JP3612989B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各色成分画像が形成される複数の画像形成ユニットを並列配置した所謂タンデム型の画像形成装置に係り、特に、各画像形成ユニットの配列方向に沿って少なくとも一対の張架ロールに掛け渡されて循環搬送される搬送ベルトを配設し、この搬送ベルトに記録材を吸着保持して搬送する画像形成装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来この種のタンデム型の画像形成装置としては、例えば水平方向に沿う用紙搬送路に対して複数の画像形成ユニット(例えば電子写真方式を採用)を配設し、用紙搬送路に沿って移動する用紙に前記各画像形成ユニットから順次トナー像を転写させ、用紙上に各色トナー像が重合されたカラー画像を形成するようにした所謂タンデム型と称されるものが知られている(例えば特開平5−53412号公報)。
【0003】
この種の画像形成装置においては、カラーレジストレーションを良好に保つという観点から、各画像形成ユニット毎の各色トナー像の転写ポイントに対し、用紙を安定搬送することが必要不可欠である。
このような要請下において、従来にあっては、一定速度で回転移動する無端状の搬送ベルトを複数の張架ロールに掛け渡すと共に、各画像形成ユニットの感光体ドラム等の像担持体に前記搬送ベルトを対向配置し、この搬送ベルトに用紙を静電吸着させることにより、安定した用紙走行を得ることを実現している。
このような搬送ベルトを用いたベルト搬送方式にあっては、搬送ベルトに用紙を静電吸着させるために、最上流画像形成ユニットの上流側に位置する搬送ベルト表面に金属製の吸着ロールを圧接配置すると共に、この吸着ロールに対向する搬送ベルトの裏面側にはコロトロン等のコロナ放電デバイスを対向配置し、吸着ロールと搬送ベルトとの間に用紙を通過させることで、用紙の静電吸着を安定して行わせる技術が既に提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この種の用紙吸着方式にあっては、コロトロン等のコロナ放電デバイス(高圧電源を使用)という高額部品が必要になり、その分、コストアップを引き起こすという根本的な技術的課題を含んでいる。
これに対し、低価格な用紙吸着方式としては、搬送ベルトの上流側ベルト張架ロールに対向する搬送ベルト表面に吸着ロールを圧接配置し、この吸着ロールに対し所定の吸着バイアスを印加するという技術が提供されている(例えば特開平8−87145号公報参照)。
【0005】
しかしながら、この種の用紙吸着方式にあっては、吸着ロールに吸着バイアスを印加しているが、ベルト張架ロールがフロート状態にあるため、吸着ロールに対向する対向電極が明確に存在するとは言えず、吸着ロールからの電荷注入(又は放電)が発生し難く、用紙に対する電荷付与が不均一になり易い。
このため、各画像形成ユニットからのトナー像を用紙に転写すると、転写ムラが生じ易いという技術的課題が見られた。
【0006】
このような技術的課題を解決する手段として、ベルト張架ロールを接地することで、当該ベルト張架ロールを吸着ロールの対向電極として機能させるようにすることが考えられるが、本発明者等の実験によれば、このような方式を採用したとしても、完全に転写ムラを防止するには未だ不充分であることが判明した。
【0007】
そこで、本件出願人は、吸着手段として、搬送ベルトの張架ロールのうち、最上流画像形成ユニットの上流側に位置する張架ロールと、この張架ロールに対向した搬送ベルト上に圧接配置される吸着ロールとを具備させ、前記張架ロールには転写バイアスと同極性の吸着バイアスを印加する一方、前記吸着ロールを直接若しくは高抵抗体を介して接地する技術を既に提案した(特願平9−260922号)。
【0008】
ところが、この種のタイプにあっても、用紙吸着位置と第一番目の転写位置との間が40mm程度の小型タンデム型の画像形成装置では、特に、高温多湿環境下で用紙及び用紙搬送ベルトの抵抗が低下すると、第一番目の転写位置から上記接地された吸着ロールを介して転写電流の漏れが生じ、ベタ画像等で転写不良が生じるという新たな技術的課題が見出された。
