以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置の全体構成及び動作]
先ず、本実施例の画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の概略縦断面図である。本実施例の画像形成装置100は、画像形成装置本体(装置本体)Aに通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ、原稿読み取り装置、デジタルカメラなどの外部機器からの画像情報信号に応じて、電子写真方式を利用して4色フルカラーの画像を転写材(記録用紙、プラスチックフィルム、布など)に形成することのできる、インライン方式を採用したレーザービームプリンタである。尚、本発明に係る画像形成装置は、電子写真方式のレーザービームプリンタのほか、電子写真方式の複写機、ファクシミリ等であってもよく、更には静電記録方式のプリンタ、複写機、ファクシミリ等であってもよい。
画像形成装置100は、装置本体Aの内部に、複数の画像形成手段として第1、第2、第3、第4の画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdを有する。4個の画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdは、この順序で転写材Pの搬送方向に沿って縦方向(略鉛直方向)に直列に配置されている。又、4個の画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdは、この順序で、シアン、イエロー、マゼンタ、ブラックのトナー像を形成する。各画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdには、それぞれ装置本体Aに対し着脱可能なプロセスカートリッジ7a、7b、7c、7dが配設されており、各プロセスカートリッジ7a、7b、7c、7dが備える像担持体1a、1b、1c、1d上にトナー像が形成される。そして、各像担持体1a、1b、1c、1d上に形成されたトナー像は、転写材搬送部材(転写材担持体)としての搬送ベルト(静電吸着搬送ベルト)11により担持搬送される転写材Pに転写される。
尚、本実施例では、各画像形成ステーションの基本的構成及び動作は、トナーの種類が異なることを除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すために符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して総括的に説明する。
図2をも参照して更に詳しく説明する。図2は、プロセスカートリッジ7の拡大縦断面図である。画像形成ステーションSは、像担持体としてドラム状の電子写真感光体、即ち、感光体ドラム1を有する。感光体ドラム1の周囲には、帯電手段(一次帯電手段)としての帯電ローラ2、露光手段(画像書き込み手段)としての露光装置3、現像手段としての現像装置4、クリーニング手段としてのクリーニング装置6等が配設されている。又、各感光体ドラム1a、1b、1c、1dに対向して、各感光体ドラム1a、1b、1c、1dに接触して移動可能な転写材搬送部材としての搬送ベルト11を備える転写装置5が配置されている。搬送ベルト11を介して感光体ドラム1に対向する位置には転写手段としての転写ローラ12が配置されている。
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を略均一に帯電させるものである。露光装置(スキャナユニット)3は、帯電処理後の感光体ドラム1の表面を画像情報に基づいてレーザビームで照射して静電像(潜像)を形成するものである。現像装置4は、露光装置3によって感光体ドラム1上に形成された静電像にトナーを付着させてトナー像として現像するものである。転写ローラ12は、感光体ドラム1上に形成されたトナー像を搬送ベルト11上に担持された転写材に転写させるものである。クリーニング装置6aは、転写工程後に感光体ドラム1の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去するものである。
ここで、本実施例では、感光体ドラム1と、帯電ローラ2と、現像装置4と、クリーニング装置6とは、一体的にカートリッジ化されて、装置本体Aに対して着脱可能なプロセスカートリッジ7を構成している。プロセスカートリッジ7は、図2に示すように、更に感光体ドラムユニット50と、現像ユニット45とに分かれる。感光体ドラムユニット50は、感光体ドラム1と、帯電ローラ2と、クリーニング装置6とを有する。一方、現像ユニット45は、現像装置4を有する。プロセスカートリッジ7は、装着ガイド、位置決め部材などとされる装着手段(図示せず)を介して装置本体Aに取り外し可能に装着される。
次に、画像形成装置100の各要素について更に詳しく説明する。
感光体ドラム1は、例えば直径30mmのアルミシリンダの外周面に有機光半導体層(OPC感光層)を塗布して構成される。感光体ドラム1は、その長手方向(回転軸方向)両端部を支持部材(図示せず)によって回転自在に支持されている。そして、感光体ドラム1は、長手方向の一方の端部に、装置本体Aに設けられた駆動モータ(図示せず)からの駆動力が伝達されることにより、図1中の反時計回りに回転駆動される。
帯電手段としては、ローラ状に形成された帯電ローラ2が用いられる。帯電ローラ2には、装置本体Aに設けられた帯電バイアス出力手段としての帯電バイアス印加電源(図示せず)が接続されている。帯電ローラ2を感光体ドラム1の表面に当接させると共に、この帯電ローラ2に帯電バイアス印加電源によって所定の帯電バイアスを印加することにより、感光体ドラム1の表面を所定の極性・電位に略一様(均一)に帯電させる。本実施例では、感光体ドラム1の表面は、帯電ローラ2によって負極性に略一様に帯電される。
露光装置3は、図1中のそれぞれの感光体ドラム1の左方に配置されている。露光装置3において、画像信号に対応する画像光がレーザダイオード(図示せず)によって発光される。この画像光は、スキャナモータ(図示せず)によって高速回転されるポリゴンミラー9に照射される。ポリゴンミラー9によって反射された画像光は、結像レンズ10を介して、帯電済みの感光体ドラム1の表面に照射される。これにより、略一様に帯電された感光体ドラム1の表面を選択的に露光し、静電像を形成することができる。本実施例では、画像光が照射された部分の電荷が除去されて、静電像の画像部が形成される。
