JP3614801B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の空調装置を制御する制御回路の配設構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の車両の空調装置として、例えば、特開平9−123748号公報に開示されるように、冷却用及び加熱用の2つの熱交換器を収容した空調ユニットと、該空調ユニットへの送風を行う送風ファンを収容した送風ユニットとを、それぞれインストルメントパネル内において車幅方向略中央部とその助手席側とに配設したものが知られている。
【0003】
前記空調ユニットには、その下端側に送風ユニットからの空気導入口が設けられていて、導入された空気は該空気導入口の上方でそれぞれ略水平に向けて上下に並べて配置された冷却用及び加熱用熱交換器を通過し、さらにその上方に接続されたダクトを介して車室に導出されるようになっている。このものでは、2つの熱交換器を上下に並べて配置することで、空調ユニットの小型化を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に、前記送風ユニットのファン駆動モータに電力を供給する制御回路には、パワートランジスタ等が配設されており、熱による誤作動や損傷を防止するためには、十分な放熱性を確保することが望ましい。
【0005】
しかるに、近年、空調装置が配置されるインストルメントパネル内には、乗員の安全装備や電子機器等が密集して配設されるようになり、該空調装置の制御回路の配設場所の自由度が低下しているので、該制御回路の放熱性を確保するのが難しく、そればかりか、前記電子機器等の発生する熱によって、制御回路の過熱が助長される場合もある。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱交換器を収容した空調ユニットに、遠心式ファンを収容した送風ユニットから中間ダクトを介して送風を行うようにした空調装置において、該遠心式ファンの制御回路の配設場所に工夫を凝らし、熱による障害の発生を防止することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の解決手段では、空調ユニットへ中間ダクトを介して送風する送風ユニットに遠心式ファンを用いた場合に、中間ダクト内で風量が偏ることに着目して、制御回路を該中間ダクト内の相対的に風量の多い部分に臨むようにして配設した。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、車両のインストルメントパネル内に、少なくとも冷却用熱交換器を備えた空調ユニットと該空調ユニットへ空調用空気を送る送風ユニットとを車幅方向に間隔をあけて並設し、該送風ユニットと空調ユニットとを車幅方向に真っ直ぐに延びる中間ダクトにより接続してなる車両用空調装置を前提とする。そして、該送風ユニットは、遠心式ファンをその回転軸が上下方向に向くように収容するとともに、該遠心式ファンの周囲に空気流出通路が形成されたファンハウジングを備え、該ファンハウジングの空調ユニット側の壁部には、前記空気流出通路を中間ダクトの上流端に連通させる空気吹出口が車体前後方向の中央位置よりも一側に開口し、該空気吹出口の上縁部及び下縁部を互いに略平行に車体前後方向に延設し、前記冷却用熱交換器を、その下面を前記空調ユニットの内部に設けられた空気の導入空間に臨ませてかつ車体前後方向一側が他側に比べて上方に位置するように傾斜して配置し、前記空調ユニットのケーシングにおける送風ユニット側の壁部には、前記導入空間と中間ダクトの下流端とを連通させる空気導入口が開口し、該空気導入口の上縁部を前記冷却用熱交換器の下端に沿って傾斜して延設する一方、下縁部を車体前後方向に延設し、前記中間ダクトの上流端開口の上縁部及び下縁部を前記空気吹出口の形状に対応して車体前後方向にそれぞれ延設し、前記中間ダクトの下流端開口における車体前後方向一側の上下方向の寸法が他側の上下方向の寸法よりも長くなるように、前記下流端開口の上縁部を前記空気導入口の形状に対応して傾斜して延設するとともに下縁部を車体前後方向に延設し、前記中間ダクトの上壁における空調ユニット側かつ車体前後方向他側寄りの領域を、中間ダクトの空調ユニット側の断面が車体前後方向他側から一側へ向かって拡大するように他側へ向けて下降傾斜して延設し、前記中間ダクトの上壁における送風ユニット側かつ車体前後方向一側寄りの領域を、前記空調ユニットないし送風ユニットを制御する制御回路が中間ダクトの内部へ突出するようにして配設される配設部とし、該配設部を前記空気吹出口の上縁部から前記空気導入口の上縁部に向かって略平坦に延設するものとする。
