本発明は液晶表示素子に係り、特に、ガラス基板に代えて可撓性フィルムが適用され、電子手帳、パーソナルコンピータ等に使用される液晶表示素子の改良に関するものである。
液晶表示素子は、片面に電極と配向膜を有しその配向膜を内側にして対向配置された一対の基板と、これ等基板間に封入された液晶物質とでその主要部が構成されている。そして、従来の液晶表示素子では、その基板としてガラス基板が用いられていた。この理由として、液晶表示素子の製造プロセス中に250℃〜300℃に達する工程があり、基板の耐熱性の点からガラスが選ばれていた。
しかし、近年においては製造プロセスの低温化が可能となり、これに伴って基板もガラスから軽くて薄いプラスチックフィルムが用いられるようになった。
ところで、ガラス基板に代えてプラスチックフィルムが用いられるようになると、プラスチックフィルムはガラス基板に較べてそのガス遮断性、水蒸気遮断性等が十分でないため、液晶注入工程時や高温保存時の気泡の発生に起因した表示素子欠陥、表示性能が低下するなどの問題が発生し易かった。
そこで、これ等の問題を解決するために、PVA(ポリビニルアルコール)フィルム、EVA(エチレンビニルアルコール共重合体)フィルム等のガスバリアー性フィルムを基材であるプラスチックフィルムと貼りあわせた複合フィルムが適用されたり(特許文献1、特許文献2等参照)、プラスチックフィルム基材の電極側とは反対側の面(すなわち外層)に20nm以上の金属酸化物薄膜を形成したもの(特許文献2)等が適用されている。
特開昭64−90418号公報
特開平4−208925号公報
特開平2ー304417号公報
しかし、前者のものはバリアー層が有機高分子であるため高温多湿での気泡浸入が起きたり、熱膨張係数が相違する異種フィルムを接着剤等で貼り合わせて成る複合フィルムがカールしたり変形する等の問題があった。また、後者のものは、バリアー層として金属酸化物薄膜をプラスチックフィルム基材の外層に用いているが、金属酸化物薄膜の成膜時にこの薄膜にピンホールやクラック等が生じ易くそのガス遮断性、水蒸気遮断性が未だ十分ではないため、表示素子欠陥、表示性能等を向上させる上で改善の余地を有していた。
本発明はこの様な問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、表示素子自体の変形や表示素子欠陥等が起こり難くしかも表示性能の向上が図れる液晶表示素子を提供することにある。
すなわち、請求項1に係る発明は、プラスチックフィルムの片面に電極と配向膜を有しその配向膜を内側にして対向配置された一対のプラスチック基板と、これ等プラスチック基板間に封入された液晶物質とを備え、かつ、上記プラスチック基板の少なくとも一方の電極が透明である液晶表示素子を前提とし、上記プラスチックフィルムの少なくとも片面に、無機薄膜層と、金属アルコキシド若しくはその加水分解物又は塩化錫の少なくとも1種を有するコーティング層設けられており、コーティング層上に電極が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項2に係る発明は、プラスチックフィルムの片面に電極と配向膜を有しその配向膜を内側にして対向配置された一対のプラスチック基板と、これ等プラスチック基板間に封入された液晶物質とを備え、かつ、上記プラスチック基板の少なくとも一方の電極が透明である液晶表示素子を前提とし、上記プラスチックフィルムの少なくとも片面に、無機薄膜層と、金属アルコキシド若しくはその加水分解物又は塩化錫の少なくとも1種を有するコーティング層設けられており、プラスチックフィルム層上に電極が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項3に係る発明は、請求項1の発明において、プラスチックフィルムの一方の面に無機薄膜層、金属アルコキシド若しくはその加水分解物又は塩化錫の少なくとも1種を有するコーティング層が設けられており、もう一方の面に無機薄膜層、金属アルコキシド若しくはその加水分解物又は塩化錫の少なくとも1種を有するコーティング層、電極が形成されていることを特徴とするものである。
そして、この発明に係る液晶表示素子においては、金属アルコキシド若しくはその加水分解物又は塩化錫の少なくとも1種を有するコーティング層が、成膜の際に無機薄膜層に生じたピンホール、クラック、粒界等の欠陥や微細孔を充填しかつ補強するためプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性がより大幅に改善される。
尚、上記金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン及びポリイソプロポキシアルミニウムより選択された1種又は2種の混合体が適用された場合、これ等テトラエトキシシラン及びポリイソプロポキシアルミニウムは、加水分解後、水系の溶媒中で比較的安定なため、塗工後におけるコーティング層が無機薄膜層とハイブリッド化し易くなり、この結果、プラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性がより改善される利点を有する。
また、バインダー、及び、金属アルコキシド若しくはその加水分解物又は塩化錫の少なくとも1種を有する水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を主成分とするコーティング剤を塗布・乾燥して上記コーティング層が形成されていることを特徴とする。
そして、この発明に係る液晶表示素子においては、上記コーティング層が蒸着等のドライプロセスや各種ウエットプロセスと異なり塗布等の一般的手段により形成されているため、製造プロセスの簡便化が図れる。
また、上記コーティング層に含まれるバインダーとしてポリビニルアルコールが適用された場合、このポリビニルアルコールは金属アルコキシド又は塩化錫との相溶性がよいため、形成されるコーティング層のガス遮断性と水蒸気遮断性に優れており、上記無機薄膜層と作用し合ってプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が更に大幅に改善される利点を有する。
次に、請求項4〜7に係る発明は、ポリシラザン前駆体等にて形成される無機高分子被膜を上記無機薄膜層に代えてあるいは無機薄膜層と組合わせて適用した液晶表示素子に関する。