【0009】
本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、搬送ベルトへの記録材の吸着性能を良好に保ち、かつ、第一番目の転写位置における転写不良を確実に回避できるようにした画像形成装置を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、図1に示すように、各色成分画像が形成される複数の画像形成ユニット1(例えば1a〜1d)を並列配置し、各画像形成ユニット1の配列方向に沿って少なくとも一対の張架ロール3,4に掛け渡されて循環搬送される搬送ベルト2を配設すると共に、各画像形成ユニット1に対向する搬送ベルト2の裏面側に夫々転写バイアスが印加される転写手段5を配設し、吸着手段7にて搬送ベルト2上に記録材6を吸着保持し、この記録材6に対し各画像形成ユニット1で形成された各色成分画像を順次転写するようにした画像形成装置において、前記吸着手段7として、搬送ベルト2の張架ロール3,4のうち、最上流画像形成ユニット1aの上流側に位置する張架ロール3には転写手段5へ印加される転写バイアスVTB(転写バイアス印加手段10にて印加)と同極性の吸着バイアスVABを吸着バイアス印加手段11にて印加する一方、この張架ロール3に対向した搬送ベルト2上には少なくとも絶縁層9を介して接地される吸着部材8を圧接配置すると共に、この吸着部材8の絶縁層9部分には前記吸着バイアスVABと逆極性で略同電圧の逆極性吸着バイアス−VABが印加される電荷付与手段12を接触配置したことを特徴とするものである。
【0011】
このような技術的手段において、本発明が適用される画像形成装置としては、各色成分画像を形成する複数の画像形成ユニット1を並列配置し、記録材6に各色成分画像を順次重ね転写する所謂タンデム型であればよく、各画像形成ユニット1の配列方向が横配列、縦配列のいずれをも対象とする。
ここで、各画像形成ユニット1を横配列する態様にあっては、搬送ベルト2を水平方向に沿って配設しなければならず、搬送ベルト2の自重による撓みを有効に回避するという観点から、張架ロール3,4に対して搬送ベルト2をある程度高い張力で引張することが必要である。
これに対し、各画像形成ユニットを縦配列する態様にあっては、搬送ベルト2を鉛直方向に配設することになるため、搬送ベルト2の張力をそれ程高く設定しなくても、搬送ベルト2の記録材6の搬送面を鉛直方向に沿わせることが可能になる。このため、搬送ベルト2に対する駆動負荷を低減しながら、記録材6を安定搬送する点で好ましい。
特に、搬送ベルト2を鉛直方向に配設する態様では、上部側の張架ロールを駆動部とし、搬送ベルト2の記録材搬送面側を積極的に張るようにすることが好ましい。
【0012】
また、画像形成ユニット1としては、各色成分毎の画像(トナー像等)を形成するものであれば適宜選定して差し支えなく、電子写真方式、静電転写方式を採用する態様であれば、像担持体上に静電潜像を書き込み、この静電潜像を各色成分トナーにて可視像化するものであれば適宜選定して差し支えない。
ここで、像担持体としては、少なくともトナー像を担持し得るものであればよく、潜像書き込み手段の種類に応じて感光体、誘電体等の適宜材料を選定して差し支えなく、また、その形態についてもドラム状、ベルト状を問わない。
【0013】
更に、搬送ベルト2としては、記録材6を静電吸着させ得るものであれば、ゴム、樹脂など適宜選定して差し支えないが、転写手段5から吸着部材8への漏れ電流を極力少なくするという観点からすれば、転写性能を損なわない範囲で、搬送ベルト2にある程度の高抵抗層(例えば10〜1012Ω・cm)を設けることが好ましい。
そして、搬送ベルト2の張架方法ついては、少なくとも2つの張架ロール3,4を用い、一方を駆動ロールとし、他方を従動ロールとして機能させるようにすればよいが、必要に応じて、他の張架ロールを付加することができる。