【0009】
前記の構成によれば、送風ユニットにおいて遠心式ファンの外周に吹き出された空気は、ファンハウジングの空気流出通路を流通して空気吹出口から中間ダクトに至り、この中間ダクトにより空調ユニット内に導入された後に、冷却用熱交換器を通過して調和空気とされてから車室内に供給される。この際、前記遠心式ファンからの空気の流れは、一旦、空気流出通路に集合してから空気吹出口より中間ダクトに送られるのであるが、該空気吹出口が車体前後方向の中間位置よりも一側に設けられているので、中間ダクト内を車幅方向に流れる空気の流量、即ち風量は車体前後方向一側で相対的に多くなる。そして、この風量の多い部分、即ち、中間ダクト内の車体前後方向一側寄りに臨むように、制御回路を配設しているので、該制御回路の冷却を効率的に行うことができ、これにより、熱による障害の発生を防止できる。
【0010】
また、送風ユニットからの空気は、空調ユニットのケーシングに開口する空気導入口から導入空間へ導びかれた後に、冷却用熱交換器をその下方から上方に通過することで冷却される。そして、このときに発生した凝縮水は、冷却用熱交換器の傾斜する下面に沿って車体前後方向他側へ流れるようになるから、該熱交換器から凝縮水をスムーズに排水できる。
【0011】
一方、そのように冷却用熱交換器を傾斜配置させたとき、空調ユニットの上下方向の寸法を短縮するために、該空調ユニットの底壁と冷却用熱交換器とを近接させようとすると、空気導入口の面積の確保が難しくなるが、この構成では、空気導入口の上縁部を冷却用熱交換器の下端に沿うように傾斜させて、空気導入口を車体前後方向一側ほど上下方向の開口寸法が長い形状とすることで、空調ユニットへ十分な風量を供給可能な開口面積を得ることができる。しかも、中間ダクト内での風量が車体前後方向一側に偏っているのに対して、その風量が多い流れを開口寸法の大きい側からスムーズに空調ユニット内に導くことができる。さらに、その結果として、前記中間ダクト内での風量の偏りが助長されることになる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記送風ユニットの下端部を空調ユニットの下端部よりも上方に位置付け、前記配設部は、送風ユニットから空調ユニットへ向けて徐々に下方へ向かうように傾斜しているものとする。
【0013】
このことで、送風ユニットの下端部が相対的に上方に位置することになり、もって助手席の足元スペースを容易に確保できるようになる。また、中間ダクトの上面に送風ユニットから空調ユニットに向けて下方へ傾斜した傾斜面を設けたので、この中間ダクトにより空調ユニットへスムーズに送風できる。そして、その傾斜面に制御回路を配設座によって該傾斜面に沿うように配設したので、中間ダクト内に臨む制御回路やその配設座がダクト内の空気の流れを妨げることが最小限に抑制される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図3は、本発明の実施形態に係る空調装置1の外観を示すものであり、この空調装置1は、図4に示すように、自動車の車室に配設されているインストルメントパネル2の内方に収容されている。この自動車は、運転席及び助手席がそれぞれ車体右側及び左側に設けられている、いわゆる右ハンドル車であり、さらに前部のエンジンルームと、車室の前側とはダッシュパネルP(図10にのみ示す)によって仕切られている。尚、この明細書では、空調装置1の車体前側及び車体後側を、それぞれ単に前側及び後側とも呼ぶものとする。
【0016】
前記空調装置1は、図3に示すように、送風ユニット3と、該送風ユニット3からの空気を冷却した後、温度調節して車室へ供給する空調ユニット4と、送風ユニット3からの空気を空調ユニット4へ送る中間ダクト5とからなるものである。空調ユニット4は車幅方向の略中央部に配置される一方、送風ユニット3は該空調ユニット4から車体左側へ所定距離離間して助手席の前方に配置されている。また、該送風ユニット3の下端は、空調ユニット4の下端よりも上方に位置付けられていて、助手席乗員の足元スペースを広く確保している。
【0017】
前記送風ユニット3は、その車幅方向の略中央部において左右に2つに分割されたケーシング6を備えており、それらはファスナ等を用いて一体化されている。そのケーシング6の上側には空調装置1へ空気を取り入れるための空気取入部7が設けられる一方、下側には取り入れた空気を前記空調ユニット4へ送風するための送風部8が設けられている。空気取入部7の上部には、図1に示すように、図示しないダクトを介して車室外の空気を取り入れるための外気取入口10と、車室内の空気を取り入れるための内気取入口11とが形成されていて、さらに、これらのうちのいずれか一方を閉状態とするとともに、他方を開状態とするように作動する内外気切替ダンパ12(図2のみに示す)が、該空気取入部7の内方に設けられている。
