのNADPHは少量なので、第2段階で、試料中のNADHの減少を波長320〜360nmでの吸光度で測定する際、反応液の吸光度を、測定可能範囲である吸光度値2以下に調整できる。
第2段階では、NADHの減少量を測定することにより試料中の特定成分を定量する。
すなわち、酵素作用により試料中の特定成分から生成したアンモニウムイオンは、GLDHとα−KGの作用により、波長320〜360nmに吸収を持つNADHを、波長320〜360nmにほとんど吸収を持たないNADに変化させる。従って、その波長の反応液の吸光度の減少量を測定することにより、そのNADHの減少を測定でき、また一方、NADHの減少量は、酵素作用により試料中の特定成分から生成したアンモニウムイオンの量に依存するので、NADHの減少量を測定することにより試料中の特定成分の量を定量することができる。
【0032】
しかし、第2段階では、酵素作用により試料中の特定成分から生成したアンモニウムイオンは、第1段階で使用し残存しているNADPHにも作用する。第2段階では、試料中の特定成分の測定は、該アンモニウムイオンによるNADHへの作用に依存するので、該アンモニウムイオンによるNADPHへの作用は、特定成分定量の際、誤差の原因になる。
この残存NADPHの影響を回避するには、G6PDHがNADP依存性酵素であり、NAD及びNADHには作用しないことを利用するが、通常、主に、以下に示す2つの方法を採用するのが好ましい。
【0033】
i)NADPHの使用量をNADHの使用量より少なくする方法
第1段階で用いたNADPHの残存NADPHの影響を回避する一つの方法は、第1段階では、NADPHの使用量を、第2段階のNADHの使用量に比べ、極端に少なく、すなわち、好ましくは1/10以下の重量、より好ましくは1/200〜1/20の重量にする方法である。
【0034】
このような条件下では、第2段階では、酵素作用により特定成分から発生するアンモニウムイオンは、NADHとNADPHとに作用するが、NADHの量がNADPHに比べ多いので、ほとんどNADHに作用する。一方、この第2段階では、第1段階で使用され第2段階で残存しているG6PDHおよびG6Pは、NADには作用しないが、NADPには作用する。そのため、特定成分から発生したそのアンモニウムイオンの作用によりNADPHから変換されたNADPは、G6PDHおよびG6Pの作用により、NADPHに戻される。すなわち、第2段階の系では、NADPHの減少は見掛上、起こりにくく、系内のNADPH量はほぼ一定で、NADHの減少のみが起こる。したがって、NADPHによる特定成分定量への影響がほぼ無視できる。
【0035】
ii) ホスファターゼを利用する方法
第1段階で用いたNADPHの残存NADPHの影響を回避する他の方法は、予め、試料に、α−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを作用させることにより当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去し;次いで、ホスファターゼを作用させてG6Pまたは/およびNADPHを不活性化させ、この不活性化と同時もしくはその後、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させ、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、及びNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定することにより;該試料中の該特定成分を定量する方法である。
【0036】
この方法では、第2段階でホスファターゼを作用させることに特徴がある。
G6Pまたは/およびNADPHを不活性化させるとは、G6Pまたは/およびNADPHのリン酸エステル部分を加水分解し、G6PDHの酵素反応を実質的に消去することをいう。
ホスファターゼを利用する方法を、特定成分として試料中の尿素窒素を測定する場合を例にとって示すと以下の式のようになる。
【0037】
【化12】
試料中の尿素窒素の測定
第1段階(アンモニウムイオン消去反応)
Figure 0003614967
第2段階
アンモニウムイオン消去反応の停止
Figure 0003614967
【0038】
ホスタファーゼを利用する方法の場合、通常、第1段階で、試料に、後述する本発明のキットの構成成分の1つであるα−KG、GLDH、G6P、G6PDH及びNADPHを含む第1試薬を添加して当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去した後、得られる溶液に、第2段階では、本発明のキットのもう1つの構成成分である、酵素反応により特定成分からアンモニウムイオンを生成させる第2試薬中にホスファターゼを含むものを、添加して、試薬中の特定成分を定量できる。
【0039】
この方法の場合、ホスファターゼを含む第2試薬の添加の後、初めのうちは、酵素作用により試料中の特定成分から生成するアンモニウムイオンは、α−KG及びGLDHの作用により、NADHとともに、NADPHをも減少させ、それぞれ、NAD、NADPに変換させる。このとき、NADHの減少もNADPHの減少も、反応液の波長320〜360nmの吸光度の減少をさせる。したがって、NADまたはNADPが、それぞれ、NADHまたはNADPHに戻らなければ、酵素作用により試料中の特定成分から生成するアンモニウムイオンは、反応液の波長320〜360nmの吸光度の減少に反映し、その結果、反応液の波長320〜360nmの吸光度の減少を測定すれば、試料中の特定成分を正確に測定できるはずである。しかし、第1段階で使用し第2段階で残存しているG6PDHと、G6Pとは、その変換されたNADをNADHに戻さないが、その変換されたNADPをNADPHに戻す。そのため、第2段階の初めのうちは、反応液の波長320〜360nmの吸光度の減少を測定しても、試料中の特定成分を正確に測定できにくい。