この場合において、付加した張架ロールについては、単なる従動ロールでもよいし、張力付与用のテンションロールであってもよいし、あるいは、搬送ベルト2の蛇行補正用のステアリングロールであってもよく、適宜選定して差し支えない。
【0014】
更にまた、転写手段5としては、転写コロトロン等のようなデバイスで差し支えないが、記録材6を安定的に搬送するという観点からすれば、例えば電子写真方式、静電転写方式の画像形成ユニット1を用いた態様にあっては、像担持体に搬送ベルト2を介して圧接配置されて回転する転写ロールであることが好ましい。
【0015】
また、吸着手段7を構成する吸着部材8としては、少なくとも絶縁層9を介して接地されていればどのような構成であってもよく、構成部材数が単一、複数のいずれをも含み、また、その形態についても、ロール状部材、シート状部材等適宜選定して差し支えない。
ここで、吸着部材8を単一部材で構成する例としては、導電性部材の表面に絶縁層を被覆した絶縁性部材にて構成する態様が挙げられ、また、吸着部材8を複数部材で構成する例としては、搬送ベルト2に圧接配置される導電性部材と、この導電性部材に接触配置され且つ接地される絶縁性部材とで構成する態様が挙げられる。
そして、本発明では、絶縁層9の抵抗値としては、搬送ベルト2自体の抵抗値との関係によって左右されるが、第一番目の転写位置からの転写電流の漏れ量が許容される範囲で、通常1010Ω・cm〜1016Ω・cmの範囲の中から適宜選定される。
【0016】
また、吸着バイアスVABの印加タイミングについては、搬送ベルト2への記録材6の吸着動作を有効に行える範囲で適宜選定して差し支えないが、搬送ベルト2に不必要な電荷が貯留される事態を有効に回避するという観点からすれば、吸着バイアス印加手段11として、記録材6が最下流画像形成ユニット1dの転写領域を通過した段階で吸着バイアスVABの印加動作を停止するものであることが好ましい。
更に、吸着バイアス印加手段11としては、通常転写バイアス印加手段10と別個に設けられるものであるが、装置構成の簡略化という観点からすれば、吸着バイアス印加手段11が転写手段5に印加される転写バイアス印加手段10の少なくともいずれか一つを兼用するようにしてもよい。
【0017】
更にまた、電荷付与手段12については、電荷を付与する機能部材と、これに逆極性吸着バイアス−VABを印加するバイアス印加手段とを備えたものであれば適宜選定して差し支えない。
ここで、電荷を付与する機能部材としては、導電性ロール、導電性ブラシ等適宜選定して差し支えなく、また、バイアス印加手段としては吸着バイアス印加手段11と別個に設けてもよいが、例えば極性反転機構を付加して吸着バイアス印加手段11などを兼用するようにしてもよい。
【0018】
次に、上述した技術的手段の作用について説明する。
図1において、吸着部材8は少なくとも絶縁層9を介して接地されており、張架ロール3には転写手段5へ印加される転写バイアスVTBと同極性の吸着バイアスVABが吸着バイアス印加手段11にて印加される一方、吸着部材8の絶縁層9部分には電荷付与手段12にて逆極性吸着バイアス−VABが印加される。
今、記録材6が吸着部材8に突入したと仮定すると、吸着バイアスVABにより記録材6の裏面(搬送ベルト2の裏面)に例えば+電荷が誘起され、一方、逆極性吸着バイアス−VABにより絶縁層9を通じて吸着部材8の表面に例えば−電荷が付与される。
そして、吸着部材8は、順次張架ロール3の対向位置、言い換えれば記録材6の表面に−電荷を運び、吸着バイアスVABによる記録材6の裏面へ運ばれた+電荷と共に記録材6を搬送ベルト2に静電吸着させる。
【0019】
更に、記録材6が第一番目の転写位置に突入した際には、例えば高湿高温環境下などで記録材6の抵抗低下が大きいと仮定すると、転写手段5→搬送ベルト2→記録材6までは電流が流れようとするが、吸着部材8が絶縁層9を介して接地されているため、吸着部材8を介して電流を流すことができず、転写電流の漏れ量は極めて少なく抑えられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2はこの発明が適用されたカラー画像形成装置の実施の形態1を示す。