すなわち、請求項4に係る液晶表示素子によれば、プラスチックフィルムの片面に電極と配向膜を有しその配向膜を内側にして対向配置された一対のプラスチック基板と、これ等プラスチック基板間に封入された液晶物質とを備え、かつ、上記プラスチック基板の少なくとも一方の電極が透明であり、少なくとも一方の電極がパターン加工されてなる液晶表示素子において、上記プラスチックフィルムが、無機薄膜層と、無機高分子層が設けられており、かつ該コーティング層面に電極が形成されていることを特徴とするものである。請求項5に係る発明は、プラスチックフィルムの片面に電極と配向膜を有しその配向膜を内側にして対向配置された一対のプラスチック基板と、これ等プラスチック基板間に封入された液晶物質とを備え、かつ、上記プラスチック基板の少なくとも一方の電極が透明であり、少なくとも一方の電極がパターン加工されてなる液晶表示素子において、上記プラスチックフィルムが、少なくとも無機薄膜層と、無機高分子層が設けられており、かつ該プラスチックフィルム面に電極が形成されていることを特徴とするものである。請求項6に係る発明は、請求項4においてプラスチックフィルムの一方の面に無機薄膜層、無機高分子層が設けられており、もう一方の面に無機薄膜層、無機高分子層、電極が形成されていることを特徴とするものである。請求項7に係る発明は、請求項4〜6において前記無機高分子層がポリシラザン前駆体若しくはこの変性体又はこれ等の混合体を含有する塗布液を加熱若しくは低温プラズマ処理し上記ポリシラザン前駆体若しくはこの変性体又はこれ等の混合体を硬化・重合させて形成した酸化ケイ素系若しくは窒化ケイ素系又はこれ等の混合系から成る無機高分子であることを特徴とするものである。
そして、これ等発明に係る液晶表示素子によれば、プラスチックフィルムの少なくとも片面に設けられポリシラザン前駆体等にて形成される無機高分子被膜が、従来の酸化珪素等無機薄膜層に較べてそのガス遮断性と水蒸気遮断性が共に優れているため、無機高分子被膜が単体で適用された場合でもプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が従来より改善され、また、無機薄膜層と組合わせて適用された場合にはプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が更に大幅に改善される。
本発明によれば、酸化珪素等の無機薄膜層が基材となるプラスチックフィルムの電極側に設けられており、電極を構成する被膜と無機薄膜層が作用し合って両者の成膜時に生じたピンホールやクラック等を相互に充填し合うため、プラスチックフィルム基材の電極側とは反対側の面(すなわち外層)に金属酸化物薄膜が形成された従来の液晶表示素子に較べてプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が改善され、この結果、液晶表示素子自体の変形や表示素子欠陥が起こり難くしかも表示性能の向上が図れる効果を有している。
また、上記無機薄膜層が多層で若しくは透明樹脂層を介し多層で構成されているためプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が更に改善される。また、上記無機薄膜層と共に、金属アルコキシド若しくはその加水分解物又は塩化錫の少なくとも1種を有するコーティング層が重ねて設けられているためプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が更に改善される。
また、上記無機薄膜層に較べてそのガス遮断性と水蒸気遮断性が優れた無機高分子被膜を単体あるいは無機薄膜層と共に重ねて設けられているため、プラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が向上しその表示性能の改善が図れる効果を有する。
以下本発明を図面を参照して更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る液晶表示素子の一構成例を示す模式図である。
1,11は基材としてのプラスチックフィルムであり、例えば一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリサルフォンフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリカーボネートフィルム、セルローストリアセテートフィルム等が適用される。プラスチックフィルム1,11の内面には表示電極用の透明電極2,21が形成されている。
この透明電極としては、In2O3、SnがドープされたIn2O3(ITO)、AlがドープされたZnO、SnO2等のいずれでもよく、光線透過率と比抵抗値の要求に応じて25nm〜200nmの範囲の膜厚に設定することが望ましい。25nmより低いと比抵抗値が高くなり表示用電極としては問題があり、また200nm大きくなると比抵抗値は低くなり、電極としての性能は向上するがやや着色を呈するので好ましくない。
また、これらの透明電極2,21の形成方法としては、公知の真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が利用できる。
更に、上記透明電極2,21上には配向膜3,31が形成されており配向処理が施されている。
プラスチックフィルム1,11の外面(電極が形成される面とは反対側の面)には必要に応じて多層構造を有する無機薄膜層4,41が設けられている。
また、プラスチックフィルム1,11と透明電極2,21間にも無機薄膜層4,41が形成されている。
この無機薄膜層を構成する無機薄膜材料としては、アルミニウム、マグネシウム、珪素、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、インジウム、錫等の酸化物、それらの炭化物、それらの窒化物等から選ばれるものが用いられる。また、二種以上の材料が混合され又は積層されたものでもよい。この場合、一層がこれら無機薄膜材料で構成されているならばプラスチック基板のガス遮断性等の特性は具備されることになるため、その他の層は樹脂等の有機層で構成されていてもよい。この場合の樹脂としては、請求項3に係る発明において透明樹脂層として適用される酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、ノルマルヘキサン、メチルアルコール等の脂肪族若しくは芳香族性のエステル、ケトン、アルコール等の有機溶媒に溶解可能な各種ポリエステル、ポリウルタン、塩化ビニル、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン塩化ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂,ポリ尿素、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂等が利用でき、更に、ポリビニルアルコール、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等の水系可溶性の合成若しくは天然高分子樹脂を用いることも出来る。