【0040】
一方、この方法の第2段階では、ホスファターゼはNADPHをNADHに、G6Pをグルコースに、それぞれ変換して、G6PDHの反応を実質的に停止する。ホスファターゼの作用によりNADPHまたは/およびG6Pが実質的に不活性化された後は、酵素作用により試料中の特定成分から生成するアンモニウムイオンは、α−KG及びGLDHの作用により、NADPHによる影響なしで、NADHのみをNADに変換させる。その結果、ホスファターゼの作用によりNADPHまたは/およびG6Pが実質的に消去された後には、反応液の波長320〜360nmの吸光度の減少は、NADHの減少に依存する結果、波長320〜360nmにおける一定時間当たりの反応液の吸光度の減少を測定することにより、試料中の特定成分を正確に測定できる。
【0041】
〔A〕−3.試料中の特定成分を定量するためのキット
以上に述べた本発明の特定成分定量方法は、本発明のキットを用いて実現できる。
本発明のキットは、
試料中の特定成分を定量するキットであって、
i) α−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを含む第1試薬、並びに、
ii) 酵素作用により特定成分からアンモニウムイオンを生成させる試薬であってかつNADHを含み、好ましくは更にホスファターゼを含む第2試薬
を含むキットである。
すなわち、本発明の特定成分定量方法は、試料に、本発明のキットに用いる第1試薬を加えて、第1段階の反応をすることにより試料中のアンモニウムイオンを消去し、次いで、第1段階終了後の溶液に、そのまま、本発明のキットに用いる第2試薬を加えて第2段階の反応・測定することにより特定成分を定量して実現できる。
【0042】
本発明のキットは、GLDHの種類からは、次のものが好ましい。
i)本発明のキットにおいて、第1試薬に用いるGLDHがNADP依存性GLDH、若しくはNADHとNADPHとの両方に作用できるGLDHであり、かつ、第2試薬にNAD依存性GLDHを含むキット;
ii)本発明のキットにおいて、第1試薬に用いるGLDHがNADP依存性GLDHであり、かつ、第2試薬にNAD+ 依存性GLDH、若しくはNADHとNADPHとの両方に作用できるGLDHを含むキット;または
iii)本発明のキットにおいて、第1試薬に用いるGLDHが、NADPHとNADHとの両方に作用できるGLDHであり、かつ、第2試薬にGLDHを含まないキット
を用いるのが好ましい。
上記i〜iii)のキットのうち、特に上記iii)のキットが、試薬を調製するとき簡単で、好ましい。
【0043】
〔A〕−4.本発明のアンモニウムイオン消去方法、特定成分定量
方法及びキットについての詳細な説明
以上に述べた本発明のアンモニウムイオン消去方法、特定成分定量方法及びキットについて、以下に更に詳細に説明する。
【0044】
本発明において、当初から試料中に存在するアンモニウムイオンもしくは内因性アンモニウムイオンとは、主に、測定処理前から試料中に存在していたアンモニウムイオンを言う。ただし、本発明のキットに用いる第1試薬に混在しているアンモニウムイオンも含めるものとする。
【0045】
本発明において、試料とは、特定成分を含むものであれば特に限定しない。血清、血しょう、尿、及びそれらを処理した液、並びにそれらのモデルサンプルを例示できる。汎用の生化学自動分析装置を使用するときは、試料は、通常、1〜100μl 使用すると良い。
【0046】
本明細書において、GLDHは、EC1.4.1.3のように、NADHとNADPHとの両方に作用できるものが好ましい。
本発明のキットに用いられる第1試薬のGLDHの濃度は、特に限定されないが、好ましくは10〜500unit/ml、さらに好ましくは20〜200unit/mlの範囲である。
第1試薬のαーKGの濃度は、特に限定されないが、好ましくは1〜20mM、さらに好ましくは5〜15mMである。
第1試薬に用いられるG6PDHは、NADPに反応し、かつ、NADに反応しないものであれば、由来は特に限定されない。第1試薬のG6PDHの濃度は、好ましくは1〜50unit/ml、さらに好ましくは1〜10unit/mlの範囲である。
第1試薬のG6Pの濃度は、特に限定されないが、好ましくは1〜20mM、さらに好ましくは5〜15mMである。
【0047】
本発明のキットに用いられる第1試薬のNADPHの濃度及び第2試薬のNADHの濃度は、第1試薬と第2試薬とを混合した直後の液の、波長320〜360nmでの吸光度が、測定可能領域である吸光度値2以下であるように調製することが好ましい。
本発明のキットに用いられる第1試薬のNADPHの濃度は、通常、0.01〜0.4mM、好ましくは0.03〜0.3mMである。