同図において、カラー画像形成装置は、本体ハウジング21内に4つの色(本実施の形態ではもブラック、イエロ、マゼンタ、シアン)の画像形成ユニット22(具体的には22a〜22d)を縦方向に配列し、その下方には供給用の用紙が収容される給紙カセット23を配設すると共に、各画像形成ユニット22に対応した箇所には給紙カセット23からの用紙(図示せず)の搬送路となる用紙搬送路24を垂直方向に配置したものである。
【0021】
本実施の形態において、画像形成ユニット22(22a〜22d)は、用紙搬送路24の上流側から順に、ブラック用、イエロ用、マゼンタ用、シアン用のトナー像を形成するものであり、感光体カートリッジ30と、露光ユニット40とを備えている。
ここで、感光体カートリッジ30は、例えば感光体ドラム31と、この感光体ドラム31を予め帯電する帯電ロール32と、帯電された感光体ドラム31上に前記露光ユニット40にて露光形成された静電潜像を対応する色トナー(本実施の形態では例えば負極性)で現像する現像器33と、感光体ドラム31上の残留トナーを除去するクリーナ34とを一体的にカートリッジ化したものである。
一方、露光ユニット40は、ケース41内に図示外の半導体レーザ、ポリゴンミラー42、結像レンズ43及びミラー44を格納し、図示外の半導体レーザからの光をポリゴンミラー42で偏向走査し、結像レンズ43、ミラー44を介して感光体ドラム31上の露光ポイントに光像を導くようにしたものである。
【0022】
更に、本実施の形態では、図2及び図3に示すように、各画像形成ユニット22の各感光体ドラム31に対応した箇所には用紙搬送路24に沿って循環移動する用紙搬送ベルト80が配設されている。
この用紙搬送ベルト80は用紙25を静電吸着し得るベルト素材(ゴム又は樹脂)にて構成されており、その表面に10〜1012Ω・cm程度の高抵抗コート層(図示せず)を形成したものである。
そして、この用紙搬送ベルト80は一対の金属製の張架ロール81,82に掛け渡されており、本実施の形態では、上方側の張架ロール82が駆動ロール、下方側の張架ロール81が従動ロールになっている。
【0023】
更にまた、各画像形成ユニット22の感光体ドラム31に対応した用紙搬送ベルト80の裏面側には転写ロール50(本例では10〜10Ω・cm)が配設されており、この転写ロール50と感光体ドラム31とで用紙搬送ベルト80上の用紙25をニップ保持するようになっている。そして、転写ロール50には転写バイアス電源51が接続されており、所定の転写バイアスVTB(本例では例えば正極性で、+700V)がスイッチ52を介して適宜タイミングで印加されるようになっている。
【0024】
また、本実施の形態では、給紙カセット23には用紙25を所定のタイミングで送出する給紙ロール61が設けられており、給紙ロール61と最上流画像形成ユニット22aの転写部位との間に位置する用紙搬送路24には用紙送出用の送出ロール62が設けられている。
更に、最下流画像形成ユニット22dの下流側に位置する用紙搬送路24には定着装置64が設け、この定着装置64の下流側には用紙排出用の排出ロール66が設けられており、本体ハウジング21の上部に形成された収容トレイ67に排出用紙が収容されるようになっている。尚、図2中、符号65は用紙搬送ベルト80から送出された用紙25を定着装置64に案内する用紙ガイドである。
【0025】
特に、本実施の形態では、図3及び図4に示すように、用紙搬送ベルト80の入口部位に用紙吸着装置90が配設されている。
この用紙吸着装置90は、用紙搬送ベルト80の用紙搬送路24の入口側の張架ロール81に対応した箇所に吸着ロール91を圧接配置すると共に、張架ロール81には吸着バイアス電源92を接続し、転写バイアスVTBと同極性の吸着バイアスVAB(本例では+1000V)をスイッチ93を介して適宜タイミングで印加する一方、前記吸着ロール91を接地するようにしたものである。
【0026】
ここで、前記吸着ロール91は、接地されている導電性の金属シャフト911を発泡ウレタン層(本例では10Ω・cm)912で被覆し、更にその表面を絶縁層913(本例ではPVdF(1015Ω・cm)を使用)で被覆した、絶縁ロールとして構成されている。