【0018】
詳しくは、前記空気取入部7の上部は、前後に隣接する2つの矩形状の傾斜面が互いに差し掛けられた屋根のような形状をなし、その前面部が後側ほど上方に位置し、また、後面部は前側ほど上方に位置し、それらの上縁同士が連繋していて、車幅方向から見て、略三角形の断面を有するように形成されている。前記前面部及び後面部にそれぞれ前記外気取入口10及び内気取入口11が矩形状に開口していて、さらに内気取入口11にはグリル13が一体成形されている。一方、前記空気取入部7の側面部は、前面部及び後面部の対応する側縁同士を連繋するように設けられている。前記内外気切替ダンパ12は、各取入口10、11よりも大きい矩形状とされていて、その上縁に車幅方向に延びる軸を有し、この両端がそれぞれ前記空気取入部7の一対の側面部の上端側に支持されている。
【0019】
前記内外気切替ダンパ12の軸の一方側には、空気取入部7の側面部に取り付けられたアクチュエータ15の出力軸が連結されるように、該側面部を貫通する連結部(図示せず)が設けられている。また、該側面部には、アクチュエータ15をねじ等により締結するためのボス部が一体成形されている。該アクチュエータ15は、車体に配設されている空調制御部(図示せず)からの信号を受けて作動するように構成されていて、空調制御部からの信号線は、アクチュエータ15のカプラ17に結線されるようになっている。
【0020】
そして、前記アクチュエータ15によって内外気切替ダンパ12がその軸周りに回動されて、外気取入口10を全開とする位置にされると内気取入口11が全閉とされて、外気のみを取り入れる外気取入モードとなる一方、該内外気切替ダンパ12がその状態から逆方向に回動されて、外気取入口10を全閉とする位置にされると内気取入口11が全開とされて、内気循環モードとなる。
【0021】
一方、前記空気取入部7の下部には、図5に示すように、取り入れた空気を濾過するためのフィルタ20が配設されるフィルタ配設部21が設けられており、図示しないが、このフィルタ配設部21の後側には開口が形成されていて、この開口からフィルタ20の交換が行えるようになっている。そして、この図において矢印で示すように、空気取入部7の上部から空気が取り入れられ、フィルタ20を通過し、送風部8に導入される。
【0022】
前記送風部8には、図6に示すように、送風ファン23である遠心式多翼ファンがその回転軸を上下方向に向けて配設され、さらにこの送風ファン23の下方にファン駆動モータ24が配設されている。この送風ファン23は、送風部8の外形状を構成するファンハウジング22に収容されていて、そのファンハウジング22には、送風ファン23の外周を囲んで該送風ファン23からの空気を中間ダクト5へ流出させる空気流出通路28が形成されている。この空気流出通路28は、その上流側が送風ファン23の車体右側における前後方向の略中央部に対応する部分に位置付けられ、ここから送風ファン23の車体前側、左側へと順に回り込んで、該送風ファン23の後側で空調ユニット4側へ略直線的に延びていて、その上流側から下流側へ向かって徐々に断面積が大きくなる渦巻き状の通路である。また、空気流出通路28の下流端は、ファンハウジング22の右側壁部22aの後側に開口していて、その開口が空気吹出口29とされ、ここに前記中間ダクト5の左端部が接続されている。
【0023】
そして、送風ファン23からのその外周に向かって送り出される空気の流れは、前記の如く渦巻き状に形成された空気流出通路内28で集合してから中間ダクト5に向かうことになるが、該空気流出通路28の外周側で相対的に風量の多い流れとなり、この結果として中間ダクト5内でも、空気流出通路28の外周側に対応する後側(車体前後方向一側)において相対的に風量の多い流れとなる。
【0024】
前記ファンハウジング22と中間ダクト5との接続構造について説明すると、空気流出通路28の下流端側は、前記ファンハウジング22の右側壁部22aにおける車体前後方向の略中央部から後端に亘って車体右側へ突出した突出部39の内部に形成されていて、前記空気吹出口29は該突出部39の右端面全体に開口している。この突出部39の上壁及び下壁は共に略水平に延びており、それぞれの後端側に上方及び下方へ延びる突片39a,39aが形成されている。一方、前記中間ダクト5の左端部の後端側には、図7及び図8に示すように、上下それぞれに前記突出部39の突片39a,39aと係合する爪部5a,5aが形成されており、これら各突片39a及び爪部5aによって中間ダクト5が送風ユニット3に固定されるようになっている。