前記した本発明の特定成分定量方法の第1段階であるアンモニウムイオン消去反応に用いられるNADPHの量は、第2段階である特定成分の測定反応に用いられるNADHの量と比べて、通常、同程度か少なくてよく、好ましくはNADHの量の0.05〜1倍、さらに好ましくは0.1〜0.5倍の範囲である。前記したように、第1段階で用いたNADPHの残存NADPHの第2段階における影響を回避するためにホスファターゼを使用しない場合には、特にNADPHの量は、NADHの1/10以下が好ましく、特に1/200〜1/20が好ましい。このような観点からも第1試薬のNADPHの濃度が決定される。アンモニウムイオンの消去に必要なNADPHの量は、少ないと反応が進みにくいことがある。第1試薬のpHは、通常9〜11である。適当な緩衝剤を用いて第1試薬を調製することができる。
以上に述べた第1試薬を試料に添加することによってアンモニウムイオン消去反応を実施することができる。
【0048】
本発明のキットにおける、酵素作用により特定成分からアンモニウムイオンを生成する試薬に用いられる第2試薬の成分のうち、第1試薬に含まれているものは、省略することができる。例えば、試料中の尿素窒素を定量するキットの場合、GLDHやα−KGを省略することができる。本発明のキットに用いられる第2試薬のNADHの濃度は、通常、0.25〜1.25mM、好ましくは0.4〜1.0mMである。
第2試薬にホスファターゼを含ませる場合、第2段階で残存していると考えられるNADPHの量に応じてホスファターゼの量を決定すれば良いが、通常、1〜50unit/ml、好ましくは5〜30unit/mlである。
第2試薬に用いるホスファターゼは、NADPHまたは/およびG6Pを不活性化するものであれば限定しないが、反応性の良好さから、通常、アルカリホスファタ−ゼが好ましい。
本発明の特定成分定量方法では、試料1容量に対し、本発明のキットに用いる第1試薬を、通常10〜200容量、好ましくは80〜120容量用いるとよい。また、試料1容量に対し、第2試薬を、通常2〜50容量、好ましくは20〜40容量用いるとよい。
【0049】
本発明の特定成分定量方法では、通常、試料と、本発明のキットに用いる第1試薬とを混合し、1〜20分、好ましくは1〜10分、混合液を撹拌し、さらに、その混合液と本発明のキットに用いる第2試薬とを混合し、1〜10分、好ましくは1〜5分撹拌する。その第2試薬にホスファターゼを含むときは、その第2試薬が混合されたことにより、ホスファターゼの作用によりNADPHまたは/およびG6Pが実質的に消去された後、すなわち、通常、第2試薬が混合されて1〜5分経過した後、好ましくは1〜3分経過した後に、一定時間当たりのNADHの減少量を測定することにより試料中の特定成分を定量することができる。
【0050】
本発明の特定成分定量方法の第1段階である第1試薬を用いたアンモニウムイオン消去反応において、反応溶液のpHは、好ましくは7〜11、さらに好ましくは8〜9.5である。pHが7未満または11を越えると、反応が進行しにくいことがある。アンモニウムイオン消去反応のための緩衝液は、Good緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液等を使用できる。アンモニウムイオン消去反応の温度は、通常、10〜50℃である。
【0051】
本発明の特定成分定量方法において、酵素作用によりアンモニウムイオンを発生させることができる定量可能な特定成分としては、
ウレアーゼの作用による尿素窒素、クレアチニンデイミナーゼ作用によるクレアチニン、クレアチニナーゼ及びクレアチナーゼの作用によるクレアチニン、クレアチナーゼの作用によるクレアチン、自己の作用によるロイシンアミノペプチダーゼ、トランスグルタミナーゼの作用によるカルシウムイオンを例示できる。これらの特定成分の測定については、前記した「従来の技術」の項において反応式によって示した通りである。
【0052】
ウレアーゼの作用による試料中の尿素窒素の測定方法に用いる試薬としては、ウレアーゼ、α−KG、NADH及びGLDHを含む試薬を用いることができる。第1段階で試料中のアンモニウムイオンを、本発明のアンモニウムイオン消去方法で消去し、第2段階で試料中の尿素窒素からウレアーゼ等の作用によりアンモニウムイオンを生成させながら、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、およびNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定することにより、試料中の尿素窒素を測定できる。この第2段階では、ホスファターゼの作用により、第1段階で使用し第2段階で残存するNADPHまたは/およびG6Pを実質的に消去することが好ましい。
【0053】
試料中のクレアチニンの測定方法に用いる試薬としては、クレアチニンデイミナーゼ、α−KG、NADH及びGLDHを含む試薬を用いることができる。または、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、ウレアーゼ、α−KG、NADH及びGLDHを含む試薬を用いることができる。
【0054】
試料中のクレアチンの測定方法に用いる試薬としては、クレアチナーゼ、ウレアーゼ、α−KG、NADH及びGLDHを含む試薬を用いることができる。
【0055】
試料中のロイシンアミノペプチダーゼの測定方法に用いる試薬としては、ロイシンアミド、α−KG、NADH及びGLDHを含む試薬を用いることができる。
【0056】
試料中のカルシウムイオンの測定方法に用いる試薬としては、トランスグルタミナーゼ、α−KG、NADH及びGLDHを含む試薬を用いることができる。通常、これらの特定成分の測定反応のための試薬を第2試薬として、試料中の特定成分を測定するキット中に含むことができる。ただし、これらの試薬の中で、アンモニウムイオンの本発明消去反応に含まれている成分に関しては、省略することができる。