更に、本実施の形態では、前記吸着ロール91には金属ロールからなる電荷付与ロール94が接触配置されており、この電荷付与ロール94には逆極性吸着バイアス電源95が接続され、吸着バイアスVABと逆極性で同電位の逆極性吸着バイアス−VAB(本例では−1000V)がスイッチ93に連動するスイッチ96を介して適宜タイミングで印加されるようになっている。
【0027】
更に、本実施の形態では、図3に示すように、最下流画像形成ユニット22dの転写部位の下流側には用紙25が通過したことを検知する用紙通過センサ97(例えば光学式センサやリミットスイッチ等を使用)が配設されており、前記スイッチ93は、画像形成ジョブ(画像形成枚数1枚あるいは複数枚ジョブ)の開始時に例えば給紙ロール61の動作タイミングに同期してオン動作し、画像形成ジョブの最終用紙が前記用紙通過センサ97を通過した時点でオフするようになっている。
【0028】
次に、本実施の形態に係るカラー画像形成装置の作動について説明する。
図2及び図3において、先ず、画像形成枚数を指定し、図示外の画像形成スタートスイッチを押圧操作すると、給紙カセット23内の用紙25は、給紙ロール61で送り出された後に、送出ロール62にてニップ搬送されて用紙吸着装置90に到達する。
このとき、用紙吸着装置90では、図3〜図5に示すように、画像形成ジョブの最初の用紙25が送出されるタイミングでスイッチ93及びスイッチ96がオン動作し、張架ロール81に吸着バイアスVAB(正極性電圧)が印加され、一方、電荷付与ロール94に逆極性吸着バイアス−VAB(負極性電圧)が印加される。
【0029】
この状態において、張架ロール81に吸着バイアスVABが印加されると、用紙25裏面(用紙搬送ベルト80裏面)には+電荷101が誘起される。
一方、電荷付与ロール94に逆極性吸着バイアス−VABが印加されると、電荷付与ロール94から吸着ロール91表面に−電荷102が付与される。
このため、用紙吸着装置90の吸着ロール91と張架ロール81との間のニップ部に用紙25が突入すると、吸着ロール91は順次張架ロール81の対向位置へ−電荷102を運び、張架ロール81側の+電荷101とにより用紙25の表裏面に夫々−電荷102、+電荷101を均一に付与する。この結果、用紙25が用紙搬送ベルト80に静電吸着される。
【0030】
そして、このように静電吸着された用紙25は、用紙搬送ベルト80によって搬送され、各画像形成ユニット22(22a〜22d)の転写部位を順次通過すると、感光体ドラム31上の各色成分トナー像は転写ロール50による転写電界によって用紙25上に順次転写される。
このとき、用紙25の先端が第一番目の画像形成ユニット22aの転写位置に突入する際には、例えば高温高湿環境下などにおいて用紙25の抵抗が極端に低下すると、図6に示すように、転写ロール50→用紙搬送ベルト80→用紙25までは電流が流れやすくなるが、吸着ロール91が絶縁ロールとして構成されているため、吸着ロール91の金属シャフト911(接地)または電荷付与ロール94を介して電流を流すことができず、用紙吸着装置90部位からの電流漏れは有効に抑止される。
【0031】
この後、用紙25の先端部が定着装置64に突入して通過し終わると、未定着トナー像が定着された用紙25は排出ロール66を通じて収容トレイ67へと排出される。
尚、画像形成ジョブの最終用紙25が用紙通過センサ97を通過すると、スイッチ93がオフ動作し、用紙吸着装置90への吸着バイアスVABの印加が停止され、用紙搬送ベルト80上の残留電荷は図示外の除電部材を介して放出される。このような画像形成過程において、用紙搬送ベルト80への用紙25の吸着性能は良好に保たれ、しかも、用紙25には転写不良のない良好なカラー画像が得られた。
【0032】
また、このような用紙吸着動作過程において、吸着ロール91の絶縁性と漏れ電流、ロール表面電位との関係を図7に示す実験モデルで確認した。