現像装置4は、現像剤として非磁性一成分現像剤、即ち、トナーを収納した容器(現像装置本体)41を有する。各画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの各現像装置4a、4b、4c、4dの容器41には、それぞれシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックの各色のトナーが収容されている。現像装置4は、トナーを担持して感光体ドラム1との対向部(現像領域)へと搬送する現像剤担持体としての現像ローラ40、現像ローラ40にトナーを供給すると共に現像ローラ40からトナーを剥ぎ取る現像剤供給及び剥ぎ取り部材としてのトナー供給ローラ43、現像ローラ40上のトナーを規制する現像剤規制部材としての現像ブレード44、トナー供給ローラ43に向けてトナーを搬送するトナー送り機構42を有する。容器41内のトナーをトナー送り機構42によってトナー供給ローラ43方向へ送り込み、図2中の時計回り(矢印Z方向)に回転するトナー供給ローラ43と、現像ローラ40の外周面に圧接された現像ブレード44とによって、図2中時計回り(矢印Y方向)に回転する現像ローラ40の外周面にトナーを塗布する。同時に、現像ローラ40の外周面に塗布したトナーに電荷を付与する。
本実施例では、現像ローラ40は、感光体ドラム1との対向部において感光体ドラム1に接触している。そして、装置本体Aに設けられた現像バイアス出力手段としての現像バイアス印加電源(図示せず)によって現現像ローラ40に像バイアスを印加することにより、感光体ドラム1上に形成された静電像に負極性に帯電したトナーを付着させて、トナー像として現像する。本実施例では、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電した感光体ドラム1上の、露光により電位が減衰した部分(露光部)にトナーを付着させる(反転現像方式)。
図1中のプロセスカートリッジ7の右方には、転写装置5が配設されている。転写装置5は、感光体ドラム1に対向して接するように循環移動(回転)する搬送ベルト11を有している。搬送ベルト11は、108〜1013Ω・cmの体積固有抵抗値を有する厚さ50〜300μmのフィルム状部材で構成されている。本実施例では、搬送ベルト11は、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)によって形成されている。又、搬送ベルト11は、複数のローラとして、相互に平行に配設された4本のローラ、即ち、駆動ローラ13及び従動ローラ14、15、16に掛け渡されており、全体として垂直方向に配設されている。搬送ベルト11は、駆動ローラ13に駆動力が伝達されることによって、図1中矢印Rにて示す方向(時計回り)に周回移動する。搬送ベルト11は、駆動ローラ13と1つの従動ローラ(吸着対向ローラ)14との間に位置する部分において、外周面に転写材Pを静電吸着した状態で回転する。本実施例では、搬送ベルト11は、縦方向、即ち、水平方向と交差する方向(本実施例では略鉛直方向上方)に転写材Pを搬送する。例えばカラー画像の形成時においては、転写材Pは搬送ベルト11上に担持されて各画像形成ステーションSの転写部に順次に搬送され、各感光体ドラム1上のトナー像が順次に転写される。
搬送ベルト11の内周面側には、各画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの各感光体ドラム1a、1b、1c、1dのそれぞれに対応する位置に、4個の転写ローラ12a、12b、12c、12dが配設されている。これら各転写ローラ12a、12b、12c、12dは搬送ベルト11の裏面側に当接されており、各感光体ドラム1a、1b、1c、1dとの間に搬送ベルト11を挟持する。これにより、各感光体ドラム1a、1b、1c、1dと搬送ベルト11との間に、それぞれ第1、第2、第3、第4の転写部(転写ニップ)Na、Nb、Nc、Ndが形成される。本実施例では、転写部N間の間隔は75mmである。本実施例においては、各画像形成ステーションSの転写ローラ12には、それぞれ装置本体Aに設けられた転写バイアス出力手段としての転写バイアス印加電源31(図8)が接続されている。そして、転写バイアス印加電源31によって、転写ローラ12に、トナーの正規の帯電極性とは逆極性である正極性の転写バイアスが印加される。これにより、感光体ドラム1上の負極性に帯電したトナーが、転写部Nにおいて搬送ベルト11上の転写材P上に転写される。即ち、転写ローラ12に、転写バイアス印加電源31により出力された、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)と逆極性のバイアスが印加されることにより、転写部Nには、正規の極性に帯電したトナーを感光体ドラム1から搬送ベルト11上の転写材Pに向かわせる方向の電界が形成される。
クリーニング装置6は、トナー像の転写時に転写材Pに転写されないで感光体ドラム1上に残ったトナー(残留トナー)を除去する。図2に示すように、クリーニング装置6は、感光体ドラム1の表面に当接して感光体ドラム1の表面の残留トナーを除去する、クリーニング部材としてのクリーニングブレード60を有する。クリーニングブレード60によって感光体ドラム1の表面から除去された残留トナーは、トナー送り機構52によってクリーニング枠体51の後方に設けられた廃トナー室53に順次送られる。
図1中の装置本体Aの下部には、着脱自在な転写材収納カセット17が配設されている。転写材収納カセット17には、複数枚の転写材(例えば、普通紙、封筒、透明フィルム)Pが積層状態で収納される。画像形成時には、転写材収納カセット17内の転写材Pは、転写材供給ローラ18(半月ローラ)の回転により、1枚ずつ分離給送される。転写材Pは、次いで、その先端部がレジストローラ対19に突き当たることで一旦停止されて、ループを形成する。その後、転写材Pは、搬送ベルト11の回転と、感光体ドラム1a、1b、1c、1d上の画像書出し位置の同期をとって、レジストローラ対19によって搬送ベルト11へと供給される。