【0057】
上記した特定成分であるクレアチニン、クレアチン、ロイシンアミノペプチダーゼ及びカルシウムイオンを測定するために用いる各試薬は、従来採用されている公知の量を用い、公知の条件下で、試料中の特定成分と反応させて酵素作用により特定成分からアンモニウムイオンを発生させる。次いでこの発生したアンモニウムイオンにα−KG、GLDHおよびNADHが作用し、そのNADHの減少を測定することにより、特定成分であるクレアチニン、クレアチン、ロイシンアミノペプチダーゼ及びカルシウムイオンをそれぞれ測定することができる。
【0058】
〔B〕−1.ホスファターゼを利用した汎用性のある本発明の特定成分定量方法
以下に、ホスファターゼを利用した汎用性のある本発明の特定成分定量方法について詳述する。
前記〔A〕−2のii) の項において説明した、アンモニウムイオン消去反応後にホスファターゼを作用させて、消去反応に用いた試薬を不活性化させる手法は、アンモニウムイオンに基づいて試料中の特定成分を測定する場合に限定されず、より広範囲の物質に基づいてより広範囲の特定成分を測定する方法に適用できることを見出し、汎用性のある本発明の特定成分定量方法を完成させた。
【0059】
本発明のホスファターゼを利用した汎用性のある特定成分定量方法は、
予め、試料に、特定物質除去酵素反応のための必須成分としてホスファターゼの基質となり得る成分を含む、特定物質除去酵素反応試薬を、作用することにより当初から試料中に存在している特定物質を消去し;
次いで、ホスファターゼを作用させてホスファターゼの基質となり得るその成分を不活性化させ;
この不活性化と同時もしくはその後、酵素作用により特定成分から特定物質を生成させる試薬を作用し、生成した特定物質を定量する
ことを特徴とする試料中の特定成分を定量する方法
である。
ここで、特定物質とは、前記〔A〕の発明の項において述べたアンモニウムイオンに相当する物質であり、試料中の特定成分を定量する際に、該特定成分から生成させる物質であり、この特定物質を実際に定量することによって、試料中の特定成分を定量することができる。
【0060】
本発明のホスファターゼを利用した汎用性のある特定成分定量方法においては、まず、第1段階の特定物質除去酵素反応試薬を用いた酵素反応では、ホスファターゼの基質となり得る成分を必須成分として用いて特定物質を消去する。次いで、第2段階では、ホスファターゼを添加して、第1段階で用いたホスファターゼの基質となり得るその成分を不活性化することにより、その特定物質除去酵素反応を実質的に中止しながら、これと同時もしくはその後、酵素作用により試料中の特定成分から特定物質を生成させる試薬を作用させて、生成する特定物質を定量することにより、試料中に当初から存在する特定物質の影響を排し、試料中の特定成分を正確に測定することができる。
【0061】
本発明の特定成分定量方法の第2段階においては、ホスファターゼを作用させた初期のうちは、酵素作用により特定成分から生成する特定物質は、特定物質除去酵素反応に、一部消費されるので、そのため、その特定物質を正確に測定することは難しい。しかし、ホスファターゼの作用により、第1段階の必須成分であり第2段階で残存しているホスファターゼの基質が、実質的に消去されると、特定物質除去酵素反応は、実質的に停止される。したがって、特定物質除去酵素反応が実質的に停止された後、一定時間当りの、酵素作用により特定成分から生成する特定物質の変化量を測定することにより、試料中の特定成分を正確に測定できる。なお、試料中の特定成分を正確に測定するため、第2段階で添加したホスファターゼは、第2段階中、酵素作用により特定成分から特定物質が生成される反応、および特定物質を測定するための反応には関与しないことが好ましい。
【0062】
〔B〕−2.特定成分定量方法のためのキット
本発明のホスファターゼを利用した汎用性のある特定成分定量方法は、本発明の以下のキットを用いて実現できる。
本発明のキットは、試料中の特定成分を定量するキットであって;
i) 特定物質を除去する酵素反応のための必須成分としてホスファターゼの基質となり得る成分を含む、特定物質除去酵素反応試薬及び
ii)酵素作用により特定成分から特定物質を発生させて特定成分を測定する試薬であって、かつ、ホスファターゼを含む特定成分測定用試薬;
を含むキットである。
【0063】
〔B〕−3.特定成分定量方法の具体的な説明
本発明の特定成分定量方法において、特定物質除去酵素反応のための必須成分としてホスファターゼの基質となり得る成分としては、具体的には、NADPH、ATP、GTPを例示できる。
ホスファターゼの基質となり得る成分がNADPHの場合は、測定対象となる試料中の特定成分として、尿素窒素、クレアチニン等を例示できる。ホスファターゼの基質となり得る成分がATPの場合は、特定成分として、グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼを例示できる。ホスファターゼの基質となり得る成分がGTPの場合は、特定成分として、グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼを例示できる。
以下に、それぞれの特定成分定量方法について具体的に説明する。
【0064】
i)NADPHをホスファターゼの基質となり得る成分として用いた特定成分定量方法