また、上記無機薄膜層の厚みとしては、例えば10nm〜200nmの範囲に設定される。10nm未満になると本来の機能であるガスバリアー性(ガス遮断性)が不十分になり、液晶セル内にガスが浸入し気泡が発生して液晶表示素子の性能が劣化してしまうことがある。また、200nmを越えると無機薄膜層内の応力によりクラックが発生し、基材であるプラスチックフィルムから無機薄膜層の剥がれ、脱落を引き起こしてしまうことがある。
尚、上記無機薄膜層の層数については原則として1層で十分であるが、ガス遮断性と水蒸気遮断性の両方についてより高い特性が要求される液晶表示素子に適用される場合には多層構造にすることが好ましく、より好ましくは異種材料から成る多層構造にすることが望ましい。例えば、酸化アルミニウム薄膜(AlOx:X=1〜1.5)と酸化マグネシウム薄膜(MgO)をそれぞれ10nm、50nmの膜厚で順次形成したり、酸化珪素(SiOx:0<X≦2)薄膜と酸化マグネシウム薄膜(MgO)をそれぞれ20nm、50nmの膜厚で順次形成する方法等が挙げられる。
また、上記の無機薄膜層の形成方法としては、上述した透明電極の形成に適用される真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の他に公知の化学的気相成長法(CVD法)が利用でき、更に転写等の他の方法を排除するものではない。
ここで、上記無機薄膜層4,41は図1に示すようにプラスチックフィルム1,11の両面に設けるのが最も好ましいが、目的とする液晶表示素子の特性に対応させてプラスチックフィルム1,11の電極側片面にのみ設ける構造にしても当然のことながらよい。
また、透明電極2,21上にPVAをスピンコート後、110℃で乾燥し、約50nmの配向膜3,31を形成する。もちろん、他の形成方法を適用しても本発明の要旨を損なうものではない。すなわち、スピンコート以外のディップコート、L.B法、蒸着法等の形成方法の適用が可能で、かつ、配向膜の一般的な厚みは数百Å〜数千Å(例えば400〜2000Å)に設定される。また、配向膜を構成する材料としては、上述したPVAに加えて、例えば、ポリエチレン、ナイロン66、ナイロン69、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリイミド、パリレンポラキシレン、ポリシクロヘキシルメタクリレート、架橋ナイロン、ポリビニルメチルケトン、ポリビニルシンナメート、ポリアセタール、ポリベンジルメタクリレート、ポリブレン等の高分子配向材料が挙げられる。
次に、液晶5を注入し、封止剤6で封止する。この場合、実際には封止剤6を、一部を除いて形成した後に液晶5を注入し、最終的な封を行うのが一般的であるが、他の方法であっても本発明の要旨を損なうものではなく、その封止剤6の材質、形成方法等を各種変更実施しても本発明の要旨を損なうものではない。
最後に最外層に偏光板7,71を積層してプラスチックフィルム液晶表示素子を形成した。ここで、上記偏光板7,71の構成材料としてはPVA−ヨウ素系やPVA−染料系材料が例示され、構造的には上記PVA−ヨウ素系材料若しくはPVA−染料系材料を、コーティング法により例えば三酢酸セルロースでサンドイッチした厚さ500μm程度の積層体が一般的である。もちろん、他の材料並びに形成方法の適用は可能であり、かつ、その厚みについても本発明に係る封止性能に直接関連しないためいかなる厚みであってもよい。
尚、複数の無機薄膜層を重ねて形成する際、各無機薄膜層間に介在させる透明樹脂層を構成す透明樹脂としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、ノルマルヘキサン、メチルアルコール等の脂肪族若しくは芳香族性のエステル、ケトン、アルコール等の有機溶媒に溶解可能な各種ポリエステル、ポリウルタン、塩化ビニル、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン塩化ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂,ポリ尿素、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂等が利用できる。また、ポリビニルアルコール、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等の水系可溶性の合成若しくは天然高分子樹脂を用いることも出来る。
次に、酸化珪素等の無機薄膜層と共に設けられるコーティング層は、金属アルコキシド若しくはその加水分解物又は塩化錫の少なくとも1種を有する被膜から成るもので、この被膜については、バインダー(水溶液高分子)と塩化錫を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、或いはこれに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させる処理を行ったものを混合した溶液を、上記プラスチックフィルム上に若しくはこの上に設けられた無機薄膜層上にコーティングし、かつ加熱乾燥させて形成することができる。
また、コーティング方法については特に制限はなく、スピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、スプレー法など公知の方法を利用できる。
上記バインダー(水溶液高分子)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが例示される。特に、ポリビニルアルコールを本発明に係るバインダーとして用いた場合効果が大きい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全けん化PVAまでを含み特に限定されない。
また、塩化錫は塩化第一錫(SnCl2)、塩化第2錫(SnCl4)或いはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