【0025】
前記中間ダクト5は、図9に示すように、その左端部から空調ユニット4の下端側へ向かって斜め下方へ延びるように形成されていて、詳細は後述するが、その右端部が、空調ユニット4の車体左側の下側に形成された空気導入口25を介して、該空調ユニット4の内部空間(導入空間)と連通している。すなわち、送風ユニット3と空調ユニット4とは、中間ダクト5の分だけ離れていて、該送風ユニット3からの空気は、図5の矢印で示すように、この中間ダクト5内を通過してスムーズに空調ユニット4へ送られるようになっている。
【0026】
前記空調ユニット4は、全体として上下方向に長く、かつ前記送風ユニット3のケーシング6よりも大型の矩形箱状に形成されたケーシング30を備えており、該ケーシング30は底壁部31と、この底壁部31よりも上側の本体部32とに分割されていて、さらに、該本体部32は前記送風ユニット3と同様に、その車幅方向の略中央部において2つに分割されている。このケーシング30の内部には、図10に示すように、前記中間ダクト5が接続される空気導入口25よりも上方に冷凍サイクルの一要素であるエバポレータ33が配設され、さらにその上方にはヒータコア34が配設されている。また、この空調ユニット4のケーシング30の上部には、調和空気の吹出口が複数形成されており、前記図5に矢印で示すように、前記送風ユニット3からの空気の流れはこの空調ユニット4内で上方へ向かう流れとなる。
【0027】
前記空調ユニット4の空気導入口25は、全体として略台形状とされ、下縁は略水平に延びる一方、上縁は後側ほど上方に位置するように傾斜して直線的に延びている。すなわち、空気導入口25は、後述するエバポレータ33の傾斜配置に対応して、できるだけ大きな開口面積を確保できるような形状とされている。また、この空気導入口25の周縁には、その全周から車体左側へ略水平に延出したダクト接続部59が一体に設けられていて、このダクト接続部59に前記中間ダクト5の右端部が嵌合されている。従って、中間ダクト5の右端部の上縁は、後側ほど上方に位置するように傾斜して延びる一方、左端部の上縁は前記の如く略水平に延びている。そして、これら中間ダクト5の右端部及び左端部の上縁同士を連繋するように上壁66が設けられていて、この上壁66に前記ファン駆動モータ24の回転数を制御するパワートランジスタ等の配設された制御回路26が取り付けられている。
【0028】
前記中間ダクト5の上壁66は、3つの平坦な面部から構成されていて、全体としては大略矩形状とされ、かつ、送風ユニット3から空調ユニット4に向けて徐々に下方へ向かうように傾斜している。該上壁66は、まず、その左前隅から右後隅に亘って延びる対角線に沿って2つに区分されていて、この対角線よりも後側の傾斜面部が前記送風ユニット3の空気吹出口29の上縁から空調ユニット4の空気導入口25の上縁に延びるように形成されていて、前記制御回路26の配設部75(配設座)とされている。また、前記対角線よりも前側の部分は、該対角線の略中央からこの上壁66の右前隅に亘って延びる直線に沿ってさらに2つに区分されている。
【0029】
前記中間ダクト5の配設部75に取り付けられている制御回路26は、大略矩形箱状とされ、若干、中間ダクト5の延びる方向に長く形成されている。この制御回路26は、大部分が中間ダクト5の内部を臨むようにして、残りの上端側のみが中間ダクト5の上壁66から突出するように取り付けられおり、その上端に前記空調制御部からのコネクタを接続するためのカプラ27が設けられている。この制御回路26の配設部75は、前記の如く空気吹出口29上縁から空気導入口25上縁に延びるように形成されているので、中間ダクト5内の空気の流れの障害とならず、制御回路26への冷却風の確保を容易にしている。
【0030】
前記の如く構成された中間ダクト5から空調ユニット4へ導入された空気は、まず、前記エバポレータ33を通過する。このエバポレータ33は、送風ユニット3からの空気を冷却する冷却用の熱交換器であり、例えばアルミニウム等の金属薄板から形成されたチューブを互いに同方向に延びるように多数積層して、隣り合うチューブの間に、同じく金属薄板から形成された波形のフィンを介在させたものである。このエバポレータ33のチューブ内には、冷凍サイクルにより生成される低温の冷媒が循環して、該エバポレータ33を通過する空気を冷却するようになっている。すなわち、このエバポレータ33には、図示しないが、チューブの両端側にそれぞれ該チューブと連通するタンクが設けられていて、一方のタンクはチューブの積層方向の中央部分に配設された仕切板によって流入タンク部と流出タンク部とに区画されている。そして、流入タンク部に流入した冷媒は、この流入タンク部に接続された上流側チューブを介して他方のタンクに流れ、その後、この他方のタンクから下流側チューブを介して前記一方のタンクの流出タンク部に至る。
