JP3614195B2 - 酸化チタン膜付き球状粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、酸化チタン膜付き球状粒子の製造方法に関する。本発明により得られた酸化チタン膜付き球状粒子は、その酸化チタン膜を還元処理することにより、液晶表示装置用スペーサーとして用いられる黒色微粒子の製造に用いられる。またこの酸化チタン膜付き球状粒子は、異方導電膜等に利用可能な導電性微粒子に応用することができる。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
TN(Twisted Nematic)型の液晶表示装置においては、液晶セルのギャップのバラツキが、応答速度、視野角、コントラスト等の表示品質に大きく影響し、表示ムラを生じさせる。特にSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示装置の液晶セルのギャップのバラツキは0.05μm以下に制御される必要があるとされ、スペーサーの精度が表示品位を大きく左右する。
【0003】
ところで、液晶セルにおけるスペーサーの散布密度を大きくすれば、ギャップのバラツキを小さくすることができるが、この手段ではスペーサーからの光の漏れが増大する。このため、スペーサー自体を黒色等に着色させ、光がスペーサー内を透過しないようにすることが行われている。
【0004】
本出願人は、チタンアルコキシドの低級アルコ−ル溶液を用いるゾルゲル法により、シリカ粒子表面にコーティングされた酸化チタン膜を、アンモニア等の還元性雰囲気下で焼成することによって黒色の部分還元酸化チタン膜が形成されることを見いだし、このようにして得られた黒色微粒子を液晶表示装置用スペーサーとして用いることを提案している(特開平5−9027号公報)。
【0005】
しかしながら、特開平5−9027号公報の方法(以下従来法(1)という)は一回の反応によって形成される酸化チタン膜がナノメーターオーダーの非常に薄いものであるため、これをアンモニアなどの還元性雰囲気下で焼成することによって黒色を呈するが、高度の遮光性が要求される場合には必ずしも十分ではなかった。また、十分な遮光性を得るために何回も繰り返し酸化チタンのコーティングを行なうことによって膜厚を厚くすることができるものの、得られた粒子の乾燥工程や還元焼成工程において、シリカ粒子の表面に形成されている酸化チタン膜にクラックが入ったり、酸化チタン膜が割れて剥がれたりして満足すべき黒色微粒子が得られない場合があった。この原因は、乾燥工程での揮発物の蒸発および粒子内部の高密度化による収縮、還元焼成時の熱によるシリカ微粒子と酸化チタン膜との膨脹率の差によるものと思われる。
【0006】
また本出願人は、シリカ粒子上に酸化チタン膜を形成する方法として、シリカ粒子を炭素数4〜10の中級アルコ−ルを主体とするアルコ−ル系溶媒に分散したのち、アルカリ水溶液を添加してシリカ粒子表面を活性化処理し、次いでチタンアルコキシドを添加して、これを加水分解、脱水・縮合させて酸化チタン膜をシリカ粒子上にコ−ティングする方法を提案しており(特開平6−162817号公報)、この特開平6−162817号公報の方法(以下従来法(2)という)によれば、溶媒として中級アルコ−ルを用いることにより、酸化チタン膜厚を従来法(1)よりも厚くすることができ、またアルカリ水溶液でシリカ表面を活性化処理することにより、酸化チタン膜の剥離や割れの問題が従来法(1)よりも低減される。
【0007】
このように、従来法(2)でシリカ粒子上に形成された酸化チタン膜の緻密性、膜厚はある程度満足すべきものであるが、より緻密性に優れ、膜厚のより厚いチタン膜を有する球状粒子が望まれていた。
【0008】
従って本発明の目的は、より緻密で膜厚のより厚い酸化チタン膜を有し、液晶表示装置用スペーサーとして用いられる黒色微粒子の製造に好ましく用いられ、また異方導電膜に利用可能な酸化チタン膜付き球状粒子の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の酸化チタン膜付き球状粒子の製造方法は、