他方、金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムなどの一般式M(OR)n(n=1〜4、M:Si、Ti、Al、Zr等の金属、R:CH3、C2H5等のアルキル基)で表せるものである。中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定なため好ましい。
更に、コーティング層の補強のために、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンイソシアネートなどのモノマーとこれらの誘導体からなるイソシアネート化合物を適宜添加したり、公知の分散剤、粘度調整剤を添加してもいっこうにかまわない。
また、コーティング層の膜厚としては0.01〜100μmが例示され、好ましくは1.0〜50μmである。50μmより厚くなるとコーティング層がカールを起こしたり、製造後の乾燥時にクラックが発生したりする場合がある。
次に、上記無機薄膜層と共にあるいは単体で適用される無機高分子薄膜については、主鎖にSi−Nを、側鎖に水素又はアルキル基を有する構造(SiHlNm)nで代表されるポリシラザンの前駆体若しくはこの変性体又はこれ等の混合体を含有する塗布液を加熱若しくは低温プラズマ処理し、上記ポリシラザン前駆体若しくはこの変性体又はこれ等の混合体を硬化・重合させて形成した酸化ケイ素系若しくは窒化ケイ素系又はこれ等の混合系から成る無機高分子が挙げられ、これに加えてH3Si(NHSiH2)nNHSiH3で示されるケイ素化合物又はその誘導体を含有する塗布液を加熱・乾燥させて形成した酸化ケイ素系若しくは窒化ケイ素系又はこれ等の混合系から成る無機高分子等についても適用可能である。また、上記酸化ケイ素系若しくは窒化ケイ素系又はこれ等の混合系から成る無機高分子を加熱・酸化処理して酸化ケイ素に転化させ、この酸化ケイ素により上記無機高分子薄膜を構成してもよい。この場合、酸化ケイ素系若しくは窒化ケイ素系又はこれ等の混合系から成る無機高分子に較べて化学的安定性が増すためガス遮断性がより長期に亘って劣化し難い利点を有する。
また、上記ポリシラザン前駆体若しくはこの変性体又はこれ等の混合体や、上記H3Si(NHSiH2)nNHSiH3で示されるケイ素化合物又はその誘導体を溶解若しくは分散させる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロキシフラン、塩化メチレン、四塩化炭素等から選ばれた単一成分あるいは混合溶媒が適用される。
尚、上記塗布液の塗布方式としては、公知の塗布方法が適用でき特に限定されるものではない。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等が挙げられる。
また、ポリシラザン前駆体若しくはこの変性体又はこれ等の混合体を含有する塗布液を加熱処理して無機高分子被膜を形成する場合、上記塗布液を塗布した後、100℃〜300℃、好ましくは120℃〜250℃で硬化処理することが望ましい。他方、低温プラズマ処理により無機高分子被膜を形成する場合、水素を数パーセント含む窒素、または、酸素のいずれか一方若しくは両方の成分を含むガスにより発生された公知のプラズマ処理が施され、このプラズマ処理によりポリシラザン前駆体若しくはこの変性体又はこれ等の混合体が硬化・重合されて酸化ケイ素系若しくは窒化ケイ素系又はこれ等の混合系から成る上記無機高分子被膜が形成される。尚、上記プラズマについては、上述したガスにより数Torr〜1×10−4Torr程度の真空度に維持された密閉系内に公知の電極若しくは導波管を配置し、直流、交流、ラジオ波あるいはマイクロ波等の電力を上記電極若しくは導波管を介して印加することにより任意のプラズマを発生させることができる。そして、発生されたプラズマのガス濃度の違いにより硬化・重合後におけるポリシラザン前駆体若しくはこの変性体又はこれ等の混合体の構造が、酸化ケイ素系若しくは窒化ケイ素系又はこれ等の混合系と様々な無機高分子となるが、本発明では特に問題はない。
また、上記無機高分子被膜の膜厚については、0.01μm〜5.0μmの範囲、特に、0.05μm〜1μmの範囲が好ましい。0.01μm未満であると形成される無機高分子被膜の機能が不十分となりガス遮断性等の改善が十分図れなくなることがあり、他方、5μmを越えるとポリシラザン前駆体若しくはこの変性体又はこれ等の混合体が加熱されあるいはプラズマ処理されて無機高分子被膜が形成される際、体積収縮に伴う塗膜の割れや脱落が生じて良好な無機高分子被膜が形成されない場合があるからである。
尚、本発明における液晶物質は、実施例において適用された通常の液晶の他に、強誘電性高分子液晶等他の液晶物質をプラスチックで挟んだものでも本発明の要旨を外れないものである。
本発明によれば、酸化珪素等の無機薄膜層が基材となるプラスチックフィルムの電極側に設けられており、電極を構成する被膜と無機薄膜層が作用し合って両者の成膜時に生じたピンホールやクラック等を相互に充填し合うため、プラスチックフィルム基材の電極側とは反対側の面(すなわち外層)に金属酸化物薄膜が形成された従来の液晶表示素子に較べてプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が改善され、この結果、液晶表示素子自体の変形や表示素子欠陥が起こり難くしかも表示性能の向上を図ることが可能となる。
また、上記無機薄膜層が多層で若しくは透明樹脂層を介し多層で構成されているためプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が更に改善され、表示性能の改善が図れる。また、上記無機薄膜層と共に、金属アルコキシド若しくはその加水分解物又は塩化錫の少なくとも1種を有するコーティング層が重ねて設けられているためプラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が更に改善され、表示性能の改善が図れる。
また、上記無機薄膜層に較べてそのガス遮断性と水蒸気遮断性が優れた無機高分子被膜を単体あるいは無機薄膜層と共に重ねて設けられているため、プラスチック基板のガス遮断性と水蒸気遮断性が向上しその表示性能の改善が図れる。
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
<参考例1>
基材としてのプラスチックフィルム1,11に100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)を適用し、これ等プラスチックフィルム1,11の片面にDCスパッタリング法により厚さ50nmのITO膜2,21を形成すると共に、その反対側面に電子線加熱法による真空蒸着により厚さ10nmの酸化珪素、厚さ50nmの酸化マグネシウムをそれぞれ形成し無機薄膜層4,41とした(図2参照)。