【0031】
前記エバポレータ33は、チューブの延びる方向を車体前後方向に向け、かつ車幅方向に見て、該エバポレータ33の下端と前記空気導入口25の上縁とが略一致するように、傾斜した状態で配設されている。言い換えると、エバポレータ33の前端側は、空調ユニット4の下端部近傍に位置し、該エバポレータの後側が前側よりも上方に位置している。そして、空調ユニット4の下側の内部空間に導入された送風ユニット3からの空気は全てエバポレータ33を通過するようになっている。前記エバポレータ33の流入タンク部と流出タンク部とには、それぞれクーラパイプ(図示せず)が接続されていて、各クーラパイプは空調ユニット4のケーシング30における左側壁部30aからケーシング30の外方へ延出した後、車体前方へ延びるように成形されている。
【0032】
また、エバポレータ33が前記の如く傾斜配置されているために、空気の冷却時に該エバポレータ33のチューブやフィンに発生した凝縮水は、そのチューブを伝わって前端側の部分まで流れ、そこから前記ケーシング30の底壁部31に落下するようになり、凝縮水をスムーズに排水できる。そして、底壁部31に落下した凝縮水は、該底壁部31のドレン部35を介して車外へ排出される。詳しくは、このドレン部35は、底壁部31の前端側における車体左側の部分に、該底壁部31と一体に形成されたドレン通路(図示せず)を備えていて、このドレン通路の上流端はケーシング30内に臨んで開口し、そこからケーシング30の左側壁部30aよりも車体左側へ突出するように延びて、さらに下流側の部分は前記クーラパイプと同様に車体前方へ延びており、その下流端が開口している。このように底壁部31の前端側にドレン部35が設けられているので、前記の如くエバポレータ33の前端側から落下した凝縮水は、素早く排出されるようになり、底壁部31の保水量を少なくすることができる。
【0033】
また、前記エバポレータ33の上方のヒータコア34は、該エバポレータ33を通過した空気を加熱する加熱用の熱交換器であり、該エバポレータ33と同様に積層されたチューブ及びフィンとからなるものとされ、該チューブ内にはエンジンからの高温の冷却水が循環して、該ヒータコア34を通過する空気を加熱するようになっている。このヒータコア34にも、前記エバポレータ33の各クーラパイプと同様に、エンジン冷却水を流入及び流出させる各ヒータパイプ(図示せず)が設けられていて、それぞれが、ケーシング30の左側壁部30aから外方へ延出した後、車体前方へ延びるように成形されている。従って、各ヒータパイプは、前記中間ダクト5の上方に位置することになるので、助手席乗員が接触することはなく、該ヒータパイプへの断熱部材の取り付けを省略できる。
【0034】
前記エバポレータ33とヒータコア34との間には、調和空気の温度を調節するための2つのエアミックスダンパ36、37が設けられている。このエアミックスダンパ36、37による温度調節は、エバポレータ33を通過した空気のうち、ヒータコア34を通過する空気量と該ヒータコア34をバイパスさせるバイパス通路38を通過する空気量との比率を変更することによって行われる。
【0035】
詳しくは、図10に示すように、空調ユニット4の内部は、ケーシング30の内側に一体成形された隔壁部40によってエバポレータ33の配設空間41と、ヒータコア34の配設空間42とに区画されている。この隔壁部40は、車幅方向から見ると、車体前側で略水平に延びる前側隔壁40aと、車体後側で逆V字状をなす後側隔壁40bとからなり、その前側隔壁40aと後側隔壁40bとには、それぞれ、エバポレータ配設空間41とヒータコア配設空間42とを連通させる2つの開口部43、44が形成されていて、前記エアミックスダンパ36、37により開閉されるようになっている。さらに、前記隔壁部40の後側隔壁部40bには、ヒータコア配設空間42の後側で前記バイパス通路38とエバポレータ配設空間41とを連通させる開口部48が形成されている。
【0036】
前記2つのエアミックスダンパ36、37は、内外気切替ダンパ12と同様に、各々が車幅方向に延びる軸を有しており、その両端がケーシング30に支持されていて、それぞれの車体左側の軸端に対して、前記ケーシング30の左側壁部30aに配設されたアクチュエータ45の出力軸がリンク機構46を介して連結されている。該アクチュエータ45は、内外気切替ダンパ12のアクチュエータ15と同様に、ケーシング左側壁部30aに突設されたボス部に固定されている。