(1)金属酸化物からなる球状粒子を中級アルコールを主体とするアルコール系溶媒に分散して球状粒子の分散液を得る工程と、
(2)前記分散液にアルカリ水溶液を添加して金属酸化物球状粒子の表面を活性化処理する工程と、
(3)金属酸化物球状粒子表面に、TiO2 からなる酸化チタン膜を形成させて酸化チタン膜付き球状粒子を得る工程と、
を含み、
前記工程(3)が、金属酸化物球状粒子分散液中のチタンアルコキシドまたはその部分加水分解物を加水分解、脱水・縮合させて金属酸化物球状粒子上に酸化チタン膜を形成させ、得られた酸化チタン膜付き球状粒子を分散液から分離して中性水中に分散させて加熱処理した後、中性水から分離した酸化チタン膜付き球状粒子を乾熱処理することにより行なわれ、
更に前記工程(3)で得られた酸化チタン膜付き球状粒子を出発粒子として前記工程(1),(2)および(3)を1回または2回以上繰り返すことを特徴とする。
【0010】
以下本発明を詳説する。
本発明の酸化チタン膜付き球状粒子の製造方法において、工程(1)は金属酸化物からなる球状粒子をを中級アルコールを主体とするアルコール系溶媒に分散して球状粒子の分散液を得る工程である。この工程(1)において用いられる球状粒子は、一般に0.5〜30μm、より好ましくは1.0〜15μmの範囲の粒径を有するものが好ましい。また球状粒子を構成する金属酸化物微粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化バリウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウムなどの微粒子が挙げられるが、粒径精度、強度、硬度の点でシリカ微粒子を用いるのが特に好ましい。シリカ微粒子は、シリコンアルコキシドを水、アンモニアおよびアルコールからなる反応液中において加水分解および脱水・縮合させることにより製造される。この段階の未焼成シリカ粒子は、シラノール基が多く、かつ有機物、水、アンモニアもかなり残存しており、強度、硬度も低い。この未焼成シリカ粒子を500〜1200℃で焼成するとシラノール基、有機物、水、アンモニアが殆んど残存しない焼成シリカ粒子となり、強度、硬度が増加する。本発明の方法においては、これら2種のシリカ微粒子のいずれも使用できる。
【0011】
従来法では、表面にシラノール基の多い未焼成シリカ微粒子に対しては接着性の良好な酸化チタン膜を形成できたが、シラノール基の殆ど無い焼成シリカ微粒子には酸化チタン膜は形成されるものの、界面の結合力が弱く、割れたり、剥がれたりする恐れがあった。これに対して、本発明では後記工程(2)においてアンモニアでシリカ微粒子の活性化処理を行なうため、焼成シリカ微粒子表面にも水酸化物イオンをリッチにすることができ、加水分解速度が粒子表面で選択的に加速されるために、従来法ではコーティングが困難であった焼成シリカ微粒子に酸化チタン膜をコーティングできるという利点を有する。
【0012】
工程(1)においては、上記球状粒子をアルコール系溶媒に分散させて球状粒子の分散液を得るが、用いられるアルコール系溶媒は、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールなとの炭素数4〜10の中級アルコールに限定される。その理由は、以下のとおりである。すなわち、チタンアルコキシドはシリコンアルコキシドよりも加水分解速度が速く、仮に溶媒として低級アルコールを用いると、酸化チタンの生成が金属酸化物粒子表面で行なわれる前に溶媒中で酸化チタン粒子を形成しやすい。これに対して、中級アルコールを用いると、チタンアルコキシドの溶媒中の加水分解が抑えられ、金属酸化物粒子表面で優先的に加水分解が起るので、後記工程(3)において形成される酸化チタン膜の膜厚が厚くなる。
【0013】