このようにして得たプラスチックフィルム基板の酸素透過度、水蒸気透過度を測定したところ、それぞれ0.1(cm3/m2・day・atm)、0.1(g/m2・day)以下であり、ガス遮断性が優れていた。
次に、上記ITO膜2,21をフォトリソグラフィー法によりパターン加工して表示電極とした。
更に、配向剤としてPVAをスピンコート法により塗工し約50nmの配向膜3,31を形成した後、ラビング処理を施した。
次に、一方のプラスチック基板(上記配向膜31が設けられたプラスチックフィルム11)にギャップ材8として粒径6.5μmのプラスチックビーズを分散させた。
他方のプラスチック基板にはエポキシ系接着剤からなる封止剤6をスクリーン印刷法により印刷し、両方のプラスチック基板を貼り合わせ85℃−1時間で封止材を硬化させ、液晶セルを得た。
この液晶セル内にネマチック(E7 メルク社製)液晶5を真空封止方式で注入した。
最後に上記無機薄膜層4,41上に偏光板7,71を貼り付けてプラスチックフィルムを基材とする液晶表示素子を完成させた。
このように得られた液晶表示素子を80℃90%RHの高温放置に24時間放置後、高温動作試験の信頼性試験を実施したところ、液晶セル内への気泡の侵入、外観不良はなく液晶駆動(表示性能)の劣化はなく、信頼性の高いプラスチックフィルム液晶表示素子が得られた。
尚、以下の表1に『気泡侵入』、『外観』及び『表示性能』の評価点数を挙げると共に(5が最良で1が最悪の評価を示す)、総合評価を『評価』の欄において、◎、○、×で示す。
<参考例2>
基材としてのプラスチックフィルム1,11に100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)を適用し、これ等プラスチックフィルム1,11の両面に電子線加熱法による真空蒸着により厚さ50nmの酸化マグネシウムから成る無機薄膜層4,41をそれぞれ形成した。
次に、一方のプラスチックフィルム11に設けられた無機薄膜層41上に電極パターンを形成したマスクを密着させ該マスク上からDCスパッタリング法により厚さ50nmのITO膜をパターン状に成膜し透明電極を形成した。
また、他方のプラスチックフィルム1に設けられた無機薄膜層4上には、通常のDCスパッタリング法により全面にITO膜を形成した。この場合、液晶表示方式としてX−Yマトリックス方式を採用したときには両方のITO膜をパターンニングする必要があるが、X−Yマトリックス方式以外も本発明では可能である。
以下、参考例1と同様に試験を行った。
酸素透過度、水蒸気透過度それぞれ0.1(cm3/m2・day・atm)、0.1(g/m2・day)であり、ガスバリアー性も優れていた。
高温多湿保存試験後の液晶セル内への気泡の侵入、液晶表示の劣化もなく、良好な液晶表示素子が得られた。
尚、表1に評価結果を示す。
<参考例3>
基材としてのプラスチックフィルムに80μmのポリカーボネートフィルムを用い、かつ、参考例2と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例4>
基材としてのポリエステルフィルムの両面に25nmの酸化アルミニウムと50nmの酸化マグネシウムをそれぞれ成膜して二層構造にした以外は参考例1と同様であり、実施例1と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例5>
基材としてのポリエステルフィルムの片面に、厚さ30nmの酸化珪素11と厚さ2μmのポリビニルアルコール樹脂層9と厚さ30nmの酸化珪素11から成る多層膜(図3参照)が成膜された以外は参考例1と同様であり、参考例1と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例6>
基材としてポリエステルフィルムを適用すると共に、このフィルムの電極側に厚さ50nmの酸化マグネシウムから成る無機薄膜層が成膜されている以外は参考例1と同様であり、参考例1と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例7>
厚さ50nmの酸化マグネシウムに代えて、厚さ50nmの酸化珪素が適用されている点を除き参考例2と同様であり、参考例2と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例8>
基材としてのプラスチックフィルムに100μmの一軸延伸ポリエーテルサルフォンフィルムを用い、かつ、この両面に厚さ40nmの酸化珪素が適用されている点を除き参考例7と同様であり、参考例7と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例9>
基材としてのプラスチックフィルムに80μmのポリカーボネートフィルムが適用され、かつ、このフィルムの電極側とは反対側の面に厚さ50nmの酸化マグネシウムと厚さ25nmの酸化アルミニウムから成る二層構造の無機薄膜層が設けられている点を除き、参考例4と同様であり、参考例4と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例10>
ポリカーボネートフィルムの両面に厚さ50nmの酸化マグネシウムと厚さ25nmの酸化アルミニウムから成る二層構造の無機薄膜層がそれぞれ設けられている点を除き、参考例9と同様であり、参考例9と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例11>
ポリカーボネートフィルムの電極側片面に厚さ25nmの酸化アルミニウムと厚さ50nmの酸化マグネシウムから成る二層構造の無機薄膜層が設けられている点を除き、参考例9と同様であり、参考例9と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例12>
ポリエステルフィルムの電極側片面に厚さ30nmの酸化珪素と厚さ2μmのポリビニルアルコール樹脂層と厚さ30nmの酸化珪素から成る多層膜が成膜された以外は参考例5と同様であり、参考例5と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
<参考例13>
ポリエステルフィルムの両面に厚さ30nmの酸化珪素と厚さ2μmのポリビニルアルコール樹脂層と厚さ30nmの酸化珪素から成る多層膜がそれぞれ設けられている点を除き、参考例5と同様であり、参考例5と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