【0037】
前記2つのエアミックスダンパ36、37は、前記したリンク機構46により連動しており、アクチュエータ45により前側及び後側開口部43、44のそれぞれを全開とする位置から、全閉とする位置まで回動するようになっている。この際、後側のエアミックスダンパ37は、前記後側開口部44を全開とする位置まで回動すると、前記バイパス通路38の上流端開口部48を全閉とするようになっていて、略全ての空気がヒータコア34を通過するようになる。尚、このエアミックスダンパ36、37のアクチュエータ45も前記内外気切替ダンパ12のアクチュエータ15と同様に、空調制御部の信号線が結線されるカプラ49(図3及び図5にのみ示す)を有している。
【0038】
尚、図示しないが、前記エバポレータ33には、その表面の温度を検出する温度センサが配設される一方、ヒータコア34にはその内部のエンジン冷却水の温度を検出する水温センサが配設されている。これら各センサの信号線は、空調ユニット4の左側壁部30aを貫通して延びていて、前記空調制御部に接続されるようになっている。
【0039】
さらに、前記空調ユニット4のケーシング30の上部には、車体後側の傾斜した部分にベント吹出口50,50,…が形成され、その前側の略水平な部分にデフロスト吹出口51,51が形成されている。さらに、該ケーシング30の上部における左側壁部30a及び右側壁部30bには、それぞれフット吹出口52(図10に右側のもののみ示す)が形成されている。前記ベント吹出口50,50,…は、ベントダクト(図示せず)を介して図4に示すインストルメントパネル2に設けられたベントグリル53,53,…に接続されており、各ベント吹出口50からの調和空気は主に乗員の上半身へ吹き出すようになっている。一方、前記デフロスト吹出口51,51は、デフロストダクト(図示せず)を介してインストルメントパネル2の前端側に設けられたデフロストグリル54,54に接続されており、各デフロスト吹出口51からの調和空気はフロントウインドの内面に向かって吹き出すようになっている。また、前記左右のフット吹出口52,52には、それぞれ下方へ延びるダクト56、57が接続されていて、両ダクト56、57は、インストルメントパネル2の下側における運転席乗員及び助手席乗員の足元近傍で開口しており、フット吹出口52,52からの調和空気を乗員の足元に向かって吹き出すようになっている。
【0040】
前記フット吹出口52,52に接続されたダクト56、57のうち、運転席側のダクト56は、ケーシング30の右側壁部30bから後側の壁部に回り込むように、該ケーシング30と一体的に設けられたもので、比較的、大きい断面積を有しており、後席乗員への調和空気も一緒に通過する後席用との兼用のダクトとされている。この兼用ダクト56のケーシング右側壁部30bに対応する部分の前側には、前記したように運転席乗員への調和空気の吹出用開口55,55が形成される一方、ケーシング30の後壁部に対応する部分の下端側には後席乗員へ調和空気を導くためのフロアダクト(図示せず)の上端部が接続される接続部58,58が形成されている。
【0041】
また、前記空調ユニット4のケーシング30内部には、前記吹出口50、51、52を開閉して調和空気の吹出方向を変更する2つの吹出方向切替ダンパ60、61が、前記エアミックスダンパ36、37と同様に設けられていて、これらは空調ユニット4のケーシング30における左側壁部30aに配設されたリンク機構62及び該左側壁部30aのボス部に固定されたアクチュエータ63により作動するようになっている。
【0042】
前記吹出方向切替ダンパ60、61のうちの前側のものは前記デフロスト吹出口51,51を開閉するデフロストダンパ60とされ、後側のものはベント吹出口50,50,…を開閉するベントダンパ61とされている。それぞれのダンパ60、61は前記リンク機構62により連動するようになっており、前記アクチュエータ63によって駆動されることで、それぞれが各吹出モードに対応した開度とされる。すなわち、この空調ユニット4は、2つのダンパ60、61の開閉状態によってベントモード、デフロストモード、フットモード、ベント及びフットの各吹出口50、52から吹き出すバイレベルモード等の各吹出モードに切り替え可能とされている。尚、この吹出方向切替ダンパ60、61のアクチュエータ63も前記内外気切替ダンパ12のアクチュエータ15と同様に、空調制御部の信号線が結線されるカプラ65(図3及び図5にのみ示す)を有している。