これらの中級アルコールは直鎖のもの及び分岐のもののいずれでもよく、これら中級アルコールを単独のみならず混合して用いてもよい。また上記の中級アルコールとともに、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールもしくは親水性の有機溶媒、例えばアセトニトリル、THF、DMF、DMSO等を全アルコールに対して少量(例えば20 vol%未満)添加することもできる。
【0014】
次に、工程(2)は、前記工程(1)で得られた球状粒子の分散液にアルカリ水溶液を添加して金属酸化物球状粒子の表面を活性化処理する工程である。この活性化処理は、アルカリが金属酸化物球状粒子の表面に作用することにより、同表面のシラノール基からのプロトン脱離を促進するための処理であり、この活性化処理を行なうことにより、後記の工程(3)において形成される酸化チタン膜と金属酸化物球状粒子との密着性、ひいては得られた酸化チタン膜付き球状粒子における酸化チタン膜を還元処理して得られる部分還元酸化チタン及び/又は窒化チタンからなる黒色膜と球状粒子との密着性が向上し、被覆層の剥離や割れが防止される。特に球状粒子としてシリカを用いた場合、シリカ球状粒子と、その表面に形成される酸化チタン膜とは、シリカと酸化チタンとの収縮率の差が大きいため、焼成処理により、被膜の剥離や割れの問題が懸念されたが、本発明においてこの活性化処理により、これらの問題を解決したことは特筆すべきことである。
【0015】
この活性化処理に用いられるアルカリ水溶液としては、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などのアルカリの水溶液が用いられるが、特にアンモニア水溶液を用いるのが好ましい。
【0016】
次に、工程(3)は、前記工程(2)で得られた金属酸化物球状粒子表面に、TiO2 からなる酸化チタン膜を形成させて酸化チタン膜付き球状粒子を得る工程である。
【0017】
本発明において、この工程(3)は次のように行なわれる。
(i) 先ず金属酸化物球状粒子分散液中のチタンアルコキシドまたはその部分加水分解物を加水分解、脱水・縮合させて金属酸化物球状粒子上に酸化チタン膜を形成する。
チタンのアルコキシドとしては、一般式
Ti(OR)4 又はTi(R′)n (OR)4−n
(式中、RおよびR′はアルキル基もしくはアシル基、特に炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数2〜6個のアシル基であり、nは1〜3の整数である)
で示されるチタンのアルコキシドが挙げられる。
【0018】
またチタンのアルコキシドの部分加水分解物としては、上記一般式で示されるチタンのアルコキシドのアルコキシ基を部分的に加水分解したものが挙げられる。
チタンのアルコキシドまたはその加水分解物の加水分解、脱水・縮合は、通常のゾルゲル法で用いる条件で行なわれる。
【0019】
(ii) 次に、上記(i) で得られた酸化チタン膜付き球状粒子を分散液から分離して中性水中に分散して加熱処理する。
酸化チタン膜付き球状粒子の分離液からの分離方法としてはデカンテーション法、遠心分離法、濾過法などが用いられる。
【0020】
デカンテーション法による分離方法の一例としては、反応液を静置して球状粒子を沈降させた後、容器を傾斜させて上澄み液を取り除き、メタノールなどの低級アルコールを添加して分散させ、再び静置して球状粒子を沈降させた後、容器を傾斜させて洗浄用メタノールを取り除き、次いで純水などの中性水を用いて同じ操作を繰り返した後、容器を傾斜させて洗浄水を取り除き、この水による洗浄操作を数回繰り返し、最後に容器を傾斜させて洗浄水を取り除く方法が挙げられる。
【0021】
遠心分離法による分離方法の一例としては、反応液を遠心機により球状粒子の沈殿と上澄み液に分離し、次いで上澄み液を取り除き、メタノール等の低級アルコールを添加して、超音波処理しながら球状粒子を再分散させ、以後この操作を数回繰り返す方法が挙げられる。この操作の途中でメタノール等のアルコール溶媒から水に置換すれば良い。
【0022】
濾過法による分離方法の一例として、反応液を、オレフィン系もしくはフッ素樹脂系メンブランフィルター(ポア径1〜20μ)を用い、これに加圧もしくは減圧下通過させてフィルター上に球状粒子を捕集し、次いでメタノール等の低級アルコール及び中性水で濾過しながら洗浄する方法が挙げられる。