図4を用いて以下詳細に説明する。
基材としてのプラスチックフィルム1,11に100μmのポリエーテルサルホンフィルムを用い、かつ、これ等プラスチックフィルム1,11の電極側片面に電子線加熱方法による真空蒸着により厚さ40nmの酸化珪素から成る無機薄膜層4,41を成膜した。次に、各無機薄膜層4,41上に以下に示す(A液)を乾燥後の厚みが1μmになるようにロールコート法によりコーティングして透明のコーティング層12,121を形成し、かつ、これ等の上にDCスパッタリング法により厚さ50nmのITO膜2,21を形成した。
このようにして得たプラスチック基材の酸素透過度、水蒸気透過度をそれぞれ測定したところ、0.1(cm3/m2・day・atm)、0.1(g/m2・day)でありガス遮断性が優れていた。
次に、上記ITO膜2,21をフォトリソグラフィー法によりパターン加工して表示電極とした。
更に、上記表示電極上に配向剤としてポリイミドをスピンコート法により塗工し約50nmの配向膜3,31を形成した後、ラビング処理を施した。
次に、一方のプラスチック基板(配向膜31が設けられたプラスチックフィルム11)にギャップ剤8として粒経6.5μmのプラスチックビーズを分散させた。
他方のプラスチック基板にはエポキシ系接着剤からなる封止剤6をスクリーン印刷法により印刷し、両方のプラスチック基板を貼り合わせ85℃−1時間で封止材を硬化させ、液晶セルを得た。
この液晶セル内にネマチック(E7:メルク社製)液晶5を真空封止方式で注入した。
最後に上記無機薄膜層4,41上に偏光板7,71を貼り付けて図4に示すような液晶表示素子を完成させた。
以下、参考例1と同様な試験を行った。その評価結果を表2に示す。
基材としてのプラスチックフィルム1,11に100μmのポリエーテルサルホンフィルムを用い、かつ、これ等プラスチックフィルム1,11の電極側とは反対の面に電子線加熱方法による真空蒸着により厚さ25nmの酸化アルミニウムから成る無機薄膜層4,41を成膜すると共に、上記プラスチックフィルム1の反対側の面には通常のDCスパッタリング法によりITO膜2を50nm形成した。また、上記プラスチックフィルム11の反対側の面には電極パターンの開口部を有するマスクを介してDCスパッタリング法により厚さ50nmのITO膜21を成膜し透明電極を形成した。
次に、上記プラスチックフィルム1,11の各無機薄膜層4,41上に以下に示す(B液)を乾燥後の厚みが1μmになるようにロールコート法によりコーティングして透明のコーティング層12,121を形成し、かつ、実施例1と同様な工程により図5に示すような液晶表示素子を得た。
以下、参考例1と同様な試験を行ったところ、酸素透過度、水蒸気透過度はそれぞれ0.1(cm3/m2・day・atm)、0.1(g/m2・day)でありガスバリアー性も優れていた。また、高温多湿保存試験後の液晶セル内への気泡の侵入、液晶表示の劣化もなく、良好な液晶表示素子が得られた。
尚、表2にその評価結果を示す。
下記の(C液)を用いてコーティング層が形成されている点を除き実施例1と同様の構造であり、かつ実施例1と同様に試験した。
そして、高温多湿保存試験後の液晶セル内の気泡の侵入、液晶表示の劣化もなく、良好な液晶表示素子が得られた。
尚、表2にその評価結果を示す。
ポリエーテルサルフォンフィルムから成るプラスチックフィルム1,11の両面に、厚さ20nmの酸化アルミニウムと厚さ30nmの酸化珪素から成る2層構造の無機薄膜層4,41及び下記の(B液)を用いたコーティング層12,121をそれぞれ設け、かつ実施例1と同様にして図6に示す液晶表示素子を得た。そして参考例1と同様な試験を実施した。表2にその評価結果を示す。
厚さ25nmの酸化アルミニウムに代えて厚さ50nmの酸化錫(SnOx:0<x≦2)から成る無機薄膜層が設けられている点を除き実施例2と同様であり、実施例2と同様の試験を行った。その評価結果を表2に示す。
厚さ25nmの酸化アルミニウムに代えて厚さ50nmの酸化マグネシウム(MgOx:0<x≦2)から成る無機薄膜層が設けられている点を除き実施例2と同様であり、かつ、実施例2と同様の試験を行った。その評価結果を表2に示す。
100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)の電極側の片面に、厚さ20nmの酸化アルミニウムから成る無機薄膜層と、下記の(B液)を用いてコーティング層が形成されている点を除き実施例1と同様の構造であり、かつ、実施例1と同様に試験した。その評価結果を表2に示す。
厚さ20nmの酸化アルミニウムに代えて厚さ50nmの酸化錫から成る無機薄膜層が設けられている点を除き実施例7と同様の構造であり、かつ、実施例7と同様に試験した。その評価結果を表2に示す。
厚さ20nmの酸化アルミニウムに代えて厚さ50nmの酸化マグネシウムから成る無機薄膜層が設けられている点を除き実施例7と同様の構造であり、かつ、実施例7と同様に試験した。その評価結果を表2に示す。
100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)の電極側の片面に、厚さ40nmの酸化珪素から成る無機薄膜層と、下記の(A液)を用いてコーティング層が形成されている点を除き実施例1と同様の構造であり、かつ、実施例1と同様に試験した。その評価結果を表2に示す。
下記の(A液)に代えて下記(C液)を用いてコーティング層が設けられている点を除き実施例10と同様の構造であり、かつ、実施例10と同様に試験した。その評価結果を表2に示す。
100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)の電極側とは反対の面に、下記の(B液)を用いたコーティング層と厚さ20nmの酸化アルミニウムから成る無機薄膜層が形成されている点を除き実施例2と同様の構造であり、かつ、実施例2と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
厚さ20nmの酸化アルミニウムに代えて厚さ50nmの酸化錫から成る無機薄膜層が設けられている点を除き実施例12と同様の構造であり、かつ、実施例12と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