同図において、実験モデルは、第一番目の転写ロール50位置に相当する箇所から入力電流Iin(本例では3μA)を注入し、転写ロール50と吸着ロール91との中心間距離dと、そのときの吸着ロール91の出力電流Iout(μA)、出力電圧Vout(kV)との関係を絶縁層913の抵抗値をパラメータ(本例では10,10,1011Ω・cmの3態様)として調べるようにしたものである。
ここで、図8は転写ロール50と吸着ロール91との中心間距離dと、そのときの吸着ロール91の出力電流Iout(μA)との関係を示し、また、図9は転写ロール50と吸着ロール91との中心間距離dと、そのときの吸着ロール91の出力電圧Vout(kV)との関係を示す結果である。
【0033】
図8によれば、吸着ロール91の絶縁層913の抵抗値が大きくなるに従って出力電流Iout(漏れ電流に相当)が小さくなることが把握され、この絶縁層913の抵抗値を十分に大きく設定すれば、たとえ距離dが接近したとしても、漏れ電流が抑止されることがわかる。
また、図9によれば、吸着ロール91の絶縁層913の抵抗値が大きくなるに従って出力電圧Voutが小さくなることが把握され、この絶縁層913の抵抗値を十分に大きく設定すれば、たとえ距離dが接近したとしても、吸着ロール91の表面電位は極めて小さいレベルで安定していることがわかる。
このため、吸着ロール91に対して電荷付与ロール94による電荷付与を行った場合、吸着ロール91の表面には電荷が均一に付与されることが容易に理解される。
【0034】
◎実施の形態2
図10は本発明が適用された画像形成装置の実施の形態2で用いられる用紙吸着装置90を示す。
同図において、用紙吸着装置90の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なり、一つの絶縁ロールからなる吸着ロール91に代えて、用紙搬送ベルト80に金属ロールからなる導電性吸着ロール111を圧接配置し、この導電性吸着ロール111に絶縁ロールからなる絶縁性吸着ロール112(本例では、金属シャフト113を発泡ウレタン層114(例えば10Ω・cm)で被覆すると共に、その表面を絶縁層115(例えば10Ω・cmのPVdFを使用)で被覆したものを使用)を接触配置し、絶縁性吸着ロール112の金属シャフト113を接地すると共に、絶縁性吸着ロール112に電荷付与ロール94を接触配置したものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様の符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
【0035】
従って、本実施の形態によれば、用紙吸着装置90の導電性吸着ロール111と張架ロール81との間のニップ部に用紙25が突入すると、張架ロール81には吸着バイアスVAB(正極性電圧)が印加され、一方、絶縁性吸着ロール112には逆極性吸着バイアス−VAB(負極性電圧)が印加され、導電性吸着ロール111へと付与されるため、導電性吸着ロール111は順次張架ロール81の対向位置へ−電荷102を運び、張架ロール81側の+電荷101とにより用紙25の表裏面に夫々−電荷102、+電荷101を均一に付与する。この結果、用紙25が用紙搬送ベルト80に静電吸着される。
【0036】
また、用紙25の先端が第一番目の画像形成ユニット22aの転写位置に突入する際には、例えば高温高湿環境下などにおいて用紙25の抵抗が極端に低下すると、図10に示すように、転写ロール50→用紙搬送ベルト80→用紙25→導電性吸着ロール111までは電流が流れやすくなるが、絶縁性吸着ロール112が絶縁ロールとして構成されているため、絶縁性吸着ロール112の金属シャフト113(接地)または電荷付与ロール94を介して電流を流すことができず、用紙吸着装置90部位からの電流漏れは有効に抑止される。
【0037】