【0023】
上記のようにして分散液から分離した酸化チタン膜付き球状粒子の中性水中への分散、そして加熱処理は、酸化チタン膜付き球状粒子を純水などの中性水中へ投入し、撹拌した後、50〜90℃で30分〜4時間加熱することにより行なうのが好ましい。この加熱処理により、加水分解が完結され、未反応物の少ない酸化チタン膜が得られる。
【0024】
(iii) 次に、上記(ii)で得られた酸化チタン膜付き球状粒子を中性水から分離した後、乾熱処理する。
この乾熱処理は、例えば150〜250℃の温度で30分〜4時間行なうのが好ましく、これにより酸化チタン膜が緻密化および平滑化される。
上記処理(i) 、(ii)および(iii) を行なうことにより、工程(3)が完結する。
【0025】
本発明の酸化チタン膜付き球状粒子の製造方法においては、前記工程(1)、(2)および(3)を経て得られた緻密化酸化チタン膜付き球状粒子を出発粒子として、前記工程(1)、(2)および(3)を1回または2回以上繰り返し、緻密化酸化チタン膜の厚みを増加させて、目的とする酸化チタン膜付き球状粒子を得る。
【0026】
前記工程(1)、(2)および(3)の繰り返し回数は、1〜4回とするのが好ましい。なお、繰り返して実施される工程(1)、(2)および(3)の具体的内容については、既に説明してあるので、ここでは説明を省略する。
【0027】
本発明の酸化チタン膜付き球状粒子の製造方法によれば、次のような技術的効果が得られる。
(イ)工程(1)において溶媒として中級アルコールを使用したこと、工程(1)、(2)および(3)を繰り返し実施すること等により、膜厚の厚い酸化チタン膜が得られる。
(ロ)工程(3)において水中での加熱処理および乾熱処理を行なったこと等により緻密化かつ表面が平滑化した酸化チタン膜が得られる。
【0028】
このようにして得られた酸化チタン膜付き球状粒子を用いて、下記方法により、液晶表示装置用スペーサーとして用いられる黒色微粒子が製造される。
(a)酸化チタン膜付き球状粒子に絶縁膜を形成した後、還元性及び/又は窒化雰囲気で焼成して酸化チタン膜を黒色化する。
(b)酸化チタン膜付き球状粒子を還元性及び/又は窒化雰囲気で焼成して酸化チタン膜を黒色化した後、絶縁膜を形成する。
【0029】
【作用】
シリカ粒子の表面にチタンアルコキシドの加水分解により酸化チタン膜を形成させる方法においては、チタンアルコキシドの加水分解速度が速いため、酸化チタンの生成がシリカ粒子表面で行なわれる以前に溶媒中で新たな酸化チタン粒子を生成する傾向が大きい。溶媒中での加水分解を抑え、シリカ粒子表面領域でのみ優先的に加水分解反応が進行するように、工程(1)において、低級アルコールを用いたときよりもチタンアルコキシドの加水分解を遅らせる中級アルコールを溶媒として用い、これにシリカ粒子を分散させ、工程(2)において、少量のアルカリ水溶液を添加すると、アルカリがシリカ粒子表面に集まり、表面に水酸基が生成して加水分解反応に対する活性点となる。工程(3)において、これにチタンアルコキシドを添加するとシリカ粒子表面において加水分解反応が進行し、シリカ粒子表面に酸化チタン膜が生成される。この酸化チタン膜は、同じく工程(3)において粒子を中性水中に分散させ加熱処理することにより加水分解が完結される。更に粒子を乾熱処理することにより酸化チタン膜が緻密化され、表面が平滑化される。酸化チタン膜の緻密化、平滑化の効果は、この酸化チタン膜の上に更にチタンアルコキシドの加水分解による酸化チタン膜を重ねるため上記の操作を繰り返す工程でアンモニア水と接触したときに被膜に亀裂が発生して被膜が剥離する現象を防止する。他の効果は被覆後粒子の単分散性を高める(粒径分布のCV値を小さくする)。
【0030】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に説明する。
実施例1(酸化チタン膜付き球状粒子の製造例)
工程(1)