【0043】
次に、前記空調装置1の車体への取り付けについて、まず、送風ユニット3及び空調ユニット4のそれぞれの取付部について説明する。送風ユニット3の送風部8の左右両側には、それぞれ一対の取付脚68,68が設けられ、また、前記フィルタ配設部21の空調ユニット4側から車体右側に向かって斜めに突出する取付脚69が設けられている。一方、空調ユニット4の取付部は、前記ドレン部35に一体成形された取付脚70と、ケーシング30上部の左右両側にそれぞれ設けられた一対の取付脚71,71とからなる。
【0044】
また、前記送風ユニット3及び空調ユニット4の取付部68〜71には貫通孔が形成される一方、前記ダッシュパネルPには、図示しないが、各貫通孔の位置に対応するように、スタッドボルトが取り付けられている。また、該ダッシュパネルPには、前記クーラパイプ及びヒータパイプと、ドレン通路との配設位置に対応して貫通孔が形成されている。そして、各ユニット3、4の取付部68〜71における貫通孔にスタッドボルトを挿通させるように空調装置1を車体に位置決めすると、前記クーラパイプ及びヒータパイプはダッシュパネルPの貫通孔からエンジンルームに臨むようになる。この状態で、スタッドボルトにナットを螺合させることによって空調装置1を車体に対して強固に固定することができ、また、各パイプにはエンジンルーム内の配管を接続して、ドレン通路には排水パイプを接続する。
【0045】
したがって、この実施形態に係る自動車の空調装置によると、遠心式ファン23を収容するファンハウジング22に渦巻き状の空気流出通路28を形成して、この空気流出通路28の下流端部の空気吹出口29をファンハウジング22の右側壁部22aにおける後側に開口させ、ここから中間ダクト5を介して空調ユニット4へ送風するようになるので、中間ダクト5内では、その後側で相対的に風量が多くなる。そして、ファン駆動モータ24の制御回路26をこの中間ダクト5の後側に、その内部を臨むようにして配設しているので、該制御回路26への冷却風を十分に確保して、熱による障害の発生を防止できる。
【0046】
また、エバポレータ33の傾斜配置に対応して、空調ユニット4の空気導入口25の上縁を該エバポレータ33の下縁に沿うように傾斜させ、該空気導入口25の形状を、後側ほど上下方向の開口寸法が長い台形状としたので、空調ユニット4の上下方向寸法の増大を招くことなく該空気導入口25の開口面積を広くして、十分な量の空気を導入することができる。
【0047】
しかも、前記したように中間ダクト5内での風量が後側に偏っているのに対して、その風量が多い流れを空気導入口25の開口寸法の大きい側からスムーズに空調ユニット4内に導くことができる。さらに、その結果として、前記中間ダクト5内での風量の偏りが助長されることになり、制御回路26の冷却を十分に行うことができる。
【0048】
さらに、前記制御回路26を中間ダクト5の上壁66に取り付けているので、例えば空調ユニット4の底壁部31に溜まっている凝縮水が自動車の振動等によって中間ダクト5内に流れてきても、その凝縮水が制御回路26に付着することはなく、該制御回路26の故障を防止できる。また、送風ユニット3を外気取入モードとしているときに、該送風ユニット3の外気取入口10から雨水等が浸入する場合があるが、このような場合でも制御回路26を保護することができる。
【0049】
また、空調装置1を車体に組み付けた後、例えば、制御回路26を補修のために取り外す場合、中間ダクト5を両ユニット3、4から外した後、該中間ダクト5から制御回路26を取り外すことができるので、インストルメントパネル2内においてその制御回路26の取り外しのスペースが確保できないときでも、容易に補修作業を行うことができる。
【0050】
(他の実施形態)
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記実施形態は、右ハンドル車の場合について説明しているが、本発明は送風ユニット3を車体右側に配置する左ハンドル車にも適用できる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明に係る車両用空調装置によると、空調ユニットの車幅方向に並設した送風ユニットにおいて、遠心式ファンからの空気の吹出口を車体前後方向一側に開口させて、中間ダクトを介して前記空調ユニットに送風するとともに、該中間ダクト内で車体前後方向一側に偏る風量により、効率的に制御回路を冷却して、熱による障害の発生を防止できる。また、冷却用熱交換器を、車体前後方向一側が他側に比べて上方に位置するように傾斜して配置し、空調ユニットの空気導入口の上縁部を前記冷却用熱交換器の下縁に沿うように傾斜させたので、前記中間ダクト内で車体前後方向一側に偏っている流れをスムーズに空調ユニット内に導くことができる。しかも、中間ダクト内で風量の偏りが助長されるので、制御回路の冷却性を向上できる。また、空調ユニットの底壁と冷却用熱交換器とを近接させて該空調ユニットの上下方向の寸法を短縮するようにした場合にも、開口面積を確保することができる。