転写材Pの搬送方向最上流側の第1の画像形成ステーションSaの第1の転写部Naよりも更に上流側には、転写材Pを吸着部Mにおいて搬送ベルト11に吸着させるための吸着手段Bが配設されている。本実施例では、吸着手段Bは、転写材Pを搬送ベルト11に吸着させるためのバイアスが印加される吸着部材として、搬送ベルト11に対して感光体ドラム1側に配置された吸着ローラ20を有する。又、本実施例では、転写材Pに接触する吸着ローラ20は、搬送ベルト11が張架される複数のローラのうち1つの従動ローラ(吸着対向ローラ)14に対向して配置され、この対向部材としての吸着対向ローラ14との間に搬送ベルト11を挟持する。換言すれば、本実施例では、吸着手段Bは、搬送ベルト11の転写材担持面に接触する第1の部材と、第1の部材に対向して搬送ベルト11の転写材担持面とは反対側面に接触する第2の部材とを有している。
そして、詳しくは後述するが、通常画像形成モードでは、装置本体Aに設けられた吸着バイアス出力手段としての吸着バイアス印加電源32(図8)によって、吸着ローラ20に、転写バイアスと同極性(即ち、トナーの正規の帯電極性とは逆極性)である正極性の吸着バイアスが印加される。このとき、吸着ローラ20に、吸着バイアス印加電源32により出力された、転写バイアスと同極性のバイアスが印加されることにより、吸着部Mに形成される電界の方向と、転写バイアスにより転写部Nに形成される電界の方向とは同方向となる。この吸着バイアスによる電界と電荷供給により、転写材Pと搬送ベルト11の静電分極が促進され、転写材Pは、搬送ベルト11の表面に吸着される。こうして、レジストローラ対19によって搬送ベルト11に向けて供給された転写材Pは、吸着部Mにおいて搬送ベルト11に静電的に吸着される。吸着ローラ20と搬送ベルト11とが当接する吸着部(吸着ニップ)Mと、第1の転写部Naとの間の距離は45mmである。
吸着ローラ20は直径6mmの芯金上に電気抵抗値を調整したゴム層と、離型性を有するコーティング層を有する二層ローラである。ゴム層は弾性を付与するために設けられており、EPDMゴムに電気抵抗調整のためにカーボンブラックを分散させた直径12mmである。ゴム層の電気抵抗値は、幅1cmの金属箔をローラ外周に巻き付け、芯金との間に500Vの電圧を印加した時の電気抵抗値を1×105Ωに調整してある。このゴム層の上に、電気抵抗が調整された、離型性を有するフッ素コーティングを行なう。離型層の厚みは100μmであり、フッ素樹脂中に金属酸化物を添加し、最終的な吸着ローラ20としての電気抵抗値が前述の測定法で1×106Ωになるように調整されている。
転写材Pの搬送方向において最下流側の第4の画像形成ステーションSdよりも更に下流側(図1中上方)には、定着手段としての定着装置21が配設されている。定着装置21は、転写材Pに転写されたトナー像を定着させる。本実施例では、定着装置21は、回転する定着ローラ(加熱ローラ)22と、この定着ローラ22に圧接されて転写材Pに熱及び圧力を与える加圧ローラ23とを有する。例えばカラー画像の形成時においては、各色のトナー像が順次に重なるようにして転写された転写材Pは、定着装置21を通過する際に定着ローラ22、加圧ローラ23によって挟持搬送されて加熱、加圧される。これにより、転写材Pの表面に複数色のトナー像が溶融混合されると共に、定着される。
(通常画像形成モードでのカラー画像形成動作)
次に、本実施例の画像形成装置100における、通常画像形成モードでのカラー画像形成動作について説明する。
図1を参照して、各プロセスカートリッジ7a、7b、7c、7d内の各感光体ドラム1a、1b、1c、1dが、画像形成タイミングに合わせて回転駆動される。回転する各感光体ドラム1a、1b、1c、1dは、各帯電ローラ2a、2b、2c、2dによって負極性に一様に帯電される。帯電後の各感光体ドラム1a、1b、1c、1dの表面は、各露光装置3a、3b、3c、3dによって画像信号(画像情報)に応じて露光され、静電像が形成される。このとき、露光されない部分が暗部(高電位部)となり、その電位(暗部電位)をVDとする。一方、露光された部分が明部(低電位部)となりその電位(明部電位)をVLとする。次いで、各現像装置4a、4b、4c、4dは、各感光体ドラム1a、1b、1c、1d上に形成された静電像の明部にトナーを付着させて、各感光体ドラム1a、1b、1c、1d上に、それぞれシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックのトナー像を形成する。
一方、転写材収納カセット17から転写材供給ローラ18、レジストローラ対19等によって搬送ベルト11へと供給された転写材Pは、吸着ローラ20と搬送ベルト11とによって挟み込むようにして搬送ベルト11の表面(外周面)に圧接され、且つ、搬送ベルト11と吸着ローラ20との間に電圧が印加されることにより、搬送ベルト11の表面に静電吸着される。この際、吸着ローラ20側から正極性の電圧が印加され、吸着対向ローラ14は接地される。より具体的には、本実施例では、吸着ローラ20には、吸着バイアス印加電源32から出力された、+1500Vのバイアスが印加される。
このように搬送ベルト11の表面に吸着された転写材Pは、搬送ベルト11の図1中矢印R方向の回転によって、第1〜第4の画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの第1〜第4の転写部Na、Nb、Nc、Ndに順次に搬送される。そして、各感光体ドラム1a、1b、1c、1dと、各転写ローラ12a、12b、12c、12dとの間に形成される電界(転写電界)によって、各感光体ドラム1a、1b、1c、1d上のトナー像が、順次に転写材P上に転写される。
4色のトナー像が転写された転写材Pは、駆動ローラ13の曲率により搬送ベルト11から分離(曲率分離)され、定着装置21に搬入される。転写材Pは、定着装置21において定着ローラ22、加圧ローラ23によって加熱・加圧されて、表面に4色のトナー像が定着される。その後、転写材Pは、排出ローラ対24によって、装置本体Aの上面に形成されている排出トレイ25上に、画像面を下方に向けて排出される。
一方、トナー像を転写材Pに転写した後の感光体ドラム1a、1b、1c、1dの表面に残った残留トナーは、クリーニング装置6a、6b、6c、6dによって除去され、感光体ドラム1a、1b、1c、1dは次の画像形成に供される。以上により4色フルカラーの画像形成が終了する。
(通常画像形成モードでのモノクロ画像形成動作)
次に、本実施例の画像形成装置100における、通常画像形成モードでのモノクロ画像形成動作について説明する。
図3は、モノクロ画像形成動作時の装置本体A内の様子を示す要部概略縦断面図である。本実施例では、モノクロ画像形成動作時には、画像形成を行わない色用のプロセスカートリッジ7を動作させないようにするため、そのプロセスカートリッジ7の感光体ドラム1を搬送ベルト11から離間させる。