金属酸化物からなる球状粒子として、平均粒子径が4.75μm、CV値(変動係数)が0.95%の単分散シリカ微粒子を用い、アルコール系溶媒としてn−ブタノールを用いて、シリカ微粒子52.8gをn−ブタノール840mlに添加し、30分間超音波照射を行なってシリカ微粒子の分散液を得た。
【0031】
工程(2)
得られたシリカ微粒子の分散液に25%アンモニア水3mlを滴下混合し30℃で1時間撹拌することによりシリカ微粒子の表面を活性化処理した。
【0032】
工程(3)
酸化チタンを形成し得るチタン化合物として、チタンテトラブトキシドを用い、このチタンテトラブトキシド32.4gをn−ブタノール120mlに溶解した溶液を前記工程(2)を経た分散液に10分かけて滴下混合し、30℃で1時間撹拌した。その後、0.5%アンモニア水49mlを2−プロパノール120mlに溶解した溶液を30分かけて滴下した後、反応系を60℃に昇温して2時間撹拌した。反応液を静置して粒子を沈降させた後、デカンテーションにより上澄み液を取り除いた。さらにメタノールで1回、純水で3回デカンテーションを繰り返した後、粒子を純水に分散させて分散液を70℃に昇温し1時間保持して加水分解を完結させ、未反応物のない酸化チタン膜を得た。沈降とデカンテーションにより分散液を純水からメタノールに置換し、メタノールを蒸発させた。
【0033】
次に、酸化チタン膜付きシリカ微粒子を200℃のオーブン中で2時間かけて乾熱処理することにより、酸化チタン膜を緻密化、平滑化させて、緻密かつ表面が平滑な酸化チタン膜を有するシリカ微粒子を得た。得られた酸化チタン膜付きシリカ微粒子の平均粒径は4.85μm、CV値は1.22%であり、酸化チタン膜の膜厚は0.05μmであった。
【0034】
次に、上記工程(1)、(2)および(3)を経て得られた、平均粒子径が4.85μmの単分散状の酸化チタン膜付きシリカ微粒子54gを出発粒子として、工程(1)、(2)および(3)を繰り返した。但し、この繰り返し操作においては、工程(3)において、チタンテトラブトキシド80gをn−ブタノール240mlに溶解して得たチタンテトラブトキシドのn−ブタノール溶液を酸化チタン膜付きシリカ微粒子分散液に添加、混合後、0.5%アンモニア水96mlを2−プロパノール120mlに溶解して滴下した点が最初に行なった工程(3)と異なる。
【0035】
工程(1)、(2)および(3)を繰り返して得られた酸化チタン膜付きシリカ微粒子の平均粒径は5.09μm、CV値は1.35%であり、酸化チタン膜の膜厚は0.17μmであった。
【0036】
得られた酸化チタン膜付きシリカ微粒子のSEM写真を模写した図を図1に示す。図1より本実施例で得られた酸化チタン膜付きシリカ微粒子は、酸化チタン膜の膜厚が厚いにも拘らず、酸化チタン膜の膜剥れが殆んど観察されない。これは酸化チタン膜が、工程(3)における水中での加熱処理および乾熱処理により、緻密化、平滑化されてシリカ微粒子と密着しているからである。
【0037】
比較のため、工程(3)において水中での加熱処理および乾熱処理を行なわなかった以外は上記実施例1と同様にして得た酸化チタン膜付きシリカ微粒子のSEM写真を模写した図を図2に示す。図2より、工程(3)において水中での加熱処理および乾熱処理を行なわずに得られた酸化チタン膜付きシリカ微粒子では酸化チタン膜の緻密性、平滑性に劣り、酸化チタン膜は膜剥れが著しく観察された。
【0038】
また1回目の工程(3)において水中での加熱処理および乾熱処理を行なわずに酸化チタン膜付きシリカ微粒子を得た後、2回目の酸化チタン膜の形成を行なうために工程(2)においてアルカリ水溶液を添加したときの粒子のSEM写真を模写した図を図3に示す。図3より、酸化チタン膜の剥離が著しく、酸化チタン膜が殆んど剥離しているものも認められた。
【0039】
実施例2
上に、実施例1では、酸化チタン膜の形成操作を2回行なったが、本実施例2では酸化チタン膜の形成操作を3回行なった。
酸化チタン膜を形成するための各操作は基本的に実施例1と同様に行なったので、詳しい説明は省略し、用いたシリカ粒子、チタンアルコキシド、溶媒、アルカリ溶液の種類と量および得られた酸化チタン膜付きシリカ粒子の物性を以下に記す。