厚さ20nmの酸化アルミニウムに代えて厚さ50nmの酸化マグネシウムから成る無機薄膜層が設けられている点を除き実施例12と同様の構造であり、かつ、実施例12と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)の電極側とは反対の面に、下記の(A液)を用いたコーティング層と厚さ40nmの酸化珪素から成る無機薄膜層が形成されている点を除き実施例2と同様の構造であり、かつ、実施例2と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
下記の(A液)に代えて下記(C液)を用いてコーティング層が設けられている点を除き実施例15と同様の構造であり、かつ、実施例15と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
ポリエステルフィルムに対する無機薄膜層とコーティング層の形成順位が逆である点を除き実施例12と同様の構造であり、かつ、実施例12と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
ポリエステルフィルムに対する無機薄膜層とコーティング層の形成順位が逆である点を除き実施例13と同様の構造であり、かつ、実施例13と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
ポリエステルフィルムに対する無機薄膜層とコーティング層の形成順位が逆である点を除き実施例14と同様の構造であり、かつ、実施例14と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
ポリエステルフィルムに対する無機薄膜層とコーティング層の形成順位が逆である点を除き実施例15と同様の構造であり、かつ、実施例15と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
ポリエステルフィルムに対する無機薄膜層とコーティング層の形成順位が逆である点を除き実施例16と同様の構造であり、かつ、実施例16と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)の両面に、厚さ20nmの酸化アルミニウムから成る無機薄膜層と下記の(B液)を用いてコーティング層がそれぞれ形成されている点を除き実施例4と同様の構造であり、かつ、実施例4と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
厚さ20nmの酸化アルミニウムに代えて厚さ50nmの酸化錫から成る無機薄膜層が設けられている点を除き実施例22と同様の構造であり、かつ、実施例22と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
厚さ20nmの酸化アルミニウムに代えて厚さ50nmの酸化マグネシウムから成る無機薄膜層が設けられている点を除き実施例22と同様の構造であり、かつ、実施例22と同様に試験した。その評価結果を表3に示す。
100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)の両面に、厚さ40nmの酸化珪素から成る無機薄膜層と下記の(A液)を用いてコーティング層がそれぞれ形成されている点を除き実施例22と同様の構造であり、かつ、実施例22と同様に試験した。その評価結果を表4に示す。
下記の(A液)に代えて下記(C液)を用いてコーティング層が設けられている点を除き実施例25と同様の構造であり、かつ、実施例25と同様に試験した。その評価結果を表4に示す。
「コーティング層を構成するコーティング剤の組成」各実施例で適用されたコーティング剤の組成は以下の通りである。
(A液) 以下の(1)/(2) の配合比 60/40重量%
(B液) 以下の(1)/(2)/(3)の配合比 40/30/30重量%
(C液) 以下の(1)/(2)/(3)の配合比 40/30/30重量%
但し、〜は以下の溶液をそれぞれ示している。
(1):テトラエトキシシラン10.4gに0.1Nの塩酸89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形物3重量%(SiO2 換算)の加水分解溶液
(2):ポリビニルアルコール3.0重量%の水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比=90:10)
(3):塩化第1錫(無水物)の3重量%の水/エタノール溶液(水:エタノール重量比=50:50)
(4):塩化第2錫(無水物)の3重量%の水溶液
(5):ポリビニルアルコール3重量%の水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比=90:10)
基材としてのプラスチックフィルムに100μmの一軸延伸ポリエーテルサルホンフィルムを用い、かつ、これ等プラスチックフィルムの電極側片面に真空蒸着法により厚さ50nmの酸化マグネシウムから成る無機薄膜層を形成すると共に、この上にポリシラザンから成る厚さ1μmの無機高分子被膜を形成した。
すなわち、トルエン/キシレン(1:1)にて希釈されたポリシラザン前駆体[東燃(株)社製 ポリシラザン「TNL−100」20重量%]を上記無機薄膜層上にロールコート法により塗布し、かつ、120℃で10分間乾燥させて乾燥後の膜厚が1μmの無機高分子被膜を形成した。
次に、この無機高分子被膜上にDCスパッタリング法により厚さ100nmのITO膜を形成した。
このようにして得たプラスチック基材の酸素透過度、水蒸気透過度をそれぞれ測定したところ、0.1(cm3/m2・day・atm)、0.1(g/m2・day)以下でありガス遮断性が優れていた。
次に、上記ITO膜をフォトリソグラフィー法によりパターン加工して表示電極とした。
更に、上記表示電極上に配向剤としてPVAをスピンコート法により塗工し約50nmの配向膜を形成した後、ラビング処理を施した。
次に、一方のプラスチック基板にギャップ剤として粒経6.5μmのプラスチックビーズを分散させた。
他方のプラスチック基板にはエポキシ系接着剤からなる封止剤をスクリーン印刷法により印刷し、両方のプラスチック基板を貼り合わせ85℃−1時間で封止材を硬化させ、液晶セルを得た。
この液晶セル内にネマチック(E7:メルク社製)液晶を真空封止方式で注入した。
最後にプラスチックフィルムの電極側とは反対の面に偏光板を貼り付けて液晶表示素子を完成させた。
このように得られた液晶表示素子を80℃90%RHの高温放置に24時間放置後、高温動作試験の信頼性試験を実施したところ、液晶セル内への気泡の侵入、外観不良はなく液晶駆動(表示性能)の劣化はなく、信頼性の高いプラスチックフィルム液晶表示素子が得られた。