NADPHをホスファターゼの基質となり得る成分として用いた本発明の特定成分定量方法においては、アンモニウムイオンが特定物質に相当する。従って、先ず、試料に、NADPHを含むアンモニウムイオン除去酵素反応試薬を作用させて、当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去し、次いでホスファーゼを作用させてNADPHを不活性化し、酵素反応により測定しようとする試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させる試薬を作用させて、生成したアンモニウムイオンを定量することによって、特定成分を定量できる。
【0065】
かかる定量方法において、NADPHを含むアンモニウムイオン除去酵素反応試薬として、α−KG、GLDH、NADP依存性共役脱水素酵素、そのNADP依存性共役脱水素酵素の基質及びNADPHからなる試薬が挙げられる。また、試料中の特定成分の定量方法としては、特定成分から生成させたアンモニウムイオンにα−KG、GLDH及びNADHを作用させて、そのNADHの減少を測定することにより、試料中の特定成分を定量する方法が好ましく挙げられる。
【0066】
従って、NADPHをホスファターゼの基質としてなり得る成分として用いた本発明の特定成分定量方法の好ましい例として、以下の方法が挙げられる。
即ち、予め、試料に、α−KG、GLDH、NADP依存性共役脱水素酵素、そのNADP依存性共役脱水素酵素の基質及びNADPHを作用させることにより当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去し;
次いで、ホスファターゼを作用させることによりNADPHを不活性化させ;この不活性化と同時もしくはその後、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させ、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、及びNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定する
ことにより該試料中の該特定成分を定量する方法である。
第1段階のα−KG、GLDH、NADP依存性共役脱水素酵素、そのNADP依存性共役脱水素酵素の基質及びNADPHを試料に作用させてアンモニウムイオンを消去する工程を式で示すと以下の通りである。
【0067】
第1段階
【化13】
Figure 0003614967
ただし、X,Y,Zは、好ましくは、以下のa〜eのいずれかの組合せから選ばれる
a) X=G6P,Y=NADP依存性G6PDH,
Z=6−ホスホグルコノ−δ
−ラクトン;
b) X=ギ酸+HO,Y=NADP依存性ギ酸脱水素酵素,
Z=HCO
c) X=グリセルアルデヒド3−リン酸,
Y=NADP依存性グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素,
Z=1,3−ジホスホグリセリン;
d) X=グロン酸,Y=グルクロン酸レダクターゼ(NADP依存性),Z=グルクロン酸;
e) X=イソクエン酸+マグネシウムイオン,
Y=NADP依存性イソクエン酸脱水素酵素,
Z=α−KG
【0068】
上記式から明らかなように、NADP依存性共役脱水素酵素系は、a)〜e)に示したものから好ましく選択される。
a)におけるXがG6P、YがG6PDHの場合については前記した〔A〕の項で説明した本発明の特定成分定量方法と同じである。従って、ホスファターゼの基質としてなり得る成分がNADPHである、汎用性のある特定成分定量方法においても、前記した〔A〕の項で詳述した特定成分定量方法と同様に、NADPHは少量ですむ。その結果、第2段階で、特定成分を定量するときにNADPHによる影響を回避することができる。
また、X,Yの試薬量は、第1段階でNADPがNADPHに適当に変換でき、その結果、第1段階で使用するNADPHを少量にするように、適宜、選択することができる。
【0069】
第2段階では、第1段階終了の液に、そのまま、ホスファターゼを添加してNADPHおよびNADPを不活性化させることによりアンモニウムイオン(特定物質)除去酵素反応を停止し、これと同時もしくはその後、酵素作用により特定成分からアンモニウムイオンを生成させる試薬を添加し、生成したアンモニウムイオンにα−KG、GLDH及びNADHを作用させて、そのNADHの減少を測定することにより、試薬中の特定成分を定量することができる。
このようにして、試料中の特定成分である尿素窒素、クレアチン、クレアチニン、ロイシンアミノペプチダーゼ及びカルシウムイオンを定量することができる。
第2段階における工程を式で示すと以下の通りである。
【0070】
第2段階
初期(ホスファターゼによる不活性化)
【化14】
Figure 0003614967
【化15】
Figure 0003614967
【0071】
【化16】
Figure 0003614967
【化17】
Figure 0003614967
【0072】
【化18】
Figure 0003614967
【0073】
【化19】
Figure 0003614967
【0074】
第2段階で用いるホスファターゼとしては、アルカリホスファターゼが好ましい。
上記式で示した酵素作用により特定成分からアンモニウムイオンを生成させる試薬は、前記〔A〕の項で詳述した特定成分定量方法のものをそのまま、同様に使用できる。