【0040】
(1)第1回目の酸化チタン膜形成操作
工程(1)
単分散シリカ微粒子 92g
(平均粒径4.97μm,CV値0.98%)
n−ブタノ−ル 500ml
工程(2)
25% アンモニア水 2.3ml
工程(3)
チタンテトラブトキシド 45.9g
n−ブタノ−ル 400ml
0.5% アンモニア水 48.6g
2−プロパノ−ル 169ml
得られた酸化チタン膜付きシリカ粒子の物性
200℃乾燥後の平均粒径 5.11μm
CV値 1.08%
酸化チタン膜厚さ 0.07μm
【0041】
(2)第2回目の酸化チタン膜形成操作
工程(1)
酸化チタン膜付きシリカ微粒子 93.8g
(平均粒径5.11μm,CV値1.08%)
n−ブタノ−ル 500ml
工程(2)
25% アンモニア水 2.3ml
工程(3)
チタンテトラブトキシド 25.0g
n−ブタノ−ル 400ml
0.5% アンモニア水 48.6g
2−プロパノ−ル 169ml
得られた酸化チタン膜付きシリカ微粒子の物性
200℃乾燥後の平均粒径 5.27μm
CV値 1.12%
酸化チタン膜厚さ 0.15μm
【0042】
(3)第3回目の酸化チタン膜形成操作
工程(1)
酸化チタン膜付きシリカ微粒子 90.0g
n−ブタノ−ル 500ml
工程(2)
25% アンモニア水 2.3ml
工程(3)
チタンテトラブトキシド 25.0g
n−ブタノ−ル 400ml
0.5% アンモニア水 48.6g
2−プロパノ−ル 169ml
得られた酸化チタン膜付きシリカ微粒子の物性
200℃乾燥後の平均粒径 5.55μm
CV値 1.19%
酸化チタン膜厚さ 0.29μm
【0043】
このように酸化チタン膜の形成操作を3回行なうことにより、厚さが0.29μmと厚く、かつ緻密なCV値の小さい単分散酸化チタン膜が被覆されたシリカ微粒子が得られた。
【0044】
実施例3(黒色微粒子の製造例)
実施例1で得た酸化チタン膜付き球状粒子を用いて、その主要用途である液晶表示装置用スペーサー(黒色微粒子)を製造した。
【0045】
(A)絶縁膜の形成
(1)平均粒径5.09μm、CV値を1.35%、酸化チタン膜厚0.17μmの酸化チタン膜付きシリカ微粒子54.9gをn−ブタノール400ml中に30分間超音波処理することにより分散させた後、25%アンモニア水1.38mlをn−ブタノール520mlに溶解した溶液を滴下混合し、30℃で60分間撹拌して活性化処理した。次にテトラエトキシシラン24gをイソプロピルアルコール230mlに溶解した溶液を10分間で滴下混合し、30℃で60分間撹拌した。この溶液に25%アンモニア水16.6gをイソプロピルアルコール144mlに溶解した溶液を30分間で滴下して12時間撹拌反応させた。反応液を静置して粒子を沈降させた後、デカンテーションにより上澄み液を取り除き、メタノール、水の順にデカンテーションを繰り返した。得られた絶縁膜付き粒子の平均粒径は5.16μm、CV値は1.35%であった。
【0046】
(2)シリカ絶縁膜の厚みを更に増加させるため、上記(1)で得られた絶縁膜付き粒子の低級アルコール分散液中でシリコンアルコキシドの加水分解反応を次のようにして行なった。
【0047】
すなわち粒径5.16μmの粒子55gをシード粒子として、メタノール1000ml中に30分間の超音波処理により分散させ、これに電解質としてメタノールに溶解する第4級アンモニウム塩であるテトラブチルアンモニウムテトラフロロほう酸塩((C4 H9 )4 NBF4 )1.93gを添加した。この分散液にメタノール778mlと25%アンモニア水836gを加えて60分間撹拌し、次にテトラエトキシシラン71.1gを20分間で添加してからさらに30℃で12時間撹拌した。反応液を静置して粒子を沈降させ新たに生成した微小粒子を含む上層液部分をデカンテーションにより分級除去した。更に純水を加えてデカンテーションを繰り返した。このようにして平均粒径5.30μm、CV値1.52%の絶縁膜付き粒子を得た。