より具体的には、本実施例では、転写材Pの搬送方向最下流の第4の画像形成ステーションSdをブラック用の画像形成ステーションとして、モノクロ画像形成動作としてブラック単色の画像形成動作を行うことが可能となっている。そして、このモノクロ画像形成動作時には、ブラック用である第4の画像形成ステーションSdの感光体ドラム1dを搬送ベルト11に接触させると共に、画像形成を行わない画像形成ステーション、即ち、転写材Pの搬送方向上流側の第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scにおける感光体ドラム1a、1b、1cを搬送ベルト11から離間させる。つまり、本実施例の画像形成装置100は、第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scの感光体ドラム1a、1b、1cと搬送ベルト11との相対位置を移動させる離間手段を有し、搬送ベルト11上の転写材Pが第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scの感光体ドラム1a、1b、1cに接触して搬送される第1のモードと、搬送ベルト11上の転写材Pが第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scの感光体ドラム1a、1b、1cに接触せずに搬送される第2のモードとを有する。
画像形成を行わない画像形成ステーションSについて感光体ドラム1と搬送ベルト11とを離間させるための離間手段としては、駆動ローラ13を回動中心として転写装置5(搬送ベルト11、搬送ベルト11の内周面側に配置された従動ローラ14、15、16、転写ローラ5、吸着ローラ20等を含む。)を全体として揺動させたり、転写ローラ12の感光体ドラム1方向への押圧を解除したりする当接離間機構を用いることができる。本実施例では、図3に示すように、転写ローラ12a、12b、12cを感光体ドラム1a、1b、1cに押圧し、又、その押圧を解除することができる当接離間機構36a、36b、36cを用いた。
又、本実施例では、モノクロ画像形成動作時には、画像形成を行わない第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scにおいては、感光体ドラム1の回転、転写バイアスの印加等、その画像形成動作を停止させておく。
このように、モノクロ画像形成動作時に、不要な動作・回転を行わないため、プロセスカートリッジ7の劣化を軽減することができる。
そして、モノクロ画像形成動作時には、ブラックのトナー像を形成する第4の画像形成ステーションSdの感光体ドラム1dが、画像形成タイミングに合わせて回転駆動され、カラー画像形成動作時と同様にして、感光体ドラム1d上にブラックのトナー像が形成される。
転写材Pは、カラー画像形成動作時と同様にして、搬送ベルト11へと供給される。この際、上述した通常画像形成モードでのカラー画像形成動作時と同様に、吸着部Mにおいては、吸着ローラ20側から正極性の電圧が印加され、吸着対向ローラ14は接地される。より具体的には、本実施例では、吸着ローラ20には、吸着バイアス印加電源32から出力された、+1500Vのバイアスが印加される。
これにより、転写材Pは搬送ベルト11に吸着され、転写材Pの搬送方向最下流の第4の画像形成ステーションSdの第4の転写部Ndまで搬送される。つまり、搬送ベルト11の表面に吸着された転写材Pは、搬送ベルト11の図中矢印R方向の回転によって、感光体ドラム1が搬送ベルト11から離間している状態の第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scの第1〜第3の転写部Na、Nb、Ncを順次通過し、第4の画像形成ステーションSdの第4の転写部Ndに搬送される。そして、第4の画像形成ステーションSdの感光体ドラム1dと転写ローラ12dとの間に形成される電界によって、感光体ドラム1dのトナー像が転写材へと転写される。
その後、カラー画像形成動作時と同様にして、転写材Pはトナー像が定着された後に機外に排出される。又、トナー像を転写材Pに転写した後の感光体ドラム1dの表面に残った残留トナーは、カラー画像形成動作時と同様に、クリーニング装置6dによって除去され、感光体ドラム1dは次の画像形成に供される。以上により通常のモノクロの画像形成は終了する。
[吸着バイアス]
本実施例で、吸着バイアスを転写バイアスと同極性(即ち、トナーの正規の帯電極性とは逆極性)である正極性の+1500Vとしたのは、通常画像形成モードでの画像形成動作時においては、吸着バイアスは、「搬送ベルト11への転写材Pの静電吸着」、及び、「電荷付与による転写の補助」の機能を有するためである。即ち、吸着バイアスによって転写材Pを搬送ベルト11に静電吸着させて、搬送ベルト11から転写材Pが剥がれ落ち、ジャム(紙詰まり)が発生しないようにする。又、カラー画像形成動作時には4色のトナーを転写材Pに転写するため、転写部Nを通過するたびに転写材Pの電位が上がる。そのため、転写材Pの搬送方向において下流側の画像形成ステーションSに行くにつれて、転写バイアスの絶対値を高くする必要がある。従って、転写材Pの表面を吸着部Mで予め正極性に帯電することにより、負極性のトナーを、絶対値がより低い転写バイアスで転写できるようにする。
しかしながら、吸着バイアスによって、前述のように、感光体ドラム1に転写材由来の付着物が転写されることによる不具合が発生することがある。
つまり、画像形成装置において転写材Pとして主に用いられる紙には様々な種類が存在し、その中には、填料として炭酸カルシウム(CaCO3)を含む紙がある。炭酸カルシウム含有紙の中には、紙紛として画像形成装置内を汚染するものが存在する。
特に、本実施例のような、搬送ベルト11を用いたインライン方式の画像形成装置100において、炭酸カルシウム含有紙を通紙し続けると、次のような問題が引き起こされる場合がある。
通常画像形成モードでのカラー画像形成動作、及び通常画像形成モードでのモノクロ画像形成動作では、転写材Pを正極性の吸着バイアスが印加される吸着ローラ20で搬送ベルト11に静電吸着させるため、炭酸カルシウムが感光体ドラム1の表面とは逆極性(正極性)に帯電される。
一方、各画像形成ステーションSでは、トナーを転写材Pに転写するために、転写ローラ12には、トナーや感光体ドラム1の表面とは逆極性(正極性)のバイアスが印加される。これにより、感光体ドラム1から転写材P上に負極性に帯電したトナーが転写される。