【0052】
請求項2記載の発明によると、送風ユニットの下端部を相対的に上方に位置させて助手席の足元スペースを広く確保した場合に、中間ダクトにおいて送風ユニットから空調ユニットへ空気をスムーズに流すことができ、この中間ダクトに制御回路を設けても、空気の流れへの障害となることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る空調装置の外観を示す左側後方からの斜視図である。
【図2】空調装置の外観を示す右側後方からの斜視図である。
【図3】空調装置の外観を示す後面図である。
【図4】空調装置の配設状態を示す説明図である。
【図5】空調装置の構造を示す図3相当図である。
【図6】送風ユニットのファンハウジングの構造を示す右側下方からの斜視図である。
【図7】中間ダクトの右側後方からの斜視図である。
【図8】中間ダクトの左側面図である。
【図9】中間ダクトの後面図である。
【図10】空調ユニットの内部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 空調装置
2 インストルメントパネル
3 送風ユニット
4 空調ユニット
5 中間ダクト
22 ファンハウジング
22a 右側壁部
23 送風ファン(遠心式ファン)
25 空気導入口
26 制御回路
28 空気流出通路
29 空気吹出口
30 空調ユニットケーシング
30a 左側壁部
33 エバポレータ(冷却用熱交換器)
66 上壁
75 配設部(配設座)
Claims (2)
- 車両のインストルメントパネル内に、少なくとも冷却用熱交換器を備えた空調ユニットと該空調ユニットへ空調用空気を送る送風ユニットとを車幅方向に間隔をあけて並設し、該送風ユニットと空調ユニットとを車幅方向に真っ直ぐに延びる中間ダクトにより接続してなる車両用空調装置において、
前記送風ユニットは、遠心式ファンをその回転軸が上下方向に向くように収容するとともに、該遠心式ファンの周囲に空気流出通路が形成されたファンハウジングを備え、
前記ファンハウジングの空調ユニット側の壁部には、前記空気流出通路を中間ダクトの上流端に連通させる空気吹出口が車体前後方向の中央位置よりも一側に開口され、該空気吹出口の上縁部及び下縁部は互いに略平行に車体前後方向に延設され、
前記冷却用熱交換器は、その下面を前記空調ユニットの内部に設けられた空気の導入空間に臨ませてかつ車体前後方向一側が他側に比べて上方に位置するように傾斜して配置され、
前記空調ユニットのケーシングにおける送風ユニット側の壁部には、前記導入空間と中間ダクトの下流端とを連通させる空気導入口が開口され、該空気導入口の上縁部が前記冷却用熱交換器の下端に沿って傾斜して延設される一方、下縁部は車体前後方向に延設され、
前記中間ダクトの上流端開口の上縁部及び下縁部は前記空気吹出口の形状に対応して車体前後方向にそれぞれ延設され、
前記中間ダクトの下流端開口における車体前後方向一側の上下方向の寸法が他側の上下方向の寸法よりも長くなるように、前記下流端開口の上縁部が前記空気導入口の形状に対応して傾斜して延設されるとともに下縁部が車体前後方向に延設され、
前記中間ダクトの上壁における空調ユニット側かつ車体前後方向他側寄りの領域は、中間ダクトの空調ユニット側の断面が車体前後方向他側から一側へ向かって拡大するように他側へ向けて下降傾斜して延設され、
前記中間ダクトの上壁における送風ユニット側かつ車体前後方向一側寄りの領域は、前記空調ユニットないし送風ユニットを制御する制御回路が中間ダクトの内部へ突出するようにして配設される配設部とされ、該配設部が前記空気吹出口の上縁部から前記空気導入口の上縁部に向かって略平坦に延設されていることを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1において、
前記送風ユニットの下端部は空調ユニットの下端部よりも上方に位置付けられ、
前記配設部は、送風ユニットから空調ユニットへ向けて徐々に下方へ向かうように傾斜していることを特徴とする車両用空調装置。
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