【0048】
(3)上記(2)で得られた粒径5.30μmの絶縁膜付き粒子をシード粒子として(2)と同様の操作を更に2回繰り返して最終的に、シリカ微粒子上の酸化チタン膜とこれをさらに被覆するシリカ絶縁膜からなる三層構造をもつ平均粒径が5.84μm、CV値1.70%の粒子を得た。最外層のシリカ絶縁膜の厚みは0.38μmである。
【0049】
(B)還元処理による酸化チタン膜の黒色化
得られたシリカ、酸化チタン、シリカの三層構造をもつ乾燥粒子のうち40gを石英ガラス製ボートに入れ、これを、両端にガス導入口と排出口を設けた内径40mmの石英ガラスチューブの炉芯管内に置き、窒素ガスにより炉芯管内の酸素をパージした。ついで窒素ガスを1リットル/分の流量で炉内に導入しながら炉の温度を1時間で200℃まで昇温し、つぎに水素ガスに切り替えて1リットル/分の流量で流しながら3時間で900℃まで昇温し、5時間保持した後、4時間かけて500℃まで降温した時点で再び窒素ガスに切り替えて同じ流量で流しながら4時間かけて室温まで降温した。得られた黒色粒子の平均粒径は5.59μmであり変動係数(CV値)は1.9%であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、緻密かつ平滑で膜厚の厚い酸化チタン膜を有する球状粒子が得られる。この酸化チタン膜付き球状粒子は液晶表示装置用スペーサーとして用いられる黒色微粒子の製造に好ましく用いられる。またこの酸化チタン膜付き球状粒子は異方導電膜等などに使用可能な導電性微粒子に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた酸化チタン膜付き球状粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真を模写した図
【図2】比較品の酸化チタン膜付き球状粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真を模写した図
【図3】他の比較品の酸化チタン膜付き球状粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真を模写した図
Claims (6)
- (1)金属酸化物からなる球状粒子を中級アルコールを主体とするアルコール系溶媒に分散して球状粒子の分散液を得る工程と、
(2)前記分散液にアルカリ水溶液を添加して金属酸化物球状粒子の表面を活性化処理する工程と、
(3)金属酸化物球状粒子表面に、TiO2 からなる酸化チタン膜を形成させて酸化チタン膜付き球状粒子を得る工程と、
を含み、
前記工程(3)が、金属酸化物球状粒子分散液中のチタンアルコキシドまたはその部分加水分解物を加水分解、脱水・縮合させて金属酸化物球状粒子上に酸化チタン膜を形成させ、得られた酸化チタン膜付き球状粒子を分散液から分離して中性水中に分散させて加熱処理した後、中性水から分離した酸化チタン膜付き球状粒子を乾熱処理することにより行なわれ、
更に前記工程(3)で得られた酸化チタン膜付き球状粒子を出発粒子として前記工程(1),(2)および(3)を1回または2回以上繰り返すことを特徴とする酸化チタン膜付き球状粒子の製造方法。 - 工程(1)で用いる中級アルコールが炭素数4〜10の中級アルコールである、請求項1に記載の方法。
- 工程(2)で用いるアルカリ水溶液がアンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液である、請求項1に記載の方法。
- 工程(3)における中性水中での加熱処理が、純水中で50〜90℃の温度で行なわれる、請求項1に記載の方法。
- 工程(3)における乾熱処理が150〜250℃の温度で行なわれる、請求項1に記載の方法。
- 工程(1),工程(2)および工程(3)を経て得られた酸化チタン膜付き球状粒子を出発粒子として工程(1),工程(2)および工程(3)を1〜4回繰り返す、請求項1に記載の方法。
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