尚、表4に評価結果を示す。
ポリエーテルサルフォンフィルムから成るプラスチックフィルムの電極側とは反対の面に厚さ25nmの酸化アルミニウムから成る無機薄膜層を形成し、かつ、この無機薄膜層上に実施例27で適用したポリシラザン前駆体[東燃(株)社製 ポリシラザン「TNL−100」20重量%]を同様の方法によりコーティングして厚さ1μmの無機高分子被膜が形成されている点を除き実施例27と同様の液晶表示素子を製造し、かつ、同様の試験を行った。
その結果を表4に示す。
<参考例14> ポリエーテルサルフォンからなるプラスチックフィルムの電極側片面に酸化マグネシウムから成る無機薄膜層を設けることなく上記ポリシラザンからなる厚さ1μmの無機高分子被膜が形成されている点を除き実施例27と同様の液晶表示素子を製造し、かつ、同様の試験を行った。
その評価結果を表4に示す。
基材としてのプラスチックフィルムに100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)を適用すると共に、このフィルムの電極側片面に厚さ25nmの酸化アルミニウムから成る無機薄膜層と上記ポリシラザンから成る厚さ1μmの無機高分子被膜が形成されている点を除き実施例27と同様の液晶表示素子を製造し、かつ、同様の試験を行った。
その評価結果を表4に示す。
基材としてのプラスチックフィルムに100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)を適用すると共に、このフィルムの電極側とは反対の面に厚さ1μmの上記ポリシラザンから成る無機高分子被膜と厚さ40nmの酸化珪素から成る無機薄膜層が形成されている点を除き実施例27と同様の液晶表示素子を製造し、かつ、同様の試験を行った。
その評価結果を表4に示す。
ポリエステルフィルムに対する無機高分子被膜と無機薄膜層の形成順位が逆である点を除き実施例31と同様の構造であり、かつ、実施例31と同様に試験した。その評価結果を表4に示す。
基材としてのプラスチックフィルムに100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)を適用すると共に、このフィルムの電極側とは反対の面に上記ポリシラザンから成る厚さ1μmの無機高分子被膜と厚さ40nmの酸化珪素から成る無機薄膜層と同じくポリシラザンから成る厚さ1μmの無機高分子被膜が形成されている点を除き実施例27と同様の液晶表示素子を製造し、かつ、同様の試験を行った。
その評価結果を表4に示す。
基材としてのプラスチックフィルムに100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)を適用すると共に、このフィルムの両面に厚さ40nmの酸化珪素から成る無機薄膜層と上記ポリシラザンから成る厚さ1μmの無機高分子被膜がそれぞれ成膜されている点を除き実施例27と同様の液晶表示素子を製造し、かつ、同様の試験を行った。
その評価結果を表4に示す。
<比較例1>
基材としてのプラスチックフィルム1,11に100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)を用い、かつ、これ等プラスチックフィルム1,11の片面にDCスパッタリング法により厚さ100nmのITO膜2,21を形成した。
次に、上記ITO膜2,21をフォトリソグラフィー法によりパターン加工して表示電極とした。
更に、上記表示電極上に配向剤としてPVAをスピンコート法により塗工し約50nmの配向膜3,31を形成した後、ラビング処理を施した。
次に、一方のプラスチック基板(上記配向膜31が設けられたプラスチックフィルム11)にギャップ材8として粒径6.5μmのプラスチックビーズを分散させた。
他方のプラスチック基板にはエポキシ系接着剤からなる封止剤6をスクリーン印刷法により印刷し、両方のプラスチック基板を貼り合わせ85℃−1時間で封止材を硬化させ、液晶セルを得た。
この液晶セル内にネマチック(E7 メルク社製)液晶5を真空封止方式で注入した。
最後に上記プラスチックフィルム1,11の電極側とは反対の面に偏光板7,71を貼り付けてプラスチックフィルムを基材とする液晶表示素子を完成させた(図7参照)。
このように得られた液晶表示素子を80℃90%RHの高温放置に24時間放置後、液晶セル内への気泡の侵入を確認したところ、部分的に気泡が侵入しかつ液晶表示の劣化が生じていた。
尚、評価結果を表4に示す。
<比較例2>
基材としてのプラスチックフィルムに100μmの一軸延伸ポリエーテルサルホンフィルムが適用されている点を除き比較例1と同様の液晶表示素子を製造し、かつ、同様の試験を行った。
その評価結果を表4に示す。
<比較例3>
基材としてのプラスチックフィルムに100μmの一軸延伸ポリエーテルサルホンフィルムが適用され、かつ、このフィルムの電極側片面にエポキシ系接着剤を介して厚さ100μmのポリビニルアルコールフィルム(PVA)が貼り合されている点を除き比較例1と同様の液晶表示素子を製造し、かつ、同様の試験を行った。その評価結果を表4に示す。尚、この液晶表示素子はフィルムの積層に起因してカールが発生し液晶表示性能がよくなかった。
<比較例4>
基材としてのプラスチックフィルムに100μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエステルフィルム)を適用すると共に、このフィルムの電極側とは反対の面に厚さ50nmの酸化マグネシウムから成る無機薄膜層が設けられている点を除き比較例1と同様の液晶表示素子を製造し、かつ、同様の試験を行った。
その評価結果を表4に示す。
(確認)
上記表1〜表3及び以下に示す表4の結果から比較例に係る液晶表示素子に較べ、各実施例に係る液晶表示素子はカール等が発生せず、かつ、液晶セル内への気泡の侵入も起こり難く、更に液晶の表示性能が大幅に改善されていることが確認できる。
本発明に係る液晶表示素子の一構成例を示す模式図(断面図)。
参考例1に係る液晶表示素子の断面図。
参考例5においてフィルムの片面に設けられた多層膜の構成断面図。
実施例1に係る液晶表示素子の断面図。
実施例2に係る液晶表示素子の断面図。
実施例4に係る液晶表示素子の断面図。
比較例1に係る液晶表示素子の断面図。
符号の説明
1,11 プラスチックフィルム
2,21 透明電極(ITO膜)
3,31 配向膜
4,41 無機薄膜層
5 液晶
6 封止剤
7,71 偏光板
8 ギャップ材