このとき、感光体ドラム1の表面と逆極性(正極性)に帯電した炭酸カルシウムが画像形成ステーションSを通過する際に、炭酸カルシウムは感光体ドラム1の表面と逆極性に帯電されているため、感光体ドラム1に転写されてしまう。感光体ドラム1上に転写された炭酸カルシウムは、静電的に結びついているため、クリーニングブレード60での掻き取りが困難となり、クリーニングブレード60と感光体ドラム1との当接部をすり抜け易い。そして、炭酸カルシウムは、クリーニングブレード60をすり抜けた後に、帯電ローラ2に達し、帯電ローラ2に付着してこれを汚染する。
図4は、通常画像形成モードでの画像形成動作時に、転写材Pとしての炭酸カルシウム含有紙からの炭酸カルシウムαが、吸着ローラ20によって正極性に帯電され、その後感光体ドラム1に転写されて、帯電ローラ2を汚染する様子を模式的に示す。
帯電ローラ2の汚染が進むと、感光体ドラム1を満足に帯電できない部分が発生し、帯電不良のため「縦スジ」等の画像不良が発生することがある。そのため、プロセスカートリッジ7の寿命が短くなることがあるという問題がある。
[付着軽減画像形成モード]
次に、本実施例において最も特徴的な、転写材由来の付着物が感光体ドラム1に転写されるのを抑制する方法について説明する。
本実施例の画像形成装置100は、上述のような不具合の発生を防止するために、通常画像形成モードの他に、付着軽減画像形成モードを有する。例えば、炭酸カルシウム含有紙を頻繁に使用する装置使用者が、付着軽減画像形成モードにてカラー画像形成動作、或いはモノクロ画像形成動作を行うことで、炭酸カルシウム含有紙対策を施せるようになっている。
即ち、画像形成装置100は、トナー像が転写される転写材Pが吸着部Mを通過している間に吸着バイアス印加電源32が第1の極性のバイアスを出力する第1の画像形成モード(通常画像形成モード)と、トナー像が転写される転写材Pが吸着部Mを通過している間に吸着バイアス印加電源32が第1の極性とは逆極性である第2の極性のバイアスを出力するか又はバイアスを出力しない第2の画像形成モード(付着軽減画像形成モード)と、を有する。上記第1の極性は、典型的には、転写バイアスと同極性(即ち、トナーの帯電極性とは逆極性)である。又、上記第2の極性は、典型的には、感光体ドラム1の帯電極性と同極性である。
図8は、本実施例の概略制御態様を示す。図8に示すように、本実施例では、装置本体Aに設けられた制御手段としてのコントローラ部33が、吸着バイアスの制御、転写バイアスの制御、その他画像形成装置100の動作を統括的に制御する。コントローラ部33は、吸着バイアス印加電源32によるバイアスの出力開始・停止を制御すると共に、バイアスの極性・出力値を制御する吸着バイアス切り替え手段の機能を有する。
又、コントローラ部33には、装置本体Aに設けられた操作部34、パーソナルコンピュータ等の外部機器200が接続されている。そして、装置本体Aの操作部34、或いは外部機器200の操作部を介して、画像形成開始指示と共に画像形成モードの選択信号がコントローラ部33に入力される。コントローラ部33は、画像形成モードの選択信号が通常画像形成モードを示す場合、上述のような通常画像形成モードにてカラー画像形成動作又はモノクロ画像形成動作を実行させる。一方、画像モード選択信号が付着軽減画像形成モードを示す場合は、以下更に詳しく説明する付着軽減画像形成モードにてカラー画像形成動作又はモノクロ画像形成動作を実行させる。
(付着軽減画像形成モードでのカラー画像形成動作)
先ず、付着軽減画像形成モードでのカラー画像形成動作について説明する。
本実施例では、特に、転写材Pが垂直方向に搬送されるため、搬送途中で搬送ベルト11から転写材Pが剥がれ落ちることのないようにする必要がある。しかし、吸着部Mで転写材Pを搬送ベルト11に静電吸着させなくても、転写材Pのコシで第1の転写部Naまでは搬送することが可能である。又、第1の転写部Naでトナーを転写する際に、転写バイアスの作用により転写材Pは帯電吸着される。そのため、吸着部Mで転写材Pを帯電させなくても比較的安定して転写材Pを搬送することができる。
そこで、付着軽減画像形成モードでのカラー画像形成動作時には、吸着バイアスは無極性、即ち、0Vとする。つまり、付着軽減画像形成モードでのカラー画像形成動作時には、吸着バイアス印加電源32は、吸着ローラ20に対しバイアスを出力しない。この時、吸着ローラ20と吸着対向ローラ14とは共に接地される。
図5は、付着軽減画像形成モードでのカラー画像形成動作時に、吸着バイアスを無極性としたときの、炭酸カルシウム含有紙からの炭酸カルシウムαの挙動を模式的に示す。
転写材Pは吸着部Mで帯電されないため、転写材P内に存在する炭酸カルシウムも帯電されないまま第1の転写部Naに到達する。第1の転写部Naでは、感光体ドラム1aから転写材P上にトナーが転写され、転写材Pの表面は負極性となる。そして、転写材P内に存在する炭酸カルシウムも負極性に帯電されるため、更に下流側の第2〜第4の転写部Nb、Nc、Ndを通過する時に、炭酸カルシウムが感光体ドラム1上に転写されることを抑制することができる。
以上のように、付着軽減画像形成モードでのカラー画像形成動作時には、吸着バイアスを無極性とすることによって、ジャム(紙詰まり)を発生させることなく、炭酸カルシウムが感光体ドラム1に転写されて帯電ローラ2が炭酸カルシウムで汚染されることによる画像不良を抑制することができる。
(付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作)
次に、付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作について説明する。
モノクロ画像形成動作時は、上述のように、画像形成を行わない第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scのプロセスカートリッジ7a、7b、7cの劣化防止等のために、第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scにおいては感光体ドラム1a、1b、1cを搬送ベルト11から離間させ、感光体ドラム1の回転、転写バイアスの印加等、その画像形成動作を停止させる。
ここで、本実施例では、特に、転写材Pが垂直方向に搬送されるため、モノクロ画像形成動作時に第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scにおいて感光体ドラム1が搬送ベルト11から離間された状態においても、搬送途中で搬送ベルト11から転写材Pが剥がれ落ちることのないようにする必要がある。