従って、本実施の形態においても、たとえ第一番目の転写位置と用紙吸着位置との間の距離が接近したとしても、用紙搬送ベルト80への用紙25の吸着性能は良好に保たれ、しかも、用紙25には転写不良のない良好なカラー画像が得られることが確認された。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、搬送ベルトの張架ロールに対向する搬送ベルト表面に吸着部材を圧接配置し、前記張架ロールには転写バイアスと同極性の吸着バイアスを印加する一方、前記吸着部材を少なくとも絶縁層を介して接地すると共に、吸着部材の絶縁層部分には逆極性吸着バイアスを印加するようにしたため、記録材の両側から極性の異なる電荷を積極的に与え、記録材への静電吸着力を確実に確保することができることは勿論のこと、絶縁層にて漏れ電流経路を遮断することで、吸着部材を介しての第一番目の転写位置からの転写電流の漏れ量を少なく抑えることができ、安定した転写電流を確保できる。
このため、搬送ベルトへの記録材の吸着性能を良好に保ち、かつ、第一番目の転写位置における転写不良を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図3】実施の形態1で用いられる用紙吸着デバイスの概要を示す説明図である。
【図4】図3の用紙吸着デバイスの詳細を示す説明図である。
【図5】実施の形態1において用紙吸着デバイスへ用紙が突入した際の作用を示す説明図である。
【図6】実施の形態1において第一番目の転写位置に用紙が突入した際の作用を示す説明図である。
【図7】実施の形態1における転写電流の漏れ実験モデルを示す説明図である。
【図8】図7において、転写電流の入力位置から吸着ロール位置までの距離と吸着ロールの漏れ電流との関係を絶縁層の抵抗値をパラメータとして調べたグラフ図である。
【図9】図7において、転写電流の入力位置から吸着ロール位置までの距離と吸着ロールの電圧値との関係を絶縁層の抵抗値をパラメータとして調べたグラフ図である。
【図10】実施の形態2に係る画像形成装置の用紙吸着デバイスを示す説明図である。
【符号の説明】
1(1a〜1d)…画像形成ユニット,2…搬送ベルト,3,4…張架ロール,5…転写手段,6…記録材,7…吸着手段,8…吸着部材,9…絶縁層,10…転写バイアス印加手段,11…吸着バイアス印加手段,12…電荷付与手段,VAB…吸着バイアス,VTB…転写バイアス,−VAB…逆極性吸着バイアス,22(22a〜22d)…画像形成ユニット,25…用紙,50…転写ロール,51…転写バイアス電源,80…用紙搬送ベルト,81,82…張架ロール,90…用紙吸着装置,91…吸着ロール,911…金属シャフト,913…絶縁層92…吸着バイアス電源,101…+電荷,102…−電荷,111…導電性吸着ロール,112…絶縁性吸着ロール

Claims (3)

  1. 各色成分画像が形成される複数の画像形成ユニットを並列配置し、各画像形成ユニットの配列方向に沿って少なくとも一対の張架ロールに掛け渡されて循環搬送される搬送ベルトを配設すると共に、各画像形成ユニットに対向する搬送ベルトの裏面側に夫々転写バイアスが印加される転写手段を配設し、吸着手段にて搬送ベルト上に記録材を吸着保持し、この記録材に対し各画像形成ユニットで形成された各色成分画像を順次転写するようにした画像形成装置において、
    前記吸着手段は、搬送ベルトの張架ロールのうち、最上流画像形成ユニットの上流側に位置する張架ロールには転写手段へ印加される転写バイアスと同極性の吸着バイアスを印加する一方、この張架ロールに対向した搬送ベルト上には少なくとも絶縁層を介して接地される吸着部材を圧接配置すると共に、この吸着部材の絶縁層部分には前記吸着バイアスと逆極性で略同電圧の逆極性吸着バイアスが印加される電荷付与手段を接触配置したことを特徴とする画像形成装置。
  2. 請求項1記載の画像形成装置において、
    吸着部材は、導電性部材の表面に絶縁層を被覆した絶縁性部材にて構成されていることを特徴とする画像形成装置。
  3. 請求項1記載の画像形成装置において、
    吸着部材は、搬送ベルトに圧接配置される導電性部材と、この導電性部材に接触配置され且つ接地される絶縁性部材とで構成されていることを特徴とする画像形成装置。
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