生成したアンモニウムイオンの定量は、前記〔A〕の項の特定成分定量方法で詳述したとおり、一定時間当りの、反応液中のNADHの減少を、波長320〜360nmの吸光度で測定することが好ましい。
ホスファターゼの基質となり得る成分がNADPHである、本発明の汎用性のある特定成分定量方法は、G6PおよびG6PDHの代わりに、上記XおよびYを用いた以外は、前記〔A〕−2のii) で詳述した残存NADPHの影響を回避する本発明の特定成分定量方法を、そのまま、使用できる。
【0075】
ii) ホスファターゼの基質となり得る成分がATPである特定成分定量方法
ATPをホスファターゼの基質となり得る成分として用いた本発明の特定成分定量方法としては、測定対象である試料中の特定成分がグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼであり、試料中の特定成分を測定するために該特定成分から酵素反応により生成させる特定物質がピルビン酸である、特定成分定量方法が挙げられる。
従って、この方法では、先ず、試料に、ATPを含むピルビン酸除去酵素反応試薬を作用させて、当初から試料中に存在するピルビン酸を消去し、次いでホスファターゼを作用させてATPを不活性化し、酵素反応により測定しようとする試料中のグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼからピルビン酸を生成させる試薬を作用させて、生成したピルビン酸を測定することによって、試料中のグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼを定量できる。
この方法を、反応式により具体的に示すと以下の通りである。
【0076】
グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼの測定
【化20】
Figure 0003614967
【0077】
上記反応式に示したように、試料中の特定成分として、試料中のグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼを測定する場合、そのグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼの作用によりアラニン、2−オキソグルタル酸からピルビン酸(特定物質)を生成させ、その生成したピルビン酸に乳酸脱水素酵素およびNADHを作用させてNADHの減少を320〜360nmの吸光度を測定することにより試料中のグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ(特定成分)を測定することができる。このとき、試料にピルビン酸(特定物質)が当初から存在していると、試料中のグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ(特定成分)を正確に測定しにくい。従って、あらかじめ、試料中のピルビン酸を消去する必要がある。そこで、この場合、第1段階で、試料に、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ATP、炭酸イオンを添加して、試料中に当初から存在しているピルビン酸を、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ATP、炭酸イオンの作用により消去する。第2段階では、第1段階の終了後の液に、そのまま、ホスファターゼを添加してATPをADPに変換させることによりピルビン酸消去反応を停止し、これと同時もしくはその後、そのグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼの作用によりアラニン、2−オキソグルタル酸からピルビン酸(特定物質)を生成させ、その生成したピルビン酸に乳酸脱水素酵素およびNADHを作用させてNADHの減少を320〜360nm、好ましくは340nmでの吸光度を測定することにより、試料中のグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ(特定成分)を正確に測定できる。
ピルビン酸の消去方法に用いる試薬はいずれも公知のものであり、またその消去反応も通常の酵素反応に従って実施できる。ATPの不活性化に用いるホスファターゼはアルカリホスファターゼが好ましい。また、試料中のグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼにアラニンと2−オキソグルタル酸を添加してピルビン酸を生成させる反応、及び生成したピルビン酸に乳酸脱水素酵素とNADHを作用させてNADを生成させる反応は、いずれもそれ自体は公知の酵素反応であり、通常の条件を採用することによって実施できる。
【0078】
iii) ホスファターゼの基質となり得る成分がGTPである特定成分定量方法ホスファターゼの基質となり得る成分がGTPである、本発明の特定成分定量方法としては、測定対象である試料中の特定成分がグルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼであり、試料中の特定成分を測定するために該特定成分から酵素反応により生成させる特定物質がオキサロ酢酸である特定成分定量方法を例示できる。
【0079】