つまり、第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scでは、感光体ドラム1は搬送ベルト11から離間し、その回転は停止されているため、吸着部Mで転写材Pを搬送ベルト11に静電吸着させないと、第4の転写部Ndまで転写材Pを安定して搬送することは難しい。そのため、転写材Pが搬送途中ではがれて落ち、ジャム(紙詰まり)が発生する可能性がある。
そこで、付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作時には、吸着ローラ20には、通常画像形成モードとは逆の極性である負極性のバイアス(即ち、感光体ドラム1の帯電極性と同極性のバイアス)を印加する。つまり、付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作時には、吸着バイアス印加電源32は、吸着ローラ20に対して負極性のバイアスを出力する。より具体的には、本実施例では、吸着ローラ20には、吸着バイアス印加電源32から出力される、−1500Vのバイアスが印加される。この時、吸着対向ローラ14は接地されている。このとき、吸着ローラ20に、吸着バイアス印加電源32により出力された、通常画像形成モードとは逆極性、即ち、転写バイアスと逆極性のバイアスが印加されることにより、吸着部Mに形成される電界の方向と、転写バイアスにより転写部Nに形成される電界の方向とは逆方向となる。
図6は、付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成時に、吸着バイアスを負極性(−1500V)としたときの、炭酸カルシウム含有紙からの炭酸カルシウムαの挙動を模式的に示す(第1の転写部Naと第4の転写部Ndの近傍のみ図示)。
吸着部Mにおいて転写材P内に存在する炭酸カルシウムも負極性に帯電されるため、炭酸カルシウムが感光体ドラム1の表面と同極性になり、感光体ドラム1の表面に転写されることを抑制することができる。
又、吸着部Mで転写材Pにバイアスを印加し、転写材Pを搬送ベルト11に静電吸着させることで、第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scにおいて感光体ドラム1a、1b、1cが搬送ベルト11から離間していても、転写材Pを、その搬送方向において吸着部Mから最も距離の遠い第4の転写部Ndまで、ジャム(紙詰まり)を発生させることなく搬送することができる。しかも、転写材P中の炭酸カルシウムは負極性に帯電しているために、第4の転写部Ndにおいて感光体ドラム1に転写されることを抑制することができる。
更に、感光体ドラム1から転写材Pへのトナーの転写は、第4の転写部Ndにて行われる1回だけなので、吸着部Mで転写材Pを負極性に帯電させても問題ない。
このように、本実施例の画像形成装置100は、(i)全ての画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの感光体ドラム1a、1b、1c、1dが搬送ベルト11に接触した状態、又は、第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scの感光体ドラム1a、1b、1cが搬送ベルト11から離間し且つ第4の画像形成ステーションSdの感光体ドラム1dが搬送ベルト11に接触した状態で、トナー像が転写される転写材Pが吸着部Mを通過している間に吸着バイアス印加電源32が第1の極性のバイアスを出力する第1の画像形成モード(通常画像形成モードでのカラー画像形成動作及びモノクロ画像形成動作)、(ii)全ての画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの感光体ドラム1a、1b、1c、1dが搬送ベルト11に接触した状態で、トナー像が転写される転写材Pが吸着部Mを通過している間に吸着バイアス印加電源32がバイアスを出力しない第2の画像形成モード(付着軽減画像形成モードでのカラー画像形成動作)、(iii)第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scの感光体ドラム1a、1b、1cが搬送ベルト11から離間し且つ第4の画像形成ステーションSdの感光体ドラム1dが搬送ベルト11に接触した状態で、トナー像が転写される転写材Pが吸着部Mを通過している間に吸着バイアス印加電源32が第1の極性とは逆極性である第2の極性のバイアスを出力する第3の画像形成モード(付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作)と、を有する。
又、換言すれば、本実施例の画像形成装置100は、上述のように、搬送ベルト11上の転写材Pが第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scの感光体ドラム1a、1b、1cに接触して搬送される第1のモードと、搬送ベルト11上の転写材Pが第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scの感光体ドラム1a、1b、1cに接触せずに搬送される第2のモードを有し、吸着バイアス印加電源32の出力が、上記第1のモードと第2のモードで逆極性となることがある。つまり、通常画像形成モードでのカラー画像形成動作時と、付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作時とでは、吸着バイアス印加電源32の出力が逆極性となる。更に、本実施例の画像形成装置100は、吸着バイアス印加電源32の出力が、上記第1のモードでは出力されず、第2のモードで出力されることがある。つまり、吸着バイアス印加電源32からのバイアスは、付着軽減画像形成モードでのカラー画像形成動作時には出力されず、通常画像形成モード(及び付着軽減画像形成モード)でのモノクロ画像形成時に出力される。
(実験例)
転写材Pとして炭酸カルシウム含有紙を用いて、通常画像形成モードと付着軽減画像形成モードとで耐久試験を行った。ここでは、低温低湿の15℃/10%RH環境にて、転写材Pとして炭酸カルシウム含有紙であるオーシドレイ社製の秤量80g/cm2の紙を通紙し、通常画像形成モードでの吸着バイアス(+1500V)と付着軽減画像形成モードでの吸着バイアス(カラー画像形成動作時:0V、モノクロ画像形成時:−1500V)とした時の画像を比較した。
通常画像形成モードの設定では、8000枚で画像不良(縦スジ)が発生することがあった。帯電ローラ2の炭酸カルシウムによる汚染レベルも非常に悪くなることがあった。これに対し、付着軽減画像形成モードの設定(吸着バイアスを無極性又は負極性とする。)では、16000枚までの耐久試験で帯電ローラ2の炭酸カルシウムによる汚染は大幅に良化し、画像不良の発生も無なかった。
以上、本実施例によれば、炭酸カルシウム付着による帯電ローラ2の汚染を抑制して、帯電不良の発生を抑制することができる。炭酸カルシウム含有紙を用いる場合の、プロセスカートリッジ7の高寿命化を図ることができる。本実施例は、炭酸カルシウム含有紙と同じ問題を引き起こすタルク含有紙についても、同様の効果が得られる。
尚、全ての炭酸カルシウム含有紙が本実施例で述べたような不具合を発生させるわけではない。炭酸カルシウムの付着による帯電ローラ2の汚染による帯電不良等の問題が発生した場合に、装置使用者は、炭酸カルシウム付着防止のために画像形成動作を本実施例にて説明した付着軽減画像形成モードで行うようにすることができる。炭酸カルシウム含有率の高い紙(転写材)Pは、炭酸カルシウムが紙紛として装置内のいろいろなところに付着し易い。画像不良が炭酸カルシウムが原因によるか否かは、一例として、搬送ベルト11上に炭酸カルシウムが付着し白くなっているかどうかで判断することが可能である。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置100と実質的に同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
本実施例は、モノクロ画像形成動作時に使用しない画像形成ステーションにおいても感光体ドラムを搬送ベルト11から離間させないことが実施例1とは異なる。当接離間機構を設けないことにより画像形成装置のコストダウンが可能である。
尚、本実施例では、カラー画像形成動作は、通常画像形成モード及び付着軽減画像形成モードのいずれにおいても実施例1と実質的に同じであるのでここでは説明を省略する。
(通常画像形成モードでのモノクロ画像形成動作)
先ず、通常画像形成モードでのモノクロ画像形成動作について説明する。モノクロ画像形成動作時には、実施例1と同様、第4の画像形成ステーションSdによりブラック画像のみを形成する。この時、本実施例では、第1〜第4の画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの全てにおいて感光体ドラム1a、1b、1c、1dは搬送ベルトか11に当接される(即ち、画像形成を行わない第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scにおいて感光体ドラム1a、1b、1cは搬送ベルト11から離間されない。)。又、モノクロ画像形成動作時には、第1〜第4の画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの全てにおいて感光体ドラム1a、1b、1c、1dが回転する。尚、画像形成を行わない第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scにおいては転写ローラ12a、12b、12cに対する転写バイアスの印加はオフとされる。その他の画像形成動作は、実施例1にて説明した通常画像形成モードでのモノクロ画像形成動作と同じである。
吸着部Mにおいては、吸着ローラ20側から正極性の電圧が印加され、吸着対向ローラ14は接地される。より具体的には、本実施例では吸着ローラ20には、吸着バイアス印加電源32から出力された、+1500Vのバイアスが印加される。
これにより、転写材Pは搬送ベルト11に吸着され、第1〜3の転写部Na、Nb、Ncを通過して、第4の転写部Ndまで搬送される。つまり、搬送ベルト11の表面に吸着された転写材Pは、搬送ベルト11の図中矢印R方向の回転によって、感光体ドラム1が搬送ベルト11に当接している状態の第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scの第1〜第3の転写部Na、Nb、Ncを順次通過し、第4の画像形成ステーションSdの第4の転写部に搬送される。そして、第4の画像形成ステーションSdの感光体ドラム1dと転写ローラ12dとの間に形成される電界によって、感光体ドラム1dのトナー像が転写材へと転写される。
(付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作)
次に、付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作について説明する。
本実施例においては、付着軽減画像形成モードにおいても、モノクロ画像形成動作時には、第1〜第4の画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの全てにおいて感光体ドラム1a、1b、1c、1dは搬送ベルト11に当接されている。又、モノクロ画像形成動作時には、第1〜第4の画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの全てにおいて感光体ドラム1a、1b、1c、1dが回転する。一方、画像形成を行わない第1〜第3の画像形成ステーションSa、Sb、Scにおいては転写ローラ12a、12b、12cに対する転写バイアスの印加はオフとされる。
ここで、例えば転写材Pとして炭酸カルシウム含有紙を多く使用する場合などには、吸着ローラ20側から正極性の電圧が印加されると、転写材P内の炭酸カルシウムが正極性に帯電され、これが感光体ドラム1に転写されることになり好ましくない。
そこで、本実施例では、付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作時に、吸着バイアスは無極性、即ち、0Vとする。つまり、付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作時には、吸着バイアス印加電源32は、吸着ローラ20に対しバイアスを出力しない。この時、吸着ローラ20と吸着対向ローラ14とは共に接地される。
図7は、付着軽減画像形成モードでのモノクロ画像形成動作時に、吸着バイアスを無極性としたときの、炭酸カルシウム含有紙からの炭酸カルシウムαの挙動を模式的に示す。
転写材Pは、吸着部Mにおいて搬送ベルト11に静電吸着されないが、第1〜3の転写部Na、Nb、Ncが搬送ベルト11と当接しているため、ジャム(紙詰まり)を発生させることなく、転写材Pを第4の転写部Ndまで搬送することができる。