この定量方法では、先ず、試料に、GTPを含むオキサロ酢酸除去反応試薬を作用させて、当初から試料中に存在するオキサロ酢酸を消去し、次いでホスファターゼを作用させてGTPを不活性化し、酵素反応により測定しようとする試料中のグルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼからオキサロ酢酸を生成させる試薬を作用させて、生成したオキサロ酢酸を測定することによって、試料中のグルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼを定量できる。
この定量方法を、反応式により更に具体的に示すと以下の通りである。
【0080】
グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼの測定
【化21】
Figure 0003614967
【0081】
試料にオキサロ酢酸(特定物質)が当初から存在していると、試料中のグルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(特定成分)を正確に測定しにくい。そこで、あらかじめ、試料中のオキサロ酢酸を消去する必要がある。従って上記反応式に示したように、第1段階で、試料に、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼおよびGTPを添加して、試料中に当初から存在しているオキサロ酢酸を消去する。第2段階では、第1段階の終了後の液に、そのまま、ホスファターゼを添加してGTPをGDPに変換させることによりオキサロ酢酸消去反応を停止し、これと同時もしくはその後、グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼの作用により、アスパラギン酸及び2−オキソグルタル酸からオキサロ酢酸(特定物質)を生成させ、その生成したオキサロ酢酸に、リンゴ酸脱水素酵素およびNADHを作用させて、NADHの減少を320〜360nm、好ましくは340nmでの吸光度を測定することにより、試料中のグルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(特定成分)を正確に測定できる。
オキサロ酢酸の消去反応、グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼによるオキサロ酢酸の生成反応、及び生成したオキサロ酢酸にリンゴ酸脱水素酵素とNADHを作用させてNADを生成させる反応は、いずれもそれ自体は公知の酵素反応であり、通常の条件を採用することによって、実施できる。
【0082】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に詳細に説明する。以下に示す実施例及び比較例における測定は、日立製作所製7150型自動分析装置を用いて行った。
実施例1 アンモニウムイオン0 mg/dl または150 mg/dl 、及び尿素窒素95 mg/dl を含む試料の試料中の尿素窒素の測定
試料:
▲1▼尿素窒素95mg/dl を含む水溶液
▲2▼アンモニウムイオン約150mg/dl 及び尿素窒素95mg/dl を含む水溶液の2種類を用いた。
第1試薬:
第1試薬は、
Figure 0003614967
を含み、かつ、pH9.0の水溶液を用いた。
第2試薬:
第2試薬は、
グッド緩衝液 100mM
α−KG 12mM
ウレアーゼ 10unit/ml
NADH 1.00mM
アルカリホスファターゼ 10unit/ml
を含み、かつ、pH9.0の水溶液を用いた。
【0083】
測定:
試料3μlに第1試薬300μlを加え、37℃、5分間加温した後、第2試薬75μlを加えて37℃で1分間放置する。その後、340nmの波長で2分間、吸光度の変化(一定時間あたりの吸光度変化量)を測定する。あらかじめ作成した検量線より、試料中の尿素窒素の濃度を求める。なお、比較のため、第2試薬添加後、3分間放置し、ついで吸光度の変化を測定する。
結果:
結果を以下の表1に示す。この試薬で測定すると、試料中に150mg/dl のアンモニウムイオンが混在していても、混在していないときと同様の値を示すことがわかる。
【0084】
比較例1 NADPHのかわりにNADHを第1試薬に入れる場合の試料の尿素窒素の測定
試料:
実施例1と同様の試料を使用した。
第1試薬:
第1試薬は、
Figure 0003614967
を含み、かつ、pH9.0の水溶液を用いた。
第2試薬:
実施例1と同様の第2試薬を使用した。
測定:
上記の試薬を用い、実施例1と同様の操作を実施した。
結果:
以下の表1に示す結果を得た。アンモニウムイオンが混在しているとき測定不能になることがわかる。
【0085】
実施例2 第2試薬にアルカリホスファターゼを入れない場合の試料中の尿素窒素の測定
試料:
実施例1と同様の試料を使用した。
第1試薬:
実施例1と同様の第1試薬を使用した。
第2試薬:
第2試薬は、
グッド緩衝液 100mM
α−KG 12mM
ウレアーゼ 10unit/ml
NADH 1.00mM
を含み、かつ、pH9.0の水溶液を用いた。
測定:
上記の試薬を用い、実施例1と同様の操作を実施した。
結果:
以下の表1に示す結果を得た。アンモニウムイオンが混在していると正確な測定ができなくなる。また、アンモニウムイオンの混在の有無にかかわらず、第2試薬添加後、1〜3分の反応速度と3〜5分の反応速度では、10%近く異なることがわかる。
【0086】
実施例3 イソクエン酸脱水素酵素及びホスファターゼを用いた場合の試料中 の尿素窒素の測定
試料:
実施例1と同様の試料を使用した。
第1試薬:
Figure 0003614967
を含み、かつ、pH9.0の水溶液を用いた。
第2試薬:
グッド緩衝液 100mM
α−KG 12mM
ウレアーゼ 10unit/ml
NADH 1.00mM
ホスファターゼ 10unit/ml
を含み、かつ、pH9.0の水溶液を用いた。
測定:
実施例1の測定と同様に測定した。
結果:
得られた結果は以下の表1に示した。ホスファターゼ及びイソクエン酸脱水素酵素を用いた場合にも尿素窒素を良好に測定できることがわかる。
【0087】
【表1】
Figure 0003614967
【0088】
実施例4 尿素窒素測定の希釈直線性
試料:
尿素321mgを精製水100mlに溶解し(150mg/dl 尿素窒素水溶液) 、この溶液を10/10として10段階希釈した溶液及び精製水を使用した。
第1試薬:
実施例1と同様の第1試薬を使用した。
第2試薬:
実施例1と同様の第2試薬を使用した。
測定:
実施例1と同様の操作を実施した。
結果:
表2及び図1に示す結果を得た。希釈直線性が尿素窒素約150mg/dl まであることがわかる。
【0089】
【表2】
Figure 0003614967
【0090】
【発明の効果】
試料中の特定成分を測定する際に、内因性アンモニウムイオンにα−KG、GLDH、G6P、G6PDH及びNADPHを作用させて、試料中に当初から存在する内因性アンモニウムイオンを予め除去する本発明の方法によれば、測定時に誤差を与えやすい、試料中の内因性のアンモニウムイオンを効率良く消去することができ、試料中の特定成分を正確に精度良く測定することができる。とくに、本発明によれば、試料中のあらかじめ存在する高濃度のアンモニウムイオンを短時間で消去でき、試料中の特定成分を正確に精度良く測定することができる。また、臨床検査で汎用されている生化学自動分析装置でも測定することができる。したがって、臨床検査に寄与することで大である。
また、ホスファターゼを利用した本発明の試料中の特定成分を特定物質に基づいて測定する方法によれば、測定時に誤差を与えやすい、試料中の特定物質を効率良く消去し、試料中の特定成分から特定物質を発生させ、発生した特定物質を定量することにより、試料中のその特定成分を正確に定量することができる。また、臨床検査で汎用されている生化学自動分析装置でも測定することができる。更に、特定物質除去反応をキレート剤でなく、ホスファターゼで停止させるので、特定成分を測定するのに、金属イオンが存在しても構わない。したがって、種々の特定成分を測定できる。したがって、臨床検査分野に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】150mg/dl の尿素窒素を10段階希釈したものを測定試料として、本発明の測定を行った場合の結果を示すグラフである。横軸は希釈系列、縦軸は尿素窒素の測定値を示す。

Claims (5)

  1. 予め、試料に、α−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを作用させることにより当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去し;
    次いで、ホスファターゼを作用させることによりG6Pまたは/およびNADPHを不活性化させ;
    この不活性化と同時もしくはその後、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させ、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、及びNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定する
    ことにより、該試料中の該特定成分を定量する方法。
  2. GLDHが、NADHとNADPHとの両方に作用できるGLDHである請求項1に記載の特定成分を定量する方法。
  3. 試料中の特定成分を定量するためのキットであって、
    i) α−KG、GLDH、G6P、G6PDH、及びNADPHを含む第1試薬、並びに、
    ii) 酵素作用により特定成分からアンモニウムイオンを生成させる試薬であってかつホスファターゼ及びNADHを含む第2試薬
    を含むキット。
  4. 予め、試料に、α−KG、GLDH、NADP+依存性共役脱水素酵素、そのNADP+依存性共役脱水素酵素の基質及びNADPHを作用させることにより当初から試料中に存在するアンモニウムイオンを消去し;
    次いで、ホスファターゼを作用させることによりNADPHを不活性化させ;
    この不活性化と同時もしくはその後、酵素作用により試料中の特定成分からアンモニウムイオンを生成させ、生成するアンモニウムイオンにα−KG、GLDH、及びNADHを作用させ、そのNADHの減少を測定する
    ことにより、該試料中の該特定成分を定量する方法。
  5. 試料中の特定成分を定量するためのキットであって;
    i)α−KG、GLDH、NADP+依存性共役脱水素酵素、そのNADP+依存性共役脱水素酵素の基質及びNADPHを含む第1試薬、並びに、
    ii)酵素作用により特定成分からアンモニウムイオンを生成させる試薬であってかつホスファターゼ及びNADHを含む第2試薬
    を含むキット。
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