そして、第4の画像形成ステーションSdにおいて感光体ドラム1dと転写ローラ12dとの間に形成される電界によって、感光体ドラム1dのトナー像が転写材Pへと転写される。この際、炭酸カルシウムは正極性に帯電されていないので、感光体ドラム1dの表面に転写され難い。
以上、本実施例によれば、炭酸カルシウム付着による帯電ローラ2の汚染を抑制して、帯電不良の発生を抑制することができる。本実施例によれば、コストダウン等のために感光体ドラム1を搬送ベルト11から当接離間する機構を省いた画像形成装置においても、炭酸カルシウム含有紙対策が可能である。本実施例は、炭酸カルシウム含有紙と同じ問題を引き起こすタルク含有紙についても、同様の効果が得られる。
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置100と実質的に同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
本実施例は、装置本体Aに、少なくとも湿度情報を検知することできる検知手段として環境センサー35(図9)を設け、装置環境の湿度に応じて画像形成動作を付着軽減画像形成モードで行うか否かが決定される。以下、更に詳しく説明する。
例えば転写材Pとして炭酸カルシウム含有紙を用いた場合の炭酸カルシウムによる帯電ローラ2の汚染の現象は、低湿環境化において発生し易い。乾燥し、転写材P中の水分が抜けているため、炭酸カルシウムが帯電され易く、又、一度帯電した炭酸カルシウムの電荷は減衰し難いからである。
そこで、本実施例では、付着軽減画像形成モードの実施が許可されている場合に、環境センサー35で湿度を検知して、低湿環境である場合に限り、実施例1にて説明した付着軽減画像形成モードで画像形成動作が行われる。より具体的には、本実施例では、環境センサー35で湿度を検知し、湿度が30%RHを下回ったときに、実施例1にて説明した付着軽減画像形成モードで画像形成動作が行われる。
図9は、本実施例の概略制御態様を示す。図9に示すように、本実施例では、コントローラ部33には、環境センサー35が接続されている。そして、所定タイミングで、環境センサー35による温湿度の検知結果が、コントローラ部33に入力される。又、実施例1と同様に、装置本体Aの操作部34、或いは外部機器200の操作部を介して画像形成開始指示と共に、画像形成モードの選択信号がコントローラ部33に入力される。
図10に示すように、本実施例では、コントローラ部33は、画像形成開始指示が入力されると、付着軽減画像形成モードが選択されているか否か(即ち、付着軽減画像形成モードが許可されているか否か)を判断する(ステップ1)。コントローラ33は、付着軽減画像形成モードが選択されていると判断した場合には、環境センサー35の検知結果を読み込み(ステップ2)、湿度が30%RH未満であるか否かを判断する(ステップ3)。コントローラ部33は、湿度が30%RH未満である場合には付着軽減画像形成モードにてカラー画像形成動作又はモノクロ画像形成動作を実行させる(ステップ4)。
一方、コントローラ部33は、ステップ1において、付着軽減画像形成モードが選択されていないと判断した場合、又、ステップ3において湿度が30%RH以上であると判断した場合には、通常画像形成モードにてカラー画像形成動作又はモノクロ画像形成動作を実行させる(ステップ5)。
(実験例)
通常画像形成モードでの画像形成動作による、温湿度毎の帯電ローラ2の炭酸カルシウム汚染に起因する画像不良の発生状況を調べた。ここでは、転写材Pとして炭酸カルシウム含有紙であるオーシドレイ社製の秤量80g/cm2の紙を8000枚通紙した。結果は次の通りであった。
30℃/80%RH 画像不良発生せず
23℃/60%RH 画像不良発生せず
15℃/10%RH 「縦スジ」画像不良発生
30℃/80%RHや23℃/60%RHでは画像不良は発生しなかった。これは、湿度が高いために炭酸カルシウムが帯電され難いため、或いは例え炭酸カルシウムが感光体ドラム1に付着したとしても感光体ドラム1との静電的な付着力が弱いために、クリーニングブレード60により掻き取られ、廃トナー室53に回収されやすいためであると考えられる。
そこで、上述のように、本実施例では、環境センサー35で湿度を検知し、湿度が30%RHを下回ったときに、実施例1にて説明した付着軽減画像形成モードにて画像形成動作を実施する。湿度が30%RH以上の時は、実施例1において説明した通常画像形成モードで画像形成動作を行っても、炭酸カルシウムが感光体ドラム1に付着し難いので問題ない。
以上、本実施例によれば、環境センサー35で湿度を検知することで、極力、転写材Pの搬送性、転写性の点で有利な通常画像形成モードで画像形成動作を実行し、より効果的に付着軽減画像形成モードを採用することが可能となる。
尚、本実施例では、実施例1にて説明した付着軽減画像形成モードを例に説明したが、当然、環境センサ35の検知結果に応じて実施例2にて説明した付着軽減画像形成モードで画像形成動作を行うこともできる。
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上記各実施例に限定されるものではないことを理解されたい。例えば、トナーの帯電極性は負極性に限定されるものではなく、正極性であってもよい。その場合、上記各実施例における極性を有する転写バイアス、吸着バイアスの極性は逆極性となる。
又、上記各実施例では、吸着手段は、吸着部材として吸着ローラを有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、搬送ベルトに接触するブラシ状、ブレード状、シート状などを用いることができる。
又、上記各実施例では、吸着手段において、吸着バイアス出力手段としての吸着バイアス印加電源は、吸着部材としての吸着ローラに吸着バイアスを出力するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、上記各実施例において対向部材(対向電極)として機能するものとした搬送ベルトを張架するローラのうち1つのローラ(吸着対向ローラ)に吸着バイアスを出力するようにしてもよい。即ち、上記各実施例における吸着ローラと吸着対向ローラの機能を逆にして、搬送ベルトの内周面側に接触するローラにバイアスを印加して、搬送ベルトの外周面側に接触するローラを対向部材(対向電極)として機能させてもよい。この場合、吸着部において搬送ベルト(転写材搬送部材)上の転写材Pに形成される電界の向きは、上記各実施例とは逆になる。